説明

搬送システム及びコンピュータプログラム

【課題】例えばビークル等の搬送手段により搬送する搬送システムにおいて、比較的容易にして迅速且つ正確に、搬送手段が複数の領域間を乗り移れるようにする。
【解決手段】搬送システム(100)は、第1及び第2領域並びに該第1及び第2領域間に乗り移り領域を有する経路(1)と、経路に沿って走行する搬送手段(3)と、第1制御信号を通信可能であると共に乗り移り領域内の少なくとも一部及び第1領域内に設けられている第1通信線部分、並びに第2制御信号を通信可能であると共に乗り移り領域内の少なくとも一部及び第2領域内に設けられている第2通信線部分を有する通信線(2)と、搬送手段に設けられ、通信線を介して通信される第1又は第2制御信号を送受信可能な通信手段(5,6)と、乗り移り領域で、通信手段の通信がオフになるように通信のオン及びオフを切り替える切替手段(9)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体素子製造用の各種基板を収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)等の被搬送物を、複数の領域間で搬送する搬送システム、及びコンピュータをこのような装置として機能させるコンピュータプログラムの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の搬送システムとして、例えば通信負荷の低減、制御負荷の低減、リスクの分散、及びシステムダウン範囲の低減等を図るべく個々に独立した二つの搬送ラインと、連結ラインとを備え、定常的な搬送要求に対応して、二つの搬送ライン間で、連結ラインを介して、台車を移動させるものがある(特許文献1参照)。
【0003】
また、他の搬送システムとして、例えば通信チャンネルAを確立する給電線が敷設されたラインAと、通信チャンネルBを確立する給電線が敷設されたラインBとを備えるものがある。この搬送システムでは、台車が二つのラインA,B間の乗り移り部を移動する際、現在利用している一方の通信チャンネルA(又はB)から他方の通信チャンネルB(又はA)に切り替える(特許文献2参照)。例えば、通信チャンネルAから通信チャンネルBに切り替える際、台車が抽出すべき信号の周波数が、通信チャンネルAに割り当てられた周波数から、通信チャンネルBに割り当てられた周波数に切り替えられる。この切り替えにより、台車において、通信チャンネルBの信号が利用可能となり、ラインAからラインBへの乗り移りが行われる。
【0004】
【特許文献1】特開平6−168025号公報
【特許文献2】特開2000−278187号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献2の搬送システムによれば、乗り移り部では、通信チャンネルA,Bの信号が混信して、例えば、信号の抽出に長時間を要したり、信号の正確性を欠き、台車の制御に支障を来してしまいかねないという技術的問題点がある。
【0006】
また、乗り移りのために、周波数を切り替える手段や、切り替えられた周波数に該当する信号を抽出する手段等の通信切替機構を、台車に設けなければならないという技術的問題点もある。
【0007】
本発明は、例えば上述した問題点に鑑みなされたものであり、台車等の搬送手段が、比較的容易な方法で迅速且つ正確に、複数の領域間を乗り移り可能な搬送システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の搬送システムは上記課題を解決するために、被搬送物が搬送される第1及び第2領域並びに該第1及び第2領域間に乗り移り領域を有する経路と、前記経路に沿って走行すると共に、前記被搬送物を搬送する搬送手段と、前記第1領域で前記搬送手段を制御するための第1制御信号を通信可能であると共に前記乗り移り領域内の少なくとも一部及び前記第1領域内にて前記経路に沿って設けられている第1通信線部分、並びに前記第2領域で前記搬送手段を制御するための第2制御信号を通信可能であると共に前記乗り移り領域内の少なくとも一部及び前記第2領域内にて前記経路に沿って設けられている第2通信線部分を有する通信線と、前記搬送手段に設けられ、前記通信線を介して通信される第1又は第2制御信号を通信可能な通信手段と、前記乗り移り領域で、前記通信手段の通信がオフになるように前記通信のオン及びオフを切り替える切替手段とを備える。
【0009】
本発明の搬送システムによれば、例えば半導体素子製造の工場内において、例えばFOUP等の被搬送物は、例えばOHT(Overhead Hoist Transport)、ビークル等の搬送手段によって、例えば製造装置、ストッカ(或いはスタッカ)等が一若しくは複数設けられた、例えば天井又は床に敷設されたレール等の経路上で搬送される。ここで経路は、第1領域、第2領域内及び乗り移り領域を有する。通信線のうち第1通信線部分は、第1領域に設けられており、更に、乗り移り領域内の少なくとも一部にも設けられている。他方、通信線のうち第2通信線部分は、第2領域に設けられており、更に、乗り移り領域内の少なくとも一部(即ち、第1通信線部分が設けられた乗り移り領域内の少なくとも一部と同じ又は異なる、少なくとも一部)にも設けられている。即ち、乗り移り領域の少なくとも一部には、第1及び第2通信線部分が夫々、設けられており、これらを介して、第1及び第2制御信号が夫々通信可能とされる。
【0010】
ここで仮に、乗り移り領域内で、第1及び第2制御信号による制御を行おうとすれば、第1通信線部分によって通信される第1制御信号、及び第2通信線部分によって通信される第2制御信号が混信して、乗り移り領域を走行する搬送手段の制御に支障を来すことになりかねない。
【0011】
しかるに本発明では、例えば乗り移り領域に向けて第1領域を走行する際、搬送手段に設けられた誘導コイル、コントローラ等を含む通信手段によって、搬送手段は、第1通信線部分を介して送受信される第1制御信号に基づいて走行する。続いて、第1領域から乗り移り領域に進入する際、搬送手段に設けられたコントローラ等の切替手段によって、搬送手段は、通信をオフされる。このため、第1制御信号によるのではなく、例えば搬送手段に内蔵されたコントローラ等の制御手段によって、自身の走行を制御することが可能となる。続いて、乗り移り領域から第2領域へ進入する際、切替手段によって通信手段の通信がオフになることはない(即ち、通信がオンされる)。このため、上述した通信手段によって、搬送手段は、第2通信線部分を介して送受信される第2制御信号に基づいて走行可能となる。
【0012】
このように、搬送手段が送受信すべき信号が第1制御信号から第2制御信号に切り替わる際、通信がオフされることによって、混信の渦中(即ち、乗り移り領域)で制御信号を送受信することがない。また、混信の渦中を通過する際に、抽出すべき信号を設定したり、設定された信号を抽出する必要がない。尚、搬送手段は、例えば、エンコーダ、経路上に張り付けられたバーコード等の読取手段を備え、経路上の走行位置を検知可能とすれば、バーコード等に示される制御内容に従って、通信をオフしてもよい。
【0013】
このように、乗り移り領域で通信をオフするという、比較的容易な方法で、迅速且つ正確に、複数の領域間を乗り移ることが可能となる。
【0014】
本発明の搬送システムの一態様では、前記経路について少なくとも前記第1及び第2領域並びに前記乗り移り領域の別を示す経路情報を記憶する記憶手段と、前記記憶される経路情報に基づいて、少なくとも前記経路における前記搬送手段の搬送を制御する制御手段とを更に備え、前記制御手段は、少なくとも前記乗り移り領域に停止しないように前記搬送手段を制御する。
【0015】
この態様によれば、搬送手段が走行する際、搬送手段に設けられたコントローラ等の制御手段によって、搬送手段に設けられたメモリ等の記憶手段に記憶される経路情報に基づいて、少なくとも一部の走行が制御される。例えば乗り移り領域を走行する際、制御手段によって、搬送手段は、例えば所定の速度(即ち、一定の又は可変の所定速度)で走行する。即ち、搬送手段の通信がオフされる乗り移り領域では、搬送手段を停止させない制御が行われる。よって、乗り移り領域において、搬送手段が独立して自らを制御することが可能となる。
【0016】
この態様では、前記経路のうち、前記乗り移り領域を含んでおり、前記経路における前記乗り移り領域より下流側に少なくとも前記経路に沿った前記搬送手段の長さをとった検知領域に、前記搬送手段の前方を走行する前走搬送手段が存在していることを検知する検知手段を更に備え、前記制御手段は、前記前走搬送手段の存在が検知された場合に、前記検知領域に進入しようとする前記搬送手段が前記検知領域より手前で停止するように前記搬送手段を制御してもよい。
【0017】
このように構成すれば、赤外線センサ等の検知手段によって、検知領域に前走搬送手段が停止していることが検知された場合に、制御手段によって、搬送手段が検知領域より手前で停止される。即ち、搬送手段が走行可能な状態であっても、前走搬送手段の停止によって、乗り移り領域内にて、搬送手段の走行が阻止される状況を事前に回避する。よって、乗り移り領域に搬送手段が停止するのを避けることが可能となる。
【0018】
尚、このような検知手段は、検知領域内に存在する障害物(即ち、この場合の前走搬送手段)を検知するように、経路に固定して設けられてもよい。或いは、このような検知手段は、搬送手段に、検知領域を含めての該搬送手段の前方に存在する障害物(即ち、この場合の前走搬送手段)を検知するように、搭載されてもよい。
【0019】
本発明の搬送システムの他の態様では、前記第1通信線部分は、一対の第1通信配線を有し、前記第2通信線部分は、一対の第2通信配線を有し、前記一対の第1通信配線は、前記乗り移り領域に隣接する前記第1領域の部分又は前記乗り移り領域及び前記第1領域間における間隙部分、並びに及び前記乗り移り領域にて、一方が存在すると共に他方が存在しないように構成されており、前記一対の第2通信配線は、前記乗り移り領域に隣接する前記第2領域の部分又は前記乗り移り領域及び前記第2領域間における間隙部分、並びに前記乗り移り領域にて、前記一方に対応する一方が存在しないと共に前記他方に対応する他方が存在するように構成されている。
【0020】
この態様によれば、例えば、一対の第1通信配線は、経路の両側に設けられ、同様に、一対の第2通信配線は、経路の両側に設けられる。一対の第1通信配線は、乗り移り領域に隣接する第1領域の部分、又は乗り移り領域及び第1領域間における間隙部分では、例えば経路の右側だけなど、一方が存在すると共に他方が存在しないで、乗り移り領域へと到る。一対の第2通信配線は、乗り移り領域では、例えば経路の左側だけなど、一方が存在しないと共に他方が存在して、乗り移り領域に隣接する第2領域の部分、又は乗り移り領域及び第2領域間における間隙部分へと到る。よって、乗り移り領域では、一対の第1通信配線の片側(例えば右側)のみと、一対の第2通信配線の片側(例えば左側)のみとが存在するようにできる。このように構成すると、通信線を、第1及び第2制御信号の通信線として機能する他に、例えば搬送手段に電力供給の機能を持たせる場合に有利である。
【0021】
本発明のコンピュータプログラムは上記課題を解決するために、被搬送物が搬送される第1及び第2領域並びに該第1及び第2領域間に乗り移り領域を有する経路と、前記経路に沿って走行すると共に、前記被搬送物を搬送する搬送手段と、前記第1領域で前記搬送手段を制御するための第1制御信号を通信可能であると共に前記乗り移り領域内の少なくとも一部及び前記第1領域内にて前記経路に沿って設けられている第1通信線部分、並びに前記第2領域で前記搬送手段を制御するための第2制御信号を通信可能であると共に前記乗り移り領域内の少なくとも一部及び前記第2領域内にて前記経路に沿って設けられている第2通信線部分を有する通信線とを備えた搬送システムに備えられるコンピュータを、前記搬送手段に設けられ、前記通信線を介して通信される第1又は第2制御信号を送受信可能な通信手段と、前記乗り移り領域で、前記通信手段の通信がオフになるように前記通信のオン及びオフを切り替える切替手段ととして機能させる。
【0022】
本実施形態のコンピュータプログラムによれば、当該コンピュータプログラムを格納するCD−ROM、DVD−ROM等の記録媒体から、当該コンピュータプログラムを、搬送システムに備えられたコンピュータに読み込んで実行させれば、或いは、当該コンピュータプログラムを通信手段を介してダウンロードさせた後に実行させれば、上述した本発明に係る搬送システムを比較的簡単に構築できる。これにより、上述した本発明に係る搬送システムの場合と同様に、乗り移り領域で通信をオフするという、比較的容易な方法で、迅速且つ正確に、複数の領域間を乗り移ることが可能となる。
【0023】
尚、本発明のコンピュータプログラムにおいても、上述した本発明の搬送システムにおける各種態様と同様の各種態様を採ることが可能である。
【0024】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための最良の形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
【0026】
先ず、実施形態に係る搬送システムの構成について説明する。ここに図1は、実施形態に係る搬送システムの構成を模式的に示し、図2は、図1の搬送手段の構成を機能的に示す。
【0027】
図1において、搬送システム100は、経路1、バーコードBCx、一対の通信線2、赤外線センサ11、投光機12、ビークル3、並びに第1及び第2搬送コントローラ10,20を備える。
【0028】
経路1は、第1及び第2領域を連結しており、第1及び第2領域内、並びに第1及び第2領域間(即ち、乗り移り領域内)で不図示のFOUPを搬送するための搬送路として機能する。第1及び第2領域には、半導体素子製造用の一又は複数の作業装置が配置されている。
【0029】
経路1における所定の位置には、バーコードBCxが貼り付けられている。バーコードBCxには、識別コードが夫々割り当てられている。識別コードは、経路1上の位置、及びビークル3の制御内容を示す。バーコードBC1は、ビークル3が通信をオフするための識別コードを示し、バーコードBC2は、ビークル3が通信をオンするための識別コードを示す。
【0030】
本実施形態では、経路1における第1及び第2領域間の所定の位置に、上流側から順に、ポイントP0〜P4が設定されている。図1に示すように、ポイントP0は、バーコードBC1の貼り付け位置(即ち、通信OFF(オフ)領域の開始位置)を示し、ポイントP1は、停止禁止領域の開始位置、及びビークル検知領域の開始位置を示し、ポイントP2は、停止禁止領域の終了位置を示し、ポイントP3は、バーコードBC2の貼り付け位置(即ち、通信OFF(オフ)領域の終了位置)を示し、ポイントP4は、ビークル検知領域の終了位置を示す。
【0031】
本実施形態では、経路1における第1及び第2領域間に、上流側から順に、通信OFF領域、停止禁止領域、及びビークル検知領域が設定されている。通信OFF領域は、経路1におけるポイントP0及びP3間の領域であって、停止禁止領域は、ポイントP1及びP2間の領域であって、ビークル検知領域は、ポイントP0及びP4間の領域である。通信OFF領域は、ビークル3の通信をオフするための制御が行われる領域であって、停止禁止領域は、ビークル3を停止させないための制御が行われる領域である。ビークル検知領域は、前走ビークル3の存在が検知される領域である。
【0032】
赤外線センサ11は、本発明に係る「検知手段」の一例として、ビークル検知領域に、ビークル3の前方を走行する前走ビークル3x(即ち、本発明に係る「前走搬送手段」の一例)が存在していることを検知する。赤外線センサ11は、前走ビークル3xの存在を検知した場合に、投光機12にON信号を送り、前走ビークル3xの存在を検知しなくなった場合に、投光機12にOFF信号を送る。
【0033】
尚、本発明に係る「検知手段」の他の一例として、赤外線センサ11に代えて、ビークル3の前面に設けられた前方の障害物を検知する光学式センサを利用して、ビークル検知領域に存在し得る、前走ビークル3xが存在していることを検知してもよい。
【0034】
投光機12は、赤外線センサ11からのON信号を受け取った場合に、光を照射し、OFF信号を受け取った場合に、光の照射を停止する。
【0035】
一対の通信線2は、経路1に沿って経路1の両側に設けられている。一対の通信線2は、第1領域に敷設された経路1に沿う第1通信線部分21、及び第2領域に敷設された経路1に沿う第2通信線部分22から成る。第1通信線部分21は、左右の通信線部分21L,21R(即ち、本発明に係る「一対の第1通信配線」の一例)から成り、第2通信線部分22は、左右の通信線部分22L,22R(即ち、本発明に係る「一対の第2通信配線」の一例)から成る。第1通信線部分21の左通信線部分21Lは、第1領域内から、第2領域手前のポイントP2まで延びている。一方、第2通信線部分22の右通信線部分22Rは、第1領域より下流で且つ第2領域手前のポイントP1から、第2領域内へ延びている。このような左通信線部分21L及び右通信線部分22Rは、ポイントP1及びP2間で、経路1を挟んで平行に配置されている。
【0036】
第1通信線部分21は、第1搬送コントローラ10からの第1制御信号を、経路1を走行するビークル3との間で通信可能である。第2通信線部分22は、第2搬送コントローラ20からの第2制御信号を、経路1を走行するビークル3との間で通信可能である。
【0037】
ビークル3は、本発明に係る「搬送手段」の一例として、経路1に沿って走行すると共に、第1及び第2領域内、並びに第1及び第2領域間でFOUPを搬送する。FOUPは、本発明に係る「被搬送物」の一例として、内部に、半導体素子製造用の各種基板を複数収納可能とする。
【0038】
ビークル3の下面を示す図2において、ビークル3は、本体部3a、駆動部4、一対のコイル5,6、BCリーダ7、受光センサ8、制御部9を備える。
【0039】
駆動部4は、制御部9の指示に従ってモータを駆動して、本体部3aを走行方向D1へ移動させる。
【0040】
一対のコイル5,6は、本発明に係る「通信手段」の一例として、一対の通信線2を介して通信される第1又は第2制御信号を送受信する。一対のコイル5,6は、左右の送信コイル5a,5b、及び左右の受信コイル6a,6bから成る。左送信コイル5a及び左受信コイル6aは、経路1における走行方向D1の左側に位置しており、左通信線部分21L,22Lを介して第1又は第2制御信号を送受信する。一方、右送信コイル5b及び右受信コイル6bは、経路1における走行方向D1の右側に位置しており、右通信線部分21R,22Rを介して第1又は第2制御信号を送受信する。
【0041】
左送信コイル5a及び右送信コイル5bは、相互に冗長的に設けられていてよく、左受信コイル6a及び右受信コイル6bも、相互に冗長的に設けられていてもよい。即ち、両側に通信線がある経路では、左右の受信コイルにて同じ信号を受信してよく、左右の送信コイルにて同じ信号を送信してもよい。この場合、いずれか一方の受信コイルが機能していれば、他方の受信コイルは、例えば分岐箇所等にて一時的に又は次に修理されるまでの期間、機能していなくてもよい。或いは、いずれか一方の送信コイルが機能していれば、他方の送信コイルは、例えば分岐箇所等にて一時的に又は次に修理されるまでの期間、機能していなくてもよい。
【0042】
BCリーダ7は、「読取手段」の一例として、本体部3aがバーコードBCxの上方を通過する際に、バーコードBCxに割り当てられた識別マークを読み取る。BCリーダ7は、読み取った識別マークを示す信号を制御部9に送る。
【0043】
受光センサ8は、投光機12が照射する光を受光した場合に、制御部9にON信号を送り、投光機12からの光を受光しなくなった場合に、制御部9にOFF信号を送る。
【0044】
制御部9は、ビークル3の各部と接続されており、第1又は第2領域内を走行する際、第1又は第2搬送コントローラ10,20から一対の通信線2を介して送受信される第1又は第2制御信号に基づいて、ビークル3を総括的に制御する。制御部9は、第1及び第2領域間を走行する際、本発明に係る「切替手段」の一例として、特定の位置で通信のON/OFFを切り替える。
【0045】
具体的には、制御部9は、通信OFF領域の開始位置P0で、左送受信コイル5a,6aの通信をオフし、通信OFF領域の終了位置P3で、右送受信コイル5b,6bの通信をオンに戻す。このように、各領域内で固有に通信される制御信号を、第1制御信号から第2制御信号に切り替える通信切替処理を行い、ビークル3を第1領域から第2領域に乗り移らせることによって、乗り移り先の第2領域でビークル3が制御可能となる。このように本実施形態では、本発明に係る「乗り移り領域」は、第1領域及び第2領域間における、通信OFF領域を含む領域である。
【0046】
次に、通信の切り替え時のビークル3、並びに第1及び第2搬送コントローラ10,20の動作について図3を参照して説明する。ここに図3は、第1及び第2領域間の経路1を走行するビークル3、並びに第1及び第2搬送コントローラ10,20の動作を示す。
【0047】
図3において、ビークル3が経路1におけるポイントP0より上流側を走行する時、ビークル3は、第1搬送コントローラ10から送信される第1制御信号(呼びかけ)を受信して、第1制御信号に応答する。一方、ビークル3は、第2搬送コントローラ20からの第2制御信号(呼びかけ)を受信しないために、第2制御信号に応答できない。このように、第1制御信号に応答可能な状態では、一対のコイル5,6の通信がオン(ON)となっている。
【0048】
続いて、ビークル3がポイントP0を通過した場合に、ビークル3は、一対のコイル5,6の通信をオフ(OFF)に切り替える。この時、第1及び第2搬送コントローラ10,20からの第1及び第2制御信号を受信しないために、第1及び第2制御信号に応答できない。続いて、ビークル3がポイントP1及びP2を通過した時にも、ビークル3は、第1及び第2制御信号に応答できない。このように、第1及び第2制御信号に応答不可能な状態では、一対のコイル5,6の通信が継続してオフとなっている。
【0049】
続いて、ビークル3がポイントP3を通過した場合に、ビークル3は、一対のコイル5,6の通信をオンに切り替える。この時、ビークル3は、第1搬送コントローラ10からの第1制御信号を受信しないために、第1制御信号に応答できない。一方、ビークル3は、第2搬送コントローラ20からの第2制御信号を受信して、第2制御信号に応答する。この後、ビークル3がポイントP3より下流側を走行する時にも、ビークル3は、第1制御信号に応答できず、第2制御信号に応答する。このように、第2制御信号に応答可能な状態では、一対のコイル5,6の通信が継続してオンとなっている。
【0050】
このようにビークル3は、前走ビークルの存在とは無関係に、通信OFF領域内にある停止禁止領域を、通信がオフとされたまま(次に説明する、自身が内蔵する制御部9による走行制御或いは自律走行制御によって)通過可能である。
【0051】
再び図2において、制御部9は、第1及び第2領域間を走行する際、本発明に係る「制御手段」の一例として、地図データに基づいて、ビークル3を制御する。制御部9は、不図示のプロセッサ、メモリ9aを備える。
【0052】
メモリ9aは、本発明に係る「記憶手段」の一例として、経路1に係る地図データを予め格納している。地図データは、本発明に係る「経路情報」の一例として、通信OFF領域、停止禁止領域、及びビークル検知領域(図1に示される)の各領域について、経路1上の開始位置及び終了位置を示す。通信OFF領域は、地図データとして、開始位置「P0」、終了位置「P3」を示す。停止禁止領域は、本発明に係る「乗り移り領域」の一例として、地図データとして、開始位置「P1」、終了位置「P2」を示す。ビークル検知領域は、停止禁止領域を含み、且つ停止禁止領域より下流側にビークル3一台分の長さをとった領域に設定されており、地図データとして、開始位置「P1」、終了位置「P4」を示す。
【0053】
制御部9は、BCリーダ7からの信号に基づいて、通信OFF領域の開始位置「P0」又は終了位置「P3」をビークル3が通過したことを検知すると共に、その信号が示す制御内容に従って、一対のコイル5,6の通信をオフ又はオンする。尚、制御部9は、地図データ、及び不図示のエンコーダによる測定値に基づいて、通信OFF領域を検知し、通信OFF領域を走行中、通信を継続してオフしてもよい。
【0054】
制御部9は、上述したように、通信OFF領域を走行中、通信をオフするが、これに加えて、停止禁止領域を走行中、駆動部4を制御して、ビークル3を駆動させる(即ち、停止させない)。具体的には、制御部9は、地図データ、及び不図示のエンコーダによる測定値に基づいて、停止禁止領域を検知し、停止禁止領域を走行中、ビークル3が一定速度で走行するように駆動部4を制御する。これにより、第1及び第2制御信号が混信する停止禁止領域において、ビークル3が独立して自らを制御する。
【0055】
制御部9は、受光センサ8から送られるON信号に基づいて、ビークル検知領域より手前でビークル3を停止させる。これにより、ビークル3が、通信がOFFの状態で前走ビークル3xに追突したり、ビークル検知領域に停止する前走ビークル3xによって身動きできなくなる状況を回避する。
【0056】
次に、ビークル検知領域で検知される前走ビークル3x、及び前走ビークル3xに追従するビークル3の動作について図4を参照して説明する。ここに図4は、ビークル検知領域を走行する前走ビークル3x、及び前走ビークル3xに追従するビークル3の動作を示す。
【0057】
図4において、前走ビークル3xが経路1におけるポイントP1に進入した時、赤外線(検知)センサ11は、前走ビークル3xの存在を検知して、ON信号を投光機12に送り、ON信号を受け取った投光機12は、光源をオンして、光を照射する。すると、ビークル3の受光センサ8は、投光機12からの光を受光して、ON信号を制御部9に送り、ON信号を受け取った制御部9は、即座にビークル3を停止させる。
【0058】
この後、前走ビークル3xがポイントP4に通過した時、赤外線センサ11は、前走ビークル3xの存在を検知しなくなって、OFF信号を投光機12に送り、OFF信号を受け取った投光機12は、光源をオフして、光の照射を停止する。すると、ビークル3の受光センサ8は、投光機12からの光を受光しなくなって、OFF信号を制御部9に送り、OFF信号を受け取った制御部9は、即座にビークル3の走行を再開させる。
【0059】
第1搬送コントローラ10は、本発明に係る「搬送制御手段」の一例として、半導体素子製造工程に従って第1制御信号を送受信し、第1領域内にあるビークル3を制御する。
【0060】
第2搬送コントローラ20は、本発明に係る「搬送制御手段」の一例として、半導体素子製造工程に従って第2制御信号を送受信し、第2領域内にあるビークル3を制御する。
(通信切替処理)
【0061】
次に、本実施形態に係る搬送システムによる通信切替処理について図5を参照して説明する。ここに図5は、本実施形態に係る通信切替処理を示すフローチャートである。
【0062】
図5において、先ず、BCリーダ7によって、バーコードBC1が読み取られる、即ち、ポイントP0を通過したか否かが判定される(ステップS51)。この判定の結果、ポイントP0を未だ通過していない場合に(ステップS51:NO)、ビークル3がポイントP0を通過するまで、待機状態となる。
【0063】
一方、ステップS51の判定の結果、ビークル3がポイントP0を通過した場合に(ステップS51:YES)、赤外線センサ11によって、ビークル検知領域に、前走ビークル3xが存在するか否かが判定される(ステップS52)。この判定の結果、前走ビークル3xが故障によりビークル検知領域に停止している場合に(ステップS52:YES)、制御部9によって、ビークル3の走行が停止され(ステップS53)、前走ビークル3xがビークル検知領域を通過するまで、ステップS52の処理が繰り返し行われる。
【0064】
一方、ステップS52の判定の結果、前走ビークル3xがビークル検知領域に存在しない場合に(ステップS52:NO)、制御部9によって、通信がOFFされると共に(ステップS54)、ビークル3が停止禁止領域を走行する(ステップS55)。続いて、BCリーダ7によって、バーコードBC2が読み取られる、即ち、ポイントP3を通過したか否かが判定される(ステップS56)。この判定の結果、ポイントP3を未だ通過していない場合に(ステップS56:NO)、ビークル3がポイントP3を通過するまで、待機状態となる。
【0065】
一方、ステップS56の判定の結果、ビークル3がポイントP3を通過した場合に(ステップS56:YES)、制御部9によって、通信がONされる(ステップS57)。これにより、一連の通信切替処理が終了される。
【0066】
このように、本実施形態の通信切替処理によれば、第1及び第2領域間に設けた通信OFF領域で通信をオフするという比較的容易な方法で、迅速且つ正確に、ビークル3が第1及び第2領域間を乗り移ることが可能となる。
【0067】
尚、本実施形態によれば、停止禁止領域において、第1領域を制御するための左通信線部分21L、及び第2領域を制御するための右通信線部分22Rが平行に配置されている。このような通信線2(図1に示される)の他の例として、図6に示すように、停止禁止領域に、第1領域を制御するための左通信線部分121L、及び第2領域を制御するための右通信線部分122Rが一切存在していなくても構わない。また、このような停止禁止領域を含む通信OFF領域にも、第1及び第2領域の制御用の通信線が一切存在していなくても構わない。
【0068】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う搬送システムもまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】実施形態に係る搬送システムの構成を模式的に示す平面図である。
【図2】図1の搬送手段の構成を機能的に示すブロック図である。
【図3】図1の第1及び第2領域間を走行する搬送手段、並びに第1及び第2搬送制御手段の動作を示すシークエンスチャートである。
【図4】図1の検知領域を走行する前走搬送手段、及び搬送手段の動作を示すシークエンスチャートである。
【図5】実施形態の通信切替処理を示すフローチャートである。
【図6】図1の通信線の他の例を模式的に示す平面図である。
【符号の説明】
【0070】
1…経路、2…通信線、3…ビークル、5…送信コイル、6…受信コイル、10…第1搬送コントローラ、20…第2搬送コントローラ、9…制御部、100…搬送システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送物が搬送される第1及び第2領域並びに該第1及び第2領域間に乗り移り領域を有する経路と、
前記経路に沿って走行すると共に、前記被搬送物を搬送する搬送手段と、
前記第1領域で前記搬送手段を制御するための第1制御信号を通信可能であると共に前記乗り移り領域内の少なくとも一部及び前記第1領域内にて前記経路に沿って設けられている第1通信線部分、並びに前記第2領域で前記搬送手段を制御するための第2制御信号を通信可能であると共に前記乗り移り領域内の少なくとも一部及び前記第2領域内にて前記経路に沿って設けられている第2通信線部分を有する通信線と、
前記搬送手段に設けられ、前記通信線を介して通信される第1又は第2制御信号を通信可能な通信手段と、
前記乗り移り領域で、前記通信手段の通信がオフになるように前記通信のオン及びオフを切り替える切替手段と
を備えることを特徴とする搬送システム。
【請求項2】
前記経路について少なくとも前記第1及び第2領域並びに前記乗り移り領域の別を示す経路情報を記憶する記憶手段と、
前記記憶される経路情報に基づいて、少なくとも前記経路における前記搬送手段の搬送を制御する制御手段と
を更に備え、
前記制御手段は、少なくとも前記乗り移り領域に停止しないように前記搬送手段を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の搬送システム。
【請求項3】
前記経路のうち、前記乗り移り領域を含んでおり、前記経路における前記乗り移り領域より下流側に少なくとも前記経路に沿った前記搬送手段の長さをとった検知領域に、前記搬送手段の前方を走行する前走搬送手段が存在していることを検知する検知手段を更に備え、
前記制御手段は、前記前走搬送手段の存在が検知された場合に、前記検知領域に進入しようとする前記搬送手段が前記検知領域より手前で停止するように前記搬送手段を制御する
ことを特徴とする請求項2に記載の搬送システム。
【請求項4】
前記第1通信線部分は、一対の第1通信配線を有し、
前記第2通信線部分は、一対の第2通信配線を有し、
前記一対の第1通信配線は、前記乗り移り領域に隣接する前記第1領域の部分又は前記乗り移り領域及び前記第1領域間における間隙部分、並びに前記乗り移り領域にて、一方が存在すると共に他方が存在しないように構成されており、
前記一対の第2通信配線は、前記乗り移り領域に隣接する前記第2領域の部分又は前記乗り移り領域及び前記第2領域間における間隙部分、並びに前記乗り移り領域にて、前記一方に対応する一方が存在しないと共に前記他方に対応する他方が存在するように構成されている
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の搬送システム。
【請求項5】
被搬送物が搬送される第1及び第2領域並びに該第1及び第2領域間に乗り移り領域を有する経路と、前記経路に沿って走行すると共に、前記被搬送物を搬送する搬送手段と、前記第1領域で前記搬送手段を制御するための第1制御信号を通信可能であると共に前記乗り移り領域内の少なくとも一部及び前記第1領域内にて前記経路に沿って設けられている第1通信線部分、並びに前記第2領域で前記搬送手段を制御するための第2制御信号を通信可能であると共に前記乗り移り領域内の少なくとも一部及び前記第2領域内にて前記経路に沿って設けられている第2通信線部分を有する通信線とを備えた搬送システムに備えられるコンピュータを、
前記搬送手段に設けられ、前記通信線を介して通信される第1又は第2制御信号を通信可能な通信手段と、
前記乗り移り領域で、前記通信手段の通信がオフになるように前記通信のオン及びオフを切り替える切替手段と
として機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−64855(P2010−64855A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−233061(P2008−233061)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(302059274)アシスト テクノロジーズ ジャパン株式会社 (146)
【Fターム(参考)】