説明

搬送システム

【課題】所望の搬送距離だけ被搬送物質を搬送可能な搬送システムを提供する。
【解決手段】第一の搬送経路14aと、この第一の搬送経路14aの搬送方向下流側と合流する第二の搬送経路14bと、第一の搬送経路14a上に供給された被搬送物質を搬送し、第二の搬送経路14b上に送り渡すための弾性波を発生させる第一の弾性波発生手段12aと、第一の搬送経路14a上から送り渡された被搬送物質を第二の搬送経路14b上で搬送するための弾性波を発生させる第二の弾性波発生手段12bと、を基板10の表面上に有する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板表面上に発生させた弾性波の伝搬を利用して、被搬送物質を搬送する搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、弾性波の伝搬を利用して物体を搬送する装置として、例えば下記特許文献1に記載の装置がある。この装置は、レイリーモード弾性波を発生する圧電材料及びカット面からなる圧電基板と、圧電基板表面上に、レイリーモード弾性波を励振させる入力用電極と、を含む構成を有している。そして、入力用電極からの弾性表面波が伝搬する伝搬経路上に液体を供給し、電気信号を入力用電極に加えて圧電基板より弾性波(レイリー波)を励振させると、基板上を伝搬して液体中に入った弾性波は、伝搬面と液体の界面を伝搬しながら液体中に縦波を放射するため、この放射を受けた液体が、放射エネルギによって弾性波の進行方向に流動する。このような原理により、下記特許文献1に記載の装置において、被搬送物質として例えば液体を、弾性波を用いて搬送することを可能としている。
【0003】
【特許文献1】特開平10−327590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来技術のように弾性波の伝搬を利用して被搬送物質の搬送を行う場合、弾性波が被搬送物質中に入射すると、弾性波から被搬送物質内に縦波が放射されるため、この放射エネルギの分だけ弾性波のエネルギが減少し、弾性波は伝搬するにつれて減衰する。このため、所定量の被搬送物質を搬送できる距離には限界があり、弾性波を利用してその限界距離以上の距離を搬送することができない。
【0005】
本発明の主な目的は、所望の搬送距離だけ被搬送物質を搬送可能な搬送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、基板表面上に、被搬送物質を搬送するための弾性波を励振する電極を含む弾性波発生手段と、弾性波発生手段からの弾性波の伝搬により被搬送物質が搬送される搬送経路と、を有する搬送システムであって、第一の搬送経路と、該第一の搬送経路の搬送方向下流側と合流する第二の搬送経路と、第一の搬送経路上に供給された被搬送物質を搬送し、第二の搬送経路上に送り渡すための弾性波を発生させる第一の弾性波発生手段と、第一の搬送経路上から送り渡された被搬送物質を第二の搬送経路上で搬送するための弾性波を発生させる第二の弾性波発生手段と、を有することを特徴とする。
【0007】
ここで、上記構成の搬送システムにおいて、第一または第二の弾性波発生手段は、弾性波を励振する電極と、該電極からの弾性波を反射する反射器と、を含み、第一または第二の搬送経路上の被搬送物質が、前記反射器により反射された弾性波によって搬送される構成としても良い。また、この場合の搬送システムにおいて、第一の弾性波発生手段における電極からの弾性波の伝搬方向と、第二の弾性波発生手段における電極からの弾性波の伝搬方向とが平行であることが好適である。
【0008】
さらに、第一の搬送経路は、該第一の搬送経路上に被搬送物質が満たされた場合における被搬送物質の体積が、第一の弾性波発生手段からの弾性波によって搬送可能な被搬送物質の体積以下となるよう、第一の搬送経路の長さが設定されている構成とすると良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明の搬送システムによれば、第一の搬送経路上における被搬送物質の搬送を行った後、第一の搬送経路の搬送方向下流側と合流する第二の搬送経路に被搬送物質を送り渡し、引き続いて第二の搬送経路上における被搬送物質の搬送を行う構成にしたので、このような構成を所望の搬送距離に応じて適用することで、弾性波を利用して、所望の搬送距離だけ被搬送物質を搬送することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
まず、本発明の第一の実施形態における搬送システムについて、図1を参照して説明する。図1の搬送システムは、例えば水晶基板や圧電基板(例えばLiNbO基板やLiTaO基板等)またはガラスやシリコン等の基板表面に圧電薄膜(例えばZnOやAlN等)を有する基板といった基板10の表面上に、弾性波を発生(励振)する弾性波発生手段を有する構成となっている。
【0011】
図1の搬送システムにおける弾性波発生手段は、高周波信号を発生させる駆動回路(図示せず)に接続され、この駆動回路からの高周波信号の入力によって、被搬送物質を搬送するための弾性波を励振する櫛型電極(搬送電極)である。この搬送システムの基板10上には、一例として4個の搬送電極(第一〜第四の搬送電極)12a〜12dが設けられている。また、基板10上には、搬送電極からの弾性波の伝搬によって被搬送物質が搬送される搬送経路が、各搬送電極から形成される。従って本実施形態では、各搬送電極12a〜12dからの4本の搬送経路(第一〜第四の搬送経路)14a〜14dが、基板10の表面上に形成されている。
【0012】
ここで、図1の搬送システムでは、第一の搬送経路14aは搬送方向下流側において第二の搬送経路14bに合流するように、第一及び第二の搬送電極12a,12bが配置されている。またこれと同様に、第二の搬送経路14bは搬送方向下流側において第三の搬送経路14cに合流し、第三の搬送経路14cは搬送方向下流側において第四の搬送経路14dに合流するように、第三及び第四の搬送電極12c,12dが配置されている。そして、第一の搬送経路14a上には、被搬送物質を第一の搬送経路14a上に供給する供給エリア16が設けられている。
【0013】
尚、搬送用の弾性波としては、基板表面に直交する方向に基板表面を変位させる弾性波(例えばレイリー波)が好適であり、水晶基板や圧電基板には、このような弾性波を伝搬させるのに好適なカット角及び伝搬方向が存在する。そこで、好適なカット角の基板を用い、好適な伝搬方向に弾性波が伝搬するよう、搬送電極を配置すると良い。また、好適な伝搬方向とは異なる方向に弾性波を利用して被搬送物質を伝搬するには、基板上に圧電薄膜を設け、この圧電薄膜上に励振させた弾性波により被搬送物質を搬送するように構成すれば良い。こうして、基板上に複数の搬送経路を設けることができる。
【0014】
例えば図1の搬送システムでは、第二及び第四の搬送経路14b,14dでの搬送方向が基板における弾性波の好適な伝搬方向と一致するよう第二及び第四の搬送電極12b,12dを配置する。そして、第一の搬送経路14aとして、圧電薄膜(図示せず)を基板上に設け、この圧電薄膜上に第一の搬送電極12aを設けると共に、第三の搬送経路14c及び搬送電極12cについても、第一の搬送経路14a及び搬送電極12aと同様に基板10上に設ける。こうして、異なる搬送方向の複数の搬送経路を基板上に設けることができる。
【0015】
次に、上記のような構成の搬送システムを利用した被搬送物質の搬送処理について説明する。まず、上記構成の搬送システムにおいて、供給エリア16に被搬送物質を供給して第一の搬送電極12aに高周波信号を入力すると、この第一の搬送電極12aで励振された弾性波の伝搬により、被搬送物質が供給エリア16から第二の搬送経路14bに向かって第一の搬送経路14a上を搬送される。そして、第一の搬送経路14a上を搬送される被搬送物質は、第一の搬送電極12aからの弾性波によって第二の搬送経路14b上に送り渡される。
【0016】
被搬送物質が第二の搬送経路14b上に送り渡されると、第二の搬送電極12bに高周波信号を入力する。そして、この第二の搬送電極12bで励振された弾性波の伝搬により、第一の搬送経路14a上から送り渡された被搬送物質は、第一の搬送経路14aとの合流地点から第三の搬送経路14cに向かって第二の搬送経路14b上を搬送される。
【0017】
こうして、第二の搬送経路14b上を搬送される被搬送物質は、上記と同様に、第二の搬送電極12bからの弾性波によって第三の搬送経路14c上に送り渡され、続けて第三の搬送電極12cからの弾性波の伝搬により第四の搬送経路14dに向かって第三の搬送経路14c上を搬送され、さらに、第三の搬送電極12cからの弾性波によって第四の搬送経路14d上に送り渡され、続けて第四の搬送電極12dからの弾性波の伝搬により第四の搬送経路14d上を搬送されていく。
【0018】
以上のように、本実施形態における搬送システムでは、複数の搬送電極の配置の仕方によって、一の搬送経路が搬送方向下流側において次の搬送経路に合流するといった態様で複数の搬送経路が連続して形成されている。従って、このような複数の搬送経路上を送り渡しながら被搬送物質を搬送する構成によれば、搬送電極(搬送経路)の数を増加させることにより、より長い距離を搬送することができるようになる。こうして、搬送電極(搬送経路)の数、及び搬送電極の配置を適宜調整することで、被搬送物質を所望の搬送距離、搬送することが可能となる。
【0019】
また、上記のような構成によれば、被搬送物質の搬送中に供給エリア16に新たな被搬送物質を供給することで、複数の被搬送物質の搬送を同時に行うことができる。例えば、被搬送物質を第一の搬送経路14a上から第二の搬送経路14b上に送り渡したときに新たな被搬送物質を供給エリア16に供給し、第一及び第二の搬送電極12a,12bに高周波信号を入力することで、一番目の被搬送物質は第二の搬送経路14b上で搬送されると共に、二番目の被搬送物質は第一の搬送経路14a上で搬送される。さらに、一番目の被搬送物質を第二の搬送経路14b上から第三の搬送経路14c上に送り渡し且つ二番目の被搬送物質を第一の搬送経路14a上から第二の搬送経路14b上に送り渡したときに、新たな(三番目の)被搬送物質を供給エリア16に供給し、第一、第二及び第三の搬送電極12a〜12cに高周波信号を入力することで、一番目の被搬送物質は第三の搬送経路14c上で、二番目の被搬送物質は第二の搬送経路14b上で、三番目の被搬送物質は第一の搬送経路14a上で同時に搬送される。このように、本実施形態における搬送システムでは、複数の被搬送物質を同時に搬送することができるため、迅速且つ効率的な被搬送物質の搬送が可能となる。
【0020】
尚、本実施形態では、一の搬送経路の搬送方向下流側において合流する次の搬送経路の搬送方向は、一の搬送経路の搬送方向と異なる態様となっているが、次の搬送経路の搬送方向はこれに限定されるものではない。すなわち、一の搬送経路の搬送方向下流側において合流する次の搬送経路の搬送方向を、一の搬送経路の搬送方向と同一とし、二つの搬送経路が直線的に連続するように構成されていても良い。このような場合、被搬送物質は、次の搬送経路上に伝搬する弾性波を励振する搬送電極の上を移動して、一の搬送経路から次の搬送経路上に送り渡される構成となる。
【0021】
ところで、上記実施形態では弾性波発生手段として電極12a〜12dのみを用いているが、これに替えて例えば図2のように、反射器を用いた構成としても良い。図2の搬送システムにおいて、第二の弾性波発生手段12bは、基板10の表面上に弾性波を励振する電極121bと、この電極から伝搬してきた弾性波を反射する反射器122bと、を有している。この第二の弾性波発生手段12bにおける電極121b及び反射器122bは、反射器122bによって反射された弾性波の伝搬を利用して第二の搬送経路14b上における被搬送物質の搬送を行うべく、基板上に配置される。そして、以上のような構成により、第一の弾性波発生手段(搬送電極)12aからの弾性波の伝搬により第一の搬送経路14a上を搬送された被搬送物質は、第二の弾性波発生手段12bにおける電極121bから伝搬し反射器122bで反射した反射弾性波によって、第三の搬送経路14cに向かって第二の搬送経路14b上を搬送されることとなる。
【0022】
ここで、図2の搬送システムにおいて、第一及び第三の弾性波発生手段(搬送電極)12a,12cからの弾性波の伝搬方向と、第二の弾性波発生手段12bにおける電極121bから反射器122bに向かって伝搬する弾性波の伝搬方向とは同一方向である。このように、図2のように反射器122bを用いた構成によれば、各電極12a,121b,12cからの弾性波の伝搬方向を、基板表面に直交する方向に基板表面を変位させる弾性波(例えばレイリー波)を伝搬させるのに好適な伝搬方向に統一させることができる。従って、好適な伝搬方向とは異なる方向に弾性波を利用して被搬送物質を伝搬する場合のように圧電薄膜を基板上に設けるといった処理を行う必要がない。
【0023】
尚、図2の搬送システムにおいては、第二の弾性波発生手段12bを、第一及び第三の弾性波発生手段(搬送電極)12a,12cからの弾性波の伝搬方向とは逆方向に弾性波を伝搬させる電極と、この電極から伝搬してきた弾性波を反射する反射器と、を有し、この反射器によって反射された弾性波の伝搬を利用して第二の搬送経路14b上における被搬送物質の搬送を行う構成としても良い。また、反射器によって反射された弾性波の伝搬方向は、反射器の設定により適宜設定可能である。
【0024】
また、反射器の個数は図2のように1個に限定されるものではなく、電極121bから伝搬してきた弾性波が複数の反射器によって次々に反射され、最後に反射された弾性波によって第二の搬送経路14b上における被搬送物質の搬送を行う構成としても良い。
【0025】
また、本実施形態における各搬送経路14a〜14dについて、搬送経路上に被搬送物質が満たされた場合の被搬送物質の体積が、この搬送経路上を伝搬する弾性波によって搬送可能な被搬送物質の体積以下となるよう、各搬送経路14a〜14dの長さ(搬送経路に弾性波を伝搬させるための搬送電極から該搬送経路と次の搬送経路との合流点までの距離)を設定すると良い。これによれば、搬送経路上が被搬送物質に満たされてもその被搬送物質を確実に次の搬送経路上に搬送することができるため、供給エリア16に連続的に被搬送物質を供給した場合であっても、供給された被搬送物質を連続的に搬送することが可能となる。例えば被搬送物質を液体とし、この液体を供給エリア16に連続的に(間欠的にではなく)供給した場合には、各搬送経路14a〜14d上から液体が溢れることなく、流れるように各搬送経路14a〜14d上を搬送させることが可能となる。
【0026】
(他の実施形態)
ところで、複数の搬送経路上を送り渡しながら被搬送物質を搬送する構成の搬送システムとしては、例えば図3のような構成でも良い。図3の搬送システムでは、第一〜第三の搬送経路14a〜14cが直線的に連結して1本の直線的な搬送経路(以下、主搬送経路14という)を構成しており、この主搬送経路14の両側には、搬送方向に沿って側壁18が備えられている。また、主搬送経路14の一方側には、この主搬送経路14を構成する第一〜第三の搬送経路14a〜14cにそれぞれ対応する第一〜第三の搬送電極12a〜12cが、搬送方向に沿って側壁18の外側に備えられている。ここで、第一〜第三の搬送電極12a〜12cは、対応する第一〜第三の搬送経路14a〜14c上の被搬送物質に対して、搬送方向の上流側から斜めに入射するよう弾性波を伝搬させるべく配置されている。また、第一の搬送経路14a上には、被搬送物質を第一の搬送経路14a上に供給する供給エリア16が設けられている。さらに、供給エリア16の搬送方向上流に、主搬送経路14上に弾性波を伝搬させるための補助用搬送電極20を備えている。
【0027】
そして、このような構成の搬送システムにおいて、供給エリア16に被搬送物質を供給して第一の搬送電極12a及び補助用搬送電極20に高周波信号を入力すると、この第一の搬送電極12a及び補助用搬送電極20から伝搬される弾性波の入射により、被搬送物質が供給エリア16から第二の搬送経路14bに向かって側壁18に沿いながら第一の搬送経路14a上を搬送され、第二の搬送経路14b上に送り渡される。続いて被搬送物質が第二の搬送経路14b上に送り渡され、第二の搬送電極12b及び補助用搬送電極20に高周波信号を入力すると、第二の搬送電極12b及び補助用搬送電極20から伝搬される弾性波の入射により、第一の搬送経路14a上から送り渡された被搬送物質は、第一の搬送経路14aとの合流地点から第三の搬送経路14cに向かって側壁18に沿いながら第二の搬送経路14b上を搬送され、第三の搬送経路14c上に送り渡される。
【0028】
以上のように、図3のような構成の搬送システムにおいても、一の搬送経路が搬送方向下流側において次の搬送経路に合流するといった態様で複数の搬送経路が連続して形成されている。従って、このような複数の搬送経路上を送り渡しながら被搬送物質を搬送する構成によれば、搬送電極(搬送経路)の数を増加させることにより、より長い距離を搬送することができるようになる。こうして、搬送電極(搬送経路)の数、及び搬送電極の配置を適宜調整することで、被搬送物質を所望の搬送距離、搬送することが可能となる。尚、図3における補助用搬送電極20は必ずしも設ける必要はなく、供給エリア16に供給された被搬送物質を第一の搬送電極12aからの弾性波のみにより第一の搬送経路14a上で搬送して第二の搬送経路14b上に送り渡し、送り渡された被搬送物質を第二の搬送電極12bからの弾性波のみにより第二の搬送経路14b上で搬送して第三の搬送経路14c上に送り渡すこともできる。
【0029】
また、被搬送物質の搬送中に供給エリア16に新たな被搬送物質を供給することで、複数の被搬送物質の搬送を同時に行うことができる。例えば、被搬送物質を第一の搬送経路14a上から第二の搬送経路14b上に送り渡したときに新たな被搬送物質を供給エリア16に供給し、第一及び第二の搬送電極12a,12bに高周波信号を入力することで、一番目の被搬送物質は第二の搬送経路14b上で、二番目の被搬送物質は第一の搬送経路14a上で、同時に搬送される。このように、図3のような構成によっても、複数の被搬送物質を同時に搬送することができ、迅速且つ効率的な被搬送物質の搬送が可能となる。
【0030】
尚、図3の搬送システムでは、主搬送経路14の両側に側壁18が搬送方向に沿って備えられているが、複数の搬送電極が配置された主搬送経路14の一方側とは異なる他方側にのみ、側壁18を備えておいても良い。また図3では、一つの弾性波発生手段には一つの搬送電極が含まれる構成となっているが、これに限定されるものではなく、例えば図4のように一つの弾性波発生手段に複数の搬送電極(図4では、各弾性波発生手段12a,12bに2個の搬送電極)が含まれ、一つの弾性波発生手段から複数の弾性波が伝搬され、これらの弾性波によって被搬送物質が搬送されるようにしても良い。
【0031】
ところで、図3や図4のように主搬送経路14の一方側にのみならず、図5のように主搬送経路14の両側に、搬送経路上の被搬送物質に対して搬送方向の上流側から斜めに入射するよう搬送電極を配置しても良い。図5の搬送システムにおいて、第一〜第三の搬送経路14a〜14c上の被搬送物質に対して搬送用の弾性波を伝搬させる第一〜第三の弾性波発生手段12a〜12cは、各搬送経路14a〜14c上の被搬送物質に対して搬送方向上流側の異なる2方向(図5では主搬送経路14の両側)から斜めに入射するよう弾性波をそれぞれ伝搬させる一対の搬送電極により構成されている。また、この一対の電極は、各電極から伝搬される2種類の弾性波が同時に被搬送物質に入射するよう配置される必要がある。
【0032】
そして、図5のような構成の搬送システムにおいて、供給エリア16に被搬送物質を供給して第一の弾性波発生手段12aの各搬送電極に高周波信号を入力すると、この第一の弾性波発生手段12aから伝搬される2種類の弾性波の入射により、被搬送物質は、この2種類の弾性波の伝搬方向の合成方向(図5では、主搬送経路14における搬送方向)に搬送される。そして、被搬送物質が供給エリア16から第二の搬送経路14bに向かって第一の搬送経路14a上を搬送され、第二の搬送経路14b上に送り渡される。続いて被搬送物質が第二の搬送経路14b上に送り渡され、第一の弾性波発生手段12aと同様の構成である第二の弾性波発生手段12bの各搬送電極に高周波信号を入力すると、この第二の弾性波発生手段12bから伝搬される2種類の弾性波の入射により、第一の搬送経路14a上から送り渡された被搬送物質は、第三の搬送経路14cに向かって第二の搬送経路14b上を搬送され、第三の搬送経路14c上に送り渡される。
【0033】
以上のように、図5のような構成の搬送システムにおいても、一の搬送経路が搬送方向下流側において次の搬送経路に合流するといった態様で複数の搬送経路14a,14b,14cが連続して形成されている。従って、弾性波発生手段(搬送経路)の数を増加させることにより、より長い距離を搬送することができるようになる。すなわち、弾性波発生手段(搬送経路)の数、及び弾性波発生手段の配置を適宜調整することで、被搬送物質を所望の搬送距離、搬送することが可能となる。
【0034】
また、被搬送物質の搬送中に供給エリア16に新たな被搬送物質を供給することで、複数の被搬送物質の搬送を同時に行うことができる。例えば、被搬送物質を第一の搬送経路14a上から第二の搬送経路14b上に送り渡したときに新たな被搬送物質を供給エリア16に供給し、第一及び第二の弾性波発生手段12a,12bにおける搬送電極に高周波信号を入力することで、一番目の被搬送物質は第二の搬送経路14b上で、二番目の被搬送物質は第一の搬送経路14a上で、同時に搬送される。このように、図5のような構成によっても、複数の被搬送物質を同時に搬送することができ、迅速且つ効率的な被搬送物質の搬送が可能となる。
【0035】
尚、図5の搬送システムでは、図3や図4のように側壁18を備えることなく主搬送経路14上での搬送を行っているが、主搬送経路14の一方側あるいは両側に側壁18を備えても良い。また図5において、一つの弾性波発生手段は、主搬送経路14を挟む二つの搬送電極による一対の搬送電極から成るが、これに限定されるものではなく、一つの弾性波発生手段に複数対の搬送電極が含まれ、これら搬送電極から弾性波が伝搬されることで被搬送物質が搬送されるようにしても良い。例えば図6のように、複数対(図6では3対)の搬送電極から弾性波が伝搬されることで、一つの被搬送物質が搬送されるようになっていても良い。さらに、供給エリア16の搬送方向上流に、図3と同様の補助用搬送電極20を備えておき、この弾性波を、主搬送経路14に沿って配置された複数の搬送電極からの弾性波と合わせて、被搬送物質の搬送に利用しても良い。
【0036】
ところで、図3から図6に示す搬送システムでは、弾性波発生手段として電極のみを用いているが、これに替えて例えば図7のような反射器を用いた弾性波発生手段を利用することもできる。図7の弾性波発生手段12aは、基板表面上に弾性波を励振する電極121aと、この電極121aから伝搬してきた弾性波を反射する反射器122aと、を有している。この弾性波発生手段12aにおける電極121a及び反射器122aは、反射器122aによって反射された弾性波の伝搬を利用して主搬送経路14上における被搬送物質の搬送を行うべく、基板上に配置される。そして以上のような構成により、主搬送経路14上の被搬送物質は、弾性波発生手段12aにおける電極121aから伝搬し反射器122aで反射した反射弾性波によって、主搬送経路14上を搬送されることとなる。
【0037】
ここで、図7の弾性波発生手段12aにおける電極121aからの弾性波の伝搬方向を、基板表面に直交する方向に基板表面を変位させる弾性波(例えばレイリー波)を伝搬させるのに好適な伝搬方向にすると良い。また、反射器122aによって反射された弾性波の伝搬方向は、反射器122aの設定により適宜設定可能である。さらに、反射器の個数は図7のように1個に限定されるものではなく、電極から伝搬してきた弾性波が複数の反射器によって次々に反射され、最後に反射された弾性波によって主搬送経路14上における被搬送物質の搬送を行う構成としても良い。
【0038】
また、上記の図3から図6のような構成の搬送システムや、これに図7の弾性波発生手段を利用した搬送システムによれば、搬送経路の数及び搬送電極の配置を適宜調整することで、被搬送物質を所望の搬送距離、搬送することができ、また複数の被搬送物質の同時搬送により迅速且つ効率的な被搬送物質の搬送が可能となるが、搬送電極の配置の仕方によっては、上記以外の効果を得ることもできる。
【0039】
例えば図4や図5に示すように、一つの弾性波発生手段に複数の搬送電極を含み、搬送経路上の被搬送物質に対して一度に複数の弾性波を入射させて搬送を行う構成にすれば、図1や図2のように搬送経路上の被搬送物質に対して一度に一個の弾性波を入射させて搬送を行う場合に比して、被搬送物質内に放射される弾性波のエネルギが多くなる。すなわち、一つの弾性波発生手段からの一度の弾性波入射により搬送可能な被搬送物質の量が多くなる。従って、一度に搬送可能な被搬送物質の量が増えるため、従来に比して大量搬送を効率的に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る搬送システムの構成を示す図である。
【図2】図1に示す搬送システムの構成の応用例を示す図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係る搬送システムの構成を示す図である。
【図4】図3に示す搬送システムの構成の応用例を示す図である。
【図5】図3に示す搬送システムの構成の更なる応用例を示す図である。
【図6】図5に示す搬送システムの構成の応用例を示す図である。
【図7】図5及び図6に示す搬送システムの構成の応用例を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
10 基板、12a〜12d 弾性波発生手段(搬送電極)、14 主搬送経路、14a〜14d 搬送経路、16 供給エリア、18 側壁、20 補助用搬送電極、121a,121b 電極、122a,122b 反射器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面上に、被搬送物質を搬送するための弾性波を励振する電極を含む弾性波発生手段と、弾性波発生手段からの弾性波の伝搬により被搬送物質が搬送される搬送経路と、を有する搬送システムであって、
第一の搬送経路と、
該第一の搬送経路の搬送方向下流側と合流する第二の搬送経路と、
第一の搬送経路上に供給された被搬送物質を搬送し、第二の搬送経路上に送り渡すための弾性波を発生させる第一の弾性波発生手段と、
第一の搬送経路上から送り渡された被搬送物質を第二の搬送経路上で搬送するための弾性波を発生させる第二の弾性波発生手段と、
を有することを特徴とする搬送システム。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送システムにおいて、
第一または第二の弾性波発生手段は、弾性波を励振する電極と、該電極からの弾性波を反射する反射器と、を含み、
第一または第二の搬送経路上の被搬送物質が、前記反射器により反射された弾性波によって搬送される
ことを特徴とする搬送システム。
【請求項3】
請求項2に記載の搬送システムにおいて、
第一の弾性波発生手段における電極からの弾性波の伝搬方向と、第二の弾性波発生手段における電極からの弾性波の伝搬方向とが平行である
ことを特徴とする搬送システム。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一つに記載の搬送システムにおいて、
第一の搬送経路は、該第一の搬送経路上に被搬送物質が満たされた場合における被搬送物質の体積が、第一の弾性波発生手段からの弾性波によって搬送可能な被搬送物質の体積以下となるよう、第一の搬送経路の長さが設定されている
ことを特徴とする搬送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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