説明

搬送システム

【課題】所望の搬送距離だけ所望量の被搬送物質を効率的に搬送可能な搬送システムを提供する。
【解決手段】弾性波発生手段12aは、主搬送経路14上の被搬送物質に対して、搬送方向の上流側の異なる2方向から斜めに入射する2種類の弾性波を発生させるものであり、主搬送経路14上の被搬送物質は、弾性波発生手段12aから入射される2種類の弾性波により、主搬送経路14上で搬送される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板表面上に発生させた弾性波の伝搬を利用して、被搬送物質を搬送する搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、弾性波の伝搬を利用して物体を搬送する装置として、例えば下記特許文献1に記載の装置がある。この装置は、レイリーモード弾性波を発生する圧電材料及びカット面からなる圧電基板と、圧電基板表面上に、レイリーモード弾性波を励振させる入力用電極と、を含む構成を有している。そして、入力用電極からの弾性表面波が伝搬する伝搬経路上に液体を供給し、電気信号を入力用電極に加えて圧電基板より弾性波(レイリー波)を励振させると、基板上を伝搬して液体中に入った弾性波は、伝搬面と液体の界面を伝搬しながら液体中に縦波を放射するため、この放射を受けた液体が、放射エネルギによって弾性波の進行方向に流動する。このような原理により、下記特許文献1に記載の装置において、被搬送物質として例えば液体を、弾性波を用いて搬送することを可能としている。
【0003】
【特許文献1】特開平10−327590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来技術のように弾性波の伝搬を利用して被搬送物質の搬送を行う場合、弾性波が被搬送物質中に入射すると、弾性波から被搬送物質内に縦波が放射されるため、この放射エネルギの分だけ弾性波のエネルギが減少し、弾性波は伝搬するにつれて減衰する。このため、所定量の被搬送物質を搬送できる距離には限界があり、弾性波を利用してその限界距離以上の距離を搬送することができない。また、弾性波エネルギの減少により弾性波が伝搬するにつれて減衰することから、一個の弾性波によっては所定量以上の被搬送物質を搬送できない。
【0005】
本発明の主な目的は、所望の搬送距離だけ所望量の被搬送物質を効率的に搬送可能な搬送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、基板表面上に、被搬送物質を搬送するための弾性波を励振する電極を含む弾性波発生手段と、弾性波発生手段からの弾性波の伝搬により被搬送物質が搬送される搬送経路と、を有する搬送システムであって、第一の搬送経路と、該第一の搬送経路の搬送方向下流側と合流する第二の搬送経路と、第一の搬送経路上に供給された被搬送物質を搬送して第二の搬送経路上に送り渡すための弾性波を発生させる第一の弾性波発生手段と、第一の搬送経路上から送り渡された被搬送物質を第二の搬送経路上で搬送するための弾性波を発生させる第二の弾性波発生手段と、第一または第二の搬送経路の一方側に、搬送方向に沿って設けられた側壁と、を有し、第一または第二の弾性波発生手段は、第一または第二の搬送経路の他方側から前記側壁に対し、搬送方向の上流側から斜めに入射する弾性波を発生させ、第一または第二の搬送経路上の被搬送物質は、第一または第二の弾性波発生手段からの弾性波により、前記側壁に沿って搬送されることを特徴とする。
【0007】
また本発明は、基板表面上に、被搬送物質を搬送するための弾性波を励振する電極を含む弾性波発生手段と、弾性波発生手段からの弾性波の伝搬により被搬送物質が搬送される搬送経路と、を有する搬送システムであって、第一の搬送経路と、該第一の搬送経路の搬送方向下流側と合流する第二の搬送経路と、第一の搬送経路上に供給された被搬送物質を搬送し、第二の搬送経路上に送り渡すための弾性波を発生させる第一の弾性波発生手段と、第一の搬送経路上から送り渡された被搬送物質を第二の搬送経路上で搬送するための弾性波を発生させる第二の弾性波発生手段と、を有し、第一または第二の弾性波発生手段は、第一または第二の搬送経路上の被搬送物質に対して、搬送方向の上流側の異なる2方向から斜めに入射する2種類の弾性波を発生させ、第一または第二の搬送経路上の被搬送物質は、第一または第二の弾性波発生手段から入射される2種類の弾性波により、第一または第二の搬送経路上で搬送されることを特徴とする。
【0008】
ここで、上記構成の各搬送システムにおいて、第一または第二の弾性波発生手段は、弾性波を励振する電極と、該電極からの弾性波を反射する反射器と、を含み、第一または第二の搬送経路上の被搬送物質は、前記反射器で反射された弾性波によって搬送される構成とすると良い。また、この搬送システムにおいて、第一の弾性波発生手段における電極からの弾性波の伝搬方向と、第二の弾性波発生手段における電極からの弾性波の伝搬方向とが平行であることが好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の搬送システムによれば、第一の搬送経路上における被搬送物質の搬送を行った後、第一の搬送経路の搬送方向下流側と合流する第二の搬送経路に被搬送物質を送り渡し、引き続いて第二の搬送経路上における被搬送物質の搬送を行う構成にしたので、このような構成を所望の搬送距離に応じて適用することで、弾性波を利用して、所望の搬送距離だけ被搬送物質を搬送することが可能となる。また、各搬送経路上ごとでの被搬送物質の同時搬送や、被搬送物質への複数の弾性波の入射によって、所望量の被搬送物質を効率的に搬送することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
まず、本発明の第一の実施形態における搬送システムについて、図1を参照して説明する。図1の搬送システムは、例えば水晶基板や圧電基板(例えばLiNbO基板やLiTaO基板等)またはガラスやシリコン等の基板表面に圧電薄膜(例えばZnOやAlN等)を有する基板といった基板10の表面上に、弾性波を発生(励振)する弾性波発生手段を有する構成となっている。
【0011】
図1の搬送システムにおける弾性波発生手段は、高周波信号を発生させる駆動回路(図示せず)に接続され、この駆動回路からの高周波信号の入力によって、被搬送物質を搬送するための弾性波を励振する櫛型電極(搬送電極)である。この搬送システムの基板10上には、一例として3個の搬送電極(第一〜第三の搬送電極)12a〜12cが設けられている。また、基板10上には、搬送電極からの弾性波の伝搬によって被搬送物質が搬送される第一〜第三の搬送経路14a〜14cが形成される。各搬送経路14a〜14cは、第一の搬送経路14aが搬送方向下流側において第二の搬送経路14bに合流し、第二の搬送経路14bが搬送方向下流側において第三の搬送経路14cに合流するように形成されており、本実施形態では、図1のように第一〜第三の搬送経路14a〜14cが直線的に連結した1本の直線的な搬送経路(以下、主搬送経路14という)が、基板10の表面上に形成されている。
【0012】
図1の搬送システムでは、主搬送経路14の両側に、搬送方向に沿って側壁18が備えられている。そして第一〜第三の搬送電極12a〜12cが、この主搬送経路14を構成する第一〜第三の搬送経路14a〜14cにそれぞれ対応するよう、主搬送経路14の一方側かつ側壁18の外側に、搬送方向に沿って備えられている。ここで、第一〜第三の搬送電極12a〜12cは、対応する第一〜第三の搬送経路14a〜14c上の被搬送物質に対して、搬送方向の上流側から斜めに入射するよう弾性波を伝搬させるべく配置されている。また、第一の搬送経路14a上には、被搬送物質を第一の搬送経路14a上に供給する供給エリア16が設けられている。さらに、供給エリア16の搬送方向上流に、主搬送経路14上に弾性波を伝搬させるための補助用搬送電極20を備えている。
【0013】
尚、搬送用の弾性波としては、基板表面に直交する方向に基板表面を変位させる弾性波(例えばレイリー波)が好適であり、水晶基板や圧電基板には、このような弾性波を伝搬させるのに好適なカット角及び伝搬方向が存在する。そこで、好適なカット角の基板を用い、好適な伝搬方向に弾性波が伝搬するよう、搬送電極を配置すると良い。また、好適な伝搬方向とは異なる方向に弾性波を利用して被搬送物質を伝搬するには、基板上に圧電薄膜を設け、この圧電薄膜上に励振させた弾性波により被搬送物質を搬送するように構成すれば良い。
【0014】
例えば図1の搬送システムでは、第一〜第三の搬送電極12a〜12cからの弾性波の伝搬方向が基板における弾性波の好適な伝搬方向と一致するよう第一〜第三の搬送電極12a〜12cを配置し、主搬送経路14上に圧電薄膜(図示せず)を設け、この圧電薄膜上に補助用搬送電極20を配置すると良い。
【0015】
次に、上記のような構成の搬送システムを利用した被搬送物質の搬送処理について説明する。まず、上記構成の搬送システムにおいて、供給エリア16に被搬送物質を供給して第一の搬送電極12a及び補助用搬送電極20に高周波信号を入力すると、この第一の搬送電極12a及び補助用搬送電極20から伝搬される弾性波の入射により、被搬送物質が供給エリア16から第二の搬送経路14bに向かって側壁18に沿いながら第一の搬送経路14a上を搬送され、第二の搬送経路14b上に送り渡される。
【0016】
続いて被搬送物質が第二の搬送経路14b上に送り渡されると、第二の搬送電極12b及び補助用搬送電極20に高周波信号を入力する。そして、この第二の搬送電極12b及び補助用搬送電極20から伝搬される弾性波の入射により、第一の搬送経路14a上から送り渡された被搬送物質は、第一の搬送経路14aとの合流地点から第三の搬送経路14cに向かって側壁18に沿いながら第二の搬送経路14b上を搬送される。
【0017】
こうして、第二の搬送経路14b上を搬送される被搬送物質は、上記と同様に、第二の搬送電極12b及び補助用搬送電極20からの弾性波によって第三の搬送経路14c上に送り渡され、続けて第三の搬送電極12c及び補助用搬送電極20からの弾性波の伝搬により、第三の搬送経路14c上を搬送されていく。
【0018】
以上のように、本実施形態における搬送システムでは、一の搬送経路が搬送方向下流側において次の搬送経路に合流するといった態様で複数の搬送経路が連続して形成されている。従って、このような複数の搬送経路上を送り渡しながら被搬送物質を搬送する構成によれば、搬送電極(搬送経路)の数を増加させることにより、より長い距離を搬送することができるようになる。すなわち、搬送電極(搬送経路)の数、及び搬送電極の配置を適宜調整することで、被搬送物質を所望の搬送距離、搬送することが可能となる。
【0019】
尚、図1における補助用搬送電極20は必ずしも設ける必要はなく、供給エリア16に供給された被搬送物質を第一の搬送電極12aからの弾性波のみにより第一の搬送経路14a上で搬送して第二の搬送経路14b上に送り渡し、送り渡された被搬送物質を第二の搬送電極12bからの弾性波のみにより第二の搬送経路14b上で搬送して第三の搬送経路14c上に送り渡すこともできる。
【0020】
また、上記のような構成によれば、被搬送物質の搬送中に供給エリア16に新たな被搬送物質を供給することで、複数の被搬送物質の搬送を同時に行うことができる。例えば、被搬送物質を第一の搬送経路14a上から第二の搬送経路14b上に送り渡したときに新たな被搬送物質を供給エリア16に供給し、第一及び第二の搬送電極12a,12bに高周波信号を入力することで、一番目の被搬送物質は第二の搬送経路14b上で、二番目の被搬送物質は第一の搬送経路14a上で、同時に搬送される。このように、図1のような構成によって複数の被搬送物質を同時に搬送することができるため、効率的に被搬送物質を大量に搬送することが可能となる。すなわち、所望量の被搬送物質を効率的に搬送することが可能となる。
【0021】
尚、図1の搬送システムでは、主搬送経路14の両側に側壁18が搬送方向に沿って備えられているが、複数の搬送電極が配置された主搬送経路14の一方側とは異なる他方側にのみ、側壁18を備えておいても良い。また図1では、一つの弾性波発生手段には一つの搬送電極が含まれる構成となっているが、これに限定されるものではなく、例えば図2のように一つの弾性波発生手段に複数の搬送電極(図2では、各弾性波発生手段12a,12bに2個の搬送電極)が含まれ、一つの弾性波発生手段から複数の弾性波が伝搬され、これらの弾性波によって被搬送物質が搬送されるようにしても良い。
【0022】
ところで、図1や図2のように主搬送経路14の一方側にのみならず、図3のように主搬送経路14の両側に、搬送経路上の被搬送物質に対して搬送方向の上流側から斜めに入射するよう搬送電極を配置しても良い。図3の搬送システムにおいて、第一〜第三の搬送経路14a〜14c上の被搬送物質に対して搬送用の弾性波を伝搬させる第一〜第三の弾性波発生手段12a〜12cは、各搬送経路14a〜14c上の被搬送物質に対して搬送方向上流側の異なる2方向(図3では主搬送経路14の両側)から斜めに入射するよう弾性波をそれぞれ伝搬させる一対の搬送電極により構成されている。また、この一対の電極は、各電極から伝搬される2種類の弾性波が同時に被搬送物質に入射するよう配置される必要がある。
【0023】
そして、図3のような構成の搬送システムにおいて、供給エリア16に被搬送物質を供給して第一の弾性波発生手段12aの各搬送電極に高周波信号を入力すると、この第一の弾性波発生手段12aから伝搬される2種類の弾性波の入射により、被搬送物質は、この2種類の弾性波の伝搬方向の合成方向(図3では、主搬送経路14における搬送方向)に搬送される。そして、被搬送物質が供給エリア16から第二の搬送経路14bに向かって第一の搬送経路14a上を搬送され、第二の搬送経路14b上に送り渡される。続いて被搬送物質が第二の搬送経路14b上に送り渡され、第一の弾性波発生手段12aと同様の構成である第二の弾性波発生手段12bの各搬送電極に高周波信号を入力すると、この第二の弾性波発生手段12bから伝搬される2種類の弾性波の入射により、第一の搬送経路14a上から送り渡された被搬送物質は、第三の搬送経路14cに向かって第二の搬送経路14b上を搬送され、第三の搬送経路14c上に送り渡される。
【0024】
以上のように、図3のような構成の搬送システムにおいても、一の搬送経路が搬送方向下流側において次の搬送経路に合流するといった態様で複数の搬送経路が連続して形成されている。従って、弾性波発生手段(搬送経路)の数を増加させることにより、より長い距離を搬送することができるようになる。すなわち、弾性波発生手段(搬送経路)の数、及び弾性波発生手段の配置を適宜調整することで、被搬送物質を所望の搬送距離、搬送することが可能となる。
【0025】
また、被搬送物質の搬送中に供給エリア16に新たな被搬送物質を供給することで、複数の被搬送物質の搬送を同時に行うことができる。例えば、被搬送物質を第一の搬送経路14a上から第二の搬送経路14b上に送り渡したときに新たな被搬送物質を供給エリア16に供給し、第一及び第二の弾性波発生手段12a,12bにおける搬送電極に高周波信号を入力することで、一番目の被搬送物質は第二の搬送経路14b上で、二番目の被搬送物質は第一の搬送経路14a上で、同時に搬送される。このように、図3のような構成によっても複数の被搬送物質を同時に搬送することができるため、効率的に被搬送物質を大量に搬送することが可能となる。すなわち、所望量の被搬送物質を効率的に搬送することが可能となる。
【0026】
尚、図3の搬送システムでは、図1や図2のように側壁18を備えることなく主搬送経路14上での搬送を行っているが、主搬送経路14の一方側あるいは両側に側壁18を備えても良い。また図3において、一つの弾性波発生手段は、主搬送経路14を挟む二つの搬送電極による一対の搬送電極から成るが、これに限定されるものではなく、一つの弾性波発生手段に複数対の搬送電極が含まれ、これら搬送電極から弾性波が伝搬されることで被搬送物質が搬送されるようにしても良い。例えば図4のように、複数対(図4では3対)の搬送電極から弾性波が伝搬されることで、一つの被搬送物質が搬送されるようになっていても良い。さらに、供給エリア16の搬送方向上流に、図1と同様の補助用搬送電極20を備えておき、この弾性波を、主搬送経路14に沿って配置された複数の搬送電極からの弾性波と合わせて、被搬送物質の搬送に利用しても良い。ここで、搬送システムを図4のような構成にすると、主搬送経路14の両側から伝搬される弾性波によって、被搬送物質を主搬送経路14上に閉じ込めることができる(被搬送物質が主搬送経路14上からはみ出すのを抑制できる)ため、側壁を備えることなく被搬送物質の搬送を行えるという利点がある。特に被搬送物質が液体である場合には、図4のような構成は好適である。
【0027】
ところで、図1から図4に示す搬送システムでは、弾性波発生手段として電極のみを用いているが、これに替えて例えば図5のような反射器を用いた弾性波発生手段を利用することもできる。図5の弾性波発生手段12aは、基板表面上に弾性波を励振する電極121aと、この電極121aから伝搬してきた弾性波を反射する反射器122aと、を有している。この弾性波発生手段12aにおける電極121a及び反射器122aは、反射器122aによって反射された弾性波の伝搬を利用して主搬送経路14上における被搬送物質の搬送を行うべく、基板上に配置される。そして以上のような構成により、主搬送経路14上の被搬送物質は、弾性波発生手段12aにおける電極121aから伝搬し反射器122aで反射した反射弾性波によって、主搬送経路14上を搬送されることとなる。
【0028】
尚、図5では、基板表面上に弾性波を励振する電極121aと、この電極121aから伝搬してきた弾性波を反射する反射器122aとの対を主搬送経路14の両側にそれぞれ備えているが、図1などの搬送システムに適用する場合には、この対を弾性波発生手段として主搬送経路14の一方側に備えればよい。
【0029】
ここで、図5の弾性波発生手段12aにおける電極121aからの弾性波の伝搬方向を、基板表面に直交する方向に基板表面を変位させる弾性波(例えばレイリー波)を伝搬させるのに好適な伝搬方向にすると良い。また、反射器122aによって反射された弾性波の伝搬方向は、反射器122aの設定により適宜設定可能である。さらに、反射器の個数は図5のように1個に限定されるものではなく、電極から伝搬してきた弾性波が複数の反射器によって次々に反射され、最後に反射された弾性波によって主搬送経路14上における被搬送物質の搬送を行う構成としても良い。
【0030】
また、上記の搬送システムによれば、搬送経路の数及び搬送電極の配置を適宜調整することで、被搬送物質を所望の搬送距離、搬送することができ、また複数の被搬送物質の同時搬送により迅速且つ効率的な被搬送物質の搬送が可能となるが、搬送電極の配置の仕方によっては、上記以外の効果を得ることもできる。
【0031】
例えば図2から図4に示すように一つの弾性波発生手段に複数の搬送電極を含み、搬送経路上の被搬送物質に対して一度に複数の弾性波を入射させて搬送を行う構成や、図5に示すように反射器によって被搬送物質に対し一度に複数の弾性波を入射させて搬送を行う構成にすれば、従来のように搬送経路上の被搬送物質に対して一度に一個の弾性波を入射させて搬送を行う場合に比して、被搬送物質内に放射される弾性波のエネルギが多くなる。すなわち、一つの弾性波発生手段からの一度の弾性波入射により搬送可能な被搬送物質の量が多くなる。従って、一度に搬送可能な被搬送物質の量が増えるため、従来に比して大量搬送を一層効率的に行うことが可能となる。図1の搬送システムにおいても、搬送電極と補助用搬送電極とを用いる場合には、一度に複数の弾性波を入射させて搬送を行う構成となっているため、上記と同様に、一度に搬送可能な被搬送物質の量が増え、従来に比して大量搬送を一層効率的に行うことが可能となる。このように、上記各構成の搬送システムによれば、所望量の被搬送物質を効率的に搬送することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る搬送システムの構成を示す図である。
【図2】図1に示す搬送システムの構成の応用例を示す図である。
【図3】図1に示す搬送システムの構成の更なる応用例を示す図である。
【図4】図3に示す搬送システムの構成の応用例を示す図である。
【図5】図3及び図4に示す搬送システムの構成の応用例を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
10 基板、12a〜12c 弾性波発生手段(搬送電極)、14 主搬送経路、14a〜14c 搬送経路、16 供給エリア、18 側壁、20 補助用搬送電極、121a 電極、122a 反射器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面上に、被搬送物質を搬送するための弾性波を励振する電極を含む弾性波発生手段と、弾性波発生手段からの弾性波の伝搬により被搬送物質が搬送される搬送経路と、を有する搬送システムであって、
第一の搬送経路と、
該第一の搬送経路の搬送方向下流側と合流する第二の搬送経路と、
第一の搬送経路上に供給された被搬送物質を搬送して第二の搬送経路上に送り渡すための弾性波を発生させる第一の弾性波発生手段と、
第一の搬送経路上から送り渡された被搬送物質を第二の搬送経路上で搬送するための弾性波を発生させる第二の弾性波発生手段と、
第一または第二の搬送経路の一方側に、搬送方向に沿って設けられた側壁と、
を有し、
第一または第二の弾性波発生手段は、第一または第二の搬送経路の他方側から前記側壁に対し、搬送方向の上流側から斜めに入射する弾性波を発生させ、
第一または第二の搬送経路上の被搬送物質は、第一または第二の弾性波発生手段からの弾性波により、前記側壁に沿って搬送される
ことを特徴とする搬送システム。
【請求項2】
基板表面上に、被搬送物質を搬送するための弾性波を励振する電極を含む弾性波発生手段と、弾性波発生手段からの弾性波の伝搬により被搬送物質が搬送される搬送経路と、を有する搬送システムであって、
第一の搬送経路と、
該第一の搬送経路の搬送方向下流側と合流する第二の搬送経路と、
第一の搬送経路上に供給された被搬送物質を搬送し、第二の搬送経路上に送り渡すための弾性波を発生させる第一の弾性波発生手段と、
第一の搬送経路上から送り渡された被搬送物質を第二の搬送経路上で搬送するための弾性波を発生させる第二の弾性波発生手段と、
を有し、
第一または第二の弾性波発生手段は、第一または第二の搬送経路上の被搬送物質に対して、搬送方向の上流側の異なる2方向から斜めに入射する2種類の弾性波を発生させ、
第一または第二の搬送経路上の被搬送物質は、第一または第二の弾性波発生手段から入射される2種類の弾性波により、第一または第二の搬送経路上で搬送されることを特徴とする搬送システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の搬送システムにおいて、
第一または第二の弾性波発生手段は、弾性波を励振する電極と、該電極からの弾性波を反射する反射器と、を含み、
第一または第二の搬送経路上の被搬送物質は、前記反射器で反射された弾性波によって搬送される
ことを特徴とする搬送システム。
【請求項4】
請求項3に記載の搬送システムにおいて、
第一の弾性波発生手段における電極からの弾性波の伝搬方向と、第二の弾性波発生手段における電極からの弾性波の伝搬方向とが平行である
ことを特徴とする搬送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−248752(P2006−248752A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−70953(P2005−70953)
【出願日】平成17年3月14日(2005.3.14)
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】