説明

搬送システム

【課題】天井搬送車の走行経路内への障害物の侵入を防ぐことによって、搬送車の走行をスムーズにし、搬送効率を上げる。
【解決手段】物品を上下方向に昇降させるホイスト7と走行部2とを備えた搬送車と、前記走行部2を内部に収納し、天井から吊下げられる軌道12とを備えた搬送システムであって、軌道12と平行に配置され、障害物の軌道12への侵入を防ぐカバー13を、ホイスト7による物品昇降を妨げないように軌道12の下部に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床面の上方に設けた軌道に沿って走行する天井搬送車に関し、特に搬送車衝突防止のための搬送システムの構築に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天井に敷設されたレールの内側に走行部が配置され、物品載置部がレールの外側に設けられた天井搬送車が知られている(特許文献1参照)。この搬送車は、通常は作業者と接触することがない高さ位置を走行するように配置されると共に、搬送車の走行経路に侵入しようとする障害物を検出して停止する安全装置が設けられている。ここで走行経路とは、搬送車の通過する空間全体を指しており、走行部の通過する空間がレールで被覆されているのに対し、物品載置部の通過する空間は外部に露出した状態にある。
そして、この安全装置が作動する場合としては、作業者が走行経路を横切るような場合だけでなく、物品の処理装置の交換時などに、処理装置等の障害物を、走行経路を横切って運搬するような場合がある。
また、このような安全装置として、反射式光センサ等の障害物検知センサが搬送車に搭載される。
【特許文献1】実開昭60−161664号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
障害物が急に走行経路に侵入した場合には、たまたま搬送車の通過中であったり、侵入位置から離れた距離を搬送車が走行していたとしても制動が追いつかなかったりして、障害物に搬送車(物品載置部)が接触してしまう場合がある。このため、障害物が走行経路を横切る恐れがある場合は、搬送車を稼動させないようにしているが、搬送効率が落ちるという問題があった。
つまり、解決しようとする問題点は、搬送車の走行経路(通過する空間)に外部に露出している部分があるため、走行経路内に障害物が侵入する恐れがあった点である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
即ち、請求項1においては、物品を上下方向に昇降させるホイストと走行部とを備えた搬送車と、前記走行部を内部に収納し、天井から吊下げられる軌道とを備えた搬送システムであって、軌道と平行に配置され、障害物の軌道への侵入を防ぐカバーを、ホイストによる物品昇降を妨げないように軌道の下部に設けたものである。
【0006】
請求項2においては、前記ホイストを左右方向に水平移動させる横移動手段を設け、該横移動手段による移動を妨げないように、前記カバーに開口部を設けたものである。
【0007】
請求項3においては、搬送車に障害物検出用の反射式光センサを設けると共に、前記カバーを、物品及び搬送車の左右両側面を覆うように設けて、該カバー内側面に乱反射防止加工を施したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0009】
請求項1においては、搬送車の走行経路の全体がカバーで被覆されるので、走行経路内に障害物が侵入することが防止される。この結果、走行経路内への障害物の侵入を恐れて、搬送車の稼動を停止させる必要がなく、搬送効率の低下も防止される。
【0010】
請求項2においては、上下方向のみならず側方に物品を移載する搬送車であっても、物品を移載することができる。
【0011】
請求項3においては、乱反射による誤検出を防ぐための偏光式センサを設ける必要がなく、曲線部でも利用可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の一実施例である搬送システムの構成について、図1から図5を用いて説明する。図1は軌道および搬送車を示す正面断面図、図2は搬送車を示す側面図、図3は搬送車を示す平面断面図、図4は軌道および搬送車を示す側面図、図5は左右一側面にのみカバーを設けた搬送車を示す正面断面図である。
【0013】
搬送システムは、搬送車1と、軌道12と、前記軌道12と平行に配置され、障害物の軌道12への侵入を防ぐカバー13・13とで構成される。
搬送車1は、図1、図2に示すように、上部に走行部2を設け、下部に物品支持装置3を設けており、走行部2と物品支持装置3とは、連結体6により連結される。
この搬送車1は、天井から吊り下げられる軌道12に沿って走行する。この軌道12に、搬送車1への給電に係る給電線ホルダ34と、前記カバー13とが固定されている。
そして、軌道12内に搬送車1の走行部2が収容され、左右のカバー13・13により物品支持装置3の左右が覆われる構成である。
【0014】
走行部2は、図3に示すように、中央のメインフレーム31と、該メインフレーム31の前後に位置する車輪支持部32・32とから構成される。車輪支持部32・32とメインフレーム31とは、回動軸33・33を介して連結されており、車輪支持部32・32がメインフレーム31に対して回動自在となっている。そして、軌道12に設けた曲線部を、搬送車1が走行可能となるようにしている。
また、走行部2の下方には、荷物を搭載できるように構成した物品支持装置3が設けられている。物品支持装置3は、連結体6を介して、走行部2に支持される。
【0015】
走行部2には、搬送車1の駆動手段として、図1に示すように、モータ16が設けられ、該モータ16は、前記メインフレーム31に取り付けられている。
また、モータ16のモータ軸と同軸に駆動車輪25が設けられており、モータ16の駆動により駆動車輪25が回転するようにしている。
【0016】
車輪支持部32は、走行方向から見た断面が、上側に開口する凹形状に形成されている。車輪支持部32の下部の左右両側には、左右方向の車軸を有する走行車輪23・23が配置されており、該車軸が車輪支持部32に固設されている。
走行車輪23は、前後の車輪支持部32の左右に、それぞれ配置され、走行部2全体では、前後左右に四輪の走行車輪23が設けられている。走行車輪23・23・・・は、軌道12に形成した走行面40・40(後述)に当接して、搬送車1を軌道12上に支持する。
【0017】
また、図1に示すように、連結体6の左右には、搬送車1への給電手段として、一対のピックアップユニット9・9が、それぞれ左右に設けられている。ピックアップユニット9はE字形状のコア15を備え、該コア15の開口部に、軌道12の下方に設けた給電線5・5を挿入可能としている。そして、給電線5・5を流れる交流電流から発生する磁場から、電磁誘導を利用して、コア15に設けたピックアップコイル17で電力を受電する。給電線5・5は、軌道12の下側に設けた給電線ホルダ34に支持される。
なお、搬送車1への給電手段としては、コアと給電線とによる非接触給電方式に限定されるものではない。
【0018】
前記搬送車1には、図4に示したように、先行搬送車1検出用の反射式光センサ19が設けられている。
前記センサ19は、搬送車1の前部に取り付けられ、先行する搬送車1までの距離を検出する。検出の原理は、発光部から投光した光の反射光を受光し、受光強度から距離を求めるものである。該センサ19にて、先行する搬送車1が近距離にあることを検出した場合には、後行する搬送車1は停止する。搬送車1の後面には、後方の搬送車1から投光された光を効率よく反射するための反射板が設けられている。
なお、本実施の形態では、搬送車1は走行経路に沿って前進のみして後進はしない構成としているため、先行する搬送車を検出できるように、搬送車1の前部にのみセンサ19を設けている。搬送車1を前後進する構成とした場合は、搬送車1の後部にも、センサ19を設けるものとする。
【0019】
軌道12は床面の上方に設けられ、搬送車1は軌道12に吊り下げられた状態で走行する。
軌道12は、軌道方向から見た断面が、下側に開口する凹形状に形成され、水平方向に延出する基部42と、基部42の両端より下方に延出する側壁41・41とからなる。また、側壁41・41の下端より、内側に向けて延出する水平部が形成され、該水平部の上面は、走行車輪23が当接する走行面40に形成されている。
基部42の左右中央部の下面は、駆動車輪25が当接する走行面42aに形成されている。
【0020】
また、車輪支持部32の上部の左右両側には、上下方向の車軸を有するガイド輪24・24が、左右それぞれに一対ずつ設けられている。左右のガイド輪24・24・・・は、軌道12に形成した側壁41・41に略接触状態として、搬送車1が軌道12に沿って、左右に位置ズレなく走行するようにしている。
【0021】
次に、物品支持装置3の構成について説明する。
物品支持装置3には、物品4を吊り下げるホイスト7と、ホイスト7を軌道方向に対し左右動可能とする横移動手段8とが設けられており、ホイスト7は、横移動手段8の下方に配置されている。前記物品支持装置3の周囲は、カバー13で覆われている。
【0022】
前記横移動手段8は、横移動レールと、横送り機構とで構成されており、ホイスト7は上部において該横移動レールに挟持されて、横送り機構の作動により該横移動レールに沿って移動する構成となっている。
【0023】
ホイスト7は、チャック機構10と、チャック機構10の昇降手段であるウインチ11とから構成される。ウインチ11の下方にチャック機構10が配置され、チャック機構10には図示せぬワイヤの先端が取り付けけられている。そして、ワイヤを巻取り・巻出しすることで、チャック機構10を昇降可能としている。
【0024】
物品4の上端部には、チャック機構10により掴んで物品4を支持するためのハンドル4aが設けられている。ハンドル4aは、水平方向より見て、T字状に形成されている。
【0025】
一方、前記チャック機構10は、T字状であるハンドル4aの水平延出部分を、支持可能に構成されている。そして、チャック機構10により物品4の上部に設けたハンドル4aを支持して、ウインチ11と横移動手段8の駆動により、物品4を最大限吊り上げて、カバー13内に収納する。なお、ウインチ11が、物品4を支持したチャック機構10を最上位置まで上昇させた状態が、物品支持装置3における物品4の収納状態である。
【0026】
なお、ホイスト7は、横移動手段8の駆動により、軌道12と直角な方向にも移動することができるので、軌道12の直下以外の位置でも移載することができる。
【0027】
次に、物品支持装置3を包囲するカバー13・13について、詳細に説明する。
カバー13・13は、軌道12下方において、軌道12と平行に配置され、搬送車1およびホイスト7で吊り上げた物品4を、搬送車1の左右側面で覆っている。前記カバー13・13は、軌道12の側壁41・41のそれぞれの下端より側壁41・41と同一平面になるように下方に延設されており、ホイスト7による物品4の昇降を妨げないように設けられている。カバー13・13を軌道12に設けることで、カバー13・13を天井から吊り下げるための部材が不要になり、容易に軌道12に沿ってカバー13・13を敷設することができる。また、カバー13・13を側壁41・41と同一平面となるように設けることで、カバー13・13と側壁41・41の継ぎ目で段差ができるのを防ぐことができ、クリーンルームに配置した場合に、天井からのダウンフローの流れを乱すのを抑えることができる。
【0028】
また、図1に示すように、カバー13には、該横移動手段8によるホイスト7の移動を妨げないように、横移動経路に向かって開かれた開口部21が設けられている。すなわち、移載する位置においては、適宜開口部21・21・・が設けられているので、該横移動手段8による物品支持装置3の移動経路が確立されており、物品4の移動をスムーズに行なうことができるのである。
【0029】
また、該カバー13の内側面には乱反射防止加工が施されている。すなわち、カバー13の内側面には、つや消しの黒色塗装が施されており、センサ19から投光される光が乱反射しないようにしている。
ここで、軌道12の側方には、物品4の加工処理に係る処理装置等の各種装置が配置されており、これらの各種装置の外殻に、センサ19から投光される光が反射して、その反射光が搬送車1のセンサ19に誤検出されることもある。
このように、カバー13を設けることで、投光が周辺の物体によって乱反射することによって生じる、センサ19の検出誤差を防止することができる。
【0030】
なお、反射式センサ19による検出は、走行路の直線部における先行搬送車1の検出等には有効であるが、走行路の曲線部においての先行搬送車1の検出は困難である。しかし走行路の曲線部において、カバー13内部にミラー等をもうけて、センサ19の投光及び反射光を屈折させることで、曲線部においての先行搬送車1の検出も可能となる。
【0031】
なお、前記カバー13は、搬送車1およびホイスト7で吊り上げた物品4の左右両側面を全て覆うものでなくても、例えば、一方が建物の壁に面している場合など、障害物の侵入の恐れのある左右一側にのみ設けるものであってもよい。図5に示したように、カバー13を搬送車1の左右一側方にのみ、すなわち、壁と反対側の作業者と接触する恐れのある側(高所作業の可能性のある側)にのみに設けても、搬送車1の走行時の安全性は確保することができる。また、板状体で形成されるカバーでなく、メッシュで形成されるカバーであってもよい。要は、搬送車1および搬送車1に支持される物品4の全体の通過する空間全体、つまり搬送車1の走行経路が、軌道12とカバー13とで、この走行経路内へ、障害物が侵入するのを防止できる構成であれば良い。
すなわち、カバー13を設けることで、カバー13内部の空間は他の空間から独立した空間となる。
また、本実施例におけるカバー13は、軌道12の下部に配置されているが、カバー13は天井から吊下げてもよく、カバー13の取り付け位置は限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】軌道および搬送車を示す正面断面図。
【図2】搬送車を示す側面図。
【図3】搬送車を示す平面断面図。
【図4】軌道および搬送車を示す側面図。
【図5】左右一側面にのみカバーを設けた搬送車を示す正面断面図。
【符号の説明】
【0033】
1 搬送車
2 走行部
3 物品支持装置
4 物品
7 ホイスト
8 横移動手段
10 チャック機構
11 ウインチ
12 軌道
13 カバー
19 センサ
21 開口部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を上下方向に昇降させるホイストと走行部とを備えた搬送車と、前記走行部を内部に収納し、天井から吊下げられる軌道とを備えた搬送システムであって、軌道と平行に配置され、障害物の軌道への侵入を防ぐカバーを、ホイストによる物品昇降を妨げないように軌道の下部に設けたことを特徴とする搬送システム。
【請求項2】
前記ホイストを左右方向に水平移動させる横移動手段を設け、該横移動手段による移動を妨げないように、前記カバーに開口部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の搬送システム。
【請求項3】
搬送車に障害物検出用の反射式光センサを設けると共に、前記カバーを、物品及び搬送車の左右両側面を覆うように設けて、該カバー内側面に乱反射防止加工を施したことを特徴とする請求項1に記載の搬送システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−196865(P2007−196865A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−18123(P2006−18123)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】