説明

搬送チェーン

【課題】リンクの交換作業の手間を省く。
【解決手段】搬送チェーン1を、多数のリンク2,2同士をピン等の枢着手段によって連結して構成する。リンク2を、長方形棒状のベース体3と、ベース体3の長手両端に設けられて、隣接するベース体3同士を枢着する枢着手段としての枢着孔4と、ベース体3の一側面を覆う形状に形成され、一側面にネジ止めによって着脱自在に固着され被搬送物と接触する金属製のプレート5と、を有して構成する。プレート5における被搬送物との接触面側に、搬送方向と交差するように、長手方向に対する45度方向、135度方向の2方向に沿って、複数本のV字状溝10を全体に刻設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定位置へ被搬送物を搬送する搬送チェーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加工装置における所定位置に、被加工物を被搬送物として送り込む搬送チェーンとしては、例えば特許文献1のものが知られている。この搬送チェーンは、多数のリンクを枢着してなり、リンク上面の接触面に硬質物質で硬化層が形成されてなるものである。この搬送チェーンによれば、被搬送物との接触面に滑り止めゴム等を用いた場合に比較して、接触面を摩耗し難くすることができるとともに、接触面の熱膨張による寸法変化を抑えることができ、高い加工精度を長期間維持できる。
【0003】
【特許文献1】特開2004−168446号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、硬化層を形成したとはいえ、被搬送物との繰り返し接触によって、硬化層の摩耗したリンクが生ずることがある。この場合、摩耗したリンクを交換する際には、搬送チェーン全体を加工装置から外して交換作業をしなければならず手間がかかる点で問題があった。
【0005】
そこで、本発明は上記課題に鑑み、リンクの交換作業の手間を省くことのできる搬送チェーンの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1の発明に係る搬送チェーンは、多数のリンクを枢着手段によって連結してなり、駆動手段に巻装して駆動され、所定位置へ被搬送物を搬送する搬送チェーンであって、リンクは、両端に枢着手段を備えるベース体と、ベース体の一側面に着脱自在に設けられ被搬送物と接触するプレートと、を有してなり、プレートにおける少なくとも被搬送物との接触面を凹凸状に形成してなるように構成される。
【0007】
請求項2の発明に係る搬送チェーンは、プレートの接触面に、搬送方向と交差する複数の溝を設けてなるように構成される。
【0008】
請求項3の発明に係る搬送チェーンは、プレートの接触面に、微小な凹凸状の溶射皮膜を設けてなるように構成される。
【0009】
請求項4の発明に係る搬送チェーンは、プレートの接触面に、ゴム被膜を設けてなるように構成される。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、被搬送物との接触面が摩耗した場合、搬送チェーン全体を駆動手段から外すことなく、プレートだけを交換すればよい。よって、交換作業の手間を省くことができる。
【0011】
請求項2、3、4の発明によれば、被搬送物を滑り難くできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る搬送チェーンの一実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は左側面図である。本搬送チェーン1は、多数のリンク2,2同士をピン等の枢着手段によって連結して構成されている。例えば搬送チェーン1は、板材等の被加工物を切断加工等する加工装置において、駆動手段としてのスプロケット(図示略)に巻装して駆動され、被加工物としての被搬送物を段取位置から切断加工位置まで搬送する搬送手段として用いられる。
【0013】
リンク2は、長方形棒状のベース体3と、ベース体3の長手両端に設けられて、隣接するベース体3同士を枢着する枢着手段としての枢着孔4と、ベース体3の一側面を覆う形状に形成され、一側面にネジ止めによって着脱自在に固着され被搬送物と接触する金属製のプレート5と、を有して構成されている。このプレート5における被搬送物との接触面側には、搬送方向と交差するように、長手方向に対する45度方向、135度方向の2方向に沿って、複数本のV字状溝10が全体に刻設されている。
【0014】
この搬送チェーン1によれば、ベース体3における被搬送物と接触する一側面側に、プレート5を着脱自在に設けたので、被搬送物との接触面が摩耗した場合であっても、搬送チェーン1全体を駆動手段から外すことなく、摩耗したプレート5だけを交換でき、交換作業の手間を省くことができる。また、プレート5における被搬送物との接触面に、搬送方向と交差するV字状溝10を複数本設けることで、プレート5の接触面を凹凸状に形成したので、摩擦抵抗を増すことができ、被搬送物を滑り難くできる。
【0015】
図2は、プレートの他の実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。このプレート6における被搬送物との接触面側には、公知の溶射方法を用いて、セラミック、タングステンカーバイド等の粉末材料を溶射してなる微小な凹凸状の溶射被膜11が設けられている。このプレート6によっても、被搬送物との接触面に溶射被膜11によるざらつきを与えて摩擦抵抗を増すと同時に耐摩耗性を向上でき、被搬送物をより滑り難くできる。
【0016】
図3は、プレートの他の実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。このプレート7における被搬送物との接触面側には、ゴム被膜12が、摩擦熱等によって熱膨張しても加工精度に影響しない程度の厚さで形成されている。このプレート7によれば、熱膨張による寸法変化を防止して高い加工精度を維持できる。また被搬送物との接触面における摩擦抵抗を増すことができ、被搬送物をより滑り難くできる。
【0017】
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下に例示するように、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各部の形状並びに構成を適宜に変更して実施することも可能である。
(1)プレートの厚みは、3〜6mmで形成することが望ましい。
(2)プレートは、ネジ止めに限らず、接着等の他の固着手段によってベース体に着脱自在に設けても良い。
(3)プレートの接触面に設ける溝は、V字状に限らず、U字状等、他の断面形状で形成しても良い。
(4)プレートの接触面には、溝と溶射被膜との両方を設けても良い。また溝とゴム被膜との両方を設けても良い。これらの場合は、さらに被搬送物を滑り難くできる。
(5)溝の刻設方向は、45度、135度に限らず、他の2方向でもよい。また溝は、2方向に限らず、例えば搬送方向に直交する1方向や、3方向等の他の複数方向に沿って設けても良い。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る搬送チェーンの一実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は左側面図である。
【図2】プレートの他の実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【図3】プレートの他の実施形態を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
【符号の説明】
【0019】
1・・搬送チェーン、2・・リンク、3・・ベース体、4・・枢着孔、5,6,7・・プレート、10・・V字状溝、11・・溶射被膜、12・・ゴム被膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数のリンクを枢着手段によって連結してなり、駆動手段に巻装して駆動され、所定位置へ被搬送物を搬送する搬送チェーンであって、
リンクは、
両端に枢着手段を備えるベース体と、
ベース体の一側面に着脱自在に設けられ被搬送物と接触するプレートと、
を有してなり、
プレートにおける少なくとも被搬送物との接触面を凹凸状に形成してなる、
ことを特徴とする搬送チェーン。
【請求項2】
プレートの接触面に、搬送方向と交差する複数の溝を設けてなる、
請求項1に記載の搬送チェーン。
【請求項3】
プレートの接触面に、微小な凹凸状の溶射被膜を設けてなる、
請求項1または2に記載の搬送チェーン。
【請求項4】
プレートの接触面に、ゴム被膜を設けてなる、
請求項1または2に記載の搬送チェーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−230711(P2007−230711A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−53651(P2006−53651)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(392009951)株式会社ヤスダコーポレーション (2)
【Fターム(参考)】