搬送チェーン
【課題】搬送物品を磁力で吸着保持する磁石片をリンクモジュールの外形寸法を変更することなくリンクモジュール内に確実に組み込んで搬送面が傾斜搬送状態や滑り易くなった搭載状態であっても充分な吸着保持力を発揮して搬送物品を確実かつ安定して搬送するとともにチェーン戻り側で充分なタルミを確保した円滑な駆動搬送を実現し、磁石保守メンテナンス作業も簡便な搬送チェーンを提供すること。
【解決手段】搬送物品を磁力で吸着保持する磁石片１３０が、合成樹脂製のリンクモジュール１１０の搬送面に対して面一状態に装着される合成樹脂製の磁石カバー１３０を介してリンクモジュール１１０の搬送面に嵌め込まれている搬送チェーン１００。
【解決手段】搬送物品を磁力で吸着保持する磁石片１３０が、合成樹脂製のリンクモジュール１１０の搬送面に対して面一状態に装着される合成樹脂製の磁石カバー１３０を介してリンクモジュール１１０の搬送面に嵌め込まれている搬送チェーン１００。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、搬送物品を搭載して搬送する搬送チェーンに関するものであって、特に、搬送面が傾斜搬送状態や滑り易くなった搭載状態であっても搬送物品を搭載して搬送することが可能な搬送チェーンに関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来の搬送チェーンとして、図１３に示すように、搬送物品Ｗを搭載する搬送面５１０ａとこの搬送面５１０ａの前後にそれぞれ突設されたヒンジ部５１１とを備えた合成樹脂製のリンクモジュール５１０をヒンジ部５１１に形成されたピン挿入孔５１２に挿通する連結ピン５２０でチェーン長手方向に多数連結するとともに駆動側スプロケットＳ１と従動側スプロケットＳ２との間で掛け回して飲料用ボトル、ドリンク用缶などの搬送物品Ｗを搬送するコンベヤベルト５００が知られている (例えば、特許文献１参照)。
【０００３】
また、従来の搬送チェーンとして、搬送物品を吸着保持しながら搬送するために、薄肉の強磁性ヨークに固着した永久磁石の表面をエポキシ樹脂などで被覆してなる多数の吸着用磁石ユニットをチェーン基体部の外周側に一定間隔で配置して磁気吸着可能な荷物などを落下させることなく搬送する磁石付きチェーンが知られている (例えば、特許文献２参照)。
【０００４】
さらに、従来の搬送チェーンとして、両側のヨークに装着された磁石をチェーン長手方向に沿って取り付けて鉄製のドリンク缶等磁性材料より成る筺体を搬送する磁石式チェーンコンベヤが知られている (例えば、特許文献３参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００５】
【特許文献１】特開２００４−２６２６００号公報（第６欄、図１）
【特許文献２】特開平９−２７５０１１号公報（第８頁、図８）
【特許文献３】特開平８−３１０３８４号公報（第３欄、図１０）
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
しかしながら、従来のようなコンベヤベルト５００は、搬送面５１０ａに搬送物品Ｗを搭載するリンクモジュール５１０が自己潤滑性を発揮する合成樹脂製で成形されているため、図１４に示すように、傾斜搬送状態で搬送物品Ｗに作用する斜面方向の分力が摩擦力を上回っている場合、あるいは、石鹸水、潤滑油などの滑り易い液体がリンクモジュールに付着してリンクモジュール５１０の搬送面５１０ａが過剰に滑り易くなっている場合、搬送物品Ｗが搬送面５１０ａ上で搬送衝撃などにより不意に転倒したり滑落したりして確実に搬送できないという問題があった。
【０００７】
また、従来のような磁石付きチェーンは、多数の吸着用磁石ユニットをチェーン基体部の外周面上に配置しているため、所謂、「バックベンド半径」と称する搬送面側と逆方向に曲がる半径が大きくなり、その結果として、チェーン戻り側においてチェーン伸びを吸収するためのアイドローラなどの中間ローラを用いてもタルミを十分に確保することができず、チェーン伸びを解消するための保守メンテナンスの負担頻度が増大し、そのまま放置すると、駆動スプロケットに磁石付きチェーンが噛み込んでチェーン切断に至るという問題があった。
しかも、従来のような磁石付きチェーンは、エポキシ樹脂などを高温で溶解して強磁性ヨークに固着した永久磁石の表面を被覆しているため、永久磁石が高温の樹脂温度に晒されて永久磁石の磁力が低下して十分な吸着保持力を発揮することができず、また、吸着用磁石ユニットが永久磁石を薄肉の強磁性ヨークに接着剤により固着しているため、長期使用時に永久磁石と強磁性ヨークとの接着が剥離して永久磁石が欠損し、搬送物品を安定して吸着保持することができないという問題があった。
【０００８】
さらに、従来のような磁石式チェーンコンベヤは、両側のヨークに装着された磁石が露出しているため、磁石が搬送衝撃などにより損傷して搬送物品を安定して吸着保持することができなくなったり、磁石の破片が搬送領域に飛散して搬送作業上の多くの不具合を生じるという問題があった。
【０００９】
そこで、本発明は、従来の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、搬送物品を磁力で吸着保持する磁石片をリンクモジュールの外形寸法を変更することなくリンクモジュール内に確実に組み込んで搬送面が傾斜搬送状態や滑り易くなった搭載状態であっても充分な吸着保持力を発揮して搬送物品を確実かつ安定して搬送するとともにチェーン戻り側で充分なタルミを確保した円滑な駆動搬送を実現し、しかも、磁石保守メンテナンス作業も簡便な搬送チェーンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【００１０】
請求項１に係る本発明は、搬送物品を搭載する搬送面と該搬送面の前後にそれぞれ突設されたヒンジ部とを備えた合成樹脂製のリンクモジュールを前記ヒンジ部に形成されたピン挿入孔に挿通する連結ピンを用いてチェーン長手方向に多数連結してなる搬送チェーンにおいて、前記搬送物品を磁力で吸着保持する磁石片が、前記リンクモジュールの搬送面に対して面一状態に装着される合成樹脂製の磁石カバーを介してリンクモジュールの搬送面に嵌め込まれていることにより、前述した課題を解決したものである。
【００１１】
請求項２に係る本発明は、請求項１記載の構成に加えて、前記磁石カバーが、前記リンクモジュールのチェーン幅方向に沿って磁石片を覆う細長の磁石カバー本体と該磁石カバー本体の両端からそれぞれ垂設した左右一対の挿入脚体と該挿入脚体の先端に突設した係止フックとを備えていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【００１２】
請求項３に係る本発明は、請求項２記載の構成に加えて、前記リンクモジュールが、前記リンクモジュールの搬送面に凹設された磁石嵌め込み用溝と前記磁石カバーの挿入脚体と係止フックとを受け入れる左右一対の挿入孔とを備えていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【００１３】
請求項４に係る本発明は、請求項３記載の構成に加えて、前記リンクモジュールが、前記挿入孔に挿入された係止フックを解除自在に係止させるフック操作用穴をリンク側面に備えていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【００１４】
請求項５に係る本発明は、請求項２乃至請求項４のいずれかに記載の構成に加えて、前記磁石カバーが、前記磁石カバー本体の両端からそれぞれ挿入脚体を越えて水平方向に突設した左右一対の形態安定翼を備えていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【００１５】
請求項６に係る本発明は、請求項１乃至請求項４のいずれかに記載の構成に加えて、前記磁石カバーが、前記磁石片をチェーン長手方向から挿入して収納する磁石収納部を備えていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【００１６】
請求項７に係る本発明は、請求項１乃至請求項６のいずれかに記載の構成に加えて、前記磁石片が、前記リンクモジュールのチェーン幅方向に沿った細長のプレート状に形成されていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【００１７】
請求項８に係る本発明は、請求項１乃至請求項７のいずれかに記載の構成に加えて、前記リンクモジュールのヒンジ部が、前記リンクモジュールのチェーン長手方向に隣接するリンクモジュールのヒンジ部と連結ピンを介して相互に連結されていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【発明の効果】
【００１８】
本発明の搬送チェーンによれば、搬送物品を搭載する搬送面とこの搬送面の前後にそれぞれ突設されたヒンジ部とを備えた合成樹脂製のリンクモジュールをヒンジ部に形成されたピン挿入孔に挿通する連結ピンを用いてチェーン長手方向に多数連結してなることにより、搬送物品を搬送面に搭載した状態で水平搬送することができるばかりでなく、本発明に特有の装置構成によって以下のような効果を奏することができる。
【００１９】
すなわち、請求項１に係る搬送チェーンによれば、搬送物品を磁力で吸着保持する磁石片がリンクモジュールの搬送面に対して面一状態に装着される合成樹脂製の磁石カバーを介してリンクモジュールの搬送面に嵌め込まれていることにより、磁石カバーがリンクモジュールの搬送面に対して面一状態に装着されているため、搬送物品を吸着保持する磁石片をリンクモジュールの外形寸法を変更することなくリンクモジュール内に確実に組み込んで搬送物品を安定して搭載することができ、また、磁石カバーに嵌め込まれた磁石片が搬送面上の搬送物品を確実に吸着保持するため、たとえば、傾斜搬送状態で搬送物品に作用する斜面方向の分力が摩擦力を上回っている場合、あるいは、石鹸水、潤滑油などの滑り易い液体がリンクモジュールに付着してリンクモジュールの搬送面が過剰に滑り易くなっている場合であっても、搬送物品を搬送面でスリップさせず安定して搬送することができる。
【００２０】
請求項２に係る搬送チェーンによれば、請求項１記載の搬送チェーンが奏する効果に加えて、磁石カバーがリンクモジュールのチェーン幅方向に沿って磁石片を覆う細長の磁石カバー本体とこの磁石カバー本体の両端からそれぞれ垂設した左右一対の挿入脚体とこれらの挿入脚体の先端に突設した係止フックとを備えていることにより、左右一対の挿入脚体が「スナップフィット作用」と称する挟持力を発揮してリンクモジュールの両端部に挿入されるとともに磁石カバー本体が磁石片を露出させることなく完全に覆った状態でリンクモジュールに固定されるため、磁石片が搬送物品、周辺機器などとの接触による不用意な破損から保護され、しかも、磁石片を装着する際に、磁石片を加熱することなく磁石片を嵌め込むため、従来の磁石付きチェーンで生じがちな磁石片の熱消磁を防止して搬送物品に対する充分な吸着保持力を発揮することができる。
【００２１】
請求項３に係る搬送チェーンによれば、請求項２記載の搬送チェーンが奏する効果に加えて、リンクモジュールがこのリンクモジュールの搬送面に凹設された磁石嵌め込み用溝を備えているとともに磁石カバーの挿入脚体と係止フックとを受け入れる左右一対の挿入孔を備えていることにより、磁石片と磁石カバーとがリンクモジュールの磁石嵌め込み用溝とこれに連続する挿入孔内に完全に収容されるため、搬送物品を吸着保持する磁石片をリンクモジュール内に確実に組み込むことができるとともに物品搬送時に磁石片の脱落を防止することができる。
【００２２】
請求項４に係る搬送チェーンによれば、請求項３記載の搬送チェーンが奏する効果に加えて、リンクモジュールが挿入孔に挿入された係止フックを解除自在に係止させるフック操作用穴をリンク側面に備えていることにより、磁石保守メンテナンス作業時にフック操作用穴から差し込んだ解除用ピンなどの解除治具で係止フックを搬送面側に向けて押し戻して係止フックの係止状態を解除することが可能になるため、磁石片の着脱を簡便に達成することができる。
【００２３】
請求項５に係る搬送チェーンによれば、請求項２乃至請求項４のいずれかに記載の搬送チェーンが奏する効果に加えて、磁石カバーが磁石カバー本体の両端からそれぞれ挿入脚体を越えて水平方向に突設した左右一対の形態安定翼を備えていることにより、磁石カバーをリンクモジュールに装着する際に左右一対の形態安定翼が磁石カバーに設けられた左右一対の挿入脚体に負荷される挿入孔に向けた押圧力を軽減するため、左右一対の挿入脚体を変形せずにリンクモジュールに設けた左右一対の挿入孔内に確実に挿入係止させることができる。
【００２４】
請求項６に係る搬送チェーンによれば、請求項１乃至請求項４のいずれかに記載の搬送チェーンが奏する効果に加えて、磁石カバーが磁石片をチェーン長手方向から挿入して収納する磁石収納部を備えていることにより、磁石片をリンクモジュールに装着する際に磁石片を磁石カバー内に挿入収納してからリンクモジュールに装着するため、リンクモジュールに対して磁石片を所定の収納位置に確実に位置決めすることができるとともに磁石片の装着作業を簡便に達成することができる。
【００２５】
請求項７に係る搬送チェーンによれば、請求項１乃至請求項６のいずれかに記載の搬送チェーンが奏する効果に加えて、磁石片がリンクモジュールのチェーン幅方向に沿った細長のプレート状に形成されていることにより、リンクモジュールのほぼ全幅に亙って磁気吸着力を発揮するため、搬送面上における搬送物品の大小や搭載位置に拘わらず搬送物品を確実に保持することができる。
【００２６】
請求項８に係る搬送チェーンによれば、請求項１乃至請求項７のいずれかに記載の搬送チェーンが奏する効果に加えて、リンクモジュールのヒンジ部がリンクモジュールのチェーン長手方向に隣接するリンクモジュールのヒンジ部と連結ピンを介して相互に連結されていることにより、隣接するリンクモジュール同士のヒンジ領域においてもチェーン長手方向に連続した搬送面が形成されているため、搬送区間内では搬送物品の安定した搭載状態を確保するとともに搬入搬出位置では搬送面に対する搬送物品の円滑な移載を達成し、また、隣接するリンクモジュール同士のヒンジ領域が、「バックベンド半径」と称する搬送面側と逆方向に曲がる半径を小さくするため、チェーン戻り側においてチェーン伸びを吸収するためのアイドラローラなどの中間ローラを用いてタルミを十分に確保した円滑な駆動搬送を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【００２７】
【図１】本発明の第１実施例である搬送チェーンの使用態様を示す模式図。
【図２】図１に示すＡ部分の拡大図。
【図３】図２に示す搬送チェーンの組み立て分解図。
【図４】図２に示す搬送チェーンの正面図。
【図５】図２に示す搬送チェーンのＢ−Ｂ断面図。
【図６】解除治具で係止フックの係止状態が解除される直前の状態を示す図。
【図７】解除治具で係止フックの係止状態が解除された直後の状態を示す図。
【図８】図１に示す搬送チェーンの動作図。
【図９】本発明の第２実施例である搬送チェーンの外観図。
【図１０】図９に示す搬送チェーンのＣ−Ｃ断面図。
【図１１】本発明の第３実施例である搬送チェーンの外観図。
【図１２】図１１に示す搬送チェーンのＤ−Ｄ断面図。
【図１３】従来のコンベヤベルトの使用態様図およびその一部拡大図。
【図１４】図１３に示す搬送チェーンの動作図。
【発明を実施するための形態】
【００２８】
本発明は、搬送物品を搭載する搬送面と該搬送面の前後にそれぞれ突設されたヒンジ部とを備えた合成樹脂製のリンクモジュールを前記ヒンジ部に形成されたピン挿入孔に挿通する連結ピンを用いてチェーン長手方向に多数連結してなる搬送チェーンにおいて、搬送物品を磁力で吸着保持する磁石片がリンクモジュールの搬送面に対して面一状態に装着される合成樹脂製の磁石カバーを介してリンクモジュールの搬送面に嵌め込まれ、搬送物品を吸着保持する磁石片をリンクモジュールの外形寸法を変更することなくリンクモジュール内に確実に組み込んで搬送面が傾斜搬送状態や滑り易くなった搭載状態であっても充分な吸着保持力を発揮して搬送物品を確実かつ安定して搬送するとともにチェーン戻り側で充分なタルミを確保した円滑な駆動搬送を実現し、磁石保守メンテナンス作業も簡便なものであれば、その具体的な実施の形態は、如何なるものであっても何ら構わない。
【００２９】
本発明の搬送チェーンにおけるリンクモジュールおよび磁力カバーの具体的な材質としては、機械的性質や成形精度の良い合成樹脂であれば如何なるものであっても良く、たとえば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂などのいずれであっても用いることができる。
【００３０】
そして、前述したリンクモジュールの具体的な形状については、搬送物品を搭載する搬送面とこの搬送面の前後にそれぞれ突設するヒンジ部とを備えてこのヒンジ部に形成したピン挿入孔に連結ピンを挿通させてチェーン長手方向に多数連結する形状であれば如何なるものであれば良く、さらに、リンクモジュールにおけるヒンジ部の配置形態については、少なくとも、前方２カ所の前方ヒンジ部と後方１カ所の後方ヒンジ部を備えたものであれば良く、たとえば、前方４カ所の前方ヒンジ部と後方３カ所の後方ヒンジ部を備えたものであっても良い。
そして、リンクモジュールのヒンジ部がリンクモジュールのチェーン長手方向に隣接するリンクモジュールのヒンジ部と連結ピンを介して相互に連結される形状を呈している場合には、隣接するリンクモジュール同士のヒンジ領域においてもチェーン長手方向に連続した搬送面が形成され、また、隣接するリンクモジュール同士のヒンジ領域が、「バックベンド半径」と称する搬送面側と逆方向に曲がる半径を小さくすることができる。
【００３１】
また、磁力カバーの具体的な形状については、リンクモジュールのチェーン幅方向に沿って磁石片を覆う細長の磁石カバー本体とこの磁石カバー本体の両端からそれぞれ垂設した左右一対の挿入脚体とこれらの挿入脚体の先端に突設した係止フックとを備えて、磁石カバーをリンクモジュールに装着する際に、係止フックが挿入孔に係止して、左右一対の挿入脚体が内側にたわみながら係止フックを挿入孔に押圧することにより、磁石カバーがリンクモジュールに取り付けられる、いわゆる、「スナップフィット作用」と称する挟持力を発揮してリンクモジュールの両端部に挿入されるとともに磁石カバー本体が磁石片を露出させることなく完全に覆った状態でリンクモジュールに固定されるものであれば良く、例えば、磁石カバー本体の具体的な本体形態、挿入脚体の脚長、太さなどの脚形態、係止フックのフック形態などは如何なるものであっても何ら差し支えない。
【００３２】
さらに、前述した磁石カバーのチェーン長手方向における具体的な配置形態については、リンクモジュールに対して１対１で順次配置されるか、若しくは、間欠的に配置されていれば良く、これらの配置形態は、搬送物品の大小、搬送形態、必要とされる磁気吸着力などによって適宜選択するのが望ましい。
【００３３】
そして、本発明の搬送チェーンに用いる磁石片の具体的な材質については、搬送物品の吸着保持に必要な磁力を確保できる永久磁石であれば、希土類磁石、フェライト磁石などのいずれであっても良く、残留磁束密度および保持力が高く温度変化に弱いネオジム磁石であっても採用可能であり、また、磁石片の大きさおよび形状は、磁石カバーを介してリンクモジュールの搬送面に嵌め込み可能であれば、矩形の短冊状のもの、棒状のもの、数枚のプレート状のものなど、如何なるものであっても構わない。
【００３４】
また、本発明の搬送チェーンに用いる連結ピンの具体的な材質については、鋼材、アルミ材、合成樹脂材のいずれであっても構わない。
【００３５】
さらに、本発明の搬送チェーンの具体的な使用形態については、搬送物品を水平搬送する搬送ラインばかりでなく、水平搬送する搬送ラインを含んで傾斜搬送する搬送ラインでも用いることが可能である。
【００３６】
なお、本発明の搬送チェーンに適用し得る搬送物品については、如何なる物品であっても差し支えないが、搬送面が傾斜搬送状態や滑り易くなった搭載状態であっても搬送させるためには、磁気吸着可能な搬送物品か、あるいは、磁気吸着可能な搬送容器に収容した搬送物品であること言うまでもない。
【実施例１】
【００３７】
以下に、本発明の一実施例である搬送チェーンを図面に基づいて説明する。
ここで、図１は、本発明の第１実施例である搬送チェーンの使用態様を示す模式図であり、図２は、図１に示すＡ部分の拡大図であり、図３は、図２に示す搬送チェーンの組み立て分解図であり、図４は、図２に示す搬送チェーンの正面図であり、図５は、図２に示す搬送チェーンのＢ−Ｂ断面図であり、図６は、解除治具で係止フックの係止状態が解除される直前の状態を示す図であり、図７は、解除治具で係止フックの係止状態が解除された直後の状態を示す図であり、図８は、図１に示す搬送チェーンの動作図であり、図９は、本発明の第２実施例である搬送チェーンの外観図であり、図１０は、図９に示す搬送チェーンのＣ−Ｃ断面図であり、図１１は、本発明の第３実施例である搬送チェーンの外観図であり、図１２は、図１１に示す搬送チェーンのＤ−Ｄ断面図である。
【００３８】
まず、本発明の第１実施例である搬送チェーン１００は、図１に示すように、搬送ラインのライン幅方向にそれぞれ並列配設されて、搬送物品Ｗ、特に、搬送ライン幅方向に長い長尺物からなる搬送物品Ｗを少なくとも傾斜搬送するものである。
【００３９】
すなわち、搬送ラインにそれぞれ設けられた本第１実施例の搬送チェーン１００は、図２及び図３に示すように、搬送物品Ｗを搭載する搬送面１１０ａとこの搬送面１１０ａの前後にそれぞれ突設されたヒンジ部１１１とを備えた合成樹脂製のリンクモジュール１１０を前記ヒンジ部１１１に形成されたピン挿入孔１１２に挿通する連結ピン１２０を用いてチェーン長手方向に無端状に多数連結され、搬送物品Ｗを磁力で吸着保持する磁石片１３０が、リンクモジュール１１０の搬送面１１０ａに対して面一状態に装着される合成樹脂製の磁石カバー１４０を介してリンクモジュール１１０の搬送面１１０ａに嵌め込まれている。
これにより、磁石カバー１４０がリンクモジュール１１０の搬送面１１０ａに対して面一状態に装着されて、磁石カバー１４０に嵌め込まれた磁石片１３０が搬送面上１１０ａの搬送物品Ｗを確実に吸着保持している。
【００４０】
そして、図３に示すように、前述したリンクモジュール１１０の搬送面１１０ａの前方４カ所に突出したヒンジ部１１１、すなわち、前方ヒンジ部１１１ａは、リンクモジュール１１０のチェーン長手方向に隣接するリンクモジュール１１０の搬送面１１０ａの後方３カ所に突出したヒンジ部１１１、すなわち、後方ヒンジ部１１１ｂとオフセット状態で対向して指組状に連結ピン１２０を介して相互に連結されている。
これにより、隣接するリンクモジュール１１０、１１０同士のヒンジ領域においてもチェーン長手方向に連続した搬送面１１０ａが形成され、また、隣接するリンクモジュール１１０，１１０同士のヒンジ領域が、「バックベンド半径」と称する搬送面１１０ａ側と逆方向に曲がる半径を小さくしている。
なお、本第１実施例では、前方に４カ所の前方ヒンジ部１１１ａと後方に３カ所の後方ヒンジ部１１１ｂを備えたリンクモジュール１１０を使用したが、前方ヒンジ部１１１ａと後方ヒンジ部１１１ｂとをオフセット状態で対向させて指組状に連結ピン１２０を介して相互に連結させることができるリンクモジュール１１０であれば良く、例えば、前方に２カ所の前方ヒンジ部１１１ａと後方に１カ所の後方ヒンジ部１１１ｂを備えたリンクモジュール１１０であっても良い。
【００４１】
さらに、リンクモジュール１１０の前方ヒンジ部１１１ａに形成される前方ピン挿入孔１１２ａは、図３に示すとおり、チェーン長手方向の前方平坦面と後方曲面とで構成された全体としてＤ字状孔形態を呈し、リンクモジュール１１０の後方ヒンジ部１１１ｂに形成される後方ピン挿入孔１１２ｂは、円形断面の孔形態を呈している。
【００４２】
他方、前述したリンクモジュール１１０、１１０同士を相互に連結する連結ピン１２０は、図３に示すとおり、チェーン長手方向に前方平坦面と後方曲面とで構成されたＤ字状のピン断面を有している。
そして、この連結ピン１２０は、連結ピン１２０の前方平坦面と前方ピン挿入孔１１２ａの前方平坦面とを対面させた状態で挿入してリンクモジュール１１０の前方ピン挿入孔１１２ａに対して回り止めされるとともに、リンクモジュール１１０の後方ピン挿入孔１１２ｂに回動自在に遊嵌されている。
【００４３】
そして、前述した連結ピン１２０には、リンクモジュール１１０に突設されたヒンジ部１１１のヒンジ側面１１１ｃと係止協働してチェーン幅方向に位置決め抜け止めする突起部１２１が連結ピン１２０の前方平坦面上に形成されている。
これにより、連結ピン１２０の突起部１２１が、ヒンジ側面１１１ｃに係止されて連結ピン１２０がリンクモジュール１１０に確実に位置決め固定され、連結ピン１２０の不用意な脱落を防止している。
【００４４】
また、磁石片１３０は、搬送物品Ｗを吸着保持する角型フェライト組織を呈する直方体状、すなわち、リンクモジュール１１０のチェーン幅方向に沿った細長のプレート状に形成されている磁石片１３０を保有している。
これにより、磁石片１３０は、リンクモジュール１１０のほぼ全幅に亙って磁気吸着力を発揮している。
【００４５】
つぎに、本発明の第１実施例に係る搬送チェーン１００が最も特徴とする磁石カバー１４０およびこの磁石カバー１４０を受け入れるリンクモジュール１１０の具体的な形態について、図４及び図５に基づいて詳しく説明する。
【００４６】
まず、磁石カバー１４０は、リンクモジュール１１０のチェーン幅方向に沿って磁石片１３０を覆う細長の磁石カバー本体１４１とこの磁石カバー本体１４１の両端からそれぞれ垂設した左右一対の挿入脚体１４２とこれらの挿入脚体１４２の先端に外側面方向に突設した係止フック１４３とを備えている。
他方、リンクモジュール１１０は、このリンクモジュール１１０の搬送面１１０ａに凹設された磁石嵌め込み用溝１１３と、磁石カバー１４０の挿入脚体１４２と係止フック１４３とを受け入れる左右一対の挿入孔１１４とを備えている。
そして、これらのリンクモジュール１１０と磁石カバー１４０とにより、左右一対の挿入脚体１４２が「スナップフィット作用」と称する挟持力を発揮してリンクモジュール１１０の両端部に挿入されるとともに磁石カバー本体１４１が磁石片１３０を露出させることなく完全に覆った状態でリンクモジュール１１０に固定され、また、磁石片１３０を装着する際に、磁石片１３０を加熱することなく磁石片１３０を嵌め込んでいる。
【００４７】
加えて、前述した磁石カバー１４０の取り外し動作について、図６および図７に基づいて説明すると、リンクモジュール１１０は、挿入孔１１４に挿入されて係止フック１４３を解除自在に係止させるフック操作用穴１１５をリンク側面１１１ｃに備えている。
したがって、磁石カバー１４０を取り外す際には、解除治具の先端をリンク側面１１０ｂに設けられたフック操作用穴１１５に挿し込み、この解除治具の先端でフック操作用穴１１５に係止している係止フック１４３をこじ上げて磁石カバー１４０をせり上げる。
これにより、磁石保守メンテナンス作業時にフック操作用穴１１５から差し込んだドライバーや解除用ピンなどの解除治具Ｄで係止フック１４３を搬送面１１０ａ側に向けて押し戻して係止フック１４３の係止状態を解除することが可能になる。
【００４８】
次に、第１実施例の搬送チェーン１００を用いた使用態様について、図１および図８に基づいてさらに詳しく説明する。
すなわち、搬送ラインの両側にそれぞれ設けられた本第１実施例の搬送チェーン１００は、図１に示すような搬送ラインのライン幅方向にそれぞれ並列配置され、図８に示すような駆動側スプロケットＳ１と従動側スプロケットＳ２との間に掛け回されて駆動されることにより、搬送物品Ｗを傾斜搬送している。
【００４９】
なお、本第１実施例の使用態様では、図１に示すように、搬送チェーン１００を搬送ラインのライン幅方向にそれぞれ並列に３本配置させているが、２本の搬送チェーン１００の間に磁石片を持たない多数のリンクモジュールを連結ピンにより連結した従来のコンベヤベルト５００を介在させているものであっても構わない。
【００５０】
また、図４に示す符号１１８は、本第１実施例の搬送チェーン１００が駆動側スプロケットＳ１と従動側スプロケットＳ２に噛み合う際にチェーン幅方向の位置ズレを規制するためにリンクモジュール１１０の裏面に突出して設けたガイド用リブである。
また、図８に示す符号Ｇは、本第１実施例の搬送チェーン１００を走行案内するために搬送ラインに沿って設けられたガイドレールであり、符号Ｒは、本第１実施例の搬送チェーン１００のチェーン伸びを吸収するタワミを確保するために搬送チェーン１００の戻り側に設置されるアイドラローラからなる中間ローラである。
【００５１】
このようにして得られた本第１実施例の搬送チェーン１００は、搬送物品Ｗを磁力で吸着保持する磁石片１３０がリンクモジュール１１０の搬送面１１０ａに対して面一状態に装着される合成樹脂製の磁石カバー１４０を介してリンクモジュール１１０の搬送面１１０ａに嵌め込まれているため、搬送物品Ｗを吸着保持する磁石片１３０をリンクモジュール１１０の外形寸法を変更することなくリンクモジュール１１０内に確実に組み込んで搬送物品Ｗを安定して搭載し、たとえば、傾斜搬送状態で搬送物品に作用する斜面方向の分力が摩擦力を上回っている場合、あるいは、石鹸水、潤滑油などの滑り易い液体がリンクモジュール１１０に付着してリンクモジュール１１０の搬送面１１０ａが過剰に滑り易くなっている場合であっても、図８に示すように、搬送物品Ｗを搬送面１１０ａでスリップさせず安定して搬送することができる。
【００５２】
そして、磁石カバー１４０がリンクモジュール１１０のチェーン幅方向に沿って磁石片１３０を覆う細長の磁石カバー本体１４１とこの磁石カバー本体１４１の両端からそれぞれ垂設した左右一対の挿入脚体１４２とこれらの挿入脚体１４２の先端に突設した係止フック１４３とを備えているとともに、リンクモジュール１１０がこのリンクモジュール１１０の搬送面１１０ａに凹設された磁石嵌め込み用溝１１３を備えているとともに磁石カバー１４０の挿入脚体１４２と係止フック１４３とを受け入れる左右一対の挿入孔１１４を備えているため、磁石片１３０を熱消磁させることなくリンクモジュール１１０内に確実に組み込んで搬送物品Ｗに対する充分な吸着保持力を発揮して、物品搬送時に磁石片１３０の脱落を防止し、磁石片１３０が搬送物品Ｗ、周辺機器などとの接触による不用意な破損を回避することができる。
【００５３】
しかも、リンクモジュール１１０が挿入孔１１４に挿入された係止フック１４３を解除自在に係止させるフック操作用穴１１５をリンク側面１１１ｃに備えていることにより、磁石片１３０の着脱を簡便に達成することができるなど、その効果は甚大である。
【実施例２】
【００５４】
次に、本発明の第２実施例である搬送チェーン２００について、図９乃至図１０に基づいて説明する。
まず、図９に示す搬送チェーン２００も、図１に示すような搬送チェーン１００と同様に、搬送ラインのライン幅方向にそれぞれ並列配設されて、搬送物品Ｗ、特に、搬送ライン幅方向に長い長尺物からなる搬送物品Ｗを少なくとも傾斜搬送するものである。
【００５５】
すなわち、搬送ラインにそれぞれ設けられた本発明の第２実施例である搬送チェーン２００は、図９乃至図１０に示すように、搬送物品Ｗを搭載する搬送面２１０ａとこの搬送面２１０ａの前後にそれぞれ突設されたヒンジ部２１１とを備えた合成樹脂製のリンクモジュール２１０をヒンジ部２１１に形成されたピン挿入孔２１２に挿通する連結ピン２２０を用いてチェーン長手方向に無端状に多数連結され、搬送物品Ｗを磁力で吸着保持する磁石片２３０が、リンクモジュール２１０の搬送面２１０ａに対して面一状態に装着される合成樹脂製の磁石カバー２４０を介してリンクモジュール２１０の搬送面２１０ａに嵌め込まれている。
これにより、磁石カバー２４０がリンクモジュール２１０の搬送面２１０ａに対して面一状態に装着されて、磁石カバー２４０に嵌め込まれた磁石片２３０が搬送面上２１０ａの搬送物品Ｗを確実に吸着保持している。
【００５６】
したがって、図９乃至図１０に示す本発明の第２実施例である搬送チェーン２００は、上述した第１実施例の搬送チェーン１００と同一の部材について対応する２００番台の符号を付してその重複する説明を省略する。
【００５７】
そこで、本発明の第２実施例である搬送チェーン２００が最も特徴とする磁石カバー２４０の具体的な形態について、図９乃至図１０に基づいて詳しく説明する。
【００５８】
すなわち、前述した磁石カバー２４０は、第１実施例に係る磁石カバー１４０と同様に、リンクモジュール２１０のチェーン幅方向に沿って磁石片２３０を覆う細長の磁石カバー本体２４１とこの磁石カバー本体２４１の両端からそれぞれ垂設した左右一対の挿入脚体２４２とこれらの挿入脚体２４２の先端に外側面方向に突設した係止フック２４３とを備えている。
そして、磁石カバー２４０は、磁石カバー本体２４１の両端からそれぞれ挿入脚体２４２を越えて水平方向に突設した左右一対の形態安定翼２４４を備えている。
これにより、左右一対の形態安定翼２４４が、磁石カバー２４０に設けられた左右一対の挿入脚体２４２に負荷される挿入孔２１４に向けた押圧力を軽減している。
【００５９】
このようにして得られた本第２実施例の搬送チェーン２００は、前述した本第１実施例の搬送チェーン１００が奏する効果と同様に、搬送物品Ｗを磁力で吸着保持する磁石片２３０をリンクモジュール２１０の外形寸法を変更することなくリンクモジュール２１０内に確実に組み込んで搬送物品Ｗを安定して搭載し、たとえば、傾斜搬送状態で搬送物品に作用する斜面方向の分力が摩擦力を上回っている場合、あるいは、石鹸水、潤滑油などの滑り易い液体がリンクモジュール２１０に付着してリンクモジュール２１０の搬送面２１０ａが過剰に滑り易くなっている場合であっても、搬送物品Ｗを搬送面２１０ａでスリップさせず安定して搬送することができるとともに、磁石カバー２４０が磁石カバー本体２４１の両端からそれぞれ挿入脚体２４２を越えて水平方向に突設した左右一対の形態安定翼２４４を備えているため、左右一対の挿入脚体２４２を変形せずにリンクモジュール２１０に設けた左右一対の挿入孔２１４、２１４内にそれぞれ確実に挿入係止させることができるなど、その効果は甚大である。
【実施例３】
【００６０】
次に、本発明の第３実施例である搬送チェーン３００について、図１１乃至図１２に基づいて説明する。
まず、図１１に示す搬送チェーン３００も、図１に示すような搬送チェーン１００と同様に、搬送ラインのライン幅方向にそれぞれ並列配設されて、搬送物品Ｗ、特に、搬送ライン幅方向に長い長尺物からなる搬送物品Ｗを少なくとも傾斜搬送するものである。
【００６１】
すなわち、搬送ラインにそれぞれ設けられた本発明の第３実施例である搬送チェーン３００は、図１１乃至図１２に示すように、搬送物品Ｗを搭載する搬送面３１０ａとこの搬送面３１０ａの前後にそれぞれ突設されたヒンジ部３１１とを備えた合成樹脂製のリンクモジュール３１０をヒンジ部３１１に形成されたピン挿入孔３１２に挿通する連結ピン３２０を用いてチェーン長手方向に無端状に多数連結され、搬送物品Ｗを磁力で吸着保持する磁石片３３０が、リンクモジュール３１０の搬送面３１０ａに対して面一状態に装着される合成樹脂製の磁石カバー３４０を介してリンクモジュール３１０の搬送面３１０ａに嵌め込まれている。
これにより、磁石カバー３４０がリンクモジュール３１０の搬送面３１０ａに対して面一状態に装着されて、磁石カバー３４０に嵌め込まれた磁石片３３０が搬送面上３１０ａの搬送物品Ｗを確実に吸着保持している。
【００６２】
したがって、図１１乃至図１２に示す本発明の第３実施例である搬送チェーン３００は、上述した第１実施例の搬送チェーン１００と同一の部材について対応する３００番台の符号を付してその重複する説明を省略する。
【００６３】
そこで、本発明の第３実施例である搬送チェーン３００が最も特徴とする磁石カバー３４０の具体的な形態について、図１１乃至図１２に基づいて詳しく説明する。
【００６４】
すなわち、上述した磁石カバー３４０は、第１実施例に係る磁石カバー１４０と同様に、リンクモジュール３１０のチェーン幅方向に沿って磁石片３３０を覆う細長の磁石カバー本体３４１とこの磁石カバー本体３４１の両端からそれぞれ垂設した左右一対の挿入脚体３４２とこれらの挿入脚体３４２の先端に外側面方向に突設した係止フック３４３とを備えている。
そして、磁石カバー３４０は、磁石片３３０をチェーン長手方向から挿入して収納する磁石収納部３４５を備えている。
これにより、磁石片３３０をリンクモジュール３１０に装着する際に磁石片３３０を磁石カバー３４０内に挿入収納して、すなわち、予め磁石片３３０を磁石収納部３４５に収納して磁石カバー３４０をリンクモジュール３１０に装着している。
【００６５】
このようにして得られた本第３実施例の搬送チェーン３００は、前述した本第１実施例の搬送チェーン１００が奏する効果と同様に、搬送物品Ｗを磁力で吸着保持する磁石片３３０をリンクモジュール３１０の外形寸法を変更することなくリンクモジュール３１０内に確実に組み込んで搬送物品Ｗを安定して搭載し、たとえば、傾斜搬送状態で搬送物品に作用する斜面方向の分力が摩擦力を上回っている場合、あるいは、石鹸水、潤滑油などの滑り易い液体がリンクモジュール３１０に付着してリンクモジュール３１０の搬送面３１０ａが過剰に滑り易くなっている場合であっても、搬送物品Ｗを搬送面３１０ａでスリップさせず安定して搬送することができるとともに、磁石カバー３４０が磁石片３３０をチェーン長手方向から挿入して収納する磁石収納部３４５を備えているため、リンクモジュール３１０に対して磁石片３３０を所定の収納位置に確実に位置決めすることができるとともに磁石片３３０の装着作業を簡便に達成することができるなど、その効果は甚大である。
【符号の説明】
【００６６】
１００ 、２００ 、３００ ・・・ 搬送チェーン
１１０ 、２１０ 、３１０ ・・・ リンクモジュール
１１０ａ、２１０ａ、３１０ａ・・・ 搬送面
１１０ｂ、２１０ｂ、３１０ｂ・・・ リンク側面
１１１ 、２１１ 、３１１ ・・・ ヒンジ部
１１１ａ、２１１ａ、３１１ａ・・・ 前方ヒンジ部
１１１ｂ、２１１ｂ、３１１ｂ・・・ 後方ヒンジ部
１１１ｃ、２１１ｃ、３１１ｃ・・・ ヒンジ側面
１１２ 、２１２ 、３１２ ・・・ ピン挿入孔
１１２ａ、２１２ａ、３１２ａ・・・ 前方ピン挿入孔
１１２ｂ、２１２ｂ、３１２ｂ・・・ 後方ピン挿入孔
１１３ 、２１３ 、３１３ ・・・ 磁石嵌め込み用溝
１１４ 、２１４ 、３１４ ・・・ 挿入孔
１１５ 、２１５ 、３１５ ・・・ フック操作用穴
１１８ 、２１８ 、３１８ ・・・ ガイド用リブ
１２０ 、２２０ 、３２０ ・・・ 連結ピン
１２１ ・・・ 突起部
１３０ 、２３０ 、３３０ ・・・ 磁石片
１４０ 、２４０ 、３４０ ・・・ 磁石カバー
１４１ 、２４１ 、３４１ ・・・ 磁石カバー本体
１４２ 、２４２ 、３４２ ・・・ 挿入脚体
１４３ 、２４３ 、３４３ ・・・ 係止フック
２４４ ・・・ 形態安定翼
３４５ ・・・ 磁石収納部
５００ ・・・ コンベヤベルト
５１０ ・・・ リンクモジュール
５１０ａ・・・ 搬送面
５１２ ・・・ ヒンジ部
５１４ ・・・ ピン挿入孔
５２０ ・・・ 連結ピン
Ｄ ・・・ 解除治具（ドライバー）
Ｇ ・・・ ガイドレール
Ｒ ・・・ 中間ローラ
Ｓ１ ・・・ 駆動側スプロケット
Ｓ２ ・・・ 従動側スプロケット
Ｗ ・・・ 搬送物品
【技術分野】
【０００１】
本発明は、搬送物品を搭載して搬送する搬送チェーンに関するものであって、特に、搬送面が傾斜搬送状態や滑り易くなった搭載状態であっても搬送物品を搭載して搬送することが可能な搬送チェーンに関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来の搬送チェーンとして、図１３に示すように、搬送物品Ｗを搭載する搬送面５１０ａとこの搬送面５１０ａの前後にそれぞれ突設されたヒンジ部５１１とを備えた合成樹脂製のリンクモジュール５１０をヒンジ部５１１に形成されたピン挿入孔５１２に挿通する連結ピン５２０でチェーン長手方向に多数連結するとともに駆動側スプロケットＳ１と従動側スプロケットＳ２との間で掛け回して飲料用ボトル、ドリンク用缶などの搬送物品Ｗを搬送するコンベヤベルト５００が知られている (例えば、特許文献１参照)。
【０００３】
また、従来の搬送チェーンとして、搬送物品を吸着保持しながら搬送するために、薄肉の強磁性ヨークに固着した永久磁石の表面をエポキシ樹脂などで被覆してなる多数の吸着用磁石ユニットをチェーン基体部の外周側に一定間隔で配置して磁気吸着可能な荷物などを落下させることなく搬送する磁石付きチェーンが知られている (例えば、特許文献２参照)。
【０００４】
さらに、従来の搬送チェーンとして、両側のヨークに装着された磁石をチェーン長手方向に沿って取り付けて鉄製のドリンク缶等磁性材料より成る筺体を搬送する磁石式チェーンコンベヤが知られている (例えば、特許文献３参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００５】
【特許文献１】特開２００４−２６２６００号公報（第６欄、図１）
【特許文献２】特開平９−２７５０１１号公報（第８頁、図８）
【特許文献３】特開平８−３１０３８４号公報（第３欄、図１０）
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
しかしながら、従来のようなコンベヤベルト５００は、搬送面５１０ａに搬送物品Ｗを搭載するリンクモジュール５１０が自己潤滑性を発揮する合成樹脂製で成形されているため、図１４に示すように、傾斜搬送状態で搬送物品Ｗに作用する斜面方向の分力が摩擦力を上回っている場合、あるいは、石鹸水、潤滑油などの滑り易い液体がリンクモジュールに付着してリンクモジュール５１０の搬送面５１０ａが過剰に滑り易くなっている場合、搬送物品Ｗが搬送面５１０ａ上で搬送衝撃などにより不意に転倒したり滑落したりして確実に搬送できないという問題があった。
【０００７】
また、従来のような磁石付きチェーンは、多数の吸着用磁石ユニットをチェーン基体部の外周面上に配置しているため、所謂、「バックベンド半径」と称する搬送面側と逆方向に曲がる半径が大きくなり、その結果として、チェーン戻り側においてチェーン伸びを吸収するためのアイドローラなどの中間ローラを用いてもタルミを十分に確保することができず、チェーン伸びを解消するための保守メンテナンスの負担頻度が増大し、そのまま放置すると、駆動スプロケットに磁石付きチェーンが噛み込んでチェーン切断に至るという問題があった。
しかも、従来のような磁石付きチェーンは、エポキシ樹脂などを高温で溶解して強磁性ヨークに固着した永久磁石の表面を被覆しているため、永久磁石が高温の樹脂温度に晒されて永久磁石の磁力が低下して十分な吸着保持力を発揮することができず、また、吸着用磁石ユニットが永久磁石を薄肉の強磁性ヨークに接着剤により固着しているため、長期使用時に永久磁石と強磁性ヨークとの接着が剥離して永久磁石が欠損し、搬送物品を安定して吸着保持することができないという問題があった。
【０００８】
さらに、従来のような磁石式チェーンコンベヤは、両側のヨークに装着された磁石が露出しているため、磁石が搬送衝撃などにより損傷して搬送物品を安定して吸着保持することができなくなったり、磁石の破片が搬送領域に飛散して搬送作業上の多くの不具合を生じるという問題があった。
【０００９】
そこで、本発明は、従来の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、搬送物品を磁力で吸着保持する磁石片をリンクモジュールの外形寸法を変更することなくリンクモジュール内に確実に組み込んで搬送面が傾斜搬送状態や滑り易くなった搭載状態であっても充分な吸着保持力を発揮して搬送物品を確実かつ安定して搬送するとともにチェーン戻り側で充分なタルミを確保した円滑な駆動搬送を実現し、しかも、磁石保守メンテナンス作業も簡便な搬送チェーンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【００１０】
請求項１に係る本発明は、搬送物品を搭載する搬送面と該搬送面の前後にそれぞれ突設されたヒンジ部とを備えた合成樹脂製のリンクモジュールを前記ヒンジ部に形成されたピン挿入孔に挿通する連結ピンを用いてチェーン長手方向に多数連結してなる搬送チェーンにおいて、前記搬送物品を磁力で吸着保持する磁石片が、前記リンクモジュールの搬送面に対して面一状態に装着される合成樹脂製の磁石カバーを介してリンクモジュールの搬送面に嵌め込まれていることにより、前述した課題を解決したものである。
【００１１】
請求項２に係る本発明は、請求項１記載の構成に加えて、前記磁石カバーが、前記リンクモジュールのチェーン幅方向に沿って磁石片を覆う細長の磁石カバー本体と該磁石カバー本体の両端からそれぞれ垂設した左右一対の挿入脚体と該挿入脚体の先端に突設した係止フックとを備えていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【００１２】
請求項３に係る本発明は、請求項２記載の構成に加えて、前記リンクモジュールが、前記リンクモジュールの搬送面に凹設された磁石嵌め込み用溝と前記磁石カバーの挿入脚体と係止フックとを受け入れる左右一対の挿入孔とを備えていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【００１３】
請求項４に係る本発明は、請求項３記載の構成に加えて、前記リンクモジュールが、前記挿入孔に挿入された係止フックを解除自在に係止させるフック操作用穴をリンク側面に備えていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【００１４】
請求項５に係る本発明は、請求項２乃至請求項４のいずれかに記載の構成に加えて、前記磁石カバーが、前記磁石カバー本体の両端からそれぞれ挿入脚体を越えて水平方向に突設した左右一対の形態安定翼を備えていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【００１５】
請求項６に係る本発明は、請求項１乃至請求項４のいずれかに記載の構成に加えて、前記磁石カバーが、前記磁石片をチェーン長手方向から挿入して収納する磁石収納部を備えていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【００１６】
請求項７に係る本発明は、請求項１乃至請求項６のいずれかに記載の構成に加えて、前記磁石片が、前記リンクモジュールのチェーン幅方向に沿った細長のプレート状に形成されていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【００１７】
請求項８に係る本発明は、請求項１乃至請求項７のいずれかに記載の構成に加えて、前記リンクモジュールのヒンジ部が、前記リンクモジュールのチェーン長手方向に隣接するリンクモジュールのヒンジ部と連結ピンを介して相互に連結されていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【発明の効果】
【００１８】
本発明の搬送チェーンによれば、搬送物品を搭載する搬送面とこの搬送面の前後にそれぞれ突設されたヒンジ部とを備えた合成樹脂製のリンクモジュールをヒンジ部に形成されたピン挿入孔に挿通する連結ピンを用いてチェーン長手方向に多数連結してなることにより、搬送物品を搬送面に搭載した状態で水平搬送することができるばかりでなく、本発明に特有の装置構成によって以下のような効果を奏することができる。
【００１９】
すなわち、請求項１に係る搬送チェーンによれば、搬送物品を磁力で吸着保持する磁石片がリンクモジュールの搬送面に対して面一状態に装着される合成樹脂製の磁石カバーを介してリンクモジュールの搬送面に嵌め込まれていることにより、磁石カバーがリンクモジュールの搬送面に対して面一状態に装着されているため、搬送物品を吸着保持する磁石片をリンクモジュールの外形寸法を変更することなくリンクモジュール内に確実に組み込んで搬送物品を安定して搭載することができ、また、磁石カバーに嵌め込まれた磁石片が搬送面上の搬送物品を確実に吸着保持するため、たとえば、傾斜搬送状態で搬送物品に作用する斜面方向の分力が摩擦力を上回っている場合、あるいは、石鹸水、潤滑油などの滑り易い液体がリンクモジュールに付着してリンクモジュールの搬送面が過剰に滑り易くなっている場合であっても、搬送物品を搬送面でスリップさせず安定して搬送することができる。
【００２０】
請求項２に係る搬送チェーンによれば、請求項１記載の搬送チェーンが奏する効果に加えて、磁石カバーがリンクモジュールのチェーン幅方向に沿って磁石片を覆う細長の磁石カバー本体とこの磁石カバー本体の両端からそれぞれ垂設した左右一対の挿入脚体とこれらの挿入脚体の先端に突設した係止フックとを備えていることにより、左右一対の挿入脚体が「スナップフィット作用」と称する挟持力を発揮してリンクモジュールの両端部に挿入されるとともに磁石カバー本体が磁石片を露出させることなく完全に覆った状態でリンクモジュールに固定されるため、磁石片が搬送物品、周辺機器などとの接触による不用意な破損から保護され、しかも、磁石片を装着する際に、磁石片を加熱することなく磁石片を嵌め込むため、従来の磁石付きチェーンで生じがちな磁石片の熱消磁を防止して搬送物品に対する充分な吸着保持力を発揮することができる。
【００２１】
請求項３に係る搬送チェーンによれば、請求項２記載の搬送チェーンが奏する効果に加えて、リンクモジュールがこのリンクモジュールの搬送面に凹設された磁石嵌め込み用溝を備えているとともに磁石カバーの挿入脚体と係止フックとを受け入れる左右一対の挿入孔を備えていることにより、磁石片と磁石カバーとがリンクモジュールの磁石嵌め込み用溝とこれに連続する挿入孔内に完全に収容されるため、搬送物品を吸着保持する磁石片をリンクモジュール内に確実に組み込むことができるとともに物品搬送時に磁石片の脱落を防止することができる。
【００２２】
請求項４に係る搬送チェーンによれば、請求項３記載の搬送チェーンが奏する効果に加えて、リンクモジュールが挿入孔に挿入された係止フックを解除自在に係止させるフック操作用穴をリンク側面に備えていることにより、磁石保守メンテナンス作業時にフック操作用穴から差し込んだ解除用ピンなどの解除治具で係止フックを搬送面側に向けて押し戻して係止フックの係止状態を解除することが可能になるため、磁石片の着脱を簡便に達成することができる。
【００２３】
請求項５に係る搬送チェーンによれば、請求項２乃至請求項４のいずれかに記載の搬送チェーンが奏する効果に加えて、磁石カバーが磁石カバー本体の両端からそれぞれ挿入脚体を越えて水平方向に突設した左右一対の形態安定翼を備えていることにより、磁石カバーをリンクモジュールに装着する際に左右一対の形態安定翼が磁石カバーに設けられた左右一対の挿入脚体に負荷される挿入孔に向けた押圧力を軽減するため、左右一対の挿入脚体を変形せずにリンクモジュールに設けた左右一対の挿入孔内に確実に挿入係止させることができる。
【００２４】
請求項６に係る搬送チェーンによれば、請求項１乃至請求項４のいずれかに記載の搬送チェーンが奏する効果に加えて、磁石カバーが磁石片をチェーン長手方向から挿入して収納する磁石収納部を備えていることにより、磁石片をリンクモジュールに装着する際に磁石片を磁石カバー内に挿入収納してからリンクモジュールに装着するため、リンクモジュールに対して磁石片を所定の収納位置に確実に位置決めすることができるとともに磁石片の装着作業を簡便に達成することができる。
【００２５】
請求項７に係る搬送チェーンによれば、請求項１乃至請求項６のいずれかに記載の搬送チェーンが奏する効果に加えて、磁石片がリンクモジュールのチェーン幅方向に沿った細長のプレート状に形成されていることにより、リンクモジュールのほぼ全幅に亙って磁気吸着力を発揮するため、搬送面上における搬送物品の大小や搭載位置に拘わらず搬送物品を確実に保持することができる。
【００２６】
請求項８に係る搬送チェーンによれば、請求項１乃至請求項７のいずれかに記載の搬送チェーンが奏する効果に加えて、リンクモジュールのヒンジ部がリンクモジュールのチェーン長手方向に隣接するリンクモジュールのヒンジ部と連結ピンを介して相互に連結されていることにより、隣接するリンクモジュール同士のヒンジ領域においてもチェーン長手方向に連続した搬送面が形成されているため、搬送区間内では搬送物品の安定した搭載状態を確保するとともに搬入搬出位置では搬送面に対する搬送物品の円滑な移載を達成し、また、隣接するリンクモジュール同士のヒンジ領域が、「バックベンド半径」と称する搬送面側と逆方向に曲がる半径を小さくするため、チェーン戻り側においてチェーン伸びを吸収するためのアイドラローラなどの中間ローラを用いてタルミを十分に確保した円滑な駆動搬送を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【００２７】
【図１】本発明の第１実施例である搬送チェーンの使用態様を示す模式図。
【図２】図１に示すＡ部分の拡大図。
【図３】図２に示す搬送チェーンの組み立て分解図。
【図４】図２に示す搬送チェーンの正面図。
【図５】図２に示す搬送チェーンのＢ−Ｂ断面図。
【図６】解除治具で係止フックの係止状態が解除される直前の状態を示す図。
【図７】解除治具で係止フックの係止状態が解除された直後の状態を示す図。
【図８】図１に示す搬送チェーンの動作図。
【図９】本発明の第２実施例である搬送チェーンの外観図。
【図１０】図９に示す搬送チェーンのＣ−Ｃ断面図。
【図１１】本発明の第３実施例である搬送チェーンの外観図。
【図１２】図１１に示す搬送チェーンのＤ−Ｄ断面図。
【図１３】従来のコンベヤベルトの使用態様図およびその一部拡大図。
【図１４】図１３に示す搬送チェーンの動作図。
【発明を実施するための形態】
【００２８】
本発明は、搬送物品を搭載する搬送面と該搬送面の前後にそれぞれ突設されたヒンジ部とを備えた合成樹脂製のリンクモジュールを前記ヒンジ部に形成されたピン挿入孔に挿通する連結ピンを用いてチェーン長手方向に多数連結してなる搬送チェーンにおいて、搬送物品を磁力で吸着保持する磁石片がリンクモジュールの搬送面に対して面一状態に装着される合成樹脂製の磁石カバーを介してリンクモジュールの搬送面に嵌め込まれ、搬送物品を吸着保持する磁石片をリンクモジュールの外形寸法を変更することなくリンクモジュール内に確実に組み込んで搬送面が傾斜搬送状態や滑り易くなった搭載状態であっても充分な吸着保持力を発揮して搬送物品を確実かつ安定して搬送するとともにチェーン戻り側で充分なタルミを確保した円滑な駆動搬送を実現し、磁石保守メンテナンス作業も簡便なものであれば、その具体的な実施の形態は、如何なるものであっても何ら構わない。
【００２９】
本発明の搬送チェーンにおけるリンクモジュールおよび磁力カバーの具体的な材質としては、機械的性質や成形精度の良い合成樹脂であれば如何なるものであっても良く、たとえば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂などのいずれであっても用いることができる。
【００３０】
そして、前述したリンクモジュールの具体的な形状については、搬送物品を搭載する搬送面とこの搬送面の前後にそれぞれ突設するヒンジ部とを備えてこのヒンジ部に形成したピン挿入孔に連結ピンを挿通させてチェーン長手方向に多数連結する形状であれば如何なるものであれば良く、さらに、リンクモジュールにおけるヒンジ部の配置形態については、少なくとも、前方２カ所の前方ヒンジ部と後方１カ所の後方ヒンジ部を備えたものであれば良く、たとえば、前方４カ所の前方ヒンジ部と後方３カ所の後方ヒンジ部を備えたものであっても良い。
そして、リンクモジュールのヒンジ部がリンクモジュールのチェーン長手方向に隣接するリンクモジュールのヒンジ部と連結ピンを介して相互に連結される形状を呈している場合には、隣接するリンクモジュール同士のヒンジ領域においてもチェーン長手方向に連続した搬送面が形成され、また、隣接するリンクモジュール同士のヒンジ領域が、「バックベンド半径」と称する搬送面側と逆方向に曲がる半径を小さくすることができる。
【００３１】
また、磁力カバーの具体的な形状については、リンクモジュールのチェーン幅方向に沿って磁石片を覆う細長の磁石カバー本体とこの磁石カバー本体の両端からそれぞれ垂設した左右一対の挿入脚体とこれらの挿入脚体の先端に突設した係止フックとを備えて、磁石カバーをリンクモジュールに装着する際に、係止フックが挿入孔に係止して、左右一対の挿入脚体が内側にたわみながら係止フックを挿入孔に押圧することにより、磁石カバーがリンクモジュールに取り付けられる、いわゆる、「スナップフィット作用」と称する挟持力を発揮してリンクモジュールの両端部に挿入されるとともに磁石カバー本体が磁石片を露出させることなく完全に覆った状態でリンクモジュールに固定されるものであれば良く、例えば、磁石カバー本体の具体的な本体形態、挿入脚体の脚長、太さなどの脚形態、係止フックのフック形態などは如何なるものであっても何ら差し支えない。
【００３２】
さらに、前述した磁石カバーのチェーン長手方向における具体的な配置形態については、リンクモジュールに対して１対１で順次配置されるか、若しくは、間欠的に配置されていれば良く、これらの配置形態は、搬送物品の大小、搬送形態、必要とされる磁気吸着力などによって適宜選択するのが望ましい。
【００３３】
そして、本発明の搬送チェーンに用いる磁石片の具体的な材質については、搬送物品の吸着保持に必要な磁力を確保できる永久磁石であれば、希土類磁石、フェライト磁石などのいずれであっても良く、残留磁束密度および保持力が高く温度変化に弱いネオジム磁石であっても採用可能であり、また、磁石片の大きさおよび形状は、磁石カバーを介してリンクモジュールの搬送面に嵌め込み可能であれば、矩形の短冊状のもの、棒状のもの、数枚のプレート状のものなど、如何なるものであっても構わない。
【００３４】
また、本発明の搬送チェーンに用いる連結ピンの具体的な材質については、鋼材、アルミ材、合成樹脂材のいずれであっても構わない。
【００３５】
さらに、本発明の搬送チェーンの具体的な使用形態については、搬送物品を水平搬送する搬送ラインばかりでなく、水平搬送する搬送ラインを含んで傾斜搬送する搬送ラインでも用いることが可能である。
【００３６】
なお、本発明の搬送チェーンに適用し得る搬送物品については、如何なる物品であっても差し支えないが、搬送面が傾斜搬送状態や滑り易くなった搭載状態であっても搬送させるためには、磁気吸着可能な搬送物品か、あるいは、磁気吸着可能な搬送容器に収容した搬送物品であること言うまでもない。
【実施例１】
【００３７】
以下に、本発明の一実施例である搬送チェーンを図面に基づいて説明する。
ここで、図１は、本発明の第１実施例である搬送チェーンの使用態様を示す模式図であり、図２は、図１に示すＡ部分の拡大図であり、図３は、図２に示す搬送チェーンの組み立て分解図であり、図４は、図２に示す搬送チェーンの正面図であり、図５は、図２に示す搬送チェーンのＢ−Ｂ断面図であり、図６は、解除治具で係止フックの係止状態が解除される直前の状態を示す図であり、図７は、解除治具で係止フックの係止状態が解除された直後の状態を示す図であり、図８は、図１に示す搬送チェーンの動作図であり、図９は、本発明の第２実施例である搬送チェーンの外観図であり、図１０は、図９に示す搬送チェーンのＣ−Ｃ断面図であり、図１１は、本発明の第３実施例である搬送チェーンの外観図であり、図１２は、図１１に示す搬送チェーンのＤ−Ｄ断面図である。
【００３８】
まず、本発明の第１実施例である搬送チェーン１００は、図１に示すように、搬送ラインのライン幅方向にそれぞれ並列配設されて、搬送物品Ｗ、特に、搬送ライン幅方向に長い長尺物からなる搬送物品Ｗを少なくとも傾斜搬送するものである。
【００３９】
すなわち、搬送ラインにそれぞれ設けられた本第１実施例の搬送チェーン１００は、図２及び図３に示すように、搬送物品Ｗを搭載する搬送面１１０ａとこの搬送面１１０ａの前後にそれぞれ突設されたヒンジ部１１１とを備えた合成樹脂製のリンクモジュール１１０を前記ヒンジ部１１１に形成されたピン挿入孔１１２に挿通する連結ピン１２０を用いてチェーン長手方向に無端状に多数連結され、搬送物品Ｗを磁力で吸着保持する磁石片１３０が、リンクモジュール１１０の搬送面１１０ａに対して面一状態に装着される合成樹脂製の磁石カバー１４０を介してリンクモジュール１１０の搬送面１１０ａに嵌め込まれている。
これにより、磁石カバー１４０がリンクモジュール１１０の搬送面１１０ａに対して面一状態に装着されて、磁石カバー１４０に嵌め込まれた磁石片１３０が搬送面上１１０ａの搬送物品Ｗを確実に吸着保持している。
【００４０】
そして、図３に示すように、前述したリンクモジュール１１０の搬送面１１０ａの前方４カ所に突出したヒンジ部１１１、すなわち、前方ヒンジ部１１１ａは、リンクモジュール１１０のチェーン長手方向に隣接するリンクモジュール１１０の搬送面１１０ａの後方３カ所に突出したヒンジ部１１１、すなわち、後方ヒンジ部１１１ｂとオフセット状態で対向して指組状に連結ピン１２０を介して相互に連結されている。
これにより、隣接するリンクモジュール１１０、１１０同士のヒンジ領域においてもチェーン長手方向に連続した搬送面１１０ａが形成され、また、隣接するリンクモジュール１１０，１１０同士のヒンジ領域が、「バックベンド半径」と称する搬送面１１０ａ側と逆方向に曲がる半径を小さくしている。
なお、本第１実施例では、前方に４カ所の前方ヒンジ部１１１ａと後方に３カ所の後方ヒンジ部１１１ｂを備えたリンクモジュール１１０を使用したが、前方ヒンジ部１１１ａと後方ヒンジ部１１１ｂとをオフセット状態で対向させて指組状に連結ピン１２０を介して相互に連結させることができるリンクモジュール１１０であれば良く、例えば、前方に２カ所の前方ヒンジ部１１１ａと後方に１カ所の後方ヒンジ部１１１ｂを備えたリンクモジュール１１０であっても良い。
【００４１】
さらに、リンクモジュール１１０の前方ヒンジ部１１１ａに形成される前方ピン挿入孔１１２ａは、図３に示すとおり、チェーン長手方向の前方平坦面と後方曲面とで構成された全体としてＤ字状孔形態を呈し、リンクモジュール１１０の後方ヒンジ部１１１ｂに形成される後方ピン挿入孔１１２ｂは、円形断面の孔形態を呈している。
【００４２】
他方、前述したリンクモジュール１１０、１１０同士を相互に連結する連結ピン１２０は、図３に示すとおり、チェーン長手方向に前方平坦面と後方曲面とで構成されたＤ字状のピン断面を有している。
そして、この連結ピン１２０は、連結ピン１２０の前方平坦面と前方ピン挿入孔１１２ａの前方平坦面とを対面させた状態で挿入してリンクモジュール１１０の前方ピン挿入孔１１２ａに対して回り止めされるとともに、リンクモジュール１１０の後方ピン挿入孔１１２ｂに回動自在に遊嵌されている。
【００４３】
そして、前述した連結ピン１２０には、リンクモジュール１１０に突設されたヒンジ部１１１のヒンジ側面１１１ｃと係止協働してチェーン幅方向に位置決め抜け止めする突起部１２１が連結ピン１２０の前方平坦面上に形成されている。
これにより、連結ピン１２０の突起部１２１が、ヒンジ側面１１１ｃに係止されて連結ピン１２０がリンクモジュール１１０に確実に位置決め固定され、連結ピン１２０の不用意な脱落を防止している。
【００４４】
また、磁石片１３０は、搬送物品Ｗを吸着保持する角型フェライト組織を呈する直方体状、すなわち、リンクモジュール１１０のチェーン幅方向に沿った細長のプレート状に形成されている磁石片１３０を保有している。
これにより、磁石片１３０は、リンクモジュール１１０のほぼ全幅に亙って磁気吸着力を発揮している。
【００４５】
つぎに、本発明の第１実施例に係る搬送チェーン１００が最も特徴とする磁石カバー１４０およびこの磁石カバー１４０を受け入れるリンクモジュール１１０の具体的な形態について、図４及び図５に基づいて詳しく説明する。
【００４６】
まず、磁石カバー１４０は、リンクモジュール１１０のチェーン幅方向に沿って磁石片１３０を覆う細長の磁石カバー本体１４１とこの磁石カバー本体１４１の両端からそれぞれ垂設した左右一対の挿入脚体１４２とこれらの挿入脚体１４２の先端に外側面方向に突設した係止フック１４３とを備えている。
他方、リンクモジュール１１０は、このリンクモジュール１１０の搬送面１１０ａに凹設された磁石嵌め込み用溝１１３と、磁石カバー１４０の挿入脚体１４２と係止フック１４３とを受け入れる左右一対の挿入孔１１４とを備えている。
そして、これらのリンクモジュール１１０と磁石カバー１４０とにより、左右一対の挿入脚体１４２が「スナップフィット作用」と称する挟持力を発揮してリンクモジュール１１０の両端部に挿入されるとともに磁石カバー本体１４１が磁石片１３０を露出させることなく完全に覆った状態でリンクモジュール１１０に固定され、また、磁石片１３０を装着する際に、磁石片１３０を加熱することなく磁石片１３０を嵌め込んでいる。
【００４７】
加えて、前述した磁石カバー１４０の取り外し動作について、図６および図７に基づいて説明すると、リンクモジュール１１０は、挿入孔１１４に挿入されて係止フック１４３を解除自在に係止させるフック操作用穴１１５をリンク側面１１１ｃに備えている。
したがって、磁石カバー１４０を取り外す際には、解除治具の先端をリンク側面１１０ｂに設けられたフック操作用穴１１５に挿し込み、この解除治具の先端でフック操作用穴１１５に係止している係止フック１４３をこじ上げて磁石カバー１４０をせり上げる。
これにより、磁石保守メンテナンス作業時にフック操作用穴１１５から差し込んだドライバーや解除用ピンなどの解除治具Ｄで係止フック１４３を搬送面１１０ａ側に向けて押し戻して係止フック１４３の係止状態を解除することが可能になる。
【００４８】
次に、第１実施例の搬送チェーン１００を用いた使用態様について、図１および図８に基づいてさらに詳しく説明する。
すなわち、搬送ラインの両側にそれぞれ設けられた本第１実施例の搬送チェーン１００は、図１に示すような搬送ラインのライン幅方向にそれぞれ並列配置され、図８に示すような駆動側スプロケットＳ１と従動側スプロケットＳ２との間に掛け回されて駆動されることにより、搬送物品Ｗを傾斜搬送している。
【００４９】
なお、本第１実施例の使用態様では、図１に示すように、搬送チェーン１００を搬送ラインのライン幅方向にそれぞれ並列に３本配置させているが、２本の搬送チェーン１００の間に磁石片を持たない多数のリンクモジュールを連結ピンにより連結した従来のコンベヤベルト５００を介在させているものであっても構わない。
【００５０】
また、図４に示す符号１１８は、本第１実施例の搬送チェーン１００が駆動側スプロケットＳ１と従動側スプロケットＳ２に噛み合う際にチェーン幅方向の位置ズレを規制するためにリンクモジュール１１０の裏面に突出して設けたガイド用リブである。
また、図８に示す符号Ｇは、本第１実施例の搬送チェーン１００を走行案内するために搬送ラインに沿って設けられたガイドレールであり、符号Ｒは、本第１実施例の搬送チェーン１００のチェーン伸びを吸収するタワミを確保するために搬送チェーン１００の戻り側に設置されるアイドラローラからなる中間ローラである。
【００５１】
このようにして得られた本第１実施例の搬送チェーン１００は、搬送物品Ｗを磁力で吸着保持する磁石片１３０がリンクモジュール１１０の搬送面１１０ａに対して面一状態に装着される合成樹脂製の磁石カバー１４０を介してリンクモジュール１１０の搬送面１１０ａに嵌め込まれているため、搬送物品Ｗを吸着保持する磁石片１３０をリンクモジュール１１０の外形寸法を変更することなくリンクモジュール１１０内に確実に組み込んで搬送物品Ｗを安定して搭載し、たとえば、傾斜搬送状態で搬送物品に作用する斜面方向の分力が摩擦力を上回っている場合、あるいは、石鹸水、潤滑油などの滑り易い液体がリンクモジュール１１０に付着してリンクモジュール１１０の搬送面１１０ａが過剰に滑り易くなっている場合であっても、図８に示すように、搬送物品Ｗを搬送面１１０ａでスリップさせず安定して搬送することができる。
【００５２】
そして、磁石カバー１４０がリンクモジュール１１０のチェーン幅方向に沿って磁石片１３０を覆う細長の磁石カバー本体１４１とこの磁石カバー本体１４１の両端からそれぞれ垂設した左右一対の挿入脚体１４２とこれらの挿入脚体１４２の先端に突設した係止フック１４３とを備えているとともに、リンクモジュール１１０がこのリンクモジュール１１０の搬送面１１０ａに凹設された磁石嵌め込み用溝１１３を備えているとともに磁石カバー１４０の挿入脚体１４２と係止フック１４３とを受け入れる左右一対の挿入孔１１４を備えているため、磁石片１３０を熱消磁させることなくリンクモジュール１１０内に確実に組み込んで搬送物品Ｗに対する充分な吸着保持力を発揮して、物品搬送時に磁石片１３０の脱落を防止し、磁石片１３０が搬送物品Ｗ、周辺機器などとの接触による不用意な破損を回避することができる。
【００５３】
しかも、リンクモジュール１１０が挿入孔１１４に挿入された係止フック１４３を解除自在に係止させるフック操作用穴１１５をリンク側面１１１ｃに備えていることにより、磁石片１３０の着脱を簡便に達成することができるなど、その効果は甚大である。
【実施例２】
【００５４】
次に、本発明の第２実施例である搬送チェーン２００について、図９乃至図１０に基づいて説明する。
まず、図９に示す搬送チェーン２００も、図１に示すような搬送チェーン１００と同様に、搬送ラインのライン幅方向にそれぞれ並列配設されて、搬送物品Ｗ、特に、搬送ライン幅方向に長い長尺物からなる搬送物品Ｗを少なくとも傾斜搬送するものである。
【００５５】
すなわち、搬送ラインにそれぞれ設けられた本発明の第２実施例である搬送チェーン２００は、図９乃至図１０に示すように、搬送物品Ｗを搭載する搬送面２１０ａとこの搬送面２１０ａの前後にそれぞれ突設されたヒンジ部２１１とを備えた合成樹脂製のリンクモジュール２１０をヒンジ部２１１に形成されたピン挿入孔２１２に挿通する連結ピン２２０を用いてチェーン長手方向に無端状に多数連結され、搬送物品Ｗを磁力で吸着保持する磁石片２３０が、リンクモジュール２１０の搬送面２１０ａに対して面一状態に装着される合成樹脂製の磁石カバー２４０を介してリンクモジュール２１０の搬送面２１０ａに嵌め込まれている。
これにより、磁石カバー２４０がリンクモジュール２１０の搬送面２１０ａに対して面一状態に装着されて、磁石カバー２４０に嵌め込まれた磁石片２３０が搬送面上２１０ａの搬送物品Ｗを確実に吸着保持している。
【００５６】
したがって、図９乃至図１０に示す本発明の第２実施例である搬送チェーン２００は、上述した第１実施例の搬送チェーン１００と同一の部材について対応する２００番台の符号を付してその重複する説明を省略する。
【００５７】
そこで、本発明の第２実施例である搬送チェーン２００が最も特徴とする磁石カバー２４０の具体的な形態について、図９乃至図１０に基づいて詳しく説明する。
【００５８】
すなわち、前述した磁石カバー２４０は、第１実施例に係る磁石カバー１４０と同様に、リンクモジュール２１０のチェーン幅方向に沿って磁石片２３０を覆う細長の磁石カバー本体２４１とこの磁石カバー本体２４１の両端からそれぞれ垂設した左右一対の挿入脚体２４２とこれらの挿入脚体２４２の先端に外側面方向に突設した係止フック２４３とを備えている。
そして、磁石カバー２４０は、磁石カバー本体２４１の両端からそれぞれ挿入脚体２４２を越えて水平方向に突設した左右一対の形態安定翼２４４を備えている。
これにより、左右一対の形態安定翼２４４が、磁石カバー２４０に設けられた左右一対の挿入脚体２４２に負荷される挿入孔２１４に向けた押圧力を軽減している。
【００５９】
このようにして得られた本第２実施例の搬送チェーン２００は、前述した本第１実施例の搬送チェーン１００が奏する効果と同様に、搬送物品Ｗを磁力で吸着保持する磁石片２３０をリンクモジュール２１０の外形寸法を変更することなくリンクモジュール２１０内に確実に組み込んで搬送物品Ｗを安定して搭載し、たとえば、傾斜搬送状態で搬送物品に作用する斜面方向の分力が摩擦力を上回っている場合、あるいは、石鹸水、潤滑油などの滑り易い液体がリンクモジュール２１０に付着してリンクモジュール２１０の搬送面２１０ａが過剰に滑り易くなっている場合であっても、搬送物品Ｗを搬送面２１０ａでスリップさせず安定して搬送することができるとともに、磁石カバー２４０が磁石カバー本体２４１の両端からそれぞれ挿入脚体２４２を越えて水平方向に突設した左右一対の形態安定翼２４４を備えているため、左右一対の挿入脚体２４２を変形せずにリンクモジュール２１０に設けた左右一対の挿入孔２１４、２１４内にそれぞれ確実に挿入係止させることができるなど、その効果は甚大である。
【実施例３】
【００６０】
次に、本発明の第３実施例である搬送チェーン３００について、図１１乃至図１２に基づいて説明する。
まず、図１１に示す搬送チェーン３００も、図１に示すような搬送チェーン１００と同様に、搬送ラインのライン幅方向にそれぞれ並列配設されて、搬送物品Ｗ、特に、搬送ライン幅方向に長い長尺物からなる搬送物品Ｗを少なくとも傾斜搬送するものである。
【００６１】
すなわち、搬送ラインにそれぞれ設けられた本発明の第３実施例である搬送チェーン３００は、図１１乃至図１２に示すように、搬送物品Ｗを搭載する搬送面３１０ａとこの搬送面３１０ａの前後にそれぞれ突設されたヒンジ部３１１とを備えた合成樹脂製のリンクモジュール３１０をヒンジ部３１１に形成されたピン挿入孔３１２に挿通する連結ピン３２０を用いてチェーン長手方向に無端状に多数連結され、搬送物品Ｗを磁力で吸着保持する磁石片３３０が、リンクモジュール３１０の搬送面３１０ａに対して面一状態に装着される合成樹脂製の磁石カバー３４０を介してリンクモジュール３１０の搬送面３１０ａに嵌め込まれている。
これにより、磁石カバー３４０がリンクモジュール３１０の搬送面３１０ａに対して面一状態に装着されて、磁石カバー３４０に嵌め込まれた磁石片３３０が搬送面上３１０ａの搬送物品Ｗを確実に吸着保持している。
【００６２】
したがって、図１１乃至図１２に示す本発明の第３実施例である搬送チェーン３００は、上述した第１実施例の搬送チェーン１００と同一の部材について対応する３００番台の符号を付してその重複する説明を省略する。
【００６３】
そこで、本発明の第３実施例である搬送チェーン３００が最も特徴とする磁石カバー３４０の具体的な形態について、図１１乃至図１２に基づいて詳しく説明する。
【００６４】
すなわち、上述した磁石カバー３４０は、第１実施例に係る磁石カバー１４０と同様に、リンクモジュール３１０のチェーン幅方向に沿って磁石片３３０を覆う細長の磁石カバー本体３４１とこの磁石カバー本体３４１の両端からそれぞれ垂設した左右一対の挿入脚体３４２とこれらの挿入脚体３４２の先端に外側面方向に突設した係止フック３４３とを備えている。
そして、磁石カバー３４０は、磁石片３３０をチェーン長手方向から挿入して収納する磁石収納部３４５を備えている。
これにより、磁石片３３０をリンクモジュール３１０に装着する際に磁石片３３０を磁石カバー３４０内に挿入収納して、すなわち、予め磁石片３３０を磁石収納部３４５に収納して磁石カバー３４０をリンクモジュール３１０に装着している。
【００６５】
このようにして得られた本第３実施例の搬送チェーン３００は、前述した本第１実施例の搬送チェーン１００が奏する効果と同様に、搬送物品Ｗを磁力で吸着保持する磁石片３３０をリンクモジュール３１０の外形寸法を変更することなくリンクモジュール３１０内に確実に組み込んで搬送物品Ｗを安定して搭載し、たとえば、傾斜搬送状態で搬送物品に作用する斜面方向の分力が摩擦力を上回っている場合、あるいは、石鹸水、潤滑油などの滑り易い液体がリンクモジュール３１０に付着してリンクモジュール３１０の搬送面３１０ａが過剰に滑り易くなっている場合であっても、搬送物品Ｗを搬送面３１０ａでスリップさせず安定して搬送することができるとともに、磁石カバー３４０が磁石片３３０をチェーン長手方向から挿入して収納する磁石収納部３４５を備えているため、リンクモジュール３１０に対して磁石片３３０を所定の収納位置に確実に位置決めすることができるとともに磁石片３３０の装着作業を簡便に達成することができるなど、その効果は甚大である。
【符号の説明】
【００６６】
１００ 、２００ 、３００ ・・・ 搬送チェーン
１１０ 、２１０ 、３１０ ・・・ リンクモジュール
１１０ａ、２１０ａ、３１０ａ・・・ 搬送面
１１０ｂ、２１０ｂ、３１０ｂ・・・ リンク側面
１１１ 、２１１ 、３１１ ・・・ ヒンジ部
１１１ａ、２１１ａ、３１１ａ・・・ 前方ヒンジ部
１１１ｂ、２１１ｂ、３１１ｂ・・・ 後方ヒンジ部
１１１ｃ、２１１ｃ、３１１ｃ・・・ ヒンジ側面
１１２ 、２１２ 、３１２ ・・・ ピン挿入孔
１１２ａ、２１２ａ、３１２ａ・・・ 前方ピン挿入孔
１１２ｂ、２１２ｂ、３１２ｂ・・・ 後方ピン挿入孔
１１３ 、２１３ 、３１３ ・・・ 磁石嵌め込み用溝
１１４ 、２１４ 、３１４ ・・・ 挿入孔
１１５ 、２１５ 、３１５ ・・・ フック操作用穴
１１８ 、２１８ 、３１８ ・・・ ガイド用リブ
１２０ 、２２０ 、３２０ ・・・ 連結ピン
１２１ ・・・ 突起部
１３０ 、２３０ 、３３０ ・・・ 磁石片
１４０ 、２４０ 、３４０ ・・・ 磁石カバー
１４１ 、２４１ 、３４１ ・・・ 磁石カバー本体
１４２ 、２４２ 、３４２ ・・・ 挿入脚体
１４３ 、２４３ 、３４３ ・・・ 係止フック
２４４ ・・・ 形態安定翼
３４５ ・・・ 磁石収納部
５００ ・・・ コンベヤベルト
５１０ ・・・ リンクモジュール
５１０ａ・・・ 搬送面
５１２ ・・・ ヒンジ部
５１４ ・・・ ピン挿入孔
５２０ ・・・ 連結ピン
Ｄ ・・・ 解除治具（ドライバー）
Ｇ ・・・ ガイドレール
Ｒ ・・・ 中間ローラ
Ｓ１ ・・・ 駆動側スプロケット
Ｓ２ ・・・ 従動側スプロケット
Ｗ ・・・ 搬送物品
【特許請求の範囲】
【請求項１】
搬送物品を搭載する搬送面と該搬送面の前後にそれぞれ突設されたヒンジ部とを備えた合成樹脂製のリンクモジュールを前記ヒンジ部に形成されたピン挿入孔に挿通する連結ピンを用いてチェーン長手方向に多数連結してなる搬送チェーンにおいて、
前記搬送物品を磁力で吸着保持する磁石片が、前記リンクモジュールの搬送面に対して面一状態に装着される合成樹脂製の磁石カバーを介してリンクモジュールの搬送面に嵌め込まれていることを特徴とする搬送チェーン。
【請求項２】
前記磁石カバーが、前記リンクモジュールのチェーン幅方向に沿って磁石片を覆う細長の磁石カバー本体と該磁石カバー本体の両端からそれぞれ垂設した左右一対の挿入脚体と該挿入脚体の先端に突設した係止フックとを備えていることを特徴とする請求項１記載の搬送チェーン。
【請求項３】
前記リンクモジュールが、前記リンクモジュールの搬送面に凹設された磁石嵌め込み用溝と前記磁石カバーの挿入脚体と係止フックとを受け入れる左右一対の挿入孔とを備えていることを特徴とする請求項２記載の搬送チェーン。
【請求項４】
前記リンクモジュールが、前記挿入孔に挿入された係止フックを解除自在に係止させるフック操作用穴をリンク側面に備えていることを特徴とする請求項３記載の搬送チェーン。
【請求項５】
前記磁石カバーが、前記磁石カバー本体の両端からそれぞれ挿入脚体を越えて水平方向に突設した左右一対の形態安定翼を備えていることを特徴とする請求項２乃至請求項４のいずれかに記載の搬送チェーン。
【請求項６】
前記磁石カバーが、前記磁石片をチェーン長手方向から挿入して収納する磁石収納部を備えていることを特徴とする請求項１乃至請求項４のいずれかに記載の搬送チェーン。
【請求項７】
前記磁石片が、前記リンクモジュールのチェーン幅方向に沿った細長のプレート状に形成されていることを特徴とする請求項１乃至請求項６のいずれかに記載の搬送チェーン。
【請求項８】
前記リンクモジュールのヒンジ部が、前記リンクモジュールのチェーン長手方向に隣接するリンクモジュールのヒンジ部と連結ピンを介して相互に連結されていることを特徴とする請求項１乃至請求項７のいずれかに記載の搬送チェーン。
【請求項１】
搬送物品を搭載する搬送面と該搬送面の前後にそれぞれ突設されたヒンジ部とを備えた合成樹脂製のリンクモジュールを前記ヒンジ部に形成されたピン挿入孔に挿通する連結ピンを用いてチェーン長手方向に多数連結してなる搬送チェーンにおいて、
前記搬送物品を磁力で吸着保持する磁石片が、前記リンクモジュールの搬送面に対して面一状態に装着される合成樹脂製の磁石カバーを介してリンクモジュールの搬送面に嵌め込まれていることを特徴とする搬送チェーン。
【請求項２】
前記磁石カバーが、前記リンクモジュールのチェーン幅方向に沿って磁石片を覆う細長の磁石カバー本体と該磁石カバー本体の両端からそれぞれ垂設した左右一対の挿入脚体と該挿入脚体の先端に突設した係止フックとを備えていることを特徴とする請求項１記載の搬送チェーン。
【請求項３】
前記リンクモジュールが、前記リンクモジュールの搬送面に凹設された磁石嵌め込み用溝と前記磁石カバーの挿入脚体と係止フックとを受け入れる左右一対の挿入孔とを備えていることを特徴とする請求項２記載の搬送チェーン。
【請求項４】
前記リンクモジュールが、前記挿入孔に挿入された係止フックを解除自在に係止させるフック操作用穴をリンク側面に備えていることを特徴とする請求項３記載の搬送チェーン。
【請求項５】
前記磁石カバーが、前記磁石カバー本体の両端からそれぞれ挿入脚体を越えて水平方向に突設した左右一対の形態安定翼を備えていることを特徴とする請求項２乃至請求項４のいずれかに記載の搬送チェーン。
【請求項６】
前記磁石カバーが、前記磁石片をチェーン長手方向から挿入して収納する磁石収納部を備えていることを特徴とする請求項１乃至請求項４のいずれかに記載の搬送チェーン。
【請求項７】
前記磁石片が、前記リンクモジュールのチェーン幅方向に沿った細長のプレート状に形成されていることを特徴とする請求項１乃至請求項６のいずれかに記載の搬送チェーン。
【請求項８】
前記リンクモジュールのヒンジ部が、前記リンクモジュールのチェーン長手方向に隣接するリンクモジュールのヒンジ部と連結ピンを介して相互に連結されていることを特徴とする請求項１乃至請求項７のいずれかに記載の搬送チェーン。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図１１】
【図１２】
【図１３】
【図１４】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図７】
【図８】
【図９】
【図１０】
【図１１】
【図１２】
【図１３】
【図１４】
【公開番号】特開２０１２−４１１４５（Ｐ２０１２−４１１４５Ａ）
【公開日】平成２４年３月１日（２０１２．３．１）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１０−１８４１６５（Ｐ２０１０−１８４１６５）
【出願日】平成２２年８月１９日（２０１０．８．１９）
【出願人】（０００００３３５５）株式会社椿本チエイン (861)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２４年３月１日（２０１２．３．１）
【国際特許分類】
【出願日】平成２２年８月１９日（２０１０．８．１９）
【出願人】（０００００３３５５）株式会社椿本チエイン (861)
【Ｆターム（参考）】
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