説明

搬送トレー

【課題】
光学素子の角部からの破損による不良を軽減し、製造工程から客先まで良好な品質で光学素子を搬送することができる搬送トレーの提供。
【解決手段】
容器1と蓋体2とから構成され、光学素子3を収容してなる搬送トレーであって、容器1には複数個の凹部形状5が有り、凹部5は光学素子3が容易に出し入れできる寸法を有し、光学素子3の大半が凹部5に収納する構造を持ち、蓋体2は容器1の該光学素子側から被うように被せ、凹部5に収納する該光学素子3と蓋体2の内側で光学素子3を押さえる形態を有しており、蓋体2の上面には光学素子3と接する箇所全域に少なくとも1本の内部に凸の溝6を設けて、凸部6の溝により光学素子3を押しつける構造を有し搬送トレー全体を真空密封する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
光学用素子を工程内で移動するときや客先への出荷時に用い、光学用素子が破損しないように、安全に確実に輸送することができる搬送トレーの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電結晶材料から製造される光学用素子は、主に映像機器の映像取り入れ部にあたる、レンズからの映像として入力された光源を光の三原色に分離するために用いられるプリズムのような透明薄板である。映像機器の映像入力である光源を分離する役目として重要な機能を持っているため、製造工程における光学用素子の加工精度は大変厳しく、構造的にも複数枚の薄板を張り合わせてひとつの光学用素子を構成するといった製造方法においても、複雑な製造工程と精密な表面処理が行われている。
【0003】
従って、製造工程における光学用素子の取り扱いは大変慎重に行われ、かつ複数工程を通過した上で光学用素子としてのひとつの製品が作られる。製造工程の中には、光学用素子としての機能を最大限に発揮させるために、光学用素子の光を通過させる主面に偏光効果をもった表面処理加工を行うなど、化学薬品による表面コーティングも行う必要がある。
【0004】
これらの製造工程を通過して製造が行われることから、工程間を移動するときや、工場から客先までの搬送時に用いられる光学用素子の搬送トレーには、以下に示す特許文献で開示する技術が用いられている。また、上述する光学部品は非常にゴミや埃の付着を嫌うもので、製造工程から出荷に至る全ての工程でゴミ(コンタミ)対策がとられている。しかし、最終製品を客先に提供する際の搬送収納容器に至っては、このゴミ対策が徹底していない点が多く、今日までも色々な工夫の中で、収納容器の形状や形態、方式の改善が行われている現状にある。
【特許文献1】特開2002−370780号公報
【特許文献2】特開2001−2167号公報
【特許文献3】特開2000−238877号公報 なお、出願人は前記した先行技術文献情報で特定される先行技術文献以外には、本発明に関連する先行技術文献を、本件出願時までに発見するに至らなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述するように、光学用素子は製造工程に用いる搬送トレーと、客先への出荷に用いる搬送トレーと、搬送トレー管理が必要となっている。その理由は全てがコンタミの対策の為である。現在一般に用いられる搬送トレーの光学用素子を保持する形状は、搬送トレーの凹部に光学用素子を落とし込むような形状であるために、製造工程途中における乾燥や、凹部形状であるためにほこりなども溜まり易い。
【0006】
加えて、光学用素子の取り扱いを考慮し凹部には適当な遊びがあるために、光学用素子が搬送トレーの中でおどることから、特に光学用素子の角部や端辺部と搬送トレーの凹部内部との接触を起因とする破損などが起こってしまう。そしてまた、光学用素子の角部や端辺部の破損から出た破損カスにより、光学用素子主面にキズを付ける原因を持つなど悪循環にもなってしまうことも考えられる。
【0007】
そして上述する危険性から最も問題かあると考えられるのが、搬送途中における収納容器内の素子から発生する発塵がある。収納容器の材質を非常に柔らかく、素子との接触を考慮し、極力ゴミ(コンタミ)が出ないように工夫をするが、その改善効果はなかなか見えて来ない状況にある。
【0008】
そこで、最近では容器本体(凹部側)と蓋体とによる収納容器などを真空パックで覆い、外部からのゴミの侵入と、真空パック内で搬送トレーを封止する収納容器形態にすることで容器の本体(凹部側)と蓋との組合せによる光学素子の圧接を行うことで素子の固定を狙った収納容器などが考えられているが、相変わらず改善が十分とは言えない現状でもある。
【0009】
また、容器本体と蓋体とは収納する光学素子に対して緩衝効果を持った材質(可撓性容器となっている)で製作していることから、特に蓋体については、蓋体の長手方向で反り易くなっていることから、収納する光学素子を確実に保持できにくいという課題もある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために本発明は、容器と蓋体とから構成され、光学素子を収容してなる搬送トレーであって、容器には複数個の凹部形状が有り、前記凹部は前記光学素子が容易に出し入れできる寸法を有し、前記光学素子の大半が前記凹部に収納する構造を持ち、前記蓋体は前記容器の該光学素子側から被うように被せ、前記凹部に収納する該光学素子と前記蓋体の内側で前記光学素子を押さえる形態を有しており、前記蓋体の上面には前記光学素子と接する箇所全域に少なくとも1本の内部に凸の溝を設けて、前記凸部の溝により前記光学素子を押しつけることを特徴とする搬送トレーである。
【0011】
そして、前記搬送トレー全体を真空密封することで、容器と蓋体とを密接することで、容器と蓋体とで挟まれる光学素子を固定するものである。従って、容器と蓋体とは簡単に成形できるポリスチレン(PS)材料を用い、前記材料の中にはカーボン素材を含有することで導通性を持たせることによって、静電気対策処理が施されていることにも特徴を持つ搬送トレーである。
【0012】
要するに本発明は、容器と蓋体とから構成されており、容器には複数個の凹部形状が有りこの凹部に光学素子を収納することで光学素子を保持する構造となっている。また、凹部の深さは光学素子を立てる格好で収納できる十分な深さを持ち、蓋体の内壁によって光学素子を押さえ付けることで、容器と蓋体の組合せで搬送トレーが完成する。
【0013】
また、搬送トレー全体を真空密封することで搬送トレーの容器と蓋体とがしっかりと組合わさり搬送トレー内の光学素子もガタツキの無い状態で収納する事を可能とする。更に、蓋体の上面には前記光学素子と接する箇所全域に少なくとも1本の内部に凸の溝を設けることで、蓋体の剛性を高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
容器と蓋体とで光学素子を挟み込む可撓性のある材料で搬送トレーを形成し、搬送トレーを真空密封することで搬送トレー内に収納する光学素子もガタツキ無く保持することにより輸送時においても光学素子の搬送トレー内でのガタツキを低減し、搬送時におけるコンタミの発生も防止することができる。そして、その一方では、蓋体の上面に光学素子と接する箇所全域に少なくとも1本の内部に凸の溝を設けることで、可撓性容器に剛性効果を加えることができる。また、真空密封の形態であることから外部からのコンタミの侵入を阻止でき、真空密封を解放してしまえば、搬送トレーは容器と蓋体とを分離することができるので、搬送トレーに収納する光学素子の出し入れも非常に簡単に行える。
【0015】
以上のことから、防塵対策と、使用利便性の両立に加えて、最も重要な搬送時における素子の破損、光学素子角部、端辺部から発生する細かな光学素子のカス(コンタミ)の発生を皆無にできることで、製造工程から出荷、客先での開梱開梱に至るまでの全てにおけるコンタミの発生を無くすことで、光学素子の品質の向上と、製品の信頼性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面に従ってこの発明の実施例を説明する。なお、各図において同一の符号は同様の対象を示すものとする。本発明による1実施例の形態について、光学素子3の搬送用に用いる梱包ケースを1例にして説明する。図1は本実施の形態を示す分解斜視図であり、図2は図1を組合せて光学素子3を収納したときの状態の部分拡大図である。
【0017】
搬送トレー4は、容器1と蓋体2とから構成され、前記容器1には複数個の凹部5形状が有り、前記凹部5は前記光学素子3が容易に出し入れできる寸法を有し、前記光学素子3の大半が前記凹部5に収納する構造を持ち、前記蓋体2は前記容器1の該光学素子3側から被うように被せ、前記凹部5に収納する該光学素子3と前記蓋体2の内側で前記光学素子3を押さえる形態を有しており、前記蓋体の上面には前記光学素子と接する箇所全域に少なくとも1本の内部に凸の溝を設けて、前記凸部の溝により前記光学素子を押しつける構造に特徴を持ったものである。
【0018】
そして、容器1と蓋体2ともに例えばポリスチレン(PS)材料からなり、成形により加工されている。容器1には光学素子3を図に示すような方向で収納する複数の凹部5が形成されており、蓋体2により光学素子3を被う格好で搬送トレー4内に光学素子3を保持収納するものである。
【0019】
図3に本発明の要部を誇張して容器1と蓋体2の全貌を図示しないで描画した模式図で説明するが、搬送トレー4を組合わせたときに、光学素子3に対して容器1の凹部5の面接触と蓋体2の凸部6とが光学素子3に接することで、特に蓋体2の凸部6の点接触により光学素子3を確実に保持することができる。このように蓋体2による光学素子3の押さえを蓋体2に設けた凸部6により面接触から点接触にしたものである。
【0020】
ここで、上述する蓋体2は可撓性構造であることから、剛性効果が弱いという心配が持たれてくる。容器部1について光学素子3を収納するいくつもの凹部5を有することから比較的可撓性構造であっても剛性効果を持たせることができるが、蓋体2については、単純な成型構造のために、剛性効果を得に難い。そこで蓋体2に凸部6を形成することで蓋体の長手方向の反りを吸収できる剛性を高めることができる。
【0021】
また、上述する蓋体2の上面に形成する光学素子3を押さえつける凸部の溝を容器1の凹部5の底面部にも同様に形成すると更に光学素子の保持を確実することができる。なお、凸部6の光学素子3に接する箇所の形状は点接触になる形状が好ましい。
【0022】
従って、容器1の凹部5に該当する蓋体2には個々に点接触の凸部形状を形成すればよいが、本発明は蓋体2の光学素子と接する箇所全域に少なくとも1本の内部(光学素子に接する側)に凸部6の溝を形成することで代用するものである。
【0023】
なお、図面では特に図示していないが、搬送トレーを複数段の積み重ねができるように、蓋体2の上面に突起部を設け、容器1の下面に孔部を設けこの突起部と孔部とで積み重ねる構造にすることで、袋に入れ真空密封したときの搬送トレー4の数量を増やすこともできる。
【0024】
一方、図4に示すのは本発明で用いる搬送トレー4に光学素子3を収納し客先に出荷し、客先で開梱するまでの流れを示したものである。工場で製造した光学素子3を本発明の収納トレー4の容器1に収納し、蓋体2を被せた後に、搬送トレー4全体をパック(真空密封袋)で被った後に、真空密封処理を行い、その状態で通常の配送ルートを経由し客先にて開梱されるのが一連の流れである。
【0025】
上述のように搬送トレー4を真空密封で被うことにより搬送トレー4と蓋体2との密接具合を向上させることで、搬送トレー4内に収納する光学素子3を搬送トレー4内でガタツキ無く保持することができる。また搬送トレー4が容器1と蓋体2とに分割できる構造であることから、真空密封の袋の中に搬送トレー4を入れることで容器1と蓋体2とが一体化し、真空密封後では外部からの微細なコンタミの侵入を排除することができる。
【0026】
なお、本発明により搬送トレー4内に収納する光学素子3を傷つけることなく、また光学素子3から発生する搬送トレー4の収納部とのこすれを発生させることなく確実に光学素子3を搬送できることができる。また光学素子3の主面にはフィルタ特性を確保するための表面処理膜の加工が施されているが図示していない。
【0027】
本実施例では搬送トレー4の材料をポリスチレン(PS)樹脂により成形して説明するが、同種の様に加工のし易い材料であっても構わない。そして嵌合するための構造や数には特に制限をするものでも無い。なお、搬送トレー4から静電気の発生と、搬送トレー4に対して静電気を蓄電することの無いように、成形に用いる樹脂材料にはカーボン素材を含有することで静電気対策処理を行っている。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の1実施例を示す分解斜視図である。
【図2】図1を組合せて光学素子を収納したときの状態の部分拡大図である。
【図3】本発明の要部を説明する拡大図である。
【図4】本発明の搬送トレーに光学素子を収納し客先で開梱するまでの流れを示すフロー図である。
【符号の説明】
【0029】
1 容器
2 蓋体
3 光学素子
4 搬送トレー
5 凹部
6 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と蓋体とから構成され、光学素子を収容してなる搬送トレーであって、容器には複数個の凹部形状が有り、前記凹部は前記光学素子が容易に出し入れできる寸法を有し、前記光学素子の大半が前記凹部に収納する構造を持ち、
前記蓋体は前記容器の該光学素子側から被うように被せ、前記凹部に収納する該光学素子と前記蓋体の内側で前記光学素子を押さえる形態を有しており、
前記蓋体の上面には前記光学素子と接する箇所全域に少なくとも1本の内部に凸の溝を設けて、前記凸部の溝により前記光学素子を押しつけることを特徴とする搬送トレー。
【請求項2】
請求項1記載の搬送トレーは、該容器の該凹部底面にも前記光学素子と接する箇所全域に少なくとも1本の内部に凸の溝を設けて、前記凸部の溝により前記光学素子を押しつけることを特徴とする搬送トレー。
【請求項3】
請求項1記載の搬送トレー全体を真空密封することを特徴とする搬送トレー。
【請求項4】
請求項1記載の搬送トレーは、カーボン素材を含有したポリスチレン(PS)材料を用いることで、静電気対策処理が施されていることを特徴とする搬送トレー。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−182363(P2006−182363A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−375388(P2004−375388)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000104722)京セラキンセキ株式会社 (870)
【Fターム(参考)】