説明

搬送ベルトの製造方法及び搬送ベルト

【課題】搬送ベルトにおける繊維層のほつれを防止する。
【解決手段】搬送ベルト1を製造するには、まず、樹脂層11の両面に心体帆布層12、13を、心体帆布層13の上面にカバー層14をそれぞれ積層させ(積層工程)、次に、樹脂層11及び心体帆布層12、13の幅方向に関する両端部をその先端部を残して除去することによって空間16を形成し(繊維層除去工程)、この空間16に樹脂材料からなる保護材15を充填する(充填工程)。そして、樹脂層11、心体帆布層12、13及びカバー層14の幅方向に関する両端部を、保護材15の一部とともに切断し、これらの幅方向に関する端面に保護材15を露出させる(切断工程)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に配置された搬送対象を搬送する搬送ベルトの製造方法、及び搬送ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の樹脂ベルトにおいては、心体帆布の上面に表面カバー樹脂層が配置されているとともに、心体帆布の下面に樹脂含浸不織布が配置されている。これにより、心体帆布の上下面は外部に露出せず、心体帆布の上下面が、樹脂ベルトが取り付けられるコンベアのフレームなどに接触して心体帆布がほつれてしまうのを防止することができる。
【0003】
【特許文献1】実開平6−8324号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の樹脂ベルトにおいては、樹脂ベルトの幅方向に関する両端面において心体帆布が露出しているため、樹脂ベルトが蛇行したり、位置が偏った状態で樹脂ベルトが走行した場合などには、樹脂ベルトの幅方向に関する端面が、コンベアのフレームなどに接触して、心体帆布がほつれてしまう虞がある。そして、搬送ベルトにより搬送される搬送対象が食品である場合などには、ほつれた心体帆布の繊維が搬送対象に付着してしまうと衛生上問題となる。
【0005】
ここで、このようなほつれを防止するために、樹脂ベルトの幅方向に関する両端部を加熱することによって溶着することや、樹脂ベルトの幅方向に関する両端部に接着剤を塗布すること等が考えられるが、これらの場合には、溶着された部分あるいは接着剤が塗布された部分の樹脂ベルトの幅方向に関する厚みが小さく、樹脂ベルトの使用によってこの部分がすぐに摩耗して、心体帆布のほつれ防止の効果がなくなってしまう。すなわち、搬送ベルトが、その幅方向に関する端面の接触に対する耐久性が低いものとなってしまう。
【0006】
本発明の目的は、繊維層がほつれてしまうのを防止することができ、幅方向の端面の接触に対する耐久性も高い搬送ベルトの製造方法及びこのような搬送ベルトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係る搬送ベルトの製造方法は、互いに積層された複数の層を備えており、前記複数の層が、少なくとも、繊維材料からなる繊維層と、前記複数の層の積層方向に関する一方の端に配置されたカバー層とを含む搬送ベルトの製造方法であって、前記複数の層を互いに積層させてこれらの積層体を形成する積層工程と、前記積層体における前記繊維層の幅方向に関する両端部を除去する繊維層除去工程と、前記積層体の前記繊維層が除去された部分に保護材を充填する充填工程と、前記積層体の幅方向に関する両端部を前記保護材の一部とともに切断して、前記保護材を前記積層体の幅方向に関する両側面に露出させる切断工程とを備えていることを特徴とするものである。
【0008】
これによると、搬送ベルトの幅方向に関する両端面に繊維層を覆う保護材が露出することになるため、搬送ベルトを駆動したときに、繊維層が、搬送ベルトが配置されるコンベアのフレームなどに接触しない。したがって、繊維層がほつれて、ほつれた繊維が搬送対象に付着してしまうのを防止することができる。
【0009】
また、繊維層の除去された部分に保護材を充填しているので、保護材の繊維層の幅方向に関する厚みを大きくすることができ、単に搬送ベルトの端部を加熱することによって溶着した場合や、搬送ベルトの端部に接着剤を塗布した場合などと比べて、搬送ベルトにおける幅方向の端面の接触に対する耐久性が高くなる。
【0010】
また、繊維層の除去されることによって形成された空間の一方の面が、カバー層によって塞がれているため、繊維層の除去された部分に容易に保護材を充填することができる。
【0011】
第2の発明に係る搬送ベルトの製造方法は、第1の発明に係る搬送ベルトの製造方法であって、前記繊維層除去工程において、前記積層体における前記繊維層の幅方向に関する両端部をその先端部を残して除去することを特徴とするものである。
【0012】
これによると、繊維層の幅方向に関する両端部をその先端部を残して除去しているため、積層体の繊維層が除去された部分が溝状になり、保護材を容易に充填することができる。
【0013】
第3の発明に係る搬送ベルトの製造方法は、第1又は第2の発明に係る搬送ベルトの製造方法であって、前記搬送ベルトが、樹脂材料からなる樹脂層の両面に前記繊維層が配置されているとともに、前記繊維層のうちの一方における前記樹脂層と反対側の面に前記カバー層が配置された構成を有しており、前記繊維層除去工程において、これら2層の繊維層とともに、前記樹脂層における前記繊維層の除去される部分と対向する部分を除去することを特徴とするものである。
【0014】
これによると、搬送ベルトが、樹脂層の両面に繊維層がそれぞれ配置され、繊維層の一方の樹脂層と反対側の表面にカバー層が形成された構成を有している場合でも、保護材により、繊維層がほつれて、ほつれた繊維が搬送対象に付着してしまうのを防止することができる。
【0015】
第4の発明に係る搬送ベルトの製造方法は、第3の発明に係る搬送ベルトの製造方法であって、前記保護材が、前記樹脂層と同じ材料によって構成されていることを特徴とするものである。
【0016】
これによると、保護材と樹脂層とが同じ材料であるので、充填した保護材が十分に積層体に接着される。
【0017】
第5の発明に係る搬送ベルトの製造方法は、第1〜第3のいずれかの発明に係る搬送ベルトの製造方法であって、前記繊維層除去工程において、研磨加工によって前記繊維層を除去することを特徴とするものである。
【0018】
これによると、研磨加工により、繊維層を容易に除去することができる。
【0019】
第6の発明に係る搬送ベルトの製造方法は、第4の発明に係る搬送ベルトの製造方法であって、前記繊維層除去工程において除去される前記繊維層の幅が、5〜20mmであることを特徴とするものである。
【0020】
これによると、研磨加工により繊維層を除去する場合、除去される部分を5〜20mmとすることにより、繊維層を容易に除去することができる。
【0021】
第7の発明に係る搬送ベルトの製造方法は、第1〜第5のいずれかの発明に係る搬送ベルトの製造方法であって、前記保護材が樹脂材料によって構成されていることを特徴とするものである。
【0022】
これによると、保護材が樹脂材料により構成されているので、充填工程において保護材を容易に充填することができる。
【0023】
第8の発明に係る搬送ベルトの製造方法は、互いに積層された複数の層を備えており、前記複数の層が、少なくとも、繊維材料からなる繊維層と、前記複数の層の積層方向に関する一方の端に配置された、その幅方向に関する長さが前記繊維層よりも長いカバー層とを含む搬送ベルトの製造方法であって、前記カバー層がその幅方向の両側に前記繊維層よりも外側にはみ出るように、前記複数の層を互いに積層させてこれらの積層体を形成する積層工程と、前記積層体における、前記カバー層の前記繊維層よりも外側にはみ出した部分の前記繊維層側に、前記繊維層の幅方向の両端部を覆う保護材を充填する充填工程と、
前記積層体の幅方向に関する両端部を前記保護材の一部とともに切断して、前記保護材を前記積層体の幅方向に関する両側面に露出させる切断工程とを備えていることを特徴とするものである。
【0024】
これによると、搬送ベルトの幅方向に関する両端面に繊維層を覆う保護材が露出することになるため、搬送ベルトを駆動したときに、繊維層が、搬送ベルトが配置されるコンベアのフレームなどに接触しない。したがって、繊維層がほつれて、ほつれた繊維が搬送対象に付着してしまうのを防止することができる。
【0025】
また、カバー層が繊維層よりも外側にはみ出しているため、カバー層のこの部分の繊維層側に保護材を充填することにより、保護材を容易に充填することができるとともに、保護材の繊維層の幅方向に関する厚みを大きくすることができ、単に搬送ベルトの端部を加熱することによって溶着した場合や、搬送ベルトの端部に接着剤を塗布した場合などと比べて、搬送ベルトにおける幅方向の端面の接触に対する耐久性が高くなる。
【0026】
第9の発明に係る搬送ベルトは、互いに積層された複数の層を備えており、前記複数の層が、少なくとも、繊維材料からなる繊維層と、前記複数の層の積層方向に関する一方の端に配置されたカバー層とを含んでおり、前記カバー層が、前記繊維層の幅方向の両側に前記繊維層よりも外側まで延びており、前記カバー層の前記繊維層よりも外側まで延びた部分の前記繊維層側には、前記繊維層の幅方向の両端面を覆う保護材が配置されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、搬送ベルトの幅方向に関する両端面に繊維層を覆う保護材が露出することになるため、搬送ベルトを駆動したときに、繊維層が、搬送ベルトが配置されるコンベアのフレームなどに接触しない。したがって、繊維層がほつれて、ほつれた繊維が搬送対象に付着してしまうのを防止することができる。
【0028】
また、繊維層の除去された部分に保護材を充填しているので、保護材の繊維層の幅方向に関する厚みを大きくすることができ、単に搬送ベルトの端部を加熱することによって溶着した場合や、搬送ベルトの端部に接着剤を塗布した場合などと比べて、搬送ベルトの耐久性が高くなる。
【0029】
また、繊維層の除去されることによって形成された空間の一方の面が、カバー層によって塞がれているため、繊維層の除去された部分に保護材を容易に充填することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。図1は、本発明に係る搬送ベルトの幅方向(搬送ベルトが走行する方向と直交する方向)の断面を示す図である。図1に示すように、搬送ベルト1は、互いに積層された樹脂層11、2つの心体帆布層12、13(繊維層)及びカバー層14と、保護材15とを有している。
【0031】
樹脂層11は、例えば、ポリウレタン、塩化ビニル、ポリオレフィンなどの樹脂材料からなる層であり、搬送ベルト1の厚み方向に関する略中央部に位置している。心体帆布層12、13は、ポリエステル糸、ポリアミド系合成繊維糸、綿糸、麻糸などの繊維材料によって織られた帆布の層である。心体帆布層12、13は、それぞれ、樹脂層11の下面及び上面に配置されており、樹脂層11の下面及び上面を覆っている。カバー層14は、例えば、ポリウレタン、塩化ビニル、ポリオレフィンなどの樹脂材料からなり、心体帆布層13の上面(樹脂層11と反対側の面)に配置されて心体帆布層13の上面を覆っているとともに、搬送ベルト1の幅方向(図1の左右方向)に関する両側に、樹脂層11及び心体帆布層12、13よりも外側にはみ出している。そして、搬送ベルト1においては、カバー層14の上面に搬送ベルト1によって搬送される搬送対象が配置される。
【0032】
保護材15は、カバー層14の樹脂層11及び心体帆布層12、13よりも外側にはみ出した部分の下面(心体帆布層12、13側)に配置されており、樹脂層11及び心体帆布層12、13の幅方向に関する両端面をそれぞれ覆っている。これにより、搬送ベルト1においては、その幅方向に関する両端面に、心体帆布層12、13が露出しない。したがって、搬送ベルト1をコンベアなどに取り付けて駆動させたときに、搬送ベルト1が蛇行したり、搬送ベルト1が位置が偏った状態で走行したりして、搬送ベルト1の幅方向に関する両端部がコンベアのフレームなどに接触しても、心体帆布層12、13の幅方向に関する端面がこれらに接触することがなく、心体帆布層12、13がほつれてしまうのを防止することができる。
【0033】
ここで、搬送ベルト1により搬送される搬送対象が食品である場合などには、ほつれた心体帆布層12、13の繊維が搬送対象に付着してしまうと衛生上問題となるが、本実施の形態では、搬送ベルト1とコンベアのフレームなどとの接触によって心体帆布層12、13にほつれが生じてほつれた繊維が搬送対象に付着してしまうことを防止することができる。
【0034】
次に、本実施の形態に係る搬送ベルト1において上述したような心体帆布層12、13のほつれの防止効果が得られることを確かめるために、図2(a)に示すような評価装置20を用いて評価を行った結果について説明する。
【0035】
図2(a)に示すように、評価装置20は、駆動プーリ21、従動プーリ22〜25及び当て板26を有している。そして、搬送ベルト1が、プーリ21〜25に巻きかけられており、駆動プーリ21が回転することにより搬送ベルト1が走行するとともに、搬送ベルト1が走行するのに伴って従動プーリ22〜25が回転する。これにより、搬送ベルト1がプーリ21〜25に沿って走行する。また、プーリ21〜25に巻きかけられた搬送ベルト1は、図2(a)、(b)に示すように、その幅方向に関する一方の端部が常に当て板26に接触した状態で走行する。ここで図2(b)は図2(a)を矢印Bの方向から見た図である。
【0036】
そして、このような評価装置20を用いて、図1に示す本実施の形態に係る搬送ベルト1と、図3に示すような、樹脂層11’、心体帆布層12’、13’及びカバー層14’の幅方向に関する長さが全てほぼ同じであり、保護材15がない搬送ベルト1’とをそれぞれ走行させると、保護材15のない搬送ベルト1’を走行させた場合には、心体帆布層12’、13’にほつれが生じてしまったが、心体帆布層12、13の幅方向に関する両端面が保護材15に覆われた搬送ベルト1を走行させた場合には心体帆布層12、13のほつれが生じなかった。
【0037】
なお、この評価装置20においては、プーリ21〜25の直径が30mm、搬送ベルトに係る張力が2N/mm、当て板26の図2の左右方向に関する幅が200mm、当て板26により搬送ベルトに加えられる力が0.1N/mm、搬送ベルトの走行速度が50m/minであり、搬送ベルトの評価は、上記のような条件で、搬送ベルトがプーリ21〜25をそれぞれ通過することによって40万回屈曲されるまで搬送ベルトを走行させて行った。
【0038】
次に、図1に示す搬送ベルト1の製造方法について説明する。図4は搬送ベルト1の製造方法を示す工程図である。なお、以下に説明する搬送ベルト1の製造方法は、その幅方向の両端部で互いに同じであるので、図4では、搬送ベルト1の幅方向に関する一方の端部のみを図示している。
【0039】
搬送ベルト1を製造するためには、まず、図4(a)に示すように、幅方向に関する長さがほぼ同じである、樹脂層11、心体帆布層12、13及びカバー層14を互いに積層させてこれらの積層体を形成する(積層工程)。
【0040】
次に、図4(b)に示すように、研磨加工などにより、上記積層体における、樹脂層11、心体帆布層12、13の幅方向に関する両端部を、その先端部を残して除去する(繊維層除去工程)。これにより、樹脂層11及び心体帆布層12、13が除去された部分に、樹脂層11、心体帆布層12、13及びカバー層14に囲まれた空間16が形成される。ここで、樹脂層11及び心体帆布層12、13の除去された部分の幅Wは5〜20mm程度であり、研磨加工により、樹脂層11及び心体帆布層12、13を容易に除去することができる。
【0041】
次に、図4(c)に示すように、形成された空間16に、例えば、ポリウレタン、塩化ビニル、ポリオレフィンなど樹脂材料からなる保護材15を充填する(充填工程)。このとき、充填材料をベルトに十分接着させる為に、カバー層14と動材質からなる樹脂材料を充填材料とすることが好ましい。より好ましくは、カバー層14と充填材料とをポリウレタンなどの耐摩耗性の高い材料とすることが好ましい。そして、保護材15が熱硬化性の樹脂からなる場合には加熱処理を行い、保護材15が熱可塑性樹脂からなる場合には常温に戻すなどして、保護材15を硬化させる。
【0042】
また、このとき、空間16の上面がカバー層14によって塞がれているため、空間16に保護材15を容易に充填することができる。さらに、前述したように、樹脂層11及び心体帆布層12、13の幅方向に関する両端部をその先端部を残して除去しているので、空間16が図4(b)に示すような溝状になっており、充填した保護材15が積層体の幅方向の外側に漏れ出すことがなく、空間16に保護材15を一層充填しやすい。加えて、保護材15が樹脂材料であるので、空間16に保護材15をさらに充填しやすい。
【0043】
次に、図4(d)に示すように、樹脂層11、心体帆布層12、13及びカバー層14の積層体の幅方向に関する両端部を、保護材15の一部とともに切断し、積層体の幅方向に関する両端面に保護材15を露出させる(切断工程)。そして、この切断工程において幅方向に関する両端部が切断された積層体が、搬送ベルト1となる。
【0044】
このような搬送ベルト1は、樹脂層11及び心体帆布層12、13の幅方向に関する端部を除去して形成した空間16に保護材15を充填しているため、搬送ベルト1の幅方向に関する保護材15の厚みを大きくすることができる。したがって、搬送ベルト1においては、保護材15を形成する代わりに、単に搬送ベルトの幅方向の両端面を加熱することによって溶着した場合や、搬送ベルトの幅方向の両端面に接着剤を塗布した場合などと比較して、その幅方向の端面の接触に対する耐久性が高い。
【0045】
以上に説明した実施の形態によると、保護材15が、カバー層14の樹脂層11及び心体帆布層12、13よりも外側にはみ出した部分の下側の部分に配置されており、樹脂層11及び心体帆布層12、13の幅方向に関する両端面をそれぞれ覆っている。これにより、搬送ベルト1においては、その幅方向に関する両端面に、心体帆布層12、13が露出しない。したがって、搬送ベルト1をコンベアなどに取り付けて駆動させたときに、搬送ベルト1が蛇行したり、搬送ベルト1が位置が偏った状態で走行したりして、搬送ベルト1の幅方向に関する両端部がコンベアのフレームなどに接触しても、心体帆布層12、13の幅方向に関する端面がこれらに接触することがなく、心体帆布層12、13がほつれてしまうのを防止することができる。
【0046】
ここで、搬送ベルト1により搬送される搬送対象が食品である場合などには、ほつれた心体帆布層12、13の繊維が搬送対象に付着してしまうと衛生上問題となるが、本実施の形態では、上述したように、搬送ベルト1とコンベアのフレームなどとの接触によって心体帆布層12、13にほつれが生じてしまうのが防止されるため、ほつれた繊維が搬送対象に付着してしまうことを防止することができる。
【0047】
また、搬送ベルト1は、樹脂層11、心体帆布層12、13及びカバー層14を互いに積層させてから、樹脂層11及び心体帆布層12、13の幅方向に関する両端部を除去することによって空間16を形成し、空間16に保護材15を充填した後、樹脂層11、心体帆布層12、13及びカバー層14の積層体の幅方向に関する両端部を、保護材15の一部とともに切断することによって製造されるため、搬送ベルト1の幅方向に関する保護材15の厚みを大きくすることができる。したがって、保護材15を形成する代わりに、単に搬送ベルトの幅方向の両端面を加熱することによって溶着した場合や、搬送ベルトの幅方向の両端面に接着剤を塗布した場合などと比較して、搬送ベルト1における幅方向の端面の接触に対する耐久性が高い。
【0048】
そして、このとき、研磨加工により、樹脂層11及び心体帆布層12、13の幅方向に関する両端部を除去しているため、これらを容易に除去することができる。さらに、空間16の幅Wが5〜20mm程度であるので、研磨加工により空間16を一層容易に形成することができる。
【0049】
また、空間16の上面がカバー層14によって塞がれているため、空間16に保護材15を充填しやすい。さらに、樹脂層11及び心体帆布層12、13の幅方向に関する両端部をその先端部を残して除去しているので、空間16が溝状になり、保護材15が積層体の幅方向外側に漏れ出してしまうことがなく、保護材15を一層容易に充填することができる。加えて、保護材15が樹脂材料により構成されているので、空間16に保護材15さらに充填しやすい。
【0050】
次に、本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。ただし、本実施の形態と同様の構成を有するものについては同じ符号を付し、適宜その説明を省略する。
【0051】
本実施の形態では、樹脂層11及び心体帆布層12、13の保護材15が充填される空間16の幅が一定となっていたが、これには限られない。一変形例では、図5(d)に示すように、搬送ベルト30における保護材31の幅(図5の左右方向に関する長さ)がカバー層14側(図5の上側)ほど小さくなっている。そして、このような搬送ベルト30を製造するには、まず、図5(a)に示すように、樹脂層11、心体帆布層12、13及びカバー層14を互いに積層させてこれらの積層体を形成する(積層工程)。次に、図5(b)に示すように、樹脂層11及び心体帆布層12、13を除去することによって、カバー層14側(図5の上側)ほどその幅が小さくなるようなテーパ状の空間32を形成し(繊維層除去工程)、続いて、図5(c)に示すように、この空間32に保護材31を充填する(充填工程)。そして、図5(d)に示すように、樹脂層11、心体帆布層12、13及びカバー層14の積層体の幅方向に関する両端部を、保護材31の一部(図5における略右半分)とともに切断し、搬送ベルト30の幅方向に関する両端面に保護材31を露出させる(切断工程)(変形例1)。
【0052】
この場合でも、搬送ベルト30の幅方向に関する両端面に保護材31が露出しており、心体帆布層12、13が露出していないので、搬送ベルト30を走行させたときに、搬送ベルト30の幅方向に関する両端部がコンベアのフレームなどに接触したとしても、心体帆布層12、13にほつれが生じない。
【0053】
また、この場合にも、空間32の上面が心体帆布層13及びカバー層14によって塞がれているとともに、樹脂層11及び心体帆布層12、13の幅方向の両端部をその先端部を残して除去していることによって空間32が溝状になっているので、保護材31を容易に充填することができる。さらに、この場合には、空間32がカバー層14側ほどその幅が小さいテーパ状になっているので、保護材31を充填する際に、保護材31が空間32の全域に流れ込みやすい。
【0054】
また、本実施の形態では、樹脂層11及び心体帆布層12、13の幅方向に関する両端部をその先端部を残して除去することによって空間16を形成していたが、これには限られない。別の一変形例では、搬送ベルト40を製造する際に、まず、図6(a)に示すように、樹脂層11、心体帆布層12、13及びカバー層14を互いに積層させてこれらの積層体を形成する(積層工程)。次に、図6(b)に示すように、樹脂層11及び心体帆布層12、13の幅方向に関する両端部をその先端部も含めて除去することによって空間42を形成し(繊維層除去工程)、図6(c)に示すように、空間42に保護材41を充填する(充填工程)。そして、図6(d)に示すように、樹脂層11、心体帆布層12、13及びカバー層14の積層体の幅方向に関する両端部を、保護材41の一部とともに切断する(切断工程)(変形例2)。
【0055】
この場合でも、上述の実施の形態と同様、搬送ベルト40の幅方向に関する両端面に保護材41が露出しており、心体帆布層12、13が露出していないため、搬送ベルト40を走行させたときに、搬送ベルト40の幅方向に関する両端部がコンベアのフレームなどに接触したとしても、心体帆布層12、13にほつれが生じない。
【0056】
また、この場合にも、カバー層14の下面に保護材41を形成することによって、樹脂層11及び心体帆布層12、13の幅方向の両端面を保護材41で覆っているため、搬送ベルト40の幅方向に関する保護材41の厚みを大きくすることができる。したがって、この場合にも、保護材41の代わりに、単に搬送ベルトの幅方向に関する両端部を加熱することによって溶着した場合や、搬送ベルトの幅方向に関する両端面に接着剤を塗布した場合と比較して、搬送ベルトにおける幅方向の端面の接触に対する耐久性が高くなる。
【0057】
また、変形例2では、図6(a)に示すように、幅方向の長さがほぼ同じである樹脂層11、心体帆布層12、13及びカバー層14を積層してから、樹脂層11及び心体帆布層12、13の幅方向の両端部を除去したが、これには限られず、幅方向に関する長さがほぼ同じである樹脂層11及び心体帆布層12、13と、樹脂層11及び心体帆布層12、13よりも幅方向に関する長さが長いカバー層14とを、カバー層14の幅方向の両端部が、樹脂層11及び心体帆布層12、13よりも外側まではみ出すように、これらの層を積層させてもよい。この場合には、樹脂層11、心体帆布層12、13及びカバー層14を積層させた時点で、図6(b)に示すような状態となるので、以下、変形例2と同様、図6(c)、(d)に示すような工程で搬送ベルト40を製造することができる。
【0058】
また、上述の実施の形態では、搬送ベルト1が、樹脂層11の両面に心体帆布層12、13が配置された構成となっていたが、これには限られない。別の一変形例では、図7(d)に示すように、搬送ベルト50は、樹脂層11の下面にのみ心体帆布層12が配置されているとともに、樹脂層11の上面に直接カバー層14が配置された構造となっており、樹脂層11とカバー層14との間には心体帆布層が配置されていない。また、保護材51が、心体帆布層12の幅方向に関する両端面の全域、及び、樹脂層11の幅方向に関する両端面の下端部にまたがるように配置されている。
【0059】
そして、このような搬送ベルト50を製造するには、まず、図7(a)に示すように、樹脂層11、心体帆布層12及びカバー層14を互いに積層させてこれらの積層体を形成する(積層工程)。次に、図7(b)に示すように、心体帆布層12の幅方向に関する両端部、及び、樹脂層11の下端部の幅方向に関する両端部を、その先端部を残して除去することによって、空間52を形成する(繊維層除去工程)。続いて、図7(c)に示すように、空間52に保護材51を充填し(充填工程)、その後、図7(d)に示すように、樹脂層11、心体帆布層12及びカバー層14の積層体の幅方向に関する両端部を保護材51の一部とともに切断し、保護材51を搬送ベルト50の幅方向に関する両端面に露出させる(切断工程)(変形例3)。
【0060】
この場合でも、搬送ベルト50の幅方向に関する両端面に保護材51が露出しており、心体帆布層12が露出していないため、搬送ベルト50を走行させたときに、搬送ベルト50の幅方向に関する両端部がコンベアのフレームなどに接触したとしても、心体帆布層12にほつれが生じない。
【0061】
また、この場合にも、空間52の上面が樹脂層11及びカバー層14によって塞がれているとともに、樹脂層11及び心体帆布層12の幅方向の両端部をその先端部を残して除去していることによって空間52が溝状になっているので、保護材51を容易に充填することができる。
【0062】
なお、変形例4では、空間52を形成するために、樹脂層11の下端部の幅方向に関する両端部のみを除去したが、本実施の形態と同様、樹脂層11の幅方向に関する両端部をその上下方向に関する全域にわたって除去してもよい。
【0063】
また、変形例4においては、保護材51が樹脂層11の幅方向に関する端面の下端部にも形成されていたが、これには限られず、図8(d)に示すように、搬送ベルト60において、保護材61が、心体帆布層12の幅方向に関する端面にのみ形成されていてもよい。なお、この場合には、搬送ベルトの製造の際、図8(b)に示すように、心体帆布層12のみの幅方向に関する両端部を除去することによって空間62を形成し(繊維層除去工程)、続いて、図8(c)に示すように、空間62に保護材61を充填すればよい(充填工程)(変形例4)。
【0064】
また、以上の説明では、搬送ベルトに樹脂層11が含まれていたが、これには限られない。別の一変形例では、図9(d)に示すように、搬送ベルト70が心体帆布層12の上面にカバー層14が配置された構成となっており、カバー層14の心体帆布層12よりも外側にはみ出した部分の下面に保護材71が形成されており、保護材71によって心体帆布層12が覆われている。そして、搬送ベルト70を製造するには、まず、図9(a)に示すように、心体帆布層12とカバー層14とを互いに積層させ(積層工程)、次に、図9(b)に示すように、心体帆布層12の幅方向に関する両端部を、その先端部を残して除去することによって空間72を形成する(繊維層除去工程)。続いて、図9(c)に示すように、空間72に保護材71を充填し(充填工程)、その後、図9(d)に示すように、樹脂層11、心体帆布層12、13及びカバー層14の積層体の幅方向に関する両端部を保護材71の一部とともに切断して、保護材71を搬送ベルト70の幅方向に関する両端面に露出させる(切断工程)(変形例5)。
【0065】
この場合でも、搬送ベルト70の幅方向に関する両端面に保護材71が露出しており、心体帆布層12が露出していないので、搬送ベルト70を走行させたときに、搬送ベルト70の幅方向に関する両端部がコンベアのフレームなどに接触したとしても、心体帆布層12にほつれが生じない。
【0066】
また、この場合にも、空間72の上面がカバー層14によって塞がれているとともに、心体帆布層12の幅方向の両端部をその先端部を残して除去していることによって空間72が溝状になっているので、保護材71を容易に充填することができる。
【0067】
また、上述の実施の形態では、研磨加工によって樹脂層11及び心体帆布層12、13の幅方向に関する両端部を除去したが、研磨加工を行う代わりに、樹脂層11及び心体帆布層12、13の幅方向に関する両端部を剥ぎ取るなどしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明における実施の形態に係る搬送ベルトの幅方向に関する断面図である。
【図2】図1の搬送ベルトを評価するために用いた評価装置の概略構成図である。
【図3】(a)が図1の搬送ベルトを評価する際の比較対象となる従来の搬送ベルトの幅方向に関する断面図であり、(b)が、(a)を矢印Bの方向から見た図である。
【図4】図1の搬送ベルトの製造方法を示す工程図である。
【図5】変形例1の図4相当の図である。
【図6】変形例2の図4相当の図である。
【図7】変形例3の図4相当の図である。
【図8】変形例4の図4相当の図である。
【図9】変形例5の図4相当の図である。
【符号の説明】
【0069】
1 搬送ベルト
11 樹脂層
12、13 心体帆布層
14 カバー層
15 保護材
30 搬送ベルト
31 保護材
40 搬送ベルト
41 保護材
50 搬送ベルト
51 保護材
60 搬送ベルト
61 保護材
70 搬送ベルト
71 保護材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに積層された複数の層を備えており、前記複数の層が、少なくとも、繊維材料からなる繊維層と、前記複数の層の積層方向に関する一方の端に配置されたカバー層とを含む搬送ベルトの製造方法であって、
前記複数の層を互いに積層させてこれらの積層体を形成する積層工程と、
前記積層体における前記繊維層の幅方向に関する両端部を除去する繊維層除去工程と、
前記積層体の前記繊維層が除去された部分に保護材を充填する充填工程と、
前記積層体の幅方向に関する両端部を前記保護材の一部とともに切断して、前記保護材を前記積層体の幅方向に関する両側面に露出させる切断工程とを備えていることを特徴とする搬送ベルトの製造方法。
【請求項2】
前記繊維層除去工程において、前記繊維層の幅方向に関する両端部を、その先端部を残して除去することを特徴とする請求項1に記載の搬送ベルトの製造方法。
【請求項3】
前記搬送ベルトが、樹脂材料からなる樹脂層の両面に前記繊維層が配置されているとともに、前記繊維層のうちの一方における前記樹脂層と反対側の面に前記カバー層が配置された構成を有しており、
前記繊維層除去工程において、これら2層の繊維層とともに、前記樹脂層における前記繊維層の除去される部分と対向する部分を除去することを特徴とする請求項1又は2に記載の搬送ベルトの製造方法。
【請求項4】
前記保護材が、前記樹脂層と同じ材料によって構成されていることを特徴とする請求項3に記載の搬送ベルトの製造方法。
【請求項5】
前記繊維層除去工程において、研磨加工によって前記繊維層を除去することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の搬送ベルトの製造方法。
【請求項6】
前記繊維層除去工程において除去される前記繊維層の幅が、5〜20mmであることを特徴とする請求項5に記載の搬送ベルトの製造方法。
【請求項7】
前記保護材が樹脂材料によって構成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の搬送ベルトの製造方法。
【請求項8】
互いに積層された複数の層を備えており、前記複数の層が、少なくとも、繊維材料からなる繊維層と、前記複数の層の積層方向に関する一方の端に配置された、その幅方向に関する長さが前記繊維層よりも長いカバー層とを含む搬送ベルトの製造方法であって、
前記カバー層がその幅方向の両側に前記繊維層よりも外側にはみ出るように、前記複数の層を互いに積層させてこれらの積層体を形成する積層工程と、
前記積層体における、前記カバー層の前記繊維層よりも外側にはみ出した部分の前記繊維層側に、前記繊維層の幅方向の両端部を覆う保護材を充填する充填工程と、
前記積層体の幅方向に関する両端部を前記保護材の一部とともに切断して、前記保護材を前記積層体の幅方向に関する両側面に露出させる切断工程とを備えていることを特徴とする搬送ベルトの製造方法。
【請求項9】
互いに積層された複数の層を備えており、
前記複数の層が、少なくとも、
繊維材料からなる繊維層と、
前記複数の層の積層方向に関する一方の端に配置されたカバー層とを含んでおり、
前記カバー層は、前記繊維層の幅方向の両側に前記繊維層よりも外側まで延びており、
前記カバー層の前記繊維層よりも外側まで延びた部分の前記繊維層側には、前記繊維層の幅方向の両端面を覆う保護材が配置されていることを特徴とする搬送ベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−6531(P2010−6531A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167052(P2008−167052)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)
【Fターム(参考)】