説明

搬送ベルト用補強繊維コード並びに該コードで補強された搬送ベルト

【課題】特に騒音防止と機械的特性に優れた搬送ベルト用補強繊維コード並びに該コードで補強された搬送ベルトを提供する。
【解決手段】繰り返し単位の95モル%以上が下記式(1)で示されるポリケトンで構成される繊維の紡績糸で構成された搬送ベルト用補強繊維コードであって、この紡績糸の平均繊維長が300〜2000mmであることを特徴とする搬送ベルト用補強繊維コード。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は搬送ベルト用補強繊維コード並びに該コードで補強された搬送ベルトに関するものであり、特に走行時の異音発生を防止するとともに機械的特性に優れた搬送ベルト用補強繊維コード並びに該コードで補強された搬送ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、先に特許文献1において、ポリケトンで構成される繊維(以下「ポリケトン繊維」という。)の紡績糸を提案しており、高強度で、優れた外観と風合を有し、工程通過性等の加工性に優れた紡績糸であり、その一例として、平均繊維長が10〜200mmの牽切紡績糸を開示している。この紡績糸の用途として、搬送ベルト等のゴム補強材に有用としているが、搬送ベルトの特に走行時の異音発生防止(以下、単に騒音防止という。)対策については、何ら検討されていなかった。
【0003】
【特許文献1】特開2003−082542号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、特に騒音防止と機械的特性に優れた搬送ベルト用補強繊維コード並びに該コードで補強された搬送ベルトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に到達したものである。
すなわち、本発明は下記の通りである。
(1)繰り返し単位の95モル%以上が下記式(1)で示されるポリケトンで構成される繊維の紡績糸で構成された搬送ベルト用補強繊維コードであって、この紡績糸の平均繊維長が300〜2000mmであることを特徴とする搬送ベルト用補強繊維コード。
【化1】

(2)紡績糸が、牽切紡績糸であることを特徴とする上記(1)に記載の搬送ベルト用補強繊維コード。
(3)上記(1)又は(2)に記載の搬送ベルト用補強繊維コードで補強されたことを特徴とする搬送ベルト。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、特に騒音防止と機械的特性に優れた搬送ベルト用補強繊維コード並びに該コードで補強された搬送ベルトが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明について以下に具体的に説明する。
本発明において搬送ベルトとしては、一般的に物品搬送用のいわゆるコンベヤベルトが代表的であり、搬送テーブル面が円弧上に延びるように設けられたカーブ搬送用コンベヤに用いられるカーブコンベヤベルト、直線搬送用コンベヤに用いられる直線コンベヤベルト、パイプコンベヤベルトがあり、カーブ搬送用コンベヤは、例えば、直線搬送用コンベヤ同士の各搬送端部間において、その搬送方向を転換する際に用いられる。又、パイプコンベヤベルトは、その走行経路中の殆どの部分で円筒形状に丸め、粉粒状態等を包み込んで連続搬送するものである。
これらの搬送ベルトは、一般的には、一層又は複数層の補強層の上下両面又は物品搬送面のみをカバ−層で被覆した構成となっている。又、補強層をエラストマー組成物中に埋設し、その上下両面又は搬送面のみをカバー層で被覆した構成となっているものもある。
【0008】
カバー層や補強層を埋設するエラストマー組成物としては、アクリロニトリルブダジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、水素化アクリロニトリルブダジエンゴム(HNBR)、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アルキル化クロルスルホン化ポリエチレン(ACSM)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、エピクロルヒドリン、塩素化ポリエチレンゴム(CPE)、オレフィン−ビニルエステル共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン系ゴム(EPDM)、熱可塑性エラストマー、例えば熱可塑性ウレタン、ポリ塩化ビニル、熱可塑性オレフィン等の単独又はこれらのブレンドが挙げられる。尚、EPDM等の耐熱性ゴムの加硫剤としては、一般的な硫黄よりも有機過酸化物が用いられ、通常、165℃以上の高温加硫となるため、加硫時間が短縮される。
【0009】
補強層としては、搬送ベルト用補強繊維コードを用いた編物状、織物状が一般的であるが、織物状が好ましく、平織、綾織、朱子織、スダレ織、二重織等の周知の織物組織に加えて、経糸と緯糸が互いに交差せず、経糸の上下に緯糸が配置され、緯糸は別のバインダー糸で絡められた構造(ストレートワープ構造)でもよい。尚、搬送ベルト用補強繊維コードは、ベルトの長手方向に配置するのが好ましい。又、補強層が複数層以上の場合は、各層間に、カバー層や補強層を埋設するエラストマー組成物と同様なエラストマー種を利用した中間エラストマー層を配置しても良いし、必要に応じて、アクリル酸エステル、ウレタン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の公知の接着剤で接着しても良い。
【0010】
本発明のポリケトン繊維を構成するポリケトンは、繰り返し単位の95モル%以上、好ましくは98モル%以上、特に99.6モル%以上が、上記式(1)で示されるものである。上記ポリケトンには、5モル%未満の範囲で、上記式(1)以外の繰り返し単位、例えば、下記式(2)に示すもの等を含有していても良い。
【化2】

但し式中、Rは、エチレン以外の炭素数1〜30の有機基であり、例えば、プロピレン、ブチレン、1−フェニルエチレン等の基であり、Rの水素原子の一部または全部が、ハロゲン基、エステル基、アミド基、水酸基、エーテル基で置換されていてもよい。もちろん、Rは二種以上であってもよく、例えば、プロピレン基と1−フェニルエチレン基が混在していてもよい。
【0011】
ポリケトンの固有粘度[η]は、好ましくは1dl/g以上、より好ましくは2dl/g以上、特に好ましくは4dl/g以上であり、好ましくは20dl/g以下、より好ましくは15dl/g以下、特に好ましくは10dl/g以下である。
尚、固有粘度[η]は次の定義式に基づいて求められる値である。
【数1】

式中のt及びTは、それぞれヘキサフルオロイソプロパノール(セントラル硝子(株)社製)及び該ヘキサフルオロイソプロパノールに溶解したポリケトンの希釈溶液の25℃での粘度管の流過時間である。Cは、上記希釈溶液の濃度であり、ヘキサフルオロイソプロパノール100ml中のポリケトンの質量(g)である。
ポリケトンには必要に応じて、酸化防止剤、ラジカル抑制剤、他のポリマー、艶消し剤、紫外線吸収剤、難燃剤、金属石鹸等の添加剤を含んでいてもよい。
ポリケトン繊維の形態は、長さ方向に均一なものや太細のあるものでもよく、繊維の断面形状は、丸型、三角、L型、T型、Y型、W型、八葉型、扁平(扁平度1.3〜4程度のもので、W型、I型、ブーメラン型、波型、串団子型、まゆ型、直方体型等がある)、ドッグボーン型等の多角形型、多葉型、中空型や不定形なものでもよい。
【0012】
次に、ポリケトン繊維の好ましい特性としては、引張強度は5cN/dtex以上、より好ましくは10cN/dtex以上、特に好ましくは15cN/dtex以上であり、30cN/dtex以下であり、引張伸度は3%以上、より好ましくは3.5%以上、特に好ましくは4%以上であり、15%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは8%以下、特に好ましくは6%以下であり、引張弾性率は100cN/dtex以上、より好ましくは200cN/dtex以上、特に好ましくは300cN/dtex以上であり、1000cN/dtex以下である。
ポリケトン繊維の好ましい単糸繊度は0.01〜10dtex、より好ましくは0.1〜3dtex、特に好ましくは0.5〜3dtexの範囲である。
【0013】
本発明は、かかるポリケトン繊維の紡績糸を用いた搬送ベルト用補強繊維コードであって、この紡績糸の平均繊維長が300〜2000mmである必要があり、好ましくは350mm以上、さらに好ましくは400mm以上、特に好ましくは450mm以上であり、好ましくは1700mm以下、さらに好ましくは1500mm以下、特に1200mm以下である。平均繊維長が300mm未満並びに2000mm超では、本発明の目的が達成されない。
本発明では、紡績糸としては、牽切紡績糸が好ましく、特に平均繊維長をLとした時に、1.5L以上の長さの短繊維が10〜25%の割合で有することが好ましく、特に、1.5L以上の長さの短繊維は12%以上、特に15%以上、23%以下、特に20%以下の割合で有することが好ましい。
【0014】
ここで、平均繊維長Lとは、ステープルダイヤグラムにおける繊維長と繊維本数を掛け合わせた数を全繊維本数で除した値であり、1.5L以上の長さの短繊維が10〜25%の割合で有するとは、1.5L以上の長さの短繊維の繊維本数を全繊維本数で除した値が10〜25%であることを意味する。
1.5L以上の長さの短繊維の割合が10%未満では強度が不足することがあり、25%超では騒音防止性が低下することがある。
さらには、0.5L以下の長さの短繊維が10%以上、特に15%以上、25%以下、特に20%以下の割合で有することが好ましく、10%未満では、騒音防止性が低下することがあり、25%超では高強度が得られにくいことがある。
【0015】
紡績糸の総繊度は、30〜1100dtex、特に55〜800dtexの範囲が好ましい。
又、紡績糸は追撚して用いてもよく、下記式で示される追撚の撚係数(K)としては1000〜10000の範囲で選定すればよい。又、常法によって、例えば、下撚次いで上撚により双糸や三子にしたり、又、2本以上の紡績糸を合糸し、次いで、旋回性抱合ノズルによって抱合して用いてよく、これらの組み合わせも利用できる。
撚係数(K)=追撚数×紡績糸の総繊度(dtex)1/2
【0016】
本発明で用いる紡績糸は、精紡後の紡績糸に加えて、サイロスパンやサイロフィル、コアヤーン等の複合紡績糸を含むものであり、特にポリケトン繊維を芯部に配置した芯鞘構造糸(鞘部は、下記の混用する繊維として例示したものがある。)が好ましい。
又、本発明で用いる紡績糸は、ポリケトン繊維100%でもよいが、必要に応じて、好ましくは50質量%以下の範囲で、ポリケトン繊維以外の繊維、例えば、綿、羊毛等の天然繊維、レーヨン繊維、ライオセル繊維等のセルロース繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維(パラ系、メタ系)、ポリビニルアルコール繊維、全芳香族ポリエステル繊維、ポリ(p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維、超高分子量ポリオレフィン繊維、炭素繊維、セラミック繊維、ガラス繊維、金属繊維等公知の各種繊維(長繊維でも短繊維でも良く、これらを組み合わせて用いても良い)と交撚、混繊等により混用しても良い。
【0017】
本発明で用いる紡績糸を製造する好適な方法としては、図1に例示したものが挙げられ、ポリケトン繊維のトウ又はマルチフィラメントAを、供給ニップローラー1の前で引き揃え重ね合わされながら、供給ニップローラー1を通過した後、シューター2の中で牽切ニップローラー3により同時に引きちぎられ、ドラフトされながら均一に牽切され短繊維束を得る。次いで、吸引性空気ノズル4で牽切ニップローラー3から引きちぎられ、さらに、旋回性抱合ノズル5によって、絡みの付与とともに短繊維の毛羽を巻き付けて結束部を付与された後、デリベリローラー6により引き取られ、短繊維の毛羽がランダムに巻きついた糸条7となる。
又、図1に例示した工程を2系列設けて、各々、旋回性抱合ノズル5によって、絡みの付与とともに短繊維の毛羽を巻き付けて結束部を付与された後、両者を合糸し、さらに別の旋回性抱合ノズル(図示せず)によって、抱合してからデリベリローラー6により引き取ってもよい。
【0018】
このようにして得られた紡績糸を、常法によって、例えば、下撚次いで上撚により双糸や三子にしたり、又、2本以上の紡績糸を合糸し、次いで、旋回性抱合ノズルによって抱合して用いてよく、これらの組み合わせも利用できる。
さらに、牽切して得られた短繊維束を、別途、常法に従って、一般的な練条、粗紡、精紡工程を通して紡績糸としてもよく、特にリング精紡糸は、よりソフト風合のものとなり好ましいものである。
又、牽切するに際しては、従前のパーロック式、ターボ式を利用してもよい。
本発明において、1.5L以上の長さの短繊維を10〜25%の割合にする方法としては、例えば、牽切時のドラフトを低く設定する方法や、供給ニップローラー1と牽切ニップローラー3の間に正多角形のミドルローラーを設ける方法が挙げられる。尚、この方法は、0.5L以下の長さの短繊維を10〜25%の割合にする方法としても適したものである。
【0019】
本発明の搬送ベルト用補強繊維コードは、かかるポリケトン繊維の紡績糸で構成されているものであるが、搬送ベルト用補強繊維コードとして用いるに際しては、カバー層がゴムの場合は、RFL処理されていてもよい。
RFL処理とは、レゾルシンとホルマリンとラテックスを含む混合液で処理することをいい、RFL樹脂の好ましい付着量は、繊維に対して1〜10質量%特に2〜7質量%がよい。
好ましいホルマリン(F)とレゾルシン(R)とのモル比(F/R)は1.0〜2.2、特に好ましくは1.0〜1.9、全ラテックスの固形分質量(L)に対するレゾルシンおよびホルマリン総質量(RF)の割合(RF/L)は5〜25質量%、特に5〜17質量%が好ましく、さらに、水酸化ナトリウムおよび水酸化アンモニウムの総量とレゾルシン(R)とのモル比(NaOH+NH4OH/R)は、0.21以下が好ましい。
【0020】
ラテックスの種類は、内管や外管に用いられるエラストマー種に対応したラテックスが好ましく、例えば、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジン三元共重合体、クロルスルホン化ポリエチレン(CSM)、アルキル化クロルスルホン化ポリエチレン(ACSM)、水素添加アクリロニトリルブタジエンゴム(HNBR)、エピクロルヒドリン、天然ゴム、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム、オレフィン−ビニルエステル共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン系ゴム(EPDM)等のラテックスが挙げられる。
【0021】
又、RFL処理に先立って、エポキシやイソシアネート化合物で前処理してもよい。
RFL処理の方法としては、ポリケトン繊維の紡績糸に施してもよいし、又、ポリケトン繊維の長繊維を必要に応じて撚糸した状態でRFL処理し、次いで、カットして短繊維を得て紡績糸となすのもよい。撚数は下記式の撚係数(K1)で100〜700の甘撚が好ましいが、30000程度の中撚〜強撚でもよい。
T1=K1/D1/2
T1=撚数(T/m)、D=RFL処理に供給する糸条の繊度(dtex)
さらには、ポリケトン繊維の紡績糸で構成された搬送ベルト用補強繊維コードを用いて編物状、織物状となした後にRFL処理してもよい。
又、カバー層が熱可塑性エラストマーの場合は、例えば、熱硬化性ウレタン及びイソシアネートをトルエン等の溶剤に溶解させたディップ液に浸漬し、さらに、コート液(ディップ液に対比して熱硬化性ウレタンの割合が多く、高粘度のもの)を一定厚みでコーティング又はラミネートしてもよい。
【0022】
本発明では、ポリケトン繊維の紡績糸で構成された搬送ベルト用補強繊維コードを用いて編物状、織物状となして補強層を形成せしめるものであるが、補強層全てを本発明の搬送ベルト用補強繊維コードで構成してもよいが、必要に応じて、好ましくは50質量%以下の範囲内で、前記したポリケトン繊維と混用する繊維(紡績糸、モノフィラメント糸又はマルチフィラメント糸の形態)を用いた搬送ベルト用補強繊維コードと引き揃え、交撚、交編織等により混用してもよく、例えば、織物では、経糸及び又は緯糸において、1〜数本交互に混用しても良い。又、同一繊維コード又は異なる繊維コードのS撚糸とZ撚糸を1〜2本交互に混用してもよい。
特に、本発明の搬送ベルト用補強繊維コードとマルチフィラメント糸からなる補強繊維コードを、経糸及び又は緯糸において、1〜数本交互に混用するに際しては、本発明の繊維コードを、マルチフィラメント糸からなる補強繊維コードより太繊度のものを用いる方が騒音防止面から好ましい。
【0023】
さらには、二重織りにおいて、上層と下層を同一繊維コード又は異なる繊維コード同士で構成しても良い。
又、複数の補強層を形成する際は、少なくともその一層が、本発明の搬送ベルト用補強繊維コードを用いて形成せしめられていればよく、同一繊維コードによる補強層と異なる繊維コードによる補強層を1〜数層交互に積層してもよい。
尚、例えば屋外で強い紫外線を受けることによってポリケトン繊維の引張強度等の低下を抑制する目的で、繊維又は紡績糸や織編物等の形態で紫外線吸収剤(例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系の一種又は二種以上の組み合わせがある。)及び/又は紫外線遮蔽剤(例えば、酸化チタン、酸化鉄、酸化セリウム等の微粒子があり、平均粒径は0.01〜0.6μmが好ましい。)を含有させることが好ましい。含有させる方法としては、例えば、繊維又は紡績糸や織編物等に紫外線吸収剤及び/又は紫外線遮蔽剤を含有した樹脂やフィルムを付与又は被覆する方法があり、紫外線吸収剤及び/又は紫外線遮蔽剤の含有量は、樹脂やフィルムの質量に対して0.001〜10質量%が好ましい。
【実施例】
【0024】
本発明を実施例などに基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例などにより何ら限定されるものではない。
本発明における測定方法及び評価方法は以下の通りである。
(1)繊維の引張強度、引張伸度、引張弾性率
JIS−L−1013に準じて測定する。
サンプル長:20cm、引張速度:20cm/分で測定し、20回測定した時の平均値を求める。
(2)紡績糸の引張強度
撚係数5450で撚糸した糸条を測定する。
撚係数(K)=撚数×紡績糸の総繊度(dtex)1/2
【0025】
(3)搬送ベルトのベルト強力並びに騒音防止(発音レベル)評価テスト
実施例の織物をディップ処理液(熱硬化性ウレタン樹脂100質量部、イソシアネート2質量部を含む)で接着処理し、次いで、カバー層として熱可塑性ウレタン樹脂を片面のみに積層して搬送ベルト(ベルト幅100mm、ベルト周長450mm)を作製した。
JIS−K−6251に従い引張試験(試料形状JIS−3号ダンベル)を行い、ベルト強力を測定した。
又、騒音防止は、以下の方法により評価した。
プーリー径100mmを有するアルミ製プーリーに接触角90°となるようにベルト(プーリー接触面側はカバー層の反対(非樹脂面)側)を懸架した。そして、ベルトの片一端を固定し、他方一端にはベルト張力が0.9kN/mとなるように荷重を加え、プーリー速度100m/minの条件で走行時に発生する発音レベルを、プーリーより100mmの位置にて測定した。尚、モーター音は58dBであった。
【0026】
[実施例1]
図1に示す装置を用いて、1670dtex/1250fのポリケトン繊維マルチフィラメント糸(旭化成せんい(株)社製;商標サイバロン;引張強度18cN/dtex、引張伸度5%、引張弾性率350cN/dtex)を、供給ニップローラー1とシューター2と牽切ニップローラー3との間(牽切長120cm)で、約5.7倍(牽切時のドラフト)で300m/分の速度で引きちぎり短繊維束を得、引き続いて、吸引性空気ノズル4と旋回性抱合ノズル5に通して、絡みの付与とともに短繊維の毛羽を巻き付けて結束部が付与された295dtexの紡績糸を得た。
得られた紡績糸の強度13.6cN/dtex、平均繊維長(L)450mm、1.5L以上並びに0.5L以下の割合は16〜18%であった。
この紡績糸を常法により双糸となして経糸並びに緯糸に用いて平織物(経糸密度140本/5cm、緯糸密度118本/5cm)を作製した。
搬送ベルトのベルト強力並びに騒音防止評価テストの結果は、ベルト強力10kN/2.5cm、発音レベル68dBと、いずれも優れたものであった。
【0027】
[実施例2〜4、比較例1〜2]
実施例1において、牽切長を変化させて、平均繊維長(L)が変化した短繊維束を得、実施例1と同様にして得られた補強繊維コードを用いたベルト強力並びに騒音防止評価テストの結果は、平均繊維長(L)が300mmのもの(実施例2)は、紡績糸の強度13.6cN/dtex、ベルト強力9kN/2.5cm、発音レベル67dB、平均繊維長(L)が1200mmのもの(実施例3)は、紡績糸強度13.8cN/dtex、ベルト強力10kN/2.5cm、発音レベル68dB、平均繊維長(L)が2000mmのもの(実施例4)は、紡績糸強度13.8cN/dtex、ベルト強力11kN/2.5cm、発音レベル70dBと、いずれも優れたものであった。
平均繊維長(L)が250mmのもの(比較例1)は、紡績糸強度13.4cN/dtex、ベルト強力6kN/2.5cm、発音レベル67dBと、ベルト強力が実施例に対比して劣っており、平均繊維長(L)が2200mmのもの(比較例2)は、紡績糸強度13.8cN/dtex、ベルト強力12kN/2.5cm、発音レベル78dBと、実施例に対比して騒音防止性が劣ったものであった。
【0028】
[実施例5]
実施例1で得られた短繊維束を、常法に従いリング精紡し、得られたリング紡績糸の強度は13.5cN/dtexであった。得られた紡績糸を実施例1と同様にして得られた補強繊維コードを用いたベルト強力並びに騒音防止評価テストの結果は、ベルト強力10kN/2.5cm、発音レベル68dBと、いずれも優れたものであった。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、特に騒音防止と機械的特性に優れた搬送ベルト用補強繊維コード並びに該コードで補強された搬送ベルトを提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の紡績糸を製造する方法の一例を示す概略側面図。
【符号の説明】
【0031】
A:トウ又はマルチフィラメント
1:供給ニップローラー
2:シューター
3:牽切ニップローラー
4:吸引性空気ノズル
5:旋回性抱合ノズル
6:デリベリローラー
7:糸条

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繰り返し単位の95モル%以上が下記式(1)で示されるポリケトンで構成される繊維の紡績糸で構成された搬送ベルト用補強繊維コードであって、この紡績糸の平均繊維長が300〜2000mmであることを特徴とする搬送ベルト用補強繊維コード。
【化1】

【請求項2】
紡績糸が、牽切紡績糸であることを特徴とする請求項1に記載の搬送ベルト用補強繊維コード。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の搬送ベルト用補強繊維コードで補強されたことを特徴とする搬送ベルト。

【図1】
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