説明

搬送台車

【課題】走乗り心地の悪化の原因となるキャビンと台車本体との衝突、それによる振動や騒音の問題を有効に解決した搬送台車を新たに提供する。
【解決手段】路上を走行可能な台車本体1と、運転席を有するキャビン2と、このキャビン2を台車本体1に支持させる支持装置Aとを具備してなるものにおいて、支持装置Aを、キャビン2と台車本体1の間に高さ方向を作動方向として複数のエアばね31,32を直列に配置してなるものにし、更にエアばね31にエアの供給状態を切替えるコントローラ4を接続して、エアばね31の作動方向の伸縮動作を利用したキャビンの高さ調節機構Bを構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗り心地の悪化の原因となるキャビンと台車本体との衝突、それによる振動や騒音の問題を有効に解決した搬送台車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の搬送台車として、台車本体の端部にキャビンを備えたものが知られている。
【0003】
なかでも、倉庫や坑道、港湾といったさまざまな場所で、鉄鋼、建材、大形コンテナなどの超重量搬送物の搬送を行う大型の搬送台車は、重厚長大な荷物を積載するため、台車本体の積載面が最大限に広く設けられ、キャビンは走行方向に沿って前記台車本体の端部に吊り下げるように設けられている。このような車両での作業は長時間に及ぶため、キャビンの防振を図ることが不可欠である。
【0004】
このようなキャビンを支持するものとして、特許文献1に示されるようなばね要素を採用したものが考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−109922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、この種のばね要素には、一般にコイルばねが採用される。そして、このようなコイルばねを採用する場合、キャビンと台車本体のフレーム等との間に、キャビンのストロークを制限するためのストッパが設置されるのが通例である。
【0007】
しかしながら、これによりキャビンの有効ストロークが小さくなると、段差走行時などにキャビンが大きく振動した際、キャビンがストッパを介してフレーム等に頻繁に衝突して、衝撃振動および騒音が大きく、乗り心地の悪化を招く原因になる問題がある。さりとて、ストッパはキャビンがフレーム等に衝突した際の緩衝作用を奏するため、ストッパを取り除くことができない場合がある。ストッパとフレーム等との離間距離を広くとることも考えられるが、特にこの種の搬送台車として、パレットと称される荷台の下に潜り込んでこれを持ち上げるべく、台車本体のフレーム等が昇降するように構成されているものでは、キャビンはかかるフレーム等に支持されているため、むやみに離間距離を広げると、非走行時に台車本体のフレーム等を低い位置に降下させた際にキャビンが地面と干渉するおそれがある。
【0008】
本発明は、このような課題を有効に解決することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0010】
すなわち、本発明の搬送台車は、路上を走行可能な台車本体と、運転席を有するキャビンと、このキャビンを前記台車本体に支持させる支持装置とを具備してなるものにおいて、前記支持装置を、キャビンと台車本体の間に高さ方向を作動方向として複数のエアばねを直列に配置してなるものにし、更に前記エアばねの少なくとも一部にエアの供給状態を切替える切替手段を接続して、エアばねの作動方向の伸縮動作を利用したキャビンの高さ調節機構を構成したことを特徴とする。
【0011】
このような構成のものであると、段差走行時などにキャビンが大きく振動して直接またはストッパを介して台車本体に頻繁に衝突する場合には、高さ調節機構の切替手段を通じてキャビンの高さ、すなわちキャビンと台車本体との離間距離を変更することができるので、エアばねによるサスペンション機能を維持しつつ、キャビンと台車本体との衝突時の衝撃による振動や騒音を回避して、乗り心地の悪化を有効に防止することができる。
【0012】
特に、台車本体のフレーム等が非走行時に低位置にあり走行時に高位置にあるように昇降する構造搬送台車においては、非走行時にキャビンを高い位置に保持し、走行時にキャビンを低位置に切り替えることによって、非走行時におけるキャビンと地面との干渉を回避しつつ、走行時におけるキャビンのストロークを有効に確保できるようになる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、以上説明したように、高さ調節機構を通じて台車本体に対するキャビンの高さを変更することができるので、キャビンの台車本体との衝突頻度を減らして、乗り心地を有効に改善することができる。また、このような機能を付与しても、台車本体のフレーム等の昇降機能に支障が生じることはない。さらに、キャビンを前記台車本体に支持させる支持装置の一部を利用して高さ調整機構を構成するので、構造も極めて簡素となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る搬送台車の模式的な全体図。
【図2】同キャビンの支持装置を示す図。
【図3】図2の支持装置のより具体的な構成図。
【図4】本発明の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0016】
この実施形態の搬送台車は、図1に示すように、路上を走行可能な台車本体1と、この台車本体1に付随するキャビン2とを備える。
【0017】
台車本体1は、倉庫や坑道、港湾などにおいて鉄鋼、建材、大形コンテナなどの超重量の搬送物の搬送を行うべく、高強度のフレーム11を多数のタイヤ部12に昇降可能に支持させて構成される。すなわち、この搬送台車1は、搬送物を積載したパレットと称される図示しない門型の搬送用荷台の下に潜り込んでフレーム11によりこれを持ち上げ、その状態を保って移動するものである。台車本体1のフレーム11は、一対の垂下壁部11a、11aの間を接続する位置に存する主水平フレーム部11bを主な積荷領域とし、走行機能を司るタイヤ部12のほか、車軸サスペンションばね11cや図示しない昇降機構などが、一対の垂下壁部11a、11aと主水平フレーム部11bとで部分的に囲まれる台車下空間に組み込まれている。主水平フレーム部11bの一部は垂下壁部11aよりも外方に延長フレーム部11dとして延出させてあり、この延長フレーム部11dと前記主水平フレーム部11bとにわたって積荷を積載することも可能とされている。このような搬送台車は、積載領域を最大限に確保するために、前記キャビン2はタイヤ部12による接地幅を超えて走行方向の端部に対をなして設けられている。
【0018】
キャビン2は、台車本体1の延長フレーム部11dの下方に配置されたもので、オペレータが運転するためのシートやオペレーションに必要な機器類からなる運転席20が内装されている。すなわち、キャビン2は、台車本体1の垂下壁部11aの前方において延長フレーム部11dにオーバーハング状態で支持されて台車本体1とは独立している。
【0019】
そして、このようなキャビン2を支持すべく、図2及び図3に示すように、当該キャビンと台車本体1との間に、ばね要素であるエアばね31,32を組み合わせたエアばねユニット3を用いて支持装置Aを構成している。
【0020】
なお、図示は省略するが、支持装置Aには台車本体1の進行方向と直交する垂直方向にキャビン2の移動を可能にし、かつ進行方向と直交する水平方向にキャビン2の移動を規制するためのリンク機構などの規制部材が含まれていても良い。
【0021】
本実施形態のエアばねユニット3は、キャビン2の頂部若しくは側壁上部と台車本体1の延長フレーム部11dとの間において、キャビン2の平面視四隅近傍の4点を少なくとも支持する位置に配置されるもので、各エアばねユニット3は、図2に示すように、エアばね31、32を作動方向(上下方向)に直列に配列し、作動方向の一方の端部3xを台車本体1に接続し、他方の端部3yをキャビン2に接続して、キャビン荷重が各エアばね31,32に直列に圧縮力として作用するように構成したものである。エアばねユニット3の上方と台車本体の延長フレーム部11dとの間隙には、キャビン2と延長フレーム部11dとの直接的な衝突を回避するストッパ30が設けてある。
【0022】
そして、図3に示すように、エアばねユニット3を構成する一方のエアばね31へのエアの供給状態を切り換える切替手段たるコントローラ4を設け、このコントローラ4からエアばね31に供給すべきエア圧をON−OFF制御するようにしている。
【0023】
コントローラ4は、圧空源5とエアばね31の内部空間との間に介在される電磁弁41と、この電磁弁41を制御する制御部43とを具備するもので、電磁弁41は、圧空源5とエアばね31の内部空間とを連通させて当該内部空間に圧空を供給する第1の切替位置41aと、圧空源5とエアばね31の内部空間との間を遮断してエアばね31の内部空間を大気開放する第2の切替位置41bとの間で流路の切り替えを行う機能を備える。
【0024】
圧空源5は、台車本体1に備わる図示しない荷役駆動用のエアポンプ(例えば、荷役動作時のブレーキ用のエアポンプ)をエアの供給源として利用することができる。エアばね31が圧空源5に接続されず大気開放されたときには、エアばね31はエアを吐き出して潰れた状態になる。
【0025】
制御部43は、CPU、メモリ及びインターフェースを含む通常のマイクロプロセッサを主体として構成されるもので、CPUにはインターフェースを介して外部の指令部4aから指令信号Sが入力される。メモリには指令に応じて所定の処理を実行するために必要なプログラムやデータが格納されている。CPUはメモリから逐次これらのプログラムやデータを呼び出し、所定の演算、処理を行って、前記電磁弁41に開閉信号S1を出力する。
【0026】
具体的には、指令に基づき、エアばね31をONにすべきものである場合には、制御部43からエアばね31に接続された電磁弁41に入力される信号S1は当該電磁弁41を第1の切替位置41aに保持する信号とされ、エアばね31をOFFにすべきものである場合には、制御部43からエアばね31に接続された電磁弁41に入力される信号S2は当該電磁弁41を第2の切替位置41bに保持する信号とされる。電磁弁41がオフセットバネを備えている場合には、信号S1はオンオフ信号となる。
【0027】
一方、指令部4aは、キャビン2の運転席20から操作できる位置に配置されて、前記制御部43に指令信号Sを入力するものであり、キャビン2を高位置に保持するときには第1のモードを選択し、低位置に保持するときには第2のモードを選択できるようにしてある。
【0028】
そして、指令部4aにおいて第1のモードが選択されると、制御部43がエアばね31をONにする結果、キャビン2は、図2(a)に示すようにストッパ30が台車本体1の延長フレーム部11bに接近する位置に保持され(間隙d1)、指令部4aにおいて第2のモードが選択されると、制御部43がエアばね31をOFFにする結果、キャビン2は、同図(b)に示すようにストッパ30が台車本体1の延長フレーム部11bから遠ざかる位置に保持されることになる(間隙d2)。
【0029】
図2(a)は搬送台車の非走行時を示しており、台車本体1の延長フレーム部11dが低い位置にあるが、同図(b)は搬送台車の走行時を示しており、台車本体1の延長フレーム部11dは高い位置にあるため、何れの場合にもキャビン2の底部は地面から同じ高さhにある。
【0030】
このように、本実施形態は、キャビン2を台車本体1に支持させるための支持装置Aを、キャビン2と台車本体1の間に高さ方向を作動方向として複数のエアばね31,32を直列に配置してなるものにし、更にエアばね31にエアの供給状態を切替える切替手段たるコントローラ4を接続したことにより、エアばね31の作動方向の伸縮動作を利用したキャビン2の高さ調節機構B(図3参照)が構成されることになる。
【0031】
このため、段差走行時などにキャビン2が大きく振動してストッパ30が台車本体1の延長フレーム部11dに頻繁に衝突する場合には、高さ調節機構Bのコントローラ4を通じてキャビン2の高さ、すなわちキャビン2に付帯するストッパ30と台車本体1の延長フレーム部11dとの離間距離dを変更することができるので、エアばね32によるサスペンション機能を常時維持しつつ、キャビン2と台車本体1との衝突時の衝撃による振動や騒音を回避して、乗り心地の悪化を有効に防止することができる。
【0032】
特に、台車本体1の延長フレーム部11dが非走行時に図2(a)に示すような低位置にあり、走行時に同図(b)に示すような高位置にあり、かかる延長フレーム部11dにキャビン2が支持されているこの種の搬送台車においては、非走行時にキャビン2を延長フレーム部11dに対して図2(a)に示すような高位置に保持し、走行時にキャビン2を延長フレーム部11dに対して同図(b)に示すような低位置に切り替えることにより、非走行時におけるキャビン2と地面との間の間隙hを確保して地面との干渉を回避しつつ、走行時におけるストッパ30と延長フレーム部11dとの間隙d2を非走行時における間隙d1よりも大きくして、キャビン2のストロークを有効に確保することが可能となる。
【0033】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0034】
例えば、上記実施形態では上段に位置するエアばね31のエア圧を変更したが、下段に位置するエアばね32を変更してもよく、或いは3つ以上のエアばねを直列に接続してそのうちの一部のエアばねのエア圧を変更するようにしてもよい。
【0035】
また、上記実施形態ではエアばねに対するエア圧のON−OFF状態を切替手段であるコントローラで切り替えて高さ調節機構Bを構成したが、エア圧をコントローラで変化させて高さ調節機構を構成することもできる。例えば、図4に示す例では、同図(a)のように一方のエアばね132に対するエア圧を走行時のエア圧よりも高めに設定しておき、必要に応じて同図(b)のように当該エアばね132のエア圧を他方のエアばね131のエア圧と同じ圧にする制御を行っても、キャビン2に付帯するストッパ30と台車本体1の延長フレーム部11dとの離間距離dをd1とd2の間で変更することができるので、上記実施形態と全く同様の作用効果が奏される。
【符号の説明】
【0036】
A…支持装置
B…高さ調節機構
1…台車本体
2…キャビン
4…切替手段(コントローラ)
31,32…エアばね



【特許請求の範囲】
【請求項1】
路上を走行可能な台車本体と、運転席を有するキャビンと、このキャビンを前記台車本体に支持させる支持装置とを具備してなるものにおいて、前記支持装置を、キャビンと台車本体の間に高さ方向を作動方向として複数のエアばねを直列に配置してなるものにし、更に前記エアばねの少なくとも一部にエアの供給状態を切替える切替手段を接続して、エアばねの作動方向の伸縮動作を利用したキャビンの高さ調節機構を構成したことを特徴とする搬送台車。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−68303(P2011−68303A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222781(P2009−222781)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】