説明

搬送台車

【課題】キャビンの横揺れをコンパクトな構成で効率よく抑制するための新たな構造を備えた搬送台車を実現する。
【解決手段】路上を走行可能な台車本体1と、台車本体1にばね要素及びダンパ要素からなる支持装置81、82を介して吊下げ状態で上部を支持されるキャビン2と、前後方向に沿って配置され一端側を台車本体1に車幅方向に沿った第1軸m1を介して取り付けられるとともに他端側をキャビン2の上部に車幅方向に沿った第2軸m2を介して取り付けられたリンク要素4とを具備し、これら第1軸m1及び第2軸m2を、キャビン2の上下動を許容し且つ前後方向の動きを規制する位置関係に設定したものであり、さらに、キャビン2から偏位した位置においてキャビン2と台車本体1との間に、少なくとも第2軸m2の回りのキャビン2の回転動作を抑制する第2のダンパ要素3を設けることとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャビンの乗り心地の向上を図った搬送台車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の搬送台車として、車輪に支持された車体フレームと、この車体フレームの端部に配置されて運転席等が内装されたキャビン(運転室)とを備えてなる大型の搬送台車が知られている。
【0003】
このものは、倉庫や坑道、港湾といったさまざまな場所で、鉄鋼、建材、大形コンテナなどの超重量搬送物の搬送を行うものである。このような大型の搬送台車は一般的な自動車や特殊車両とは異なり、重厚長大な荷物を積載するため、台車本体の積載面が最大限に広く設けられ、キャビンは荷役の妨げにならないように積載面よりも下側に吊り下げるように設けられており、全体の車高も低く抑えられている。このような車両での作業は長時間に及ぶため、キャビンの防振を図ることが不可欠である。
【0004】
このようなキャビンを支持するにあたり、特許文献1に示されるような特殊車両の吸振部材や、特許文献2に示されるような特殊車両のダンパー要素を当該搬送台車のキャビンの支持手段として適用することが考えられる。
【0005】
特許文献1のものは、キャビンを吊下げ状態で支持するにあたり、その吊下げ部分を吸振部材で構成してキャビンの振動を抑制するようにしたものであり、特許文献2のものは、建設機械のキャビンの床板の下方にベッドフレームと支柱を垂下させ、そのベッドフレームと支柱の間をオイルダンパで接続して、キャビンの振動を抑制するようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−178586号公報
【特許文献2】特開2000−319937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の構成では、キャビンの上下動は搬送台車の進行方向に沿って前後に設けた吸振部材で抑制されるものの、進行方向に沿った前後方向及びこれと直交する車幅方向である左右方向の揺れを直接規制するものではないため、特に加速時や減速時に前後方向に力が加わると、キャビンに大きな横揺れが発生し、これを効果的に抑制することができないという問題がある。
【0008】
これに対し、特許文献2の構成を組み合わせて、キャビンの前後方向の振動を同時に抑制することが対応策として考えられるが、特許文献1のものはキャビンが前後左右に無造作に振動するため、前後方向にオイルダンパを配置しても効率良く振動を抑制することは難しい。しかも、同文献の構造はキャビンの下方にベッドフレームや支柱を大きく垂下させなければならないため、重厚長大な搬送物を載置するために車高が制限されている大型の搬送台車等においては採用できない構造である。
【0009】
本発明は、このような課題に着目し、キャビンの左右方向の揺れはもとより前後方向の揺れをもコンパクトな構成で効率よく抑制するための新たな構造を備えた搬送台車を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0011】
すなわち、本発明の搬送台車は、路上を走行可能な台車本体と、前記台車本体にばね要素及びダンパ要素を介して吊下げ状態で上部を支持されるキャビンと、進行方向に沿って前後に配置され一端側を台車本体に車幅方向に沿った第1軸を介して取り付けられるとともに他端側を前記キャビンの上部に車幅方向に沿った第2軸を介して取り付けられたリンク要素とを具備し、これら第1軸及び第2軸を、キャビンの上下動を許容し且つ進行方向に沿った前後方向の動きを規制する位置関係に設定するとともに、前記第2軸から偏位した位置において前記キャビンと台車本体との間に、少なくとも前記第2軸の回りのキャビンの回転動作を抑制する第2のダンパ要素を設けたことを特徴とする。
【0012】
第2軸から偏位した位置としては、キャビンを形成している外壁の一部、すなわち、支柱等の特段の部材によってキャビン寸法を下方に延長させない範囲で第2軸から遠い部位に位置する外壁の下端若しくはその近傍、更にはその上部であることが望ましく、台車本体とキャビンの立壁間に設けておくことが好適である。また、キャビンの上下動を許容し且つ進行方向に沿った前後方向の動きを規制する位置関係とは、キャビンの上下動よりも前後動に対する規制作用が大きい関係、換言すれば、キャビンの上下動の方が前後動よりも許容度が大きい関係を言う。
【0013】
リンク要素は、ばね要素やダンパ要素に作動方向と直交する方向に応力が作用することを防止するとともに、乗り心地の改善に資するために導入されているものである。しかし、このようなリンク要素を用いると、キャビンは主として第2軸の回りに回転するため、第2軸から離れるほど振れが大きくなる。これに対して本発明は、キャビンの上部を吊る構成であり、第2軸から偏位した位置においてキャビンと台車本体との間に第2のダンパ要素を設けているので、キャビンの回転を効果的に抑制して、乗り心地を有効に改善することができる。特に、前後左右に無造作に揺れるキャビンに対して前後方向にダンパ要素を適用するのではなく、車幅方向の第1軸および第2軸を介してキャビンを台車本体に取り付けることでキャビンの揺れの方向を前後左右の無造作な動きではなく前後方向に特定した上で当該キャビンの振れの大きい部位に第2のダンパ要素を導入しているので、効率的な減衰効果を期待することができる。その際、キャビンは地面に接地しない状態にあるが、吊下げ方式であるため乗り降りを考慮して地面からそれほど高い位置にはないため、キャビンの下方に腕を伸ばしてダンパーを取り付けるといった構造はスペース的に無理がある。これに対して、本発明はキャビンの上部を吊る構成であってそこから偏位するほど振幅が大きくなるため、特段の構造を付加せずともキャビンと車体本体との間で第2のダンパ要素の効果を有効に発揮させることができる。
【0014】
特に、第2のダンパ要素は、キャビンの高さ寸法内に収まる位置に配置していることが望ましい。
【0015】
キャビン内に運転席が設けられる場合に、運転席との関係で上記の構成の適正化を図るためには、前記第2軸が前記第1軸よりも運転席に近い位置に設定されるとともに、前記第2のダンパ要素をキャビンの反運転席側の壁部と台車本体との間に設けておくことが望ましい。
【0016】
特に、第2軸のほぼ直下に運転席を位置づけた場合には上記の効果が顕著なものとなり、運転席のうちでも座席が第2軸により近い位置にあることが好適である。
【0017】
同様の目的を達成するための本発明の他の構成に係る搬送台車は、路上を走行可能な台車本体と、前記台車本体にばね要素及びダンパ要素を介して吊下げ状態で上部を支持されるキャビンと、一端側を台車本体に車幅方向の軸を介して取り付けられ他端側を前記キャビンに車幅方向の軸を介して取り付けられたリンク要素とを具備し、前記各軸を、キャビンの上下動を許容し且つ進行方向に沿った前後方向の動きを規制する位置関係に設定して、前記リンク要素を進行方向に沿ってキャビンの前後2箇所に配置し、平行リンク機構を構成したことを特徴とする。
【0018】
このように、リンク要素を対にして平行リンク機構を構成すれば、キャビンの回転をほぼ確実に抑止することができ、キャビンの前後方向の動きに対する規制効果も相乗的に高めることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、以上説明した構成であるから、ばね要素及びダンパ要素による吊下げ状態での上下方向支持の適正化、およびリンク要素による進行方向に沿った前後方向へのキャビンの振動の抑制に加え、リンク要素の第2軸回りのキャビンの回転振動を第2のダンパ要素によって適切に低減することができるので、通常走行時の振動はもとより、搬送台車の加速時および減速時(特に発進および停止時)などに進行方向に沿って前後方向に力が加わってもキャビンの回転振動を含めて適切な振動の低減を図り、キャビンの乗り心地を有効に向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る搬送台車の模式的な全体図。
【図2】同搬送台車を構成するキャビンの支持構造を示す模式的な図。
【図3】同キャビンの回転振動を説明するための模式的な側面図。
【図4】本発明の変形例を示す模式的な側面図。
【図5】本発明の他の変形例を示す模式的な側面図。
【図6】本発明の更に他の変形例を示す模式的な側面図。
【図7】本発明の上記以外の変形例を示す模式的な側面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0022】
この実施形態の搬送台車は、図1に示すように、路上を走行可能な台車本体1と、この台車本体1に付随するキャビン2とを備える。
【0023】
台車本体1は、倉庫や坑道、港湾などにおいて鉄鋼、建材、大形コンテナなどの超重量の搬送物の搬送を行うべく、高強度のフレーム11を多数のタイヤ部12に昇降可能に支持させて構成される。すなわち、この搬送台車1は、搬送物を積載したパレットと称される図示しない門型の搬送用荷台の下に潜り込んでフレーム11によりこれを持ち上げ、その状態を保って移動するものである。台車本体1のフレーム11は、当該台車本体1の端部である一対の垂下壁部11a、11aの間を接続する位置に存する主水平フレーム部11bを主な積荷領域とし、走行機能を司るタイヤ部12のほか、車軸サスペンションばね11cや図示しない昇降機構などが、一対の垂下壁部11a、11aと主水平フレーム部11bとで部分的に囲まれる台車下空間に組み込まれている。主水平フレーム部11bの一部は垂下壁部11aよりも外方に延長フレーム部11dとして延出させてあり、この延長フレーム部11dと前記主水平フレーム部11bとにわたって積荷を積載することも可能とされている。このような搬送台車においては、積載領域を最大限に確保するために、前記キャビン2はタイヤ部12による接地幅を超えて走行方向の端部に吊下げ状態で対をなして設けられている。
【0024】
キャビン2は、図2(a)に示すように、前壁部21、後壁部22、側壁部23、底壁部24及び頂壁部25によって形成され、台車本体1とは独立しているもので、作業員が運転するための座席20aやオペレーションに必要な機器類20bからなる運転席20が内装されている。
【0025】
このように構成される搬送台車は、走行方向に長大なものであり、また、台車本体1の重量が搬送物の非積載時で20t程度、積載時で200t程度にも上り、対するキャビン2の重量は700kg程度であって、重量比にして数十倍〜数百倍程度の大きな開きがあるなど、一般の特殊車両と大きく事情が異なるものである。
【0026】
そして、このようなキャビン2を支持すべく、台車本体1の延長フレーム11dとキャビン2との間に、ばね要素及びダンパー要素を含んだ支持装置8を設け、この支持装置2によりキャビン2を、台車本体1の垂下壁部11aの前方にオーバーハングさせた延長フレーム11dに吊下げ状態で支持している。
【0027】
支持装置8は、キャビン2の側壁部23の前上部において図2の紙面垂直方向に一対に配置した前支持要素81と、キャビン2の側壁部23の後上部において紙面垂直方向に一対に配置した2つの後支持要素82とにより、キャビン2の前後左右の4箇所を支持する位置に配置される。例えば、後支持要素82を例にとって取付構造および作用を説明すると、同図(b)に示すように、延長フレーム部11dから垂下させた支持体83の上向面83aとキャビン2から水平方向に突出させたブラケット84の下向面84aとの間に、キャビン荷重が圧縮力として作用するように後支持装置82を構成するばね要素やダンパ要素が組み込まれており、キャビン2の上下振動に対して支持装置82のばね要素が伸縮しながらこれを弾性的に支持し、これに伴い支持装置82のダンパー要素がダンピング作用を営み、その振動エネルギーを熱エネルギーに変換する役割を果たす。これは前支持要素81についても全く同様である。図1及び図2においてはばね要素とダンパ要素をまとめて支持装置81、82として表わしているが、必ずしもばね要素とダンパ要素が渾然一体に構成することを意味しているものではない。
【0028】
さらに本実施形態は、図2の紙面垂直方向に対をなして、当該キャビン2の上下動を許容し且つ進行方向に沿って前後方向の振れを規制するリンク要素であるサスペンションリンク4を設けている。
【0029】
サスペンションリンク4は、キャビン2の側壁23の上部と延長フレーム11dとの間に設けられて対をなすもので、一端を車幅方向に沿った第1軸m1を介して延長フレーム11d側のブラケットr1に枢着され、他端を第2軸m2を介してキャビン2側のブラケットr2に枢着されて、キャビン2の上下動を許容しつつ、当該キャビン2の前後方向の動きを規制するものである。左右のサスペンションリンク4の第2軸m2、m2間は連結部材4aによって連結されている。
【0030】
すなわち、サスペンションリンク4は、キャビン2のピッチング振動を防止するのみならず、支持装置81、82に作動方向と直交する水平方向の応力が作用することを同時に防止しているものである。この場合、キャビン2には、図3に示すように第2軸m2を中心とする回転動作Xと、第1軸m1を中心とする揺動動作Yとが重畳して現われるが、上下方向が主な振動方向となる揺動動作Yに対しては上記支持装置81、82のばね要素やダンパ要素が利いているため、主としてキャビン2には第2軸m2を中心とする回転振動が残る。
【0031】
そこで、本実施形態は図2に示すように、前記キャビン2の下部と台車本体1との間に、主として第2軸m2の回りのキャビン2の回転動作を抑制するショックアブソーバ等の第2のダンパ要素3を設けている。
【0032】
具体的にこのダンパ要素3は、台車本体1の垂下壁部11aと、当該垂下壁部11aに対するキャビン2の対向壁である後壁部22との間にダンピング機能がほぼ水平方向に働くように配置されて、両端をそれぞれ水平軸3aを介してキャビン2の反運転席側に位置する後壁部22の下端近傍と垂下壁部11aの対向位置とを接続する位置に配置され、両壁部22、11a間の距離の変化に対して回転振動に起因する変位を即座に減衰させる作用を営む。上記のようにキャビン2の回転振動は主として第2軸m2の回りに起こるため、この第2軸m2から離れた位置にあって変位が大きいキャビン2の後壁部22の下方に第2のダンパ要素3を取り付けることによって、振動の減衰は効率的に行われる。ダンパ要素3は水平軸3aを介して枢着されているため回転フリーであり、キャビン2の上下方向の振動を拘束することはなく、上下方向の振動を許容した状態でキャビン2の振動を減衰させつつ支持する支持装置81、82の機能を妨げることはない。第2のダンパ要素3は同図(c)に示すように幅方向の2箇所に設けることがバランス的に好ましいが、中央に1箇所設けてもよく、また幅方向に沿って3箇所以上に設けても構わない。
【0033】
この実施形態において、運転席20は第1軸m1よりも第2軸m2に近い位置に設定してあり、更に言えば、図中矢印Zで示すように運転席20とりわけ座席20aは第2軸m2のほぼ真下に位置づけて、第2軸m2の回りの座席20aの振れ幅を小さく抑えている。第2のダンパ要素3はキャビン2の上下寸法h内に収まるように配置してあり、キャビン2の下方に支柱等を突出させる構造を不要としている。
【0034】
以上のように、本実施形態の搬送台車は、路上を走行可能な台車本体1と、前記台車本体1にばね要素及びダンパ要素からなる支持装置81、82を介して吊下げ状態で上部を支持されるキャビン2と、進行方向に沿って前後に配置され一端側を台車本体1に車幅方向に沿った第1軸m1を介して取り付けられるとともに他端側を前記キャビン2の上部に車幅方向に沿った第2軸m2を介して取り付けられたリンク要素4とを具備し、これら第1軸m1及び第2軸m2を、キャビン2の上下動を許容し且つ進行方向に沿った前後方向の動きを規制する位置関係に設定したものであり、さらに、前記キャビン2から偏位した位置においてキャビン2と台車本体1との間に、少なくとも前記第2軸m2の回りのキャビン2の回転動作を抑制する第2のダンパ要素3を設けたものである。
【0035】
このように、本実施形態はキャビン2の上部を吊る構成であり、振れの大きい部位においてキャビン2と台車本体1との間に第2のダンパ要素3を設けているので、加速時および減速時(とりわけ発進および停止時)におけるキャビン2の第2軸m2の回りの回転を効果的に抑制して、乗り心地を有効に改善することができる。特に、前後左右に無造作に揺れるキャビンに対して前後方向にダンパ要素を適用するのではなく、車幅方向の第1軸m1および第2軸m2を介してキャビン2を台車本体1に取り付けることでキャビン2の揺れの方向を前後左右の無造作な動きではなく前後方向に特定した上で当該キャビン2の振れの大きい部位に第2のダンパ要素3を導入しているので、前後左右に振れる振動を抑制する場合に比して効率的な減衰効果を期待することができる。その際、キャビン2は地面に接地しない状態にあるが、吊下げ方式であるため乗り降りを考慮して地面からそれほど高い位置にはなく、キャビン2の下方に腕を伸ばしてダンパー要素を取り付けるような特許文献2のごとき構造はこの種の搬送台車においてはスペース的に無理がある。これに対して、本実施形態はキャビン2の上部を吊る構成を採用してそこから偏位して振幅が大きくなる部位にダンパーを利かせるようにしているため、特段の構造を付加せずともキャビン2と車体本体1との間で第2のダンパ要素3の効果を有効に発揮させることができる。
【0036】
具体的には、第2軸m2から偏位した位置として、リンク要素4が取り付けられるキャビン2の上部に対してキャビン2の下部を選定しているので、取り付けにも難がなく、効果も大きいものとなる。
【0037】
特に、第2のダンパ要素3を、キャビン2の高さ寸法h内に収まる位置に配置しているため、無理なくコンパクトに当該第2のダンパ要素3を組み込むことを可能ならしめている。
【0038】
より具体的には、台車本体1は、走行方向の端部の上方から延長フレーム11dを突出させ、前記台車本体1の端部に隣接する位置にキャビン2を配置してその上部を前記延長フレーム11dに吊下げ状態で支持しているものであり、第2のダンパ要素3を前記台車本体1の端部である垂下壁部11aと前記キャビン2の対向壁である後壁部22とを接続する位置に配しているため、広い取付面を利用して適切な取付位置を選択し、ダンパ要素の的確な組み込みを行うことができる。
【0039】
その際、キャビン2内に設けられている運転席20との関係を考えた場合、キャビンの直接的な回転は第2軸m2回りに起こるため、第2軸m2を運転席20から遠い位置に設定すると運転席20の振れが大きくなるが、本実施形態では前記第2軸m2が前記第1軸m1よりも運転席20に近い位置関係となるように設定しているので、キャビン2の回転時に運転席20がなるべく揺れないような設計が可能となる。しかも、前記第2のダンパ要素3をキャビン2の反運転席側の壁部である後壁部22と台車本体1の端部である垂下壁部11aとの間に設けているため、キャビン2の反運転席側の回転振幅が大きくなる部位を利用して効果的にキャビン2の回転振動を抑止することができる。
【0040】
特に、座席20aを中心として運転席20が第2軸m2のほぼ直下に位置しているので、上記の効果を顕著に奏させることができるものである。
【0041】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0042】
例えば、上記実施形態では、第2のダンパ要素はほぼ水平方向にダンピング作用が働くように配置されていたが、第2軸を中心とするキャビンの回転振動によってキャビンの下部に現われる変位は水平方向成分のみではなく上下方向成分も含むため、図4に示すように第2のダンパ要素103をほぼ鉛直方向にダンピング作用を営む姿勢でキャビン2と台車本体1との間に配置しても、第2軸m2を中心とするキャビン2の回転振動を減衰させる効果を奏することができる。
【0043】
また、図5に示すように、キャビン2の下部と台車本体1との間に配置する第2のダンパ要素203aとともに、キャビン2の上部と台車本体1との間に第2のダンパ要素203bを配置して上下2段構成にしてもよい。キャビン2の上部においても、第2軸m2を中心とするキャビン2の回転振動による変位が現われるため、かかる変位を当該第2のダンパ要素203bによって抑えることで、キャビン2の回転振動に対する抑制効果をより有効に増大させることができる。この場合、キャビン2の後壁部22の上部は第2軸m2の回りの回転振動による変位が上下方向により大きく現われることに鑑みて、図6に示すように下段側の第2のダンパ要素303aを水平方向にダンピング機能が働く状態に配置し、上段側の第2のダンパ要素303bを鉛直方向にダンピング機能が働く状態に配置すれば、第2軸mの回りの回転振動をより効果的に抑制することが期待できるものとなる。
【0044】
さらに、以上とは構成が異なるが、図7に示すように、路上を走行可能な台車本体1と、前記台車本体1にばね要素及びダンパ要素を含む支持装置81、82を介して吊下げ状態で上部を支持されるキャビン3と、一端側を台車本体2に車幅方向の軸m1を介して取り付けられ他端側を前記キャビン3に車幅方向の軸m2を介して取り付けられたリンク要素4とを具備し、前記各軸m1、m2を、キャビン2の上下動を許容し且つ進行方向に沿った前後方向の動きを規制する位置関係に設定して、前記リンク要素4を進行方向に沿ってキャビン2の前後2箇所に配置して平行リンク機構を構成することも有効である。
【0045】
このように、リンク要素4が平行リンク機構を構成すれば、リンク要素4のみでキャビン2の軸m1、m2を中心とする回転をほぼ確実に抑止することができ、キャビン2の前後方向の動きに対する規制効果も倍増するため、キャビン2と台車本体1との間にダンパ要素を組み込むスペースがとれない場合などに特に有効に採用することができるものとなる。
【0046】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0047】
1…台車本体
2…キャビン
3、103、203a、203b、303a、303b…ダンパ要素
4…リンク要素
20…運転席
81、82…支持装置(ばね要素、ダンパ要素)
h…高さ寸法
m1…第1軸
m2…第2軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
路上を走行可能な台車本体と、前記台車本体にばね要素及びダンパ要素を介して吊下げ状態で上部を支持されるキャビンと、進行方向に沿って前後に配置され一端側を台車本体に車幅方向に沿った第1軸を介して取り付けられるとともに他端側を前記キャビンの上部に車幅方向に沿った第2軸を介して取り付けられたリンク要素とを具備し、これら第1軸及び第2軸を、キャビンの上下動を許容し且つ進行方向に沿った前後方向の動きを規制する位置関係に設定するとともに、前記第2軸から偏位した位置においてキャビンと台車本体との間に、少なくとも前記第2軸の回りのキャビンの回転動作を抑制する第2のダンパ要素を設けたことを特徴とする搬送台車。
【請求項2】
第2のダンパ要素を、キャビンの高さ寸法内に収まる位置に配置している請求項1記載の搬送台車。
【請求項3】
キャビン内に運転席が設けられており、前記第2軸が前記第1軸よりも運転席に近い位置に設定されているとともに、前記第2のダンパ要素をキャビンの反運転席側の壁部と台車本体との間に設けている請求項1又は2何れかに記載の搬送台車。
【請求項4】
第2軸のほぼ直下に運転席が位置している請求項3記載の搬送台車。
【請求項5】
路上を走行可能な台車本体と、前記台車本体にばね要素及びダンパ要素を介して吊下げ状態で上部を支持されるキャビンと、一端側を台車本体に車幅方向の軸を介して取り付けられ他端側を前記キャビンに車幅方向の軸を介して取り付けられたリンク要素とを具備し、前記各軸を、キャビンの上下動を許容し且つ進行方向に沿った前後方向の動きを規制する位置関係に設定して、前記リンク要素を進行方向に沿ってキャビンの前後2箇所に配置し、平行リンク機構を構成したことを特徴とする搬送台車。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−56477(P2012−56477A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202414(P2010−202414)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】