説明

搬送方法及び装置

【課題】装置構成及び設置作業が簡単でかつ搬出作業効率が高く、低コストにて高い作業効率にて伐採材を搬出することができる伐採材の搬出方法及び装置を提供する。
【解決手段】集材場3と先山2との間にわたって無端状に索条6を配設するとともに索条6に適当間隔置きに吊具35を装着し、この索条6を集材場3と先山2との間で一方向に回動させ、先山2で集材場3に向けて移動する吊具35に伐採材1を結束した結束ベルト40を連結し、集材場3で吊具35から結束ベルト40を取り外して伐採材1を荷卸しするようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、山間地で伐採された竹材や木材などの伐採材を集材場に搬出するのに好適な搬送方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自然環境の保護のために、里山の復活、樹林や竹林の保護、地域林業の復活、さらには石油資源の枯渇対策としてのバイオマスエネルギーの活用などの必要性が強く認識されており、その対策の1つとして過剰に繁茂した竹材の伐採や樹林の間伐を行うとともにその間伐材を有効活用することが要請されているが、その作業に多大な労力を要するため、コスト高になってなかなか実施できないというのが現実である。特に、伐採した伐採材を所定の集材場まで搬出するのに多大な労力と費用を必要とすることが大きな障害となっている。
【0003】
従来、先山で伐採した伐採材を所定の集材場まで効率的に搬出する装置として、集材場に自走式集材機を設置し、先山と自走式集材機との間に主索を張設し、この主索に沿って移動自在なキャリッジを設けるとともに、このキャリッジに伐採材を保持するフックを昇降可能に設け、キャリッジを往復移動させるメイン索とホールバック索及びフックを昇降させる引き上げ索をキャリッジと先山と自走式集材機の間に張設し、自走式集材機に主索にテンションを付与する巻取機と、メイン索とホールバック索を巻取り・巻き戻し操作してキャリッジを往復移動する一対の巻取機と、引き上げ索を巻取り・巻き戻し操作してフックを昇降させて荷上げ、荷卸しを行う巻取機とを配設したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、先山と集材場に設置した自走式集材機との間に主索を張設するとともに、主索に沿って移動自在なキャリッジを設け、キャリッジを往復移動させるメイン索とホールバック索をキャリッジと先山と自走式集材機の間に張設するとともに、メイン索とホールバック索を巻取り・巻き戻し操作する一対の巻取機を自走式集材機に搭載し、キャリッジには、主索を挟圧するクランプ手段と、メイン索とホールバック索が巻回されその移動によって吊荷用の吊持ロープを巻上げ・巻下げするウインチと、ウインチを制動するブレーキ手段を配設し、クランプ手段を開放し、ブレーキ手段を制動させた状態でメイン索とホールバック索を巻取り・巻き戻し操作することでキャリッジを往復移動させ、クランプ手段を作動させ、ブレーキ手段を開放した状態でメイン索とホールバック索を巻取り・巻き戻し操作することで吊持ロープを巻上げ・巻下げして荷上げ、荷卸しを行うように構成したものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、集材場に設置するウインチ装置に2個のドラムを並設し、先山とウインチ装置間に設定したループ状のルートに沿って索条を配設してその両端を2個のドラムにそれぞれ巻回し、索条に伐採材を連結する連結手段を固定し、2個のドラムを選択的に回転駆動することで索条を往復回動させ、連結手段を集材場と先山との間で往復移動させるようにしたものが知られている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平5−193893号公報
【特許文献2】特開平10−338126号公報
【特許文献3】特開2004−149277号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1記載の構成では、先山と自走式集材機との間にキャリッジを支持する主索を張設するとともに、メイン索とホールバック索と引き上げ索を設け、これらの索条を巻取り・巻き戻し操作する機構を設ける必要があるため、自走式集材機及びキャリッジの装置構成が複雑でかつ現場での設置作業も煩雑であるため、装置が高価でかつ設置時の作業効率も低いためにコスト高になるという問題がある。また、伐採材の搬出時に単一のキャリッジを往復移動させるため、搬出作業時に高い作業効率を確保することができないという問題がある。
【0007】
また、特許文献2記載の構成では、主索とメイン索とホールバック索を張設し、自走式集材機にはメイン索とホールバック索を巻取り・巻き戻し操作する一対の巻取機を配設した構成となっているため、特許文献1記載の構成に比して、引き上げ索を省略でき、自走式集材機の構成も簡単になっているが、キャリッジの構成が複雑になり、重量も大きくなっているため、特許文献1の問題を根本的に解消できるものではない。
【0008】
また、特許文献3記載の構成では、ループ状に索条を張設し、ウインチ装置も2個のドラムを並設した比較的簡単な装置構成であるため、装置を安価に構成できかつ設置作業も簡単であるが、索条に連結手段を固定しているため、伐採材の搬出時には索条を往復回動させて連結手段を往復移動させるため、搬出作業時に高い作業効率を確保することができないという問題がある。
【0009】
本発明は、上記従来の課題に鑑み、装置構成及び現場での設置作業が簡単でかつ搬出、搬送作業効率が高く、低コストにて高い作業効率にて伐採材を搬出するなど搬送対象を搬送することができ、工場内、建屋間などその他の用途での搬送対象の搬送にも同様に適用できる搬送方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の搬送方法は、集材場と先山などの所定位置間にわたって無端状に索条を配設するとともに索条に適当間隔置きに吊具を装着し、この索条を所定位置間で一方向に回動させ、一方の位置から他方の位置に向けて移動する吊具に伐採材などの搬送対象を連結し、他方の位置で吊具から搬送対象を荷卸しするものである。
【0011】
この構成によれば、伐採材の搬出に特化して説明すると、集材場と先山との間で一方向に回動する無端状の索条に装着した吊具に、先山近傍で伐採材を連結し、集材場で吊具から伐採材を荷卸しすることで伐採材を集材場に搬出することができ、伐採材を連続的に高い作業効率にて搬出することができ、また吊具を装着した単一の無端状の索条に回動させるだけでよいので、装置構成及び現場での設置作業が簡単で低コストにて実施することができ、低コストにて高い作業効率で伐採材を搬出することができる。
【0012】
また、鉛直軸心回りに回転駆動可能な駆動シーブを備えた履帯式自走台車を集材場に位置させ、集材場と先山との間に設定した環状ルートの適所に索条を移動自在に支持する支持ローラ機構を配設し、無端状の索条を駆動シーブと支持ローラ機構に巻き掛けて環状ルートに沿って配設すると、駆動シーブを備えた履帯式自走台車を使用することで機構が複雑で大掛かりな駆動機構部を簡単かつ作業性良く配設することができ、かつ支持ローラ機構は簡便で軽量な構成で済むため環状ルートの適所に配設する作業も容易に作業性良く行うことができ、無端状の索条を先山と集材場の間にわたって配設する作業を容易に行うことができ、現場での設置作業の作業効率が格段に向上する。
【0013】
また、環状ルートは適当に選定した立木の側部を通るように設定し、選定した立木に支持ローラ機構を支持させると、支持ローラ機構を立木を利用して支持することで、別途に支柱などを所要の支持強度が得られるように打ち込む作業が不要となるため、さらに作業性が向上する。
【0014】
また、本発明の搬送装置は駆動シーブとその回転駆動手段が装備され、集材場と先山などの所定位置間で伐採材などの搬送対象を搬送する一方の所定位置に配設される履帯式自走台車と、所定位置間に設定した環状ルートに沿って配設される無端状の索条と、環状ルートの適所に配設され、索条を移動自在に支持する支持ローラ機構と、無端状の索条に適当間隔置きに装着され、伐採材を保持した結束ベルトを連結可能な吊具とを備えているものである。
【0015】
この構成によれば、伐採材の搬出に特化して説明すると、履帯式自走台車は安定性が高くかつ山地でも簡単な整地作業を行うだけで自走可能であるので、この履帯式自走台車を集材場に設置することで、容易かつ短時間で集材場に駆動シーブを配設することができ、また集材場から先山に至る環状ルートの適所に支持ローラ機構を配設することで、伐採材を保持した結束ベルトを連結可能な吊具を備えた無端状の索条を集材場と先山との間の環状ルートに沿って容易に配設することができ、現場での設置作業を作業効率良く行えるとともに、上記伐採材の搬出方法を実施して伐採材を連続的に高い作業効率にて搬出することができるとともに、装置構成が簡単で低コストにて実施することができる。
【0016】
また、吊具は、索条に倒立U字状に巻掛けた吊ベルトと、索条から垂下する吊ベルトを通した鞘部材と、鞘部材を索条に向けて押し上げた状態で鞘部材の下端で吊ベルトを相互に固定する固定具と、固定具から下方に延出された吊ベルトの一端に設けられた引掛具とを備えていると、吊具が主として索条に倒立U字状に巻掛けた吊ベルトから成るので、索条に吊具を装着した状態でも、索条外面から大きく突出せずかつ索条と同様の性状を呈するので駆動シーブ及び支持ローラにて容易かつ確実に駆動及び移動自在に支持することができ、かつ吊ベルトの索条からの垂下部を鞘部材で拘束しているので、吊ベルトがみだりに大きく撓んで周辺部材に引っ掛かる恐れを無くして索条の安定した回動状態を確保でき、また下端に引掛具を設けているので、伐採材を保持した結束ベルトをこの引掛具に引っ掛けることで容易に連結して搬送・荷卸しすることができる。
【0017】
また、支持ローラ機構が、索条を下方から支持する下支持ローラと、索条を左右方向に支持する横支持ローラと、索条を上方から押さえる上支持ローラの少なくとも何れか1つを有するローラユニットと、ローラユニットを上部に配設され、下部が環状ルートの側部に位置する立木に固定される取付ブラケットを備えていると、立木を利用して支持ローラ機構を固定して配設することができ、打込み支柱及びその打ち込み作業が必要でないために、支持ローラ機構の配設を作業性良く行うことができてコスト低下を図ることができる。また、支持ローラ機構の上部のローラユニットが下支持ローラと横支持ローラと上支持ローラの少なくとも何れか1つを有しているので、支持ローラ機構の配設箇所における索条の張設状況に応じて適切に支持することができる。
【0018】
また、下支持ローラは、索条を下部両側から支持し、中間に吊具通過空間を形成するように2分割された分割鼓型ローラにて構成されていると、索条から吊具を垂下させた状態で、索条を下部両側から通過自在に確実に支持することができ、索条に吊具を装着した状態での索条の下方からの支持を確実に行うことができる。
【0019】
また、横支持ローラが、外周に索条が嵌る環状凹溝を有する一対の溝付きローラと、一方の溝付きローラに向けて他方の溝付きローラを移動付勢する付勢手段を備えていると、索条を両側から規制することで、索条が回動時に横方向に振れたり、位置ずれするのを確実に防止して索条の安定した回動状態を確保することができる。
【0020】
なお、吊具は、索条に倒立U字状に巻掛けた吊ベルトと、索条から垂下する吊ベルトを通した鞘部材と、鞘部材を索条に向けて押し上げた状態で鞘部材の下端で吊ベルトを相互に固定する固定具と、固定具から下方に延出された吊ベルトの一端に設けられた引掛具とを備え、吊ベルトは、長さ調節用のバックルの一端に連結される定尺部と、バックルの他端との連結部から延出して引掛具の連結穴に摺動できるように通した延出端側をバックル側に折り返され、バックルの本体とこの本体に弾性的に圧接するロック部材との間に通して長さがロック部材の圧接を解除ないしは緩めることで調節できると共にロック部材の圧接によって調節長さにロックされるようにした長さ調節部とを備えたことを特徴とすることができる。
【0021】
また、吊具は、引掛具に引っ掛け連結されるループ状の結束ベルトを備え、引掛具は開放部に受け入れ側に開き外れ側に閉じる逆止レバーを持ったフックであり、フックは、下端部を伐採材に券回したループ状の結束ベルトの上端部を引っ掛けて支持するようにしたことを特徴とすることができる。
【0022】
さらに、駆動シーブは、履帯式自走台車のブーム上に回転軸の角度調節手段を介して取り付け、ブームに連接したアーム先端作業具と駆動シーブとを油圧駆動源に切り替え接続されるようにしたことを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の搬送方法及び装置によれば、例えば、集材場と先山との間で一方向に回動する無端状の索条に装着した吊具に、先山近傍で伐採材を連結し、集材場で吊具から伐採材を荷卸しすることで、伐採材を集材場に連続的に高い作業効率にて搬出することができ、また吊具を装着した単一の無端状の索条に回動させるだけでよいので、装置構成及び現場での設置作業が簡単であるため、低コストにて高い作業効率にて伐採材を搬出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係る搬送装置の伐採材の搬出に特化した一実施形態について、図1〜図12を参照して説明する。
【0025】
図1において、竹材や木材などの伐採材1の伐採地において、伐採作業を行う先山2に近い位置でかつトラック等による輸送が可能な林道等に近い位置に集材場3が設定されている。先山2および集材場3の一方、例えば集材場3に、駆動シーブ5を装備した履帯式自走台車4が設置されている。また、集材場3と先山2の間にわたって、その地形と伐採すべき或いは残すべき立木10の配置位置に合わせて無端状の索条6を回動させる環状ルート7が設定されている。この環状ルート7を設定するのに必要な適所に、索条6を移動自在に支持する支持ローラ機構8が、立木を所定高さ位置で切断して形成した立木杭9に固定して配設されている。履帯式自走台車4が先山2に設置されると、履帯式自走台車4がショベルやブレードを持ったブルドーザなどの作業車としておくことで、地均しや集材ルート作りなどしながら先山2に到達することができる。集材場3に履帯式自走台車4を同様に設ける場合にも、集材場3側の履帯式自走台車4は小型で、先山2側の履帯式自走台車4を大型のものとして必要な作業が強力に安定して達成されるようにし、集材場3側での履帯式自走台車4は必要最小限のものとして無駄が省ける。また、ショベルは、索条6を調節して駆動し伐採材1を搬送する場合の負荷に対し地中に突き刺しアンカー効果を発揮させられる。
【0026】
履帯式自走台車4は、本実施形態では、図2に示すように、ショベル付きブルドーザに鉛直軸心回りに回転自在に支持した駆動シーブ5と駆動シーブ5を一方向に回転駆動する油圧モータなどの回転駆動手段11を装備して構成されている。このショベル付きブルドーザから成る履帯式自走台車4にて、集材場3を整地して履帯式自走台車4の設置面を形成するように構成されている。また、簡易ジャッキ12aとスパイク部12bを有するサポートジャッキ12が設けられ、履帯式自走台車4の履帯部4aとサポートジャッキ12の間の上部に駆動シーブ5とその回転駆動手段11が配置されて駆動シーブ5の高い支持剛性が確保されている。
【0027】
索条6が回動する環状ルート7には、ほぼ水平で直線状の直線部だけでなく、水平方向に屈曲する水平屈曲部や、垂直方向に屈曲する垂直屈曲部があり、支持ローラ機構8はそれぞれに対応した構成とされている。すなわち、水平屈曲部においては、図3に示すように、索条6を下方から支持する下支持ローラ13と、下支持ローラ13の索条移動方向前後に配設された一対の横支持ローラ14とを有する水平屈曲部ローラユニット15が配設されている。また、垂直屈曲部においては、図4に示すように、索条6を下方から支持する下支持ローラ13と、下支持ローラ13の索条移動方向前後に配設された一対の横規制ローラ16と、さらにその前後に配設された上支持ローラ17とを有する垂直屈曲部ローラユニット18が配設されている。なお、直線部においては、図2に示すように、索条6を下方から支持する下支持ローラ13のみを有する直線部ローラユニット19が適当間隔置きに配設されている。
【0028】
水平屈曲部ローラユニット15は、図5に示すように、環状ルート7の側部に位置する立木杭9に下部が固定される取付ブラケット20の上部に配設されている。すなわち、取付ブラケット20の上端に取付板21が固定され、この取付板21の下面に、下支持ローラ13と一対の横支持ローラ14を装着したローラブラケット22が固定されている。下支持ローラ13は、索条6を下部両側から支持し、中間に吊具通過空間24を形成するように2分割された分割鼓型ローラ23a、23bにて構成されている。各横支持ローラ14は、外周に索条6が嵌る環状凹溝を有する一対の溝付きローラ61a、61bにて構成されるとともに、一方の溝付きローラ61aはローラブラケット22に回転自在に支持され、他方の溝付きローラ61bは回転自在にかつスライド機構62を介して一方の溝付きローラ61aに対して遠近方向に移動自在にローラブラケット22に装着されるとともに、付勢手段63にて一方の溝付きローラ61aに向けて移動付勢されている。
【0029】
垂直屈曲部ローラユニット18も、図6に示すように、立木杭9に下部が固定される取付ブラケット20の上部に配設されている。すなわち、取付ブラケット20の上端に取付板21が固定され、この取付板21の下面に、下支持ローラ13と一対の横規制ローラ16と一対の上支持ローラ17を装着したローラブラケット25が固定されている。下支持ローラ13は、上記分割鼓型ローラ23a、23bにて構成され、各横規制ローラ16は、索条6を両側から挟むように配設された垂直軸心回りに回転自在な一対の縦円筒ローラ26a、26bにて構成され、各上支持ローラ17は、索条6に上方から支持するように配設された水平軸心回りに回転自在な横円筒ローラ27にて構成されている。
【0030】
直線部ローラユニット19は、図示は省略しているが、同様に立木杭9に下部が固定される取付ブラケット20の上端に固定された取付板21の下面に、下支持ローラ13を装着したローラブラケットを固定した構成とされている。
【0031】
立木杭9に取付ブラケット20の下部を固定する固定構造としては、図7、図8に示すように、取付ブラケット20の下部を立木杭9の側面に沿わせて配置し、取付ブラケット20の下部と立木杭9の周囲に巻き付けた1又は複数の拘束手段28にて拘束して固定するのが、構成が簡単で作業性が高いので好適である。
【0032】
拘束手段28の具体例としては、図7、図8(a)に示すように、一対の略半円状の拘束バンド29a、29bの一端を連結ピン29cにて回動自在に相互に連結するとともに、他端に設けたフランジ29d、29eを回転操作部30aとナット30bを有する締付ねじ30にて引き寄せることで、取付ブラケット20と立木杭9を拘束固定するようにしたものが好適である。また、図8(b)に示すように、拘束バンド31の一端部に、回転操作部33aを有するウォームねじ33を回転自在に配設した送りねじ機構部32を設け、拘束バンド31の他端側にウォームねじ33の歯が係合する多数のスリット34を長手方向に並列して形成し、拘束バンド31の他端側を送りねじ機構部32に挿入してウォームねじ33を回転操作することで拘束バンドを締め込んで取付ブラケット20と立木杭9を拘束固定するようにしたものも好適に適用できる。
【0033】
無端状の索条6は、例えば直径20mm程度の合成樹脂製のロープを編込によって無端状に接続したものが好適に用いられる。索条6の具体的な構成と材質としては、アラミド繊維などの高強度の繊維から成る芯ロープの外周面を、ポリエチレンテレフタレートなどの耐候性や耐摩耗性の高い繊維から成る編成材にて被覆したものや、芯ロープの外周面に耐摩耗性の高い合成樹脂のコーティング材で被覆したものなどが好適に適用される。
【0034】
索条6には、図1に示すように、長手方向に適当間隔置きに吊具35が装着されている。吊具35は、図9(a)、(b)に示すように、索条6に吊ベルト36を倒立U字状に巻掛け、索条6から垂下した吊ベルト36は扁平な角筒状の鞘部材37に通してその鞘部材37を索条6に向けて押し上げ、その状態で鞘部材37の下端で固定具38にて吊ベルト36を相互に固定するとともに固定具38を鞘部材37に係合させている。固定具38としては、一平面に3本のロッド38a〜38cを平行に並列配置して一体的に連結した構成で、吊ベルト36の他端部36bをロッド38aと38bにジグザグ状に巻き掛けるとともにロッド38aと38bの間から適当長引き出した状態とし、吊ベルト36の一端36a側をロッド38bと38cの間を通すようにしたものが好適である。固定具38から下方に所定長さ垂下された吊ベルト36の一端36aには引掛具39が装着されている。
【0035】
吊具35の下端の引掛具39に伐採材1を結束した結束ベルト40を着脱自在に連結するため、結束ベルト40の一端に引掛具39に離脱可能に連結できる連結具41が設けられている。引掛具39には両側に離脱操作突部39aが突設され、連結具41の方形の本体枠41aから上方に突出されたT字状の係止突部41bを挿入することで係止されて引掛具39と連結具41が連結され、離脱操作突部39aを押圧することで係止が解除されて連結が解除されるように構成されている。連結具41は、本体枠41aの中央を横断する中間ロッド41cを有し、結束ベルト40の一端40a側を中間ロッド41cの上部空間を通して中間ロッド41cに巻き掛け、中間ロッド41cの下部空間を通して本体枠41aの下部と結束ベルト40の間に通して適当な長さ引き出した状態とすることで、結束ベルト40の一端部に連結具41が装着されている。結束ベルト40の他端にはリング部40bが設けられ、結束ベルト40の一端40a側をこのリング部40bに通すことで伐採材1を通して結束する結束空間42が形成されている。
【0036】
結束ベルト40の具体的な構成は、図9に例示したものに限定されるものではなく、例えば、図10に示すように、結束ベルト40の一端に連結具41を装着し、中間部に結束空間42を取り囲むベルト長を任意に調整可能なカムロック式バックル43を装着した構成としても良い。カムロック式バックル43は、略コ字状乃至C字状の両側板44aの両端をそれぞれ連結板44b、44cで連結してなる本体44を有しており、結束ベルト40の中間部に形成したU字状折り返し部40cに本体44の一端の連結板44bを挿入し、さらにU字状折り返し部40cの上端で倒立U字状に折り返してその上部を縫着部44dにて一体固着することで結束ベルト40の中間部に装着されている。カムロック式バックル43の本体44の両側板44aの他端部間には枢支軸45が配置されるとともに、この枢支軸45に図10において時計方向に回転すると他端の連結板44cに向けて圧接する形状でかつ表面に滑り止め突起を多数形成されたカム面46aを有するカムボス46が回転自在に配置され、かつカムボス46から操作板部47が両側板44aの外側縁に沿って延出されるとともに、カムボス46を時計方向に回転付勢する弦巻ばね(図示せず)が設けられている。
【0037】
このカムロック式バックル43を中間部に装着した結束ベルト40においては、結束ベルト40の他端40eを、カムロック式バックル43の本体44の両端の連結板44b、44c間に通すとともに、操作板部47を白抜き矢印の如く押圧して連結板44cとカムボス46の間を通して矢印の如く引き出すことで、両連結板44b、44c間に結束空間42を形成しておく。かくして、伐採材1を結束する際には、操作板部47を押圧して結束ベルト40を結束空間42側に引き戻し、一旦十分に大きな結束空間42が形成しておき、その後結束空間42内に伐採材1を挿入した後、操作板部47を押圧して結束ベルト40の他端40e側を矢印の如く引き出して伐採材1を結束し、操作板部47の押圧を解除すると、結束状態でロックされる。
【0038】
また、結束ベルト40において、上記カムロック式バックル43に代えて、図11に示すようなラチェット巻取式バックル48を適用することもできる。ラチェット巻取式バックル48は、本体49に回転自在に支持された巻取軸50に結束ベルト40の他端部を挿通するスリット50aを形成し、かつ巻取軸50にラチェット機構51を介して操作レバー52を連結し、操作レバー52を矢印の如く往復揺動させることで、巻取軸50が一方向に回転するように構成されている。かくして、結束ベルト40の他端部を巻取軸50のスリット50aに白抜き矢印の如く挿通し、操作レバー52を矢印の如く往復揺動させることで巻取軸50に結束ベルト40を巻き取って伐採材1を結束することができる。こうして伐採材1を結束した状態で、操作レバー52を本体49上に重なるように倒すことでそのままロックされる。また、ロックを解除する際には、解除レバー53を引きながら操作レバー52を本体49に対して180度の位置まで開くことによってラチェット機構51が解除され、巻取軸50が回転自在となって結束ベルト40は引き出し自在となる。
【0039】
さらに、結束ベルト40においては、図12に示すような摩擦ロック式バックル54を適用することもできる。摩擦ロック式バックル54は、本体55に巻付軸56を設け、かつ巻付軸56回りに本体55上に倒伏した位置と上方に開放した位置との間で回動自在な操作レバー57を設けるとともにこの操作レバー57に巻掛部58を設けて構成されている。また、本体55と操作レバー57に、操作レバー57を倒伏させたときに相互に係合してロックする被係合部59aと係合部材59bとを設けるとともに、係合部材59bを係合解除操作可能に構成している。かくして、操作レバー57を開いた状態で、結束ベルト40の他端部を、白抜き矢印の如く、巻付軸56及び巻掛部58の外側に通した後、巻掛部58の内側に折り返し、さらに巻付軸56と結束ベルト40の間を通して本体55上に引き出し、そのまま結束ベルト40を引っ張ることで伐採材を結束することができ、その状態で操作レバー57を倒伏させることで、結束ベルト40が巻付軸56及び巻掛部58に巻き掛けられた状態で相互に圧接されることで結束ベルト40が摩擦固定され、かつその状態で操作レバー57がロックされるので、伐採材の結束状態が保持される。ロックを解除する際には、係合部材59bを解除操作して操作レバー57を開くことによって結束ベルト40は引き出し自在となる。
【0040】
さらに、結束ベルト40として、図示は省略するが、単に無端状に構成したものを適用し、吊具35の下端の引掛具39としてフック部材を適用して、伐採材に結束ベルト40を一周以上、好適には複数回巻き付け、その結束ベルト40の端をフック部材に掛けることで吊具35に連結し、伐採材を搬送するようにしても良い。
【0041】
以上の構成において、山林で間伐材を伐採して搬出する場合には、対象地の先山2の近傍でかつ林道などの道路に近い位置に集材場3を設定し、この集材場3にトラックなどで履帯式自走台車4及び所要の支持ローラ機構8を搬入し、集材場3に履帯式自走台車4を設置し、先山2と集材場3の間に索条6を配置する環状ルート6を設定し、この環状ルート6を規定する所要箇所に支持ローラ機構8を分配配置する。次に、支持ローラ機構8の配置箇所で、適当な立木10を例えば1.5m程度の高さ位置で切断して立木杭9を形成し、各立木杭9に支持ローラ機構8の取付ブラケット20を沿わせ、拘束手段28にて拘束固定して装着固定する。次に、環状ルート6に沿って履帯式自走台車4の駆動シーブ5と各支持ローラ機構8の間にわたって適当間隔に吊具35が装着された無端状の索条6を張設する。立木杭9は、図1に示すように、必要に応じて隣接する立木10に連結索60で連結して、その支持強度の補強をしておくのが好ましい。
【0042】
こうして伐採材1の搬出装置の設置が完了すると、履帯式自走台車4の回転駆動手段11を作動させ、無端状の索条6を集材場3と先山2との間で一方向に回動させる。そして、先山2で、結束ベルト40にて伐採材1を結束し、索条6の回動に伴って集材場3に向けて移動する吊具35の下端の引掛具39に、伐採材1を結束した結束ベルト40を連結する。かくして、索条6が集材場3に向けて回動することで伐採材1を集材場3に向けて搬送することができる。集材場3では、吊具35から結束ベルト40を取り外すことで伐採材1を荷卸し、その後結束ベルト40を取り外して伐採材1を所定場所に集積することで、伐採材1の搬送が終了し、以上の動作を繰り返すことで、集材場3に搬出された伐採材1が集材される。一方、結束ベルト40は循環回動する吊具35を利用して適宜先山2に戻して循環使用される。
【0043】
なお、集材場3に搬出した伐採材1は、そのままトラック等で処理場に運送しても良いが、集材場3に伐採材1をチップ状に破砕するチョッパー(図示せず)を設置して、チップ材にしてトラック搬送するようにすると、効率的に運送することができる。因みに、こうして製造された伐採材1のチップは、その後乾燥して粉砕することで堆肥等として、さらに発酵促進剤を加えて家畜の餌等に利用可能であり、また炭化処理することで、樹脂成形品の充填材等として有効に利用することができ、さらには生物・化学的な処理によって化石燃料の代替燃料として再生することも考えられる。
【0044】
以上のように本実施形態によれば、先山2近傍で伐採材1を結束した結束ベルト40を、集材場3に向けて回動する無端状の索条6に装着した吊具35に連結し、集材場3で吊具35と結束ベルト40の連結を解除して伐採材1を荷卸しすることで伐採材1を集材場3に搬出することができ、伐採材1を連続的に高い作業効率にて搬出することができる。しかも、吊具35を装着した単一の無端状の索条6に回動させるだけでよいので、装置構成及び現場での設置作業が簡単で低コストにて実施することができ、低コストにて高い作業効率で伐採材1を搬出することができる。
【0045】
また、鉛直軸心回りに回転駆動可能な駆動シーブ5を備えた履帯式自走台車4を集材場3に位置させ、集材場3と先山2との間に設定した環状ルート7の適所に索条6を移動自在に支持する支持ローラ機構8を配設し、無端状の索条6を駆動シーブ5と支持ローラ機構8に巻き掛けるようにしているので、複雑で大掛かりな駆動シーブ5の駆動機構部を簡単かつ作業性良く配設することができ、かつ支持ローラ機構8は簡便で軽量な構成で済むため環状ルート7の適所に配設する作業も容易に作業性良く行うことができ、無端状の索条6を先山2と集材場3の間にわたって配設する作業を容易に行うことができ、現場での設置作業の作業効率が格段に向上する。
【0046】
また、環状ルート7を適当に選定した立木10の側部を通るように設定し、選定した立木10にて立木杭9を形成して支持ローラ機構8を支持させるようにしているので、支持ローラ機構8を、立木10を利用して支持することができるため、別途に支柱などを所要の支持強度が得られるように打ち込む作業が不要となるため、さらに作業性が向上する。
【0047】
また、吊具35を、索条6に倒立U字状に巻掛けた吊ベルト36と、索条6から垂下する吊ベルト36を通した鞘部材37と、鞘部材37を索条6に向けて押し上げた状態で鞘部材37の下端で吊ベルト36を相互に固定する固定具38と、固定具38から下方に延出された吊ベルト36の先端に設けた引掛具39にて構成し、吊具35を主として索条6に倒立U字状に巻掛けた吊ベルト36にて構成しているので、索条6に吊具35を装着した状態でも、索条6外面から大きく突出せずかつ索条6と同様の性状を呈するので駆動シーブ5及び支持ローラ機構8にて容易かつ確実に駆動及び移動自在に支持することができる。しかも、吊ベルト36の索条6からの垂下部を鞘部材37で拘束しているので、吊ベルト36がみだりに大きく撓んで周辺部材に引っ掛かる恐れが無く、索条6の安定した回動状態を確保することができる。また、吊ベルト36の下端に引掛具39を設けているので、伐採材1を保持した結束ベルト40をこの引掛具39に引っ掛けることで容易に連結して搬送・荷卸しすることができる。
【0048】
また、支持ローラ機構8を、索条6を下方から支持する下支持ローラ13と、索条6を左右方向に支持する横支持ローラ14と、索条6を上方から押さえる上支持ローラ17の少なくとも何れか1つを有するローラユニット15、18、19と、これらローラユニット15、18、19を上部に配設した取付ブラケット20にて構成し、取付ブラケット20の下部を立木杭9に固定するようにしているので、立木を利用して支持ローラ機構8を配設することができ、打込み支柱及びその打ち込み作業が必要でないために、支持ローラの配設を作業性良く行うことができてコスト低下を図ることができる。また、ローラユニット15、18、19が下支持ローラ13と横支持ローラ14と上支持ローラ17の少なくとも何れか1つを有しているので、支持ローラ機構8の配設箇所における索条6の張設状況に応じて適切に支持することができる。
【0049】
また、下支持ローラ13が、索条6を下部両側から支持し、中間に吊具通過空間24を形成するように2分割された分割鼓型ローラ23a、23bにて構成しているので、索条6から吊具35を垂下させた状態で、索条6を下部両側から通過自在に確実に支持することができ、索条6に吊具36を装着した状態での索条6の下方からの支持を確実に行うことができる。また、横支持ローラ14が、外周に索条6が嵌る環状凹溝を有する一対の溝付きローラ61a、61bと、一方の溝付きローラ61aに向けて他方の溝付きローラ61bを移動付勢する移動付勢手段63を備えているので、索条6を両側から規制することで、索条6が回動時に横方向に振れたり、位置ずれするのを確実に防止して索条6の安定した回動状態を確保することができる。
【0050】
以上の実施形態では、索条6として、合成樹脂繊維から成る合成樹脂繊維ロープを適用した例を示したが、ワイヤーロープやチェーンなどを適用することもできる。しかし、ワイヤーロープやチェーンなどは、重量が大きく張設作業に多大な労力を要するとともに、重量が大きいと大きく垂れ下がるために運転時に大きな張力を負荷する必要があり、そのため装置構成自体が大掛かりになってコスト高になってしまうという課題がある。これに対して合成樹脂繊維ロープを用いると、軽量でありながら必要な強度を確保できるので好適である。
【0051】
図13〜図15に上記とは別の垂直屈曲部ローラユニット18を示している。このものは、取付ブラケットなどに取り付け支持される門型の取付板21の内縁に固定した二股のローラブラケット25を有し、このローラブラケット25の両側板内側に分割鼓型ローラ23a、23bを水平軸心まわりに回転できるように設けて図13〜図16に示すように通した索条6を下から支持するようにしている。また、ローラブラケット25の上部と下部とに索条6の通し方向前後に延びる上ローラブラケット25a、25bを備え、これら上、下ローラブラケット25a、25bの上流側および下流側の端部間に、索条6を分割鼓型ローラ23a、23bの上流側および下流側位置で両側から挟むように配設された垂直軸心回りに回転自在な一対の縦円筒ローラ26a、26bを取り付けてある。これにより、索条6は、分割鼓型ローラ23a、23bにより下から支持されて、一対の分割鼓型ローラ23a、23bから両側に外れることなく安定に走行でき、図13に示すように分割鼓型ローラ23a、23bを境に上流側および下流側の一方または双方において下向に向く垂直屈曲状態になっても分割鼓型ローラ23a、23bから外れることはないし、接触角が増すだけより安定走行できる。しかし、図13に示すように索条6が分割鼓型ローラ23a、23bを境に水平から上に向く垂直屈曲状態になるほど分割鼓型ローラ23a、23bから上方に外れることになる。これを防止するのに、ローラブラケット25の両側板から上流側および下流側に延びた一対のローラブラケット25cの上流側および下流側の端部間に、水平軸心回りに回転自在な横円筒ローラ27を設けて、分割鼓型ローラ23a、23bとの接触部を境とする上流側近傍から下流側近傍までの範囲で索条6が水平な状態で分割鼓型ローラ23a、23bと接触するように規制し、索条6が分割鼓型ローラ23a、23bから外れるのを防止するようにしている。
【0052】
なお、索条6が分割鼓型ローラ23a、23bに下方から支持されて走行するのに、図16(a)に示すように通過幅の大きな吊具35が通過するときに引っ掛かりがなく、図16(b)に示すように通過幅の小さな索条6単独での通過時に吊具通過隙間24内に落ち込まないようする必要がある。
【0053】
吊具35は、また、図17に示すように、索条6に吊ベルト36を倒立U字状に巻掛け、索条6から垂下した吊ベルト36は扁平な角筒状の鞘部材37に通してその鞘部材37を索条6に向けて押し上げ、その状態で鞘部材37の下端で既述の固定具38にて吊ベルト36を相互に固定するとともに固定具38を鞘部材37に係合させている。固定具38から下方に所定長さ垂下された吊ベルト36に引掛具39が装着されるが、本例では、特に、吊ベルト36は、既述の長さ調節用のバックル43の一端に連結される定尺部36cと、バックル43の他端との連結部から延出して引掛具39の連結穴39bに摺動できるように通した延出端側をバックル43側に折り返され、バックル43の本体43aとこの本体43aにばね43cの付勢などで弾性的に圧接するロック部材43bとの間に通して長さがロック部材43bの圧接を解除ないしは緩めることで調節できると共にロック部材43cの圧接によって調節長さにロックされるようにした長さ調節部36dとを備えたものとしている。
【0054】
これにより、長さ調節部36dの長さ調節をするだけで、引掛具39に引っ掛けた結束ベルト40で結束して支持している伐採材1を荷揚げ、荷卸しできる利便性がある。そこで、吊具35図17に示すように、引掛具39に引っ掛け連結されるループ状の結束ベルト40を備え、引掛具39は開放部に受け入れ側に開き外れ側に閉じる逆止レバー39cを持ったフックであり、フックは、下端部を伐採1に券回したループ状の結束ベルト40の上端部を引っ掛けて支持するようにしておくと、荷卸後に結束ベルト40をフックから外すのが瞬時に行えるし、結束ベルト40を引っ掛けるのはさらに容易である。しかも、荷卸しはバックル43のロック部材43cの圧接を解除または緩めれば、伐採材1は自身の重みで吊ベルト36における長さ調節部36cの2つ折り部を下方に引き延ばしながら降下するので、荷卸の量力を軽減できる。この荷卸し時の降下速度は、長さ調節部36cの延出端を把持して引き下げ側に力を掛ければセーブすることができる。また、長さ調節部36cの延出端を把持して引き下げれば、2つ折り部の長さを短くしながら伐採材1を引き上げられ荷揚げすることができる。この際、ロック部材43cのロック力が荷卸し側に強く働き、荷揚げ側に滑るか緩く働くようにしておけば、ロック部材43cのロックを解除したり、緩めたりせずに荷揚げが安全にできる。さらに、ループ状の結束ベルト40は下端側を伐採材1に一重以上に券回して荷上げすれば、伐採材1の自重で自然に締まって滑り落ちないように結束でき便利である。
【0055】
さらに、既述の駆動シーブ5は図18、図19に示すように、履帯式自走台車4のブーム4b上に回転軸4cの角度調節手段4dを介して取り付け、ブーム4bに連接したアーム4eのショベル4fやブレードなど先端作業具と駆動シーブ5とを、切り替えレバー4gなどにより図示しない油圧駆動源に切り替え接続されるようにすることができる。角度調節手段4dは、図示例の場合ブーム4b上に溶接やボルト止めして固定した基台71と駆動シーブ5の回転機構部72とを回転軸線から回転軸4cに対し前後方向の一方側に片寄って位置する水平軸73によって、他方の側でネジなどによるジャッキタイプの昇降機構74にて連結したものとしてあり、昇降機構74の昇降動作で回転軸4cを水平軸73まわりに前傾および後傾させられるようにしている。これによって、平地、傾斜地、凸凹地の別を問わず、履帯式自走台車4をショベル4fなどによるアンカー効果を得て安定に固定できるし、この安定姿勢においてブーム4bがどのような角度になっても駆動シーブ5の回転軸4cは、駆動シーブ5に掛け回す索条6の引き回し方向に対して直角に向くように調節することができ、特別なガイドなしにも索条6が駆動シーブ5から外れることはない。
【0056】
なお、本例の駆動シーブ5は、図18、図19に示すように、下部に外径が固定シーブ5よりも大きなフランジ状、リング状のガイド75を設け、駆動シーブ5まわりを索条6により走行される吊具35をガイド75により図9に示す鞘部材37を介し斜めに持ち上げ、あるいは、図21に示すように鞘部材37なしに吊ベルト36に直接働いて駆動シーブ5から外側に引き離し、駆動シーブ5やブーム4bおよび基台71側に干渉するのを防止するようにしている。
【0057】
また、回転機構部72に履帯の一端部に配される駆動軸に対する油圧駆動機構を採用してその駆動軸に固定シーブ5を連結すれば、履帯式自走台車4に既設の駆動配管を繋ぐだけで、履帯式自走台車4のレバー操作に従う自走機能を転用して正転、逆転の強力駆動ができるし、必要強度も十分得られる。
【0058】
さらに、索条6は図20に示すように端部どうしを自在連結金具81によって曲がりや捻りの自由度を失うことなく連結することができる。これは、一本の索条6の端部どうしでも、個別の索条8の端部どうしでもよい。個別の索条8の端部どうしであれば定尺に既成しておいた索条6を必要数繋ぐことで必要長さのルート長を得ることができる。
【0059】
特に、索条6の端部に二股連結金具82を予め連結しておき、二股連結金具82どうしを十字連結金具83を介しヒンジピン84により現場連結できるようにすると、索条6の取り扱いに便利である。また、連結が個別の索条6どうしとすれば現場で索条6を必要ルート長に向け延長するのに特に便利である。これらの場合、索条6の端部は、図示するように二股連結金具82の連結穴82aに通した後に折り返し、元の索条6内に編み込み、あるいは拠り込むようにすると、引っ掛かりができず走行させやすい。編み込み部や拠り込み部は図示するように太くはなるが引っ掛かり部とはならないし、連結金具81とほぼ同等のかさ張り程度に収まるので好適である。図示例の索条は既述のロープであり編み込み構造を採用している。なお、索条6の前記編み込み部ないしは拠り込み部は他より太り、傷つきやすい傾向を示すので、図20に仮想線で示すようにシュリンクフィルム91によって覆うなどして保護するのが好適である。
【0060】
さらに、図21に示す吊ベルト36は、既述したように鞘部材37を省略して、吊ベルト36を索条6に掛けて折り返した状態を固定具38にて保持するようにした簡略タイプの実施系を示している。これによっても、吊ベルト36による伐採材1を安定に搬送できる。吊ベルト36の索条6への引っ掛け部は、伐採材1の非支持状態ではある程度緩むが、伐採材1を支持した状態では図21に示すように締って動かなくなる。しかし、緩んだ時の位置ずれを防止するのに索条6上に滑り止めを設けるのが好適である。滑り止めは、どのようにもできるが、図示例では樹脂製の緩み止め付き結束バンド92を、索条6の吊ベルト36装着部の搬送方向前後の2か所に、吊ベルト36の幅よりも少し大きな間隔で装着してある。結束バンド92は索条6のまわりに位置ずれしない程度に緊縛しておくことで、吊ベルト36の位置ずれを確実に防止でき、吊ベルト36は索条6の移動方向下流側に位置ずれする傾向を示すが、対応する側の結束バンド92がそれを受け止める形でそれ以上の位置ずれを阻止する。従って、索条6上の吊ベルト36の間隔はほとんど変化せず、接近し合って搬送中の伐採材などが絡み合うようなことが回避できる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、集材場と先山との間で一方向に回動する無端状の索条に装着した吊具に、先山近傍で伐採材を連結し、集材場で吊具から伐採材を荷卸しすることで、伐採材を集材場に連続的に高い作業効率にて搬出することができ、また吊具を装着した単一の無端状の索条に回動させるだけでよく装置構成及び現場での設置作業が簡単であり、低コストにて高い作業効率にて伐採材を搬出することができるので、竹材や木材などの伐採材の搬出に好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一実施形態の伐採材の搬出装置の全体概略構成を示す斜視図。
【図2】同実施形態の集材場部分の構成を示す正面図。
【図3】同実施形態の環状ルートの水平屈曲部における水平屈曲部ローラユニットの配設状態を示す平面図。
【図4】同実施形態の環状ルートの垂直屈曲部における垂直屈曲部ローラユニットの配設状態を示す正面図。
【図5】同実施形態の水平屈曲部ローラユニットの構成を示す側面図。
【図6】同実施形態の垂直屈曲部ローラユニットの構成を示す側面図。
【図7】支持ローラ機構の立木杭への取付状態図。
【図8】(a)、(b)は支持ローラ機構の取付ブラケットを立木杭に拘束する拘束手段の構成例を示す平面図。
【図9】同実施形態の索条に対する吊具の装着構成と、吊具に連結する結束ベルトの構成を示し、(a)は正面図、(b)は縦断側面図。
【図10】同実施形態における結束ベルトのカムロック式バックルを備えた構成例を示す部分断面側面図。
【図11】同実施形態における結束ベルトの別の構成例におけるラチェット巻取式バックルの斜視図。
【図12】同実施形態における結束ベルトのさらに別の構成例における摩擦ロック式バックルの斜視図。
【図13】同実施形態における垂直屈曲部ローラユニットの別の構成を示す側面図。
【図14】図13の垂直屈曲部ローラユニットの正面図。
【図15】図13の垂直屈曲部ローラユニットの平面図。
【図16】図13の垂直屈曲部ローラユニットの索条吊具部の通過状態と、索条通過状態とを示す説明図。
【図17】同実施形態におけるさらに別の吊具および結束ベルトを示す斜視図。
【図18】本実施形態における別の履帯式自走台車の例を示す側面図。
【図19】図17の履帯式自走台車の平面図。
【図20】ロープ索条の端部どうしを自在連結金具で連結した状態を示す斜視図。
【図21】吊ベルトの変形例の一部を使用状態で示した斜視図。
【符号の説明】
【0063】
1 伐採材
2 先山
3 集材場
4 履帯式自走台車
4b ブーム
4c 回転軸
4d 角度調節手段
5 駆動シーブ
6 索条
7 環状ルート
8 支持ローラ機構
9 立木杭
10 立木
11 回転駆動手段
13 下支持ローラ
14 横支持ローラ
15 水平屈曲部ローラユニット
17 上支持ローラ
18 垂直屈曲部ローラユニット
19 直線部ローラユニット
20 取付ブラケット
23a、23b 分割鼓型ローラ
24 吊具通過空間
35 吊具
36 吊ベルト
37 鞘部材
38 固定具
39 引掛具
40 結束ベルト
61a、61b 溝付きローラ
63 付勢手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集材場と先山などの所定位置間にわたって無端状に索条を配設するとともに索条に適当間隔置きに吊具を装着し、この索条を所定位置間で一方向に回動させ、一方の位置から他方の位置に向けて移動する吊具に伐採材などの搬送対象を連結し、他方の位置で吊具から搬送対象を荷卸しすることを特徴とする搬送方法。
【請求項2】
鉛直軸心回りに回転駆動可能な駆動シーブを備えた履帯式自走台車を集材場および先山の一方に位置させ、集材場と先山との間に設定した環状ルートの適所に索条を移動自在に支持する支持ローラ機構を配設し、無端状の索条を駆動シーブと支持ローラ機構に巻き掛けて環状ルートに沿って配設し、先山から集材場に伐採材を搬出することを特徴とする請求項1記載の搬送方法。
【請求項3】
環状ルートは適当に選定した立木の側部を通るように設定し、選定した立木に支持ローラ機構を支持させることを特徴とする請求項1記載の伐採材の搬送方法。
【請求項4】
駆動シーブとその回転駆動手段が装備され、集材場と先山などの所定位置間で伐採材などの搬送対象を搬送する一方の所定位置に配設される履帯式自走台車と、所定位置間に設定した環状ルートに沿って配設される無端状の索条と、環状ルートの適所に配設され、索条を移動自在に支持する支持ローラ機構と、無端状の索条に適当間隔置きに装着され、伐採材を保持した結束ベルトを連結可能な吊具とを備えていることを特徴とする搬送装置。
【請求項5】
吊具は、索条に倒立U字状に巻掛けた吊ベルトと、索条から垂下する吊ベルトを通した鞘部材と、鞘部材を索条に向けて押し上げた状態で鞘部材の下端で吊ベルトを相互に固定する固定具と、固定具から下方に延出された吊ベルトの一端に設けられた引掛具とを備えていることを特徴とする請求項4記載の搬送装置。
【請求項6】
支持ローラ機構は、索条を下方から支持する下支持ローラと、索条を左右方向に支持する横支持ローラと、索条を上方から押さえる上支持ローラの少なくとも何れか1つを有するローラユニットと、ローラユニットを上部に配設され、下部が環状ルートの側部に位置する立木に固定される取付ブラケットを備えていることを特徴とする請求項4記載の搬送装置。
【請求項7】
下支持ローラは、索条を下部両側から支持し、中間に吊具通過空間を形成するように2分割された分割鼓型ローラにて構成されていることを特徴とする請求項6記載の搬送装置。
【請求項8】
横支持ローラは、外周に索条が嵌る環状凹溝を有する一対の溝付きローラと、一方の溝付きローラに向けて他方の溝付きローラを移動付勢する付勢手段を備えていることを特徴とする請求項6記載の搬送装置。
【請求項9】
吊具は、索条に倒立U字状に巻掛けた吊ベルトと、索条から垂下する吊ベルトを通した鞘部材と、鞘部材を索条に向けて押し上げた状態で鞘部材の下端で吊ベルトを相互に固定する固定具と、固定具から下方に延出された吊ベルトの一端に設けられた引掛具とを備え、吊ベルトは、長さ調節用のバックルの一端に連結される定尺部と、バックルの他端との連結部から延出して引掛具の連結穴に摺動できるように通した延出端側をバックル側に折り返され、バックルの本体とこの本体に弾性的に圧接するロック部材との間に通して長さがロック部材の圧接を解除ないしは緩めることで調節できると共にロック部材の圧接によって調節長さにロックされるようにした長さ調節部とを備えたことを特徴とする請求項4記載の搬送装置。
【請求項10】
吊具は、引掛具に引っ掛け連結されるループ状の結束ベルトを備え、引掛具は開放部に受け入れ側に開き外れ側に閉じる逆止レバーを持ったフックであり、フックは、下端部を伐採材に券回したループ状の結束ベルトの上端部を引っ掛けて支持するようにしたことを特徴とする請求項9に記載の搬送装置。
【請求項11】
駆動シーブは、履帯式自走台車のブーム上に回転軸の角度調節手段を介して取り付け、ブームに連接したアーム先端作業具と駆動シーブとを油圧駆動源に切り替え接続されるようにしたことを特徴とする搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−100150(P2010−100150A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−272683(P2008−272683)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(508144495)株式会社JTトライアングル (4)
【出願人】(508144509)株式会社村田ハーベスト (2)