説明

搬送用シールチェーン

【課題】シール部材と外プレートとの摺動摩耗に起因する相互の隙間の発生を抑制して潤滑油の漏出を防止する搬送用シールチェーンを提供すること。
【解決手段】連結ピン120の外周面に内プレート110の左右両側から被嵌する左右一対のキャップ状ブシュ130、130と、左右一体のキャップ状ブシュ130を前後一対のブシュ圧入孔142に圧入嵌合する左右一対の外プレート140、140と、キャップ状ブシュ130の開口部側に配置する弾性シール部材150と、キャップ状ブシュ130の有底部分132に嵌合して支持する盲孔162を有する左右一対のブラケット部材160、160と、左右一対のブラケット部材160を相互に連結して搬送物Wを捕捉搬送する搬送手段170とで構成されている搬送用シールチェーン100。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送物を捕捉して搬送する搬送用シールチェーンに関するものであって、特に、連結ピンとブシュとの間に潤滑油を封入した搬送用チェーン。
【背景技術】
【0002】
シールチェーンは、一般に、チェーンの内プレートと外プレートとの間にシール機構を設け、連結ピンとブシュとの間に封入した潤滑油の漏出を防止している。このシール機構には、従来より様々なものが提案されている。
【0003】
従来、前後一対のブシュの両端部を左右一対の内側リンクプレートのブシュ圧入孔に圧入嵌合してなる内プレートとブシュ内に遊嵌されたピンの両端部が固定された外プレートとピンを囲んで外プレートの内側面側に装着される弾性材製の環状シール部材とを有するシールチェーンが知られている。
そして、このようなシールチェーンのシール機構においては、ブシュの両端の両端部が内プレートの外側面より内側に位置するようにブシュの両端部がブシュ圧入孔に圧入固定されることによりブシュ圧入孔内に空隙が形成され、ブシュ圧入孔の外側のエッジが面取りされて面取り部が形成され、弾性材製の環状シール部材はその一部が空隙内に位置し外プレートの内側面とピンの外周面とブシュの端面と面取り部とによって圧縮された状態で装着されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−194155号公報(第12欄、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したような従来のシールチェーンでは、弾性材製の環状シール部材の端面が外プレートに摺接摩耗することによって、弾性材製の環状シール部材と外プレートとの間に隙間が生じ、この隙間からブシュとピンとの間に封入された潤滑油が外部に漏れ出すという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、従来の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、シール部材と外プレートとの摺動摩耗に起因する相互の隙間の発生を抑制して、潤滑油の漏出を防止する搬送用シールチェーンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る本発明は、前後一対のピン圧入孔を有する内プレートと、内プレートのピン圧入孔に圧入嵌合される連結ピンと、連結ピンの外周面に内プレートの左右両側からそれぞれ被嵌する左右一対のキャップ状ブシュと、左右一体のキャップ状ブシュを前後一対のブシュ圧入孔にそれぞれ圧入嵌合するとともに連結ピンを介して内プレートをチェーン長手方向に相互に連結する左右一対の外プレートと、キャップ状ブシュの開口部側に配置して連結ピンの外周面とキャップ状ブシュの内周面との間隙に封入した潤滑油の漏出を阻止する弾性シール部材と、キャップ状ブシュの有底部分に嵌合して支持する盲孔を有する左右一対のブラケット部材と、左右一対のブラケット部材を相互に連結して搬送物を捕捉搬送する搬送手段とで構成されていることにより、前述した課題を解決したものである。
【0008】
請求項2に係る本発明は、請求項1記載の構成に加えて、連結ピンが、キャップ状ブシュに遊嵌するピン小径部と内プレートに圧入嵌合するピン大径部とで構成されていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0009】
請求項3に係る本発明は、請求項1または請求項2記載の構成に加えて、弾性シール部材が、連結ピンの外周面およびまたはキャップ状ブシュの内周側に設けられていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0010】
請求項4に係る本発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか記載の構成に加えて、左右一対のキャップ状ブシュが、ローラをそれぞれ遊嵌していることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0011】
請求項5に係る本発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか記載の構成に加えて、連結ピンが、キャップ状ブシュの有底部分に対向して当接する突起部を設けたピン端面を備えていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【0012】
請求項6に係る本発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか記載の構成に加えて、搬送手段が、搬送物を捕捉するバケットで構成されていることにより、前述した課題をさらに解決したものである。
【発明の効果】
【0013】
そこで、本発明は、前後一対のピン圧入孔を有する内プレートと、内プレートのピン圧入孔に圧入嵌合される連結ピンと、連結ピンの外周面に内プレートの左右両側からそれぞれ被嵌する左右一対のキャップ状ブシュと、左右一体のキャップ状ブシュを前後一対のブシュ圧入孔にそれぞれ圧入嵌合するとともに連結ピンを介して内プレートをチェーン長手方向に相互に連結する左右一対の外プレートと、キャップ状ブシュの開口部側に配置して連結ピンの外周面とキャップ状ブシュの内周面との間隙に封入した潤滑油の漏出を阻止する弾性シール部材と、キャップ状ブシュの有底部分に嵌合して支持する盲孔を有する左右一対のブラケット部材と、左右一対のブラケット部材を相互に連結して搬送物を捕捉搬送する搬送手段とで構成されていることにより、チェーン稼働時の周回走行により生じる遠心力等に起因した潤滑油の漏出を抑制して、外部から無給油状態でチェーン駆動するばかりでなく、以下のような特有の効果を奏することができる。
【0014】
請求項1に係る本発明の搬送用シールチェーンによれば、内プレートのピン圧入孔に圧入嵌合される連結ピンと、連結ピンの外周面に内プレートの左右両側からそれぞれ被嵌する左右一対のキャップ状ブシュと、キャップ状ブシュの開口部側に配置して連結ピンの外周面とキャップ状ブシュの内周面との間隙に封入した潤滑油の漏出を阻止する弾性シール部材とで構成されていることにより、弾性シール部材が、外プレートと摺接することなく、弾性変形してキャップ状ブシュと連結ピンとの間の隙間、すなわち、潤滑油の流路に潤滑油を封入するため、搬送用シールチェーンの屈曲動作によって弾性シール部材と外プレートとの摺接摩耗に起因する相互の隙間の発生を抑制して、優れたシール効果を得ることができる。
【0015】
請求項2に係る本発明の搬送用シールチェーンによれば、請求項1記載の搬送用シールチェーンが奏する効果に加えて、連結ピンが、キャップ状ブシュに遊嵌するピン小径部と内プレートに圧入嵌合するピン大径部とで構成されていることにより、キャップ状ブシュの開口部がピン大径部に当接するため、連結ピンを圧入する内プレートの板厚寸法の誤差にかかわらずシール効果を得ることができる。
【0016】
請求項3に係る本発明の搬送用シールチェーンによれば、請求項1または請求項2に記載の搬送用シールチェーンが奏する効果に加えて、弾性シール部材が、連結ピンの外周面およびまたはキャップ状ブシュの内周側に設けられていることにより、チェーンの円滑な屈曲動作を確保するにあたり少なくとも潤滑油を充填する必要がある空間に潤滑油を封入するので、効率的にシール効果を得ることができる。
【0017】
請求項4に係る本発明の搬送用シールチェーンによれば、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の搬送用シールチェーンが奏する効果に加えて、左右一対のキャップ状ブシュが、ローラをそれぞれ遊嵌していることにより、搬送用シールチェーンがローラを介してスプロケットにかみ込むため、搬送用シールチェーンの衝撃荷重に対する強度を向上させることができる。
【0018】
請求項5に係る本発明の搬送用シールチェーンによれば、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の搬送用シールチェーンが奏する効果に加えて、連結ピンが、キャップ状ブシュの有底部分に対向して当接する突起部を設けたピン端面を備えていることにより、突起部を備えたピン端面とキャップ状ブシュの有底部分との間の潤滑油の流路を大きく確保するため、優れた摩耗抑制効果を得ることができる。また、ピン端面の突起部がキャップ状ブシュの有底部分に当接するため、連結ピンの連結ピン長手方向への移動を防止することができる。
【0019】
請求項6に係る本発明の搬送用シールチェーンによれば、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の搬送用シールチェーンが奏する効果に加えて、搬送手段が、搬送物を捕捉するバケットで構成されていることにより、バケットで搬送物を掻き取るため、搬送物が肥料、試料、穀物等のばらものであっても効率的に捕捉して搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施例である搬送用シールチェーンの使用態様図。
【図2】本発明の第1実施例である搬送手段を除く搬送用シールチェーンの概要図。
【図3】図2に示す搬送用シールチェーンの組み立て分解図。
【図4】本発明の第1実施例である搬送手段を除く搬送用シールチェーンの平面図。
【図5】本発明の第1実施例である搬送用シールチェーンの図1A−A断面図。
【図6】本発明の第2実施例である搬送用シールチェーンの図1A−A断面図。
【図7】図6の一部拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、前後一対のピン圧入孔を有する内プレートと、内プレートのピン圧入孔に圧入嵌合される連結ピンと、連結ピンの外周面に内プレートの左右両側からそれぞれ被嵌する左右一対のキャップ状ブシュと、左右一体のキャップ状ブシュを前後一対のブシュ圧入孔にそれぞれ圧入嵌合するとともに連結ピンを介して内プレートをチェーン長手方向に相互に連結する左右一対の外プレートと、キャップ状ブシュの開口部側に配置して連結ピンの外周面とキャップ状ブシュの内周面との間隙に封入した潤滑油の漏出を阻止する弾性シール部材と、キャップ状ブシュの有底部分に嵌合して支持する盲孔を有する左右一対のブラケット部材と、左右一対のブラケット部材を相互に連結して搬送物を捕捉搬送する搬送手段とで構成されて、弾性シール部材が外プレートとの摺動摩耗によって、弾性シール部材と外プレートとの間に間隙が発生したことに起因する潤滑油の漏出を防止して、優れたシール効果を発揮するものであれば、その具体的な実施の形態は、如何なるものであっても何ら構わない。
【0022】
例えば、本発明の搬送用シールチェーンは、内プレートと外プレートとローラとピンとブシュとを有するローラチェーン、内プレートと外プレートとピンとブシュとを有するブシュチェーンのいずれのものがその対象であっても差し支えない。
【0023】
また、本発明の搬送用シールチェーンに組み込まれる弾性シール部材の具体的材料については、耐摩耗性、耐熱性及び耐油性を備えたものであれば、ナイロン系樹脂、ニトリルゴム(NBR)などのいずれであっても良く、特に、ナイロン系樹脂は弾性、耐摩耗性、及び耐油性に優れており、他部材との摺接摩耗に起因したシール効果の劣化を抑制するとともに、例えば、Oリング状の安定したリング形態を長期にわたって維持して、チェーンの円滑な屈曲動作を実現するので、より好ましい。
【0024】
本発明の搬送用シールチェーンに組み込まれるキャップ状ブシュおよびもしくは連結ピンに設けられる突起については、キャップ状ブシュの有底部分と連結ピンが対向する空間に潤滑油の流路を確保するとともに、連結ピンの位置決めを確実に行うことができれば、キャップ状ブシュのピン端面およびもしくはキャップ状ブシュの有底部分に設けられていても良く、また、突起の形状は、半円柱体、半球体のいずれであっても良く、さらに、突起の数は、1つのみ設けられていても複数個設けられていても構わない。
【0025】
本発明の搬送用チェーンに組み込まれる搬送手段は、左右一対のブラケット部材を相互に連結するとともに、搬送物を捕捉搬送するものであれば、バケット、スラット、パンまたはエプロンなどのいずれであっても構わない。
【実施例1】
【0026】
以下、本発明の第1実施例である搬送用シールチェーン100を図1乃至図5に基づいて説明する。
ここで、図1は、本発明の第1実施例である搬送用シールチェーンの使用態様図であり、図2は、本発明の第1実施例である搬送手段を除く搬送用シールチェーンの概要図であり、図3は、図2に示す搬送用シールチェーンの組み立て分解図であり、図4は、本発明の第1実施例である搬送手段を除く搬送用シールチェーンの平面図であり、図5は、本発明の第1実施例である搬送用シールチェーンの図1A−A断面図である。
【0027】
まず、本発明の第1実施例である搬送用シールチェーン100は、肥料、試料、穀物等のばらものを捕捉して搬送するために用いられるものであって、図1乃至図5に示すように、前後一対のピン圧入孔112を有する内プレート110と、この内プレート110のピン圧入孔112に圧入嵌合される連結ピン120と、この連結ピン120の外周面に内プレート110の左右両側からそれぞれ被嵌する左右一対のキャップ状ブシュ130、130と、この左右一体のキャップ状ブシュ130を前後一対のブシュ圧入孔142にそれぞれ圧入嵌合するとともに連結ピン120を介して内プレート110をチェーン長手方向に相互に連結する左右一対の外プレート140、140とを備えている。
【0028】
また、搬送用シールチェーン100は、キャップ状ブシュ130の開口部134側に配置して連結ピン120の外周面とキャップ状ブシュ130の内周面との間隙に封入した潤滑油Oの漏出を阻止するOリング等からなる弾性シール部材150と、キャップ状ブシュ130の有底部分132に嵌合して支持する盲孔162を有する断面L字状の左右一対のブラケット部材160、160と、この左右一対のブラケット部材160、160を相互に連結する搬送手段170とを備えている。
【0029】
搬送用シールチェーン100は、ばらもの等の捕捉物を捕捉して搬送するためのバケットからなる搬送手段170を備えており、このバケットからなる搬送手段170を介してブラケット部材160、160が相互に連結されている。
また、上述したブラケット部材160とバケットからなる搬送手段170とは、ブラケット部材160のボルト挿入孔164とバケットからなる搬送手段170に設けられた孔とに挿入するボルト181と、このボルト181に係合するナット182とをブラケット部材160とバケットからなる搬送手段170を挟持して締め付けることにより結合されている。
潤滑油Oは、連結ピン120とキャップ状ブシュ130と弾性シール部材150との間に封入されている。
【0030】
そこで、本第1実施例の搬送用シールチェーン100が最も特徴とする連結ピン120とキャップ状ブシュ130と弾性シール部材150の具体的な形態について図1乃至図5に基づいて詳しく説明する。
まず、搬送用シールチェーン100は、内プレート110、110のピン圧入孔112に圧入嵌合される連結ピン120と、連結ピン120の外周面に内プレート110の左右両側からそれぞれ被嵌する左右一対のキャップ状ブシュ130と、キャップ状ブシュ130の開口部134側に配置して連結ピン120の外周面とキャップ状ブシュ130の内周面との間隙に封入した潤滑油Oの漏出を阻止する弾性シール部材150とを備えている。
これにより、弾性シール部材150が、外プレート140と摺接することなく、弾性変形してキャップ状ブシュ130と連結ピン120との間の隙間、すなわち、潤滑油の流路に潤滑油Oを封入している。
【0031】
連結ピン120が、キャップ状ブシュ130に遊嵌するピン小径部122と内プレート110に圧入嵌合するピン大径部124とで構成され、弾性シール部材150が、連結ピン120の外周面およびまたはキャップ状ブシュ130の内周側に設けられている。
これにより、キャップ状ブシュ130の開口部134がピン大径部134に当接するようになっているとともに、搬送用チェーン100の円滑な屈曲動作を確保するにあたり少なくとも潤滑油Oを充填する必要がある空間に潤滑油Oを封入している。
【0032】
弾性シール部材150が、キャップ状ブシュ130の内周側に設けられ、左右一対のキャップ状ブシュ130が、ローラ190をそれぞれ遊嵌しているとともに、搬送手段170が、搬送物Wを捕捉するバケットで構成されている。
これにより、搬送用シールチェーン100がローラ190を介してスプロケット(図示略)にかみ込むようになっているとともに、搬送用シールチェーン100は、バケットで搬送物Wを掻き取るようになっている。
【0033】
このようにして得られた本第1実施例の搬送用シールチェーン100は、内プレート110、110のピン圧入孔112に圧入嵌合される連結ピン120と、連結ピン120の外周面に内プレート110の左右両側からそれぞれ被嵌する左右一対のキャップ状ブシュ130と、キャップ状ブシュ130の開口部134側に配置して連結ピン120の外周面とキャップ状ブシュ130の内周面との間隙に封入した潤滑油Oの漏出を阻止する弾性シール部材150とで構成されているとともに、連結ピン120が、キャップ状ブシュ130に遊嵌するピン小径部122と内プレート110に圧入嵌合するピン大径部124とで構成されていることにより、優れたシール効果を得ることができるとともに、連結ピン120を圧入する内プレート110の板厚寸法の誤差にかかわらずシール効果を得ることができる。
【0034】
また、弾性シール部材150が、連結ピン120の外周面およびまたはキャップ状ブシュ130の内周側に設けられているとともに、弾性シール部材150が、キャップ状ブシュ130の内周側に設けられ、左右一対のキャップ状ブシュ130が、ローラ190をそれぞれ遊嵌していることにより、効率的にシール効果を得ることができるとともに、搬送用シールチェーン100の衝撃荷重に対する強度を向上させることができる。
【0035】
さらに、搬送手段170が、搬送物Wを捕捉するバケットで構成されていることにより、肥料、試料、穀物等のばらものであっても効率的に捕捉搬送することができるなど、その効果は甚大である。
【実施例2】
【0036】
次に、本発明の第2実施例である搬送用シールチェーン200を図6及び図7に基づいて説明する。図6は、本発明の第2実施例である搬送用シールチェーンの図1A−A断面図であり、図7は、図6の一部拡大図である。
なお、図6および図7では、図1乃至図5に図示した第1実施例に係る部材に対応する実施例2に係る部材の符号を100番台から200番台に書き換えて図示している。
【0037】
まず、本発明の第2実施例である搬送用シールチェーン200は、肥料、試料、穀物等のばらものを捕捉搬送するために用いられるものであって、図6および図7に示すとおり、前後一対のピン圧入孔212を有する内プレート210と、この内プレート210のピン圧入孔212に圧入嵌合される連結ピン220、220と、この連結ピン220の外周面に内プレート210の左右両側からそれぞれ被嵌する左右一対のキャップ状ブシュ230、230と、この左右一体のキャップ状ブシュ230を前後一対のブシュ圧入孔222にそれぞれ圧入嵌合するとともに連結ピン220を介して内プレート210をチェーン長手方向に相互に連結する左右一対の外プレート240、240とを備えている。
【0038】
また、搬送用シールチェーン200は、キャップ状ブシュ230の開口部234側に配置して連結ピン220の外周面とキャップ状ブシュ230の内周面との間隙に封入した潤滑油Oの漏出を阻止するOリング等からなる弾性シール部材250と、キャップ状ブシュ230の有底部分232に嵌合して支持する盲孔262を有する断面L字状の左右一対のブラケット部材260、260と、この左右一対のブラケット部材260、260を相互に連結する搬送手段270とを備えている。
【0039】
搬送用シールチェーン200は、ばらもの等の搬送物Wを捕捉して搬送するバケットからなる搬送手段270を備えており、このバケットからなる搬送手段270を介してブラケット部材260、260が相互に連結されている。
また、上述したブラケット部材260とバケットからなる搬送手段270とは、ブラケット部材260のボルト挿入孔264とバケットからなる搬送手段270に設けられたボルトを挿入する孔とに挿入するボルト281と、このボルト281に係合するナット282とをブラケット部材260とバケットからなる搬送手段270を挟持して締め付けることで結合されている。
潤滑油Oは、連結ピン220とキャップ状ブシュ230と弾性シール部材250との間に封入されている。
【0040】
そこで、本第2実施例の搬送用シールチェーン200が最も特徴とする連結ピン220とキャップ状ブシュ230と弾性シール部材250の具体的な形態について詳しく説明する。
まず、搬送用シールチェーン200は、内プレート210、210のピン圧入孔212に圧入嵌合される連結ピン220と、連結ピン220の外周面に内プレート210の左右両側からそれぞれ被嵌する左右一対のキャップ状ブシュ230と、キャップ状ブシュ230の開口部234側に配置して連結ピン220の外周面とキャップ状ブシュ230の内周面との間隙に封入した潤滑油の漏出を阻止する弾性シール部材250とで構成されている。
これにより、弾性シール部材250が、弾性変形してキャップ状ブシュ230と連結ピン220との間の間隙、すなわち、潤滑油の流路に潤滑油Oを封入するとともに、搬送用シールチェーン200の屈曲動作において弾性シール部材250と外プレート240とが摺接せず、外プレート240との摺接により生じる弾性シール部材250の摺接摩耗を防止している。
【0041】
連結ピン220が、キャップ状ブシュ230に遊嵌するピン小径部222と内プレート210に圧入嵌合するピン大径部224とで構成され、弾性シール部材250が、連結ピン220の外周面およびまたはキャップ状ブシュ230の内周側に設けられている。
これにより、キャップ状ブシュ230の開口部234がピン大径部224に当接するようになっているとともに、チェーンの円滑な屈曲動作を確保するにあたり少なくとも潤滑油Oを充填する必要がある空間に潤滑油Oを封入している。
【0042】
また、弾性シール部材250が、キャップ状ブシュ230の内周側に設けられ、左右一対のキャップ状ブシュ230が、ローラ290をそれぞれ遊嵌しているとともに、連結ピン220が、キャップ状ブシュ230の有底部分232に対向して当接する突起部226を設けたピン端面228を備えている。
これにより、搬送用シールチェーン200がローラ290を介してスプロケット(図示略)にかみ込むようになっているとともに、突起部226を備えたピン端面228とキャップ状ブシュ230の有底部分232との間に潤滑油Oの流路を大きく確保して、また、ピン端面228の突起部226がキャップ状ブシュ230の有底部分232に当接するようになっている。
【0043】
さらに、搬送手段270が、搬送物Wを捕捉するバケットで構成されていることにより、搬送用シールチェーン200が、バケットで搬送物Wを掻き取るようになっている。
【0044】
このようにして得られた本第2実施例の搬送用シールチェーン200は、内プレート210、210のピン圧入孔212に圧入嵌合される連結ピン220と、連結ピン220の外周面に内プレート210の左右両側からそれぞれ被嵌する左右一対のキャップ状ブシュ230と、キャップ状ブシュ230の開口部234側に配置して連結ピン220の外周面とキャップ状ブシュ230の内周面との間隙に封入した潤滑油Oの漏出を阻止する弾性シール部材250とで構成されているとともに、連結ピン220が、キャップ状ブシュ230に遊嵌するピン小径部222と内プレート210に圧入嵌合するピン大径部224とで構成されていることにより、優れたシール効果を得ることができるとともに、連結ピン220を圧入する内プレート210の板厚寸法の誤差にかかわらずシール効果を得ることができる。
【0045】
また、弾性シール部材250が、連結ピン220の外周面およびまたはキャップ状ブシュ230の内周側に設けられているとともに、弾性シール部材250が、キャップ状ブシュ230の内周側に設けられ、左右一対のキャップ状ブシュ230が、ローラ290をそれぞれ遊嵌していることにより、効率的にシール効果を得ることができるとともに、搬送用シールチェーン200の衝撃荷重に対する強度を向上させることができる。
【0046】
さらに、連結ピン220が、キャップ状ブシュ230の有底部分232に対向して当接する突起部226を設けたピン端面228を備えているとともに、搬送手段270が、搬送物Wを捕捉するバケットで構成されていることにより、優れた摩耗抑制効果を得ることができ、連結ピン220の連結ピン長手方向への移動を防止できるとともに、肥料、試料、穀物等のばらものであっても効率的に捕捉して搬送することができるなど、その効果は甚大である。
【符号の説明】
【0047】
100、200 ・・・ 搬送用シールチェーン
110、210 ・・・ 内プレート
112、212 ・・・ ピン圧入孔
120、220 ・・・ 連結ピン
122、222 ・・・ ピン小径部
124、224 ・・・ ピン大径部
226 ・・・ 突起部
228 ・・・ ピン端面
130、230 ・・・ キャップ状ブシュ
132、232 ・・・ 有底部分
134、234 ・・・ 開口部
140、240 ・・・ 外プレート
142、242 ・・・ ブシュ圧入孔
150、250 ・・・ 弾性シール部材
160、260 ・・・ ブラケット部材
162、262 ・・・ 盲孔
164、264 ・・・ ボルト挿入孔
170、270 ・・・ 搬送手段
181、281 ・・・ ボルト
182、282 ・・・ ナット
190、290 ・・・ ローラ
O ・・・ 潤滑油
W ・・・ 搬送物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後一対のピン圧入孔を有する内プレートと、該内プレートのピン圧入孔に圧入嵌合される連結ピンと、該連結ピンの外周面に内プレートの左右両側からそれぞれ被嵌する左右一対のキャップ状ブシュと、該左右一体のキャップ状ブシュを前後一対のブシュ圧入孔にそれぞれ圧入嵌合するとともに前記連結ピンを介して内プレートをチェーン長手方向に相互に連結する左右一対の外プレートと、前記キャップ状ブシュの開口部側に配置して連結ピンの外周面とキャップ状ブシュの内周面との間隙に封入した潤滑油の漏出を阻止する弾性シール部材と、前記キャップ状ブシュの有底部分に嵌合して支持する盲孔を有する左右一対のブラケット部材と、該左右一対のブラケット部材を相互に連結して搬送物を捕捉搬送する搬送手段とで構成されていることを特徴とする搬送用シールチェーン。
【請求項2】
前記連結ピンが、前記キャップ状ブシュに遊嵌するピン小径部と前記内プレートに圧入嵌合するピン大径部とで構成されていることを特徴とする請求項1記載の搬送用シールチェーン。
【請求項3】
前記弾性シール部材が、前記連結ピンの外周面およびまたはキャップ状ブシュの内周側に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の搬送用シールチェーン。
【請求項4】
前記左右一対のキャップ状ブシュが、ローラをそれぞれ遊嵌していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の搬送用シールチェーン。
【請求項5】
前記連結ピンが、前記キャップ状ブシュの有底部分に対向して当接する突起部を設けたピン端面を備えていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の搬送用シールチェーン。
【請求項6】
前記搬送手段が、搬送物を捕捉するバケットで構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の搬送用シールチェーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−13198(P2012−13198A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152827(P2010−152827)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【Fターム(参考)】