説明

搬送用ベルト及びその製造方法

【課題】ベルト本体にクッション体を精度良く貼り合わせて、搬送物の狭持力が低下することを抑制する。
【解決手段】エンドレスに延びてベルト内側の表面がプーリに接するベルト本体3と、ベルト本体3におけるベルト外側の表面に貼り合わせられたクッション体5とを備え、複数のプーリからなる2組のプーリ群にそれぞれ巻き掛けられることにより、互いに対向するクッション体5によって搬送物を狭持して搬送するように構成された搬送用ベルト1,2において、ベルト本体3及びクッション体5の一方に、他方側に突出する突出部21を形成すると共に、他方に突出部21に嵌合する凹部22を形成するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のプーリからなる2組のプーリ群にそれぞれ巻き掛けることにより、互いに対向するベルト外側の表面によって搬送物を狭持して搬送するように構成された搬送用ベルト及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、藺草や野菜等の植物を収穫する植物収穫機に搭載されて収穫作業の自動化を図るようにした搬送装置が知られている。
【0003】
この搬送装置では、互いに同じ断面構造の2本の搬送用ベルト(以下、単にベルトともいう)が、部分的に互いに平行になり且つベルト外側の表面(ベルト外面)で接触しながら並走するように複数のプーリからなる2組のプーリ群にそれぞれ巻き掛けられており、両ベルトを互いに同じ向きに同じ速度で走行させて、両ベルトの移動方向及び移動速度を同じとし、並走するベルト外面の間に植物(搬送物)を取り込んで両ベルトのベルト外面で狭持し、ベルトの走行によって植物を地面から引き抜いて搬送するようになっている。
【0004】
上記両ベルトは、エンドレスに延びてベルト内側の表面がプーリに接するベルト本体と、ベルト本体におけるベルト外側の表面に形成されたクッション体とをそれぞれ備え、互いに対向するクッション体によって植物を狭持して搬送するように構成されている。
【0005】
この搬送用ベルトの早期破損を抑制する方法として、特許文献1には、クッション体におけるベルト幅方向の両側面を、ベルト本体におけるベルト幅方向の両側面よりもベルト幅方向中央側にずらす、又はベルト幅方向中央側に傾けることにより、クッション体がベルト幅方向に変形したとしても、ベルト本体からベルト幅方向に突出することを防ぎ、クッション体がベルト周りの部材に干渉して損傷することを防止することが開示されている。
【0006】
ところで、上記搬送用ベルトを形成する方法として、ベルト本体とクッション体とを加硫一体形成する方法や、ベルト本体にクッション体を融着形成する方法があるが、これら加硫一体形成や融着形成の方法によると、硬度が比較的低く気泡を有する発泡スポンジ等のクッション体は、熱収縮度が比較的高く加熱による体積変化が大きいため、クッション体が大きく変形してベルト本体にクッション体を所望の形状に形成することが難しい。
【0007】
また、その他に、搬送用ベルトの形成方法として、ベルト本体及びクッション体をそれぞれ別個に形成し、ベルト本体とクッション体とを貼り合わせる方法が知られている。これらベルト本体及びクッション体の貼合面は、通常、全面に亘って平坦にそれぞれ形成されている。この方法によると、クッション体を加熱する必要がないため、クッション体の熱収縮を抑制できる。
【特許文献1】特開平11−299323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、ベルト本体とクッション体とを貼り合わせて搬送用ベルトを形成する方法であっても、上述したように、ベルト本体とクッション体との貼合面の全面が平坦に形成されているので、ベルト本体とクッション体とを貼り合わせるときに、クッション体がベルト幅方向にずれて蛇行しやすく、ベルト本体に対してクッション体を所望の位置に精度良く貼り合わせることが困難である。
【0009】
ベルト本体に対してクッション体が蛇行して所望の位置からベルト幅方向にずれて貼り合わせられた場合には、上記搬送装置によって搬送物を狭持するときに、並走する一対のベルトのベルト外面が互いにベルト幅方向にずれて対向する面積(両ベルトが搬送物を挟む面積)が減少するため、一対のベルトが搬送物に両側から加える圧力(狭持力)が低下する。
【0010】
特に、図14に示すように、クッション体102のベルト外面100が平坦に形成されていない場合には、ベルト本体101に対してクッション体102の位置がベルト幅方向にずれると(図14の103は、ベルト本体101に位置ずれせずに貼り合わせられた状態のクッション体102を示している)、搬送物の狭持力がベルト幅方向にばらつきやすい。すなわち、図15に示すように、並走するベルト間において、ベルト幅方向の一部104では、搬送物の狭持力が著しく低下することとなる。
【0011】
本発明は、斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ベルト本体とクッション体とを精度良く貼り合わせて、搬送物の狭持力が低下することを抑制する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、この発明では、ベルト本体及びクッション体の一方に、他方側に突出する突出部を形成すると共に、他方に突出部に嵌合する凹部を形成するようにした。
【0013】
具体的に、本発明に係る搬送用ベルトは、エンドレスに延びてベルト内側の表面がプーリに接するベルト本体と、上記ベルト本体におけるベルト外側の表面に貼り合わせられたクッション体とを備え、複数の上記プーリからなる2組のプーリ群にそれぞれ巻き掛けられることにより、互いに対向するクッション体によって搬送物を狭持して搬送するように構成された搬送用ベルトであって、上記ベルト本体及び上記クッション体の一方には、他方側に突出する突出部が形成されると共に、他方には上記突出部に嵌合する凹部が形成されている。
【0014】
上記ベルト本体に上記突出部が形成されると共に、上記クッション体に上記凹部が形成されていてもよい。
【0015】
上記突出部は、ベルト全周に亘って延びていることが好ましい。
【0016】
上記突出部は、ベルト幅方向の断面が矩形状に形成されていることが好ましい。
【0017】
上記突出部は、ベルト幅方向に垂直な両側面を有し、且つ該突出部の突出方向の先端部におけるベルト幅方向の断面が円弧状に形成されていることが好ましい。
【0018】
上記突出部は、ベルト幅方向の断面が三角形状に形成されていることが好ましい。
【0019】
上記突出部は、ベルト幅方向の断面が円弧状に形成されていることが好ましい。
【0020】
上記突出部は、ベルト幅方向の両側面の互いの間隔が該突出部の突出方向先端に向かって徐々に広がるように形成されていることが好ましい。
【0021】
上記突出部は、該突出部の突出方向の先端部がベルト幅方向の両側に突出して形成されていることが好ましい。
【0022】
また、本発明に係る搬送用ベルトの製造方法は、エンドレスに延びてベルト内側の表面がプーリに接するベルト本体と、上記ベルト本体におけるベルト外側の表面に貼り合わせられたクッション体とを備え、複数の上記プーリからなる2組のプーリ群にそれぞれ巻き掛けられることにより、互いに対向するクッション体によって搬送物を狭持して搬送するように構成された搬送用ベルトの製造方法であって、上記ベルト本体及び上記クッション体の一方に対し、他方側に突出する突出部を形成すると共に、他方に対して上記突出部に嵌合するための凹部を形成するベルト部材形成工程と、上記ベルト本体と上記クッション体とを貼り合わせて、上記凹部を上記突出部に嵌合させる貼合工程とを含む。
【0023】
−作用−
次に、本発明の作用について説明する。
【0024】
ベルト本体及びクッション体の一方には、他方側に突出する突出部が形成されると共に、他方には突出部に嵌合する凹部が形成されている。例えば、ベルト本体に突出部が形成されると共に、クッション体に凹部が形成されている。そのことにより、突出部及び凹部の互いの嵌合によってクッション体がベルト本体に対して位置決めされるため、ベルト本体に対してクッション体がベルト幅方向にずれることが抑制される。その結果、ベルト本体とクッション体とが精度良く貼り合わせられ、搬送物の狭持力が低下することが抑制される。
【0025】
そのことに加えて、ベルト本体へのクッション体の貼合面積が増加するため、ベルト本体とクッション体との接着性が高められる。その結果、搬送物を狭持して搬送するときに、ベルト本体からクッション体が剥離することが抑制される。
【0026】
特に、突出部がベルト全周に亘って延びている場合には、突出部及び凹部がベルト全周に亘って互いに嵌合するため、ベルト本体に対してクッション体がベルト幅方向にずれることがベルト全周で抑制される。その結果、ベルト本体とクッション体とがより精度良く貼り合わせられ、搬送物の狭持力が低下することがより抑制される。
【0027】
突出部が、断面矩形状に形成されている場合には、突出部を容易に形成することが可能になる。それに加えて、突出部が断面三角形状又は断面円弧状等に形成された場合に比べて、ベルト本体とクッション体とを貼り合わせたときに、突出部及び凹部の互いの嵌合によってクッション体がベルト本体に対してより正確に位置決めされるため、ベルト本体に対してクッション体がベルト幅方向にずれることがより抑制され、ベルト本体とクッション体とがより強固に接着される。
【0028】
突出部が、ベルト幅方向に垂直な両側面を有し、且つその先端部が断面円弧状に形成されている場合にも、突出部を容易に形成することが可能になると共に、ベルト本体に対するクッション体のベルト幅方向への位置ずれがより抑制され、ベルト本体とクッション体とがより強固に接着される。
【0029】
突出部が、断面三角形状に形成されている場合にも、突出部を容易に形成することが可能になる。さらに、ベルト本体とクッション体とが位置あわせされると共に容易に貼り合わせられる。
【0030】
突出部が、断面円弧状に形成されている場合にも、突出部を容易に形成することが可能になり、且つベルト本体とクッション体とが位置あわせされると共に容易に貼り合わせられる。
【0031】
突出部が、ベルト幅方向の両側面の互いの間隔が先端に向かって徐々に広がるように形成されている場合には、突出部及び凹部の互いの嵌合によってクッション体がベルト本体に対してさらに正確に位置決めされるため、ベルト本体に対してクッション体がベルト幅方向にずれることが可及的に抑制され、ベルト本体とクッション体とがさらに強固に接着される。
【0032】
突出部の先端部が、ベルト幅方向の両側に突出して形成されている場合にも、クッション体がベルト本体に対してさらに正確に位置決めされるため、ベルト本体に対してクッション体がベルト幅方向にずれることが可及的に抑制され、ベルト本体とクッション体とがさらに強固に接着される。
【0033】
また、本発明に係る搬送用ベルトの製造方法によると、ベルト部材形成工程において、ベルト本体及びクッション体の一方に対し、他方側に突出する突出部を形成すると共に、他方に対して突出部に嵌合するための凹部を形成する。そして、貼合工程では、ベルト本体とクッション体とを貼り合わせて、凹部を突出部に嵌合させる。そのことにより、突出部及び凹部の互いの嵌合によってクッション体がベルト本体に対して位置決めされる結果、ベルト本体とクッション体とが精度良く貼り合わせられ、搬送物の狭持力が低下することが抑制される。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、ベルト本体及びクッション体の一方には、他方側に突出する突出部が形成されると共に、他方には突出部に嵌合する凹部が形成されているため、突出部及び凹部の互いの嵌合によってクッション体をベルト本体に対して位置決めできる。そのことにより、ベルト本体に対してクッション体がベルト幅方向にずれることを抑制できる結果、ベルト本体とクッション体とを精度良く貼り合わせることができ、搬送物の狭持力が低下することを抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0036】
《発明の実施形態1》
図1〜図4は、本発明の実施形態1を示している。図1は、搬送用ベルト1,2を概略的に示す断面図である。図2は、搬送用ベルト1,2によって植物(搬送物)Pを挟んで地面から引き抜く状態を示す図である。図3は、搬送装置Aを上方から見た状態を概略的に示す平面図である。図4は、搬送用ベルト1,2が2組のプーリ群11,12にそれぞれ巻き掛けられた状態を示す図である。
【0037】
搬送装置Aは、図2に示すように、地面に植えられている例えば人参、大根、牛蒡及び芋類等の植物(搬送物)Pを引き抜いて自動的に収穫するための植物収穫機(図示省略)に装備されていて、植物Pの地表上にある茎部P1を、走行する2本の搬送用ベルト(以下、単にベルトともいう)1,2により、狭持して引っ張ることによってその植物Pを引き抜いて搬送するようになっている。
【0038】
上記各ベルト1,2は、複数のプーリ11a,11b,11c,12a,12b,12c,12dからなる2組のプーリ群11,12にそれぞれ巻き掛けられることにより、互いに対向するベルト外側の表面(以下、ベルト外面ともいう)5bによって植物Pを狭持して搬送するようにそれぞれ構成されている。
【0039】
すなわち、搬送装置Aは、図3に示すように、その搬送装置Aの略上下方向の軸心を有する第1〜第3の3つの左側搬送プーリ(プーリ)11a,11b,11cからなる左側搬送プーリ群(プーリ群)11に巻き掛けられた搬送用ベルトである左側搬送用ベルト(図3で左側のベルト)1と、これら左側搬送プーリ群11よりも右側に配置されて略上下方向の軸心を有する第1〜第4の4つの右側搬送プーリ(プーリ)12a,12b,12c,12dからなる右側搬送プーリ群(プーリ群)12に巻き掛けられた搬送用ベルトである右側搬送用ベルト(図3で右側のベルト)2とを有している。
【0040】
各ベルト1,2は互いに逆向きに走行する。つまり、左側搬送用ベルト1は図3で時計回り方向(図3の13)に走行する一方、右側搬送用ベルト2は図3で反時計回り方向(図3の14)に走行する。そして、両ベルト1,2は互いに同じ速度で走行する。図3の15は左側搬送プーリ11a,11b,11cの回転方向を示し、16は右側搬送プーリ12a,12b,12c,12dの回転方向を示している。
【0041】
また、上記左側搬送プーリ群11における搬送装置Aの前端(図3で上端)及び左端に配置された第1の左側搬送プーリ11aと第3の左側搬送プーリ11cとの間には、ベルト外側に左側ガイドプーリ17が配置されている。また、上記右側搬送プーリ群12における搬送装置Aの前端及び右端に配置された第1の右側搬送プーリ12aと第4の右側搬送プーリ12dとの間には、ベルト外側に右側ガイドプーリ18が配置されている。これら左側ガイドプーリ17及び右側ガイドプーリ18は、各ベルト1,2をそのベルト外面5bに当接して案内するようになっている。
【0042】
左側搬送プーリ群11において右側に配置されている第1の左側搬送プーリ11aと第2の左側搬送プーリ11bとが対向する方向と、右側搬送プーリ群12において左側に配置されている第1の右側搬送プーリ12aと第2の右側搬送プーリ12bとが対向する方向とは、互いに平行になるように配置されている。そうして、これら第1の左側搬送プーリ11a及び第2の左側搬送プーリ11bの右側外周縁を通る平面と、第1の右側搬送プーリ12a及び第2の右側搬送プーリ12bの左側外周縁を通る平面とは、互いに近接して平行になっている。また、第1の左側搬送プーリ11aと第2の左側搬送プーリ11bとの間の前後距離は第1の右側搬送プーリ12aと第2の右側搬送プーリ12bの間の前後距離よりも大きくなっている。
【0043】
さらに、第1の左側搬送プーリ11aと第1の右側搬送プーリ12aとは搬送装置Aの左右に対応して配置されている。そして、上記一対の搬送用ベルト1,2は、植物Pを狭持していない状態で、第1の左側搬送プーリ11a及び第2の左側搬送プーリ11bと、第1の右側搬送プーリ12a及び第2の右側搬送プーリ12bとの間で、互いに平行になり且つベルト外面5bで接触して同じ方向及び同じ速度で並走する。そして、並走する両ベルト1,2は、植物Pを狭持するときに、ベルト外面5bが一部で互いに接触せずに茎部P1を介して互いに対向して茎部P1を挟む。そうして、並走する両ベルト1,2の間に、第1の左側搬送プーリ11aと第1の右側搬送プーリ12aとの間の位置から茎部P1を引っ張って地中から植物Pを抜き取るようになっている。
【0044】
上記各搬送プーリ11a,11b,11c,12a,12b,12c,12dはプーリ径が互いに異なる以外は同じ構造を有しており、図4に示すように、外周面におけるプーリ幅方向中央(図4で上下方向中央)には、所定深さの断面略V字状の案内溝19がプーリ全周に亘って連続して形成されている。また、プーリ幅方向の両端には、所定高さの一対のベルト外れ防止用及び蛇行防止用のフランジ20がプーリ外周に部分的(全周でもよい)に突出して設けられている。また、ガイドプーリ17,18も搬送プーリ11a,11b,11c,12a,12b,12c,12dと同じ構造で、外周面におけるプーリ幅方向の両端に所定高さの一対のフランジ20が突出して設けられている。各搬送プーリ11,12のベルト幅方向両端の互いに対向するフランジ20間の距離と、各ガイドプーリ17,18のベルト幅方向両端の互いに対向するフランジ20間の距離とは同じでベルトの幅寸法に設定されている。
【0045】
上記左側搬送用ベルト1及び上記右側搬送用ベルト2は、ベルトの長さが互いに異なる以外は同じ構造を有しており、図1に示すように、エンドレスに延びてベルト内側の表面が搬送プーリ11a,11b,11c,12a,12b,12c,12dに接するベルト本体3と、このベルト本体3のベルト外側の表面に貼り合わせられたクッション体5とをそれぞれ備えている。
【0046】
上記ベルト本体3は、例えばCRゴム(クロロプレンゴム)から形成され、その幅が各搬送プーリ11a,11b,11c,12a,12b,12c,12dのフランジ20間の寸法、及び各ガイドプーリ17,18のフランジ20間の寸法と同じである。このベルト本体3の内部には、ナイロンやPET(ポリエチレンテレフタレート)等からなる複数の層(例えば2〜3層)のスダレ層7が形成されている。また、ベルト本体3のベルト内側の表面のベルト幅方向の中央には、ベルト長さ方向の全周に亘ってベルト長さ方向に延びるNRゴム(天然ゴム)からなる断面略V字状の突条4が一体に形成されており、この突条4が上記各搬送プーリ11a,11b,11c,12a,12b,12c,12d外周の案内溝19に嵌合した状態で各ベルト1,2が各搬送プーリ群11,12の周りを走行するようになっている。
【0047】
一方、上記クッション体5は、気泡(単泡又は連泡)を有する断面略矩形状の発泡スポンジから形成され、その外面の角部は円弧状に形成されている。このクッション体5は、例えばSRISO0101に準拠するスポンジ用硬度計で13°〜30°の硬度を有するものが用いられ、植物Pを搬送していないときに両ベルト1,2のクッション体5のベルト外面5bが互いに隙間なく接触し、植物Pの搬送時に両ベルト1,2のクッション体5のベルト外面5bの一部が互い茎部P1を介して対向して植物Pの茎部P1を傷つけないように狭持する。
【0048】
ベルト本体3のベルト幅方向の両側面5aと、クッション体5のベルト幅方向の両側面3aとは、いずれもベルト厚さ方向に平行な平面、つまりベルトの内面及び外面と直交する平面で構成されている。そして、ベルト1,2が植物(搬送物)Pを狭持していない状態で、クッション体5のベルト幅がベルト本体3のベルト幅よりも小さく(L2<L1)形成されている。そのことにより、クッション体5のベルト幅方向の両側面5aが、ベルト本体3のベルト幅方向の両側面3aよりもベルト幅方向の中央側に配置されている。このクッション体5の両側面5aと、ベルト本体3の両側面3aとのベルト幅方向の間隔tは、例えば0.5mm〜5.0mm等である。
【0049】
また、クッション体5は、ベルト外側の表面5bにベルト全周に亘ってベルト幅方向に段差が形成され、両ベルト1,2が並走するときに接触する相手側のベルト1,2のクッション体5の表面と互い違いになるように段状に形成されている(つまり、相手側のベルト1,2のクッション体5のベルト外面5bも段状に形成されている)。そのことにより、両クッション体5に狭持される植物Pの抜き抵抗を増加させて植物Pを抜きやすくしている。
【0050】
そして、これらベルト本体3及びクッション体5の一方には、他方側に突出する突出部21が形成されると共に、他方には突出部21に嵌合する凹部22が形成されている。本実施形態1では、ベルト本体3に突出部21が形成されると共に、クッション体5に凹部22が形成されている。
【0051】
突出部21は、ベルト幅方向に所定の間隔で3つ形成され、それぞれベルト全周に亘って延びている。これら突出部21は、ベルト幅方向の断面が矩形状に形成されている。すなわち、凹部22は、突出部21に対応するクッション体5の位置にベルト幅方向に所定の間隔で3つ形成され、それぞれベルト全周に亘って延びてベルト幅方向の断面が矩形の溝状に形成されている。そうして、これら突出部21及び凹部22が互いに嵌合してベルト本体3とクッション体5とが貼り合わせられている。
【0052】
このように、各ベルト1,2は、互いに対向するクッション体5のベルト外面5bによって直接に植物Pを狭持して搬送するように構成されている。そうして、植物収穫機によって植物Pを収穫するときには、搬送装置Aの左側搬送用ベルト1が左側搬送プーリ群11に案内されながら走行すると共に、右側搬送用ベルト2が右側搬送プーリ群12に案内されながら走行し、両ベルト1,2は並走しているときに互いに同じ方向及び同じ速度で走行する。そして、図2に示すように、並走する両ベルト1,2における互いに対向するクッション体5によって植物Pの茎部P1を挟み込んで搬送し、植物Pを上側後ろ向き(図2で上側奥手方向)に引っ張って地中から引き抜くようになっている。
【0053】
−製造方法−
次に、上記搬送用ベルト1,2の製造方法について説明する。搬送用ベルト1,2の製造方法には、ベルト部材形成工程と、貼合工程とが含まれる。
【0054】
上記ベルト部材形成工程では、ベルト本体3及びクッション体5の一方に対し、他方側に突出する突出部21を形成すると共に、他方に対して突出部21に嵌合するための凹部22を形成する。本実施形態1では、ベルト本体3に対して突出部21を形成すると共に、クッション体5に対して凹部22を形成する。すなわち、ベルト部材形成工程では、ベルト本体3を金型による加硫形成や圧縮成型等によって形成するときに上記突出部21を一体形成し、且つクッション体5を押出し成型するときに上記凹部22を形成する。そうして、突出部21を有するベルト本体3と凹部22を有するクッション体5とを別個に形成する。
【0055】
その後行う貼合工程では、ベルト本体3とクッション体5とを貼り合わせて、凹部22を突出部21に嵌合させる。すなわち、図5に示すように、ベルト本体3を例えば2軸プーリ等に掛けて、そのベルト本体3に対してクッション体5を、対応する突出部21と凹部22とが向かい合うように対向して配置させ、続いて突出部21と凹部22とを嵌合させると共にクッション体5をベルト本体3に貼り付ける。図5の23は、クッション体5のベルト本体3への貼付方向を示している。このベルト本体3へのクッション体5の貼り付けは、例えばクロロプレン系等の接着剤をベルト本体3とクッション体5との間に介在させることによって行われる。こうして、ベルト本体3とクッション体5とを、別個に形成した後に互いに貼り合わせて搬送用ベルト1,2を製造する。
【0056】
−実施形態1の効果−
したがって、この実施形態1によると、ベルト本体3には、クッション体5側に突出する突出部21が形成されると共に、クッション体5には突出部21に嵌合する凹部22が形成されているため、突出部21及び凹部22の互いの嵌合によってクッション体5をベルト本体3に対して位置決めすることができる。そのことにより、ベルト本体3に対してクッション体5がベルト幅方向にずれることを抑制できる。その結果、ベルト本体3とクッション体5とを精度良く貼り合わせることができ、植物(搬送物)Pの狭持力が低下することを抑制できる。
【0057】
そのことに加えて、ベルト本体3へのクッション体5の貼合面積が増加するため、ベルト本体3とクッション体5との接着性を高めることができる。その結果、植物Pを狭持して搬送するときに、ベルト本体3からクッション体5が剥離することを抑制できる。
【0058】
さらに、突出部21がベルト全周に亘って延びているため、突出部21及び凹部22をベルト全周に亘って互いに嵌合させることができる。そのことにより、ベルト本体3に対してクッション体5がベルト幅方向にずれることをベルト全周で抑制できる結果、ベルト本体3とクッション体5とをより精度良く貼り合わせることができ、植物Pの狭持力が低下することをより抑制できる。
【0059】
また、突出部21が、断面矩形状に形成されているため、突出部21を容易に形成できる。それに加えて、突出部21が断面三角形状又は断面円弧状等に形成された場合に比べて、ベルト本体3とクッション体5とを貼り合わせたときに、突出部21及び凹部22の互いの嵌合によってクッション体5をベルト本体により正確に位置決めできる。その結果、ベルト本体3に対してクッション体5がベルト幅方向にずれることをより抑制でき、ベルト本体3とクッション体5とをより強固に接着できる。
【0060】
また、ベルト部材形成工程において、ベルト本体3に対してクッション体5側に突出する突出部21を形成すると共に、クッション体5に対して突出部21に嵌合する凹部22を形成するため、貼合工程でベルト本体3にクッション体5を貼り付けるときに、突出部21及び凹部22の互いの嵌合によってクッション体5をベルト本体3に対して位置決めできる結果、ベルト本体3とクッション体5とを精度良く貼り合わせることができ、植物Pの狭持力が低下することを抑制できる。
【0061】
《その他の実施形態》
上記実施形態1では、突出部21が断面矩形状に形成されているとしたが、本発明はこれに限られず、突出部21は、図6に示すように、ベルト幅方向に垂直な両側面を有し、且つその突出部21の突出方向の先端部におけるベルト幅方向の断面が円弧状に形成されていてもよい。この構成によっても、突出部21を容易に形成できると共に、突出部21が断面三角形状又は断面円弧状等に形成された場合に比べて、ベルト本体3に対してクッション体5がベルト幅方向にずれることをより抑制でき、ベルト本体3とクッション体5とをより強固に接着できる。
【0062】
また、突出部21は、図7に示すように、ベルト幅方向の断面が三角形状に形成されていてもよい。すなわち、突出部21は、突端に向かって徐々に互いの間隔が狭くなるテーパ状の側面を有するように形成されていてもよい。このように突出部21を断面三角形状に形成した場合にも、突出部21を容易に形成できる。さらに、ベルト本体3とクッション体5とを位置あわせすると共に容易に貼り合わせることができる。
【0063】
また、突出部21は、図8に示すように、ベルト幅方向の断面が円弧状に形成されていてもよい。この構成によっても、突出部21を容易に形成でき、且つベルト本体3とクッション体5とを位置あわせすると共に容易に貼り合わせることができる。
【0064】
また、突出部21は、図9に示すように、ベルト幅方向の両側面の互いの間隔がその突出部21の突出方向先端に向かって徐々に広がるように形成されて、楔状に形成されていてもよい。この構成によれば、ベルト本体3とクッション体5とを貼り合わせたときに、突出部21及び凹部22の互いの嵌合によってクッション体5がベルト本体3に対してさらに正確に位置決めできるので、ベルト本体3に対してクッション体5がベルト幅方向にずれることを可及的に抑制でき、ベルト本体3とクッション体5とをさらに強固に接着できる。この突出部21の形状は、突出部21によってクッション体5に形成された凹部22の形状がつぶされて、突出部21と凹部22とが嵌合していない状態でベルト本体3とクッション体5とが貼り合わせられることを抑制する観点から、硬度が50°程度の比較的硬いクッション体5によって搬送用ベルト1,2を形成する場合に適用することが好ましい。
【0065】
また、その他に、突出部21は、図10に示すように、その突出部21の突出方向の先端部がベルト幅方向の両側に突出して形成されて、楔状に形成されていてもよい。この構成によっても、突出部21及び凹部22の互いの嵌合によってクッション体5をベルト本体3に対してさらに正確に位置決めできるため、ベルト本体3に対してクッション体5がベルト幅方向にずれることを可及的に抑制でき、ベルト本体3とクッション体5とをさらに強固に接着することができる。また、この突出部21の形状も、硬度が50°程度の比較的硬いクッション体5によって搬送用ベルト1,2を形成する場合に適用することが好ましい。
【0066】
上記実施形態1では、突出部21がベルト全周に亘って延びているとしたが、本発明はこれに限られず、突出部21は、ベルト全周に亘って間欠的に形成されていてもよく、クッション体5がベルト本体3に対して少なくとも一部でベルト幅方向に位置決めされるように突出部21と凹部22とが嵌合していればよい。
【0067】
また、上記実施形態1では、突出部21が3つ形成されているとしたが、本発明はこれに限られず、突出部21は、3つよりも多く形成されていてもよく、また3つよりも少なく形成されていてもよい。すなわち、突出部21は任意の個数形成することが可能である。
【0068】
上記実施形態1では、クッション体5のベルト外面5bによって直接に植物(搬送物)Pを狭持するとしたが、本発明はこれに限られず、搬送用ベルト1,2は、図11に示すように、クッション体5のベルト外面5bに表皮層25を設けてもよい。この表皮層25は、例えばクッション体5のベルト外面5bを覆って一体接合されたネオプレン等の軟質ゴムシート等からなるもので、そのゴムシートの硬度が例えばJIS−Aで20°〜90°等である。このようにすれば、クッション体5のベルト外面5bの耐摩耗性を高めて摩耗を抑制することができる。
【0069】
また、上記実施形態1では、クッション体5のベルト外面5bが段状に形成されているとしたが、本発明はこれに限られず、図12に示すように、クッション体5のベルト外面5bがウェーブ形状に湾曲形成されていてもよい。この構成によっても、両クッション体5のベルト外面5b間に狭持される植物Pの抜き抵抗を向上させることができる。さらに、図13に示すように、クッション体5のベルト外面5bを覆う表皮層25を設けることにより、植物Pの抜き抵抗が大きくなって摩耗しやすくなったクッション体5のベルト外面5bの耐摩耗性を向上させることができる。また、その他に、クッション体5のベルト外面5bは、全面が平坦に形成されていてもよい。
【0070】
上記実施形態1では、ベルト本体3に突出部21が形成されると共に、クッション体5に凹部22が形成されているとしたが、本発明はこれに限られず、クッション体5に突出部21が形成されると共にベルト本体3に凹部22が形成されていてもよく、この場合にも上記実施形態1と同様の効果を得ることができる。すなわち、ベルト本体3及びクッション体5の一方に、他方に突出する突出部21が形成されると共に、他方に突出部21に嵌合する凹部22が形成されていればよい。
【0071】
上記実施形態1では、貼合工程においてベルト本体3に対してクッション体5を貼り付けるとしたが、本発明はこれに限られず、クッション体5に対してベルト本体3を貼り付けて搬送用ベルト1,2を製造してもよい。
【0072】
上記実施形態1では、ベルト部材形成工程において、突出部21をベルト本体3形成時に一体形成するとしたが、本発明はこれに限られず、突出部21を除くベルト本体部分を加硫形成等により形成した後に、そのベルト本体部分に突出部21を形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0073】
以上説明したように、本発明は、搬送用ベルト及びその製造方法について有用であり、特に、ベルト本体とクッション体と精度良く貼り合わせて、搬送物の狭持力が低下することを抑制する場合に適している。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】実施形態1の搬送用ベルトを概略的に示す断面図である。
【図2】搬送用ベルトに野菜を挟んで地面から引き抜く状態を示す断面図である。
【図3】植物収穫機における搬送装置を示す平面図である。
【図4】搬送用ベルトが搬送プーリに巻き掛けられた状態を示す断面図である。
【図5】ベルト本体に対してクッション体を貼り付ける状態を示す断面図である。
【図6】ベルト幅方向に垂直な両側面を有し、且つ先端部が断面円弧状の突出部を概略的に示す断面図である。
【図7】断面三角形状の突出部を概略的に示す断面図である。
【図8】断面円弧状の突出部を概略的に示す断面図である。
【図9】ベルト幅方向の両側面の互いの間隔が先端部に向かって徐々に広がる突出部を概略的に示す断面図である。
【図10】先端部がベルト幅方向の両側に突出している突出部を概略的に示す断面図である。
【図11】クッション体の外面を覆う表皮層を有する搬送用ベルトを概略的に示す断面図である。
【図12】クッション体の外面がウェーブ状に形成された搬送用ベルトを概略的に示す断面図である。
【図13】図12の搬送用ベルトにおけるクッション体のベルト外面を覆う表皮層を有する搬送用ベルトを概略的に示す断面図である。
【図14】従来の搬送用ベルトを概略的に示す断面図である。
【図15】並走する一対の従来の搬送用ベルトを概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0075】
P 植物(搬送物)
1 左側搬送用ベルト(搬送用ベルト)
2 右側搬送用ベルト(搬送用ベルト)
3 ベルト本体
5 クッション体
5b ベルト外側の表面
11 左側搬送プーリ群(プーリ群)
11a 第1の左側搬送プーリ(プーリ)
11b 第2の左側搬送プーリ(プーリ)
11c 第3の左側搬送プーリ(プーリ)
12 右側搬送プーリ群(プーリ群)
12a 第1の右側搬送プーリ(プーリ)
12b 第2の右側搬送プーリ(プーリ)
12c 第3の右側搬送プーリ(プーリ)
12d 第4の右側搬送プーリ(プーリ)
21 突出部
22 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンドレスに延びてベルト内側の表面がプーリに接するベルト本体と、上記ベルト本体におけるベルト外側の表面に貼り合わせられたクッション体とを備え、
複数の上記プーリからなる2組のプーリ群にそれぞれ巻き掛けられることにより、互いに対向するクッション体によって搬送物を狭持して搬送するように構成された搬送用ベルトであって、
上記ベルト本体及び上記クッション体の一方には、他方側に突出する突出部が形成されると共に、他方には上記突出部に嵌合する凹部が形成されている
ことを特徴とする搬送用ベルト。
【請求項2】
請求項1において、
上記ベルト本体に上記突出部が形成されると共に、上記クッション体に上記凹部が形成されている
ことを特徴とする搬送用ベルト。
【請求項3】
請求項1において、
上記突出部は、ベルト全周に亘って延びている
ことを特徴とする搬送用ベルト。
【請求項4】
請求項1において、
上記突出部は、ベルト幅方向の断面が矩形状に形成されている
ことを特徴とする搬送用ベルト。
【請求項5】
請求項1において、
上記突出部は、ベルト幅方向に垂直な両側面を有し、且つ該突出部の突出方向の先端部におけるベルト幅方向の断面が円弧状に形成されている
ことを特徴とする搬送用ベルト。
【請求項6】
請求項1において、
上記突出部は、ベルト幅方向の断面が三角形状に形成されている
ことを特徴とする搬送用ベルト。
【請求項7】
請求項1において、
上記突出部は、ベルト幅方向の断面が円弧状に形成されている
ことを特徴とする搬送用ベルト。
【請求項8】
請求項1において、
上記突出部は、ベルト幅方向の両側面の互いの間隔が該突出部の突出方向先端に向かって徐々に広がるように形成されている
ことを特徴とする搬送用ベルト。
【請求項9】
請求項1において、
上記突出部は、該突出部の突出方向の先端部がベルト幅方向の両側に突出して形成されている
ことを特徴とする搬送用ベルト。
【請求項10】
エンドレスに延びてベルト内側の表面がプーリに接するベルト本体と、上記ベルト本体におけるベルト外側の表面に貼り合わせられたクッション体とを備え、複数の上記プーリからなる2組のプーリ群にそれぞれ巻き掛けられることにより、互いに対向するクッション体によって搬送物を狭持して搬送するように構成された搬送用ベルトの製造方法であって、
上記ベルト本体及び上記クッション体の一方に対し、他方側に突出する突出部を形成すると共に、他方に対して上記突出部に嵌合するための凹部を形成するベルト部材形成工程と、
上記ベルト本体と上記クッション体とを貼り合わせて、上記凹部を上記突出部に嵌合させる貼合工程とを含む
ことを特徴とする搬送用ベルトの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−84011(P2009−84011A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−257698(P2007−257698)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【出願人】(000005061)バンドー化学株式会社 (429)
【Fターム(参考)】