説明

搬送用ベルト

【課題】ベルトの背面にプロファイルを熱融着したベルトにおいて、ベルト本体のソリを防止した搬送ベルトを提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂からなるベルト本体中に心体を埋設してなり、該ベルト本体の背面にプロファイルが熱融着により一体化した搬送用ベルトにおいて、前記プロファイルから50mm以内のベルト背面に反りを防止するための補強材を貼り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトの背面にプロファイルを熱融着したベルトにおいて、ベルト本体のソリを防止した搬送ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図4に示すように歯付ベルトや平ベルトなど各種のベルト本体の背面側に各種形状のプロファイルを設けて、このプロファイル群を物品の搬送、物品の配列、区分け作業などに用いている。そして、各種作業において付加が集中する手段がこうぜられたベルトある(特許文献1)。
【0003】
また、このプロファイルに孔を穿孔し、前記孔にビス、ボルトを挿通する固着手段に様々なアタッチメントを固着する手段が提案され、あるいはベルト本体の孔に直接穿設し、該孔を用いて各種形状のアタッチメントを兼ねたプロファイルをビスなどで固着する手段が提案されている(特許文献2)。
【0004】
前記ベルトにおいて、ベルト本体部分にアタッチメント取り付け用の孔を穿設することは、ベルト自体の強度を低下させることになり、ベルトの屈曲運動に伴い、該孔の部分から強度が低下しベルト本体に亀裂が生じるなどベルトの早期疲労につながっていた。
【0005】
ベルト本体に孔を開けるのではなく、ベルト本体とプロファイルを共に熱可塑性樹脂からなるものを用い、ベルト背面に高周波加熱などの手段でプロファイルを熱融着して用いるベルトが特許文献3に開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開昭58−189845号公報
【特許文献2】特開昭58−6803号公報
【特許文献3】特開昭57−103950号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ベルト本体の背面にプロファイルを熱融着により取り付けることでベルト本体には孔を開ける必要がなくなり、その分の強度の低下を防止することができる。しかし、ベルト本体を成形した後に、後加工でプロファイルを熱融着すると、その融着部分が一旦溶融し再度固化する過程で発生する熱収縮により、部分的な歪が残ってしまい、ベルト本体にソリが生じることがある。
【0008】
搬送用ベルトの場合に、ベルトにソリが生じると、その部分が装置に接触して搬送に支障を来たす場合がある他にもベルトの走行も不安定になるといった問題もある。
【0009】
そこで、本発明では前記のようなプロファイルを熱融着することにより発生するベルトのソリを防止して、スムーズな搬送作業が可能な搬送用ベルトの提供を目的とする、
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記のような目的を達成するために本発明の請求項1では、熱可塑性樹脂からなるベルト本体中に心体を埋設してなり、該ベルト本体の背面にプロファイルが熱融着により一体化した搬送用ベルトにおいて、前記プロファイルから50mm以内のベルト背面に曲げ剛性が100〜2000MPaの補強材を貼り付けてなることを特徴とする。
【0011】
請求項2では、補強材の厚みが0.2〜3mmの範囲である請求項1記載の搬送用ベルトとしている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1のように、ベルト本体においてプロファイルを熱融着した箇所付近に所定の曲げ合成を有する補強材を貼り付けることによって、ベルト本体のソリが強制されてまっすぐな状態になり、プーリにかけて走行させても装置に接触するなどの支障を来たすことなくスムーズに走行させることができる。
【0013】
請求項2によれば、補強材の厚みを所定の厚み寸法に限定しており、十分な補強効果を有すると共にベルト走行の支障とならないようなものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に本発明にかかわる搬送用ベルトについて具体的実施例の図面に従って説明する。本発明の搬送用ベルト1は、そのベルト本体2が図1に示すごとく歯付ベルトである場合や、図2に示すごとくの平ベルトの場合などがある。これらのベルト本体2は熱可塑性樹脂、具体的にはゴム状弾性を有し、かつ熱融着性に優れた樹脂材を用いることができ、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂などにて構成され、ベルト本体2内にはベルト長手方向に低伸度高強力の、例えばポリエステル繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維、ガラス繊維などからなる心線3がスパイラル状に埋設されている。
【0015】
更に、ベルト本体が歯付ベルトの場合においては、ベルト内周面にベルト全長にわたって歯部4が所定ピッチで形成されている。尚、ベルト本体が平ベルトの場合、歯付ベルトと同様の同期走行性を期待する際にはスプロケット型プーリの突子群と係合するように平ベルト本体の両側縁寄りに所定ピッチで同期駆動用の孔群を設けることができる。
【0016】
これらの構成からなるベルト本体2の背面側には複数のプロファイル(突起)5が、所定ピッチを持って隆設されている。このプロファイル5群はベルト本体2と同一の樹脂材にて一体に形成されるものであるが、ベルト本体2の背面側に高周波加熱などの手段で強固に熱融着されている。
【0017】
そして、各プロファイル5には例えばアタッチメント取り付け用のナットなどが取り付けられているような場合もある。
【0018】
プロファイル5をベルト本体2の背面に取り付ける際に両者を加熱して溶融状態にし、溶融した面同士を当接させて冷却し溶融した樹脂が硬化することで両者が一体化しベルト本体の背面にプロファイルが設けたベルトが完成する。しかし、ベルト本体及びプロファイル一旦溶融し再度固化する過程で樹脂が熱収縮し、融着箇所において歪が残ってしまう。その残留歪が原因でベルト本体2にソリを発生することがある。本発明では、ベルト本体2に対してプロファイル5を熱融着で取り付けているが、ベルト本体2のプロファイル5取り付けた位置付近に補強材6を貼り付けており、それによってベルト本体2のソリを矯正してまっすぐな状態に保つことができる。
【0019】
ベルト本体2にソリが生じたままであると、搬送用ベルトの場合、搬送物の載降作業を行う装置や搬送物を加工したりするためにベルト近くに配置されている装置に接触する問題や、搬送物が傾いた状態で搬送されるために付随する作業が妨げられるといった問題が発生してしまうが、本発明では補強材6を設けてベルト本体2のソリを矯正しているので、そういった種々の問題を解消することができる。
【0020】
補強材6としては、ベルト本体2に発生した歪を発生している残留応力に逆らって強制できるだけのものでなければならず、曲げ剛性が100〜2000MPaであるものが必要となってくる。補強材6の曲げ剛性が100MPa未満であるとソリを防止する効果が不十分であり、逆に2000MPaを越えるようなものであるとベルト本体の屈曲性を損なってプーリの円弧に沿いにくくなり走行が不安定になったり、歯付ベルトの場合はジャンピング現象につながったりするので好ましくない。
【0021】
また、素材によって硬度も異なり素材特有の剛性は変わってくるが、厚みによっても曲げやすさが変化するので、それらの素材自身の硬度と厚みによって変わってくる曲げ易さを総合的に曲げ剛性で表した場合に前記のような数値範囲内のものを用いることが好ましい。
【0022】
具体的に挙げられる素材としてはガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維などの繊維材料で補強されたエポキシ樹脂やフェノール樹脂などからなる繊維補強樹脂板や金属板、セラミックス板等を挙げることができる。ベルト本体2への取り付けは直接接着剤で貼り付けたり、ベルトと同素材のシートで上から覆ってシートの端部をベルト本体2に接着するといった方法も可能である。
【0023】
補強材6を設ける位置であるが、反りを発生させる歪が生じているベルト本体2とプロファイル5との融着部分により近い場所に設けることが効果的であるということができ、プロファイル5の端部からの距離が50mm以内の領域に、またプロファイル5を取り囲むように設けることが好ましい。また、ベルト本体2の反りを防止するためには補強材6もある一定の面積が必要となってくるものであり、0.2〜3mmの範囲の面積を有する補強材6を用いることが好ましい。薄すぎると反り防止の効果が薄く、厚みが大きすぎるとベルトの屈曲性を損なう結果となるので好ましくない。
【0024】
図2に示す本発明の平ベルトの場合、プロファイル5を設けるピッチの小さいベルトであり、一つ一つのプロファイル5の周辺にそれぞれ独立した補強材6を配置するのは困難であり、補強材6をベルト本体2の背面全面に配置した例である。
【実施例】
【0025】
次に本発明に含まれる実施例のベルトと、本発明の範囲から外れる比較例のベルトを作成して、出来上がったベルトのベルト本体における反りの発生を比較した。
【0026】
(実施例)
実施例のベルトとして歯付ベルトを作成した。ベルトのサイズは、ベルト本体のベルト幅が70mm、厚みが2.2mm、ベルト歯ピッチが5mmとし、このベルト本体に、幅10mm、厚み5mm、高さ15mmの矩形のプロファイル取り付け間隔5mmでベルト全周に5個取り付けた。そして実施例のベルトの場合は補強材6を取り付けるが、補強材としてはエポキシ樹脂からなり幅が3mm、長さが70mm、厚みが1mmで曲げ強さが900MPaのシートを用い、該補強材6をベルト本体2上において熱可塑性樹脂シートを被せてベルト本体に熱融着した。熱可塑性樹脂シートは、幅15mm、長さ70mm、厚み0.2mmの熱可塑性ウレタンからなるシートを使用した。
【0027】
(比較例)
比較例のベルトは、ベルト本体のサイズおよび該ベルト本体に熱融着するプロファイルのサイズは実施例とまったく同じサイズとし、取り付け間隔と取り付け個数や熱融着の方法もまったく同じ条件で行ったものであり、補強材のみ取り付けないベルトとした。
【0028】
出来上がったベルトを切断して70mm長さのサンプルとし、図3のように平坦な台の上においた状態で、端部におけるベルト本体が浮き上がるようになったときの反り量を測定した。その結果を表1に示す。
【0029】
【表1】

表1の結果からわかるように、補強材を貼り付けた実施例のベルトでは、プロファイルを熱融着してその部分に歪が生じていたとしても、補強材の剛性で強制的に反りの発生を抑えることができており、同条件で作成した比較例のベルトでは3mmの反りが発生したのに対してわずかに0.3mmの反りの発生にとどまった。
【産業上の利用可能性】
【0030】
ベルトの背面に様々な形状のプロファイルを熱融着で取り付けた搬送用ベルトに対して適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一例を示すベルトの要部側面図である。
【図2】本発明の別の例を示すベルトの要部側面図である。
【図3】ベルトが沿っているところの要部側面図である。
【図4】従来のベルトに反りが発生しているところの要部側面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 搬送用ベルト
2 ベルト本体
3 心線
4 歯部
5 プロファイル
6 補強材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなるベルト本体中に心体を埋設してなり、該ベルト本体の背面にプロファイルが熱融着により一体化した搬送用ベルトにおいて、前記プロファイルから50mm以内のベルト背面に曲げ剛性が100〜2000MPaの補強材を貼り付けてなることを特徴とする搬送用ベルト。
【請求項2】
補強材の厚みが0.2〜3mmの範囲である請求項1記載の搬送用ベルト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−155104(P2009−155104A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338755(P2007−338755)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000006068)三ツ星ベルト株式会社 (730)
【Fターム(参考)】