説明

搬送用ベルト

【課題】 紙の吸着性および剥離性がともに良好で紙送り精度に優れ、かつクリーニング性、耐汚れ性および耐久性の良好な搬送用ベルトを提供することにある。
【解決手段】 本発明の搬送用ベルトは、導電性物質を含むポリイミド樹脂を含む内層と、外層とを備える搬送用ベルトにおいて、該外層の表面抵抗率が該内層の表面抵抗率より1桁以上高く、該搬送用ベルト全体の体積抵抗率が常用対数値7〜12(logΩ・cm)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送用ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置に用いられる搬送用ベルトは高い温度と圧力が作用させられるので、耐熱性と高い機械的強度が要求されている。そのため、搬送用ベルトの素材としてポリイミド樹脂が好ましく用いられ、例えば、ポリイミド樹脂をフィルム化し、接合して管状とした搬送用ベルトが提案されている(特許文献1)。しかし、このような搬送用ベルトの場合、長期にわたり使用するとフィルム接合部に剥離等が発生し耐久性が低いという問題、接合精度の低さが搬送用ベルトの周長精度に大きく影響することによる蛇行の問題等が発生し易い。また、エチレンテトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE)等の樹脂からなる絶縁層(外層)およびETFE等の樹脂にカーボンを含有させた導電層(内層)の2層を有する構成であり、AC帯電により電荷を安定させて記録媒体(紙)を静電吸着させる搬送用ベルトが開示されている(特許文献2)。しかし、当該搬送用ベルトでは、放電現象による放電生成物の付着や紙粉などによる汚れが付きやすく、さらにクリーニング性が悪いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−291348号公報
【特許文献2】特開2003−103857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、紙の吸着性および剥離性がともに良好で紙送り精度に優れ、かつクリーニング性、耐汚れ性および耐久性の良好な搬送用ベルトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の搬送用ベルトは、導電性物質を含むポリイミド樹脂を含む内層と、表面抵抗率が該内層の表面抵抗率より1桁以上高い外層とを備え、全体の体積抵抗率が常用対数値7〜12(logΩ・cm)である。
好ましい実施形態においては、上記内層の導電性物質の含有割合が、ポリイミド樹脂100部に対して、3〜40部である。
好ましい実施形態においては、上記内層の表面抵抗率が、常用対数値6〜13(logΩ/□)である。
好ましい実施形態においては、上記外層がフッ素樹脂を含む。
好ましい実施形態においては、上記外層がシリコーンゴムを含む。
好ましい実施形態においては、上記外層が導電性物質を含み、該導電性材料の含有割合が、前記外層の総重量に対して、0.5〜2.0重量%である。
好ましい実施形態においては、上記外層が導電性物質を含み、該導電性材料の含有割合が、前記外層の総重量に対して、30.0重量%以下である。
好ましい実施形態においては、上記外層の表面粗さRzが5μm以下である。
好ましい実施形態においては、上記外層表面の純水接触角が90度以上である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、紙の吸着性および剥離性が優れ、かつクリーニング性、耐汚れ性および耐久性の良好な搬送用ベルトを得ることができる。本発明の搬送用ベルトは、良好な紙の吸着性および剥離性を示すので、紙送り精度が高い。また、耐汚れ性およびクリーニング性が優れることによりインク汚れ等が付着し難く良好な画像形成に寄与し得る。さらに、本発明の搬送用ベルトは、接合部(フィルムを管状とした際に生じる接合部)を有さない管状体であるため周長精度に優れ良好な画像形成に寄与するとともに、耐久性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の好ましい実施形態における搬送用ベルトの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.搬送用ベルトの全体構成
本発明の搬送用ベルトは、好ましくは、画像形成装置における記録媒体を搬送する。当該記録媒体は代表的には、紙である。
【0009】
図1は、本発明の好ましい実施形態による搬送用ベルトの概略断面図である。搬送用ベルト10は、内層1と外層2とを備える。当該内層1は導電性物質を含むポリイミド樹脂を含む。当該外層2は、好ましくはフッ素樹脂またはシリコーンゴムを含む。なお、本明細書において「外層」とは、搬送用ベルトにおいて最外周を形成する層であり、紙が搬送される側の層をいう。また、本明細書において「内層」とは、搬送用ベルトにおいて紙と接触しない側の層であり、例えば搬送用ベルト駆動用のロールに接触する側の層をいう。
【0010】
上記外層の表面抵抗率は、上記内層の表面抵抗率より1桁以上高く、好ましくは2桁以上高い。このように外層および内層の表面抵抗率を調整することにより、適切な静電吸着性が得られ、かつ帯電時の連続使用による残留電荷の蓄積を防ぐことができる。その結果、紙の吸着性と剥離性とを安定して両立させることができ、かつクリーニング性および耐汚れ性にも優れる搬送用ベルトを得ることができる。1つの実施形態においては、外層の表面抵抗率の常用対数値14(logΩ/□)以上であり、かつ内層の表面抵抗率が常用対数値6〜13(logΩ/□)である。別の実施形態においては、外層の表面抵抗率が常用対数値10〜14(logΩ/□)であり、かつ内層の表面抵抗率が常用対数値6〜8(logΩ/□)である。なお、外層および内層の表面抵抗率は、外層および内層に含まれる導電性物質の種類および含有量を調整することにより制御することができる。
【0011】
本発明の搬送用ベルト全体の体積抵抗率は、常用対数値7〜12(logΩ・cm)であり、さらに好ましくは常用対数値8〜10(logΩ・cm)である。搬送用ベルトの体積抵抗率がこのような範囲であれば、用紙の吸着性と剥離性との両立、搬送用ベルト速度変動の抑制、搬送用ベルト電荷の均一性および剥離放電性に優れた搬送用ベルトを得ることができる。搬送用ベルト全体の体積抵抗率は、外層および内層に含まれる導電性物質の種類および含有量を調整することにより制御することができる。
【0012】
本発明の搬送用ベルトは、本発明の効果が得られる限りにおいて、外層と内層との間にさらに任意の適切な中間層を設けてもよい。
【0013】
B.内層
上記内層は、上記のとおり、導電性物質を含むポリイミド樹脂を含む。
【0014】
上記ポリイミド樹脂としては、任意の適切な樹脂が採用され得る。上記ポリイミド樹脂としては、例えば、テトラカルボン酸二無水物またはその誘導体とジアミン化合物との共重合体が挙げられる。
【0015】
上記テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ペリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0016】
上記ジアミン化合物の具体例としては、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、1,5−ジアミノナフタレン、m−フェニレンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニルジアミン、ベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、2,4−ビス(β−アミノ−t−ブチル)トルエン、ビス(p−β−アミノ−t−ブチルフェニル)エーテル、ビス(p−β−メチル−δ−アミノフェニル)ベンゼン、ビス−p−(1,1−ジメチル−5−アミノ−ペンチル)ベンゼン、1−イソプロピル−2,4−m−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、ジ(p−アミノシクロヘキシル)メタン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ジアミノプロピルテトラメチレン、3−メチルへプタメチレンジアミン、4,4−ジメチルヘプタメチレンジアミン、2,11−ジアミノドデカン、1,2−ビス−3−アミノプロポキシエタン、2,2−ジメチルプロピレンジアミン、3−メトキシヘキサメチレンジアミン、2,5−ジメチルヘプタメチレンジアミン、3−メチルへプタメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、2,11−ジアミノドデカン、2,17−ジアミノエイコサデカン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,10−ジアミノ−1,10−ジメチルデカン、1,12−ジアミノオクタデカン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン等が挙げられる。
【0017】
上記ポリイミド樹脂は、好ましくは、芳香族ポリイミド樹脂である。芳香族ポリイミド樹脂を用いれば、耐熱性および機械強度のより優れる搬送用ベルトを得ることができる。芳香族ポリイミド樹脂の具体例としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)と4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DDE)との共重合体、BPDA、DDE、およびp−フェニレンジアミン(PDA)の共重合体等が挙げられる。BPDA、DDEおよびPDAの共重合体におけるPDA由来の構成単位の含有割合は、DDE由来の構成単位に対して、好ましくは25モル%以下である。
【0018】
上記導電性物質は、任意の適切なものが採用され得る。上記導電性物質の具体例としては、ケッチェンブラック、グラフトカーボン等のカーボンブラック;アルミ、銀、銅等の各種金属等が挙げられる。好ましくは、カーボンブラックである。
【0019】
上記カーボンブラックは、所望の導電性に応じて任意の適切なものが採用され得る。上記カーボンブラックの具体例としては、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等が挙げられる。中抵抗から高抵抗域(例えば、表面抵抗率10〜1014Ω/□、体積抵抗率10〜1014Ω・cm)において制電性が必要である場合は、特にチャンネルブラックやファーネスブラックが好適に用いられる。上記カーボンブラックは、用途に応じて、酸化処理、グラフト処理等の処理を施してもよい。酸化処理を施せば、酸化劣化を防止することができ、グラフト処理を施せば、溶媒への分散性を向上させることができる。
【0020】
上記カーボンブラックは、市販品を用いてもよい。市販品のチャンネルブラックの具体例としては、デグサ・ヒュルス社製の商品名「Color Black FW200」、「Color Black FW2」、「ColorBlack FW2V」、「Color Black FW1」、「Color Black FW18」、「Special Black 6」、「Color Black S170」、「Color Black S160」、「Special Black 5」、「Special Black 4」、「Special Black 4A」、「Printex 150T」、「Printex U」、「Printex V」、「Printex 140U」、「Printex 140V」等が挙げられる。市販品のファーネスブラックの具体例としては、デグサ・ヒュルス社製の商品名「Special Black 550」、「Special Black 350」、「Special Black 250」、「Special Black 100」、「Printex 35」、「Printex 25」、三菱化学社製の商品名「MA 7」、「MA 77」、「MA 8」、「MA 11」、「MA 100」、「MA 100R」、「MA 220」、「MA 230」、キャボット社製、「MONARCH 1300」、「MONARCH 1100」、「MONARCH 1000」、「MONARCH 900」、「MONARCH 880」、「MONARCH 800」、「MONARCH 700」、「MOGUL L」、「REGAL 400R」、「VULCAN XC−72R」等が挙げられる。
【0021】
上記導電性物質の含有量は、ポリイミド樹脂100部に対して、好ましくは3〜40部、さらに好ましくは3〜30部である。上記導電性物質の含有量がこのような範囲であれば、上記内層および上記搬送用ベルト全体について所望の表面抵抗率および体積抵抗率を得ることができ、かつ機械的強度に優れる搬送用ベルトを得ることができる。
【0022】
上記内層の厚みは、好ましくは20〜150μmであり、さらに好ましくは50〜100μmである。
【0023】
上記内層の表面抵抗率は、好ましくは常用対数値6〜13(logΩ/□)であり、さらに好ましくは6〜12(logΩ/□)である。内層の表面抵抗率がこのような範囲であれば、帯電時の連続使用による残留電荷の蓄積を防ぐことができる。その結果、用紙の吸着性と剥離性とを安定して両立させることができ、かつクリーニング性および耐汚れ性にも優れる搬送用ベルトを得ることができる。内層の表面抵抗率は、上記導電性物質の種類および含有量により調整することができる。
【0024】
上記内層は、(1)有機極性溶媒中に上記導電性物質を分散させて、導電性物質分散液を調製し、(2)導電性物質分散液に上記テトラカルボン酸二無水物またはその誘導体と上記ジアミン化合物を溶解させた後、重合反応させて導電性物質分散ポリアミド酸溶液を調製し、(3)導電性物質分散ポリアミド酸溶液を円筒金型内に展開させた後に閉環イミド化反応を進行させて、導電性物質を含むポリイミド樹脂を管状に形成することにより得ることができる。
【0025】
上記有機極性溶媒は、上記導電性物質を分散させ得る限り任意の適切な溶媒を採用し得る。上記有機極性溶媒の具体例としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルメトキシアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルトリアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ピリジン、テトラメチレンスルホン、ジメチルテトラメチレンスルホン等が挙げられる。なかでも、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド等のN,N−ジアルキルアミド類が好ましい。N,N−ジアルキルアミド類であれば、導電性物質の分散溶媒と後工程の重合反応溶媒とを兼用することができる。また、低分子量のN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドであれば、蒸発、置換又は拡散によりポリアミド酸及びポリアミド酸成形品から容易に除去することができる。上記有機極性溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
上記有機極性溶媒にクレゾール、フェノール、キシレノール等のフェノール類、ベンゾニトリル、ジオキサン、ブチロラクトン、キシレン、シクロヘキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン等を単独または組み合わせて混合してもよい。
【0027】
上記導電性物質分散液は、さらに分散剤が添加されていてもよい。上記導電性物質が分散剤を含んでいれば、上記導電性物質と上記有機極性溶媒との親和性を高めることができる。上記分散剤は、本発明の効果が得られる限りにおいて、任意の適切な分散剤が採用され得る。上記分散剤の具体例としては、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)、ポリ(N,N’−ジエチルアクリルアジド)、ポリ(N−ビニルホルムアミド)、ポリ(N−ビニルアセトアミド)、ポリ(N−ビニルフタルアミド)、ポリ(N−ビニルコハク酸アミド)、ポリ(N−ビニル尿素)、ポリ(N−ビニルピぺリドン)、ポリ(N−ビニルカプロラクタム)、ポリ(N−ビニルオキサゾリン)等の高分子分散剤;界面活性剤、無機塩等が挙げられる。これらの分散剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
上記導電性物質の分散方法は、任意の適切な分散方法を適用できる。当該分散方法として、例えば、ボールミル、サンドミル、バスケットミル、三本ロールミル、プラネタリーミキサー、ビーズミル、超音波分散等の方法が挙げられる。上記導電性物質の分散状態を調べる方法は、特に制限されず、例えば光学顕微鏡にて観察する方法が挙げられる。
【0029】
上記導電性物質分散液に上記テトラカルボン酸二無水物またはその誘導体とジアミン化合物を溶解させた後、重合反応させて導電性物質分散ポリアミド酸溶液を得る。重合時において、好ましくは、触媒を添加する。当該触媒は、任意の適切な触媒が採用され得る。当該触媒の具体例としては、脂肪族3級アミン、芳香族3級アミン、複素環式3級アミン等が挙げられる。なかでも、イミダゾール、ベンズイミダゾール、イソキノリン、キノリン、ジエチルピリジンまたはβ−ピコリン等の含窒素複素環化合物が好ましい。
【0030】
上記触媒の使用量は、ポリアミド酸前駆体溶液のアミド酸1モル当量に対して0.04〜0.4モル当量、好ましくは0.05〜0.4モル当量である。触媒の添加量が0.04当量モル以下では触媒の効果が十分ではなく、また0.4当量以上添加しても効果の向上は見られない。
【0031】
上記重合反応時のモノマー濃度(溶媒中におけるテトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分の濃度)は、好ましくは5〜30重量%である。
【0032】
上記重合反応時の反応温度は、好ましくは80℃以下であり、さらに好ましくは5〜50℃である。また、反応時間は、好ましくは、5〜10時間である。
【0033】
上記導電性物質分散ポリアミド酸溶液の溶液粘度は、好ましくは、B型粘度計で1〜1000Pa・s(25℃)である。溶液粘度がこのような範囲にあれば、次工程の遠心成形時に均一に溶液を展開することができ、厚みの均一な搬送用ベルトを得ることができる。上記導電性物質分散ポリアミド酸溶液の溶液粘度は、上記重合反応後に得られた導電性物質分散ポリアミド酸溶液をさらに加熱、撹拌することにより、所望の粘度とすることができる。当該加熱温度は、好ましくは、50〜90℃である。
【0034】
上記導電性物質分散ポリアミド酸溶液を円筒金型内に展開させた後に閉環イミド化反応を進行させて、導電性物質を含むポリイミド樹脂を管状に形成する。導電性物質を含むポリイミド樹脂を管状に成形することにより、接合部(フィルムを管状とした際に生じる接合部)を有さない搬送用ベルトの内層を得ることができる。その結果、耐久性および周長精度に優れる搬送用ベルトを得ることができる。円筒金型内に展開させる方法としては、回転遠心成形法により金型内周面に遠心力により展開させる方法が挙げられる。このような方法によれば、導電性物質分散ポリアミド酸溶液を均一に展開させることができる。上記開環イミド化反応は、展開した導電性物質分散ポリアミド酸溶液を加熱することにより進行させることができる。このときの加熱温度は、好ましくは300〜450℃である。また、加熱方法は、好ましくは、金型を回転させながら加熱する方法、高精度の熱風循環を用いる方法、低温で投入し昇温速度を小さくする方法およびこれらの方法の組み合わせが挙げられる。このような加熱方法によれば、導電性物質分散ポリアミド酸溶液およびその乾燥物への加熱を均等に行うことができ、導電性物質の凝集バラツキを抑制することができる。その結果、内層の表面抵抗率および搬送用ベルト全体の体積抵抗率を均一にすることができる。
【0035】
C.中間層
本発明の搬送用ベルトは、必要に応じて、上記内層と上記外層との間に、任意の適切な中間層を有していてもよい。当該中間層としては、例えば、導電性プライマー層が挙げられる。中間層として導電性プライマー層を有すれば、外層と内層との密着性を向上させることができる。導電性プライマーとしては、例えば、導電性フッ素系プライマー、導電性ポリイミド系プライマー等が挙げられる。
【0036】
上記中間層の厚みは、好ましくは0.3〜5μmであり、さらに好ましくは0.5〜2μmである。
【0037】
上記中間層は、任意の適切な方法により形成され得る。例えば、上記中間層が導電性プライマー層である場合、上記内層の外周面にプライマー溶液を塗布することにより得られる。当該塗布方法としては、ロールコート、刷毛塗り、スプレーコート等が挙げられる。
【0038】
D.外層
【0039】
上記外層は、上記のとおり、好ましくはフッ素樹脂またはシリコーンゴムを含む。
【0040】
上記フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−へキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等が挙げられる。なかでも、PFAが好ましい。上記外層がフッ素樹脂を含めば、離型性に優れるため、耐汚れ性、クリーニング性および搬送される紙の分離性に優れる搬送用ベルトを得ることができる。特に、上記フッ素樹脂が、PFAであれば、離型性に非常に優れる搬送用ベルトを得ることができる。上記フッ素樹脂は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
上記フッ素樹脂の含有割合は、上記外層の総重量に対して、好ましくは50〜100重量%であり、さらに好ましくは80〜100重量%である。
【0042】
上記シリコーンゴムとしては、好ましくは、液状のシリコーンゴムである。上記シリコーンゴムの具体例としては、熱硬化性シリコーンゴム(シリコーンRTVゴム)等が挙げられる。上記外層が、シリコーンゴムを含めば、弾性が高いため、紙を搬送する際に紙ずれのない搬送用ベルトを得ることができる。上記シリコーンゴムは、単独でも用いてよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
上記シリコーンゴムの含有割合は、上記外層の総重量に対して、好ましくは50〜100重量%であり、より好ましくは70〜100重量%であり、さらに好ましくは80〜100重量%であり、。
【0044】
上記外層は、目的、所望の導電性、外層を形成する材料の種類等に応じて、導電性物質を含んでもよい。当該導電性物質としては、例えば、上記内層に用いられる導電性物質を用いることができる。好ましくはカーボンブラックであり、特に好ましくは導電性の高いケッチェンブラックである。なお、上記外層を形成する材料によっては、外層は上記導電性物質を含まなくてもよい。
【0045】
上記フッ素樹脂を含む外層が上記導電性物質を含む場合、上記導電性物質の含有割合は、外層の総重量に対して、好ましくは2.0重量%以下であり、さらに好ましくは0.5〜2.0重量%であり、特に好ましくは、1.0〜1.5重量%である。導電性物質の含有割合が、0.5重量%未満の場合、所望の表面抵抗率が得られないおそれがあり、2.0重量%より多い場合、十分な離型性および耐摩耗性が得られないおそれがある。
【0046】
上記シリコーンゴムを含む外層が上記導電性物質を含む場合、上記導電性物質の含有割合は、外層の総重量に対して、好ましくは30重量%以下である。導電性物質の含有割合が30重量%より多い場合、十分な離型性および耐摩耗性が得られないおそれがある。
【0047】
上記外層は、さらに他の形成材料を含んでいてもよい。当該他の形成材料としては、フッ素ゴム等のゴム材料、各種エラストマー等の耐熱性弾性体が挙げられる。
【0048】
上記フッ素ゴムとしては、好ましくは、液状(ディスパージョンを含む)のフッ素ゴムである。上記フッ素ゴムの具体例としては、FKM(フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(VDF−HFP)系フッ素ゴムの二次元系および三次元系共重合体)系ラテックス等のフッ素ゴムがあげられる。
【0049】
上記外層の厚みは、外層を形成する材料に応じて任意の適切な厚みを採用し得る。例えば、外層がフッ素樹脂を含む場合、上記外層の厚みは、好ましくは5〜30μmであり、さらに好ましくは10〜20μmである。また、外層がシリコーンゴムを含む場合、上記外層の厚みは、好ましくは10〜700μmであり、さらに好ましくは10〜500μmである。
【0050】
上記外層の表面抵抗率は、好ましくは、常用対数値10〜15(logΩ/□)であり、さらに好ましくは11〜14(logΩ/□)である。
【0051】
上記外層の表面粗さRzは、好ましくは5μm以下であり、さらに好ましくは4μm以下であり、特に好ましくは2〜4μmである。外層の表面粗さRzがこのような範囲であれば、クリーニング性および耐汚れ性に優れる搬送用ベルトを得ることができる。また、ブレード等によるクリーニング後においても表面離型性が維持されるので、長期にわたりクリーニング性および耐汚れ性を維持することができ、さらに搬送用ベルト表面の光沢も維持される。
【0052】
上記外層表面の純水接触角は、好ましくは90度以上であり、さらに好ましくは95度以上であり、特に好ましくは95〜120度である。外層表面の純水接触角がこのような範囲であれば、クリーニング性および耐汚れ性に優れる搬送用ベルトを得ることができる。また、ブレード等によるクリーニング後においても表面離型性が維持されるので、長期にわたりクリーニング性および耐汚れ性を維持することができ、さらに搬送用ベルト表面の光沢も維持される。
【0053】
上記外層を成形する方法としては、例えば、溶融押出により得たフッ素樹脂またはシリコーンゴムを含む管状体を内層外表面に被着する方法、液状のフッ素樹脂またはシリコーンゴム溶液を内層外表面に被覆する方法等が挙げられる。このような方法によって外層を成形すれば、接合部(フィルムを管状とした際に生じる接合部)を有さない搬送用ベルトの外層を得ることができる。その結果、耐久性および周長精度に優れる搬送用ベルトを得ることができる。なお、本明細書において液状のフッ素樹脂とは、ディスパージョンの形態も含む。
【0054】
上記液状のフッ素樹脂またはシリコーンゴムを内層外表面に被覆する方法は、好ましくは、液状のフッ素樹脂またはシリコーンゴムを内層外表面に塗布する工程と、塗布後に乾燥および加熱する工程を含む。
【0055】
上記液状のフッ素樹脂またはシリコーンゴムを塗布する方法としては、例えば、スプレーコート、スピンコート、ロールコート、刷毛塗り等の方法が挙げられる。
【0056】
上記スプレーコートに用いるガンとしては、均一な塗布が可能であることから、ノズル径の小さいガンが好ましい。当該ノズル径は、通常、0.1〜2.0mmである。また、上記スプレーコート時のスプレー圧は、好ましくは、1.0〜5.0kg/cmである。
【0057】
上記液状のフッ素樹脂またはシリコーンゴムを塗布する際、上記内層の内側に、形状保持のためのシリンダを嵌挿してもよい。また、上記液状のフッ素樹脂またはシリコーンゴムの塗布された上記内層に円筒体を外挿配置させ、その状態から、上記円筒体または内層を円筒体の軸方向に走行させるか、もしくは上記両者を互いに反対方向に走行させて塗布厚みを均一にしてもよい。
【0058】
上記液状のフッ素樹脂を塗布した後の乾燥温度は、好ましくは80〜150℃であり、さらに好ましくは90〜130℃である。また、当該乾燥時の乾燥時間は、好ましくは、10〜30分間である。当該乾燥によって液状のフッ素樹脂中の溶媒を除去した後、さらにフッ素樹脂の融点以上で加熱することにより、内層外表面上(または中間層外表面上)にフッ素樹脂を含む外層を形成させることができる。当該加熱温度は、フッ素樹脂の種類に応じて任意の適切な温度が採用され得る。代表的には、200〜350℃である。また、加熱時間は、好ましくは、1〜60分間である。このように、乾燥と加熱とを分けて段階的に昇温すれば、ボイドの発生を防止することができる。なお、当該加熱時に上記内層の開環イミド反応を同時に行ってもよい。
【0059】
上記液状のシリコーンゴムを塗布した後の加熱温度は、好ましくは20〜150℃であり、さらに好ましくは90〜130℃である。また、当該加熱時の加熱時間は、好ましくは、1〜24時間である。このような条件下で加熱することによりシリコーンゴムを硬化させて、内層外表面上(または中間層表面上)にシリコーンゴムを含む外層を形成させることができる。
【0060】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。なお、実施例等における、試験および評価方法は以下のとおりである。
【0061】
[表面抵抗率、体積抵抗率]
ハイレスタにUP MCP−HT450(三菱化学社製、プローブ:UR)を用い、印加電圧500V、(なお、常用対数値で8.0以下は測定不可のため電圧を低下させ印加電圧10Vで測定)、10秒間の測定条件にて、25℃、60%RHでの表面抵抗率および体積抵抗率を測定した。測定は、搬送用ベルト表面の8箇所を測定し、平均値を常用対数値にて示した
[表面粗さRz]
JIS 1994に準じ、搬送用ベルト表面の任意の5点よりサンプルを採取し、その周方向に関して、表面粗さ計(東京精密社製、サーフコムSJ301)にてカットオフ値0.8mm、測定長さ2.5mm、駆動速度0.25mm/secにて測定を行った。
[純水接触角]
自動接触角測定装置(英弘精機社製、SCA20)にて純水の接触角を測定した。
[紙吸着性]
実施例等で得られた搬送用ベルトをインクジェットプリンターの紙搬送用ベルトとしてロールに搬送用ベルトを掛け渡して装着し、カラーインク、記録シートとしてA4版の用紙を用いて、室温、湿度50%Rhの環境下で12時間印字して、紙吸着性を評価した。
○・・・搬送用ベルトに紙が吸着し、問題なく印字できる
×・・・搬送用ベルトに紙が吸着せず、不具合が発生する
[耐汚れ性]
実施例等で得られた搬送用ベルトをインクジェットプリンターの紙搬送用ベルトとしてロールにベルトを掛け渡して装着し、カラーインク、記録シートとしてA4版の用紙を用いて、室温、湿度50%Rhの環境下で12時間印字した後の搬送用ベルトの外観を目視にて確認し、耐汚れ性を評価した。
○・・・搬送用ベルト表面に汚れが付着せず、搬送した紙が汚れない
△・・・搬送用ベルト表面の汚れは目視では確認されないが、搬送した紙がうすく汚れる
×・・・搬送用ベルト表面に汚れが付着し、搬送した紙が汚れる
【0062】
<実施例1>
(半導電ポリイミド樹脂管状体(内層)の形成)
カーボンブラック(デグサジャパン社製、スペシャルブラック4)317.5gをN−メチル−2−ピロリドン(NMP)1800g中に添加した。
ボールミルで12時間室温で攪拌することにより分散した後、#400ステンレスメッシュでろ過し、濃度15重量%のカーボン分散液を得た。
このカーボン分散液1050.7gを5000mLの4つ口フラスコに移し、N−メチル−2−ピロリドン2669.5gとp−フェニレンジアミン96.1gと4,4’−ジアミノジフェニルエーテル177.9gを仕込み、常温で攪拌させながら溶解した。
次いで、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物523.1gを添加し、温度25℃で1時間反応させた後、75℃で20時間加熱しながら攪拌することにより、B型粘度計による溶液粘度が182Pa・sのカーボンブラック含有ポリイミド前駆体溶液(固形分濃度20wt%、カーボンブラックの添加量:樹脂に対して21.5重量%)を得た。このカーボンブラック含有ポリイミド前駆体溶液を#800のステンレスメッシュを用いてろ過し、半導電ポリイミド樹脂管状体形成用材料とした。
次に、半導電ポリイミド樹脂管状体形成用材料を直径120mm、長さ500mmの円筒状シリンダーの内周面に厚みが600μmになるように塗布し、回転成形機にて円筒状シリンダーを1500rpmで20分間回転させて均一厚の展開層とした。その後、上記円筒状シリンダーを250rpmで回転させながら該円筒状シリンダーの外側より130℃の熱風を30分間吹き付け、次いで20℃/分の速度で370℃に昇温しその温度で30分間加熱キュアーした後、冷却した。その後、円筒状シリンダーの内周面に形成された管状の膜を剥離して、75μmの半導電ポリイミド樹脂管状体を得た。
(プライマー層(中間層)の形成)
このようにして得られた半導電ポリイミド樹脂管状体の外表面に、ポリイミド系プライマーK−001(三井・デュポン・フロロケミカル社製)を均一にコートし、150℃で10分間風乾して導電性プライマー層を形成させた。当該導電性プライマー層の厚みは、1μmであった。
(外層の形成)
PFA濃度60重量%の水性ディスパージョン(デュポン社製、TE−334J)を、上記プライマー層が形成された内層の外周面(プライマー層表面)に均一にスプレーコートし、10分間風乾した。
その後、100℃で10分間加熱して分散媒である水を蒸発除去し、さらにフルキュアとして400℃で5分間加熱し、270分かけて室温まで温度を下げ、PFAを含む外層を得た。上記外層の厚みは15μmであった。
その結果、導電性物質を含むポリイミド樹脂からなる内層と、当該内層の外周面に形成された導電性プライマー層と、当該プライマー層の外周面に焼結させたPFAを含む外層とからなる三層構造の搬送用ベルトを得た。
(搬送用ベルトの特性)
得られた搬送用ベルトの外層の表面抵抗率は、印加電圧500Vで常用対数値14.0(logΩ/□)以上、内層の表面抵抗率は常用対数値10.56(logΩ/□)、搬送用ベルト全体の体積抵抗率は印加電圧500Vで常用対数値9.26(logΩ・cm)であった。表面粗さRzは2.68μmであった。純水接触角は108°であった。
また、得られた搬送用ベルトの紙吸着性および耐汚れ性は共に良好であり、良好な画像が得られた。
【0063】
<実施例2>
カーボン分散液1050.7gに代えて、カーボン分散液1124.0gを用い、N−メチル−2−ピロリドン2669.5gに代えて、N−メチル−2−ピロリドン1124.0gを用い、PFA濃度60重量%の水性ディスパージョンに代えて、平均粒径0.3μmのカーボンブラックをPFA固形分に対して1.0重量%添加したPFA濃度50重量%の水性ディスパージョンを用いた以外は、実施例1と同様にして搬送用ベルトを得た。このとき、半導電ポリイミド樹脂管状体(内層)を形成する際のカーボンブラック含有ポリイミド前駆体溶液は、固形分濃度が20重量%であり、カーボンブラックの添加量が樹脂に対して23重量%であった。なお、上記PFA濃度50重量%の水性ディスパージョンは、ボールミルを用いて混合・分散して得た。
得られた搬送用ベルトの外層の表面抵抗率は、印加電圧500Vで常用対数値11.52(logΩ/□)、内層の表面抵抗率は印加電圧10Vで常用対数値6.54(logΩ/□)、搬送用ベルト全体の体積抵抗率は印加電圧500Vで常用対数値8.34(logΩ・cm)であった。表面粗さRzは3.23μmであった。純水接触角は95°であった。
また、得られた搬送用ベルトの紙吸着性および耐汚れ性は共に良好であり、良好な画像が得られた。
【0064】
<実施例3>
実施例1(半導電ポリイミド樹脂管状体(内層)の形成)と同様にして作製した半導電ポリイミド樹脂管状体を、外径120.92mm、肉厚5mm、長さ500mmで外周面を平滑に仕上げたステンレス製シリンダの外周に嵌挿した。次いで、上記半導電ポリイミド樹脂管状体の外周面に、RTVシリコーンゴム(信越化学工業社製商品名「KE−1833」)を塗布した。この際、シリンダに嵌挿した導電性ポリイミド樹脂製管状体の外周面に沿って、内径120.3mmの円筒状の走行体を用いて自重走行法により速度50mm/分で円筒の軸方向に走行させた。その後、温度120℃で10分間加熱し、さらに温度180℃で30分間加熱した。
その結果、導電性ポリイミド樹脂製管状体を内層として、その外周面にシリコーンゴムからなる管状外層が設けられた二層構造の搬送用ベルトを得た。
得られた搬送用ベルトの総厚みは375μmであり、そのうち管状外層の厚みは300μmであった。また、得られた搬送用ベルトの外層の表面抵抗率は、印加電圧500Vで常用対数値14(logΩ/□)以上、内層の表面抵抗率は常用対数値10.88(logΩ/□)、搬送用ベルト全体の体積抵抗率は印加電圧500Vで常用対数値11.24(logΩ・cm)であった。表面粗さRzは3.45μmであった。純水接触角は98°であった。
また、得られた搬送用ベルトの紙吸着性および耐汚れ性は共に良好であり、良好な画像が得られた。
【0065】
<比較例1>
実施例2で形成した半導電ポリイミド樹脂管状体を用いて、単層の搬送用ベルトを得た。
得られた搬送用ベルトの表面抵抗率は、印加電圧10Vで常用対数値6.82(logΩ/□)、搬送用ベルト全体の体積抵抗率は印加電圧100Vで常用対数値5(logΩ・cm)以下であった。表面粗さRzは2.68μmであった。純水接触角は95°であった。
また、得られた搬送用ベルトの搬送時の紙吸着性および剥離性が実用上好ましくなく、部分的剥離や搬送安定性が不十分であった。また、耐汚れ性についてもインク汚れが搬送用ベルト表面全体にみられた。
【0066】
<比較例2>
平均粒径0.3μmのカーボンブラックをPFA固形分に対して1.0重量%添加したPFA濃度50重量%の水性ディスパージョンに代えて、平均粒径0.3μmのカーボンブラックをPFA固形分に対して3.0重量%添加したPFA濃度50重量%の水性ディスパージョンを用いた以外は、実施例2と同様にして搬送用ベルトを得た。
得られた搬送用ベルトの外層の表面抵抗率は、印加電圧10Vで常用対数値7.24(logΩ/□)、内層の表面抵抗率は6.54(logΩ/□)、搬送用ベルト全体の体積抵抗率は印加電圧10Vで常用対数値5(logΩ・cm)以下であった。表面粗さRzは5.24μmであった。純水接触角は84°であった。
また、得られた搬送用ベルトの搬送時の用紙吸着性および剥離性が実用上好ましくなく、部分的剥離や搬送安定性が不十分であった。また、耐汚れ性についてもインク汚れが搬送用ベルト表面全体にあった。
【0067】
<比較例3>
PFA濃度60重量%の水性ディスパージョンに代えて、平均粒径0.3μmのカーボンブラックをPFA固形分に対して1.0重量%添加したPFA濃度50重量%の水性ディスパージョンを用いた以外は、実施例1と同様にして搬送用ベルトを得た。なお、上記PFA濃度50重量%の水性ディスパージョンは、ボールミルを用いて混合・分散して得た。
得られた搬送用ベルトの外層の表面抵抗率は、印加電圧500Vで常用対数値11.68(logΩ/□)、内層の表面抵抗率は印加電圧500Vで常用対数値10.85(logΩ/□)、搬送用ベルト全体の体積抵抗率は印加電圧500Vで常用対数値9.78(logΩ・cm)であった。表面粗さRzは3.05μmであった。純水接触角は105°であった。
また、得られた搬送用ベルトの搬送時の用紙吸着性および剥離性が実用上好ましくなく、部分的剥離や搬送安定性が不十分であった。また、耐汚れ性についてもインク汚れが搬送用ベルト表面全体にあった。
【0068】
【表1】

【0069】
表1から明らかなように、本発明の搬送用ベルトは、紙吸着性および耐汚れ性が共に優れる。このような搬送用ベルトは、紙送り精度が高いために良好な画像を形成に寄与することができ、また、長期間の使用においても汚れの付着し難いため、搬送する紙を汚すこともない。比較例3と実施例1および2を比較すれば明らかなように、このような効果は、外層の表面抵抗率が内層の表面抵抗率より1桁以上とすることにより得られる。さらに、搬送用ベルト全体の体積抵抗率、外層の表面粗さ、外層の純水接触角を特定範囲とすることにより、上記効果はより顕著となる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の搬送用ベルトは、複電子写真装置(例えば、複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ)、インクジェットプリンター装置、印刷機等の画像形成装置の紙搬送に広く用いられ得る。
【符号の説明】
【0071】
1 内層
2 外層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性物質を含むポリイミド樹脂を含む内層と、表面抵抗率が該内層の表面抵抗率より1桁以上高い外層とを備え、全体の体積抵抗率が常用対数値7〜12(logΩ・cm)である、搬送用ベルト。
【請求項2】
前記内層の導電性物質の含有割合が、ポリイミド樹脂100部に対して、3〜40部である、請求項1に記載の搬送用ベルト。
【請求項3】
前記内層の表面抵抗率が、常用対数値6〜13(logΩ/□)である、請求項1または2に記載の搬送用ベルト。
【請求項4】
前記外層がフッ素樹脂を含む、請求項1から3のいずれかに記載の搬送用ベルト。
【請求項5】
前記外層がシリコーンゴムを含む、請求項1から3のいずれかに記載の搬送用ベルト。
【請求項6】
前記外層が導電性物質を含み、該導電性物質の含有割合が、前記外層の総重量に対して、0.5〜2.0重量%である、請求項4に記載の搬送用ベルト。
【請求項7】
前記外層が導電性物質を含み、該導電性物質の含有割合が、前記外層の総重量に対して、30.0重量%以下である、請求項5に記載の搬送用ベルト。
【請求項8】
前記外層の表面粗さRzが5μm以下である、請求項1から7のいずれかに記載の搬送用ベルト。
【請求項9】
前記外層表面の純水接触角が90度以上である、請求項1から8のいずれかに記載の搬送用ベルト。

【図1】
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【公開番号】特開2010−208803(P2010−208803A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−56896(P2009−56896)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】