説明

搬送用ボールユニット

【課題】搬送物をスムーズに搬送することができ、かつ搬送物を静止させることができる搬送用ボールユニットを得る。
【解決手段】搬送用ボールユニット10は、受け部材14と蓋部材36とで構成されるケース12を含む。受け部材14は、凹曲面状の底面部16を有し、底面部16に複数の受けボール18を敷き詰め、その上にメインボール20を配置する。底面部16の中央部を中心とする円環状の底面部分16aにおいて、受けボール18がメインボール20からの荷重を受け、その他の部分16b,16cでは、受けボール18とメインボール20とは離れている。底面部16の中央部からメインボール20に向かって、制動部材60が往復移動可能に配置される。制動部材60がメインボール20に押し付けられることにより、メインボール20が蓋部材36に押し付けられ、メインボール20の回転は抑止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、搬送用ボールユニットに関し、特にたとえば、あらゆる方向に回転可能なメインボールを有し、複数個を組み合わせることによって搬送物を搬送するためのコンベアを作製することができる搬送用ボールユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
図9は、従来の搬送用ボールユニットの一例を示す図解図である。この搬送用ボールユニット1は、たとえば円柱状の外形を有するケース2を含む。ケース2内の底面には、凹曲面が形成される。ケース2の底面には、複数の受けボール3が敷き詰められ、その上にメインボール4が配置される。ケース2の底面には、円環状の球面受部5が形成される。球面受部5は、受けボール3上に配置されたメインボール4の中心部を中心とした球面となるように形成される。また、球面受部5以外の底面においては、メインボール4の中心部から球面受部5までの距離に比べて、メインボール4の中心部からの距離が大きくなるように形成される。したがって、円環状の球面受部5においてメインボール4が受けボール3で支持され、球面受部5以外の底面においては、メインボール4と受けボール3との間に隙間が生じる。
【0003】
この搬送用ボールユニット1は、コンベアを構成する部品として用いられる。そして、コンベアを構成する搬送用ボールユニット1のメインボール4上に搬送物が載置され、メインボール4が回転することにより搬送物が搬送される。ここで、ケース2の底面に、円環状の球面受部5が形成されていない場合、メインボール4はケース2の底面の中央部およびその近傍において、受けボール3に支持される。このような搬送用ボールユニットの場合、搬送物の荷重は、メインボールを介して、主としてケースの底面の中央部およびその近傍の受けボールに加わる。そのため、少数の受けボールでメインボールを支持することとなり、それぞれの受けボールにかかる荷重が大きくなる。それにより、メインボールの回転性が悪くなり、搬送用ボールユニットの耐荷重性も小さくなる。
【0004】
それに対して、図9に示すような搬送用ボールユニット1の場合、ケース2の底面において、円環状の球面受部5でメインボール4が受けボール3に支持されるため、多数の受けボール3でメインボール4が支持される。そのため、それぞれの受けボール3にかかる荷重が小さくなり、メインボール4の回転性が良好で、耐荷重性の大きい搬送用ボールユニットを得ることができる(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−240924号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図9に示す搬送用ボールユニットの場合、搬送物の搬送はスムーズに行なうことができるが、搬送物を途中で静止させることが困難である。ところが、たとえば搬送物を別の工程に移す場合などのように、搬送物を静止させて持ち上げたい場合などがある。また、搬送途中の搬送物に加工を施す場合、搬送物を静止させる必要がある。
【0007】
それゆえに、この発明の主たる目的は、搬送物をスムーズに搬送することができ、かつ搬送物を静止させることができる搬送用ボールユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、底面の形状が凹曲面である受け部材と、受け部材内において底面の上に配置される複数の受けボールと、複数の受けボールの上に配置されるメインボールと、メインボールの一部が露出するようにしてメインボールを保持するために受け部材に取り付けられる蓋部材とを含み、受け部材の底面中央部を中心とする円環状の底面部分がメインボールの中心部を中心とした球面となるように形成されることにより、円環状の底面部分において受けボールがメインボールからの荷重を受けるようにした搬送用ボールユニットであって、受け部材の底面からメインボールに向かって往復移動可能に形成され、メインボールに押し付けられることによってメインボールの回転を抑止する制動部材を備えた、搬送用ボールユニットである。
このような搬送用ボールユニットにおいて、メインボールの中心部から円環状の底面部分を除く受け部材の底面までの距離が、メインボールの中心部から円環状の底面部分までの距離より大きく形成され、円環状の底面部分の内側における受け部材の底面の中央部において制動部材がメインボールに向かって往復移動する構成とすることができる。
【0009】
受け部材の底面において、円環状の底面部分でメインボールが受けボールに支持されることにより、メインボールにかかる荷重が、円環状の底面部分に配置された多数の受けボールに分散される。そのため、メインボールの回転性が良好で、耐荷重性に優れた搬送用ボールユニットを得ることができる。さらに、受け部材の底面からメインボールに向かって往復移動可能な制動部材が形成され、制動部材がメインボールに押し付けられると、メインボールが制動部材とケースとで挟み込まれる。それにより、メインボールと制動部材との間およびメインボールと蓋部材との間に摩擦力が働き、メインボールの回転は抑止される。
このような搬送用ボールユニットにおいて、円環状の底面部分以外の部分においては、受けボールとメインボールとが接触しないようにすることにより、メインボールが回転したときに受けボールが循環移動できる領域が確保される。それにより、受けボールが円環状の底面部分に常に供給され、メインボールの回転がスムーズに行なわれる。また、円環状の底面部分の内側における受け部材の底面の中央部において、制動部材がメインボールに向かって往復移動することにより、メインボールを支持する円環状の底面部分の中央部でメインボールに制動部材が押し付けられる。この制動部材によって、メインボールは、安定した状態で蓋部材に押し付けられ、確実に回転が抑止される。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、円環状の底面部分でメインボールが多数の受けボールに支持されることにより、メインボールの回転性が良好で、耐荷重性の良好な搬送用ボールユニットを得ることができる。さらに、制動部材によってメインボールの回転が抑止されるため、搬送途中の搬送物を静止させることができる搬送用ボールユニットとすることができる。
【0011】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の発明を実施するための最良の形態の説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、この発明の搬送用ボールユニットの一例を示す斜視図である。搬送用ボールユニット10は、たとえば円柱状の外形を有するケース12を含む。ケース12は、図2および図3に示すように、受け部材14を含む。受け部材14の内面には、図4に示すように、略球面状の凹曲面を有する底面部16が形成される。受け部材14の底面部16には、複数の小径の受けボール18が敷き詰められ、その上に大径のメインボール20が配置される。
【0013】
受け部材14の底面部16において、底面部16の中央部を中心とする円環状の底面部分16aが、メインボール20の中心部を中心とする球面状に形成される。この球面の直径は、メインボール20の半径と受けボール18の直径との合計となるように形成される。この円環状の底面部分16aは、図5に示すように、メインボール20の中心部と底面部16の中央部とを結ぶ線に対して、メインボール20の中心部における角度がたとえば30°〜60°の範囲に形成される。
【0014】
この円環状の底面部分16aに対して、底面の中央部側16bおよび開口部側16cにおいては、メインボール20の中心部を中心とする球面より大きい曲率を有する曲面となるように形成される。そのため、円環状の底面部16aの両側において、メインボール20の中心から引いた線に対して約90°の角度となるように、底面の中央部側16bおよび開口部側16cの曲面が形成される。したがって、円環状の底面部分16aにおいて、受けボール18がメインボール20からの荷重を受け、底面の中央部側16bおよび開口部側16cにおいては、受けボール18とメインボール20とが離れた状態となる。
【0015】
さらに、受け部材14には、底面部16の反対側に、軸部22が形成される。軸部22は、受け部材14の底面部16形成部の外径より小さい外径となるように形成される。この軸部22の外周部には、雄ねじ部24が形成される。また、軸部22の内部には、2つの空洞部26,28が形成される。ここで、開口部側の空洞部26の内径が大きく、底面部16側の空洞部28の内径が小さくなるように形成される。さらに、空洞部28から底面部16の中央部に貫通するように、貫通孔30が形成される。貫通孔30の内径は、空洞部28の内径より小さくなるように形成される。
【0016】
また、受け部材14の底面部16形成部の外周部においては、受け部材14を一周するようにして凹溝32が形成される。凹溝32の近傍において、受け部材14の外周の対向部に、2つの平面部34が形成される。
【0017】
さらに、受け部材14上には、ケース12を構成する蓋部材36が取り付けられる。蓋部材36においては、受け部材14の外周面に沿って壁部36aが形成され、壁部36aからメインボール20に向かって円環状の天面部36bが形成される。この天面部36bの中央部に形成された開口部からメインボール20の一部が露出し、天面部36b上に一部が突出するようにしてメインボール20が保持される。壁部36aの内面には段差部36cが形成され、この段差部36cが受け部材14の上端部に載置される。
【0018】
また、受け部材14の凹溝32に対応する位置において、蓋部材36の内周面を一周するようにして、凹溝38が形成される。蓋部材36は、受け部材14に被せられて、段差部36cが受け部材14の上端部に載置される。この状態において、受け部材14の凹溝32および蓋部材36の凹溝38にスナップリング40を嵌め込むことにより、受け部材14と蓋部材36とが一体化され、ケース12が形成される。
【0019】
受け部材14の軸部22には、たとえば円柱状の外形を有する外装材42が取り付けられる。外装材42の内部には、図6に示すように、その一方側に開口した空洞部44が形成される。空洞部44が形成された外装材42の内面には、雌ねじ部46が形成される。この雌ねじ部46は、軸部22の雄ねじ部24をねじ込むことができるように形成される。この雌ねじ部46の開口部側端部には、内径が大きくなった大径部48が形成される。
【0020】
さらに、外装材42の他方側には、空洞部44に連通する貫通孔50が形成される。貫通孔50の内径は、空洞部44の内径より小さくなるように形成される。貫通孔50が形成された外装材42の内面には、雌ねじ部52が形成される。また、貫通孔50を挟むようにして、外装材42の他方側端面に、2つの有底穴54が形成される。さらに、外装材42の外周面には、雄ねじ部56が形成される。この外装材42の雌ねじ部46に、軸部22の雄ねじ部24がねじ込まれる。このとき、大径部48に、Oリング58がはめ込まれる。
【0021】
軸部22内の空洞部26,28には、制動部材60が挿入される。制動部材60は、図7に示すように、円柱状の押圧部62を含み、その一端側62aはメインボール20の曲率に合わせて凹面状に形成される。また、押圧部62の他端側側面には、間隔を隔てて、2つのフランジ部64a,64bが形成される。したがって、これらのフランジ部64a,64bの間に、溝66が形成される。
【0022】
この制動部材60の押圧部62が、軸部22の底面部16側の空洞部28内に配置され、フランジ部64a,64bが、軸部22の開口部側の空洞部26内に配置される。このとき、押圧部62は、貫通孔30を通して、メインボール20の近傍まで延びるように配置される。押圧部62の周囲には、コイルばね68が装着され、溝66にOリング70がはめ込まれる。したがって、コイルバネ68によって、制動部材60は、メインボール20から離れるように付勢される。
【0023】
搬送用ボールユニット10は、Oリング58,70やコイルばね68を除いて、たとえばポリアセタール樹脂などの機械的強度が大きく、変形の小さい材料で形成される。もちろん、これらは、ポリアセタール樹脂以外の材料、たとえば金属材料などで形成されてもよい。また、コイルばね68は、たとえばステンレス鋼などによって形成される。
【0024】
この搬送用ボールユニット10は、たとえばコンベア用として用いられる。この場合、複数の搬送用ボールユニット10が並べて配置される。コンベアのベースとなる部分への搬送用ボールユニット10の取り付けは、外装材42の雄ねじ部56によって行なうことができる。さらに、外装材42の貫通孔50には、圧縮空気を送るための配管材が取り付けられる。配管材の取り付けは、外装材42の雌ねじ部52へのねじ込みによって行なわれる。
【0025】
搬送物を搬送する際には、複数の搬送用ボールユニット10のメインボール20上に、搬送物が載置される。この状態で、搬送物をいずれかの向きに押すことにより、メインボール20が回転して、小さい力で搬送物を搬送することができる。このとき、受けボール18が回転することにより、メインボール20がスムーズに回転する。メインボール20の回転に伴って、図8に示すように、受けボール18はメインボール20の回転方向に向かって移動する。なお、図8においては、制動部材60の押圧部62で受けボール18の移動が遮断されているように見えるが、実際には、押圧部62の周囲を通って、受けボール18が移動する。
【0026】
受けボール18の移動により、メインボール20の一方側においては、受けボール18が天面部36b側に向かって上昇し、他方側においては、受けボール18が制動部材60側に向かって下降する。そして、メインボール20の一方側において上昇した受けボール18が、壁部36aとメインボール20との間を通って、メインボール20の他方側に移動する。このように、受けボール18は、メインボール20の回転により一定の流れで循環し、メインボール20の回転を保つように働いている。
【0027】
この搬送用ボールユニット10では、受け部材14の円環状の底面部分16aで多数の受けボール18がメインボール20を支持しているため、底面中央部において受けボールがメインボールを支持する搬送用ボールユニットに比べて、個々の受けボール18が負担する荷重が小さくなり、スムーズにメインボール20を回転させることができる。したがって、搬送用ボールユニット10上に載置された搬送物を小さい力で移動させることができる。なお、円環状の底面部分16a以外の底面部分16b,16cでは、受けボール18がメインボール20から離れた状態であるため、受けボール18の移動が自由に行なわれる。したがって、メインボール20の回転に伴う受けボール18の循環が良好に行なわれ、メインボール20の回転性も良好なものとなる。
【0028】
この搬送用ボールユニット10において、貫通孔50に取り付けられた配管材から圧縮空気を送り込むことにより、制動部材60が移動し、押圧部62の一端側62aがメインボール20に押し付けられる。押圧部62がメインボール20に押し付けられることにより、メインボール20は、蓋部材36の天面部36bの縁部に押し付けられる。それにより、押圧部62の一端側62aとメインボール20との間、およびメインボール20と蓋部材36の天面部36bの縁部との間に摩擦力が働き、メインボール20の回転は抑止される。したがって、コンベア上に載置された搬送物は静止状態となり、搬送物を別の工程に移し変えたり、搬送物に加工を施したりすることができる。ここで、制動部材60の押圧部62が受け部材14の底面部16の中央部からメインボール20に押し付けられることにより、メインボール20は蓋部材36の天面部36bの縁部全体に均一に押し付けられる。それにより、メインボール20は、安定して静止状態を保つことができる。
【0029】
搬送物の処理が終わると、制動部材60に向かって送り込まれた圧縮空気を抜くことにより、コイルばね68の力で制動部材60は元の位置に戻る。それにより、押圧部62はメインボール20から離れ、メインボール20はスムーズに回転できるようになる。
【0030】
このように、この搬送用ボールユニット10では、メインボールがスムーズに回転して、小さい力で搬送物を搬送することができるとともに、必要な場合においては、搬送物を静止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明の搬送用ボールユニットの一例を示す斜視図である。
【図2】図1に示す搬送用ボールユニットの内部構造を示す図解図である。
【図3】図1に示す搬送用ボールユニットの底面図である。
【図4】図1に示す搬送用ボールユニットに用いられる受け部材を示す図解図である。
【図5】図4に示す受け部材の底面の形状を示す図解図である。
【図6】図1に示す搬送用ボールユニットに用いられる外装材を示す図解図である。
【図7】図1に示す搬送用ボールユニットに用いられる制動部材を示す図解図である。
【図8】図1に示す搬送用ボールユニットを使用するときの受けボールの動きを説明するための図解図である。
【図9】従来の搬送用ボールユニットの一例を示す図解図である。
【符号の説明】
【0032】
10 搬送用ボールユニット
12 ケース
14 受け部材
16 底面部
18 受けボール
20 メインボール
36 蓋部材
42 外装材
60 制動部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面の形状が凹曲面である受け部材、
前記受け部材内において前記底面の上に配置される複数の受けボール、
複数の前記受けボールの上に配置されるメインボール、および
前記メインボールの一部が露出するようにして前記メインボールを保持するために前記受け部材に取り付けられる蓋部材を含み、
前記受け部材の底面中央部を中心とする円環状の底面部分が前記メインボールの中心部を中心とした球面となるように形成されることにより、前記円環状の底面部分において前記受けボールが前記メインボールからの荷重を受けるようにした搬送用ボールユニットであって、
前記ケースの底面から前記メインボールに向かって往復移動可能に形成され、前記メインボールに押し付けられることによって前記メインボールの回転を抑止する制動部材を備えた、搬送用ボールユニット。
【請求項2】
前記メインボールの中心部から前記円環状の底面部分を除く前記受け部材の底面までの距離が、前記メインボールの中心部から前記円環状の底面部分までの距離より大きく形成され、前記円環状の底面部分の内側における前記受け部材の底面の中央部において前記制動部材が前記メインボールに向かって往復移動する、請求項1に記載の搬送用ボールユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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