説明

搬送用ボールユニット

【課題】取付体に対する着脱を容易にし得る搬送用ボールユニットを提供する。
【解決手段】ストッパ24は、受け部材16のフランジ部16Bに配置される基部26と、この基部26から直交方向へ延設される延長部30と、この延長部30から基部26へ斜状に折返される係止部32とを備える。この係止部32は、延長部30に対して略V状に屈曲され、係止部32に荷重が加わった場合に反力および付勢力が発生する。そして、ストッパ24の係止部32を取付孔W1内に嵌め込むのみで、ユニット10は係止部32の付勢力によって取付板Wへ固定される。一方、取外しは、係止部32の付勢力に抗して、係止部32を取付孔W1から押出す又は引抜くのみである。即ち、ユニット10は、取付体Wに対する着脱が容易になるので、迅速かつ簡易な着脱作業となって作業効率が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被搬送物を搬送する搬送面に配置される搬送用ボールユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、搬送用ボールユニットを取付体に装着する機構が示されている。例えば、搬送用ボールユニットのフランジ部には、ボルトなどを通すための複数の孔が形成されている(段落番号「0017」参照)。そして、特許文献1には、これらの孔にボルトを通して台車などに搬送用ボールユニットを取り付けてもよい(段落番号「0021」参照)と記載されている。即ち、搬送用ボールユニットを台車などの取付体に取付ける機構は、ボルトなどを用いて取付体へ締結し、固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−119850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1では、搬送用ボールユニットをボルトで取付体へ締結するのに、複数本のボルト及びこれらの取付孔の加工(具体的にはタップ加工)が要することになると共に、装着時などの作業が煩雑になる。即ち、搬送用ボールユニットを着脱するには、締結工程という手間を要するので、着脱作業の効率が良くなかった。そのため、この作業効率を高める必要性が生じる。
【0005】
本発明の目的は、取付体に対する着脱を容易にし得る搬送用ボールユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、被搬送物を搬送する搬送面に配置される搬送用ボールユニットにおいて、上記被搬送物に点接触するボールのケースと、上記ケースに配置され、且つ上記搬送面に取付ける取付体の取付孔へ嵌め込み付勢力で係止させるストッパと、を備えることを特徴とする。なお、本発明に係るストッパは、その基端がケース下部に取付けられると共に断面略く字状に延設され、この屈曲部を取付孔に挿通させた状態で、屈曲部が取付体の裏面に対向して係止し得るタイプを含む概念である。
【0007】
ここで、上記ストッパは、上記取付孔の周壁へ付勢し圧接する係止部を備えるようにしても良い。また、上記ストッパは、上記ケースに装着される基部と、この基部から直交方向へ延設される延長部と、この延長部から上記基部へ斜状に折返される係止部とを備え、この係止部の先端付近が上記取付孔の周壁へ付勢し圧接させても良い。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、取付体の取付孔へ嵌め込み付勢力で係止させるストッパがケースに配置されているので、ストッパを取付孔へ嵌め込むのみで搬送用ボールユニットを取付体に装着し得る。一方、取外す際も、ストッパの付勢力に抗してストッパを取付孔から押出す又は引抜くのみで、搬送用ボールユニットが取付体から離脱し得る。即ち、本発明によれば、搬送用ボールユニットは取付体に対する着脱が容易になるので、迅速かつ簡易な着脱作業となって作業効率が向上する。また、本発明によれば、従来と異なり、複数本のボルト等の締結部材及び取付孔の加工(具体的にはタップ加工)が不要になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る一実施例の搬送用ボールユニットの正面図である。
【図2】図1に示す搬送用ボールユニットの端面図である。
【図3】図1に示すストッパの底面図である。
【図4】図3に示す4−4線の断面図である。
【図5】図1に示す搬送用ボールユニットの取付状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について、具体化した一実施例を説明する。
【実施例1】
【0011】
以下、図1乃至図4に基づいて、本発明の一実施例である搬送用ボールユニットについて説明する。本実施例に係る搬送用ボールユニット10は、図1に示すように、主ボール12と、この主ボール12を回転自在に支持するケース14と、このケース14に配置されるストッパ24を備える。ケース14は、図2に示すように、主ボール12を受ける受け部材16と、この受け部材16の蓋となる蓋部材18を備える。この蓋部材18及び受け部材16の間には、仕切り部材20が配置される。
【0012】
図1に示すように、外形略半円状の受け部材16は、平面円盤状の平板を略球面状の曲面凹設したもので、その凹部16Aとフランジ部16Bを備える(図2参照)。そして、図2に示すように、凹部16Aの内面には、主ボール12よりも小径な受けボール22が、複数敷き詰められている。これらの受けボール22上には、主ボール12が回転自在に配置される。なお、フランジ部16Bは、主ボール12の略中心の高さ位置となっている。
【0013】
蓋部材18は、受け部材16の肉厚よりも薄い平面円盤状の略平板であり、その中心部に円形の孔18Aが形成されている。また、蓋部材18は、その孔18Aを形成する端部が、主ボール12の外周面に沿うよう受け部材16の凹部16Aと反対方向へ屈曲されている。そのため、主ボール12は、その一部が孔18Aから突出(「露出」と同義)すると共に、蓋部材18の端部により主ボール12の脱離が制限される。なお、孔18Aを形成する端面は、主ボール12から若干離間している。
【0014】
仕切り部材20は、蓋部材18の肉厚よりも薄い平面円盤状の平板であり、その中心部に円形の孔20Aが形成されている。この孔20Aを形成する端面は、主ボール12から若干離間している。そして、主ボール12、ケース14及び受けボール22は、鋼鉄などの金属で成型される。なお、これらのボール保持機構は従来の機構と略同様であるので、これ以上の詳述は省略する。
【0015】
(ストッパ24に関する構成)
図3及び図4に示すように、ストッパ24は、受け部材16のフランジ部16B(図2参照)に配置される基部26と、この基部26から直交方向へ延設される延長リブ部28と、この延長リブ部28から更に延設される複数の延長部30と、この延長部30から基部26へ斜状に折返される係止部32とを備える。即ち、係止部32は、延長部30に対して略V状に屈曲され、係止部32に荷重が加わった場合にその反力が延長部30側へ作用する。なお、ストッパ24は、熱処理を施した鋼板で構成されている。
【0016】
基部26は、平面円盤状の平板で、その中心に孔26Aが形成されている。基部26の幅は、図2に示すように、受け部材16のフランジ部16Bと略同一の幅になっている。そして、基部26はフランジ部16Bに当接する状態で、ストッパ24が搬送用ボールユニット10に固定される。ここで、搬送用ボールユニット10は、上から蓋部材18、仕切り板20、受け部材16及びストッパ24の順に配置され、蓋部材18の外周端部を折曲げて固定している。即ち、搬送用ボールユニット10は、基部26の外周端部、受け部材16の外周端部および仕切り板20の外周端部を重ね合わせた状態で、蓋部材18の外周端部をコ字状に挟み込み折曲げる。
【0017】
図4に示すように、延長リブ部28は、基部26の内周端縁から全周に亘り垂下し、延長部30の強度を補強している。4本の延長部30は、上記反力のバランスを図るために90度の角範囲をもって延長リブ部28から垂下している(図3参照)。ここで、本発明に係る延長部は、延長部30の他に、延長リブ部28をも含む概念である。なお、延長リブ部28および延長部30の各高さは、略同一となっている。また、図4に示すように、延長部30は、その幅L1が係止部32の幅L2よりも幅広となっており、係止部32からの反力を抗するようになっている。更に、図2に示すように、延長リブ部28及び延長部30の長さは、フランジ部16Bから凹部16Aまでの長さよりも、短くなっている。
【0018】
(本実施例の作用)
引続き、搬送用ボールユニット10を取付体Wに装着する手順について、図5に基づき説明する。ここで、取付体Wは、図5に示すように、被搬送物40を搬送する搬送面Gに配置され、この搬送面Gの適宜箇所に複数の搬送用ボールユニット10を装着する。取付体Wは、例えば平板状となっており、その適宜箇所には丸穴の取付孔W1が形成されている。そして、取付孔W1の孔径L3は、荷重が加わっていない状態(図4に示す状態)における対向する係止部32同士の先端間隔L4よりも若干小径となっている。なお、取付体Wは、例えば作業台などの搬送面G(図5の1点鎖線参照)に配置される。
【0019】
まず、搬送用ボールユニット10を取付体Wに装着するには、凹部16Aが取付孔W1に向くよう対向させる。次に、ストッパ24の延長部30先端を取付孔W1内に挿入し、ストッパ24の係止部32を取付孔W1に嵌め込む。この際、無負荷状態(図1乃至図4に示す状態)の係止部32は、その先端間隔L4が孔径L3よりも径大となっているので、嵌め込まれる係止部32が延長部30及び延長リブ部28側に向かって撓る(図5参照)。即ち、係止部32は、取付孔W1の周壁に対し制限を受けるので、その反力が延長部30、延長リブ部28及び基部26に作用する。一方、係止部32は、その弾性復帰力(以下、単に「付勢力」ともいう)によって、取付孔W1の周壁側へ付勢し押圧する。
【0020】
そして、この付勢力に抗して搬送用ボールユニット10を取付孔W1側へ押圧すると、図5に示すように、係止部32は延長リブ部28及び延長部30側へ近接する。搬送用ボールユニット10の装着完了状態は、蓋部材18の外周端部(図2参照)における面が、取付体Wの表面に当接する状態で位置決めされる。一方、図5に示すように、係止部32は、その先端が取付孔W1の周壁に圧接しているので、延長リブ部28及び延長部30側へ近接した状態で保持される。
【0021】
即ち、この装着完了状態では、係止部32の付勢力が常に取付孔W1の周壁を付勢し押圧するので、搬送用ボールユニット10が取付体Wに固定される。ここで、図5に示すように、延長部30及びこれに対応する受け部材16の凹部16Aは、取付体Wの下面から突出している。この場合、延長リブ部28及び延長部30の長さが、フランジ部16Bから凹部16Aまでの長さよりも短くなっているので、例えば取付体Wにおける凹高さは凹部16Aを基準にすれば良く、ストッパ24を考慮しなくても良い。
【0022】
搬送用ボールユニット10は、例えばコンベア用レールに複数個が並べて配置される。即ち、図5に示すように、取付体Wが例えば作業台などの搬送面Gに配置される状態では、鋼板などの被搬送物40(図5の2点鎖線参照)が主ボール12上に載置される。そして、被搬送物40を押すと、被搬送物40に点接触している主ボール12が、回転して搬送物を搬送する。ここで、主ボール12は、受けボール22が回転することで、あらゆる方向へスムーズに回転する。なお、被搬送物40の搬送時には、被搬送物40が主ボール12を介して、搬送用ボールユニット10を取付体W側へ押付ける。
【0023】
一方、搬送用ボールユニット10を取付体Wから取外すには、係止部32の付勢力に抗して、搬送用ボールユニット10を押出す又は引抜くと、係止部32が取付孔W1から離脱する。即ち、取外す際も、係止部32の付勢力に抗して係止部32を取付孔から押出す又は引抜くのみで、搬送用ボールユニット10が取付体Wから離脱する。
【0024】
ここで、係止部32が取付孔W1から離脱すると、図1乃至図4に示すように、係止部32は荷重が加わっていない無負荷状態(「初期状態」と同義)に復帰する。即ち、本実施例において、搬送用ボールユニット10は、取付体Wに対する着脱が容易になるので、迅速かつ簡易な着脱作業となって作業効率が向上する。また、本実施例によれば、従来と異なり、複数本のボルト等の締結部材及び取付孔の加工(具体的にはタップ加工)が不要になる。
【0025】
なお、本実施例のボール保持機構などは、主ボール12が回転できれば、適宜変更し得る。また、本実施例では、ストッパ24をケース14に装着する構成および係止部32の本数などは適宜変更し得る。更に、本発明に係るストッパは、その基端がケース下部に取付けられると共に断面略く字状に延設され、この屈曲部を取付孔に挿通させた状態で、屈曲部が取付体の裏面に対向して係止し得るタイプを含む概念である。
【符号の説明】
【0026】
10…搬送用ボールユニット、12…主ボール、14…ケース、24…ストッパ、26…ストッパの基部、30…延長部、32…係止部、40…被搬送物、W…取付体、W1…取付孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送物を搬送する搬送面に配置される搬送用ボールユニットにおいて、
上記被搬送物に点接触するボールのケースと、
上記ケースに配置され、且つ上記搬送面に取付ける取付体の取付孔へ嵌め込み付勢力で係止させるストッパと、
を備えることを特徴とする搬送用ボールユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送用ボールユニットにおいて、上記ストッパは上記取付孔の周壁へ付勢し圧接する係止部を備えることを特徴とする搬送用ボールユニット。
【請求項3】
請求項1に記載の搬送用ボールユニットにおいて、上記ストッパは上記ケースに装着される基部と、この基部から直交方向へ延設される延長部と、この延長部から上記基部へ斜状に折返される係止部とを備え、この係止部の先端付近が上記取付孔の周壁へ付勢し圧接することを特徴とする搬送用ボールユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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