説明

搬送用ローラ

【課題】 簡便な構成で鋼板を常に好適な状態で搬送可能な搬送用ローラを提供すること。
【解決手段】 筒状のローラ体2と、ローラ体2の内周側に設けられる軸体3とを備えた搬送用ローラ1であって、ローラ体2と軸体3とが、ローラ体2の内周側と軸体3との間で弾性変形する1以上のハブ4により連結されていることを特徴とする。これにより、鋼板などの被搬送物の搬送の繰り返しによる熱サイクルによっても、ハブ4が弾性変形することにより、軸体3とローラ体2との膨張収縮の差を吸収することが可能であり、軸体3とローラ体2との間での固定に緩みを生じることがなく、長期間にわたって被搬送物を好適な状態で搬送することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば熱間圧延ライン等における鋼板の搬送等に用いる、搬送用ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
筒状のローラ体を軸部材によって軸支した構成の搬送用ローラは、種々の産業分野で広く用いられている。搬送ローラの例として、例えば1000℃以上の高温にまで加熱されて圧延された直後の鋼板または線材を、次の製品加工ラインや保管場所へ搬送する搬送用ローラがある。
【0003】
図8は、複数の搬送用ローラが用いられる熱間圧延ラインにおける、鋼板等の搬送の様子を模式的に示す図である。図8に示すように、熱間圧延ラインには複数の搬送用ローラ41が設置されている。熱間圧延直後の鋼板42は、搬送用ローラ41上に載置され、不図示の回転駆動機構の駆動により回転軸43を回転させて、回転軸43に連結された搬送用ローラ41を回転させる。これにより、鋼板42が図示した矢印方向の先にある次の製品加工ラインや保管場所へ搬送される。
【0004】
この搬送用ローラ41には金属製ローラが用いられてきたが、金属製ローラは鋼板42との摩擦により磨耗しやすく、また耐熱性に劣る。このため、近年、高い耐磨耗性と耐熱性とを備えたセラミック製ローラの使用が提案されている。
【0005】
図9は、下記特許文献1に記載された、従来の搬送用ローラの一例について示す図である。特許文献1に開示されている搬送用ローラは、中空円筒体であるセラミック製スリーブ101と金属製スリーブ102とを交互に嵌め、これらを両端から弾性部材を介して金属製締結部材で挟着している。特許文献1の搬送用ローラでは、セラミック製スリーブの端面を金属製スリーブの端面および金属締結部材の端面に当接させ、各部材で挟むことによってセラミック製スリーブの位置を固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−169462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の搬送用ローラでは、セラミック製スリーブの位置を固定する金属製スリーブの熱膨張係数が比較的大きいため、セラミック製スリーブと金属製スリーブとの間隔を比較的大きくしておかねば、金属製部材の熱膨張によってセラミック製スリーブが破損する問題があった。また、この間隔を比較的大きくした場合、この間隔の範囲でセラミック製スリーブが自由に移動する。この場合、セラミック製スリーブと軸体との摺動が発生し易く、セラミック製スリーブの削れカス等が発生し、搬送する鋼板の表面に傷等を生じさせるおそれもあった。本発明は、上記課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、筒状のローラ体と、該ローラ体の内周側に設けられる軸体とを備えた搬送用ローラであって、前記ローラ体と前記軸体とを連結する連結体を備え、前記連結体は、前記軸体に対して固定された固定部と、前記固定部から前記ローラ体の内周面に向けて突出して前記ローラ体と当接した突出部と、を有し、前記突出部の少なくとも一部は、前記ローラ体および前記軸体の双方に比べて弾性率がより大きいことを特徴とする搬送用ローラを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の搬送用ローラによれば、長期間にわたって被搬送物を安定した状態で搬送することができる。また、ローラ体と軸体とをその間に中空部を有した状態で係合させることが可能となるため、搬送用ローラ全体を軽量化でき、搬送時に搬送用ローラを回転させる動力源のエネルギー消費量を低減させ、より効率的に被搬送物を搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一形態に係る搬送用ローラを模式的に示す図であり、(a)は軸方向に対し垂直に切断した様子を示す断面図であり、(b)は(a)におけるA部の拡大断面図である。
【図2】本発明の一形態に係る搬送用ローラを構成するハブの一例を示す正面図である。
【図3】本発明の一形態に係る連結体の変形状態について説明する図であり、(a)は変形の過程を示す断面図、(b)は変形体における弾性変形エネルギーの大きさと、変位量Xとの関係を示すグラフである。
【図4】本発明の搬送用ローラの他の実施形態について説明する概略断面図である。
【図5】(a)および(b)は各々、本発明の搬送用ローラの他の実施形態について説明する概略断面図である。
【図6】本発明の搬送用ローラが備える連結体の、他の実施形態について説明する概略正面図である。
【図7】本発明の搬送用ローラの他の実施形態について説明する概略断面図である。
【図8】鋼板や鉄鋼線材等の次工程への搬送の様子を模式的に示す概略斜視図である。
【図9】従来の搬送用ローラの一形態を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一形態に係る搬送用ローラについて、模式的に示す図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る搬送用ローラの一実施形態について説明する概略断面図であり、(a)は本実施形態の搬送用ローラ全体の断面図、(b)は、(a)に示す一部分を拡大して示す図である。図1(a)は、後述する軸体3の中心軸を含む平面に沿って切断した際の断面図である。また、図2は、図1に示すX―X´線で切断した際の断面図を示している。
【0013】
図1(a)に示すように、搬送用ローラ1は、少なくとも外周面がセラミックスとされた筒状のローラ体2と、このローラ体2の内周側に設けられた、例えば金属製の軸体3とを備えて構成されている。ローラ体2と軸体3とは、ローラ体2の内周側と軸体3との間で弾性変形する1以上のハブ4により連結されている。
【0014】
軸体3は、中心軸Cに沿った中央部分の外径に比べて、中心軸Cに沿った外側部分の外径の方が、より小さくされており、図示のように小径部3bと大径部3aとを有している。ハブ4は、軸体3の、大径部3aの垂直面(軸体3の中心軸に垂直な面)に当接している。
【0015】
ハブ4は、本発明の連結体に対応し、固定部12と、突出部14と、を備えている。ハブ4は、環状部分4aと、環状部分4aからローラ体2の内周面に向けて突出してローラ体2と当接した脚部分4cと、を供えた板状部材で構成されている。固定部12は、環状部分4aと脚部分4cの一部とで構成され、突出部14は、脚部分4cの一部で構成されている。ハブ4は、例えば、炭素鋼やステンレス鋼等の金属や、いわゆるバネ鋼等で構成されていてもよい。
【0016】
なお、ローラ体2は、高温の鋼板または鉄鋼等の線材と直接接触することがあるために、少なくともその外側を、耐熱性に優れ、鋼板や線材との耐磨耗性に優れるセラミックスにより構成されている。具体的には、アルミナ,炭化珪素,窒化珪素,ジルコニアを主成分とするセラミックスを用いるのがよい。特に、窒化珪素は、比重が小さく軽量で高強度であり、熱膨張係数も低く、繰り返し高温の鋼板等を搬送した場合にも亀裂や破損を生じることがなく、各種金属との耐磨耗性にも優れている。このため、窒化珪素を主成分とするセラミックスによりローラ体2の外側表面を構成すれば、優れた耐久性を有する搬送用ローラ1とすることができる。また、ローラ体2の全体を窒化珪素を主成分とするセラミックスにより構成すれば、軽量化が図れるのでより好適である。
【0017】
また、軸体3およびハブ4については、ローラ体2のようにとりたてて優れた耐磨耗性や耐熱性が要求される訳ではないので、一般的な炭素鋼やステンレス鋼等の金属を用いればよい。熱膨張差を考慮した場合、軸体3とハブ4とは同材質のものを用いるのがより好適であるが、ハブ4については、弾性変形し易いバネ鋼を用いてもよい。
【0018】
図1に示す実施形態において、ハブ4はローラ体2の両端部近傍に各々設けられている。両端部に設けられた2つのハブ4各々の脚部4cは、屈曲部4Aを備えている。図1(a)に示す断面図に示すように、脚部4cは屈曲部4Aにおいて、軸体3からローラ体2の内周面に近づくにつれて、軸体3の中心軸に沿ってローラ体2の外側に向かう方向に屈曲している。図1(b)に示すように、屈曲部4Aは部分的に薄肉化されており、脚部4cの他の部位に比べて、曲げ強度がより低く(屈曲し易く)なっている。
【0019】
図1(a)に示す実施形態では、ハブ4は、ハブ4の環状部4aと当接した、軸体3の上記垂直な面と、脚部4cの一部に当接した締結部材5によって、軸体2の中心軸方向に沿って挟持された状態で、軸体3に装着されている。
【0020】
なお、搬送用ローラ1では、ハブ4の環状部4aと軸体3とが互いにネジ締結されている。軸体3の先端部から、ハブ4の設置箇所まで雄ネジ部を設け、かつハブ4の貫通孔4e内周部に軸体3に設けた雄ねじ部に対応した雌ネジ部を設け、両者をネジ締結させることにより、軸体3へのハブ4の取り付けを容易に実現させることが可能となる。
【0021】
係る構成の搬送用ローラは、例えば、ハブ4の脚部4cを屈曲部4Aから屈曲させ、ハブ4の全体の外径をローラ体2の内周より小さくした状態で、ローラ体2の内周側にハブ4を配置した後に、屈曲した脚部4cを締結部材5によって押し広げて、ローラ体2と軸体3とを連結した状態でハブ4と軸体3とを固定させて形成することができる。
【0022】
ハブ4は、軸体2の上記垂直面と当接した環状部4aから、脚部4cと締結部材5との当接位置11にかけての部分が、軸体2に対して固定された固定部12となっている。脚部4cの、当接位置11よりも外側の部分は、固定部12から突出して設けられた突出部14となっている。
【0023】
ローラ体3の内周面には、凹部6が設けられている。凹部6は、ハブ4の突出部14の位置に対応して、複数個(図1、図2の例では、内周に沿って4箇所)設けられている。突出部14の先端4fは、この凹部6の内周面に当接するように設けられている。突出部14は、この凹部6の壁面によって、軸体3の軸方向に沿った位置変動や、軸体3の内周面に沿った位置変動が、抑制されている。なお、この凹部6は、例えば、内周面に沿って連続して設けられていてもよく、その個数や形状等について、特に限定されない。凹部6は図示されているように、少なくともローラ体2の一方側に1組あればよい。
【0024】
また、搬送用ローラ1では、環状部4aにおいて、例えば一方の面の貫通孔4eの近傍に位置決め用の溝部4dが形成されている。この溝部4dの形状に略一致する凸部を軸体3に形成しておくことにより、ハブ4を軸体3に対して安定に保持することが可能となる。
【0025】
この突出部14の少なくとも一部は、ローラ体2および軸体3の双方に比べて弾性率がより大きくされている。なお、ローラ体2および軸体3の双方に比べて突出部14の弾性率がより大きいとは、ローラ体2の外周面に外力が作用した場合や、軸体3とローラ体2との熱膨張係数の相違に起因して、軸体3とローラ体2との距離(軸体3の中心軸に垂直な方向に沿った距離)を変動させるような力がかかった場合において、ローラ体2および軸体3の変形量に比べて、突出部4cがより大きく変形する状態をいう。
【0026】
突出部4cの弾性率がより大きいので、搬送用ローラ1で、鋼板などの被搬送物の搬送を繰り返し行っても、熱サイクルにともなう膨張収縮の差を、突出部14の弾性変形によって吸収することが可能となっている。すなわち、熱応力が加わった場合でも、連結体であるハブ4がローラ体2を均一的に内側から支持することができ、軸体3とローラ体2との膨張収縮の差を吸収することが可能である。これにより、軸体3とローラ体2との間での固定に緩みを生じることがなく、長期間にわたって被搬送物の表面を傷つけることなく、長い期間、好適な状態で安定した搬送を実現することが可能となる。
【0027】
さらに、ローラ体2と軸体3とをその間に中空部7を有した状態で係合させることが可能となるため、搬送用ローラ1全体を軽量化でき、搬送時に搬送用ローラ1を回転させる動力源のエネルギー消費量を低減させ、より効率的に鋼板などの被搬送物の搬送を実現できる。
【0028】
また、搬送用ローラ1では、図1(a)に示すように、軸体3の中心軸を含む平面に沿った断面視において、固定部12を通過し、軸体3の中心軸Cに垂直な第1の仮想直線L1と、突出部14(脚部4cの先端側の部分)とローラ体2との当接部を通過し、軸体3の中心軸Cに垂直な第2の仮想直線L2とが、軸体3の長手方向(図1(a)における左右方向)に沿って離間している。
【0029】
搬送用ローラ1では、突出部14の先端である、ローラ体2と突出部14との当接部が、ローラ体2から連結体にかかる力の作用点となっている。第1の仮想直線L1と第2の仮想直線L2とが、軸体3の長手方向に沿ってずれているので、突出部14の固定端である固定部12(仮想直線L1上に位置している)は、ローラ体2と突出部14との当接部にかかる、軸体3の中心軸に垂直な力のベクトルの延長線(仮想直線L2)からずれた状態となっている。このため、ローラ体2と突出部14との当接部に、軸体3の中心軸に垂直な方向の力がかかった場合、突出部14は比較的曲がり易く、熱膨張係数の差に起因した変形量のずれを良好に緩和することができる。
【0030】
また、ハブ4は、軸体3の中心軸Cに沿ってローラ体2の両方の端部に設けられており、各端部に設けられたハブ4それぞれにおいて、第2の仮想直線L2に対し、第1の仮想直線L1がより端側に位置している。例えば、軸体3に対するローラ体2の相対位置を、図1(a)における右方向に沿って距離Xだけずらしてくような力が働いた場合、図1(a)においてより左側に図示されたハブ4は、図3(a)に矢印で示すような過程を経て変形していく。図3(b)では、ハブ4の脚部4cにおける弾性変形エネルギーの大きさと、変位量Xとの関係を示すグラフである。図3(b)に示すように、軸方向に沿った相対位置ずれに対し、ハブ4の突出部4cの弾性エネルギーのポテンシャル障壁が、一時的に大きくなる。図3(b)からも確認できるように、図1に示す搬送用ローラでは、軸体3に対するローラ体2の相対位置を、軸体3の中心軸方向に沿ってずらしてくような力が働いた場合、ハブ4は比較的変形し難くなっている。このため、図1に示す搬送用ローラでは、比較的大きな外力が働いた場合などでも、軸体3とローラ体2との、軸体3の軸方向に沿った位置ずれも抑制されている。
【0031】
図4は、本発明の搬送用ローラの他の実施形態について説明する概略断面図である。図4に示す例では、ハブ4は、軸体3の中心軸Cに沿ってローラ体2の両方の端部に設けられており、各端部に設けられたハブ4それぞれにおいて、第2の仮想直線L2に対し、第1の仮想直線L1がより中央側に位置している。かかる図4に示す実施形態においても、図1と同様、軸体3の中心軸に沿った方向の力に対して、軸体とローラ体との相対位置のずれを良好に抑制することができる。
【0032】
図5(a)および(b)も、搬送用ローラの他の実施形態について説明する概略断面図である。図5(a)に示すように、軸体3のハブ4の設置箇所にハブ4を設置した後、ハブ4を挟んで拘束するように軸体3の軸方向左右から締結部材5を軸体3に締結させれ、軸体3にハブ4を固定してもよい。図5に示す状態では、締結部材5によって締結(挟持)された環状部4aが固定部12、この環状部4aから突出した部分が突出部14に対応する。かかる実施形態では、締結部材5としてナットを用いることにより、より容易に軸体3へハブ4を固定できる。
【0033】
なお、少なくとも2つのナットは、締結方向が互いに逆の少なくとも2つのナットで拘束される構造とする。ナットを軸体3に締結させるには、軸体3のハブ4設置箇所を中心として軸方向左右両側に雄ネジ部を設ける必要があるが、雄ネジ部の加工をナットの締結方向が互いに逆となるようにすれば、ナットの締結によりハブ4を軸方向左右両側から締め付け固定することができ、軸体3へのハブ4の固定をより強固にすることが可能となる。なお、この場合においても、凹部6は図示されているように、少なくともローラ体2の一方側に1組あればよい。
【0034】
さらに、本発明の一形態に係る搬送用ローラ1は、図5(b)に示すように、4以上の多数のハブ4を設置させることも可能である。これにより、ハブ4の脚部4cにかかる荷重を分散させることができるため、より重い被搬送物を搬送することが可能となる。また、ローラ体2の一部、特に被搬送物の搬送時に一番荷重がかかるローラ体2の中央部に亀裂や破損が生じ、ローラ体2が破損箇所を起点に2つに分割される形となった場合にも、分割されたそれぞれのローラ体2の2ヶ所以上の内面をハブ4で支持することができ、搬送用ローラ1の搬送機能を破損と同時に損なうことがない。よって、搬送用ローラ1の破損時にすぐに搬送工程を停止せずに、しばらくは被搬送物の搬送を継続して実施することができ、搬送用ローラの破損に伴う搬送工程の著しい搬送効率低下を抑制することが可能となる。なお、この場合においても、凹部6は図示されているように、少なくともローラ体2の一方側に1組あればよい。
【0035】
図6は、搬送用ローラにおける連結体の、他の実施形態について説明する図である。図6(a)に示すように、連結体として、脚部4cがローラ体2の内周面および回転方向に沿って屈曲された形状のハブを用いてもよい。この場合、図6(a)に示すように、屈曲方向をローラ体2の回転方向に逆らう方向に屈曲させることで、ローラ体2と軸体3との間において、ハブ4を安定して堅固に固定することができる。また、図6(b)に示すように、連結体として、脚部4cの端部4fの近傍に、ローラ体2の内周面に沿って弾性変形しやすいように、交互に切り欠きを2以上設けた構成のものを使用してもよい。
【0036】
なお、各実施形態とも、図7に示す断面図のように、連結体に対応するハブ4は、軸体3の中心軸を含む断面において屈曲せず、略平板状とされえいてもよい。特に、図6(b)に示すように、ローラ体2の内周面に沿って弾性変形し易い構成になっていれば、連結体をローラ体2の内周面に比較的挿入し易く、製造の容易さの観点で好ましい。
【0037】
ローラ体2へのハブ4の挿入については、以下のような方法がある。まず、圧入タイプについて説明する。まず、図1(a)に示すように、ハブ4の貫通孔4eに軸体3の小径部3bを挿入して、軸体3の大径部3aの一方端に(例えば、図示左側)ハブ4を締結部材5で固定する。その後、ハブ4のローラ体2の内周部への圧入により、ローラ体2の内周に形成された凹部6にハブ4の脚部4cを嵌合させる。次に、軸体3の大径部3aの他方端にハブ4を圧入により移動させ、締結部材5で固定することで、ローラ体2と軸体3とをハブ4で連結することができる。なお、凹部6は軸体3の熱膨張を一方側へ(図1(a)の場合、図示右側へ)伸びる方向へスムーズに行わせるために、ローラ体2の少なくとも一方の箇所(1組)へ設けるようにすればよい。
【0038】
次に、伸長タイプのハブ4について説明する。ハブ4の正面図の外形は例えば図6(a)に示す通りであり、上述したように圧入タイプのハブと略同様であるが、主に弾性変形する箇所が環状部4aの近傍の脚部4cの表裏両面に設けた凹部4bを支点とした脚部4cであり、この凹部4bを支点としてハブ4の外形がローラ体2の内径より小さくなるように、予め屈曲させてある。これにより、脚部4cの弾性変形により、ハブ4の外形が広がることができ、ハブ4をローラ体2の内周側に固定することができる。
【0039】
このような伸長タイプのハブ4は、次のようにしてローラ体2の内周側に固定される。まず、図1(a)に示すように、ハブ4の貫通孔4eに軸体3の小径部3bを挿入して、軸体3の大径部3aの一方端に(例えば、図示左側)ハブ4を締結部材5で半固定した後に、ハブ4をローラ体2の内周へ挿入する。締結部材5の締結により、ハブ4の脚部4cを軸体3の大径部3a側へ押圧することにより、凹部4bを支点としてハブ4の外形を広げることによって、ローラ体2の内周に形成された凹部6にハブ4の脚部4cを嵌合させる。次に、同様にして、軸体3の大径部3aの他方端にハブ4を移動させ、締結部材5で固定することで、ローラ体2と軸体3とをハブ4で連結することができる。
【0040】
なお、セラミック製のローラ体2の製作は例えば次のようにして行うことができる。まず予め造粒された窒化珪素2次原料を用意し、これを円筒形状の成形品が得られるゴム型に投入し、静水圧プレス成形装置(ラバープレス装置)を用いて円筒形状に成形する。しかる後、得られた窒化珪素成形体をゴム型から取り出し、外形及び全長決めの為の端面の切削加工を施す。その後、焼成炉に入れて焼成し、焼成後にさらに研削加工を施して、窒化珪素製のローラ体2を得る。そして、その内面に、ハブ4の脚部4c先端部が差し込まれる凹部6を研削加工により形成する。
【0041】
また、軸体3は例えば次のようにして製作する。まず、所定形状のステンレス鋼棒を準備して所定長さを切り出す。この切り出したステンレス鋼棒について、その両先端部から所定長さの小径部3bを加工により形成し、この小径部3bの外側表面にネジ加工によりネジ部を形成する。
【0042】
さらに、ハブの製作は例えば次のようにして行う。バネ鋼からなる所定厚さの鋼板から、環状部4a、貫通孔4e、凹部4bを含む脚部4cを有するハブを2枚切り出し、脚部4cと環状部4a間に凹部4bを形成する。また、貫通孔4eの内面に軸体3の小径部3bの外側表面に施したネジ部に締結させるためのネジ加工を施す。
【0043】
以上、本発明の搬送用ローラの実施形態について説明したが、本発明の搬送用ローラの構成・形状は、例えば、ローラ自体の材質や、被搬送物の種類、搬送状態における搬送荷重等の条件に応じて選択・設計すればよく、上記実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0044】
1:搬送用ローラ
2:ローラ体
3:軸体
3a:大径部
3b:小径部
4:ハブ
4a:環状部
4b:凹部
4c:突出部
4d:溝部
5:締結部材
6:凹部
7:中空部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のローラ体と、該ローラ体の内周側に設けられる軸体とを備えた搬送用ローラであって、
前記ローラ体と前記軸体とを連結する連結体を備え、
前記連結体は、前記軸体に対して固定された固定部と、前記固定部から前記ローラ体の内周面に向けて突出して前記ローラ体と当接した突出部と、を有し、
前記突出部の少なくとも一部は、前記ローラ体および前記軸体の双方に比べて弾性率がより大きいことを特徴とする搬送用ローラ。
【請求項2】
前記軸体の中心軸を含む平面に沿った断面視において、
前記固定部と前記軸体との当接部を通過し、前記中心軸に垂直な第1の仮想直線と、
前記突出部と前記ローラ体との当接部を通過し、前記中心軸に垂直な第2の仮想直線とが、
前記軸体の長手方向に沿って離間していることを特徴とする請求項1記載の搬送用ローラ。
【請求項3】
前記突出部は、前記軸体の中心軸を含む平面に沿った断面視において、前記第1の仮想直線から前記第2直線の側に向けて屈曲した屈曲部を備えることを特徴とする請求項1または2記載の搬送用ローラ。
【請求項4】
前記連結体は、前記軸体の中心軸に沿って前記ローラ体の両方の端部に設けられており、
各端部に設けられた前記連結体それぞれにおいて、前記第1の仮想直線に対し、前記第2の仮想直線がより端側に位置することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の搬送用ローラ。
【請求項5】
前記連結体は、前記軸体の中心軸に沿って前記ローラ体の両方の端部に設けられており、
各端部に設けられた前記連結体それぞれにおいて、前記第2の仮想直線に対し、前記第1の仮想直線がより端側に位置することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の搬送用ローラ。
【請求項6】
前記ローラ体がセラミックスであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の搬送用ローラ。
【請求項7】
前記ローラ体の内周側に凹部を備え、前記突出部の突出端が前記凹部の内面に当接していることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の搬送用ローラ。
【請求項8】
前記突出部は、前記軸体の中心軸に沿った断面視において、前記ローラ体の周方向に沿って屈曲していることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の搬送用ローラ。
【請求項9】
前記連結体の前記固定部を、前記軸体に対して固定する締結部材を備える特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の搬送用ローラ。
【請求項10】
前記連結体の前記固定部は、締結方向が互いに逆の少なくとも2つのナットで、前記軸体に対して拘束されていることを特徴とする請求項5に記載の搬送用ローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−253549(P2010−253549A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40172(P2010−40172)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】