説明

搬送用歯付ベルト

【課題】搬送用歯付ベルトのベルト幅方向におけるベルト外側への反りを抑制する。
【解決手段】搬送用歯付ベルト10は、ベルト外側の面が搬送面に構成されている。搬送用歯付ベルト10は、ベルト内側に一定ピッチで歯ゴム部11aが形成されたゴム製のベルト本体11と、ベルト本体11にベルト幅方向にピッチを有する螺旋を形成するように埋設された心線12と、ベルト本体11のベルト内側を被覆するように設けられた内側被覆布13と、ベルト本体11の心線12よりも外側にベルト長さ方向に沿って埋設された外側埋設布14と、を備える。外側埋設布14は、内側被覆布13とベルト幅方向の収縮率が同一である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト外側の面が搬送面に構成された搬送用歯付ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
硬貨等を搬送するための搬送用歯付ベルトが実用化されている。
【0003】
特許文献1には、ゴム材料で一体成形された背ゴム及び歯ゴム部と、背ゴム内にベルト長手方向に延びる態様で埋設された複数の芯線と、歯ゴム部の歯面を覆う歯布とを具備する搬送用歯付きベルトにおいて、背ゴムの搬送面となる部分にストレッチ糸とモノフィラメント糸を織って成る背面帆布を配設してあり、モノフィラメント糸はベルト中心線に直交する線に対して適宜角度に傾斜しているものが開示されている。
【0004】
特許文献2には、長手方向に沿って複数設けられ表面が歯布で被覆された歯ゴム部と、歯ゴム部の背面側に埋設された心線と、心線より背面側において背部ゴム層に埋設された帆布とからなる歯付ベルトを製造するにあたって、帆布として歯ゴム部側にゴムを塗布したものを用い、この帆布に塗布したゴムで歯ゴム部を形成する歯付ベルトの製造方法が開示されている。
【特許文献1】特開2002−127266号公報
【特許文献2】特開平11−51123号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、搬送用歯付ベルトのベルト幅方向におけるベルト外側への反りを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成する本発明は、ベルト外側の面が搬送面に構成された搬送用歯付ベルトであって、
ベルト内側に一定ピッチで歯ゴム部が形成されたゴム製のベルト本体と、
上記ベルト本体にベルト幅方向にピッチを有する螺旋を形成するように埋設された心線と、
上記ベルト本体のベルト内側を被覆するように設けられた内側被覆布と、
上記ベルト本体の上記心線よりも外側にベルト長さ方向に沿って埋設された外側埋設布と、
を備え、
上記外側埋設布は、上記内側被覆布とベルト幅方向の収縮率が同一であることを特徴とする。
【0007】
本発明は、上記外側埋設布が、ベルト側断面において、ベルト長さ方向に沿ってベルト厚さ方向に振幅を有する波形を形成するように設けられているものであってもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ベルト本体の心線よりも外側にベルト長さ方向に沿って外側埋設布が埋設されており、その外側埋設布が内側被覆布と同一のベルト幅方向の収縮率を有するので、ベルト成形後において、ベルト内側及びベルト外側の両方で同一の収縮特性を呈し、その結果、ベルト幅方向におけるベルト外側への反りを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
図1は、本実施形態に係る搬送用歯付ベルト10を示す。この搬送用歯付ベルト10は、ベルト外側の面が搬送面に構成され、例えば、硬貨釣り銭機に組み付けられて硬貨を搬送するのに用いられるものである。
【0011】
この搬送用歯付ベルト10は、ベルト内側に例えば1.0〜14.0mmの一定ピッチで歯部15が設けられたエンドレスベルトであって、例えば、ベルト周長が60〜3000mm、ベルト幅が2.0〜1000mm、歯先部分のベルト厚さが0.4〜100mm、歯底部分のベルト厚さが0.4〜7.0mmに形成されている。
【0012】
また、この搬送用歯付ベルト10は、平帯状の背ゴム部11aとそのベルト内側に一定ピッチで形成された歯ゴム部11bとを有するゴム製のベルト本体11を備えている。歯ゴム部11bは歯部15を構成する。
【0013】
ベルト本体11は、搬送面に構成されるベルト外側の面の摩擦係数が0.3〜1.8である。
【0014】
ベルト本体11は、例えば、エチレンプロピレンゴム(EPM、EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、水素化ニトリルゴム(H−NBR)クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)等の架橋ゴム組成物で形成されている。ベルト本体11の架橋系は硫黄架橋系であっても、また、過酸化物架橋系であってもいずれでもよい。
【0015】
ベルト本体11の背ゴム部11aの内面側で且つ歯ゴム部11b直ぐ外側には、ベルト幅方向にピッチを有する螺旋を形成するように心線12が埋設されている。
【0016】
心線12は、例えば、ガラス繊維、アラミド繊維、金属繊維等の寸法安定性の高い繊維の外径0.2〜3.0mmの撚り線で構成されている。心線12のピッチは、例えば、0.25〜3.0mmである。心線12には、ベルト成形前に、ベルト本体11との接着のため、RFL水溶液に浸漬した後に加熱して反応させる接着処理やゴム糊に浸漬した後に溶剤を乾燥させる接着処理が施されている。
【0017】
ベルト本体11のベルト内側には、表面を被覆するように内側被覆布13が設けられている。
【0018】
内側被覆布13は、例えば、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維等で形成された、厚さ0.3〜2.0mmの平織り、綾織り、朱子織りなどの織布;平編みなどの編物;不織布等で構成されている。典型的な内側被覆布13の構成としては、ウーリー加工等が施された伸縮糸と非伸縮糸との綾織り織布であって、伸縮糸の延びる方向がベルト長さ方向で且つ非伸縮糸の延びる方向がベルト幅方向となるように配されたものが挙げられる。内側被覆布13には、ベルト成形前に、ベルト本体11との接着のため、RFL水溶液に浸漬した後に加熱して反応させる接着処理やゴム糊に浸漬した後に溶剤を乾燥させる接着処理やベルト本体11側表面にゴム糊をコーティングする接着処理が施されている。
【0019】
ベルト本体11の背ゴム部11aの心線12よりも外側には、ベルト長さ方向に沿って外側埋設布14が埋設されている。
【0020】
外側埋設布14のベルト厚さ方向におけるベルト外側の面からの埋設位置、つまり、外側埋設布14の外側のゴム厚さは、例えば0.3〜2.0mmである。
【0021】
外側埋設布14は、例えば、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維等で形成された、厚さ0.3〜2.0mmの平織り、綾織り、朱子織りなどの織布;平編みなどの編物;不織布等で構成されている。外側埋設布14には、ベルト成形前に、ベルト本体11との接着のため、RFL水溶液に浸漬した後に加熱して反応させる接着処理やゴム糊に浸漬した後に溶剤を乾燥させる接着処理が施されている。
【0022】
そして、外側埋設布14は、内側被覆布13とベルト幅方向の収縮率が同一である。なお、収縮率はJIS L1042「織物の収縮率試験方法」のA法(常温水浸せき法)に準じて測定されるものである。外側埋設布14及び内側被覆布13のベルト幅方向のその収縮率は−1.0〜2.5%である。このように、その外側埋設布14が内側被覆布13と同一のベルト幅方向の収縮率を有するので、ベルト成形後において、ベルト内側及びベルト外側の両方で同一の収縮特性を呈することから、その結果、ベルト幅方向におけるベルト外側への反りを抑制することができる。
【0023】
外側埋設布14は、内側被覆布13と同一構成であっても、異なる構成であってもいずれでもよい。但し、材料品種を少なくするという観点からは、前者であることが好ましい。外側埋設布14が内側被覆布13と同一構成、例えば、それらが同一の織布で構成されている場合、外側埋設布14が内側被覆布13とベルト幅方向の収縮率が同一となるためには、外側埋設布14の経糸の延びる方向が内側被覆布13の経糸の延びる方向に一致し且つ外側埋設布14の緯糸の延びる方向が内側被覆布13の緯糸の延びる方向に一致するように外側埋設布14を配設すればよい。
【0024】
また、外側埋設布14は、図1に示すように、ベルト側面において、ベルト長さ方向に沿ってベルト厚さ方向に振幅を有する波形を形成するように設けられていてもよい。このように、外側埋設布14が波形を形成していると、埋設される長さが長くなってより内側被覆布13に近い形態が実現されるので、ベルト幅方向におけるベルト外側への反りを抑制効果がより高くなる。上記波形の周期は歯ピッチ間隔であることが好ましく、振幅は0mm以上であればよい。
【0025】
次に、上記搬送用歯付ベルト10の製造方法について説明する。
【0026】
ステップ1:外周面に軸方向に延びる歯部形成溝が一定間隔で形成された円筒状金型に、接着処理を施した筒状の内側被覆布13を被せて被覆する。内側被覆布13としては、ベルト成形時に内側被覆布13が伸びて歯部形成溝に沿うように、周方向に伸縮可能なもの、例えば、周方向に延びる糸がウーリー加工等が施された伸縮糸で且つ軸方向に延びる糸が非伸縮糸である綾織り織布を用いる。
【0027】
ステップ2:内側被覆布13の上から接着処理を施した心線12を軸方向にピッチを有する螺旋を形成するように巻き付ける。
【0028】
ステップ3:心線12の上から未架橋ゴム組成物のゴムシートを1〜5層巻き付ける。ゴムシートとしては、厚さが例えば0.4〜3.0mmのものを用いる。
【0029】
ステップ4:ゴムシートの上から接着処理を施した筒状の外側埋設布14を被せて被覆する。外側埋設布14としては、内側被覆布13と軸方向の収縮率が同一のものを用いる。好ましくは、内側被覆布13と同一構成のもの、上記の場合であれば、例えば、周方向に延びる糸がウーリー加工等が施された伸縮糸で且つ軸方向に延びる糸が非伸縮糸である綾織り織布を用いる。
【0030】
ステップ5:外側埋設布14の上から未架橋ゴム組成物のゴムシートを1層以上巻き付ける。ゴムシートとしては、ステップ3で用いたのと同一のものであって、厚さが例えば0.3〜2.0mmのものを用いる。
【0031】
ステップ6:以上の材料をセットした円筒状金型を加硫釜に入れ、所定温度に加熱すると共に所定圧力をかけて所定時間保持することにより円筒状のスラブを成形する。このとき、未加硫ゴムが流動しつつ架橋することにより円筒状のスラブ本体を形成する。歯部形成溝においては、流動する未加硫ゴムに内側被覆布13が押圧されて伸張して歯部形成溝の形状に沿った歯部15を形成する。各々、接着処理が施された、内側被覆布13、心線12及び外側埋設布14が未加硫ゴムと反応してスラブ本体と一体化することによりスラブを形成する。
【0032】
また、外側埋設布14は、その伸張特性によって異なった埋設形態を呈する。具体的には、外側埋設布14は、高伸縮性のものであれば、未加硫ゴムの流動によって、ベルト厚さ方向に大きな振幅を有する波形をベルト長さ方向に沿って形成する一方、低伸縮性のものであれば、未加硫ゴムの流動によって、ベルト厚さ方向に小さな振幅を有する波形をベルト長さ方向に沿って形成する、或いは、波形を形成しない。
【0033】
ステップ7:加硫釜から円筒状金型を取り出し、円筒状金型を、その外周に成形されたスラブから引き抜いて脱型する。
【0034】
ステップ8:スラブの外周面を研磨して厚さを整えた後に所定幅に輪切りする。
【0035】
以上により上記構成の搬送用歯付ベルト10を製造することができる。
【0036】
なお、ステップ1では、非伸縮性の内側被覆布13に予め歯部形状をエンボス成形し、それで円筒状金型を被覆するようにしてもよい。
【0037】
また、ステップ4では、ゴムシートの上からシート状の外側埋設布14を巻き付けるようにしてもよい。
【0038】
また、心線12の上から外側埋設布14を被せ、その上から未架橋ゴム組成物のゴムシートを所定層巻き付けるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、ベルト外側の面が搬送面に構成されたゴム製の搬送用歯付ベルトについて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施形態に係る搬送用歯付ベルトを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0041】
10 搬送用歯付ベルト
11 ベルト本体
11a 背ゴム部
11b 歯ゴム部
12 心線
13 内側被覆布
14 外側埋設布
15 歯部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト外側の面が搬送面に構成された搬送用歯付ベルトであって、
ベルト内側に一定ピッチで歯ゴム部が形成されたゴム製のベルト本体と、
上記ベルト本体にベルト幅方向にピッチを有する螺旋を形成するように埋設された心線と、
上記ベルト本体のベルト内側を被覆するように設けられた内側被覆布と、
上記ベルト本体の上記心線よりも外側にベルト長さ方向に沿って埋設された外側埋設布と、
を備え、
上記外側埋設布は、上記内側被覆布とベルト幅方向の収縮率が同一であることを特徴とする搬送用歯付ベルト。
【請求項2】
請求項1に記載された搬送用歯付ベルトにおいて、
上記外側埋設布は、ベルト側断面において、ベルト長さ方向に沿ってベルト厚さ方向に振幅を有する波形を形成するように設けられていることを特徴とする搬送用歯付ベルト。

【図1】
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【公開番号】特開2008−156029(P2008−156029A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−344893(P2006−344893)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(000005061)バンドー化学株式会社 (429)
【Fターム(参考)】