説明

搬送異常検出システム、搬送異常検出装置及び自動取引装置

【課題】搬送される媒体の搬送路で生じる搬送異常の箇所を特定することができる。
【解決手段】本発明の搬送異常検出システムは、周波数信号を送波する送波手段を設けた媒体を搬送路に搬送させる。そして、1又は複数の受波手段が、搬送される媒体の送波手段から送波される周波数信号を受波し、異常箇所検出手段が、1又は複数の受波手段からの周波数信号の受波データの時間的変化に基づいて、搬送路における異常箇所を検出するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送異常検出システム、搬送異常検出装置及び自動取引装置に関するものである。本発明は、例えば、自動取引装置において紙葉類等の媒体の搬送異常の箇所を検出する搬送異常検出システム、搬送異常検出装置及び自動取引装置に適用し得るものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、紙幣入出金機等の自動取引装置では、紙幣、カード、チケット等の媒体を搬送するが、ローラ摩耗等により搬送状態に異常が生じ、ジャムエラー等が発生することがある。従来、このようなジャムエラーが発生する前に、搬送状態の異常を早期に検知するために、図2及び図3に示すような技術や特許文献1に記載されるような技術が用いられている。
【0003】
図2は、自動取引装置の内部構成と、各構成要素間に配置された搬送センサの配置例を示す図である。図3は、従来の搬送異常検知方法を説明する説明図である。
【0004】
図2に示すように、自動取引装置1は、例えば、媒体入出力部11、認識部12、リジェクト庫13、一時保留部14を有しており、これら構成要素間を結ぶ搬送路上に、例えば光学センサ等の搬送センサが複数配置されている。例えば、認識部12の入口付近に搬送センサCが配置され、認識部12の出口付近に搬送センサDが配置されている。
【0005】
また、搬送異常検知部95は、上記搬送センサのセンサデータに基づいて、搬送される媒体の異常を検知する。
【0006】
従来、搬送異常検知部95は、図3に示すように、媒体が正常に搬送されるときの搬送センサの変化点間の時間(理論値)を予め登録しておく。そして、搬送異常検知部95は、実際に媒体が搬送されたときに搬送センサが計測した搬送センサの変化点間の時間と、予め登録した変化点間のデータの時間とを比較することにより搬送異常を検知している。
【0007】
例えば、図3(D)の例の場合、搬送異常検知部95は、搬送センサCのOFF時と搬送センサDのON時との間の変換点間の時間を登録しておく。そして、実際に媒体が搬送されたときの搬送センサのセンサデータを取得する。このとき、図3(D)に示すように、搬送センサDのONのタイミングが少し遅れたとする。そうすると、搬送異常検知部95は、搬送センサCと搬送センサDとの変化点間の時間が登録時間よりも長くなり、搬送異常が生じたことを検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−200118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した従来の搬送異常検知方法は、搬送センサ間の距離が長くなると、搬送センサ間のどの位置で異常が生じているかを特定することが難しくなるという問題が生じ得る。
【0010】
また、搬送センサの変化点間の時間が理論値と同じであっても、一方の搬送センサのON/OFFタイミングが進み方向に速度異常があり、他方の搬送センサのON/OFFタイミングが遅れ方向に速度異常がある場合、変化点間の時間変動が相殺されてしまい、異常が検知できないおそれもある。
【0011】
そのため、例えば自動取引装置等の搬送装置において、搬送異常の箇所を特定することができる搬送異常検出システム、搬送異常検出装置及び自動取引装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる課題を解決するために、第1の本発明は、(1)搬送機構により搬送路を搬送される媒体に設けられた、周波数信号を送波する送波手段と、(2)搬送される媒体の送波手段から送波される周波数信号を受波する1又は複数の受波手段と、(3)1又は複数の受波手段からの周波数信号の受波データの時間的変化に基づいて、搬送路における異常箇所を検出する異常箇所検出手段とを備えることを特徴とする搬送異常検出システムである。
【0013】
第2の本発明は、第1の本発明の搬送異常検出システムを備えることを特徴とする自動取引装置である。
【0014】
第3の本発明は、(1)搬送路を搬送される媒体に設けられた送波手段が送波した周波数信号の受波データを1又は複数の受信手段から取得する受波データ取得手段と、(2)周波数信号の受波データの時間的変化に基づいて、搬送路における異常箇所を検出する異常箇所検出手段とを備えることを特徴とする搬送異常検出装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、搬送される媒体の搬送路で生じる搬送異常の箇所を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施形態の自動取引装置の内部構成の一部を示す内部構成図である。
【図2】従来の自動取引装置の内部構成の一部を示す内部構成図である。
【図3】従来の自動取引装置における搬送異常検知方法を説明する説明図である。
【図4】実施形態の点検用媒体の構成を示す構成図である。
【図5】第1の実施形態の発信機の内部構成を示す内部構成図である。
【図6】第1の実施形態の搬送異常検知部の主な内部機能を示す機能ブロック図である。
【図7】第1の実施形態の搬送異常検知方法を説明する説明図である。
【図8】第2の実施形態の自動取引装置の内部構成の一部を示す内部構成図である。
【図9】第2の実施形態の発信機の内部構成を示す内部構成図である。
【図10】第2の実施形態の搬送異常検知部の主な内部機能を示す機能ブロック図である。
【図11】第2の実施形態の搬送異常検知方法を説明する説明図である。
【図12】第3の実施形態の自動取引装置の内部構成の一部を示す内部構成図である。
【図13】第3の実施形態の発信機の内部構成を示す内部構成図である。
【図14】第3の実施形態の搬送路の構成と、当該搬送路に配置される搬送センサの構成とを説明する説明図である。
【図15】第3の実施形態の搬送異常検知部の主な内部機能を示す機能ブロック図である。
【図16】第3の実施形態の搬送異常検知方法を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(A)第1の実施形態
次に、本発明の搬送異常検出システム、搬送異常検出装置及び自動取引装置の第1の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
第1の実施形態では、例えば、金融機関等に設置されているATM(Automated Teller Machine)等の自動取引装置及び自動取引装置の搬送異常検知装置に、本発明を適用した場合の実施形態を例示する。
【0019】
(A−1)第1の実施形態の構成
図1は、第1の実施形態の自動取引装置の内部構成の一部を示す内部構成図である。図1において、第1の実施形態の自動取引装置100は、媒体入出力部11、認識部12、リジェクト庫13、一時保留部14、搬送異常検知部15、点検用媒体格納部16、受信機17、受信機18、搬送路21〜28、搬送センサA〜搬送センサIを有する。
【0020】
媒体入出力部11は、入力された媒体を取り込み、取り込んだ媒体を搬送路に出力するものである。また、媒体入出力部11は、例えば利用者に紙幣を返却する等のときには、搬送路を介して搬送されてきた媒体を出力するものである。媒体入出力部11は、例えば、挿入された紙幣を1枚ずつ取り込む形式のものや、複数枚の紙幣を収納するバケット形式のもの等を適用することができる。
【0021】
認識部12は、搬送された媒体状態を認識するものである。認識部12は、例えば従来の紙幣鑑別装置を適用することができ、例えば、媒体である紙幣の金種、真偽、表裏等を判別する。認識部12は、搬送された媒体(紙幣)の金種を判別すると、その金種別の紙幣カセット(図示しない)に向けて搬送させる。また、認識部12は、真偽判別により偽と判別すると媒体を一時保留部14に搬送させる。なお、認識部12は、媒体入出力部11から搬送された媒体の状態を認識するだけでなく、一時保留部14や図示しない紙幣カセット等から搬送された媒体の鑑別等も行うこともできる。
【0022】
一時保留部14は、認識部12により偽と判別された媒体(紙幣)を一時的に収納するものである。例えば、一時保留部14において一時的に保留された紙幣のうち、再利用にそぐわない券(例えば損券等)であるものについては、リジェクト庫13に搬送させる。
【0023】
リジェクト庫13は、認識部12により再利用不可能と判断された媒体を収納するものである。
【0024】
搬送路21〜搬送路27は、例えば、搬送ベルトや搬送ローラ等の搬送機構で形成されるものであり、各構成要素間の搬送路である。
【0025】
図1において、搬送路21は媒体入出力部11と認識部12との間を結ぶものであり、搬送路22は搬送路21から途中分岐されたものである。また、搬送路23は認識部12と一時保留部14との間を結ぶものであり、搬送路24は認識部12とリジェクト庫13との間を結ぶものであり、搬送路25は認識部12と媒体入出力部11との間を結ぶものである。
【0026】
搬送センサA〜搬送センサIはそれぞれ、搬送される媒体を検知すると、その検知データ(センサデータともいう)を搬送異常検知装置15に与えるものである。搬送センサA〜搬送センサIは、搬送される媒体を検知することができれば、その種類は特に限定されることなく広く適用することができる。例えば、搬送センサA〜搬送センサIとして、従来の自動取引装置で用いられている光学センサを適用することができる。また、搬送センサA〜搬送センサIを配置させる位置は、一方の構成要素の出口付近や他方の構成要素の入口付近や、又搬送路が分岐する場合には分岐点付近とすることができる。
【0027】
点検用媒体格納部16は、点検用媒体19を格納するものであり、点検を行うときには、格納されている点検用媒体19を送出し、点検が終了すると再度点検用媒体19を格納する。
【0028】
この実施形態では、搬送異常の点検を行う際、通常時と同じ搬送経路の点検を行うために、実際に搬送させる媒体(紙幣)の経路と同じであることが望ましい。そこで、この実施形態では、図1に示すように、媒体入出力部11に隣接する位置に点検用媒体格納部16を備え、搬送センサAの手前から点検用媒体19が搬送開始できるようにしている。
【0029】
なお、例えば、媒体入出力部11がバケット形式の場合、点検を行う際に、点検用媒体格納部16に格納されている点検用媒体19を、一旦媒体入出力部11に移動させてから、点検用媒体19を搬送路21に出力して、点検用媒体19が実際の搬送経路と同じ経路を辿るようにしてもよい。
【0030】
点検用媒体19は、搬送異常の点検を行う際に、全ての搬送経路を搬送させる媒体である。この実施形態では、点検専用の媒体を用いる場合を例示するが、実際に使用される媒体としてもよい。また、点検用媒体19は、自動取引装置100の通常動作時に搬送される媒体と同じ形状、同じ素材のものを用いる。また、点検用媒体19は、点検時に電波を発信する発信機191を備えるものである。
【0031】
図4は、点検用媒体19の構成例を示す構成図である。例えば、図4に示すように、点検用媒体19は、紙幣と同様に長方形形状であり、紙幣と同様に紙からなるものである。また、点検用媒体19には、予め決められた送信強度の所定周波数の電波を発信する発信機191が埋め込まれている。
【0032】
発信機191は、例えば無線給電型又は小型電池型の発信機を適用することができる。例えば、発信機191は、アクティブ型のRFID等の発信機等を適用するようにしてもよい。また、点検用媒体19における発信機191の埋め込み位置は、特に限定されるものではないが、搬送されているときに、搬送路を形成する搬送ベルトやローラ等と接触しない位置であることが望ましい。例えば、この実施形態では、図4に示すように、点検用媒体19の中央部付近に発信機191を埋め込むものとする。
【0033】
図5は、発信機191の内部構成を示す内部構成図である。図5に示すように、発信機191は、制御部1911、送受信部1912を有するものである。制御部1911は、例えば、CPU、記憶部等からなるものであり、その機能の1つとして、発信開始/停止を制御する発信開始/停止部1911aを有する。送受信部1912は、予め決められた周波数の電波を送信したり、所定周波数の電波を受信したりするものである。
【0034】
受信機17及び受信機18は、点検用媒体19の発信機191から発信される電波を受信するものである。受信機17及び受信機18は、受信した電波の受信強度の推移データ(受信強度推移データ)を搬送異常検知部15に与える。なお、図1では、2個の受信機17及び受信機18を備える場合を示すが、受信機の数は、特に限定されるものではない。
【0035】
搬送異常検知部15は、搬送異常の点検を行うときに、受信機17及び受信機18からの受信強度推移データに基づいて、搬送異常の検知及びその異常箇所の特定を行うものである。
【0036】
搬送異常検知部15は、例えば、CPU、記憶部、入出力部等を有して構成される装置であり、CPUがROMに格納されるプログラムを実行することにより搬送異常検知処理を実現するものである。
【0037】
図6は、搬送異常検知部15の主な内部機能を示す機能ブロック図である。図6において、搬送異常検知部15は、点検開始指示部151、搬送異常判定部152、搬送異常箇所特定部153、受信強度登録推移データ記憶部154、点検時受信強度推移データ記憶部155、センサ変化点記憶部156、搬送制御部157を有する。
【0038】
点検開始指示部151は、搬送異常の点検開始を指示する開始指示信号を出力するものである。点検開始指示の方法は、種々の方法を適用することができる。例えば、保守者等の操作により点検を開始する際、開始指示信号を点検用媒体19に無線送信する方法を適用することができる。また、受信機17及び受信機18も、無線による開始指示信号を受信できるようにし、当該開始指示信号の受信により受信開始とするようにする。なお、開始指示信号を有線で送信するようにしてもよい。また、点検開始指示部151は、点検終了後に、停止指示信号を無線あるいは有線で送信するようにしてもよい。
【0039】
搬送制御部157は、点検用媒体19を搬送させる経路を制御するものである。搬送制御部157は、例えば、媒体入出力部11→認識部12→一時保留部14→認識部12→リジェクト庫13→…の経路等のように、予め1又は複数の経路を設定しておき、それらの経路の搬送機構に対して点検用媒体19を搬送させるよう制御する。
【0040】
なお、点検用媒体19を搬送させる経路が複数ある場合、特に点検を希望する特定の経路を選択し、その特定の経路のみの点検ができるようにしてもよい。これにより、点検対象とする全部又は一部の経路の点検ができる。
【0041】
受信強度登録推移データ記憶部154は、予め、通常動作時に、受信機17及び受信機18において、搬送経路を搬送する点検用媒体19の発信機191が発信した電波の受信強度の推移データを登録データ(受信強度登録推移データ)として記憶するものである。
【0042】
点検時受信強度推移データ記憶部155は、点検時に、受信機17及び受信機18において、搬送路を搬送する点検用媒体19の発信機191が発信した電波の受信強度の推移データを記憶するものである。
【0043】
搬送異常判定部152は、点検時の各受信機17又は受信機18における受信強度推移データと、対応する受信強度登録推移データとを比較し、その比較結果に基づいて、搬送異常か否かを判定するものである。
【0044】
センサ変化点記憶部156は、各搬送センサA〜搬送センサIから取得したセンサデータを記憶するものである。
【0045】
搬送異常箇所特定部153は、搬送異常判定部152により搬送異常が検知されたときに、搬送異常判定部152による比較結果及びセンサ変化点記憶部156に記憶されるセンサデータを用いて、搬送路を走行する媒体の位置を割り出し、搬送異常箇所を特定するものである。
【0046】
(A−2)第1の実施形態の動作
次に、第1の実施形態の自動取引装置100における搬送異常検知処理の動作について図面を参照しながら説明する。
【0047】
例えば、搬送異常の点検を行う際、保守者等が点検開始ボタンを押下することや遠隔操作等を行い、点検動作開始の指示信号が搬送異常検知部15に与えられる。搬送異常検知部15では、点検動作開始指示信号が与えられると、点検開始指示部151が開始指示信号を無線送信する。
【0048】
搬送異常検知部15からの開始指示信号は、点検用媒体19の発信機191により受信される。発信機191において、開始指示信号が受信されると、発信開始・停止部1911aが電波発信の開始を行う。また同時に、受信機17及び受信機18も、開始指示信号を受信し、電波受信を開始する。
【0049】
搬送異常検知部15において、搬送制御部157は、受信機17及び受信機18が点検用媒体19の発信機191からの電波を正常に受信できていることを確認する。そして、受信機17及び受信機18が正常に電波を受信できていることを確認すると、搬送制御部157は、点検用媒体格納部16に格納されている点検用媒体19の搬送を開始する。
【0050】
点検用媒体19の発信機191は電波を発信しているので、電波を発信しながら点検用媒体19は搬送される。そして、点検用媒体19の搬送が終了すると、点検用媒体19は点検用媒体19に戻されて格納される。
【0051】
点検用媒体19が搬送されることで、発信機191と受信機17及び受信機18との間の距離等が変わるので、受信機17及び受信機18における電波の受信強度も変化する。受信機17及び受信機18における電波の受信強度データは、搬送異常検知部15に与えられる。
【0052】
搬送異常検知部15では、搬送異常判定部152が、受信強度登録推移データ記憶部154に記憶される受信強度登録推移データと、今回の点検で受信機17及び受信機18により得られた受信強度推移データとの比較を行う。
【0053】
すなわち、搬送異常検知部15は、点検時受信強度推移データと受信強度登録推移データとの時間的変化のデータパターンを比較して、搬送異常の検知及びその箇所を検出する。
【0054】
図7(A)及び図7(B)は、搬送センサC及び搬送センサDのセンサデータのタイムチャートであり、図7(C)は、受信機18における電波受信強度の時間変化を示すタイムチャートである。図7(C)において、点線は、正常動作時の受信機18における受信強度登録推移データであり、実線は、点検時の受信機18における受信強度推移データである。なお、ここでは、受信機18における受信強度推移データを用いた場合を例示するが、他の受信機17の受信強度推移データを用いた場合も同様のデータが得られる。
【0055】
受信機18は、図1に示すように、認識部12付近であって、搬送センサCと搬送センサDとの間の比較的搬送センサCに近い側に配置されている。そのため、受信機18における受信強度は、図7(C)に示すように、当初は比較的弱いが、時間経過と共にだんだん強くなる。そして、発信機191と受信機18が最も近づいたときに最も受信強度が高くなり、その後、徐々に受信強度は弱くなるように推移していく。
【0056】
搬送異常判定部152は、予め登録された受信強度登録推移データと、今回の点検時の受信強度推移データとを比較し、点検時の受信強度推移データが、受信強度登録推移データと異なって変化するとき、搬送異常があったものと判定する。つまり、搬送異常判定部152は、受信強度登録推移データのデータパターンとのずれが生じたとき搬送異常が生じたものと判定し、そのずれの位置が異常箇所であると判定する。
【0057】
例えば、図7(C)の場合、時間t1で、点検時の受信強度推移データが、受信強度登録推移データと異なっている。つまり、ここで、搬送のもたつきがあったことを搬送異常判定部152は検知する(S11)。
【0058】
また、図7(C)では示していないが、搬送センサC及び搬送センサD間のセンサ変化点の時間が同じであっても、その間で、点検用媒体19の搬送速度が速くなったり、遅くなったりする場合もある。しかし、データパターンの比較により、搬送異常判定部152は、センサ変化点間での点検用媒体19の搬送速度の変化も検知できる。
【0059】
次に、搬送異常箇所特定部153は、搬送異常判定部152の判定結果と、搬送センサのセンサデータとに基づいて、搬送異常の箇所を特定する。
【0060】
例えば、図7(A)、図7(C)において、搬送異常箇所特定部153は、搬送異常判定部152が検知した時間t1と、搬送センサCのON→OFFの変化点t2とに基づいて、変化点t2から時間(t1−t2)だけ移動した点を異常箇所として特定する(S12)。
【0061】
このとき、例えば、点検用媒体19の搬送速度は予め設定しておけば、点検用媒体19の搬送速度と上記移動時間とに基づいて距離を求めることができる。そのため、搬送センサCの位置から上記求めた距離を加えた位置を異常箇所として特定することができる。
【0062】
なお、図7では、正確な搬送異常の位置を求めるために、搬送異常の検知時間t1に最も近い搬送センサCのON→OFFの変換点を用いた場合を例示したが、これに限定されるものではない。その他に、搬送センサDのOFF→ONの変換点やその他の搬送センサの変化点を用いるようにしてもよい。
【0063】
(A−3)第1の実施形態の効果
以上のように、第1の実施形態によれば、発信機を埋め込んだ点検用媒体を搬送させ、受信機における上記発信機からの受信強度を用いて搬送異常を検知することにより、従来よりも正確な搬送異常箇所の位置を特定することができる。
【0064】
(B)第2の実施形態
次に、本発明の搬送異常検出システム、搬送異常検出装置及び自動取引装置の第2の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0065】
第1の実施形態は、受信機の受信強度データの推移に基づいて搬送異常の検知及びその箇所の特定を行うものであり、受信強度のわずかな違いを検出するためには複数の受信機を備えることが必要となり、装置コスト等が高くなる。
【0066】
そこで、第2の実施形態は、第1の実施形態の場合よりも受信機を少なくして、搬送異常の検知及びその箇所の特定ができるようにする。
【0067】
第2の実施形態も、第1の実施形態と同様に、自動取引装置及びその搬送異常検知装置に本発明を適用する場合の実施形態を例示する。
【0068】
(B−1)第2の実施形態の構成
図8は、第2の実施形態の自動取引装置200の内部構成の一部を示す内部構成図である。図8において、第2の実施形態の自動取引装置200は、媒体入出力部11、認識部12、リジェクト庫13、一時保留部14、搬送異常検知部25、点検用媒体19を格納する点検用媒体格納部16、受信機27、搬送路21〜28、搬送センサA〜搬送センサIを有する。また、第2の実施形態の自動取引装置200において搬送させる点検用媒体19は発信機291を備える。
【0069】
第2の実施形態において、点検用媒体19の発信機291、搬送異常検知部25、受信機27が第1の実施形態と異なり、それ以外の構成要素は第1の実施形態と同じであるので、第2の実施形態に特有の構成要素を中心に詳細に説明し、それ以外の構成要素の詳細な説明は省略する。
【0070】
図9は、第2の実施形態の発信機291の機能構成を示すブロック図である。図9に示すように、発信機291は、制御部2911、加速度センサ2912、送受信部2913を有するものである。
【0071】
制御部2911は、例えば、CPU、記憶部等を有するものであり、その機能の1つとして、発信開始/停止を制御する発信開始/停止部2911aを有する。発信開始/停止部2911aは、開始指示信号を受信すると、第1の実施形態と同様に電波発信だけでなく、さらに加速度センサ2912の動作開始も指示する。
【0072】
加速度センサ2912は、制御部2911の制御により、加速度データの測定を開始するものである。加速度センサ2912は、測定した加速度データを送受信部2913に与える。加速度センサ2912は、点検用媒体19の搬送時の加速度を測定することができれば、特に限定されるものではなく、広く適用することができる。例えば、ピエゾ抵抗型、静電容量型等の加速度センサを適用することができる。また、検出軸数が2軸又は3軸の加速度センサを適用することができる。
【0073】
送受信部2913は、加速度センサ2912が測定した加速度データを含む信号を無線送信するものである。これにより、搬送される点検用媒体19が受ける加速度のデータをリアルタイムで無線送信することができる。また、送受信部2913は、第1の実施形態と同様に、搬送異常検知部25からの開始指示信号を受信する。
【0074】
受信機27は、点検用媒体19の発信機291から発信される無線信号を受信し、その受信信号を搬送異常検知部25に与えるものである。第2の実施形態では、発信機291から受信した信号を与えるものであるから、第1の実施形態のように複数の受信機を備える必要はなく、受信機の数を1個とすることができる。
【0075】
搬送異常検知部25は、搬送異常の点検を行うときに、受信機27から受信した加速度データの時間的変化と、予め登録した正常時の加速度登録データの時間的変化とに基づいて、搬送異常の検知及びその箇所を特定する。すなわち、搬送異常検知部25は、加速度データのデータパターンと予め登録した加速度データのデータパターンとに基づいて搬送異常の箇所を特定する。
【0076】
図10は、第2の実施形態の搬送異常検知部25の主な内部機能を示す機能ブロック図である。図10において、搬送異常検知部25は、点検開始指示部151、搬送異常判定部252、搬送異常箇所特定部253、加速度登録推移データ記憶部254、点検時加速度推移データ記憶部255、センサ変化点記憶部156、搬送制御部157を有する。
【0077】
点検開始指示部151、搬送制御部157、センサ変化点記憶部156は、第1の実施形態と同じである。
【0078】
加速度登録データ記憶部254は、予め、点検用媒体19の正常搬送させたときに、点検用媒体19の加速度センサ2912が計測した加速度データの推移を登録データ(加速度登録推移データ)として記憶するものである。
【0079】
点検時加速度推移データ記憶部255は、点検時に、受信機27から受信した、搬送される点検用媒体19の加速度センサ2912が計測した加速度データの推移データを記憶するものである。
【0080】
搬送異常判定部252は、点検時の受信機27から受信した加速度推移データと、加速度登録データ記憶部254に記憶される加速度登録推移データとを比較し、搬送異常か否かを判定するものである。
【0081】
搬送異常箇所特定部253は、搬送異常判定部252により搬送異常が検知されたときに、搬送異常判定部252による比較結果及びセンサ変化点記憶部156に記憶されるセンサデータを用いて、搬送路を走行する媒体の位置を割り出し、搬送異常箇所を特定するものである。
【0082】
(B−2)第2の実施形態の動作
次に、第2の実施形態の自動取引装置200における搬送異常検知処理の動作について図面を参照しながら説明する。
【0083】
搬送異常の点検開始は、例えば、第1の実施形態と同様に、保守者等による操作により、点検動作開始の指示が搬送異常検知部25に与えられると、搬送異常検知部25の点検開始指示部151が開始指示信号を無線送信する。
【0084】
搬送異常検知部25からの開始指示信号が、点検用媒体19の発信機291に受信されると、発信機291において、発信開始・停止部2911aが電波発信の開始を行うと共に、加速度センサ2912の動作も開始させる。また同時に、受信機27も、開始指示信号を受信し、電波受信を開始する。
【0085】
そして、搬送制御部157は受信機27が正常に電波を受信していることを確認すると、搬送制御部157は、点検用媒体格納部16に格納されている点検用媒体19の搬送を開始する。
【0086】
点検用媒体19の発信機291では、加速度センサ2912が加速度を測定し、その加速度データが送受信部2913に与えられ、加速度データを含む信号が無線送信される。
【0087】
受信機27は、発信機291から送信される信号を受信し、その受信信号に含まれる加速度データを搬送異常検知部25に与える。
【0088】
搬送異常検知部25では、搬送異常判定部252が、加速度登録データ記憶部254に記憶される加速度登録推移データと、点検時の受信機27からの加速度推移データとの比較を行い、搬送異常を判定する。
【0089】
図11(A)及び図11(B)は、搬送センサC及び搬送センサDのセンサデータのタイムチャートであり、図11(C)は、受信機27からの加速度データの時間変化を示すタイムチャートである。図11(C)において、点線は、正常動作時の加速度登録データの推移であり、実線は、点検時の受信機27における加速度データの推移である。
【0090】
図11(C)に示すように、搬送異常判定部152は、予め登録された加速度登録推移データの時間的変化と、今回の点検時の加速度推移データの時間的変化とを比較し、点検時の加速度推移データが、加速度登録推移データと異なった変化する、搬送異常があったものと判定する。
【0091】
つまり、加速度登録推移データのデータパターンからずれたとき、搬送異常が発生し、そのずれた箇所が搬送異常の箇所であると、搬送異常判定部152は判定する。
【0092】
例えば、図11(C)の場合、時間t3において、加速度登録推移データに比べて、一旦加速度が小さくなり、その後すぐに加速度が大きくなり、その後加速度登録推移データと同じように変化している。従って、搬送異常判定部252は、時間t3で、一旦搬送のもたつきがあり、その後速度が速くなったことを検知することができる(S21)。
【0093】
次に、搬送異常箇所特定部253は、搬送異常判定部252の判定結果と、搬送センサのセンサデータとに基づいて、搬送異常の箇所を特定する。
【0094】
例えば、図11(A)、図11(C)において、搬送異常箇所特定部253は、搬送異常判定部252が検知した時間t3と、搬送センサCのON→OFFの変化点t4とに基づいて、変化点t4から時間(t3−t4)だけ移動した点を異常箇所として特定する(S22)。
【0095】
なお、図11では、正確な搬送異常の位置を求めるために、搬送異常の検知時間t3に最も近い搬送センサCのON→OFFの変換点を用いた場合を例示したが、これに限定されるものではない。その他に、搬送センサDのOFF→ONの変換点やその他の搬送センサの変化点を用いるようにしてもよい。
【0096】
(B−3)第2の実施形態の効果
以上のように、第2の実施形態によれば、点検用媒体の加速度データの推移に基づいて搬送異常及びその箇所を検知することにより、受信機の数を減らすことができる。そのため、第1の実施形態に比べて、装置コストの低減や実装スペースの低減を図ることができる。
【0097】
(C)第3の実施形態
次に、本発明の搬送異常検出システム、搬送異常検出装置及び自動取引装置の第3の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0098】
第1及び第2の実施形態は、点検用媒体が発信機を備えるものであるため、発信機からの電波を受信する受信機が必要である。
【0099】
これに対して、第3の実施形態は、新たに受信機を備えることなく、従来の自動取引装置が備える搬送センサを有効に利用するものである。
【0100】
なお、第3の実施形態も、第1の実施形態と同様に、自動取引装置及びその搬送異常検知装置に本発明を適用する場合の実施形態を例示する。
【0101】
(C−1)第3の実施形態の構成
図12は、第3の実施形態の自動取引装置300の内部構成の一部を示す内部構成図である。図12において、第3の実施形態の自動取引装置300は、媒体入出力部11、認識部12、リジェクト庫13、一時保留部14、搬送異常検知部35、点検用媒体19を格納する点検用媒体格納部16、搬送路21〜28、搬送センサA〜搬送センサIを有する。また、第3の実施形態の自動取引装置300において搬送させる点検用媒体19は発光部391を備える。
【0102】
第3の実施形態では、発光部391が埋め込まれた点検用媒体19を搬送させる。点検用媒体19の搬送中、発光部391は発光し、搬送路21〜28に配置されている搬送センサA〜搬送センサIが光を受光し、その受光感度データの推移(データパターン)に基づいて搬送異常の検知及びその箇所の特定を行う。
【0103】
図13は、発光部391の構成を示す構成図である。図13において、発光部391は、制御部3911、発光素子3912、所定周波数の信号を送受信する送受信部3913を有する。制御部3911は、送受信部3913により受信された開始指示信号に基づいて、発光素子3912を発光させたり、発光素子3912の発光を停止させたりする発光開始・停止部3911aを有する。
【0104】
発光素子3912は、光学センサである搬送センサA〜搬送センサIが受光することができる波長の光を発光するものであり、例えば、LED(Light Emitting Diode)等の発光素子を適用することができる。
【0105】
ここで、点検用媒体19における発光部391の埋め込み位置は、搬送中に、搬送センサA〜搬送センサIが発光部391からの光を受光することができる位置であれば、特に限定されるものではない。例えば、点検用媒体19のいずれか一方の面に1個の発光部391を備えるようにしてもよいし、両方の面にそれぞれ1個ずつ発光部391を備えるようにしてもよい。また、点検用媒体19のいずれか一方の面に、複数の発光部391を備えるようにしてもよい。
【0106】
この実施形態では、点検用媒体19の一方の面に1個の発光部391を埋め込んだ場合を例示する。また、この実施形態では、点検用媒体19において発光部391を埋め込んだ側、すなわち搬送中に点検用媒体19が光を放つ側に、搬送センサA〜搬送センサIの受光センサが存在するようにする。これにより、搬送センサA〜搬送センサIの受光センサが、搬送される点検用媒体19からの光を受光することができる。
【0107】
図14は、搬送路の一例としての搬送路21の構成と、搬送センサの一例として搬送路21に配置された搬送センサC及び搬送センサDの構成とを説明する説明図である。図14(A)は、搬送路21を上から見たときの図であり、図14(B)は、図14(A)におけるX−X断面図である。
【0108】
図14(A)及び図14(B)に例示するように、例えば搬送路21は光を乱反射できるものとする。例えば、光を乱反射することができる材質を用いて搬送路21を形成したり、又例えばブラスト等により表面加工したものを用いて搬送路21を形成したりすることで実現することができる。なお、他の搬送路も同じ構成である。
【0109】
また、例えば搬送センサCは、光学センサであり、発光センサ36と受光センサ37とを1組として形成されるものである。受光センサ37は、種々のものを適用できるが、例えばフォトダイオード等を適用することができる。
【0110】
また、例えば搬送センサCは、搬送異常の点検中、発光センサ36の発光を停止させ、受光センサ37の受光だけを機能させるようにする。さらに点検中、受光センサ37は、受光した光の感度を示す受光感度モードに切り替え、その受光感度データを搬送異常検知部35に与えるようにする。これにより、点検中に搬送される発光部391が発光する光の受光感度データを搬送異常検知部35に通知することができる。なお、他の搬送センサも同じ構成である。
【0111】
図15は、第3の実施形態の搬送異常検知部35の主な内部機能を示す機能ブロック図である。
【0112】
搬送異常検知部35は、搬送異常の点検を行うときに、搬送センサA〜搬送センサIからのセンサデータの推移に基づいて、搬送異常を検知するものである。さらに、搬送異常検知部35は、搬送センサA〜搬送センサIからのセンサデータに基づいて、異常が発生した箇所を特定するものである。
【0113】
図15において、搬送異常検知部35は、点検開始指示部151、搬送異常判定部352、搬送異常箇所特定部353、登録受光感度データ記憶部354、点検時受光感度データ記憶部355、搬送制御部157を有する。点検開始指示部151及び搬送制御部157は、第1の実施形態と同じである。
【0114】
登録受光感度データ記憶部354は、予め、通常動作時に、搬送センサA〜搬送センサIの受光センサ37が受光した受光感度データの推移を登録データ(登録受光感度データ)として記憶するものである。
【0115】
点検時受光感度データ記憶部355は、点検時に、搬送センサA〜搬送センサIの受光センサ37が受光した受光感度データを記憶するものである。
【0116】
搬送異常判定部352は、点検時の搬送センサA〜搬送センサIの受光感度データの推移と、登録受光感度データ記憶部354に記憶される対応する登録受光感度データとを比較し、その比較結果に基づいて、搬送異常か否かを判定するものである。
【0117】
搬送異常箇所特定部353は、搬送異常が検知されたときに、搬送異常判定部352による判定結果と、搬送センサA〜搬送センサIからの受光感度データとに基づいて、発生された異常の箇所を特定するものである。
【0118】
(C−2)第3の実施形態の動作
次に、第3の実施形態の自動取引装置300における搬送異常検知処理の動作について図面を参照しながら説明する。
【0119】
搬送異常の点検開始は、例えば、第1の実施形態と同様に、保守者等の操作により、点検動作開始指示が搬送異常検知部35に与えられ、搬送異常検知部35の点検開始指示部151が開始指示信号を無線送信する。
【0120】
点検用媒体19の発光部391では、開始指示信号を受信する、発光素子3912が、制御部3911の制御により、発光を開始する。
【0121】
このとき、搬送センサA〜搬送センサIにおいて、点検中、発光センサ36の発光を停止させるようにする。また、受光センサ37が各種動作モードを有している場合には、点検用モードとして受光感度モードに切り替えるようにしてもよい。
【0122】
搬送異常検知部35において、搬送制御部157は、点検モードへの切り替えを確認すると、点検用媒体格納部16に格納されている点検用媒体19の搬送を開始させ、全部又は一部の搬送経路に搬送させる。
【0123】
点検用媒体19は発光部391が発光しながら搬送される。搬送路に配置された搬送センサでは、受光センサ37が発光部391により発光された光を受光する。搬送センサA〜搬送センサIの各受光センサ37は、検知した受光感度データを搬送異常検知部35に与える。
【0124】
搬送異常検知部35では、搬送異常判定部352が、搬送センサA〜搬送センサIの各受光センサ37からの受光感度データの推移と、登録受光感度データ記憶部354に予め記憶される対応の登録受光感度データの推移とを比較して、搬送異常を検知する。
【0125】
図16(A)は、搬送センサCの受光感度データの時間的変化を示す図であり、図16(B)は、搬送センサDの受光感度データの時間的変化を示す図である。
【0126】
搬送異常判定部152は、図16(B)に示すように、搬送センサDの受光感度データの推移と、予め記憶してある搬送センサDの登録受光感度データの推移とを比較し、受光感度データの推移が異なる場合、搬送異常があったものと判定する。
【0127】
例えば、図16(B)の場合、時間t5において、登録受光感度データの推移と異なる時間変化が生じている。従って、搬送異常判定部352は、時間t5で、搬送のもたつきがあったことを検知することができる(S31)。
【0128】
次に、搬送異常箇所特定部353は、今回の搬送センサA〜搬送センサIの受光感度データの推移に基づいて、最もデータ値が高くなるピークを求め、そのピーク時間を求める(S32、S33)。この受光感度データのピーク時間は、搬送センサの中心に点検用媒体19の中心が近づいたタイミングとなる。
【0129】
例えば、図16(B)に例示する搬送センサDの場合、搬送異常箇所特定部353は時間t7を求める。また、図16(A)に例示する搬送センサCの場合、搬送異常箇所特定部353は時間t6を求める。
【0130】
そして、搬送異常箇所特定部353は、図16(A)及び図16(B)に示すように、搬送異常が生じた時間t5と、点検用媒体19の中心が搬送センサCに来た時間t6とを用いて、搬送センサCの位置から時間(t5−t6)だけ移動した位置を搬送異常箇所として特定する。
【0131】
なお、図16では、正確な搬送異常の位置を求めるために、搬送センサCのピーク時間を用いた場合を例示したが、これに限定されるものではない。その他に、搬送センサDのピーク時間やその他の搬送センサの変化点を用いるようにしてもよい。
【0132】
(C−3)第3の実施形態の効果
以上のように、第3の実施形態によれば、第1及び第2の実施形態のように、受信機を実装しなくても、搬送異常箇所を確認することができるので、さらなる装置コストの低減や実装スペースの低減を図ることができる。
【0133】
(D)他の実施形態
(D−1)上述した第1、第2、第3の実施形態では、点検用媒体格納部を備え、通常時には、点検用媒体格納部に点検用媒体を格納しておき、点検時に、点検用媒体を搬送路に出力するようにした。しかし、点検用媒体格納部を備えないようにして、点検時には、例えば保守員等が媒体入出力部から点検用媒体を挿入するようにしてもよい。
【0134】
(D−2)上述した第1、第2、第3の実施形態において、点検用媒体は、通常使用される媒体と同一形状、同一素材のものを用いるとして説明した。点検用媒体の厚みについては、発信機又は発光部を備えるため、通常の媒体よりも厚くするなどして、搬送に係る負荷を大きいものとしてもよい。これにより、搬送異常が生じ得る箇所を検出しやすくことができる。
【0135】
(D−3)点検用媒体は、点検専用の媒体としてもよいし、通常使用される媒体(例えば、紙幣、カード、チケット等)に、発信機又は発光部を設けるようにしてもよい。
【0136】
(D−4)第1の実施形態では、電波の信号強度データの推移に基づいて、搬送される媒体の位置を割り出して、異常箇所を特定するようにした。しかし、電波に限定されず、例えば電波に代えて超音波等を用いるようにしてもよい。
【0137】
また、第1の実施形態では、受信強度の推移に基づいて、搬送異常箇所を特定したが、受信機が受信した周波数の変化や周波数信号の位相の変化や信号到達時間の変化等の情報の時間的な変化に基づいて、搬送異常箇所を特定するようにしてもよい。
【0138】
(D−5)上述した第1〜第3の実施形態では、搬送装置の一例として、例えば金融機関等に設置される入出金装置等の自動取引装置に、本発明を適用する場合を例示した。しかし、本発明は、自動取引装置に限定されるものではなく、搬送路に媒体を搬送する搬送機構を備えるものであれば、例えば、コンビニエンスストア等にKIOSK端末、売上入金機、小切手やチケット等の自動機器等の搬送装置に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0139】
100、200、300…自動取引装置、
19…点検用媒体、191及び291…発信機、391…発光部、
15、25及び35…搬送異常検知部、
152、252及び253…搬送異常判定部、
153、253及び353…搬送異常箇所特定部、
154…受信強度登録推移データ記憶部、254…加速度登録データ記憶部、354…登録受光感度データ記憶部、
155…点検時受信強度推移データ記憶部、255…点検時加速度推移データ記憶部、355…点検時受光感度データ記憶部、
11…媒体入出力部、12…認識部、13…リジェクト庫、14…一時保留部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送機構により搬送路を搬送される媒体に設けられた、周波数信号を送波する送波手段と、
搬送される上記媒体の上記送波手段から送波される上記周波数信号を受波する1又は複数の受波手段と、
上記1又は複数の受波手段からの上記周波数信号の受波データの時間的変化に基づいて、上記搬送路における異常箇所を検出する異常箇所検出手段と
を備えることを特徴とする搬送異常検出システム。
【請求項2】
上記異常箇所検出手段が、
上記媒体の正常搬送時に上記1又は複数の受波手段から取得した正常時受波データの時間的変化を記憶する正常時受波データ記憶手段と、
今回の上記媒体の搬送により上記1又は複数の受波手段から取得した上記受波データの時間的変化と、対応する上記正常時受波データの時間的変化とを比較し、時間的変化が異なる箇所を上記異常箇所として特定する異常箇所特定部と
を有することを特徴とする請求項1に記載の搬送異常検出システム。
【請求項3】
上記周波数信号が所定周波数の電波信号であり、
上記異常箇所検出手段が、上記1又は複数の受波手段における受信強度データの時間的変化に基づいて、上記異常箇所を検出するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の搬送異常検出システム。
【請求項4】
上記媒体に設けられた加速度センサを更に備え、
上記送波手段が、搬送される上記媒体の加速度を検知した上記加速度センサの加速度データを含む上記周波数信号を送信し、
上記受波手段が、受波した上記周波数信号に含まれる上記加速度データを上記異常箇所検出手段に与え、
上記異常箇所検出手段が、上記受波手段からの上記加速度データの時間的変化に基づいて、上記異常箇所を検出するものである
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の搬送異常検出システム。
【請求項5】
上記周波数信号が所定波長の光であり、
上記異常箇所検出手段が、上記1又は複数の受波手段における受光強度データの時間的変化に基づいて、上記異常箇所を検出するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の搬送異常検出システム。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の搬送異常検出システムを備えることを特徴とする自動取引装置。
【請求項7】
搬送路を搬送される媒体に設けられた送波手段が送波した周波数信号の受波データを1又は複数の受信手段から取得する受波データ取得手段と、
上記周波数信号の受波データの時間的変化に基づいて、上記搬送路における異常箇所を検出する異常箇所検出手段と
を備えることを特徴とする搬送異常検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−229116(P2012−229116A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−100088(P2011−100088)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】