搬送管理システム及び搬送管理方法
【課題】気象条件に応じて病気が発生しやすいエリアの予測精度を高め、患者の搬送手段を効率よく行うことを可能とする搬送管理システム及び搬送管理方法を提供すること。
【解決手段】搬送管理システム1は、搬送管理の対象地域に分散して配置される複数の気象計測装置2、病気予測装置4、搬送管理装置5を含む。病気予測装置4は、各気象計測装置2が計測した気象データを取得する気象データ取得部21、取得した気象データを利用して、気象を予測する気象予測部22、気象の予測結果を気象条件と病気との対応情報と照合し、病気別に発生する危険度を予測して病気予測情報を生成する病気予測情報生成部23を含む。搬送管理装置5は、病気予測情報を取得する病気予測情報取得部51、取得した病気予測情報を利用して、搬送手段を優先して確保すべきエリアを予測する搬送予測部52を含む。
【解決手段】搬送管理システム1は、搬送管理の対象地域に分散して配置される複数の気象計測装置2、病気予測装置4、搬送管理装置5を含む。病気予測装置4は、各気象計測装置2が計測した気象データを取得する気象データ取得部21、取得した気象データを利用して、気象を予測する気象予測部22、気象の予測結果を気象条件と病気との対応情報と照合し、病気別に発生する危険度を予測して病気予測情報を生成する病気予測情報生成部23を含む。搬送管理装置5は、病気予測情報を取得する病気予測情報取得部51、取得した病気予測情報を利用して、搬送手段を優先して確保すべきエリアを予測する搬送予測部52を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送管理システム及び搬送管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
急病の患者が発生して119番通報が行われると、この通報は緊急通報管理センターで受け付けられ、緊急通報管理センターから消防署へ救急車両の配車指示が行われる。そして、救急車両が患者を病院まで搬送するが、搬送時間をできるだけ短くすることが求められる。
【0003】
特許文献1や特許文献2では、患者の搬送時間を短縮する手法が提案されている。具体的には、
特許文献1では、「緊急車両に搭載された端末から、当該端末の位置情報を含む、傷病者を受入れ可能な受入れ病院の問合せを受信する管理サーバーと、前記管理サーバーから病院が傷病者に対応可能になるまでの対応時間の問合せを受信し、当該対応時間を計算し、当該管理サーバーに送信する病院サーバーと、を備え、前記管理サーバーは、前記病院ごとに当該病院の位置情報を予め記憶する手段と、前記端末から前記受入れ病院の問合せを受信した場合に、前記病院ごとに、当該病院サーバーに前記対応時間の問合せを送信し、その応答として当該病院サーバーから前記対応時間を受信し、記憶する手段と、前記受入れ病院の問合せに含まれる前記端末の位置情報と、予め記憶された各病院の前記位置情報とに基づいて、前記病院ごとに前記緊急車両の現在位置から当該病院までの移動時間を計算し、記憶する手段と、前記病院ごとに、前記対応時間及び前記移動時間のうち、大きい方を当該病院が前記傷病者を受入れ可能になるまでの受入れ時間として記憶する手段と、各病院の前記受入れ時間のうち、最小値を特定し、当該最小値に係る前記病院を前記受入れ病院として選択し、当該病院に関する情報を前記端末に送信する手段と、を備えることを特徴とする救急病院選択システム」等が提案されている。
【0004】
また、特許文献2では、「ネットワークで救急用車両の配車を行う救急用車両の配車管理方法であって、救急通報元から送られてきた救急通報を受け付けると、前記救急通報とともに送られてきた前記救急通報元の詳細情報をもとに救急用車両の前記救急通報元への出動を指示し、前記救急用車両が搭載している端末へ前記救急通報元の詳細情報や経路情報を送り、前記救急通報元へ前記救急用車両を配車する、ことを特徴とする救急用車両の配車管理方法」等が提案されている。
【0005】
これらの手法によれば、患者の搬送時間を短縮することが可能であるが、配車可能な救急車両が患者の近くになければ、高い効果は得られない。すなわち、病気の発生を予測し、救急車両の配車を効率よく行うことが望まれる。
【0006】
ところで、気象条件がトリガーとなって発生すると考えられる病気が知られている。片頭痛、乾燥肌、うつ病、リュウマチ、脳梗塞、脳出血、心筋梗塞などの健康および精神的な病気の原因は様々な要因が重なり合って発生するものであり、それら病気の原因の一つとして気象条件が挙げられている。これらの病気がどのような気象条件の時に発生するかを正確に予想することは難しいと言われている。その難しい予報の1つとして、広島県医師会と日本気象協会が共同して、全国に先駆けて「心筋梗塞・脳卒中予報」を提供している。広島県の過去の救急搬送のデータから、一日の平均気温が6度未満になると、6度以上の時より心筋梗塞の患者の搬送患者が増えることがわかった。これに加え、平均気圧が、1013へクトパスカル未満だとより搬送患者が多くなった。また、気温、気圧に関わらず、寒冷前線が通過する時なども患者が多かった。こうした結果から、心筋梗塞では3段階で、県を北部、南部に2分して危険度を予報している。
【0007】
この他にも、気象情報に基づいて病気の発生を予想する手法として以下に示すようなものが提案されている。
【0008】
特許文献3では、「インターネットを介して気象情報をユーザーに提供する気象情報の提供方法であって、WWWサーバーもしくはクライアント端末は、ユーザー固有のソフトウェアプロセスを備え、上記ユーザー固有のソフトウェアプロセスは、ユーザーの要求に応じて、ユーザー属性に基づいて気象情報を収集・監視・加工しユーザーに提供することを特徴とする気象情報の提供方法」等が提案されている。特に、「0037」段落には、「また、気象は、いろいろな分野と密接にかかわっており、防災業務以外でも、さまざまな分野に、気象情報を積極的に活用していこう、という、動きが、民間気象会社を中心に出てきている。その1つが「医療と気象」であり、主に、民間気象会社の人間によるサービス提供が行われている。例えば、低気圧の接近してくる時には、腰痛などの疾病が発生しやすいことが知られている。また、2月から4月にかけ、気温が高く、風が強い日には、空気中の花粉量が増大し、花粉症の症状が悪化することが知られている。また、9月〜10月にかけ気温が急激に低くなる日には、喘息の発作が起きやすくなることが知られている。」と記載されている。
【0009】
特許文献4では、「健康管理委託会員と管理センターと医療機関の三者間において、公衆回線、専用回線、CATV回線などを利用して双方向映像・音声・データ通信機能を具備したコンピュータネットワークシステムを構築し、端末器を介して入力・送信される会員の日々の健康データをサービスセンターと医療機関の端末器に表示させて監視するとともに会員の個別データベースとして蓄積し、逐次健康・医療アドバイスを遂行するとともに、体の機能に影響を与える気象因子を説明変数、疾病発生を目的変数として数量化理論II類に基づく多変量解析を行って気象と疾病発生予測との相関関係を明らかにしたモデル判別式を作成し、気象変化の予想とともに疾病発生確立を予測して疾病発生の予防を図ることを特徴とする在宅健康管理システム」等が提案されている。特に、「0036」段落には、「管理センターCSには各種情報の入出力を行うとともに会員HMから送られてくる日々の健康データを監視する端末器、当該日々の健康データをデータベース化して蓄えるサーバー、日々の健康データとデータベース内データを比較して異常の有無を判断する演算処理装置、刻々と変化する気象データの精細情報を取得する端末器、取得した気象データを蓄える気象データベースサーバー、気象状況と健康データとの相関関係に基いて疾病の発生確率を予測し、データベース化した気象−疾病データベースなどが設置されている。」と記載されている。
【0010】
特許文献5では、「利用者個人についての医学気象予報情報を配信する医学気象予報配信システムであって、入力される気象情報及び入力される医学情報並びに前記利用者についての健康状態等の身体的特徴を示す個人データに基づいた、個人ごとの医学気象予報情報を配信することを特徴とする医学気象予報配信システム」等が提案されている。
【0011】
特許文献6では、「ネットワークを介して接続された移動端末と解析センターとを含み、前記移動端末を保持するユーザーの疾患の罹患可能性を判断する診断支援システムであって、前記移動端末は、前記ユーザーから採取した試料中に前記疾患の罹患を特徴的に示す特徴成分が存在するか否かを検出する検出部と、前記検出部による検出結果をユーザーの症状を示す症状データとして前記解析センターに送信する送信処理部と、を含み、前記解析センターは、前記症状データを、前記移動端末から前記症状データが送信されたときの前記移動端末の位置に対応付けて取得するデータ取得部と、前記症状データと前記疾患の罹患者に発生する特徴を示す参照パラメーターとに基づき、前記ユーザーが前記疾患に罹患している罹患可能性を計算する罹患可能性計算部と、複数の前記ユーザーの前記罹患可能性と対応する前記位置とに基づき、エリア毎に前記疾患の罹患者の存在状況を推定する推定処理部と、を含むことを特徴とする診断支援システム」等が提案されている。
【0012】
特許文献7では、「環境変化や流行病の傾向を表わす環境因子を取得する環境因子取得手段と、前記取得した環境因子又は該環境因子の組み合わせを基に所定の疾病の発生を予測する疾病予測手段と、予め前記疾病の発生するリスクを有する通知対象者の群を記憶しておき、前記発生が予測された疾病の情報を受けて、該疾病の発生するリスクに対応する群を検索する通知対象者管理手段と、前記検索された群に含まれる前記通知対象者に警告を通知する警告手段とを備えることを特徴とする疾病管理装置」等が提案されている。
【0013】
特許文献8では、「健康食品、機能性食品、機能性飲料、栄養補助食品、調味料、もしくはサプリメントなどの食品類あるいは薬剤を複数収容した収容手段と、前記収容手段のそれぞれの収容物を指示に基づいて出力する吐出部と、利用者の生体データ値を検出する生体センサーと、操作部あるいは外部から入力される利用者の行動に関するスケジュールデータを記憶するスケジュール記憶部と、前記生体センサーによって検出された前記生体データ値と、前記スケジュール記憶部に記憶された前記スケジュールデータとにより、前記収容物のそれぞれの中から適した配合を決定すると共に、前記吐出部を介して前記決定に応じた前記収容物を出力させる制御手段と、を備えたことを特徴とする配合出力装置」等が提案されている。
【0014】
特許文献9では、「将来の疾病症状を、過去の疾病症状時系列データと、過去の環境に関する時系列データと、将来の環境予測データとの関数とみなし、前記データが得られるごとに、前記関数に含まれる係数を推定し、疾病症状の予測式を算出し、最新の前記データを前記疾病症状の予測式に入力し、前記疾病症状の予測式の値により将来の疾病症状を予測し、症状に応じた対策情報を提供する、ことを特徴とする疾病対策支援方法」等が提案されている。
【0015】
特許文献10では、「ネギ栽培圃場ごとに計測された気温とネギ葉面の濡れとに基づき予測モデルを用いて、降水量と風速データを参考にネギに感染した日、およびその発病の急増日を予測する方法」等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2011−048775号公報
【特許文献2】特開2001−325689号公報
【特許文献3】特開2002−251484号公報
【特許文献4】特開2001−067403号公報
【特許文献5】特開2002−311158号公報
【特許文献6】再公表WO2004/098402号公報
【特許文献7】特開2008−165716号公報
【特許文献8】特開2008−237718号公報
【特許文献9】特開2005−063218号公報
【特許文献10】特開2008−125496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、県を2分した予報では、特に注意すべき時間帯、地域が、わかりづらいという問題がある。また、特許文献3乃至10の手法では、一般的な広域の気象情報を使用して病気の予測を行うため、病気が発生しやすいエリアや時間の予測精度が粗いという問題がある。従って、これらの手法により、病気の発生を正確に予測し、救急車両による効率の良い患者の搬送を実現することは難しい。
【0018】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様によれば、気象条件に応じて病気が発生しやすいエリアの予測精度を高め、患者の搬送を効率よく行うことを可能とする搬送管理システム及び搬送管理方法を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することが可能である。
【0020】
[適用例1]
本適用例に係る搬送管理システムは、患者の搬送手段の搬送状況を管理することができる搬送管理システムであって、搬送管理の対象地域に分散して配置される複数の気象計測装置と、前記複数の気象計測装置の各々が計測した気象データを利用して、病気の発生を予測する病気予測装置と、前記搬送手段の搬送状況を管理する搬送管理装置と、を含み、前記病気予測装置は、前記気象データを取得する気象データ取得部と、前記気象データ取得部が取得した気象データを利用して、気象を予測する気象予測部と、前記気象予測部の予測結果を、気象条件と病気との対応情報と照合し、病気別に発生する危険度を予測して病気予測情報を生成する病気予測情報生成部と、を含み、前記搬送管理装置は、前記病気予測装置が生成した前記病気予測情報を取得する病気予測情報取得部と、前記病気予測情報取得部が取得した前記病気予測情報を利用して、前記搬送手段を優先して確保すべきエリアを予測する搬送予測部と、を含む。
【0021】
この搬送管理システムによれば、搬送管理の対象地域に複数の気象計測装置を分散して配置し、各気象計測装置が計測する気象データを取得することで、広域的な気象情報と比較して、より狭いエリア毎の詳細な気象情報が得られる。そして、このエリア毎の詳細な気象情報を用いて気象に関係する病気の発生を予測するので、気象条件に応じて病気が発生しやすいエリアの予測精度を高めることができる。さらに、この精度の高い予測に基づき、患者の搬送手段を優先して確保すべきエリアを精度よく予測することができる。搬送管理者は、この予測を参考にして搬送手段を保有する施設に連絡し、あらかじめ必要な台数の搬送手段を確保しておくことで、患者の搬送要請があった場合に患者の搬送手段を効率よく行うことができる。
【0022】
[適用例2]
上記適用例に係る搬送管理システムにおいて、前記搬送管理装置は、前記搬送予測部が、前記病気予測情報を利用して、前記エリアにおいて確保すべき前記搬送手段の台数をさらに予測するようにしてもよい。
【0023】
搬送管理者は、この確保すべき搬送手段の台数の情報を参考にして、搬送手段を保有する施設に連絡し、あらかじめ必要な台数の搬送手段を確保することができる。
【0024】
[適用例3]
上記適用例に係る搬送管理システムにおいて、前記搬送管理装置は、前記搬送予測部が、前記病気予測情報を過去の患者の搬送実績の統計情報と照合し、前記エリアにおいて確保すべき前記搬送手段の台数を予測するようにしてもよい。
【0025】
このようにすれば、確保すべき搬送手段の台数の予測精度を高めることができる。
【0026】
[適用例4]
上記適用例に係る搬送管理システムにおいて、前記搬送管理装置は、前記搬送予測部が、前記搬送手段を保有する施設の所在地の情報及び当該施設における前記搬送手段の保有台数の情報を利用して、前記搬送手段を保有する施設毎に確保すべき前記搬送手段の台数を算出するようにしてもよい。
【0027】
搬送管理者は、この施設毎に確保すべき搬送手段の台数の情報を参考にして、手間を軽減しながら、必要な台数の搬送手段を効率よく確保することができる。
【0028】
[適用例5]
上記適用例に係る搬送管理システムにおいて、前記搬送管理装置は、患者の搬送要請があった場合、当該患者の現在地の情報及び前記搬送手段を保有する施設毎の所在地の情報を利用して、搬送を指示する施設を選択し、当該選択した施設に対して前記搬送手段による搬送を指示する搬送指示情報を生成する搬送指示情報生成部をさらに含み、前記選択した施設の情報端末に前記搬送指示情報を送信するようにしてもよい。
【0029】
このようにすれば、患者の搬送要請があった場合に、効率的な搬送を自動化することができる。
【0030】
また、前記搬送指示情報生成部は、患者の現在地の情報と医療施設の所在地の情報とに基づいて患者の搬送先の医療施設を選択し、当該搬送先の医療施設の情報を含む前記搬送指示情報を生成するようにしてもよい。
【0031】
さらに、前記搬送管理装置は、道路の渋滞情報を取得し、前記搬送指示情報生成部が、前記渋滞情報に基づいて患者の搬送ルートを選択し、選択した搬送ルートの情報を含む前記搬送指示情報を生成するようにしてもよい。
【0032】
[適用例6]
上記適用例に係る搬送管理システムにおいて、前記搬送管理装置は、道路の渋滞情報を取得し、当該渋滞情報を医療施設の所在地の情報とともに表示部に表示するようにしてもよい。
【0033】
このようにすれば、搬送管理者は、渋滞の状況をリアルタイムに監視しながら適切な搬送ルートを選択し、適切な搬送指示を行うことができる。
【0034】
[適用例7]
上記適用例に係る搬送管理システムにおいて、前記複数の気象計測装置の各々は、気圧センサーを備え、前記病気予測装置は、前記気象予測部が、前記気象データ取得部が取得した気象データに含まれる気圧データから得られる気圧変化の情報を利用して所与の気象変動が発生するか否かを判定し、判定結果に基づいて気象を予測するようにしてもよい。
【0035】
このようにすれば、局地的な気象変動を考慮したより正確な気象予測を行うことができるので、効率のよい搬送管理を行うことができる。
【0036】
[適用例8]
本適用例に係る搬送管理方法は、患者の搬送手段の搬送状況を管理する搬送管理方法であって、搬送管理の対象地域に分散して配置される複数の気象計測装置の各々から気象データを取得する気象データ取得ステップと、前記気象データ取得ステップで取得した気象データを利用して、気象を予測する気象予測ステップと、前記気象予測ステップでの予測結果を、気象条件と病気との対応情報と照合し、病気別に発生する危険度を予測して病気予測情報を生成する病気予測情報生成ステップと、前記病気予測情報を利用して、前記搬送手段を優先して確保すべきエリアを予測する搬送予測ステップと、を含む。
【0037】
[適用例9]
上記適用例に係る搬送管理システムにおいて、前記気象計測装置は、前記気圧センサーが、気圧に応じて共振周波数を変化させる感圧素子を有し、当該感圧素子の振動周波数に応じた気圧データを出力するようにしてもよい。
【0038】
一般に気象観測に用いられる気圧計の分解能はhPaオーダーであるのに対して、周波数変化型の気圧センサーは、感圧素子の振動周波数を高い周波数のクロック信号で計測することで比較的容易にPaオーダーの測定分解能を得ることができる。また、周波数変化型の気圧センサーは、気圧がゆっくり変化しているのか、あるいは急激に変化しているのか、気圧の変動量(気圧の変化具合)を高精度に検出することができる。そして、高分解能な周波数変化型の気圧センサーを用いることで短時間におけるわずかな気圧の変化を捉えて、局地的に発生して短時間に消滅する気象変動を予測するために有効な情報を提供することができる。この情報を解析することで、気象変動を精度よく予測することができる。
【0039】
[適用例10]
上記適用例に係る搬送管理システムにおいて、前記気象計測装置は、前記感圧素子が、双音叉圧電振動子であるようにしてもよい。
【0040】
感圧素子として双音叉圧電振動子を用いることで、より高い分解能の気圧センサーを実現することができる。
【0041】
[適用例11]
上記適用例に係る搬送管理システムにおいて、前記病気予測装置は、前記気象予測部が、前記気象データ取得部が取得した気象データに含まれる気圧データから得られる気圧傾度の変化の情報に基づいて気象を予測するようにしてもよい。
【0042】
気圧傾度は2点間の気圧差に相当し、気圧傾度と風向・風速の間には相関があるので、気圧傾度の変化の情報から概略的な風向・風速を知ることができる。また、気圧傾度の変化から、局地的な気象変動を引き起こす局地的な低気圧の移動速度や移動方向を推測することができる。従って、気圧変化の情報と合わせて気圧傾度の変化の情報を利用することで、気象予測の精度を高めることが期待できる。
【0043】
[適用例12]
本適用例に係るプログラムは、患者の搬送手段の搬送管理の対象地域に分散して配置される複数の気象計測装置と、前記複数の気象計測装置の各々が計測した気象データを取得し、取得した気象データを利用して、気象を予測し、当該気象の予測結果を、気象条件と病気との対応情報と照合し、病気別に発生する危険度を予測して病気予測情報を生成する病気予測装置と、前記搬送手段の搬送状況を管理する搬送管理装置と、を含む、搬送管理システムの前記搬送管理装置において実行可能なプログラムであって、コンピューターを、前記病気予測装置が生成した前記病気予測情報を取得する病気予測情報取得部と、前記病気予測情報取得部が取得した前記病気予測情報を利用して、前記搬送手段を優先して確保すべきエリアを予測する搬送予測部として機能させる。
【0044】
[適用例13]
本適用例に係る記録媒体は、上記適用例に係るプログラムを記録した、コンピューター読み取り可能な記録媒体である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】分散配置された気象計測装置の一例を示す図。
【図2】本実施形態の搬送管理システムの構成例を示す図。
【図3】気象計測装置の構成例を示す図。
【図4】病気予測装置の構成例を示す図。
【図5】気象条件・病気対応情報の一例を示す図。
【図6】搬送管理装置の構成例を示す図。
【図7】救急車両保有施設情報の一例を示す図。
【図8】医療施設情報の一例を示す図。
【図9】病気予測装置の処理のフローチャートの一例を示す図。
【図10】病気予測情報の一例を示す図。
【図11】病気予測の画像の一例を示す図。
【図12】搬送管理装置の処理のフローチャートの一例を示す図。
【図13】搬送管理装置の表示画像の一例を示す図。
【図14】気圧センサーの構成例を示す図。
【図15】圧力センサー素子の断面の模式図。
【図16】圧力センサー素子の断面の模式図。
【図17】振動片およびダイヤフラムを模式的に示す下面図。
【図18】気象変動判定テーブルの一例を示す図。
【図19】第2実施形態における病気予測装置の処理のフローチャートの一例を示す図。
【図20】第3実施形態の搬送管理システムの構成例を示す図。
【図21】第3実施形態における搬送管理装置の構成例を示す図。
【図22】第3実施形態における搬送管理装置の処理のフローチャートの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0047】
1.第1実施形態
1−1.搬送管理システムの概要
本実施形態の搬送管理システムは、搬送管理の対象地域に分散して配置された多数の気象計測装置がそれぞれ計測する気象データから気象状況の推移を時間的にもエリア的にも精度よく予測し、気象の予測結果から、気象条件と相関があると考えられる病気の各々の危険度をエリア毎に予測する。そして、このエリア毎に予測した病気別の危険度の情報に基づいて、危険度の高いエリア(すなわち、救急搬送の要請が多発することが想定されるエリア)に救急車両を優先的に配車できる体制を整えておくことで、想定エリアで救急搬送の要請があった場合に、効率よく確実に患者を搬送することができる。
【0048】
図1に示すように、本実施形態では、搬送管理の対象地域に、多数の気象計測装置2(白抜きの丸で表示)が碁盤目状に分散配置され、各気象計測装置2をノードとする観測メッシュが形成される。ただし、搬送管理の対象地域に複数の気象計測装置2が分散配置されていればよく、碁盤目状に配置されていなくてもよい。気象計測装置2は、例えば、ビルや家屋等の建物(不図示)などに配置される。
【0049】
本実施形態における観測メッシュでは、4つのノードによって1つの矩形状のエリアが形成されている。各エリアの1辺の長さ(ノード間の距離)は、気象計測装置2を分散配置する地域の気候やその他の状況を考慮して、十分な精度で気象の予測が可能な値(例えば、数百m〜数km程度)に設定される。この観測メッシュの1つのエリアは、アメダス(AMeDAS:「Automated Meteorological Data Acquisition System」)と呼ばれる地域気象観測システムにおける観測メッシュの1区画(約21km×21km)と比べて十分に小さいものとなっており、アメダス(AMeDAS)では観測できない局地的な気象変動を捉えることを可能とする。
【0050】
ノード間の距離は一定でなくてもよく、例えば、気象計測装置2は、携帯電話等の基地局、コンビニエンスストア、スマートグリッドの電気メーターなどに設置されていてもよい。なお、図1では、便宜上、区画の境界線を破線で表示しているが、実際にはこのような境界線を表示する必要はない。
【0051】
各気象計測装置2は、一定周期で各地点の気象を計測し、計測した気象データを不図示の病気予測装置に送信する。病気予測装置は、各気象計測装置2からの気象データを受信し、受信した気象データに基づいて気象状況の推移を予測し、気象の予測結果を、過去の統計データから抽出された気象条件と病気の発生との対応情報(気象条件・病気対応情報)と照合することで、エリア毎に病気別の危険度を精度よく予測する。病気予測装置は、気象計測装置2が分散配置された地域内又は当該地域外のいずれに設置されていてもよい。例えば、インターネット等の通信ネットワークに接続されたサーバーを病気予測装置としてもよい。
【0052】
そして、病気予測装置が予測したエリア毎の病気別の危険度の情報は、救急車両による搬送を管理する搬送管理センター(例えば、119番通報を受け付ける緊急通報管理センター)に設置された搬送管理装置に送信され、救急要請が増加すると予測されるエリアの情報が、救急車両を保有する施設(以下、「救急車両保有施設」という)の位置や救急要請に備えて各救急車両保有施設が確保すべき救急車両の台数等の情報とともに地図画像にマッピングされて搬送管理装置のモニターに表示される。また、医療施設の位置や診療科等の情報も地図画像にマッピングされて搬送管理装置のモニターに表示される。
【0053】
搬送管理者は、搬送管理装置のモニターに表示された情報を参考にして、救急車両保有施設や医療施設に適切な指示を行うことができる。
【0054】
1−2.搬送管理システムの構成
図2は、本実施形態の搬送管理システムの構成例を示す図である。本実施形態の搬送管理システムは、図2の構成要素(各部)の一部を省略したり、他の構成要素を付加した構成としてもよい。
【0055】
図2に示すように、本実施形態の搬送管理システム1は、複数の気象計測装置2、病気予測装置4、搬送管理装置5を含む。
【0056】
各気象計測装置2は、各地点の気象をリアルタイムに計測し、計測した気象データを、通信ネットワーク3(インターネットやLAN等)を介して病気予測装置4(サーバー)に送信する。
【0057】
病気予測装置4は、通信ネットワーク3を介して、各気象計測装置2から気象データを受信し、気象条件を加味したエリア毎の病気別の危険度を予測する。このエリア毎の病気別の危険度の情報は、通信ネットワーク3を介して搬送管理装置5に送られ、搬送管理装置5の表示部にリアルタイムに表示される。
【0058】
[気象計測装置の構成]
図3は、図2の気象計測装置2の構成例を示す図である。図3に示すように、本実施形態では、各気象計測装置2は、気圧センサー10、温度センサー11、湿度センサー12を備える。ただし、気象計測装置2は、気圧センサー10、温度センサー11、湿度センサー12の一部を備えていなくてもよいし、逆に、他のセンサー(例えば、風速センサー等)を備えていてもよい。
【0059】
気象計測装置2は、例えば秒オーダーあるいは分オーダーの周期でリアルタイムに気象を計測し、気圧センサー10、温度センサー11、湿度センサー12により計測された気象データ(気圧データ、温度データ、湿度データ)は、送信部14により病気予測装置4に送信される。
【0060】
[病気予測装置の構成]
図4は、図2の病気予測装置4の構成例を示す図である。図4に示すように、本実施形態では、病気予測装置4は、処理部(CPU:Central Processing Unit)20、操作部30、通信部32、記憶部34、記録媒体36、表示部38を含んで構成されている。本実施形態の病気予測装置は、図4の構成要素(各部)の一部を省略したり、他の構成要素を付加した構成としてもよい。
【0061】
操作部30は、操作キーやボタンスイッチ等により構成される入力装置であり、操作部30の操作に応じた操作信号を処理部(CPU)20に出力する。
【0062】
表示部38は、LCD(Liquid Crystal Display)等により構成される表示装置であり、処理部(CPU)20から入力される表示信号に基づいて各種の情報を表示する。
【0063】
記憶部34は、処理部(CPU)20が各種の計算処理や制御処理を行うためのプログラムやデータ等を記憶している。また、記憶部34は、処理部(CPU)20の作業領域として用いられ、記録媒体36から読み出されたプログラムやデータ、通信部32を介して受信したデータや処理部(CPU)20が各種プログラムに従って実行した演算結果等を一時的に記憶するためにも使用される。
【0064】
処理部(CPU)20は、記憶部34や記録媒体36に記憶されているプログラムに従って、各種の計算処理や制御処理を行う。例えば、処理部(CPU)20は、操作部30からの操作信号に応じた各種の処理、表示部38に各種の情報を表示させる処理、通信部32を介してデータを受け取って各種の計算処理を行う。また、処理部(CPU)20は、通信部32を介した各気象計測装置2や搬送管理装置5とのデータ通信を制御する処理等を行う。
【0065】
特に、本実施形態では、処理部(CPU)20は、気象データ取得部21、気象予測部22、病気予測情報生成部23、通信制御部24、表示制御部25を含む。ただし、本実施形態の処理部(CPU)20は、これらの一部の構成(要素)を省略したり、他の構成(要素)を追加した構成としてもよい。
【0066】
気象データ取得部21は、通信部32から送られてくる気象データ(複数の気象計測装置2が計測した気象データ)を、気象計測装置2の識別IDと対応づけて継続して取得する処理を行う。具体的には、気象データ取得部21は、各気象データを受け取り、受け取った各気象データを気象計測装置2毎に割り当てられた識別IDと対応づけて順番に記憶部34に保存する。
【0067】
気象予測部22は、気象データ取得部21が取得した気象データに基づいて、気象を予測する処理を行う。
【0068】
病気予測情報生成部23は、気象予測部22の予測結果を、気象条件と病気との対応情報(気象条件・病気対応情報)と照合し、病気別に発生する危険度を予測して病気予測情報(病気別の危険度の予測情報)を生成する処理を行う。
【0069】
通信制御部24は、通信部32を介する各気象計測装置2や搬送管理装置5とのデータ通信等を制御する処理を行う。特に、本実施形態では、通信制御部24は、通信部32を介して、各気象計測装置2から気象データを受信し、病気予測情報を搬送管理装置5に送信する。
【0070】
表示制御部25は、表示部38への情報の表示を制御する処理を行う。特に、本実施形態では、表示制御部25は、病気予測情報生成部が生成した病気予測情報を画像に変換して表示部38に表示する。表示部38に表示される画像は、操作部30の操作に応じて選択される。
【0071】
記録媒体36は、コンピューター読み取り可能な記録媒体であり、特に本実施形態では、コンピューターを上記の各部として機能させるためのプログラムが記憶されている。そして、本実施形態の処理部(CPU)20は、記録媒体36に記憶されているプログラムを実行することで、気象データ取得部21、気象予測部22、病気予測情報生成部23、通信制御部24、表示制御部25として機能する。あるいは、通信部32等を介して有線又は無線の通信ネットワークに接続された他のサーバーから当該プログラムを受信し、受信したプログラムを記憶部34や記録媒体36に記憶して当該プログラムを実行するようにしてもよい。ただし、気象データ取得部21、気象予測部22、病気予測情報生成部23、通信制御部24、表示制御部25の少なくとも一部をハードウェア(専用回路)で実現してもよい。
【0072】
なお、記録媒体36は、例えば、光ディスク(CD、DVD)、光磁気ディスク(MO)、磁気ディスク、ハードディスク、磁気テープ、メモリー(ROM、フラッシュメモリーなど)により実現することができる。
【0073】
本実施形態では、記憶部34あるいは記録媒体36には、特に、気象条件と病気の種類との対応関係を示す、気象条件・病気対応情報が記憶されている。
【0074】
図5は、気象条件・病気対応情報の一例を示す図である。図5に示すように、気象条件・病気対応情報300は、気象条件(310)及び病気の種類(320)の情報を含む。図5の例では、気象条件「A1」と病気「B1」、気象条件「A2」と病気「B2」、気象条件「A3」と病気「B3」がそれぞれ対応付けられている。例えば、気象条件「A1」が満たされると、病気「B1」の発生頻度が高くなることを意味する。
【0075】
この気象条件・病気対応情報300は、例えば、過去の発病データと発病時の気象データを統計的に分析して気象条件と病気との因果関係を抽出することにより作成される。過去の発病データとしては、病院に救急搬送された患者の診察・治療・手術に関するデータ、入院患者や通院患者の診察や治療に関するデータ、患者から定期的に取得した生体データ、患者の体調に関するアンケートの回答等を利用することができる。過去の気象データは、アメダス(AMeDAS)等から得られた、発病時の広域気象情報から計算される発病場所の気象データであってもよいし、分散配置された気象計測装置2が計測した気象データを過去の気象データとして利用してもよい。
【0076】
なお、過去の発病データと発病時の気象データが新たに得られる毎に、気象条件・病気対応情報300は最新の情報に更新される。
【0077】
[搬送管理装置の構成]
図6は、図2の搬送管理装置5の構成例を示す図である。図6に示すように、本実施形態では、搬送管理装置5は、処理部(CPU)50、操作部60、通信部62、記憶部64、記録媒体66、表示部68を含んで構成されている。
【0078】
操作部60は、操作キーやボタンスイッチ等により構成される入力装置であり、搬送管理者による操作部60の操作に応じた操作信号を処理部(CPU)20に出力する。
【0079】
表示部68は、LCD等により構成される表示装置であり、処理部(CPU)50から入力される表示信号に基づいて各種の情報を表示する。
【0080】
記憶部64は、処理部(CPU)50が各種の計算処理や制御処理を行うためのプログラムやデータ等を記憶している。また、記憶部64は、処理部(CPU)50の作業領域として用いられ、記録媒体66から読み出されたプログラムやデータ、通信部62を介して受信したデータや処理部(CPU)50が各種プログラムに従って実行した演算結果等を一時的に記憶するためにも使用される。
【0081】
処理部(CPU)50は、記憶部64や記録媒体66に記憶されているプログラムに従って、各種の計算処理や制御処理を行う。例えば、処理部(CPU)50は、操作部60からの操作信号に応じた各種の処理、表示部68に各種の情報を表示させる処理、通信部62を介してデータを受け取って各種の計算処理を行う。また、処理部(CPU)50は、通信部62を介した病気予測装置4とのデータ通信を制御する処理等を行う。
【0082】
特に、本実施形態では、処理部(CPU)50は、病気予測情報取得部51、搬送予測部52、通信制御部53、表示制御部54を含む。ただし、本実施形態の処理部(CPU)50は、これらの一部の構成(要素)を省略したり、他の構成(要素)を追加した構成としてもよい。
【0083】
病気予測情報取得部51は、通信部62から送られてくる病気予測情報(病気予測装置4が生成した病気予測情報)を継続して取得する処理を行う。具体的には、病気予測情報取得部51は、病気予測情報を受け取り、受け取った病気予測情報を順番に記憶部64に保存する。
【0084】
搬送予測部52は、病気予測情報取得部51が取得した病気予測情報に基づいて、救急車両を優先して確保すべきエリア(救急搬送の要請が現在よりも増加すると予測されるエリア)と当該エリアにおいて確保すべき前記搬送車両の台数を予測する処理を行う。さらに、搬送予測部52は、救急車両保有施設の所在地の情報及び当救急車両保有施設における救急車両の保有台数の情報(両者とも後述する救急車両保有施設情報に含まれる)に基づいて、救急車両保有施設毎に確保すべき救急車両の台数を算出する。
【0085】
通信制御部53は、通信部62を介する病気予測装置4とのデータ通信等を制御する処理を行う。特に、本実施形態では、通信制御部53は、通信部62を介して、病気予測装置4から病気予測情報を受信する。
【0086】
表示制御部54は、表示部68への情報の表示を制御する処理を行う。特に、本実施形態では、表示制御部54は、病気予測情報を画像に変換し、救急車両保有施設の位置や救急車両の保有台数の情報とともに地図画像にマッピングした画像を生成して表示部68に表示する。表示部68に表示される画像は、搬送管理者による操作部60の操作に応じて選択される。
【0087】
記録媒体66は、コンピューター読み取り可能な記録媒体であり、特に本実施形態では、コンピューターを上記の各部として機能させるためのプログラムが記憶されている。そして、本実施形態の処理部(CPU)50は、記録媒体66に記憶されているプログラムを実行することで、病気予測情報取得部51、搬送予測部52、通信制御部53、表示制御部54として機能する。あるいは、通信部62等を介して有線又は無線の通信ネットワークに接続された他のサーバーから当該プログラムを受信し、受信したプログラムを記憶部64や記録媒体66に記憶して当該プログラムを実行するようにしてもよい。ただし、病気予測情報取得部51、搬送予測部52、通信制御部53、表示制御部54の少なくとも一部をハードウェア(専用回路)で実現してもよい。
【0088】
なお、記録媒体66は、例えば、光ディスク(CD、DVD)、光磁気ディスク(MO)、磁気ディスク、ハードディスク、磁気テープ、メモリー(ROM、フラッシュメモリーなど)により実現することができる。
【0089】
本実施形態では、記憶部64あるいは記録媒体66には、特に、救急車両保有施設(消防署や病院等)に関する救急車両保有施設情報と、医療施設(病院等)に関する医療施設情報が記憶されている。
【0090】
図7は、救急車両保有施設情報の一例を示す図である。また、図8は、医療施設情報の一例を示す図である。
【0091】
図7に示すように、救急車両保有施設情報500は、施設ID(510)、名称(520)、所在地(530)及び救急車両の保有台数(540)の情報を含む。図7の例では、例えば、施設IDがS1の施設は、所在地が(X1,Y1)のXX消防署であり、救急車両を3台保有していることを意味する。
【0092】
図8に示すように、医療施設情報600は、施設ID(610)、名称(620)、所在地(630)、種別(640)及び診療科(650)の情報を含む。図8の例では、例えば、施設IDがM1の施設は、所在地が(x1,y1)のxx病院であり、総合病院であり、診療科が消化器科,循環器科,・・・であることを意味する。
【0093】
1−3.搬送管理システムの処理
[病気予測装置の処理]
図9は、病気予測装置4の処理部(CPU)20の処理のフローチャートの一例を示す図である。
【0094】
まず、処理部(CPU)20は、各気象計測装置2が計測した気象データを取得する(S10)。この気象データより、各気象計測装置2が設置された各地点の気圧、気温、湿度等の気象の情報が得られる。
【0095】
次に、処理部(CPU)20は、ステップS10で現在までに取得した気象データの時系列に基づく現在までの各地点の気象の推移から、観測メッシュの各エリアのT時間後(例えば、12時間後)までの気象の推移を予測する(S12)。
【0096】
次に、処理部(CPU)20は、観測メッシュのエリア毎に、ステップS12で得られた気象の推移の予測結果を気象条件・病気対応情報300と照合し、T1時間後,T2時間後,・・・(例えば、1時間後,2時間後,・・・)の病気別の危険度を判定する(S14)。
【0097】
次に、処理部(CPU)20は、ステップS14における観測メッシュのエリア毎の病気別の危険度の判定結果から、病気予測情報(予測時刻、病気の種類、危険度、エリアの対応情報)を作成する(S16)。
【0098】
次に、処理部(CPU)20は、ステップS16で生成した病気予測情報を搬送管理装置5に送信する(S18)。
【0099】
そして、処理部(CPU)20は、病気予測処理を終了する(S20のY)まで、所定時間が経過する毎に(S22のY)、S10〜S18の処理を繰り返し行う。
【0100】
図10は、図9のステップS16で作成される病気予測情報の一例を示す図である。図9に示すように、病気予測情報400は、予測時刻(410)、病気の種類(420)、危険度(430)、エリア(440)の対応関係を示す情報である。
【0101】
予測時刻(410)は、現時刻を基準(0)とした時刻である。病気の種類(420)は、図5に示した気象条件・病気対応情報300の病気の種類(320)と対応している。危険度(430)は、各病気が発生する危険度を段階的(例えば、3段階)に数値で表したものであり、例えば、危険度0は「ほとんど危険なし」、危険度1は「危険」、危険度2は「非常に危険」を意味する。エリア(440)は、観測メッシュの各エリアを表す。
【0102】
図10の例の病気予測情報400は、現在からT1時間後、病気A1の危険度が0のエリアはX1,X6,・・・、病気A1の危険度が1のエリアはX2,X3,・・・、病気A1の危険度が2のエリアはX4,X5,・・・、病気A2の危険度が0のエリアはX1,X2,X3,X4,・・・、病気A2の危険度が1又は2のエリアは無いことを示している。
【0103】
また、図10の例の病気予測情報400は、現在からT2時間後、病気A1の危険度が0のエリアはX1,・・・、病気A1の危険度が1のエリアはX6,・・・、病気A1の危険度が2のエリアはX2,X3,X4,X5,・・・、病気A2の危険度が0のエリアはX1,X2,・・・、病気A2の危険度が1のエリアはX3,X4,・・・、病気A2の危険度が2のエリアは無いことを示している。
【0104】
この病気予測情報400は、病気予測装置4の表示部38に病気予測の画像として表示されるとともに、搬送管理装置5に送信される。操作部30の操作により予測時刻や病気の種類が選択されると、選択された予測時刻における選択された病気の危険度をエリア毎に示す病気予測の画像が表示部38に表示される。
【0105】
図11(A)及び図11(B)は、表示部38に表示される病気予測の画像の一例を示す図である。図11(A)及び図11(B)において、格子点が観測メッシュの各ノード(気象観測装置2の設置地点)に対応し、4つの格子点を頂点とする矩形の各々が観測メッシュの各エリアに対応している。図11(A)は現在から1時間後の画像であり、図11(B)は現在から2時間後の画像である。図11(A)及び図11(B)において、白色のエリアは選択された病気(例えば、心筋梗塞)の危険度が0(「ほとんど危険なし」)のエリアであり、網掛け模様のエリアは選択された病気の危険度が1(「危険」)のエリアであり、黒色のエリアは選択された病気の危険度が2(「非常に危険」)のエリアである。この画像を見ることで、数時間後の観測メッシュの各エリアの病気別の危険度が容易にわかる。
【0106】
[搬送管理装置の処理]
図12は、搬送管理装置5の処理部(CPU)50の処理のフローチャートの一例を示す図である。
【0107】
まず、処理部(CPU)50は、病気予測装置4が生成した病気予測情報を取得する(S50)。この病気予測情報により、観測メッシュのエリア毎の病気別の危険度の情報が得られる。
【0108】
次に、処理部(CPU)50は、ステップS50で取得した病気予測情報に基づいて、救急搬送の要請が現在よりも増加すると予測されるエリアを特定する(S52)。例えば、処理部(CPU)50は、発病した場合に救急搬送される可能性が高い病気を優先し、当該病気の危険度が閾値よりも高い観測メッシュの複数のエリアを含むエリアを、救急搬送の要請が現在よりも増加すると予測されるエリアとして特定してもよい。
【0109】
次に、処理部(CPU)50は、ステップS52で特定したエリアにおける救急搬送に確保すべき救急車両の台数を予測する(S54)。例えば、処理部(CPU)50は、救急搬送の要請が現在よりも増加すると予測されるエリアのサイズや病気の危険度に応じて、確保すべき救急車両の台数を予測するようにしてもよい。
【0110】
次に、処理部(CPU)50は、ステップS54で予測した確保すべき救急車両の台数の予測結果と救急車両保有施設情報500に基づいて、救急車両保有施設毎に確保すべき救急車両の台数を算出する(S56)。例えば、処理部(CPU)50は、ステップS52で特定したエリア内にある救急車両保有施設に対しては、確保する救急車両の台数の保有台数に対する比率を高く設定し、当該エリアから離れた位置にある救急車両保有施設ほど、当該比率を低く設定し、全体としてステップS54で予測した確保すべき救急車両の台数となるように、救急車両保有施設毎に確保すべき救急車両の台数を割り振るようにしてもよい。
【0111】
次に、処理部(CPU)50は、ステップS52で特定したエリアを含む地図、ステップS54で予測した当該特定したエリアにおける救急搬送に確保すべき救急車両の台数、ステップS56で算出した救急車両保有施設毎に確保すべき救急車両の台数とともに、救急車両保有施設情報500を参照して得られる、救急車両保有施設の名称、位置、救急車両の保有台数の情報、医療施設情報600を参照して得られる、医療施設の名称、位置、診療科の情報等を含む画像を生成し、表示部68に表示する(S58)。
【0112】
そして、処理部(CPU)50は、処理を終了する(S60のY)まで、所定時間が経過する毎に(S62のY)、S50〜S58の処理を繰り返し行う。
【0113】
なお、ステップS52で、救急搬送の要請が現在よりも増加すると予測されるエリアとして、地理的に離れた複数のエリアが特定された場合、優先順位を設けてステップS54及びS56の処理を行うようにしてもよい。
【0114】
図13は、ステップS58で表示部68に表示される画像の一例を示す図である。図13の例では、斜線で示すエリアが地図上にマッピングされており、当該エリアが、救急搬送の要請が現在よりも増加すると予測されるエリアを示している。また、救急車両保有施設(R1〜R3)や医療施設(M1〜M8)の位置を示す黒丸が地図上にマッピングされている。その他、斜線で示すエリアで発病の増加が予想される病気の情報、各救急車両保有施設(R1〜R3)の情報、確保すべき救急車両の台数、医療施設(M1〜M8)の情報等が文字情報で表示される。
【0115】
搬送管理者は、このような画像を参考にして、救急搬送の要請が増えると予想されるエリアに救急車両を優先的に配車できる体制を整えておくように、救急車両保有施設(消防署や病院等)に連絡することができる。
【0116】
また、搬送管理者は、このような画像を参考にして、救急搬送の要請が増えると予想されるエリア内や当該エリアに近く、増加が予想される病気の治療が可能な医療施設に対して、事前に受け入れの準備を要請したり、救急搬送の要請を受けた場合は、救急搬送を依頼する救急車両保有施設や搬送先の医療施設を適切に選択し、選択したこれらの施設に要請の連絡をすることができる。
【0117】
以上に説明したように、第1実施形態の搬送管理システムによれば、病気予測装置4は、分散配置された複数の気象計測装置2の各々が計測した気象データを用いて、観測メッシュのエリア毎の詳細な気象条件を解析し、当該エリア毎の気象予測を行う。そして、病気予測装置4は、このエリア毎の気象予測をもとに病気別の発生の危険度を予測するので、病気別の発生しやすいエリアの予測精度を高めることができる。搬送管理装置5は、病気別の発生しやすいエリアの精度の高い予測に基づき、救急車両を優先して確保すべきエリアを精度よく予測することができる。搬送管理者は、この予測を参考にして救急車両保有施設に連絡し、あらかじめ必要な台数の救急車両を確保しておくことで、患者の救急搬送の要請があった場合に救急車両を効率よく配車することができる。
【0118】
2.第2実施形態
2−1.搬送管理システムの概要
第1実施形態の搬送管理システムでは、病気予測装置4は、各地点における現在までの気象の推移から、観測メッシュの各エリアの数時間後の気象を予測しているが、例えば、にわか雨が降ると急に湿度が上昇し、気温が低下するので、それまでの気象の推移のみから予測した湿度や気温と実際の湿度や気温に差が生じる。そのため、にわか雨等の局地的な気象変動が発生すると、病気予測の精度が低下するおそれがある。そこで、第2実施形態の搬送管理システムでは、病気予測装置4は、各地点における現在までの気象の推移から観測メッシュの各エリアの数時間後の気象を予測するだけでなく、局地的な気象変動を精度よく予測し、気象変動も考慮した病気予測を行う。局地的な気象変動としては、例えば、にわか雨、雷雨、集中豪雨、竜巻、突風などが挙げられるが、これらの気象変動は上昇気流により発達する積雲や積乱雲が発達することで発生する場合が多い。従って、上昇気流に伴う局地的な気圧の変化を捉えることで気象変動を精度よく予測することが可能となる。
【0119】
2−2.搬送管理システムの構成
第2実施形態の搬送管理システムの全体構成は、第1実施形態(図2)と同様であるため、図示及び説明を省略する。また、搬送管理装置5の構成は、第1実施形態(図6)と同様であるため、図示及び説明を省略する。
【0120】
[気象計測装置の構成]
気象計測装置2の構成は、第1実施形態(図3)と同様であるため、図示を省略するが、局地的な気圧の変化を捉えて気象変動の予測を可能とするためには、気象計測装置2は、ある程度高分解能の気圧センサー10を備える必要がある。このような気圧センサー10としては、圧力の変化を振動子の周波数の変化として捉える周波数変化型、圧力の変化を静電容量の変化として捉える静電容量型、圧力の変化をピエゾ抵抗の抵抗値の変化として捉えるピエゾ抵抗型などのセンサーを適用することができる。ただし、わずかな気圧の変化を捉えて気象変動の発生を早期に予測するためには、出来る限り高分解能な計測が可能な気圧センサーが望ましい。現在のところ、周波数変化型の気圧センサーは、静電容量型やピエゾ抵抗型の気圧センサーよりも高い分解能が得られており、周波数変化型の気圧センサーであれば1Pa以下の分解能も実現可能である。そのため、局地的な気象変動を早期に捉えるためには、周波数変化型の気圧センサー10を用いるのが有利である。
【0121】
図14は、周波数変化型の気圧センサー10の構成例を示す図である。図14に示すように、本実施形態の気圧センサー10は、圧力センサー素子100、発振回路110、カウンター120、TCXO(Temperature Compensated Crystal Oscillator)130、MPU(Micro Processing Unit)140、温度センサー150、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)160、通信インターフェース(I/F)170を含んで構成されている。ただし、本実施形態の気圧センサーは、図14の構成要素(各部)の一部を省略したり、他の構成要素を付加した構成としてもよい。
【0122】
圧力センサー素子100は、振動片の共振周波数の変化を利用する方式(振動方式)の感圧素子を有している。この感圧素子は、例えば、水晶、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム等の圧電材料で形成された圧電振動子であり、例えば、音叉型振動子、双音叉型振動子、AT振動子(厚みすべり振動子)、SAW共振子などが適用される。
【0123】
特に、双音叉型圧電振動子は、AT振動子(厚みすべり振動子)などに比べて、伸長・圧縮応力に対する共振周波数の変化が極めて大きく共振周波数の可変幅が大きいので、感圧素子として双音叉型圧電振動子を用いることで、わずかな気圧差を検出可能な高い分解能の気圧センサーを実現することができる。そのため、本実施形態の気圧センサー10は、感圧素子として双音叉型圧電振動子を用いている。なお、圧電材料として、Q値が高くかつ温度安定性に優れた水晶を選択することで、優れた安定性と最高水準の分解能および精度を実現することができる。
【0124】
図15は、本実施形態の圧力センサー素子100の断面の模式図である。図16は、本実施形態の圧力センサー素子100の振動片220およびダイヤフラム210を模式的に示す下面図である。図16は、封止板としてのベース230を省略して描いてある。図15は、図16のA−A線の断面に対応する。
【0125】
圧力センサー素子100は、ダイヤフラム210と、振動片220と、封止板としてのベース230と、を含む。
【0126】
ダイヤフラム210は、圧力を受圧して撓む可撓部を有する平板状の部材である。ダイヤフラム210の外側の面が受圧面214となっており、受圧面214の裏面側に一対の突起212が形成されている。
【0127】
振動片220は、振動ビーム(梁)222及び振動ビーム222の両端に形成された一対の基部224を有する。振動ビーム222は、一対の基部224の間に両持ち梁状に形成される。一対の基部224は、ダイヤフラム210に形成された一対の突起212にそれぞれ固定される。振動ビーム222には図示しない電極が適宜設けられ、電極から駆動信号を供給することで振動ビーム222を一定の共振周波数で屈曲振動させることができる。振動片220は、圧電性を有する材料で形成される。振動片220の材質としては、水晶、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム等の圧電材料が挙げられる。振動片220は、支持梁226によって枠部228に支持されている。
【0128】
ベース230は、ダイヤフラム210と接合されて、ダイヤフラム210との間にキャビティー232を形成する。キャビティー232を減圧空間とすることにより、振動片220のQ値を高める(CI値を小さくする)ことができる。
【0129】
このような構造の圧力センサー素子100において、ダイヤフラム210は、受圧面214に圧力を受けた場合に撓み、変形する。すると、振動片220の一対の基部224が、ダイヤフラム210の一対の突起212にそれぞれ固定されているため、ダイヤフラム210の変形に従って基部224間の間隔が変化する。すなわち、圧力センサー素子100に圧力が印加されたときに、振動ビーム222に引張または圧縮の応力を生じさせることができる。
【0130】
図17は、圧力センサー素子100の断面の模式図であり、ダイヤフラム210が圧力Pによって変形した状態を示している。図17は、圧力センサー素子100の外側から内側への力(圧力P)が作用することにより、ダイヤフラム210が素子の内側に向かって凸となる変形が生じた例である。この場合、一対の突起212の間の間隔は大きくなる。他方、図示しないが、圧力センサー素子100の内側から外側への力が作用する場合は、ダイヤフラム210が素子の外側に向かって凸となる変形が生じ、一対の突起212の間の間隔は小さくなる。従って、両端が一対の突起212にそれぞれ固定された振動片220の振動ビーム222に平行な方向に引張または圧縮の応力が生じる。すなわち、受圧面214に対して垂直方向に加わった圧力は、突起(支持部)212を介して、振動片220の振動ビーム222に対して平行な直線方向の応力に変換される。
【0131】
振動ビーム222の共振周波数は、以下のようにして解析することができる。図15及び図16に示すように、振動ビーム222の長さをl、幅をw、厚みをdとすると、振動ビーム222の長辺方向に外力Fが作用したときの運動方程式は、次式(1)によって近似される。
【0132】
【数1】
【0133】
式(1)において、Eは縦弾性定数(ヤング率)、ρは密度、Aは振動ビームの断面積(=w・d)、gは重力加速度、Fは外力、yは変位、xは振動ビームの任意の位置をそれぞれ表す。
【0134】
式(1)に一般解と境界条件を与えて解くことで、次のような、外力が無い場合の共振周波数の式(2)が得られる。
【0135】
【数2】
【0136】
断面2次モーメントI=dw3/12、断面積A=dw、λI=4.73より、式(2)は次式(3)のように変形することができる。
【0137】
【数3】
【0138】
従って、外力F=0の時の共振周波数f0は、ビームの幅wに比例し、長さlの2乗に反比例する。
【0139】
外力Fを2本の振動ビームに加えたときの共振周波数fFも同様の手順で求めると、次式(4)が得られる。
【0140】
【数4】
【0141】
断面2次モーメントI=dw3/12より式(4)は次式(5)のように変形することができる。
【0142】
【数5】
【0143】
式(5)において、SFは応力感度(=K・12/E・(l/w)2)、σは応力(=F/(2A))をそれぞれ表す。
【0144】
以上から、圧力センサー素子100に作用する力Fを圧縮方向のとき負、伸張方向のとき正としたとき、力Fが圧縮方向に加わると共振周波数fFが減少し、力Fが伸縮方向に加わると共振周波数fFが増加する。
【0145】
そして、次式(6)に示す多項式を用いて、圧力センサー素子100の圧力−周波数特性と温度−周波数特性に起因する直線性誤差を補正することで、高分解能かつ高精度の圧力値Pを得ることができる。
【0146】
【数6】
【0147】
式(6)において、fnはセンサー規格化周波数であり、fn=(fF/f0)2で表される。また、tは温度であり、α(t)、β(t)、γ(t)、δ(t)は、それぞれ次式(7)〜(10)で表される。
【0148】
【数7】
【0149】
【数8】
【0150】
【数9】
【0151】
【数10】
【0152】
式(7)〜(10)において、a〜pは補正係数である。
【0153】
すなわち、圧力センサー素子100の出力信号の周波数を計測することで、振動ビーム220の振動周波数(力Fが作用した時の共振周波数fF)が得られ、あらかじめ測定された共振周波数f0や補正係数a〜pを用いて、式(6)から圧力Pを計算することができる。
【0154】
図14に戻り、発振回路110は、圧力センサー素子100の振動ビーム222を共振周波数で発振させた発振信号を出力する。
【0155】
カウンター120は、発振回路110が出力する発振信号の所定周期を、基準クロック源であるTCXO130が出力する高精度のクロック信号でカウントするレシプロカルカウンターである。ただし、カウンター120を、所定のゲートタイムにおける圧力センサー素子100の発振信号のパルス数をカウントする直接計数方式の周波数カウンター(ダイレクトカウンター)として構成してもよい。
【0156】
MPU(Micro Processing Unit)140は、カウンター120のカウント値から圧力値Pを計算する処理を行う。具体的には、MPU140は、温度センサー150の検出値から温度tを計算し、EEPROM160にあらかじめ記憶されているa〜pの補正係数値を用いて、式(7)〜(10)よりα(t)、β(t)、γ(t)、δ(t)を計算する。さらに、MPU140は、カウンター120のカウント値とEEPROM160にあらかじめ記憶されている共振周波数f0の値を用いて、式(6)より圧力値Pを計算する。そして、MPUが計算した圧力値Pは、通信インターフェース170を介して、気圧センサー10の外部に出力される。
【0157】
このような構成の周波数変化型の気圧センサー10によれば、圧力センサー素子100の振動周波数をカウンター120によりTCXO130が出力する高精度かつ高周波数(例えば数十MHz)のクロック信号でカウントするとともに、MPU140でデジタル演算処理により圧力値の計算及び直線性誤差の補正を行うので、Paオーダーの高い分解能かつ高精度の圧力値(気圧データ)を得ることができる。さらに、気圧センサー10は、カウント時間を考慮しても秒オーダーの周期で気圧データを更新することができるので、短時間におけるわずかな気圧の変化も捉えることができ、リアルタイムの気象計測に適している。
【0158】
なお、本実施形態では、基準クロック源としてTCXO130を用いているが、基準クロック源を、温度補償回路を有さない発振回路、例えば、ATカット水晶振動子を搭載した水晶発振回路で構成しても良い。この場合、温度補償回路を有さない分、気圧変動の検出精度は低下するが、基準クロック源を当該水晶発振回路とするか、或いはTCXO130とするかは、システムのコストや精度に応じて設計者が適宜選択すればよい。
【0159】
[病気予測装置の構成]
第2実施形態における病気予測装置4の構成は、第1実施形態(図4)と同様であるため、図示を省略する。ただし、処理部(CPU)20の気象予測部22の機能が第1実施形態と異なる。
【0160】
気象予測部22は、気象データ取得部21が取得した気象データに含まれる気圧データに基づいて、局地的な気象変動の発生の有無を予測し、気象変動の発生が予測される場合には、当該気象変動に伴う気象変化を加味して各地点の気象の推移を予測する処理を行う。
【0161】
本実施形態では、記憶部34に、気象条件に関する判定基準と判定される気象変動との対応関係を定義する気象変動判定テーブル(不図示)が記憶されており、気象予測部22は、気象データ取得部21が取得した気象データから得られる気象状況の変化を当該気象変動判定テーブルの各判定基準と照合し、各気象変動が発生するか否かを判定する。例えば、気象変動の前に生じる上昇気流に伴う局地的な低気圧の発生の有無を判定することで気象変動を予測することができるので、気象変動判定テーブルの各判定基準は少なくとも気圧に関する条件を含む。例えば、一定時間当たりの気圧の低下量が所定の閾値を超えたか否かを所定の気象変動(例えば集中豪雨)の判定基準としてもよい。また、判定基準に温度や湿度等に関する条件を含ませてもよい。例えば、一定時間当たりの気圧の低下量が所定の閾値を超えるとともに温度が所定の範囲にあるか否かを所定の気象変動(例えば雷雨)の判定基準としてもよい。図18は、気象変動判定テーブルの一例を示す図である。図18の例では、判定基準1が満たされるとにわか雨が降ると予測されることを示している。同様に、判定基準2,3,4、5がそれぞれ満たされると、それぞれ雷雨、集中豪雨、竜巻、突風の発生が予測されることを示している。
【0162】
また、気象予測部22は、気象データ取得部21が取得した気象データに含まれる気圧データに基づいて、2地点間毎(2つの気象計測装置2の間毎)の気圧傾度(=2地点間の気圧差/2地点間の距離)を計算し、気圧傾度の変化から上昇気流に伴う局地的な低気圧の移動速度や移動方向を計算し、気象変動が発生するエリアを予測する。なお、気圧傾度の計算対象となる地点は、任意の位置でよく、例えば、観測メッシュの各ノードの位置(気圧計測装置2の設置場所)でもよい。
【0163】
そして、気象予測部22は、現在までの各地点の気象の推移をベースに、局地的な気象変動の発生予測も考慮しながら各地点の気象の推移を予測し、病気予測情報400を作成する。気象変動の発生による気温や湿度等の変化量は、過去の統計データに基づく数値計算を行うことで得ることができる。
【0164】
2−3.搬送管理システムの処理
第2実施形態における搬送管理装置5の処理のフローチャートは、第1実施形態(図12)と同様であるため、その図示及び説明を省略する。
【0165】
[病気予測装置の処理]
図19は、第2実施形態における、病気予測装置4の処理部(CPU)20の病気予測処理のフローチャートの一例を示す図である。
【0166】
まず、処理部(CPU)20は、各気象計測装置2が計測した気象データを取得する(S100)。
【0167】
次に、処理部(CPU)20は、ステップS100で取得した気象データに含まれる気圧データから、2地点間毎の気圧傾度を計算する(S102)。
【0168】
次に、処理部(CPU)20は、現在までの各地点の気圧と気圧傾度の推移等から、局地的な気象変動を予測する(S104)。
【0169】
次に、処理部(CPU)20は、現在までの各地点の気象の推移とステップS104の気象変動の予測結果から、観測メッシュの各エリアのT時間後(例えば、12時間後)までの気象の推移を予測する(S106)。
【0170】
次に、処理部(CPU)20は、観測メッシュのエリア毎に、ステップS106で得られた気象の推移の予測結果を気象条件・病気対応情報300と照合し、T1時間後,T2時間後,・・・(例えば、1時間後,2時間後,・・・)の病気別の危険度を判定する(S108)。
【0171】
次に、処理部(CPU)20は、観測メッシュのエリア毎の病気別の危険度の判定結果から、病気予測情報(予測時刻、病気の種類、危険度、エリアの対応情報)を作成する(S110)。
【0172】
次に、処理部(CPU)20は、ステップS16で生成した病気予測情報を搬送管理装置5に送信する(S112)。
【0173】
そして、処理部(CPU)20は、病気予測処理を終了する(S114のY)まで、所定時間が経過する毎に(S116のY)、S100〜S112の処理を繰り返し行う。
【0174】
以上に説明したように、第2実施形態の搬送管理システムによれば、病気予測装置4は、分散配置された複数の気象計測装置2の各々が計測した気象データを取得して、観測メッシュのエリア毎の詳細な気圧変化の情報から、気圧の変化に起因して発生する局地的な気象変動の発生を予測する。そして、病気予測装置4は、気象変動の発生を考慮してエリア毎の気象予測を行い、病気別の発生の危険度を予測するので、病気別の発生しやすいエリアの予測精度をさらに高めることができる。これにより、搬送管理者は、効率のよい搬送管理を行うことができる。
【0175】
3.第3実施形態
3−1.搬送管理システムの概要
第1実施形態及び第2実施形態の搬送管理システムでは、搬送管理者は、救急搬送の要請を受けた場合、搬送管理装置5の表示部68に表示される情報を参考にして最適な救急車両保有施設を判断し、搬送の指示を行う。これに対して、第3実施形態の搬送管理システムでは、搬送管理者が救急搬送の要請を受けて、患者の現在地、病状、重篤度等の情報を搬送管理装置5に入力すると、搬送管理装置5が、これらの入力情報と病気予測情報に基づいて救急搬送に使用する救急車両を選択し、当該救急車両を保有する救急車両保有施設に搬送を指示する情報(搬送指示情報)を送信する。
【0176】
3−2.搬送管理システムの構成
図20は、第3実施形態の搬送管理システムの構成例を示す図である。本実施形態の搬送管理システムは、図20の構成要素(各部)の一部を省略したり、他の構成要素を付加した構成としてもよい。
【0177】
図20に示すように、第3実施形態の搬送管理システム1は、複数の気象計測装置2、病気予測装置4、搬送管理装置5、複数の情報端末6を含む。
【0178】
各気象計測装置2と病気予測装置4との間のデータ通信及び病気予測装置4と搬送管理装置5との間のデータ通信については、第1実施形態や第2実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0179】
複数の情報端末6の各々は、それぞれ異なる救急車両保有施設に設置されており、搬送管理装置5と各情報端末6は、通信ネットワーク3を介して、データ通信を行う。
【0180】
搬送管理装置5は、救急搬送の要請があった場合、病気予測装置4から受信したエリア毎の病気別の危険度の情報に基づいて、救急搬送に使用する救急車両を選択し、当該救急車両を保有する救急車両保有施設に設置された情報端末6に搬送指示情報を送信する。この情報端末6は、搬送指示情報を受信し、搬送指示の内容を出力(表示部への表示や音声出力等)する。
【0181】
第3実施形態における気象計測装置2の構成は、第1実施形態(図3)又は第2実施形態と同様であるため、図示及び説明を省略する。また、第3実施形態における病気予測装置4の構成は、第1実施形態(図4)又は第2実施形態と同様であるため、図示及び説明を省略する。
【0182】
[搬送管理装置の構成]
図21は、第3実施形態における搬送管理装置5の構成例を示す図である。図21に示すように、第3実施形態における搬送管理装置5では、第1実施形態(図6)の構成に対して、処理部(CPU)50に搬送指示情報生成部55が追加されている。また、通信制御部53の機能が第1実施形態と異なる。
【0183】
搬送指示情報生成部55は、患者の搬送要請があった場合、患者の現在地の情報、各救急車両保有施設の所在地の情報、及び搬送予測部52が算出した、救急車両保有施設毎に確保すべき救急車両の台数の情報に基づいて搬送を指示する救急車両保有施設を選択する処理を行う。例えば、搬送指示情報生成部55は、患者の現在地に最も近くにある救急車両保有施設を選択してもよいし、患者の現在地から所定範囲にある複数の救急車両保有施設の中で確保すべき救急車両の台数が最も多い救急車両保有施設を選択してもよい。
【0184】
また、搬送指示情報生成部55は、救急車両の搬送を指示する搬送指示情報を生成する処理を行う。搬送指示情報は、少なくとも患者の現在地の情報を含み、加えて、患者の病状や重篤度、搬送ルートなどの情報を含んでもよい。さらに、搬送指示情報生成部55は、患者の現在地、病状、重篤度の情報と医療施設情報600に基づいて、患者の搬送先の医療施設を選択し、当該搬送先の医療施設の情報を含む搬送指示情報を生成するようにしてもよい。例えば、搬送指示情報生成部55は、患者の現在地からの距離、患者の病状に合った診療科があるか否か、患者の重篤度を考慮して総合病院か否か等を基準に、搬送先の医療施設を選択してもよい。
【0185】
通信制御部53は、第1実施形態又は第2実施形態と同様の処理に加えて、搬送指示情報生成部55により選択された救急車両を保有する救急車両保有施設の情報端末6に、搬送指示情報生成部55が生成した搬送指示情報を送信する処理を行う。
【0186】
3−3.搬送管理システムの処理
第3実施形態における病気予測装置4の処理のフローチャートは、第1実施形態(図9)又は第2実施形態(図19)と同様であるため、その図示及び説明を省略する。
【0187】
[搬送管理装置の処理]
図22は、第3実施形態における搬送管理装置5の処理部(CPU)50の処理のフローチャートの一例を示す図である。
【0188】
まず、処理部(CPU)50は、第1実施形態(図12のステップS50〜S58)と同様に、ステップS150〜S158の処理を行う。
【0189】
搬送管理者が救急搬送の要請を受けて、操作部60に対して患者の情報(患者の現在地、病状、重篤度等)を入力する操作を行うと(S160のY)、処理部(CPU)50は、患者の現在地、各救急車両保有施設の所在地、救急車両保有施設毎に確保すべき救急車両の台数の情報等から、搬送を指示する救急車両保有施設を選択する(S162)。
【0190】
次に、処理部(CPU)50は、ステップS160で入力された患者の情報等から搬送指示情報を生成する(S164)。
【0191】
次に、処理部(CPU)50は、ステップS162で選択した救急車両保有施設の情報端末6に、ステップS16で生成した搬送指示情報を送信する(S166)。
【0192】
一方、操作部60に対して患者の情報を入力する操作が行われなければ(S160のN)、処理部(CPU)50は、ステップS162,S164,S166の処理を行わない。
【0193】
そして、処理部(CPU)50は、処理を終了する(S168のY)まで、所定時間が経過する毎に(S170のY)、S150〜S166の処理を繰り返し行う。
【0194】
このように、第3実施形態の搬送管理システムによれば、救急搬送を要請する患者の状態に応じて、適切かつ効率的な救急車両の配車を自動的に行うことができる。
【0195】
4.変形例
本発明は本実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0196】
[変形例1]
本実施形態において、搬送管理装置5の処理部(CPU)50は、病気予測情報を、過去の救急車両による患者の搬送実績の統計情報と照合し、救急搬送に確保すべき救急車両の全台数や救急車両保有施設毎に確保すべき救急車両の台数を算出するようにしてもよい。このようにすれば、救急搬送に確保すべき救急車両の全台数や救急車両保有施設毎に確保すべき救急車両の台数の算出精度を高めることが期待できる。さらに、救急車両による患者の搬送が新たに行われる毎に、搬送実績の統計情報を更新することで、この算出精度を向上させることが期待できる。
【0197】
[変形例2]
第1実施形態又は第2実施形態において、搬送管理装置5の処理部(CPU)50は、通信ネットワーク3を介してリアルタイムな道路の渋滞情報を取得し、表示部68に病気予測情報等とともに渋滞情報を表示するようにしてもよい。搬送管理者は、救急搬送の要請を受けた場合、この渋滞情報を参考にして、できるだけ搬送時間が短い搬送ルートを決定し、救急車両保有施設に最適な搬送ルートの指示をすることができる。同様に、第3実施形態において、搬送管理装置5の処理部(CPU)50は、通信ネットワーク3を介してリアルタイムな渋滞情報を取得し、病気予測情報や患者の情報とともに渋滞情報を加味して、最適な搬送ルートの情報を含む搬送指示情報を生成するようにしてもよい。
【0198】
[変形例3]
医療施設情報600に各医療施設の診療科毎の医師(専門医)の数の情報を追加し、図12のフローチャートのステップS58において、搬送管理装置5の処理部(CPU)50が、医療施設情報600を参照し、例えば、図13のような表示画像に対してさらに各医療施設の診療科毎の医師(専門医)の数の情報を追加した画像を生成し、表示部68に表示するようにしてもよい。この専門医の数は、在籍人数でもよいが、現在の待機人数をリアルタイムに表示するのがより好ましい。各医療施設から現在の専門医の待機人数の情報を得て医療施設情報600をリアルタイムに更新することで、現在の待機人数をリアルタイムに表示することができる。
【0199】
このようにすれば、搬送管理者は、救急搬送の要請があった患者の病状に応じて、受け入れ可能で、かつ、適切な専門医のいる医療施設を選択して、救急車両に迅速に搬送先の指示をすることができる。
【0200】
[変形例4]
本実施形態では、救急車両による搬送を管理する搬送管理システムの例を挙げて説明したが、本発明の搬送管理システムは、救急車両以外の任意の搬送手段(例えば、ヘリコプター等)に適用することができる。
【0201】
また、本発明の搬送管理システムは、例えばタクシーのような民間車両による搬送を管理するようにしてもよい。この搬送管理システムでは、搬送管理装置5は、例えば、民間のコールセンターに設置され、記憶部64あるいは記録媒体66には、民間車両の運営会社(例えばタクシー会社)の名称、所在地、民間車両の保有台数の情報等が記憶されている。そして、図12のフローチャートのステップS58において、搬送管理装置5の処理部(CPU)50は、この民間車両の運営会社の情報を参照し、例えば、図13のような表示画像に対して、救急車両保有施設の名称、位置、救急車両の保有台数の情報を、民間車両の運営会社の名称、位置、民間車両の保有台数の情報に置き換えたような画像を生成し、表示部68に表示する。
【0202】
一方、民間車両の運営会社は、病気予測情報を考慮した搬送管理者からの指示に応じて、救急搬送の要請が増えると予想されるエリアに車両を優先的に配車できる体制を整えておく。
【0203】
ただし、救急車両以外の車両は、交通規則を守る必要があるため、必ずしも患者の救急搬送を適切に行えるとは限らず、特に重篤な患者の救急搬送には適さない。そこで、救急車両と民間車両の両方による搬送を管理する搬送管理システムがより好ましい。この搬送管理ステムでは、搬送管理装置5の記憶部64あるいは記録媒体66には、救急車両の保有施設の名称、所在地、救急車両の保有台数の情報と民間車両の運営会社の名称、所在地、民間車両の保有台数の情報が記憶されている。そして、図12のフローチャートのステップS58において、搬送管理装置5の処理部(CPU)50は、この救急車量の保有施設の情報と民間車両の運営会社の情報を参照し、例えば、図13のような表示画像に対して、民間車両の運営会社の名称、位置、民間車両の保有台数の情報を追加したような画像を生成し、表示部68に表示する。
【0204】
そして、搬送管理者は、救急搬送の要請を受けた場合、患者の重篤度に応じて、救急車両と民間車両のいずれかを選択して搬送の指示を行う。例えば、一刻を争うような重篤な患者の場合は必ず救急車両を選択し、明らかに軽症の患者の場合は民間車両を選択すればよい。
【0205】
このようにすれば、患者の重篤度に応じて適切な車両を迅速に配車することでできる。
【0206】
[変形例5]
本実施形態において、観測メッシュの各エリアは矩形でなくてもよく、例えば、6つのノードによって1つの六角形状のエリアが形成されるように複数の気象計測装置2を分散配置してもよい。
【0207】
[変形例6]
本実施形態において、気象計測装置2の配置密度は一定でなくてもよく、配置密度を変えてもよい。例えば、地形や建物の配置などから、気象変動が発生し易い場所がわかっていれば、そのような場所では気象計測装置2の配置密度を高くし、逆に、気象変動が発生しにくい場所がわかっていれば、そのような場所では気象計測装置2の配置密度を低くするようにしてもよい。あるいは、気圧傾度の大きさに応じて気象計測装置2の配置密度を高くするようにしてもよい。
【0208】
気象変動が発生し易い場所ほどより観測メッシュを細かくすることで、予測精度を高めることができる。逆に、気象変動が発生しにくい場所は、観測メッシュを多少粗くすることで、必要十分な予測精度を確保しながらコストを削減することができる。
【0209】
[変形例7]
本実施形態において、気象計測装置2を3次元状に配置することで、3次元の観測メッシュを形成するようにしてもよい。例えば、ビルの屋上や側面、地上等に気象計測装置2を配置することで、3次元の領域に観測メッシュを形成することができる。このようにすれば、高さ方向の気象の変化の情報も得られるので、気象変動の予測精度を高めることができる。なお、10m高くなる毎に気圧が約1hPa低下するので、3次元の観測メッシュを形成する場合は、気象計測装置2の設置高度に応じて気圧や気圧傾度を補正計算することが望ましい。
【0210】
[変形例8]
気象計測装置2が計測した気象条件(気圧、気温、湿度、風向、風速など)が同じでも、雷雨等をもたらす積乱雲が発達するか否かは当該気象計測装置2の位置の地理(地形、建物や木の配置等)によって異なると考えられる。そこで、第2実施形態において、病気予測装置4の処理部(CPU)20(気象予測部22)は、各気象計測装置2が計測した気象データと、気象計測装置2が分散配置されている地域の地理情報とを用いて気象変動の予測を行うようにしてもよい。この地理情報は、例えば、病気予測装置4の記憶部34に記憶されていてもよいし、インターネット等の通信ネットワーク上のサーバーに地理情報を記憶させておき、病気予測装置4が通信ネットワークを介して当該地理情報を取得するようにしてもよい。
【0211】
このように、気象状況に地理情報を加味して気象変動を予測することで、予測精度を高めることができる。
【0212】
[変形例9]
気象計測装置2が計測した気象条件(気圧、気温、湿度、風向、風速など)を、過去に気象変動が発生した際の気象条件の統計情報と照合することで、気象変動の予測精度を高めることができる。そこで、第2実施形態において、病気予測装置4の処理部(CPU)20(気象予測部22)は、各気象計測装置2が計測した気象データと、気象計測装置2が分散配置されている地域における過去に気象変動が発生した気象条件の統計情報とを用いて気象変動の予測を行うようにしてもよい。この統計情報は、例えば、病気予測装置4の記憶部34に記憶されていてもよいし、インターネット等の通信ネットワーク上のサーバーに統計情報を記憶させておき、病気予測装置4が通信ネットワークを介して当該統計情報を取得するようにしてもよい。
【0213】
このように、気象状況に過去の統計情報を加味して気象変動を予測することで、予測精度を高めることができる。
【0214】
なお、病気予測装置4の処理部(CPU)20(気象予測部22)は、各気象計測装置2が計測した気象データとともに、地理情報と統計情報の両方を用いて気象変動の予測を行うことで、気象変動の予測精度をさらに高めることができる。
【0215】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0216】
1 搬送管理システム、2 気象計測装置、3 通信ネットワーク、4 病気予測装置、5 搬送管理装置、6 情報端末、10 気圧センサー、11 温度センサー、12 湿度センサー、14 送信部、20 処理部(CPU)、21 気象データ取得部、22 気象予測部、23 病気予測情報生成部、24 通信制御部、25 表示制御部、30 操作部、32 通信部、34 記憶部、36 記録媒体、38 表示部、50 処理部(CPU)、51 病気予測情報取得部、52 搬送予測部、53 通信制御部、54 表示制御部、55 搬送指示情報生成部、60 操作部、62 通信部、64 記憶部、66 記録媒体、68 表示部、100 圧力センサー素子、110 発振回路、120 カウンター、130 TCXO、140 MPU、150 温度センサー、160 EEPROM、170 通信インターフェース(I/F)、210 ダイヤフラム、212 突起、214 受圧面、220 振動片、222 振動ビーム(梁)、224 基部、226 支持梁、228 枠部、230 ベース、232 キャビティー、300 気象条件・病気対応情報、400 病気予測情報、500 救急車両保有施設情報、600 医療施設情報
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送管理システム及び搬送管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
急病の患者が発生して119番通報が行われると、この通報は緊急通報管理センターで受け付けられ、緊急通報管理センターから消防署へ救急車両の配車指示が行われる。そして、救急車両が患者を病院まで搬送するが、搬送時間をできるだけ短くすることが求められる。
【0003】
特許文献1や特許文献2では、患者の搬送時間を短縮する手法が提案されている。具体的には、
特許文献1では、「緊急車両に搭載された端末から、当該端末の位置情報を含む、傷病者を受入れ可能な受入れ病院の問合せを受信する管理サーバーと、前記管理サーバーから病院が傷病者に対応可能になるまでの対応時間の問合せを受信し、当該対応時間を計算し、当該管理サーバーに送信する病院サーバーと、を備え、前記管理サーバーは、前記病院ごとに当該病院の位置情報を予め記憶する手段と、前記端末から前記受入れ病院の問合せを受信した場合に、前記病院ごとに、当該病院サーバーに前記対応時間の問合せを送信し、その応答として当該病院サーバーから前記対応時間を受信し、記憶する手段と、前記受入れ病院の問合せに含まれる前記端末の位置情報と、予め記憶された各病院の前記位置情報とに基づいて、前記病院ごとに前記緊急車両の現在位置から当該病院までの移動時間を計算し、記憶する手段と、前記病院ごとに、前記対応時間及び前記移動時間のうち、大きい方を当該病院が前記傷病者を受入れ可能になるまでの受入れ時間として記憶する手段と、各病院の前記受入れ時間のうち、最小値を特定し、当該最小値に係る前記病院を前記受入れ病院として選択し、当該病院に関する情報を前記端末に送信する手段と、を備えることを特徴とする救急病院選択システム」等が提案されている。
【0004】
また、特許文献2では、「ネットワークで救急用車両の配車を行う救急用車両の配車管理方法であって、救急通報元から送られてきた救急通報を受け付けると、前記救急通報とともに送られてきた前記救急通報元の詳細情報をもとに救急用車両の前記救急通報元への出動を指示し、前記救急用車両が搭載している端末へ前記救急通報元の詳細情報や経路情報を送り、前記救急通報元へ前記救急用車両を配車する、ことを特徴とする救急用車両の配車管理方法」等が提案されている。
【0005】
これらの手法によれば、患者の搬送時間を短縮することが可能であるが、配車可能な救急車両が患者の近くになければ、高い効果は得られない。すなわち、病気の発生を予測し、救急車両の配車を効率よく行うことが望まれる。
【0006】
ところで、気象条件がトリガーとなって発生すると考えられる病気が知られている。片頭痛、乾燥肌、うつ病、リュウマチ、脳梗塞、脳出血、心筋梗塞などの健康および精神的な病気の原因は様々な要因が重なり合って発生するものであり、それら病気の原因の一つとして気象条件が挙げられている。これらの病気がどのような気象条件の時に発生するかを正確に予想することは難しいと言われている。その難しい予報の1つとして、広島県医師会と日本気象協会が共同して、全国に先駆けて「心筋梗塞・脳卒中予報」を提供している。広島県の過去の救急搬送のデータから、一日の平均気温が6度未満になると、6度以上の時より心筋梗塞の患者の搬送患者が増えることがわかった。これに加え、平均気圧が、1013へクトパスカル未満だとより搬送患者が多くなった。また、気温、気圧に関わらず、寒冷前線が通過する時なども患者が多かった。こうした結果から、心筋梗塞では3段階で、県を北部、南部に2分して危険度を予報している。
【0007】
この他にも、気象情報に基づいて病気の発生を予想する手法として以下に示すようなものが提案されている。
【0008】
特許文献3では、「インターネットを介して気象情報をユーザーに提供する気象情報の提供方法であって、WWWサーバーもしくはクライアント端末は、ユーザー固有のソフトウェアプロセスを備え、上記ユーザー固有のソフトウェアプロセスは、ユーザーの要求に応じて、ユーザー属性に基づいて気象情報を収集・監視・加工しユーザーに提供することを特徴とする気象情報の提供方法」等が提案されている。特に、「0037」段落には、「また、気象は、いろいろな分野と密接にかかわっており、防災業務以外でも、さまざまな分野に、気象情報を積極的に活用していこう、という、動きが、民間気象会社を中心に出てきている。その1つが「医療と気象」であり、主に、民間気象会社の人間によるサービス提供が行われている。例えば、低気圧の接近してくる時には、腰痛などの疾病が発生しやすいことが知られている。また、2月から4月にかけ、気温が高く、風が強い日には、空気中の花粉量が増大し、花粉症の症状が悪化することが知られている。また、9月〜10月にかけ気温が急激に低くなる日には、喘息の発作が起きやすくなることが知られている。」と記載されている。
【0009】
特許文献4では、「健康管理委託会員と管理センターと医療機関の三者間において、公衆回線、専用回線、CATV回線などを利用して双方向映像・音声・データ通信機能を具備したコンピュータネットワークシステムを構築し、端末器を介して入力・送信される会員の日々の健康データをサービスセンターと医療機関の端末器に表示させて監視するとともに会員の個別データベースとして蓄積し、逐次健康・医療アドバイスを遂行するとともに、体の機能に影響を与える気象因子を説明変数、疾病発生を目的変数として数量化理論II類に基づく多変量解析を行って気象と疾病発生予測との相関関係を明らかにしたモデル判別式を作成し、気象変化の予想とともに疾病発生確立を予測して疾病発生の予防を図ることを特徴とする在宅健康管理システム」等が提案されている。特に、「0036」段落には、「管理センターCSには各種情報の入出力を行うとともに会員HMから送られてくる日々の健康データを監視する端末器、当該日々の健康データをデータベース化して蓄えるサーバー、日々の健康データとデータベース内データを比較して異常の有無を判断する演算処理装置、刻々と変化する気象データの精細情報を取得する端末器、取得した気象データを蓄える気象データベースサーバー、気象状況と健康データとの相関関係に基いて疾病の発生確率を予測し、データベース化した気象−疾病データベースなどが設置されている。」と記載されている。
【0010】
特許文献5では、「利用者個人についての医学気象予報情報を配信する医学気象予報配信システムであって、入力される気象情報及び入力される医学情報並びに前記利用者についての健康状態等の身体的特徴を示す個人データに基づいた、個人ごとの医学気象予報情報を配信することを特徴とする医学気象予報配信システム」等が提案されている。
【0011】
特許文献6では、「ネットワークを介して接続された移動端末と解析センターとを含み、前記移動端末を保持するユーザーの疾患の罹患可能性を判断する診断支援システムであって、前記移動端末は、前記ユーザーから採取した試料中に前記疾患の罹患を特徴的に示す特徴成分が存在するか否かを検出する検出部と、前記検出部による検出結果をユーザーの症状を示す症状データとして前記解析センターに送信する送信処理部と、を含み、前記解析センターは、前記症状データを、前記移動端末から前記症状データが送信されたときの前記移動端末の位置に対応付けて取得するデータ取得部と、前記症状データと前記疾患の罹患者に発生する特徴を示す参照パラメーターとに基づき、前記ユーザーが前記疾患に罹患している罹患可能性を計算する罹患可能性計算部と、複数の前記ユーザーの前記罹患可能性と対応する前記位置とに基づき、エリア毎に前記疾患の罹患者の存在状況を推定する推定処理部と、を含むことを特徴とする診断支援システム」等が提案されている。
【0012】
特許文献7では、「環境変化や流行病の傾向を表わす環境因子を取得する環境因子取得手段と、前記取得した環境因子又は該環境因子の組み合わせを基に所定の疾病の発生を予測する疾病予測手段と、予め前記疾病の発生するリスクを有する通知対象者の群を記憶しておき、前記発生が予測された疾病の情報を受けて、該疾病の発生するリスクに対応する群を検索する通知対象者管理手段と、前記検索された群に含まれる前記通知対象者に警告を通知する警告手段とを備えることを特徴とする疾病管理装置」等が提案されている。
【0013】
特許文献8では、「健康食品、機能性食品、機能性飲料、栄養補助食品、調味料、もしくはサプリメントなどの食品類あるいは薬剤を複数収容した収容手段と、前記収容手段のそれぞれの収容物を指示に基づいて出力する吐出部と、利用者の生体データ値を検出する生体センサーと、操作部あるいは外部から入力される利用者の行動に関するスケジュールデータを記憶するスケジュール記憶部と、前記生体センサーによって検出された前記生体データ値と、前記スケジュール記憶部に記憶された前記スケジュールデータとにより、前記収容物のそれぞれの中から適した配合を決定すると共に、前記吐出部を介して前記決定に応じた前記収容物を出力させる制御手段と、を備えたことを特徴とする配合出力装置」等が提案されている。
【0014】
特許文献9では、「将来の疾病症状を、過去の疾病症状時系列データと、過去の環境に関する時系列データと、将来の環境予測データとの関数とみなし、前記データが得られるごとに、前記関数に含まれる係数を推定し、疾病症状の予測式を算出し、最新の前記データを前記疾病症状の予測式に入力し、前記疾病症状の予測式の値により将来の疾病症状を予測し、症状に応じた対策情報を提供する、ことを特徴とする疾病対策支援方法」等が提案されている。
【0015】
特許文献10では、「ネギ栽培圃場ごとに計測された気温とネギ葉面の濡れとに基づき予測モデルを用いて、降水量と風速データを参考にネギに感染した日、およびその発病の急増日を予測する方法」等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2011−048775号公報
【特許文献2】特開2001−325689号公報
【特許文献3】特開2002−251484号公報
【特許文献4】特開2001−067403号公報
【特許文献5】特開2002−311158号公報
【特許文献6】再公表WO2004/098402号公報
【特許文献7】特開2008−165716号公報
【特許文献8】特開2008−237718号公報
【特許文献9】特開2005−063218号公報
【特許文献10】特開2008−125496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、県を2分した予報では、特に注意すべき時間帯、地域が、わかりづらいという問題がある。また、特許文献3乃至10の手法では、一般的な広域の気象情報を使用して病気の予測を行うため、病気が発生しやすいエリアや時間の予測精度が粗いという問題がある。従って、これらの手法により、病気の発生を正確に予測し、救急車両による効率の良い患者の搬送を実現することは難しい。
【0018】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様によれば、気象条件に応じて病気が発生しやすいエリアの予測精度を高め、患者の搬送を効率よく行うことを可能とする搬送管理システム及び搬送管理方法を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することが可能である。
【0020】
[適用例1]
本適用例に係る搬送管理システムは、患者の搬送手段の搬送状況を管理することができる搬送管理システムであって、搬送管理の対象地域に分散して配置される複数の気象計測装置と、前記複数の気象計測装置の各々が計測した気象データを利用して、病気の発生を予測する病気予測装置と、前記搬送手段の搬送状況を管理する搬送管理装置と、を含み、前記病気予測装置は、前記気象データを取得する気象データ取得部と、前記気象データ取得部が取得した気象データを利用して、気象を予測する気象予測部と、前記気象予測部の予測結果を、気象条件と病気との対応情報と照合し、病気別に発生する危険度を予測して病気予測情報を生成する病気予測情報生成部と、を含み、前記搬送管理装置は、前記病気予測装置が生成した前記病気予測情報を取得する病気予測情報取得部と、前記病気予測情報取得部が取得した前記病気予測情報を利用して、前記搬送手段を優先して確保すべきエリアを予測する搬送予測部と、を含む。
【0021】
この搬送管理システムによれば、搬送管理の対象地域に複数の気象計測装置を分散して配置し、各気象計測装置が計測する気象データを取得することで、広域的な気象情報と比較して、より狭いエリア毎の詳細な気象情報が得られる。そして、このエリア毎の詳細な気象情報を用いて気象に関係する病気の発生を予測するので、気象条件に応じて病気が発生しやすいエリアの予測精度を高めることができる。さらに、この精度の高い予測に基づき、患者の搬送手段を優先して確保すべきエリアを精度よく予測することができる。搬送管理者は、この予測を参考にして搬送手段を保有する施設に連絡し、あらかじめ必要な台数の搬送手段を確保しておくことで、患者の搬送要請があった場合に患者の搬送手段を効率よく行うことができる。
【0022】
[適用例2]
上記適用例に係る搬送管理システムにおいて、前記搬送管理装置は、前記搬送予測部が、前記病気予測情報を利用して、前記エリアにおいて確保すべき前記搬送手段の台数をさらに予測するようにしてもよい。
【0023】
搬送管理者は、この確保すべき搬送手段の台数の情報を参考にして、搬送手段を保有する施設に連絡し、あらかじめ必要な台数の搬送手段を確保することができる。
【0024】
[適用例3]
上記適用例に係る搬送管理システムにおいて、前記搬送管理装置は、前記搬送予測部が、前記病気予測情報を過去の患者の搬送実績の統計情報と照合し、前記エリアにおいて確保すべき前記搬送手段の台数を予測するようにしてもよい。
【0025】
このようにすれば、確保すべき搬送手段の台数の予測精度を高めることができる。
【0026】
[適用例4]
上記適用例に係る搬送管理システムにおいて、前記搬送管理装置は、前記搬送予測部が、前記搬送手段を保有する施設の所在地の情報及び当該施設における前記搬送手段の保有台数の情報を利用して、前記搬送手段を保有する施設毎に確保すべき前記搬送手段の台数を算出するようにしてもよい。
【0027】
搬送管理者は、この施設毎に確保すべき搬送手段の台数の情報を参考にして、手間を軽減しながら、必要な台数の搬送手段を効率よく確保することができる。
【0028】
[適用例5]
上記適用例に係る搬送管理システムにおいて、前記搬送管理装置は、患者の搬送要請があった場合、当該患者の現在地の情報及び前記搬送手段を保有する施設毎の所在地の情報を利用して、搬送を指示する施設を選択し、当該選択した施設に対して前記搬送手段による搬送を指示する搬送指示情報を生成する搬送指示情報生成部をさらに含み、前記選択した施設の情報端末に前記搬送指示情報を送信するようにしてもよい。
【0029】
このようにすれば、患者の搬送要請があった場合に、効率的な搬送を自動化することができる。
【0030】
また、前記搬送指示情報生成部は、患者の現在地の情報と医療施設の所在地の情報とに基づいて患者の搬送先の医療施設を選択し、当該搬送先の医療施設の情報を含む前記搬送指示情報を生成するようにしてもよい。
【0031】
さらに、前記搬送管理装置は、道路の渋滞情報を取得し、前記搬送指示情報生成部が、前記渋滞情報に基づいて患者の搬送ルートを選択し、選択した搬送ルートの情報を含む前記搬送指示情報を生成するようにしてもよい。
【0032】
[適用例6]
上記適用例に係る搬送管理システムにおいて、前記搬送管理装置は、道路の渋滞情報を取得し、当該渋滞情報を医療施設の所在地の情報とともに表示部に表示するようにしてもよい。
【0033】
このようにすれば、搬送管理者は、渋滞の状況をリアルタイムに監視しながら適切な搬送ルートを選択し、適切な搬送指示を行うことができる。
【0034】
[適用例7]
上記適用例に係る搬送管理システムにおいて、前記複数の気象計測装置の各々は、気圧センサーを備え、前記病気予測装置は、前記気象予測部が、前記気象データ取得部が取得した気象データに含まれる気圧データから得られる気圧変化の情報を利用して所与の気象変動が発生するか否かを判定し、判定結果に基づいて気象を予測するようにしてもよい。
【0035】
このようにすれば、局地的な気象変動を考慮したより正確な気象予測を行うことができるので、効率のよい搬送管理を行うことができる。
【0036】
[適用例8]
本適用例に係る搬送管理方法は、患者の搬送手段の搬送状況を管理する搬送管理方法であって、搬送管理の対象地域に分散して配置される複数の気象計測装置の各々から気象データを取得する気象データ取得ステップと、前記気象データ取得ステップで取得した気象データを利用して、気象を予測する気象予測ステップと、前記気象予測ステップでの予測結果を、気象条件と病気との対応情報と照合し、病気別に発生する危険度を予測して病気予測情報を生成する病気予測情報生成ステップと、前記病気予測情報を利用して、前記搬送手段を優先して確保すべきエリアを予測する搬送予測ステップと、を含む。
【0037】
[適用例9]
上記適用例に係る搬送管理システムにおいて、前記気象計測装置は、前記気圧センサーが、気圧に応じて共振周波数を変化させる感圧素子を有し、当該感圧素子の振動周波数に応じた気圧データを出力するようにしてもよい。
【0038】
一般に気象観測に用いられる気圧計の分解能はhPaオーダーであるのに対して、周波数変化型の気圧センサーは、感圧素子の振動周波数を高い周波数のクロック信号で計測することで比較的容易にPaオーダーの測定分解能を得ることができる。また、周波数変化型の気圧センサーは、気圧がゆっくり変化しているのか、あるいは急激に変化しているのか、気圧の変動量(気圧の変化具合)を高精度に検出することができる。そして、高分解能な周波数変化型の気圧センサーを用いることで短時間におけるわずかな気圧の変化を捉えて、局地的に発生して短時間に消滅する気象変動を予測するために有効な情報を提供することができる。この情報を解析することで、気象変動を精度よく予測することができる。
【0039】
[適用例10]
上記適用例に係る搬送管理システムにおいて、前記気象計測装置は、前記感圧素子が、双音叉圧電振動子であるようにしてもよい。
【0040】
感圧素子として双音叉圧電振動子を用いることで、より高い分解能の気圧センサーを実現することができる。
【0041】
[適用例11]
上記適用例に係る搬送管理システムにおいて、前記病気予測装置は、前記気象予測部が、前記気象データ取得部が取得した気象データに含まれる気圧データから得られる気圧傾度の変化の情報に基づいて気象を予測するようにしてもよい。
【0042】
気圧傾度は2点間の気圧差に相当し、気圧傾度と風向・風速の間には相関があるので、気圧傾度の変化の情報から概略的な風向・風速を知ることができる。また、気圧傾度の変化から、局地的な気象変動を引き起こす局地的な低気圧の移動速度や移動方向を推測することができる。従って、気圧変化の情報と合わせて気圧傾度の変化の情報を利用することで、気象予測の精度を高めることが期待できる。
【0043】
[適用例12]
本適用例に係るプログラムは、患者の搬送手段の搬送管理の対象地域に分散して配置される複数の気象計測装置と、前記複数の気象計測装置の各々が計測した気象データを取得し、取得した気象データを利用して、気象を予測し、当該気象の予測結果を、気象条件と病気との対応情報と照合し、病気別に発生する危険度を予測して病気予測情報を生成する病気予測装置と、前記搬送手段の搬送状況を管理する搬送管理装置と、を含む、搬送管理システムの前記搬送管理装置において実行可能なプログラムであって、コンピューターを、前記病気予測装置が生成した前記病気予測情報を取得する病気予測情報取得部と、前記病気予測情報取得部が取得した前記病気予測情報を利用して、前記搬送手段を優先して確保すべきエリアを予測する搬送予測部として機能させる。
【0044】
[適用例13]
本適用例に係る記録媒体は、上記適用例に係るプログラムを記録した、コンピューター読み取り可能な記録媒体である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】分散配置された気象計測装置の一例を示す図。
【図2】本実施形態の搬送管理システムの構成例を示す図。
【図3】気象計測装置の構成例を示す図。
【図4】病気予測装置の構成例を示す図。
【図5】気象条件・病気対応情報の一例を示す図。
【図6】搬送管理装置の構成例を示す図。
【図7】救急車両保有施設情報の一例を示す図。
【図8】医療施設情報の一例を示す図。
【図9】病気予測装置の処理のフローチャートの一例を示す図。
【図10】病気予測情報の一例を示す図。
【図11】病気予測の画像の一例を示す図。
【図12】搬送管理装置の処理のフローチャートの一例を示す図。
【図13】搬送管理装置の表示画像の一例を示す図。
【図14】気圧センサーの構成例を示す図。
【図15】圧力センサー素子の断面の模式図。
【図16】圧力センサー素子の断面の模式図。
【図17】振動片およびダイヤフラムを模式的に示す下面図。
【図18】気象変動判定テーブルの一例を示す図。
【図19】第2実施形態における病気予測装置の処理のフローチャートの一例を示す図。
【図20】第3実施形態の搬送管理システムの構成例を示す図。
【図21】第3実施形態における搬送管理装置の構成例を示す図。
【図22】第3実施形態における搬送管理装置の処理のフローチャートの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0047】
1.第1実施形態
1−1.搬送管理システムの概要
本実施形態の搬送管理システムは、搬送管理の対象地域に分散して配置された多数の気象計測装置がそれぞれ計測する気象データから気象状況の推移を時間的にもエリア的にも精度よく予測し、気象の予測結果から、気象条件と相関があると考えられる病気の各々の危険度をエリア毎に予測する。そして、このエリア毎に予測した病気別の危険度の情報に基づいて、危険度の高いエリア(すなわち、救急搬送の要請が多発することが想定されるエリア)に救急車両を優先的に配車できる体制を整えておくことで、想定エリアで救急搬送の要請があった場合に、効率よく確実に患者を搬送することができる。
【0048】
図1に示すように、本実施形態では、搬送管理の対象地域に、多数の気象計測装置2(白抜きの丸で表示)が碁盤目状に分散配置され、各気象計測装置2をノードとする観測メッシュが形成される。ただし、搬送管理の対象地域に複数の気象計測装置2が分散配置されていればよく、碁盤目状に配置されていなくてもよい。気象計測装置2は、例えば、ビルや家屋等の建物(不図示)などに配置される。
【0049】
本実施形態における観測メッシュでは、4つのノードによって1つの矩形状のエリアが形成されている。各エリアの1辺の長さ(ノード間の距離)は、気象計測装置2を分散配置する地域の気候やその他の状況を考慮して、十分な精度で気象の予測が可能な値(例えば、数百m〜数km程度)に設定される。この観測メッシュの1つのエリアは、アメダス(AMeDAS:「Automated Meteorological Data Acquisition System」)と呼ばれる地域気象観測システムにおける観測メッシュの1区画(約21km×21km)と比べて十分に小さいものとなっており、アメダス(AMeDAS)では観測できない局地的な気象変動を捉えることを可能とする。
【0050】
ノード間の距離は一定でなくてもよく、例えば、気象計測装置2は、携帯電話等の基地局、コンビニエンスストア、スマートグリッドの電気メーターなどに設置されていてもよい。なお、図1では、便宜上、区画の境界線を破線で表示しているが、実際にはこのような境界線を表示する必要はない。
【0051】
各気象計測装置2は、一定周期で各地点の気象を計測し、計測した気象データを不図示の病気予測装置に送信する。病気予測装置は、各気象計測装置2からの気象データを受信し、受信した気象データに基づいて気象状況の推移を予測し、気象の予測結果を、過去の統計データから抽出された気象条件と病気の発生との対応情報(気象条件・病気対応情報)と照合することで、エリア毎に病気別の危険度を精度よく予測する。病気予測装置は、気象計測装置2が分散配置された地域内又は当該地域外のいずれに設置されていてもよい。例えば、インターネット等の通信ネットワークに接続されたサーバーを病気予測装置としてもよい。
【0052】
そして、病気予測装置が予測したエリア毎の病気別の危険度の情報は、救急車両による搬送を管理する搬送管理センター(例えば、119番通報を受け付ける緊急通報管理センター)に設置された搬送管理装置に送信され、救急要請が増加すると予測されるエリアの情報が、救急車両を保有する施設(以下、「救急車両保有施設」という)の位置や救急要請に備えて各救急車両保有施設が確保すべき救急車両の台数等の情報とともに地図画像にマッピングされて搬送管理装置のモニターに表示される。また、医療施設の位置や診療科等の情報も地図画像にマッピングされて搬送管理装置のモニターに表示される。
【0053】
搬送管理者は、搬送管理装置のモニターに表示された情報を参考にして、救急車両保有施設や医療施設に適切な指示を行うことができる。
【0054】
1−2.搬送管理システムの構成
図2は、本実施形態の搬送管理システムの構成例を示す図である。本実施形態の搬送管理システムは、図2の構成要素(各部)の一部を省略したり、他の構成要素を付加した構成としてもよい。
【0055】
図2に示すように、本実施形態の搬送管理システム1は、複数の気象計測装置2、病気予測装置4、搬送管理装置5を含む。
【0056】
各気象計測装置2は、各地点の気象をリアルタイムに計測し、計測した気象データを、通信ネットワーク3(インターネットやLAN等)を介して病気予測装置4(サーバー)に送信する。
【0057】
病気予測装置4は、通信ネットワーク3を介して、各気象計測装置2から気象データを受信し、気象条件を加味したエリア毎の病気別の危険度を予測する。このエリア毎の病気別の危険度の情報は、通信ネットワーク3を介して搬送管理装置5に送られ、搬送管理装置5の表示部にリアルタイムに表示される。
【0058】
[気象計測装置の構成]
図3は、図2の気象計測装置2の構成例を示す図である。図3に示すように、本実施形態では、各気象計測装置2は、気圧センサー10、温度センサー11、湿度センサー12を備える。ただし、気象計測装置2は、気圧センサー10、温度センサー11、湿度センサー12の一部を備えていなくてもよいし、逆に、他のセンサー(例えば、風速センサー等)を備えていてもよい。
【0059】
気象計測装置2は、例えば秒オーダーあるいは分オーダーの周期でリアルタイムに気象を計測し、気圧センサー10、温度センサー11、湿度センサー12により計測された気象データ(気圧データ、温度データ、湿度データ)は、送信部14により病気予測装置4に送信される。
【0060】
[病気予測装置の構成]
図4は、図2の病気予測装置4の構成例を示す図である。図4に示すように、本実施形態では、病気予測装置4は、処理部(CPU:Central Processing Unit)20、操作部30、通信部32、記憶部34、記録媒体36、表示部38を含んで構成されている。本実施形態の病気予測装置は、図4の構成要素(各部)の一部を省略したり、他の構成要素を付加した構成としてもよい。
【0061】
操作部30は、操作キーやボタンスイッチ等により構成される入力装置であり、操作部30の操作に応じた操作信号を処理部(CPU)20に出力する。
【0062】
表示部38は、LCD(Liquid Crystal Display)等により構成される表示装置であり、処理部(CPU)20から入力される表示信号に基づいて各種の情報を表示する。
【0063】
記憶部34は、処理部(CPU)20が各種の計算処理や制御処理を行うためのプログラムやデータ等を記憶している。また、記憶部34は、処理部(CPU)20の作業領域として用いられ、記録媒体36から読み出されたプログラムやデータ、通信部32を介して受信したデータや処理部(CPU)20が各種プログラムに従って実行した演算結果等を一時的に記憶するためにも使用される。
【0064】
処理部(CPU)20は、記憶部34や記録媒体36に記憶されているプログラムに従って、各種の計算処理や制御処理を行う。例えば、処理部(CPU)20は、操作部30からの操作信号に応じた各種の処理、表示部38に各種の情報を表示させる処理、通信部32を介してデータを受け取って各種の計算処理を行う。また、処理部(CPU)20は、通信部32を介した各気象計測装置2や搬送管理装置5とのデータ通信を制御する処理等を行う。
【0065】
特に、本実施形態では、処理部(CPU)20は、気象データ取得部21、気象予測部22、病気予測情報生成部23、通信制御部24、表示制御部25を含む。ただし、本実施形態の処理部(CPU)20は、これらの一部の構成(要素)を省略したり、他の構成(要素)を追加した構成としてもよい。
【0066】
気象データ取得部21は、通信部32から送られてくる気象データ(複数の気象計測装置2が計測した気象データ)を、気象計測装置2の識別IDと対応づけて継続して取得する処理を行う。具体的には、気象データ取得部21は、各気象データを受け取り、受け取った各気象データを気象計測装置2毎に割り当てられた識別IDと対応づけて順番に記憶部34に保存する。
【0067】
気象予測部22は、気象データ取得部21が取得した気象データに基づいて、気象を予測する処理を行う。
【0068】
病気予測情報生成部23は、気象予測部22の予測結果を、気象条件と病気との対応情報(気象条件・病気対応情報)と照合し、病気別に発生する危険度を予測して病気予測情報(病気別の危険度の予測情報)を生成する処理を行う。
【0069】
通信制御部24は、通信部32を介する各気象計測装置2や搬送管理装置5とのデータ通信等を制御する処理を行う。特に、本実施形態では、通信制御部24は、通信部32を介して、各気象計測装置2から気象データを受信し、病気予測情報を搬送管理装置5に送信する。
【0070】
表示制御部25は、表示部38への情報の表示を制御する処理を行う。特に、本実施形態では、表示制御部25は、病気予測情報生成部が生成した病気予測情報を画像に変換して表示部38に表示する。表示部38に表示される画像は、操作部30の操作に応じて選択される。
【0071】
記録媒体36は、コンピューター読み取り可能な記録媒体であり、特に本実施形態では、コンピューターを上記の各部として機能させるためのプログラムが記憶されている。そして、本実施形態の処理部(CPU)20は、記録媒体36に記憶されているプログラムを実行することで、気象データ取得部21、気象予測部22、病気予測情報生成部23、通信制御部24、表示制御部25として機能する。あるいは、通信部32等を介して有線又は無線の通信ネットワークに接続された他のサーバーから当該プログラムを受信し、受信したプログラムを記憶部34や記録媒体36に記憶して当該プログラムを実行するようにしてもよい。ただし、気象データ取得部21、気象予測部22、病気予測情報生成部23、通信制御部24、表示制御部25の少なくとも一部をハードウェア(専用回路)で実現してもよい。
【0072】
なお、記録媒体36は、例えば、光ディスク(CD、DVD)、光磁気ディスク(MO)、磁気ディスク、ハードディスク、磁気テープ、メモリー(ROM、フラッシュメモリーなど)により実現することができる。
【0073】
本実施形態では、記憶部34あるいは記録媒体36には、特に、気象条件と病気の種類との対応関係を示す、気象条件・病気対応情報が記憶されている。
【0074】
図5は、気象条件・病気対応情報の一例を示す図である。図5に示すように、気象条件・病気対応情報300は、気象条件(310)及び病気の種類(320)の情報を含む。図5の例では、気象条件「A1」と病気「B1」、気象条件「A2」と病気「B2」、気象条件「A3」と病気「B3」がそれぞれ対応付けられている。例えば、気象条件「A1」が満たされると、病気「B1」の発生頻度が高くなることを意味する。
【0075】
この気象条件・病気対応情報300は、例えば、過去の発病データと発病時の気象データを統計的に分析して気象条件と病気との因果関係を抽出することにより作成される。過去の発病データとしては、病院に救急搬送された患者の診察・治療・手術に関するデータ、入院患者や通院患者の診察や治療に関するデータ、患者から定期的に取得した生体データ、患者の体調に関するアンケートの回答等を利用することができる。過去の気象データは、アメダス(AMeDAS)等から得られた、発病時の広域気象情報から計算される発病場所の気象データであってもよいし、分散配置された気象計測装置2が計測した気象データを過去の気象データとして利用してもよい。
【0076】
なお、過去の発病データと発病時の気象データが新たに得られる毎に、気象条件・病気対応情報300は最新の情報に更新される。
【0077】
[搬送管理装置の構成]
図6は、図2の搬送管理装置5の構成例を示す図である。図6に示すように、本実施形態では、搬送管理装置5は、処理部(CPU)50、操作部60、通信部62、記憶部64、記録媒体66、表示部68を含んで構成されている。
【0078】
操作部60は、操作キーやボタンスイッチ等により構成される入力装置であり、搬送管理者による操作部60の操作に応じた操作信号を処理部(CPU)20に出力する。
【0079】
表示部68は、LCD等により構成される表示装置であり、処理部(CPU)50から入力される表示信号に基づいて各種の情報を表示する。
【0080】
記憶部64は、処理部(CPU)50が各種の計算処理や制御処理を行うためのプログラムやデータ等を記憶している。また、記憶部64は、処理部(CPU)50の作業領域として用いられ、記録媒体66から読み出されたプログラムやデータ、通信部62を介して受信したデータや処理部(CPU)50が各種プログラムに従って実行した演算結果等を一時的に記憶するためにも使用される。
【0081】
処理部(CPU)50は、記憶部64や記録媒体66に記憶されているプログラムに従って、各種の計算処理や制御処理を行う。例えば、処理部(CPU)50は、操作部60からの操作信号に応じた各種の処理、表示部68に各種の情報を表示させる処理、通信部62を介してデータを受け取って各種の計算処理を行う。また、処理部(CPU)50は、通信部62を介した病気予測装置4とのデータ通信を制御する処理等を行う。
【0082】
特に、本実施形態では、処理部(CPU)50は、病気予測情報取得部51、搬送予測部52、通信制御部53、表示制御部54を含む。ただし、本実施形態の処理部(CPU)50は、これらの一部の構成(要素)を省略したり、他の構成(要素)を追加した構成としてもよい。
【0083】
病気予測情報取得部51は、通信部62から送られてくる病気予測情報(病気予測装置4が生成した病気予測情報)を継続して取得する処理を行う。具体的には、病気予測情報取得部51は、病気予測情報を受け取り、受け取った病気予測情報を順番に記憶部64に保存する。
【0084】
搬送予測部52は、病気予測情報取得部51が取得した病気予測情報に基づいて、救急車両を優先して確保すべきエリア(救急搬送の要請が現在よりも増加すると予測されるエリア)と当該エリアにおいて確保すべき前記搬送車両の台数を予測する処理を行う。さらに、搬送予測部52は、救急車両保有施設の所在地の情報及び当救急車両保有施設における救急車両の保有台数の情報(両者とも後述する救急車両保有施設情報に含まれる)に基づいて、救急車両保有施設毎に確保すべき救急車両の台数を算出する。
【0085】
通信制御部53は、通信部62を介する病気予測装置4とのデータ通信等を制御する処理を行う。特に、本実施形態では、通信制御部53は、通信部62を介して、病気予測装置4から病気予測情報を受信する。
【0086】
表示制御部54は、表示部68への情報の表示を制御する処理を行う。特に、本実施形態では、表示制御部54は、病気予測情報を画像に変換し、救急車両保有施設の位置や救急車両の保有台数の情報とともに地図画像にマッピングした画像を生成して表示部68に表示する。表示部68に表示される画像は、搬送管理者による操作部60の操作に応じて選択される。
【0087】
記録媒体66は、コンピューター読み取り可能な記録媒体であり、特に本実施形態では、コンピューターを上記の各部として機能させるためのプログラムが記憶されている。そして、本実施形態の処理部(CPU)50は、記録媒体66に記憶されているプログラムを実行することで、病気予測情報取得部51、搬送予測部52、通信制御部53、表示制御部54として機能する。あるいは、通信部62等を介して有線又は無線の通信ネットワークに接続された他のサーバーから当該プログラムを受信し、受信したプログラムを記憶部64や記録媒体66に記憶して当該プログラムを実行するようにしてもよい。ただし、病気予測情報取得部51、搬送予測部52、通信制御部53、表示制御部54の少なくとも一部をハードウェア(専用回路)で実現してもよい。
【0088】
なお、記録媒体66は、例えば、光ディスク(CD、DVD)、光磁気ディスク(MO)、磁気ディスク、ハードディスク、磁気テープ、メモリー(ROM、フラッシュメモリーなど)により実現することができる。
【0089】
本実施形態では、記憶部64あるいは記録媒体66には、特に、救急車両保有施設(消防署や病院等)に関する救急車両保有施設情報と、医療施設(病院等)に関する医療施設情報が記憶されている。
【0090】
図7は、救急車両保有施設情報の一例を示す図である。また、図8は、医療施設情報の一例を示す図である。
【0091】
図7に示すように、救急車両保有施設情報500は、施設ID(510)、名称(520)、所在地(530)及び救急車両の保有台数(540)の情報を含む。図7の例では、例えば、施設IDがS1の施設は、所在地が(X1,Y1)のXX消防署であり、救急車両を3台保有していることを意味する。
【0092】
図8に示すように、医療施設情報600は、施設ID(610)、名称(620)、所在地(630)、種別(640)及び診療科(650)の情報を含む。図8の例では、例えば、施設IDがM1の施設は、所在地が(x1,y1)のxx病院であり、総合病院であり、診療科が消化器科,循環器科,・・・であることを意味する。
【0093】
1−3.搬送管理システムの処理
[病気予測装置の処理]
図9は、病気予測装置4の処理部(CPU)20の処理のフローチャートの一例を示す図である。
【0094】
まず、処理部(CPU)20は、各気象計測装置2が計測した気象データを取得する(S10)。この気象データより、各気象計測装置2が設置された各地点の気圧、気温、湿度等の気象の情報が得られる。
【0095】
次に、処理部(CPU)20は、ステップS10で現在までに取得した気象データの時系列に基づく現在までの各地点の気象の推移から、観測メッシュの各エリアのT時間後(例えば、12時間後)までの気象の推移を予測する(S12)。
【0096】
次に、処理部(CPU)20は、観測メッシュのエリア毎に、ステップS12で得られた気象の推移の予測結果を気象条件・病気対応情報300と照合し、T1時間後,T2時間後,・・・(例えば、1時間後,2時間後,・・・)の病気別の危険度を判定する(S14)。
【0097】
次に、処理部(CPU)20は、ステップS14における観測メッシュのエリア毎の病気別の危険度の判定結果から、病気予測情報(予測時刻、病気の種類、危険度、エリアの対応情報)を作成する(S16)。
【0098】
次に、処理部(CPU)20は、ステップS16で生成した病気予測情報を搬送管理装置5に送信する(S18)。
【0099】
そして、処理部(CPU)20は、病気予測処理を終了する(S20のY)まで、所定時間が経過する毎に(S22のY)、S10〜S18の処理を繰り返し行う。
【0100】
図10は、図9のステップS16で作成される病気予測情報の一例を示す図である。図9に示すように、病気予測情報400は、予測時刻(410)、病気の種類(420)、危険度(430)、エリア(440)の対応関係を示す情報である。
【0101】
予測時刻(410)は、現時刻を基準(0)とした時刻である。病気の種類(420)は、図5に示した気象条件・病気対応情報300の病気の種類(320)と対応している。危険度(430)は、各病気が発生する危険度を段階的(例えば、3段階)に数値で表したものであり、例えば、危険度0は「ほとんど危険なし」、危険度1は「危険」、危険度2は「非常に危険」を意味する。エリア(440)は、観測メッシュの各エリアを表す。
【0102】
図10の例の病気予測情報400は、現在からT1時間後、病気A1の危険度が0のエリアはX1,X6,・・・、病気A1の危険度が1のエリアはX2,X3,・・・、病気A1の危険度が2のエリアはX4,X5,・・・、病気A2の危険度が0のエリアはX1,X2,X3,X4,・・・、病気A2の危険度が1又は2のエリアは無いことを示している。
【0103】
また、図10の例の病気予測情報400は、現在からT2時間後、病気A1の危険度が0のエリアはX1,・・・、病気A1の危険度が1のエリアはX6,・・・、病気A1の危険度が2のエリアはX2,X3,X4,X5,・・・、病気A2の危険度が0のエリアはX1,X2,・・・、病気A2の危険度が1のエリアはX3,X4,・・・、病気A2の危険度が2のエリアは無いことを示している。
【0104】
この病気予測情報400は、病気予測装置4の表示部38に病気予測の画像として表示されるとともに、搬送管理装置5に送信される。操作部30の操作により予測時刻や病気の種類が選択されると、選択された予測時刻における選択された病気の危険度をエリア毎に示す病気予測の画像が表示部38に表示される。
【0105】
図11(A)及び図11(B)は、表示部38に表示される病気予測の画像の一例を示す図である。図11(A)及び図11(B)において、格子点が観測メッシュの各ノード(気象観測装置2の設置地点)に対応し、4つの格子点を頂点とする矩形の各々が観測メッシュの各エリアに対応している。図11(A)は現在から1時間後の画像であり、図11(B)は現在から2時間後の画像である。図11(A)及び図11(B)において、白色のエリアは選択された病気(例えば、心筋梗塞)の危険度が0(「ほとんど危険なし」)のエリアであり、網掛け模様のエリアは選択された病気の危険度が1(「危険」)のエリアであり、黒色のエリアは選択された病気の危険度が2(「非常に危険」)のエリアである。この画像を見ることで、数時間後の観測メッシュの各エリアの病気別の危険度が容易にわかる。
【0106】
[搬送管理装置の処理]
図12は、搬送管理装置5の処理部(CPU)50の処理のフローチャートの一例を示す図である。
【0107】
まず、処理部(CPU)50は、病気予測装置4が生成した病気予測情報を取得する(S50)。この病気予測情報により、観測メッシュのエリア毎の病気別の危険度の情報が得られる。
【0108】
次に、処理部(CPU)50は、ステップS50で取得した病気予測情報に基づいて、救急搬送の要請が現在よりも増加すると予測されるエリアを特定する(S52)。例えば、処理部(CPU)50は、発病した場合に救急搬送される可能性が高い病気を優先し、当該病気の危険度が閾値よりも高い観測メッシュの複数のエリアを含むエリアを、救急搬送の要請が現在よりも増加すると予測されるエリアとして特定してもよい。
【0109】
次に、処理部(CPU)50は、ステップS52で特定したエリアにおける救急搬送に確保すべき救急車両の台数を予測する(S54)。例えば、処理部(CPU)50は、救急搬送の要請が現在よりも増加すると予測されるエリアのサイズや病気の危険度に応じて、確保すべき救急車両の台数を予測するようにしてもよい。
【0110】
次に、処理部(CPU)50は、ステップS54で予測した確保すべき救急車両の台数の予測結果と救急車両保有施設情報500に基づいて、救急車両保有施設毎に確保すべき救急車両の台数を算出する(S56)。例えば、処理部(CPU)50は、ステップS52で特定したエリア内にある救急車両保有施設に対しては、確保する救急車両の台数の保有台数に対する比率を高く設定し、当該エリアから離れた位置にある救急車両保有施設ほど、当該比率を低く設定し、全体としてステップS54で予測した確保すべき救急車両の台数となるように、救急車両保有施設毎に確保すべき救急車両の台数を割り振るようにしてもよい。
【0111】
次に、処理部(CPU)50は、ステップS52で特定したエリアを含む地図、ステップS54で予測した当該特定したエリアにおける救急搬送に確保すべき救急車両の台数、ステップS56で算出した救急車両保有施設毎に確保すべき救急車両の台数とともに、救急車両保有施設情報500を参照して得られる、救急車両保有施設の名称、位置、救急車両の保有台数の情報、医療施設情報600を参照して得られる、医療施設の名称、位置、診療科の情報等を含む画像を生成し、表示部68に表示する(S58)。
【0112】
そして、処理部(CPU)50は、処理を終了する(S60のY)まで、所定時間が経過する毎に(S62のY)、S50〜S58の処理を繰り返し行う。
【0113】
なお、ステップS52で、救急搬送の要請が現在よりも増加すると予測されるエリアとして、地理的に離れた複数のエリアが特定された場合、優先順位を設けてステップS54及びS56の処理を行うようにしてもよい。
【0114】
図13は、ステップS58で表示部68に表示される画像の一例を示す図である。図13の例では、斜線で示すエリアが地図上にマッピングされており、当該エリアが、救急搬送の要請が現在よりも増加すると予測されるエリアを示している。また、救急車両保有施設(R1〜R3)や医療施設(M1〜M8)の位置を示す黒丸が地図上にマッピングされている。その他、斜線で示すエリアで発病の増加が予想される病気の情報、各救急車両保有施設(R1〜R3)の情報、確保すべき救急車両の台数、医療施設(M1〜M8)の情報等が文字情報で表示される。
【0115】
搬送管理者は、このような画像を参考にして、救急搬送の要請が増えると予想されるエリアに救急車両を優先的に配車できる体制を整えておくように、救急車両保有施設(消防署や病院等)に連絡することができる。
【0116】
また、搬送管理者は、このような画像を参考にして、救急搬送の要請が増えると予想されるエリア内や当該エリアに近く、増加が予想される病気の治療が可能な医療施設に対して、事前に受け入れの準備を要請したり、救急搬送の要請を受けた場合は、救急搬送を依頼する救急車両保有施設や搬送先の医療施設を適切に選択し、選択したこれらの施設に要請の連絡をすることができる。
【0117】
以上に説明したように、第1実施形態の搬送管理システムによれば、病気予測装置4は、分散配置された複数の気象計測装置2の各々が計測した気象データを用いて、観測メッシュのエリア毎の詳細な気象条件を解析し、当該エリア毎の気象予測を行う。そして、病気予測装置4は、このエリア毎の気象予測をもとに病気別の発生の危険度を予測するので、病気別の発生しやすいエリアの予測精度を高めることができる。搬送管理装置5は、病気別の発生しやすいエリアの精度の高い予測に基づき、救急車両を優先して確保すべきエリアを精度よく予測することができる。搬送管理者は、この予測を参考にして救急車両保有施設に連絡し、あらかじめ必要な台数の救急車両を確保しておくことで、患者の救急搬送の要請があった場合に救急車両を効率よく配車することができる。
【0118】
2.第2実施形態
2−1.搬送管理システムの概要
第1実施形態の搬送管理システムでは、病気予測装置4は、各地点における現在までの気象の推移から、観測メッシュの各エリアの数時間後の気象を予測しているが、例えば、にわか雨が降ると急に湿度が上昇し、気温が低下するので、それまでの気象の推移のみから予測した湿度や気温と実際の湿度や気温に差が生じる。そのため、にわか雨等の局地的な気象変動が発生すると、病気予測の精度が低下するおそれがある。そこで、第2実施形態の搬送管理システムでは、病気予測装置4は、各地点における現在までの気象の推移から観測メッシュの各エリアの数時間後の気象を予測するだけでなく、局地的な気象変動を精度よく予測し、気象変動も考慮した病気予測を行う。局地的な気象変動としては、例えば、にわか雨、雷雨、集中豪雨、竜巻、突風などが挙げられるが、これらの気象変動は上昇気流により発達する積雲や積乱雲が発達することで発生する場合が多い。従って、上昇気流に伴う局地的な気圧の変化を捉えることで気象変動を精度よく予測することが可能となる。
【0119】
2−2.搬送管理システムの構成
第2実施形態の搬送管理システムの全体構成は、第1実施形態(図2)と同様であるため、図示及び説明を省略する。また、搬送管理装置5の構成は、第1実施形態(図6)と同様であるため、図示及び説明を省略する。
【0120】
[気象計測装置の構成]
気象計測装置2の構成は、第1実施形態(図3)と同様であるため、図示を省略するが、局地的な気圧の変化を捉えて気象変動の予測を可能とするためには、気象計測装置2は、ある程度高分解能の気圧センサー10を備える必要がある。このような気圧センサー10としては、圧力の変化を振動子の周波数の変化として捉える周波数変化型、圧力の変化を静電容量の変化として捉える静電容量型、圧力の変化をピエゾ抵抗の抵抗値の変化として捉えるピエゾ抵抗型などのセンサーを適用することができる。ただし、わずかな気圧の変化を捉えて気象変動の発生を早期に予測するためには、出来る限り高分解能な計測が可能な気圧センサーが望ましい。現在のところ、周波数変化型の気圧センサーは、静電容量型やピエゾ抵抗型の気圧センサーよりも高い分解能が得られており、周波数変化型の気圧センサーであれば1Pa以下の分解能も実現可能である。そのため、局地的な気象変動を早期に捉えるためには、周波数変化型の気圧センサー10を用いるのが有利である。
【0121】
図14は、周波数変化型の気圧センサー10の構成例を示す図である。図14に示すように、本実施形態の気圧センサー10は、圧力センサー素子100、発振回路110、カウンター120、TCXO(Temperature Compensated Crystal Oscillator)130、MPU(Micro Processing Unit)140、温度センサー150、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)160、通信インターフェース(I/F)170を含んで構成されている。ただし、本実施形態の気圧センサーは、図14の構成要素(各部)の一部を省略したり、他の構成要素を付加した構成としてもよい。
【0122】
圧力センサー素子100は、振動片の共振周波数の変化を利用する方式(振動方式)の感圧素子を有している。この感圧素子は、例えば、水晶、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム等の圧電材料で形成された圧電振動子であり、例えば、音叉型振動子、双音叉型振動子、AT振動子(厚みすべり振動子)、SAW共振子などが適用される。
【0123】
特に、双音叉型圧電振動子は、AT振動子(厚みすべり振動子)などに比べて、伸長・圧縮応力に対する共振周波数の変化が極めて大きく共振周波数の可変幅が大きいので、感圧素子として双音叉型圧電振動子を用いることで、わずかな気圧差を検出可能な高い分解能の気圧センサーを実現することができる。そのため、本実施形態の気圧センサー10は、感圧素子として双音叉型圧電振動子を用いている。なお、圧電材料として、Q値が高くかつ温度安定性に優れた水晶を選択することで、優れた安定性と最高水準の分解能および精度を実現することができる。
【0124】
図15は、本実施形態の圧力センサー素子100の断面の模式図である。図16は、本実施形態の圧力センサー素子100の振動片220およびダイヤフラム210を模式的に示す下面図である。図16は、封止板としてのベース230を省略して描いてある。図15は、図16のA−A線の断面に対応する。
【0125】
圧力センサー素子100は、ダイヤフラム210と、振動片220と、封止板としてのベース230と、を含む。
【0126】
ダイヤフラム210は、圧力を受圧して撓む可撓部を有する平板状の部材である。ダイヤフラム210の外側の面が受圧面214となっており、受圧面214の裏面側に一対の突起212が形成されている。
【0127】
振動片220は、振動ビーム(梁)222及び振動ビーム222の両端に形成された一対の基部224を有する。振動ビーム222は、一対の基部224の間に両持ち梁状に形成される。一対の基部224は、ダイヤフラム210に形成された一対の突起212にそれぞれ固定される。振動ビーム222には図示しない電極が適宜設けられ、電極から駆動信号を供給することで振動ビーム222を一定の共振周波数で屈曲振動させることができる。振動片220は、圧電性を有する材料で形成される。振動片220の材質としては、水晶、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム等の圧電材料が挙げられる。振動片220は、支持梁226によって枠部228に支持されている。
【0128】
ベース230は、ダイヤフラム210と接合されて、ダイヤフラム210との間にキャビティー232を形成する。キャビティー232を減圧空間とすることにより、振動片220のQ値を高める(CI値を小さくする)ことができる。
【0129】
このような構造の圧力センサー素子100において、ダイヤフラム210は、受圧面214に圧力を受けた場合に撓み、変形する。すると、振動片220の一対の基部224が、ダイヤフラム210の一対の突起212にそれぞれ固定されているため、ダイヤフラム210の変形に従って基部224間の間隔が変化する。すなわち、圧力センサー素子100に圧力が印加されたときに、振動ビーム222に引張または圧縮の応力を生じさせることができる。
【0130】
図17は、圧力センサー素子100の断面の模式図であり、ダイヤフラム210が圧力Pによって変形した状態を示している。図17は、圧力センサー素子100の外側から内側への力(圧力P)が作用することにより、ダイヤフラム210が素子の内側に向かって凸となる変形が生じた例である。この場合、一対の突起212の間の間隔は大きくなる。他方、図示しないが、圧力センサー素子100の内側から外側への力が作用する場合は、ダイヤフラム210が素子の外側に向かって凸となる変形が生じ、一対の突起212の間の間隔は小さくなる。従って、両端が一対の突起212にそれぞれ固定された振動片220の振動ビーム222に平行な方向に引張または圧縮の応力が生じる。すなわち、受圧面214に対して垂直方向に加わった圧力は、突起(支持部)212を介して、振動片220の振動ビーム222に対して平行な直線方向の応力に変換される。
【0131】
振動ビーム222の共振周波数は、以下のようにして解析することができる。図15及び図16に示すように、振動ビーム222の長さをl、幅をw、厚みをdとすると、振動ビーム222の長辺方向に外力Fが作用したときの運動方程式は、次式(1)によって近似される。
【0132】
【数1】
【0133】
式(1)において、Eは縦弾性定数(ヤング率)、ρは密度、Aは振動ビームの断面積(=w・d)、gは重力加速度、Fは外力、yは変位、xは振動ビームの任意の位置をそれぞれ表す。
【0134】
式(1)に一般解と境界条件を与えて解くことで、次のような、外力が無い場合の共振周波数の式(2)が得られる。
【0135】
【数2】
【0136】
断面2次モーメントI=dw3/12、断面積A=dw、λI=4.73より、式(2)は次式(3)のように変形することができる。
【0137】
【数3】
【0138】
従って、外力F=0の時の共振周波数f0は、ビームの幅wに比例し、長さlの2乗に反比例する。
【0139】
外力Fを2本の振動ビームに加えたときの共振周波数fFも同様の手順で求めると、次式(4)が得られる。
【0140】
【数4】
【0141】
断面2次モーメントI=dw3/12より式(4)は次式(5)のように変形することができる。
【0142】
【数5】
【0143】
式(5)において、SFは応力感度(=K・12/E・(l/w)2)、σは応力(=F/(2A))をそれぞれ表す。
【0144】
以上から、圧力センサー素子100に作用する力Fを圧縮方向のとき負、伸張方向のとき正としたとき、力Fが圧縮方向に加わると共振周波数fFが減少し、力Fが伸縮方向に加わると共振周波数fFが増加する。
【0145】
そして、次式(6)に示す多項式を用いて、圧力センサー素子100の圧力−周波数特性と温度−周波数特性に起因する直線性誤差を補正することで、高分解能かつ高精度の圧力値Pを得ることができる。
【0146】
【数6】
【0147】
式(6)において、fnはセンサー規格化周波数であり、fn=(fF/f0)2で表される。また、tは温度であり、α(t)、β(t)、γ(t)、δ(t)は、それぞれ次式(7)〜(10)で表される。
【0148】
【数7】
【0149】
【数8】
【0150】
【数9】
【0151】
【数10】
【0152】
式(7)〜(10)において、a〜pは補正係数である。
【0153】
すなわち、圧力センサー素子100の出力信号の周波数を計測することで、振動ビーム220の振動周波数(力Fが作用した時の共振周波数fF)が得られ、あらかじめ測定された共振周波数f0や補正係数a〜pを用いて、式(6)から圧力Pを計算することができる。
【0154】
図14に戻り、発振回路110は、圧力センサー素子100の振動ビーム222を共振周波数で発振させた発振信号を出力する。
【0155】
カウンター120は、発振回路110が出力する発振信号の所定周期を、基準クロック源であるTCXO130が出力する高精度のクロック信号でカウントするレシプロカルカウンターである。ただし、カウンター120を、所定のゲートタイムにおける圧力センサー素子100の発振信号のパルス数をカウントする直接計数方式の周波数カウンター(ダイレクトカウンター)として構成してもよい。
【0156】
MPU(Micro Processing Unit)140は、カウンター120のカウント値から圧力値Pを計算する処理を行う。具体的には、MPU140は、温度センサー150の検出値から温度tを計算し、EEPROM160にあらかじめ記憶されているa〜pの補正係数値を用いて、式(7)〜(10)よりα(t)、β(t)、γ(t)、δ(t)を計算する。さらに、MPU140は、カウンター120のカウント値とEEPROM160にあらかじめ記憶されている共振周波数f0の値を用いて、式(6)より圧力値Pを計算する。そして、MPUが計算した圧力値Pは、通信インターフェース170を介して、気圧センサー10の外部に出力される。
【0157】
このような構成の周波数変化型の気圧センサー10によれば、圧力センサー素子100の振動周波数をカウンター120によりTCXO130が出力する高精度かつ高周波数(例えば数十MHz)のクロック信号でカウントするとともに、MPU140でデジタル演算処理により圧力値の計算及び直線性誤差の補正を行うので、Paオーダーの高い分解能かつ高精度の圧力値(気圧データ)を得ることができる。さらに、気圧センサー10は、カウント時間を考慮しても秒オーダーの周期で気圧データを更新することができるので、短時間におけるわずかな気圧の変化も捉えることができ、リアルタイムの気象計測に適している。
【0158】
なお、本実施形態では、基準クロック源としてTCXO130を用いているが、基準クロック源を、温度補償回路を有さない発振回路、例えば、ATカット水晶振動子を搭載した水晶発振回路で構成しても良い。この場合、温度補償回路を有さない分、気圧変動の検出精度は低下するが、基準クロック源を当該水晶発振回路とするか、或いはTCXO130とするかは、システムのコストや精度に応じて設計者が適宜選択すればよい。
【0159】
[病気予測装置の構成]
第2実施形態における病気予測装置4の構成は、第1実施形態(図4)と同様であるため、図示を省略する。ただし、処理部(CPU)20の気象予測部22の機能が第1実施形態と異なる。
【0160】
気象予測部22は、気象データ取得部21が取得した気象データに含まれる気圧データに基づいて、局地的な気象変動の発生の有無を予測し、気象変動の発生が予測される場合には、当該気象変動に伴う気象変化を加味して各地点の気象の推移を予測する処理を行う。
【0161】
本実施形態では、記憶部34に、気象条件に関する判定基準と判定される気象変動との対応関係を定義する気象変動判定テーブル(不図示)が記憶されており、気象予測部22は、気象データ取得部21が取得した気象データから得られる気象状況の変化を当該気象変動判定テーブルの各判定基準と照合し、各気象変動が発生するか否かを判定する。例えば、気象変動の前に生じる上昇気流に伴う局地的な低気圧の発生の有無を判定することで気象変動を予測することができるので、気象変動判定テーブルの各判定基準は少なくとも気圧に関する条件を含む。例えば、一定時間当たりの気圧の低下量が所定の閾値を超えたか否かを所定の気象変動(例えば集中豪雨)の判定基準としてもよい。また、判定基準に温度や湿度等に関する条件を含ませてもよい。例えば、一定時間当たりの気圧の低下量が所定の閾値を超えるとともに温度が所定の範囲にあるか否かを所定の気象変動(例えば雷雨)の判定基準としてもよい。図18は、気象変動判定テーブルの一例を示す図である。図18の例では、判定基準1が満たされるとにわか雨が降ると予測されることを示している。同様に、判定基準2,3,4、5がそれぞれ満たされると、それぞれ雷雨、集中豪雨、竜巻、突風の発生が予測されることを示している。
【0162】
また、気象予測部22は、気象データ取得部21が取得した気象データに含まれる気圧データに基づいて、2地点間毎(2つの気象計測装置2の間毎)の気圧傾度(=2地点間の気圧差/2地点間の距離)を計算し、気圧傾度の変化から上昇気流に伴う局地的な低気圧の移動速度や移動方向を計算し、気象変動が発生するエリアを予測する。なお、気圧傾度の計算対象となる地点は、任意の位置でよく、例えば、観測メッシュの各ノードの位置(気圧計測装置2の設置場所)でもよい。
【0163】
そして、気象予測部22は、現在までの各地点の気象の推移をベースに、局地的な気象変動の発生予測も考慮しながら各地点の気象の推移を予測し、病気予測情報400を作成する。気象変動の発生による気温や湿度等の変化量は、過去の統計データに基づく数値計算を行うことで得ることができる。
【0164】
2−3.搬送管理システムの処理
第2実施形態における搬送管理装置5の処理のフローチャートは、第1実施形態(図12)と同様であるため、その図示及び説明を省略する。
【0165】
[病気予測装置の処理]
図19は、第2実施形態における、病気予測装置4の処理部(CPU)20の病気予測処理のフローチャートの一例を示す図である。
【0166】
まず、処理部(CPU)20は、各気象計測装置2が計測した気象データを取得する(S100)。
【0167】
次に、処理部(CPU)20は、ステップS100で取得した気象データに含まれる気圧データから、2地点間毎の気圧傾度を計算する(S102)。
【0168】
次に、処理部(CPU)20は、現在までの各地点の気圧と気圧傾度の推移等から、局地的な気象変動を予測する(S104)。
【0169】
次に、処理部(CPU)20は、現在までの各地点の気象の推移とステップS104の気象変動の予測結果から、観測メッシュの各エリアのT時間後(例えば、12時間後)までの気象の推移を予測する(S106)。
【0170】
次に、処理部(CPU)20は、観測メッシュのエリア毎に、ステップS106で得られた気象の推移の予測結果を気象条件・病気対応情報300と照合し、T1時間後,T2時間後,・・・(例えば、1時間後,2時間後,・・・)の病気別の危険度を判定する(S108)。
【0171】
次に、処理部(CPU)20は、観測メッシュのエリア毎の病気別の危険度の判定結果から、病気予測情報(予測時刻、病気の種類、危険度、エリアの対応情報)を作成する(S110)。
【0172】
次に、処理部(CPU)20は、ステップS16で生成した病気予測情報を搬送管理装置5に送信する(S112)。
【0173】
そして、処理部(CPU)20は、病気予測処理を終了する(S114のY)まで、所定時間が経過する毎に(S116のY)、S100〜S112の処理を繰り返し行う。
【0174】
以上に説明したように、第2実施形態の搬送管理システムによれば、病気予測装置4は、分散配置された複数の気象計測装置2の各々が計測した気象データを取得して、観測メッシュのエリア毎の詳細な気圧変化の情報から、気圧の変化に起因して発生する局地的な気象変動の発生を予測する。そして、病気予測装置4は、気象変動の発生を考慮してエリア毎の気象予測を行い、病気別の発生の危険度を予測するので、病気別の発生しやすいエリアの予測精度をさらに高めることができる。これにより、搬送管理者は、効率のよい搬送管理を行うことができる。
【0175】
3.第3実施形態
3−1.搬送管理システムの概要
第1実施形態及び第2実施形態の搬送管理システムでは、搬送管理者は、救急搬送の要請を受けた場合、搬送管理装置5の表示部68に表示される情報を参考にして最適な救急車両保有施設を判断し、搬送の指示を行う。これに対して、第3実施形態の搬送管理システムでは、搬送管理者が救急搬送の要請を受けて、患者の現在地、病状、重篤度等の情報を搬送管理装置5に入力すると、搬送管理装置5が、これらの入力情報と病気予測情報に基づいて救急搬送に使用する救急車両を選択し、当該救急車両を保有する救急車両保有施設に搬送を指示する情報(搬送指示情報)を送信する。
【0176】
3−2.搬送管理システムの構成
図20は、第3実施形態の搬送管理システムの構成例を示す図である。本実施形態の搬送管理システムは、図20の構成要素(各部)の一部を省略したり、他の構成要素を付加した構成としてもよい。
【0177】
図20に示すように、第3実施形態の搬送管理システム1は、複数の気象計測装置2、病気予測装置4、搬送管理装置5、複数の情報端末6を含む。
【0178】
各気象計測装置2と病気予測装置4との間のデータ通信及び病気予測装置4と搬送管理装置5との間のデータ通信については、第1実施形態や第2実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0179】
複数の情報端末6の各々は、それぞれ異なる救急車両保有施設に設置されており、搬送管理装置5と各情報端末6は、通信ネットワーク3を介して、データ通信を行う。
【0180】
搬送管理装置5は、救急搬送の要請があった場合、病気予測装置4から受信したエリア毎の病気別の危険度の情報に基づいて、救急搬送に使用する救急車両を選択し、当該救急車両を保有する救急車両保有施設に設置された情報端末6に搬送指示情報を送信する。この情報端末6は、搬送指示情報を受信し、搬送指示の内容を出力(表示部への表示や音声出力等)する。
【0181】
第3実施形態における気象計測装置2の構成は、第1実施形態(図3)又は第2実施形態と同様であるため、図示及び説明を省略する。また、第3実施形態における病気予測装置4の構成は、第1実施形態(図4)又は第2実施形態と同様であるため、図示及び説明を省略する。
【0182】
[搬送管理装置の構成]
図21は、第3実施形態における搬送管理装置5の構成例を示す図である。図21に示すように、第3実施形態における搬送管理装置5では、第1実施形態(図6)の構成に対して、処理部(CPU)50に搬送指示情報生成部55が追加されている。また、通信制御部53の機能が第1実施形態と異なる。
【0183】
搬送指示情報生成部55は、患者の搬送要請があった場合、患者の現在地の情報、各救急車両保有施設の所在地の情報、及び搬送予測部52が算出した、救急車両保有施設毎に確保すべき救急車両の台数の情報に基づいて搬送を指示する救急車両保有施設を選択する処理を行う。例えば、搬送指示情報生成部55は、患者の現在地に最も近くにある救急車両保有施設を選択してもよいし、患者の現在地から所定範囲にある複数の救急車両保有施設の中で確保すべき救急車両の台数が最も多い救急車両保有施設を選択してもよい。
【0184】
また、搬送指示情報生成部55は、救急車両の搬送を指示する搬送指示情報を生成する処理を行う。搬送指示情報は、少なくとも患者の現在地の情報を含み、加えて、患者の病状や重篤度、搬送ルートなどの情報を含んでもよい。さらに、搬送指示情報生成部55は、患者の現在地、病状、重篤度の情報と医療施設情報600に基づいて、患者の搬送先の医療施設を選択し、当該搬送先の医療施設の情報を含む搬送指示情報を生成するようにしてもよい。例えば、搬送指示情報生成部55は、患者の現在地からの距離、患者の病状に合った診療科があるか否か、患者の重篤度を考慮して総合病院か否か等を基準に、搬送先の医療施設を選択してもよい。
【0185】
通信制御部53は、第1実施形態又は第2実施形態と同様の処理に加えて、搬送指示情報生成部55により選択された救急車両を保有する救急車両保有施設の情報端末6に、搬送指示情報生成部55が生成した搬送指示情報を送信する処理を行う。
【0186】
3−3.搬送管理システムの処理
第3実施形態における病気予測装置4の処理のフローチャートは、第1実施形態(図9)又は第2実施形態(図19)と同様であるため、その図示及び説明を省略する。
【0187】
[搬送管理装置の処理]
図22は、第3実施形態における搬送管理装置5の処理部(CPU)50の処理のフローチャートの一例を示す図である。
【0188】
まず、処理部(CPU)50は、第1実施形態(図12のステップS50〜S58)と同様に、ステップS150〜S158の処理を行う。
【0189】
搬送管理者が救急搬送の要請を受けて、操作部60に対して患者の情報(患者の現在地、病状、重篤度等)を入力する操作を行うと(S160のY)、処理部(CPU)50は、患者の現在地、各救急車両保有施設の所在地、救急車両保有施設毎に確保すべき救急車両の台数の情報等から、搬送を指示する救急車両保有施設を選択する(S162)。
【0190】
次に、処理部(CPU)50は、ステップS160で入力された患者の情報等から搬送指示情報を生成する(S164)。
【0191】
次に、処理部(CPU)50は、ステップS162で選択した救急車両保有施設の情報端末6に、ステップS16で生成した搬送指示情報を送信する(S166)。
【0192】
一方、操作部60に対して患者の情報を入力する操作が行われなければ(S160のN)、処理部(CPU)50は、ステップS162,S164,S166の処理を行わない。
【0193】
そして、処理部(CPU)50は、処理を終了する(S168のY)まで、所定時間が経過する毎に(S170のY)、S150〜S166の処理を繰り返し行う。
【0194】
このように、第3実施形態の搬送管理システムによれば、救急搬送を要請する患者の状態に応じて、適切かつ効率的な救急車両の配車を自動的に行うことができる。
【0195】
4.変形例
本発明は本実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0196】
[変形例1]
本実施形態において、搬送管理装置5の処理部(CPU)50は、病気予測情報を、過去の救急車両による患者の搬送実績の統計情報と照合し、救急搬送に確保すべき救急車両の全台数や救急車両保有施設毎に確保すべき救急車両の台数を算出するようにしてもよい。このようにすれば、救急搬送に確保すべき救急車両の全台数や救急車両保有施設毎に確保すべき救急車両の台数の算出精度を高めることが期待できる。さらに、救急車両による患者の搬送が新たに行われる毎に、搬送実績の統計情報を更新することで、この算出精度を向上させることが期待できる。
【0197】
[変形例2]
第1実施形態又は第2実施形態において、搬送管理装置5の処理部(CPU)50は、通信ネットワーク3を介してリアルタイムな道路の渋滞情報を取得し、表示部68に病気予測情報等とともに渋滞情報を表示するようにしてもよい。搬送管理者は、救急搬送の要請を受けた場合、この渋滞情報を参考にして、できるだけ搬送時間が短い搬送ルートを決定し、救急車両保有施設に最適な搬送ルートの指示をすることができる。同様に、第3実施形態において、搬送管理装置5の処理部(CPU)50は、通信ネットワーク3を介してリアルタイムな渋滞情報を取得し、病気予測情報や患者の情報とともに渋滞情報を加味して、最適な搬送ルートの情報を含む搬送指示情報を生成するようにしてもよい。
【0198】
[変形例3]
医療施設情報600に各医療施設の診療科毎の医師(専門医)の数の情報を追加し、図12のフローチャートのステップS58において、搬送管理装置5の処理部(CPU)50が、医療施設情報600を参照し、例えば、図13のような表示画像に対してさらに各医療施設の診療科毎の医師(専門医)の数の情報を追加した画像を生成し、表示部68に表示するようにしてもよい。この専門医の数は、在籍人数でもよいが、現在の待機人数をリアルタイムに表示するのがより好ましい。各医療施設から現在の専門医の待機人数の情報を得て医療施設情報600をリアルタイムに更新することで、現在の待機人数をリアルタイムに表示することができる。
【0199】
このようにすれば、搬送管理者は、救急搬送の要請があった患者の病状に応じて、受け入れ可能で、かつ、適切な専門医のいる医療施設を選択して、救急車両に迅速に搬送先の指示をすることができる。
【0200】
[変形例4]
本実施形態では、救急車両による搬送を管理する搬送管理システムの例を挙げて説明したが、本発明の搬送管理システムは、救急車両以外の任意の搬送手段(例えば、ヘリコプター等)に適用することができる。
【0201】
また、本発明の搬送管理システムは、例えばタクシーのような民間車両による搬送を管理するようにしてもよい。この搬送管理システムでは、搬送管理装置5は、例えば、民間のコールセンターに設置され、記憶部64あるいは記録媒体66には、民間車両の運営会社(例えばタクシー会社)の名称、所在地、民間車両の保有台数の情報等が記憶されている。そして、図12のフローチャートのステップS58において、搬送管理装置5の処理部(CPU)50は、この民間車両の運営会社の情報を参照し、例えば、図13のような表示画像に対して、救急車両保有施設の名称、位置、救急車両の保有台数の情報を、民間車両の運営会社の名称、位置、民間車両の保有台数の情報に置き換えたような画像を生成し、表示部68に表示する。
【0202】
一方、民間車両の運営会社は、病気予測情報を考慮した搬送管理者からの指示に応じて、救急搬送の要請が増えると予想されるエリアに車両を優先的に配車できる体制を整えておく。
【0203】
ただし、救急車両以外の車両は、交通規則を守る必要があるため、必ずしも患者の救急搬送を適切に行えるとは限らず、特に重篤な患者の救急搬送には適さない。そこで、救急車両と民間車両の両方による搬送を管理する搬送管理システムがより好ましい。この搬送管理ステムでは、搬送管理装置5の記憶部64あるいは記録媒体66には、救急車両の保有施設の名称、所在地、救急車両の保有台数の情報と民間車両の運営会社の名称、所在地、民間車両の保有台数の情報が記憶されている。そして、図12のフローチャートのステップS58において、搬送管理装置5の処理部(CPU)50は、この救急車量の保有施設の情報と民間車両の運営会社の情報を参照し、例えば、図13のような表示画像に対して、民間車両の運営会社の名称、位置、民間車両の保有台数の情報を追加したような画像を生成し、表示部68に表示する。
【0204】
そして、搬送管理者は、救急搬送の要請を受けた場合、患者の重篤度に応じて、救急車両と民間車両のいずれかを選択して搬送の指示を行う。例えば、一刻を争うような重篤な患者の場合は必ず救急車両を選択し、明らかに軽症の患者の場合は民間車両を選択すればよい。
【0205】
このようにすれば、患者の重篤度に応じて適切な車両を迅速に配車することでできる。
【0206】
[変形例5]
本実施形態において、観測メッシュの各エリアは矩形でなくてもよく、例えば、6つのノードによって1つの六角形状のエリアが形成されるように複数の気象計測装置2を分散配置してもよい。
【0207】
[変形例6]
本実施形態において、気象計測装置2の配置密度は一定でなくてもよく、配置密度を変えてもよい。例えば、地形や建物の配置などから、気象変動が発生し易い場所がわかっていれば、そのような場所では気象計測装置2の配置密度を高くし、逆に、気象変動が発生しにくい場所がわかっていれば、そのような場所では気象計測装置2の配置密度を低くするようにしてもよい。あるいは、気圧傾度の大きさに応じて気象計測装置2の配置密度を高くするようにしてもよい。
【0208】
気象変動が発生し易い場所ほどより観測メッシュを細かくすることで、予測精度を高めることができる。逆に、気象変動が発生しにくい場所は、観測メッシュを多少粗くすることで、必要十分な予測精度を確保しながらコストを削減することができる。
【0209】
[変形例7]
本実施形態において、気象計測装置2を3次元状に配置することで、3次元の観測メッシュを形成するようにしてもよい。例えば、ビルの屋上や側面、地上等に気象計測装置2を配置することで、3次元の領域に観測メッシュを形成することができる。このようにすれば、高さ方向の気象の変化の情報も得られるので、気象変動の予測精度を高めることができる。なお、10m高くなる毎に気圧が約1hPa低下するので、3次元の観測メッシュを形成する場合は、気象計測装置2の設置高度に応じて気圧や気圧傾度を補正計算することが望ましい。
【0210】
[変形例8]
気象計測装置2が計測した気象条件(気圧、気温、湿度、風向、風速など)が同じでも、雷雨等をもたらす積乱雲が発達するか否かは当該気象計測装置2の位置の地理(地形、建物や木の配置等)によって異なると考えられる。そこで、第2実施形態において、病気予測装置4の処理部(CPU)20(気象予測部22)は、各気象計測装置2が計測した気象データと、気象計測装置2が分散配置されている地域の地理情報とを用いて気象変動の予測を行うようにしてもよい。この地理情報は、例えば、病気予測装置4の記憶部34に記憶されていてもよいし、インターネット等の通信ネットワーク上のサーバーに地理情報を記憶させておき、病気予測装置4が通信ネットワークを介して当該地理情報を取得するようにしてもよい。
【0211】
このように、気象状況に地理情報を加味して気象変動を予測することで、予測精度を高めることができる。
【0212】
[変形例9]
気象計測装置2が計測した気象条件(気圧、気温、湿度、風向、風速など)を、過去に気象変動が発生した際の気象条件の統計情報と照合することで、気象変動の予測精度を高めることができる。そこで、第2実施形態において、病気予測装置4の処理部(CPU)20(気象予測部22)は、各気象計測装置2が計測した気象データと、気象計測装置2が分散配置されている地域における過去に気象変動が発生した気象条件の統計情報とを用いて気象変動の予測を行うようにしてもよい。この統計情報は、例えば、病気予測装置4の記憶部34に記憶されていてもよいし、インターネット等の通信ネットワーク上のサーバーに統計情報を記憶させておき、病気予測装置4が通信ネットワークを介して当該統計情報を取得するようにしてもよい。
【0213】
このように、気象状況に過去の統計情報を加味して気象変動を予測することで、予測精度を高めることができる。
【0214】
なお、病気予測装置4の処理部(CPU)20(気象予測部22)は、各気象計測装置2が計測した気象データとともに、地理情報と統計情報の両方を用いて気象変動の予測を行うことで、気象変動の予測精度をさらに高めることができる。
【0215】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0216】
1 搬送管理システム、2 気象計測装置、3 通信ネットワーク、4 病気予測装置、5 搬送管理装置、6 情報端末、10 気圧センサー、11 温度センサー、12 湿度センサー、14 送信部、20 処理部(CPU)、21 気象データ取得部、22 気象予測部、23 病気予測情報生成部、24 通信制御部、25 表示制御部、30 操作部、32 通信部、34 記憶部、36 記録媒体、38 表示部、50 処理部(CPU)、51 病気予測情報取得部、52 搬送予測部、53 通信制御部、54 表示制御部、55 搬送指示情報生成部、60 操作部、62 通信部、64 記憶部、66 記録媒体、68 表示部、100 圧力センサー素子、110 発振回路、120 カウンター、130 TCXO、140 MPU、150 温度センサー、160 EEPROM、170 通信インターフェース(I/F)、210 ダイヤフラム、212 突起、214 受圧面、220 振動片、222 振動ビーム(梁)、224 基部、226 支持梁、228 枠部、230 ベース、232 キャビティー、300 気象条件・病気対応情報、400 病気予測情報、500 救急車両保有施設情報、600 医療施設情報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の搬送手段の搬送状況を管理することができる搬送管理システムであって、
搬送管理の対象地域に分散して配置される複数の気象計測装置と、
前記複数の気象計測装置の各々が計測した気象データを利用して、病気の発生を予測する病気予測装置と、
前記搬送手段の搬送状況を管理する搬送管理装置と、を含み、
前記病気予測装置は、
前記気象データを取得する気象データ取得部と、
前記気象データ取得部が取得した気象データを利用して、気象を予測する気象予測部と、
前記気象予測部の予測結果を、気象条件と病気との対応情報と照合し、病気別に発生する危険度を予測して病気予測情報を生成する病気予測情報生成部と、を含み、
前記搬送管理装置は、
前記病気予測装置が生成した前記病気予測情報を取得する病気予測情報取得部と、
前記病気予測情報取得部が取得した前記病気予測情報を利用して、前記搬送手段を優先して確保すべきエリアを予測する搬送予測部と、を含む、搬送管理システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記搬送管理装置は、
前記搬送予測部が、
前記病気予測情報を利用して、前記エリアにおいて確保すべき前記搬送手段の台数をさらに予測する、搬送管理システム。
【請求項3】
請求項2において、
前記搬送管理装置は、
前記搬送予測部が、
前記病気予測情報を過去の患者の搬送実績の統計情報と照合し、前記エリアにおいて確保すべき前記搬送手段の台数を予測する、搬送管理システム。
【請求項4】
請求項2又は3において、
前記搬送管理装置は、
前記搬送予測部が、
前記搬送手段を保有する施設の所在地の情報及び当該施設における前記搬送手段の保有台数の情報を利用して、前記搬送手段を保有する施設毎に確保すべき前記搬送手段の台数を算出する、搬送管理システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項において、
前記搬送管理装置は、
患者の搬送要請があった場合、当該患者の現在地の情報及び前記搬送手段を保有する施設毎の所在地の情報を利用して、搬送を指示する施設を選択し、当該選択した施設に対して前記搬送手段による搬送を指示する搬送指示情報を生成する搬送指示情報生成部をさらに含み、前記選択した施設の情報端末に前記搬送指示情報を送信する、搬送管理システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項において、
前記搬送管理装置は、
道路の渋滞情報を取得し、当該渋滞情報を医療施設の所在地の情報とともに表示部に表示する、搬送管理システム。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項において、
前記複数の気象計測装置の各々は、気圧センサーを備え、
前記病気予測装置は、
前記気象予測部が、
前記気象データ取得部が取得した気象データに含まれる気圧データから得られる気圧変化の情報を利用して所与の気象変動が発生するか否かを判定し、判定結果に基づいて気象を予測する、搬送管理システム。
【請求項8】
患者の搬送手段の搬送状況を管理する搬送管理方法であって、
搬送管理の対象地域に分散して配置される複数の気象計測装置の各々から気象データを取得する気象データ取得ステップと、
前記気象データ取得ステップで取得した気象データを利用して、気象を予測する気象予測ステップと、
前記気象予測ステップでの予測結果を、気象条件と病気との対応情報と照合し、病気別に発生する危険度を予測して病気予測情報を生成する病気予測情報生成ステップと、
前記病気予測情報を利用して、前記搬送手段を優先して確保すべきエリアを予測する搬送予測ステップと、を含む、搬送管理方法。
【請求項1】
患者の搬送手段の搬送状況を管理することができる搬送管理システムであって、
搬送管理の対象地域に分散して配置される複数の気象計測装置と、
前記複数の気象計測装置の各々が計測した気象データを利用して、病気の発生を予測する病気予測装置と、
前記搬送手段の搬送状況を管理する搬送管理装置と、を含み、
前記病気予測装置は、
前記気象データを取得する気象データ取得部と、
前記気象データ取得部が取得した気象データを利用して、気象を予測する気象予測部と、
前記気象予測部の予測結果を、気象条件と病気との対応情報と照合し、病気別に発生する危険度を予測して病気予測情報を生成する病気予測情報生成部と、を含み、
前記搬送管理装置は、
前記病気予測装置が生成した前記病気予測情報を取得する病気予測情報取得部と、
前記病気予測情報取得部が取得した前記病気予測情報を利用して、前記搬送手段を優先して確保すべきエリアを予測する搬送予測部と、を含む、搬送管理システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記搬送管理装置は、
前記搬送予測部が、
前記病気予測情報を利用して、前記エリアにおいて確保すべき前記搬送手段の台数をさらに予測する、搬送管理システム。
【請求項3】
請求項2において、
前記搬送管理装置は、
前記搬送予測部が、
前記病気予測情報を過去の患者の搬送実績の統計情報と照合し、前記エリアにおいて確保すべき前記搬送手段の台数を予測する、搬送管理システム。
【請求項4】
請求項2又は3において、
前記搬送管理装置は、
前記搬送予測部が、
前記搬送手段を保有する施設の所在地の情報及び当該施設における前記搬送手段の保有台数の情報を利用して、前記搬送手段を保有する施設毎に確保すべき前記搬送手段の台数を算出する、搬送管理システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項において、
前記搬送管理装置は、
患者の搬送要請があった場合、当該患者の現在地の情報及び前記搬送手段を保有する施設毎の所在地の情報を利用して、搬送を指示する施設を選択し、当該選択した施設に対して前記搬送手段による搬送を指示する搬送指示情報を生成する搬送指示情報生成部をさらに含み、前記選択した施設の情報端末に前記搬送指示情報を送信する、搬送管理システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項において、
前記搬送管理装置は、
道路の渋滞情報を取得し、当該渋滞情報を医療施設の所在地の情報とともに表示部に表示する、搬送管理システム。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項において、
前記複数の気象計測装置の各々は、気圧センサーを備え、
前記病気予測装置は、
前記気象予測部が、
前記気象データ取得部が取得した気象データに含まれる気圧データから得られる気圧変化の情報を利用して所与の気象変動が発生するか否かを判定し、判定結果に基づいて気象を予測する、搬送管理システム。
【請求項8】
患者の搬送手段の搬送状況を管理する搬送管理方法であって、
搬送管理の対象地域に分散して配置される複数の気象計測装置の各々から気象データを取得する気象データ取得ステップと、
前記気象データ取得ステップで取得した気象データを利用して、気象を予測する気象予測ステップと、
前記気象予測ステップでの予測結果を、気象条件と病気との対応情報と照合し、病気別に発生する危険度を予測して病気予測情報を生成する病気予測情報生成ステップと、
前記病気予測情報を利用して、前記搬送手段を優先して確保すべきエリアを予測する搬送予測ステップと、を含む、搬送管理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図11】
【公開番号】特開2013−92930(P2013−92930A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235066(P2011−235066)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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