搬送装置、制御装置及びプログラム
【課題】容器の底面近傍に存在する液体の振動を抑制しながら該容器を迅速に搬送することが可能な搬送装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る搬送装置は、液体が入った容器を搬送するための搬送機構1と、容器内の液体の深さHdに応じて変化する深さ情報Idを検出する検出装置7と、搬送機構1を制御する制御装置8とを具え、制御装置8は、検出装置7により検出した深さ情報Idを取得する情報取得手段81と、情報取得手段81により取得した深さ情報Idに基づいて容器の搬送時に該容器に与えることが可能な加速度の最大値Amax(Hd)を算出する演算手段85と、該加速度の最大値Amax(Hd)以下の加速度で容器を搬送するように搬送機構1に指令を出す搬送指令手段87とから構成され、演算手段85は、容器内の液体の深さが大きいほど、加速度の最大値Amax(Hd)として大きな値を算出する。
【解決手段】本発明に係る搬送装置は、液体が入った容器を搬送するための搬送機構1と、容器内の液体の深さHdに応じて変化する深さ情報Idを検出する検出装置7と、搬送機構1を制御する制御装置8とを具え、制御装置8は、検出装置7により検出した深さ情報Idを取得する情報取得手段81と、情報取得手段81により取得した深さ情報Idに基づいて容器の搬送時に該容器に与えることが可能な加速度の最大値Amax(Hd)を算出する演算手段85と、該加速度の最大値Amax(Hd)以下の加速度で容器を搬送するように搬送機構1に指令を出す搬送指令手段87とから構成され、演算手段85は、容器内の液体の深さが大きいほど、加速度の最大値Amax(Hd)として大きな値を算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培養液などの液体が入った容器を搬送するための搬送装置、並びに該搬送装置に関連する制御装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インキュベータなどの培養装置には、該培養装置内に保存されている容器を搬送するための搬送装置を具えたものがある。
例えば、特許文献1に開示のインキュベータには、複数の容器が収納可能なストッカーと、水平方向及び鉛直方向の何れにも容器を搬送することが可能な搬送装置と、容器内の試料を観察するための観察装置が配備されており、搬送装置によって、ストッカーから容器を取り出すと共に、観察装置による観察を実行する位置まで容器を搬送することが可能となっている。又、観察の終了後には、搬送装置によって容器をストッカーに戻すことが可能となっている。
【0003】
又、従来から、容器に培養液などの液体と共に細胞を収容し、培養装置によって該細胞を培養すると共に、培養された細胞の状態を観察することが行われている。液体中の細胞を観察する方法には、容器において座標を設定すると共に、該座標上の位置によって容器内の細胞の位置を特定し、そして同じ座標上の位置に存在する細胞を繰り返し観察する方法がある。かかる方法によれば、容器を一旦ストッカーに戻した場合でも、次の観察時に再び同じ細胞を観察することが可能である。
【0004】
ところで、搬送装置によって容器を水平方向に搬送した場合、容器の加速に伴って容器中の液体には波が立ち、容器内の液体は振動することになる。従って、液体中に浮遊する細胞については、容器の搬送時に細胞が元の位置から移動してしまうため、上記観察方法の適用が困難であった。
一方、容器の底面に貼り付く細胞については、容器の搬送時であっても細胞は元の位置から移動しにくいので、上記観察方法を適用しやすかった。
【特許文献1】特開2007−209256号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、細胞が貼り付いている容器の底面近傍では、液体の振動は、液体の深さが小さいほど大きくなる。このため、容器中の液体の深さに拘わらず同じ加速度で容器を搬送した場合、液体の深さが小さい容器については、底面近傍での液体の振動が大きくなり、底面に貼り付いていた細胞が該振動によって剥がれてしまう虞がある。
細胞が底面から剥がれてしまうと、細胞は、貼り付いていた位置からずれてしまうため、上述した観察方法によって同じ細胞を繰り返し観察することが困難となる。又、細胞が底面から剥がれてしまうと、細胞の培養が阻害される虞がある。
【0006】
そこで本発明の目的は、容器の底面近傍に存在する液体の振動を抑制しながら該容器を迅速に搬送することが可能な搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る搬送装置は、液体が入った容器を搬送する搬送機構と、前記容器内の液体の深さに応じて変化する深さ情報を検出する検出装置と、前記搬送機構を制御する制御装置とを具え、該制御装置は、前記検出装置により検出した深さ情報を取得する情報取得手段と、該情報取得手段により取得した深さ情報に基づいて前記容器の搬送時に該容器に与えることが可能な加速度の最大値を算出する演算手段と、該加速度の最大値以下の加速度で前記容器を搬送するように前記搬送機構に指令を出す搬送指令手段とから構成され、前記演算手段は、前記容器内の液体の深さが大きいほど、前記加速度の最大値として大きな値を算出し、前記容器内の液体の深さが小さいほど、前記加速度の最大値として小さな値を算出する。
【0008】
上記搬送装置によれば、容器内の液体の深さに応じて、容器の底面近傍に存在する液体の振動を抑制することが可能な加速度の最大値が算出され、搬送時の容器の加速度が該最大値以下となるように、制御装置によって搬送機構が制御されるので、液体の深さが小さい容器を搬送した場合でも、容器の底面近傍に存在する液体は振動しにくい。
又、制御装置の制御によって、搬送時の容器の加速度を、液体の振動を抑制することが可能な加速度の最大値に等しくした場合、容器の移動時間が短くなるので、容器の迅速な搬送が可能となる。
更に、容器内の液体の深さが大きいほど、制御装置の演算手段によって算出される加速度の最大値を大きくするという構成は、容器内の液体の深さが大きいほど、容器の底面近傍に存在する液体の振動が生じにくくなるという現象に基づくものであり、該構成によれば、容器内の液体の深さが大きいほど容器の迅速な搬送が可能となる。
【0009】
上記搬送装置の具体的構成において、前記検出装置は重量センサから構成され、該重量センサによって計測した液体の重量が前記深さ情報として検出される。該具体的構成においては、液体の深さが大きいほど液体の重量は大きくなり、液体の深さが小さいほど液体の重量は小さくなるので、液体の重量を深さ情報として用いることにより、液体の深さに応じた容器の搬送が可能となる。
【0010】
或いは、前記検出装置は撮像装置から構成され、該撮像装置により前記容器内の液体を側方から撮像することによって、該容器の底面と液体の表面とが映った画像が前記深さ情報として検出される。該具体的構成においては、液体の深さが大きいほど容器の底面と液体の表面との間の距離が大きくなり、液体の深さが小さいほど容器の底面と液体の表面との間の距離が小さくなるので、画像を深さ情報として用いることにより、液体の深さに応じた容器の搬送が可能となる。
【0011】
上記搬送装置の他の具体的構成において、前記搬送機構は、第1軸と、該第1軸に交差する第2軸とから構成される平面に沿って前記容器を搬送するものであり、該平面上の2点間を一方の点から他方の点まで前記容器を搬送する場合、前記制御装置の搬送指令手段は、一方の点から他方の点に向かうと共に大きさが前記加速度の最大値である加速度ベクトルの、第1軸方向成分と第2軸方向成分とに基づいて、第1軸方向については前記第1軸方向成分以下の加速度で前記容器を搬送すると共に、第2軸方向については前記第2軸方向成分以下の加速度で前記容器を搬送するように前記搬送機構に指令を出す。
【0012】
上記具体的構成によれば、容器は、第1軸と第2軸とから構成される平面内を移動することになる。又、平面上の2点間を一方の点から他方の点まで容器が移動する場合、制御装置による制御によって容器は、第1軸方向については前記加速度ベクトルの第1軸方向成分以下の加速度で移動し、第2軸方向については前記加速度ベクトルの第2軸方向成分以下の加速度で移動することになる。従って、一方の点から他方の点へ向かう方向についての容器の加速度の最大値は、前記演算手段により算出された加速度の最大値を超えることがない。
よって、液体の深さが小さい容器が、上記平面内において搬送機構によって搬送された場合でも、容器の底面近傍に存在する液体は振動しにくい。
【0013】
本発明に係る制御装置は、液体が入った容器を搬送する搬送機構を制御するための制御装置であって、前記容器内の液体の深さに応じて変化する深さ情報を取得する情報取得手段と、該情報取得手段により取得した深さ情報に基づいて前記容器の搬送時に該容器に与えることが可能な加速度の最大値を算出する演算手段と、該加速度の最大値以下の加速度で前記容器を搬送するように前記搬送機構に指令を出す搬送指令手段とを具え、前記演算手段は、前記容器内の液体の深さが大きいほど、前記加速度の最大値として大きな値を算出し、前記容器内の液体の深さが小さいほど、前記加速度の最大値として小さな値を算出する。
【0014】
本発明に係るプログラムは、液体が入った容器を搬送する搬送機構を制御するためのプログラムであって、コンピュータに、前記容器内の液体の深さに応じて変化する深さ情報を取得する情報取得ステップと、該情報取得ステップにより取得した深さ情報に基づいて前記容器の搬送時に該容器に与えることが可能な加速度の最大値を算出する演算ステップと、該加速度の最大値以下の加速度で前記容器を搬送するように前記搬送機構に指令を出す搬送指令ステップを実行させ、前記演算ステップにおいては、前記容器内の液体の深さが大きいほど、前記加速度の最大値として大きな値を算出させ、前記容器内の液体の深さが小さいほど、前記加速度の最大値として小さな値を算出させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、容器の底面近傍に存在する液体の振動を抑制しながら、該容器を迅速に搬送することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
容器が、平面上の2点間を一方の点から他方の点に向かって移動する場合、一方の点から他方の点に向かう方向についての容器の加速度が大きいと、容器の底面近傍での液体の振動が大きくなり、底面に貼り付いていた細胞が該振動によって剥がれてしまう虞がある。そこで、一方の点から他方の点に向かう方向についての容器の加速度を、細胞が容器の底面から剥がれにくい加速度の最大値以下に制御する必要がある。
以下、本発明に係る搬送装置を観察ユニットに配備した実施形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
【0017】
1.観察ユニットの構成
図1は、本発明の一実施形態に係る搬送装置100が配備された観察ユニットを示す斜視図である。図1に示す様に、観察ユニットには、本発明の一実施形態に係る搬送装置100の他に、観察装置5と照明装置6が配備されている。
観察装置5は、位相差顕微鏡であって、観察対象となる試料の拡大像を形成する対物レンズ51と、対物レンズ51で形成された拡大像をズームレンズ52に導く反射ミラー52と、試料の拡大像を更に拡大するズームレンズ52と、ズームレンズ52によって拡大された観察像を撮像するCCD(Charge Coupled Device)カメラ51とから構成されている。
【0018】
照明装置6は、光を発するLED(Light Emitting Diode)61と、LEDから発せられた光を鉛直下方へ反射する反射ミラー62とから構成されている。照明装置6は、観察装置5の上方位置に配置されており、反射ミラー62は、反射した光が観察装置5の対物レンズ51に入射するように配置されている。
そして、載置台4の移動が可能なXY平面内の位置のうち、反射ミラー62で反射した光が通る位置が、観察装置5によって試料を観察するための観察点Mとなる。
【0019】
図2は、上記搬送装置100の構成を示すブロック図である。図2に示す様に、搬送装置100は、容器Aを搬送するための搬送機構1と、重量センサ7と、搬送機構1を制御する制御装置8とを具えている。尚、容器Aには、培養液などの液体とともに細胞などの試料が収容される。
【0020】
図3は、搬送機構1の構成を示す斜視図である。図3に示す様に、搬送機構1は、容器Aを載置する載置台4と、載置台4をX軸方向に移動させるためのX軸駆動機構2と、載置台4をY軸方向に移動させるためのY軸駆動機構3と、X軸駆動機構2を駆動するX軸モータ91と、Y軸駆動機構3を駆動するY軸モータ92とから構成されている。尚、X軸方向及びY軸方向は、水平面内で互いに直交する2つの方向である。
【0021】
Y軸駆動機構3は、図3に示す様に、一対のプーリ31,32と、タイミングベルト33と、逆L字状のY軸スライド体34と、ガイド部材35とから構成されている。一対のプーリ31,32の内、一方のプーリ31はY軸モータ92の回転軸に固定されており、Y軸モータ92の回転に伴って一方のプーリ31はY軸モータ92の回転軸周りに回転する。
他方のプーリ32は、一方のプーリ31に対してY軸方向に並んだ位置に、回転自在な状態で配置されている。
【0022】
タイミングベルト33は、一対のプーリ31,32に跨って掛けられている。タイミングベルト33には、Y軸スライド体34が一対のプーリ31,32の間の位置に連結されており、Y軸スライド体34の上辺部分341が、載置台4が配置される空間においてX軸方向に沿って配置されている。又、Y軸スライド体34は、ガイド部材35に摺動自在に連結されており、Y軸スライド体34の移動可能な経路がY軸方向に沿って規定されている。
【0023】
一方のプーリ31が回転することによって、タイミングベルト33も回転する。このとき、タイミングベルト33のうち一対のプーリ31,32の間の部分が、Y軸方向に沿って移動することになるので、一方のプーリ31の回転運動は、タイミングベルト3によってY軸方向の並進運動に変換されることとなる。
【0024】
従って、Y軸モータ92の回転力は、Y軸駆動機構3によってY軸方向の並進力に変換されてY軸スライド体34に付与されることとなり、その結果、Y軸スライド体34はY軸方向に沿って移動することとなる。
【0025】
X軸駆動機構2は、図3に示す様に、歯車機構21と、Y軸方向に延びたシャフト22と、一対のプーリ23,24と、タイミングベルト25と、X軸スライド体26と、ガイド部材27とから構成されている。
歯車機構21は、X軸モータ91の回転力をシャフト22の中心軸周りの回転力に変換し、該回転力をシャフト22に付与する。シャフト22は、Y軸駆動機構3のY軸スライド体34の上辺部分341に回転自在に支持されており、歯車機構21から付与された回転力によって中心軸周りに回転する。尚、シャフト22は、歯車機構21に対してスライドすることが可能である
【0026】
一対のプーリ23,24の内、一方のプーリ23はシャフト22の一端に固定されており、シャフト22の回転に伴って一方のプーリ23は、シャフト22と同じ軸周りに回転する。
他方のプーリ24は、一方のプーリ23に対してX軸方向に並んだ位置にて、Y軸スライド体34の上辺部分341に回転自在に取り付けられている。
【0027】
タイミングベルト25は、一対のプーリ23,24に跨って掛けられている。タイミングベルト25には、X軸スライド体26が一対のプーリ23,24の間の位置に連結されている。
X軸スライド体26は、スライド部261と、スライド部261の前面に固定されたL字部262とから構成され、スライド部261は、ガイド部材27に摺動自在に係合しており、スライド部261の移動可能な経路がX軸方向に沿って規定されている。
【0028】
図4は、載置台4の取付け状態及び重量センサ7の配置状態を示す鉛直断面図である。図4に示す様に、X軸スライド体26のL字部262の下辺部分263には、T字状の連結部材264によって載置台4が連結されている。具体的には、L字部262の下辺部分263には貫通孔265が形成され、連結部材264の脚部が貫通孔265を貫通すると共に、連結部材264の頭部がL字部262の下辺部分263の上面に当接している。そして、連結部264の脚部の下端部に載置台4が固定されている。
【0029】
一対のプーリ23,24のうち一方のプーリ23が回転することによって、タイミングベルト25も回転する。このとき、タイミングベルト25のうち一対のプーリ23,24の間の部分が、X軸方向に沿って移動することになるので、一方のプーリ23の回転運動は、タイミングベルト25によってX軸方向の並進運動に変換されることとなる。
【0030】
従って、X軸モータ91の回転力は、X軸駆動機構2によってX軸方向の並進力に変換されてX軸スライド体26に付与されることとなり、その結果、X軸スライド体26はX軸方向に沿って移動することとなる。
【0031】
よって、搬送機構1によれば、X軸スライド体26に連結された載置台4は、X軸とY軸とから構成されたXY平面内を、X軸モータ91の回転によりX軸方向に沿って移動し、Y軸モータ92の回転によりY軸方向に移動することになる。
【0032】
重量センサ7は、歪みゲージ式のロードセルによって構成されており、図4に示す様に、その先端が載置台4の側面に接触するように、X軸スライド体26のスライド部261の前面に固定されている。又、貫通孔265の内周面と連結部材264の脚部の外周面との間には僅かな隙間が形成されており、載置台4に容器Aを載置したときに、連結部材264の頭部を支点として、容器Aの重量に応じたが力が重量センサ7の先端に作用するようになっている。これにより、容器Aの重量が重量センサ7によって計測されることとなる。
尚、図5に示す様に、重量センサ7は、その先端が連結部材262の頭部の下面に接触するように、L字部262の下辺部分263の上面に固定されてもよい。
【0033】
容器A内に収容されている液体の重量を取得する場合、容器Aと該容器Aに収容されている液体の総重量を重量センサ7によって計測し、そして計測された重量から空の容器Aの重量を減算すればよい。
【0034】
尚、重量センサ7によって検出した容器Aと液体の総重量は、容器A内の液体の深さに応じて変化する量であり、従って本実施の形態に係る搬送装置100においては、重量センサ7によって、容器A内の液体の深さHに応じて変化する深さ情報(容器Aと液体の総重量)を検出する検出装置が構成されている。
【0035】
2.搬送装置の制御
【0036】
図2に示す様に、上述した搬送機構1及び重量センサ7には制御装置8が接続されると共に、制御装置8には、パーソナルコンピュータ、キーボード、タッチパネル、マウスなどの情報入力手段9が接続されている。制御装置8は、情報取得手段81と、情報読出し手段82と、記憶手段83と、深さ算出手段84と、演算手段85と、パターン作成手段86と、搬送指令手段87とから構成されており、図6に示すフローチャートに従って搬送機構1を制御する。
尚、制御装置8は、CPU(Central Processing Unit)、専用LSI(Large Scale Integration)、パーソナルコンピュータなどから構成することが出来る。例えば、制御装置8の情報取得手段81、演算手段85、及び搬送指令手段87は、パーソナルコンピュータによって構成することが出来る。又、制御装置8の各手段81〜87が有する機能は、プログラムの実行によって生じさせることが出来る。
以下では、液体と共に細胞が試料として容器A内に収容されている場合について説明する。
【0037】
制御装置8の記憶手段83には、容器Aの種類に対応付けられた容器Aの底面積Sa及び重量Waと、液体の種類に対応付けられた液体の密度Cと、図7に示す様に細胞の種類に対応付けられた液体の深さHと最大加速度Amaxとの関係式F(H)とが記憶されている。
ここで最大加速度とは、容器Aの搬送時に容器Aに与えることが可能な加速度の最大値であり、本実施の形態においては、容器Aの底面に貼り付いた細胞が、容器Aの搬送時に底面から剥がれにくい加速度の最大値である。又、細胞の種類によって底面への密着力が異なるため、同じ深さであっても細胞の種類が異なると最大加速度も異なってくる。具体的には図7に示す様に、細胞A、細胞B、細胞Cの順に密着力が小さくなればなるほど、細胞は底面から剥がれやすくなるので、液体の深さHに対する最大加速度Amaxの傾きは小さくなっていく。
【0038】
又、搬送機構1によって容器AをXY平面内で移動させた場合、容器Aの加速に伴って容器A中の液体には波が立ち、容器A内の液体は振動することになるが、細胞が貼り付いている容器Aの底面近傍においては、液体の振動は、液体の深さが大きいほど小さくなり、液体の深さが小さいほど大きくなる。従って、図7に示す様に、液体の深さが大きいほど最大加速度は大きくなり、液体の深さが小さいほど最大加速度は小さくなる。
【0039】
尚、図7は、関係式F(H)が1次関数である場合を示しているが、関係式F(H)は、これに限られるものでなく、例えば2次以上の関数であってもよい。
【0040】
まずステップS1において制御装置8は、図2に示す様に情報取得手段81を用いて、容器Aと液体の総重量を深さ情報Idとして重量センサ7から取得する。重量センサ7から取得した深さ情報(容器Aと液体の総重量)は、制御装置8の深さ算出手段84に与えられる。
【0041】
そして、ステップS2では、情報入力手段9によって、容器Aの種類と、容器Aに収容されている液体及び細胞の種類が入力される。情報入力手段82から制御装置8に入力された情報Iiは、図2に示す様に制御装置8の情報読出し手段82に与えられる。
情報入力手段82が、パーソナルコンピュータである場合には、パーソナルコンピュータからの文字入力によって制御装置8に上記情報Iiが与えられる。
【0042】
情報入力手段82は、QR(Quick Response)コードやRF−ID(Radio Frequency Identification)を読み取るための読取り手段であってもよい。この場合、QRコードやRF−IDに上記情報Iiを付与しておくことにより、該QRコードやRF−IDを読取り手段によって読み取るだけで、前記情報Iiを制御装置8に与えることが出来る。
尚、QRコードやRF−IDは、例えば容器Aに添付される。又、QRコードを読み取る場合には読取り手段としてカメラが用いられ、RF−IDを読み取る場合には、リーダアンテナが用いられる。
【0043】
ステップS3において制御装置8は、図2に示す様に情報読出し手段82を用いて、ステップS2で入力された容器Aの種類に対応する容器Aの底面積Sa及び重量Waを記憶手段83から読み出すと共に、ステップS2で入力された液体の種類に対応する液体の密度Cを記憶手段83から読み出す。記憶手段83から読み出された容器Aの底面積Sa及び重量Wa、並びに液体の密度Cは、制御装置8の深さ算出手段84に与えられる。
更に、制御装置8は、図2に示す様に、情報読出し手段82を用いて、ステップS2で入力された細胞の種類に対応する液体の深さHと最大加速度Amaxとの関係式F(H)を記憶手段83から読み出す。記憶手段83から読み出された関係式F(H)は、制御装置8の演算手段85に与えられる。
【0044】
ステップS4において制御装置8は、図2に示す様に深さ算出手段84を用いて、ステップS1で取得した深さ情報(容器Aと液体の総重量)Idと、ステップS3で読み出した容器Aの底面積Sa及び液体の密度Cとに基づいて、液体の深さHdを算出する。
具体的には、制御装置8の深さ算出手段84が、深さ情報Idである容器Aと液体の総重量から容器Aの重量Waを減算することにより、液体の重量を算出し、算出した液体の重量を該液体の密度Cによって除算することにより、液体の体積を算出し、そして、算出した液体の体積を容器Aの底面積Saによって除算することにより、液体の深さHdを算出する。深さ算出手段84により算出された液体の深さHdは、演算手段85に与えられる。
【0045】
ステップS5において制御装置8は、演算手段85を用いて、ステップS3で読み出した関係式F(H)と、ステップS4で算出した液体の深さHdとに基づいて、最大加速度Amax(Hd)を算出する。
具体的には、制御装置8の演算手段85が、図7に示す液体の深さHと最大加速度Amaxとの関係式F(H)から、ステップS4で算出した液体の深さHdに対応する最大加速度Amax(Hd)を算出する。上述した様に(図7に示す様に)、液体の深さHと最大加速度Amaxには、液体の深さHが大きいほど最大加速度Amaxが大きくなり、液体の深さHが小さいほど最大加速度Amaxが小さくなるという関係があるので、ステップS4で算出される液体の深さHdが大きいほど、ステップS5で算出される最大加速度Amax(Hd)は大きくなり、ステップS4で算出される液体の深さHdが小さいほど、ステップS5で算出される最大加速度Amax(Hd)は小さくなる。
【0046】
例えば、細胞Aに関しては、算出された液体の深さHdが3mmであった場合には、図7に示す関係式F(H)に基づいて、最大加速度Amax(Hd)として12mm/s2が算出されるのに対し、算出された液体の深さHdが6mmであった場合には、最大加速度Amax(Hd)として24mm/s2が算出される。
【0047】
演算手段85により算出された最大加速度Amax(Hd)は、図2に示す様にパターン形成手段86に与えられる。
【0048】
ステップS6において制御装置8は、パターン作成手段86を用いて、ステップS5で算出した最大加速度Amax(Hd)に基づいて速度制御パターンを作成する。ここで、速度制御パターンは、制御すべき容器Aの速度の変化を時間の関数として表したものである。
図8は、ステップS6で実行される制御を示すフローチャートである。図9は、容器Aを移動させるときの始点(Xs,Ys)と終点(Xe,Ye)を示した平面図である。図10は、該始点(Xs,Ys)から終点(Xe,Ye)に向かうと共に大きさが最大加速度Amax(Hd)である最大加速度ベクトルAと、そのX軸方向成分AxとY軸方向成分Ayを示した図である。
【0049】
まず、ステップS61では、情報入力手段9によって、容器Aを移動させるときの始点(Xs,Ys)と終点(Xe,Ye)(図9参照)が入力される。情報入力手段82から入力された始点(Xs,Ys)と終点(Xe,Ye)は、制御装置8のパターン作成手段86に与えられる。
【0050】
ステップS62において、パターン作成手段86は、与えられた始点(Xs,Ys)と終点(Xe,Ye)を用いて、(Xe−Xs)を計算することによって、容器AをX軸方向に沿って移動させる距離(X軸方向への移動距離)Dxを算出すると共に、(Ye−Ys)を計算することによって、容器AをY軸方向に沿って移動させる距離(Y軸方向への移動距離)Dyを算出する。
【0051】
ステップS63において、パターン作成手段86は、始点(Xs,Ys)から終点(Xe,Ye)へ向かう変位ベクトルD(=(Dx,Dy))と、X軸とがなす角度θ(図9参照)を、数式(1)によって算出する。
【0052】
θ=tan−1{Dy/Dx} ・・・ (1)
【0053】
ステップS64において、パターン作成手段86は、ステップS5で算出した最大加速度Amax(Hd)と、ステップS63で算出した角度θに基づいて、始点(Xs,Ys)から終点(Xe,Ye)へ向かうと共に大きさが最大加速度Amax(Hd)である最大加速度ベクトルAの、X軸方向成分AxとY軸方向成分Ay(図10参照)を、数式(2)によって算出する。
【0054】
Ax=Amax(Hd)・cos(θ)
Ay=Amax(Hd)・sin(θ) ・・・ (2)
【0055】
図11(a)及び図11(b)は、容器Aを始点(Xs,Ys)から終点(Xe,Ye)へ移動させるためのX軸方向の速度制御パターンPx及びY軸方向の速度制御パターンPyをグラフで示した図である。ステップS65において、パターン作成手段86は、ステップS62で算出したX軸方向及びY軸方向への移動距離Dx,Dyと、ステップS64で算出した最大加速度ベクトルAのX軸方向成分Ax及びY軸方向成分Ayとに基づいて、図11(a)及び図11(b)に示す様に、容器Aを始点(Xs,Ys)から終点(Xe,Ye)へ移動させるためのX軸方向の速度制御パターンPxとY軸方向の速度制御パターンPyを作成する。尚、図11(a)及び図11(b)では、速度制御パターンPx,Pyの形状を台形形状とした場合が示されている。
【0056】
後述するように速度制御パターンPx,Pyに従って容器Aを搬送した場合、容器Aの速度ベクトルは、X軸方向の速度成分とY軸方向の速度成分との合成によって決定される。従って、X軸方向の速度制御パターンPxとY軸方向の速度制御パターンPyとを別個独立に作成したのでは、容器Aが始点(Xs,Ys)から終点(Xe,Ye)へ移動するときの加速度が、最大加速度Amax(Hd)を超える虞がある。例えば、X軸方向の速度制御パターンPxの傾き(X軸方向の加速度)の最大値Gxが、最大加速度ベクトルAのX軸方向成分Axより大きい場合には、容器Aが始点(Xs,Ys)から終点(Xe,Ye)へ移動するときの加速度は、最大加速度Amax(Hd)を超える。
【0057】
そこで、速度制御パターンPx,Pyは、最大加速度ベクトルAのX軸方向成分Ax及びY軸方向成分Ayに基づいて次のように作成される。即ち、X軸方向の速度制御パターンPxは、そのパターンの傾きの最大値Gxが最大加速度ベクトルAのX軸方向成分Ax以下となるように作成され、Y軸方向の速度制御パターンPyは、そのパターンの傾きの最大値Gyが最大加速度ベクトルAのY軸方向成分Ay以下となるように作成される。
【0058】
又、X軸方向の速度制御パターンPxは、該速度制御パターンPxを表す関数を時間で積分した値が、X軸方向への移動距離Dxに合致するように作成され、Y軸方向の速度制御パターンPyは、該速度制御パターンPyを表す関数を時間で積分した値が、Y軸方向への移動距離Dyに合致するように作成される。
【0059】
パターン形成手段86により作成されたX軸方向の速度制御パターンPxとY軸方向の速度制御パターンPyは、図2に示す様に搬送指令手段87に与えられる。
【0060】
ステップS6の実行後、ステップS7(図6)において搬送指令手段87は、ステップS6で作成したX軸方向の速度制御パターンPxとY軸方向の速度制御パターンPyに基づいて、搬送機構1に対して指令を出す。その結果、容器Aは、ステップS6で作成したX軸方向の速度制御パターンPxに従ってX軸方向へ移動すると共に、Y軸方向の速度制御パターンPyに従ってY軸方向へ移動することとなる。
これにより、始点(Xs,Ys)から終点(Xe,Ye)へ向かう方向についての容器Aの速度は、図12に示すグラフPに従って台形状に変化することとなる。
【0061】
上述したように、X軸方向の速度制御パターンPxは、そのパターンの傾きの最大値Gxが最大加速度ベクトルAのX軸方向成分Ax以下となるように作成され、Y軸方向の速度制御パターンPyは、そのパターンの傾きの最大値Gyが最大加速度ベクトルAのY軸方向成分Ay以下となるように作成されているので、始点(Xs,Ys)から終点(Xe,Ye)へ向かう方向についての加速度の最大値Gは、ステップS5で算出した最大加速度Amax(Hd)を超えることはない。
従って、容器Aは、一方の点である始点(Xs,Ys)から他方の点である終点(Xe,Ye)へ向かって、最大加速度Amax(Hd)以下の加速度で搬送されることとなる。
【0062】
上述した搬送装置100によれば、容器A内の液体の深さHdに応じて、容器Aの底面から細胞が剥がれにくい加速度の最大値(最大加速度Amax(Hd))が算出され、搬送時の容器Aの加速度が最大加速度Amax(Hd)以下となるように搬送機構1が制御されるので、液体の深さHdが小さい容器Aを搬送した場合でも、細胞は容器Aの底面から剥がれにくい。
【0063】
又、制御装置8の制御によって、搬送時の容器Aの加速度を最大加速度Amax(Hd)に等しくした場合、始点(Xs,Ys)から終点(Xe,Ye)までの容器Aの移動時間Tが短くなるので、容器Aの迅速な搬送が可能となる。
【0064】
更に、上述した搬送装置100においては、容器A内の液体の深さHdが大きいほど、制御装置8の演算手段85(ステップS5)によって算出される最大加速度Amaxは大きくなるので、容器Aの迅速な搬送が可能となる。
【0065】
即ち、ステップS4で算出される液体の深さHdが、上述した実施形態よりも大きい場合には、ステップS5で算出される最大加速度Amax(Hd)は、図7に示す液体の深さHと最大加速度Amaxとの関係式F(H)に基づいて大きくなる。従って、搬送時の容器Aの速度変化は、図13(a)に示す様に急となり、始点(Xs,Ys)から終点(Xe,Ye)までの容器Aの移動時間Tは短縮されることとなる。
逆に、ステップS4で算出される液体の深さHdが、上述した実施形態よりも小さい場合には、搬送時の容器Aの速度変化は、図13(b)に示す様に緩やかとなり、始点(Xs,Ys)から終点(Xe,Ye)までの容器Aの移動時間Tは拡張されることとなる。
【0066】
3.変形例
3−1.変形例1
上述した搬送装置100において、深さ情報を検出する検出装置として、重量センサ7に替えて撮像装置を用いてもよい。この場合、液体の深さHdを導出する手段として、深さ算出手段84に替えて画像処理手段が用いられる。
具体的には、撮像装置により容器A内の液体を側方から撮像することによって、容器Aの底面と液体の表面とが映った画像が深さ情報として用いられ、該深さ情報である画像に対して画像処理手段によって画像処理を施すことにより、容器Aの底面と液体の表面とに基づいて液体の深さHdが導出される。
【0067】
本変形例において搬送装置100を制御する場合、ステップS1では、深さ情報(画像)が上記撮像装置から取得される。そして、ステップS4では上記画像処理手段が、ステップS1で取得した画像に対して画像処理を施すことにより、液体の深さHdを導出する。
尚、ステップS4において画像処理手段が、容器Aの底面及び液体の表面を容易に認識することが出来るように、液体は、例えばフェノールレッドなどによって赤色に染色されていてもよい。
【0068】
本変形例に係る搬送装置100によれば、深さ情報である画像のみから液体の深さHdを導出することが出来るので、ステップS2において、容器Aの種類と、容器Aに収容されている液体の種類を入力する必要がなくなると共に、ステップS3において、容器Aの底面積及び重量、並びに液体の密度を読み出す必要がなくなる。
【0069】
3−2.変形例2
図14は、制御装置8のパターン作成手段86によって作成されるX軸方向の速度制御パターンPx及びY軸方向の速度制御パターンPyの他の例をグラフで示した図である。上述した実施形態に係る搬送装置100においては、X軸方向の速度制御パターンPx及びY軸方向の速度制御パターンの形状を台形形状としたが、図14(a)及び図14(b)に示す様に、該形状をS字形状としてよい。
【0070】
速度制御パターンがS字形状である場合、変曲点においてパターンの傾きが最大となるので、制御装置8のパターン作成手段86(ステップS6)では、図14(a)に示す様にX軸方向の速度制御パターンPxは、変曲点における傾きGxが最大加速度ベクトルAのX軸方向成分Ax以下となるように作成され、図14(b)に示す様にY軸方向の速度制御パターンPyは、変曲点における傾きGyが最大加速度ベクトルAのY軸方向成分Ay以下となるように作成される。
【0071】
そして、ステップS7において搬送指令手段87が、図14(a)及び図14(b)に示す速度制御パターンPx,Pyに基づいて搬送機構1に対して指令を出すことにより、搬送時の容器Aの速度は、図15に示すグラフPに従ってS字状に変化することとなる。
【0072】
速度制御パターンがS字形状である場合も、X軸方向の速度制御パターンPxは、そのパターンの傾きの最大値Gxが最大加速度ベクトルAのX軸方向成分Ax以下となるように作成され、Y軸方向の速度制御パターンPyは、そのパターンの傾きの最大値Gyが最大加速度ベクトルAのY軸方向成分Ay以下となるように作成されているので、始点(Xs,Ys)から終点(Xe,Ye)へ向かう方向について加速度の最大値Gは、ステップS5で算出される最大加速度Amax(Hd)を超えることはない。従って、容器Aを搬送した場合でも、細胞は容器Aの底面から剥がれにくい。
【0073】
又、速度制御パターンがS字形状である場合も、ステップS4で算出される液体の深さHdが、上述した他の例よりも大きい場合には、ステップS5で算出される最大加速度Amax(Hd)は、図7に示す液体の深さHと最大加速度Amaxとの関係式F(H)に基づいて大きくなる。従って、容器Aの速度変化は、図16(a)に示す様に急となり、始点(Xs,Ys)から終点(Xe,Ye)までの容器Aの移動時間Tは短縮されることとなり、容器Aの迅速な搬送が可能のとなる。
逆に、ステップS4で算出される液体の深さHdが、上述した他の例よりも小さい場合には、容器Aの速度変化は、図16(b)に示す様に緩やかとなり、始点(Xs,Ys)から終点(Xe,Ye)までの容器Aの移動時間Tは拡張されることとなる。
【0074】
速度制御パターンの形状がS字形状である場合、該形状が台形形状の場合よりも、速度の急激な変化による容器Aへの衝撃が抑制され、容器Aが滑らかに搬送されることとなる。
【0075】
尚、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。例えば、液体の深さHと最大加速度Amaxの関係式F(H)は、図7に示す様に原点を通るものに限らず、Y切片が0以外の値であるものであってもよい。
【0076】
又、上述した実施の形態においては、重量センサ7や撮像装置の検出装置によって深さ情報Idを検出し、該深さ情報Idを制御装置8の情報取得手段81によって前記検出装置から取得していたが、例えば、搬送装置100とは別の装置によって深さ情報Idを検出し、該深さ情報Idを情報入力手段9によって制御装置8に与えてもよい。
【0077】
更に、上述した実施の形態においては、深さ算出手段84によって深さ情報Idから液体の深さHdを算出し、演算手段85によって液体の深さHdから最大加速度Amax(Hd)を算出したが、例えば深さ算出手段84を設けずに、演算手段85において深さ情報Idから最大加速度Amax(Hd)を直接算出してもよい。
又、上述したパターン形成手段86による速度制御パターンPx,Pyの作成を、演算手段85において実行してもよい。
【0078】
更に又、X軸方向及びY軸方向の速度制御パターンPx,Pyを、台形形状やS字形状に限らず他の形状としてもよい。深さ情報Idを検出する検出装置は、上述した重量センサや撮像装置に限られるものではない。上述した搬送装置100は、観察ユニットに限らず、種々の装置への適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の一実施形態に係る搬送装置が配備された観察ユニットを示す斜視図である。
【図2】上記搬送装置の構成を示すブロック図である。
【図3】上記搬送装置に配備されている搬送機構を示す斜視図である。
【図4】上記搬送装置に配備されている重量センサの配置状態を示す鉛直断面図である。
【図5】該重量センサの配置状態の他の例を示す鉛直断面図である。
【図6】上記搬送装置に配備されている搬送機構を制御するためのフローチャートである。
【図7】細胞の種類ごとに、液体の深さと最大加速度との関係をグラフで示した図である。
【図8】上記搬送装置に配備されている制御装置のパターン作成手段において実行される制御を示すフローチャートである。
【図9】容器を移動させるときの始点と終点を示した平面図である。
【図10】最大加速度ベクトルと、そのX軸方向成分とY軸方向成分を示した図である。
【図11】(a)X軸方向の速度制御パターン及び(b)Y軸方向の速度制御パターンをそれぞれグラフで示した図である。
【図12】始点から終点へ向かう方向についての容器の速度変化をグラフで示した図である。
【図13】(a)液体の深さが大きい場合の容器の速度変化、及び(b)液体の深さが小さい場合の容器の速度変化をそれぞれグラフで示した図である。
【図14】(a)X軸方向の速度制御パターンの他の例、及び(b)Y軸方向の速度制御パターンの他の例をそれぞれグラフで示した図である。
【図15】始点から終点へ向かう方向についての容器の速度の変化をグラフで示した図である。
【図16】(a)液体の深さが大きい場合の容器の速度変化、及び(b)液体の深さが小さい場合の容器の速度変化をそれぞれグラフで示した図である。
【符号の説明】
【0080】
1 搬送機構
2 X軸駆動機構
3 Y軸駆動機構
7 重量センサ(検出装置)
8 制御装置
81 情報取得手段
82 情報読出し手段
83 記憶手段
84 深さ算出手段
85 演算手段
86 パターン作成手段
87 搬送指令手段
9 情報入力手段
A 容器
Id 深さ情報
Hd 液体の深さ
Amax(Hd) 最大加速度
Px X軸方向の速度制御パターン
Py Y軸方向の速度制御パターン
【技術分野】
【0001】
本発明は、培養液などの液体が入った容器を搬送するための搬送装置、並びに該搬送装置に関連する制御装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インキュベータなどの培養装置には、該培養装置内に保存されている容器を搬送するための搬送装置を具えたものがある。
例えば、特許文献1に開示のインキュベータには、複数の容器が収納可能なストッカーと、水平方向及び鉛直方向の何れにも容器を搬送することが可能な搬送装置と、容器内の試料を観察するための観察装置が配備されており、搬送装置によって、ストッカーから容器を取り出すと共に、観察装置による観察を実行する位置まで容器を搬送することが可能となっている。又、観察の終了後には、搬送装置によって容器をストッカーに戻すことが可能となっている。
【0003】
又、従来から、容器に培養液などの液体と共に細胞を収容し、培養装置によって該細胞を培養すると共に、培養された細胞の状態を観察することが行われている。液体中の細胞を観察する方法には、容器において座標を設定すると共に、該座標上の位置によって容器内の細胞の位置を特定し、そして同じ座標上の位置に存在する細胞を繰り返し観察する方法がある。かかる方法によれば、容器を一旦ストッカーに戻した場合でも、次の観察時に再び同じ細胞を観察することが可能である。
【0004】
ところで、搬送装置によって容器を水平方向に搬送した場合、容器の加速に伴って容器中の液体には波が立ち、容器内の液体は振動することになる。従って、液体中に浮遊する細胞については、容器の搬送時に細胞が元の位置から移動してしまうため、上記観察方法の適用が困難であった。
一方、容器の底面に貼り付く細胞については、容器の搬送時であっても細胞は元の位置から移動しにくいので、上記観察方法を適用しやすかった。
【特許文献1】特開2007−209256号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、細胞が貼り付いている容器の底面近傍では、液体の振動は、液体の深さが小さいほど大きくなる。このため、容器中の液体の深さに拘わらず同じ加速度で容器を搬送した場合、液体の深さが小さい容器については、底面近傍での液体の振動が大きくなり、底面に貼り付いていた細胞が該振動によって剥がれてしまう虞がある。
細胞が底面から剥がれてしまうと、細胞は、貼り付いていた位置からずれてしまうため、上述した観察方法によって同じ細胞を繰り返し観察することが困難となる。又、細胞が底面から剥がれてしまうと、細胞の培養が阻害される虞がある。
【0006】
そこで本発明の目的は、容器の底面近傍に存在する液体の振動を抑制しながら該容器を迅速に搬送することが可能な搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る搬送装置は、液体が入った容器を搬送する搬送機構と、前記容器内の液体の深さに応じて変化する深さ情報を検出する検出装置と、前記搬送機構を制御する制御装置とを具え、該制御装置は、前記検出装置により検出した深さ情報を取得する情報取得手段と、該情報取得手段により取得した深さ情報に基づいて前記容器の搬送時に該容器に与えることが可能な加速度の最大値を算出する演算手段と、該加速度の最大値以下の加速度で前記容器を搬送するように前記搬送機構に指令を出す搬送指令手段とから構成され、前記演算手段は、前記容器内の液体の深さが大きいほど、前記加速度の最大値として大きな値を算出し、前記容器内の液体の深さが小さいほど、前記加速度の最大値として小さな値を算出する。
【0008】
上記搬送装置によれば、容器内の液体の深さに応じて、容器の底面近傍に存在する液体の振動を抑制することが可能な加速度の最大値が算出され、搬送時の容器の加速度が該最大値以下となるように、制御装置によって搬送機構が制御されるので、液体の深さが小さい容器を搬送した場合でも、容器の底面近傍に存在する液体は振動しにくい。
又、制御装置の制御によって、搬送時の容器の加速度を、液体の振動を抑制することが可能な加速度の最大値に等しくした場合、容器の移動時間が短くなるので、容器の迅速な搬送が可能となる。
更に、容器内の液体の深さが大きいほど、制御装置の演算手段によって算出される加速度の最大値を大きくするという構成は、容器内の液体の深さが大きいほど、容器の底面近傍に存在する液体の振動が生じにくくなるという現象に基づくものであり、該構成によれば、容器内の液体の深さが大きいほど容器の迅速な搬送が可能となる。
【0009】
上記搬送装置の具体的構成において、前記検出装置は重量センサから構成され、該重量センサによって計測した液体の重量が前記深さ情報として検出される。該具体的構成においては、液体の深さが大きいほど液体の重量は大きくなり、液体の深さが小さいほど液体の重量は小さくなるので、液体の重量を深さ情報として用いることにより、液体の深さに応じた容器の搬送が可能となる。
【0010】
或いは、前記検出装置は撮像装置から構成され、該撮像装置により前記容器内の液体を側方から撮像することによって、該容器の底面と液体の表面とが映った画像が前記深さ情報として検出される。該具体的構成においては、液体の深さが大きいほど容器の底面と液体の表面との間の距離が大きくなり、液体の深さが小さいほど容器の底面と液体の表面との間の距離が小さくなるので、画像を深さ情報として用いることにより、液体の深さに応じた容器の搬送が可能となる。
【0011】
上記搬送装置の他の具体的構成において、前記搬送機構は、第1軸と、該第1軸に交差する第2軸とから構成される平面に沿って前記容器を搬送するものであり、該平面上の2点間を一方の点から他方の点まで前記容器を搬送する場合、前記制御装置の搬送指令手段は、一方の点から他方の点に向かうと共に大きさが前記加速度の最大値である加速度ベクトルの、第1軸方向成分と第2軸方向成分とに基づいて、第1軸方向については前記第1軸方向成分以下の加速度で前記容器を搬送すると共に、第2軸方向については前記第2軸方向成分以下の加速度で前記容器を搬送するように前記搬送機構に指令を出す。
【0012】
上記具体的構成によれば、容器は、第1軸と第2軸とから構成される平面内を移動することになる。又、平面上の2点間を一方の点から他方の点まで容器が移動する場合、制御装置による制御によって容器は、第1軸方向については前記加速度ベクトルの第1軸方向成分以下の加速度で移動し、第2軸方向については前記加速度ベクトルの第2軸方向成分以下の加速度で移動することになる。従って、一方の点から他方の点へ向かう方向についての容器の加速度の最大値は、前記演算手段により算出された加速度の最大値を超えることがない。
よって、液体の深さが小さい容器が、上記平面内において搬送機構によって搬送された場合でも、容器の底面近傍に存在する液体は振動しにくい。
【0013】
本発明に係る制御装置は、液体が入った容器を搬送する搬送機構を制御するための制御装置であって、前記容器内の液体の深さに応じて変化する深さ情報を取得する情報取得手段と、該情報取得手段により取得した深さ情報に基づいて前記容器の搬送時に該容器に与えることが可能な加速度の最大値を算出する演算手段と、該加速度の最大値以下の加速度で前記容器を搬送するように前記搬送機構に指令を出す搬送指令手段とを具え、前記演算手段は、前記容器内の液体の深さが大きいほど、前記加速度の最大値として大きな値を算出し、前記容器内の液体の深さが小さいほど、前記加速度の最大値として小さな値を算出する。
【0014】
本発明に係るプログラムは、液体が入った容器を搬送する搬送機構を制御するためのプログラムであって、コンピュータに、前記容器内の液体の深さに応じて変化する深さ情報を取得する情報取得ステップと、該情報取得ステップにより取得した深さ情報に基づいて前記容器の搬送時に該容器に与えることが可能な加速度の最大値を算出する演算ステップと、該加速度の最大値以下の加速度で前記容器を搬送するように前記搬送機構に指令を出す搬送指令ステップを実行させ、前記演算ステップにおいては、前記容器内の液体の深さが大きいほど、前記加速度の最大値として大きな値を算出させ、前記容器内の液体の深さが小さいほど、前記加速度の最大値として小さな値を算出させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、容器の底面近傍に存在する液体の振動を抑制しながら、該容器を迅速に搬送することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
容器が、平面上の2点間を一方の点から他方の点に向かって移動する場合、一方の点から他方の点に向かう方向についての容器の加速度が大きいと、容器の底面近傍での液体の振動が大きくなり、底面に貼り付いていた細胞が該振動によって剥がれてしまう虞がある。そこで、一方の点から他方の点に向かう方向についての容器の加速度を、細胞が容器の底面から剥がれにくい加速度の最大値以下に制御する必要がある。
以下、本発明に係る搬送装置を観察ユニットに配備した実施形態につき、図面に沿って具体的に説明する。
【0017】
1.観察ユニットの構成
図1は、本発明の一実施形態に係る搬送装置100が配備された観察ユニットを示す斜視図である。図1に示す様に、観察ユニットには、本発明の一実施形態に係る搬送装置100の他に、観察装置5と照明装置6が配備されている。
観察装置5は、位相差顕微鏡であって、観察対象となる試料の拡大像を形成する対物レンズ51と、対物レンズ51で形成された拡大像をズームレンズ52に導く反射ミラー52と、試料の拡大像を更に拡大するズームレンズ52と、ズームレンズ52によって拡大された観察像を撮像するCCD(Charge Coupled Device)カメラ51とから構成されている。
【0018】
照明装置6は、光を発するLED(Light Emitting Diode)61と、LEDから発せられた光を鉛直下方へ反射する反射ミラー62とから構成されている。照明装置6は、観察装置5の上方位置に配置されており、反射ミラー62は、反射した光が観察装置5の対物レンズ51に入射するように配置されている。
そして、載置台4の移動が可能なXY平面内の位置のうち、反射ミラー62で反射した光が通る位置が、観察装置5によって試料を観察するための観察点Mとなる。
【0019】
図2は、上記搬送装置100の構成を示すブロック図である。図2に示す様に、搬送装置100は、容器Aを搬送するための搬送機構1と、重量センサ7と、搬送機構1を制御する制御装置8とを具えている。尚、容器Aには、培養液などの液体とともに細胞などの試料が収容される。
【0020】
図3は、搬送機構1の構成を示す斜視図である。図3に示す様に、搬送機構1は、容器Aを載置する載置台4と、載置台4をX軸方向に移動させるためのX軸駆動機構2と、載置台4をY軸方向に移動させるためのY軸駆動機構3と、X軸駆動機構2を駆動するX軸モータ91と、Y軸駆動機構3を駆動するY軸モータ92とから構成されている。尚、X軸方向及びY軸方向は、水平面内で互いに直交する2つの方向である。
【0021】
Y軸駆動機構3は、図3に示す様に、一対のプーリ31,32と、タイミングベルト33と、逆L字状のY軸スライド体34と、ガイド部材35とから構成されている。一対のプーリ31,32の内、一方のプーリ31はY軸モータ92の回転軸に固定されており、Y軸モータ92の回転に伴って一方のプーリ31はY軸モータ92の回転軸周りに回転する。
他方のプーリ32は、一方のプーリ31に対してY軸方向に並んだ位置に、回転自在な状態で配置されている。
【0022】
タイミングベルト33は、一対のプーリ31,32に跨って掛けられている。タイミングベルト33には、Y軸スライド体34が一対のプーリ31,32の間の位置に連結されており、Y軸スライド体34の上辺部分341が、載置台4が配置される空間においてX軸方向に沿って配置されている。又、Y軸スライド体34は、ガイド部材35に摺動自在に連結されており、Y軸スライド体34の移動可能な経路がY軸方向に沿って規定されている。
【0023】
一方のプーリ31が回転することによって、タイミングベルト33も回転する。このとき、タイミングベルト33のうち一対のプーリ31,32の間の部分が、Y軸方向に沿って移動することになるので、一方のプーリ31の回転運動は、タイミングベルト3によってY軸方向の並進運動に変換されることとなる。
【0024】
従って、Y軸モータ92の回転力は、Y軸駆動機構3によってY軸方向の並進力に変換されてY軸スライド体34に付与されることとなり、その結果、Y軸スライド体34はY軸方向に沿って移動することとなる。
【0025】
X軸駆動機構2は、図3に示す様に、歯車機構21と、Y軸方向に延びたシャフト22と、一対のプーリ23,24と、タイミングベルト25と、X軸スライド体26と、ガイド部材27とから構成されている。
歯車機構21は、X軸モータ91の回転力をシャフト22の中心軸周りの回転力に変換し、該回転力をシャフト22に付与する。シャフト22は、Y軸駆動機構3のY軸スライド体34の上辺部分341に回転自在に支持されており、歯車機構21から付与された回転力によって中心軸周りに回転する。尚、シャフト22は、歯車機構21に対してスライドすることが可能である
【0026】
一対のプーリ23,24の内、一方のプーリ23はシャフト22の一端に固定されており、シャフト22の回転に伴って一方のプーリ23は、シャフト22と同じ軸周りに回転する。
他方のプーリ24は、一方のプーリ23に対してX軸方向に並んだ位置にて、Y軸スライド体34の上辺部分341に回転自在に取り付けられている。
【0027】
タイミングベルト25は、一対のプーリ23,24に跨って掛けられている。タイミングベルト25には、X軸スライド体26が一対のプーリ23,24の間の位置に連結されている。
X軸スライド体26は、スライド部261と、スライド部261の前面に固定されたL字部262とから構成され、スライド部261は、ガイド部材27に摺動自在に係合しており、スライド部261の移動可能な経路がX軸方向に沿って規定されている。
【0028】
図4は、載置台4の取付け状態及び重量センサ7の配置状態を示す鉛直断面図である。図4に示す様に、X軸スライド体26のL字部262の下辺部分263には、T字状の連結部材264によって載置台4が連結されている。具体的には、L字部262の下辺部分263には貫通孔265が形成され、連結部材264の脚部が貫通孔265を貫通すると共に、連結部材264の頭部がL字部262の下辺部分263の上面に当接している。そして、連結部264の脚部の下端部に載置台4が固定されている。
【0029】
一対のプーリ23,24のうち一方のプーリ23が回転することによって、タイミングベルト25も回転する。このとき、タイミングベルト25のうち一対のプーリ23,24の間の部分が、X軸方向に沿って移動することになるので、一方のプーリ23の回転運動は、タイミングベルト25によってX軸方向の並進運動に変換されることとなる。
【0030】
従って、X軸モータ91の回転力は、X軸駆動機構2によってX軸方向の並進力に変換されてX軸スライド体26に付与されることとなり、その結果、X軸スライド体26はX軸方向に沿って移動することとなる。
【0031】
よって、搬送機構1によれば、X軸スライド体26に連結された載置台4は、X軸とY軸とから構成されたXY平面内を、X軸モータ91の回転によりX軸方向に沿って移動し、Y軸モータ92の回転によりY軸方向に移動することになる。
【0032】
重量センサ7は、歪みゲージ式のロードセルによって構成されており、図4に示す様に、その先端が載置台4の側面に接触するように、X軸スライド体26のスライド部261の前面に固定されている。又、貫通孔265の内周面と連結部材264の脚部の外周面との間には僅かな隙間が形成されており、載置台4に容器Aを載置したときに、連結部材264の頭部を支点として、容器Aの重量に応じたが力が重量センサ7の先端に作用するようになっている。これにより、容器Aの重量が重量センサ7によって計測されることとなる。
尚、図5に示す様に、重量センサ7は、その先端が連結部材262の頭部の下面に接触するように、L字部262の下辺部分263の上面に固定されてもよい。
【0033】
容器A内に収容されている液体の重量を取得する場合、容器Aと該容器Aに収容されている液体の総重量を重量センサ7によって計測し、そして計測された重量から空の容器Aの重量を減算すればよい。
【0034】
尚、重量センサ7によって検出した容器Aと液体の総重量は、容器A内の液体の深さに応じて変化する量であり、従って本実施の形態に係る搬送装置100においては、重量センサ7によって、容器A内の液体の深さHに応じて変化する深さ情報(容器Aと液体の総重量)を検出する検出装置が構成されている。
【0035】
2.搬送装置の制御
【0036】
図2に示す様に、上述した搬送機構1及び重量センサ7には制御装置8が接続されると共に、制御装置8には、パーソナルコンピュータ、キーボード、タッチパネル、マウスなどの情報入力手段9が接続されている。制御装置8は、情報取得手段81と、情報読出し手段82と、記憶手段83と、深さ算出手段84と、演算手段85と、パターン作成手段86と、搬送指令手段87とから構成されており、図6に示すフローチャートに従って搬送機構1を制御する。
尚、制御装置8は、CPU(Central Processing Unit)、専用LSI(Large Scale Integration)、パーソナルコンピュータなどから構成することが出来る。例えば、制御装置8の情報取得手段81、演算手段85、及び搬送指令手段87は、パーソナルコンピュータによって構成することが出来る。又、制御装置8の各手段81〜87が有する機能は、プログラムの実行によって生じさせることが出来る。
以下では、液体と共に細胞が試料として容器A内に収容されている場合について説明する。
【0037】
制御装置8の記憶手段83には、容器Aの種類に対応付けられた容器Aの底面積Sa及び重量Waと、液体の種類に対応付けられた液体の密度Cと、図7に示す様に細胞の種類に対応付けられた液体の深さHと最大加速度Amaxとの関係式F(H)とが記憶されている。
ここで最大加速度とは、容器Aの搬送時に容器Aに与えることが可能な加速度の最大値であり、本実施の形態においては、容器Aの底面に貼り付いた細胞が、容器Aの搬送時に底面から剥がれにくい加速度の最大値である。又、細胞の種類によって底面への密着力が異なるため、同じ深さであっても細胞の種類が異なると最大加速度も異なってくる。具体的には図7に示す様に、細胞A、細胞B、細胞Cの順に密着力が小さくなればなるほど、細胞は底面から剥がれやすくなるので、液体の深さHに対する最大加速度Amaxの傾きは小さくなっていく。
【0038】
又、搬送機構1によって容器AをXY平面内で移動させた場合、容器Aの加速に伴って容器A中の液体には波が立ち、容器A内の液体は振動することになるが、細胞が貼り付いている容器Aの底面近傍においては、液体の振動は、液体の深さが大きいほど小さくなり、液体の深さが小さいほど大きくなる。従って、図7に示す様に、液体の深さが大きいほど最大加速度は大きくなり、液体の深さが小さいほど最大加速度は小さくなる。
【0039】
尚、図7は、関係式F(H)が1次関数である場合を示しているが、関係式F(H)は、これに限られるものでなく、例えば2次以上の関数であってもよい。
【0040】
まずステップS1において制御装置8は、図2に示す様に情報取得手段81を用いて、容器Aと液体の総重量を深さ情報Idとして重量センサ7から取得する。重量センサ7から取得した深さ情報(容器Aと液体の総重量)は、制御装置8の深さ算出手段84に与えられる。
【0041】
そして、ステップS2では、情報入力手段9によって、容器Aの種類と、容器Aに収容されている液体及び細胞の種類が入力される。情報入力手段82から制御装置8に入力された情報Iiは、図2に示す様に制御装置8の情報読出し手段82に与えられる。
情報入力手段82が、パーソナルコンピュータである場合には、パーソナルコンピュータからの文字入力によって制御装置8に上記情報Iiが与えられる。
【0042】
情報入力手段82は、QR(Quick Response)コードやRF−ID(Radio Frequency Identification)を読み取るための読取り手段であってもよい。この場合、QRコードやRF−IDに上記情報Iiを付与しておくことにより、該QRコードやRF−IDを読取り手段によって読み取るだけで、前記情報Iiを制御装置8に与えることが出来る。
尚、QRコードやRF−IDは、例えば容器Aに添付される。又、QRコードを読み取る場合には読取り手段としてカメラが用いられ、RF−IDを読み取る場合には、リーダアンテナが用いられる。
【0043】
ステップS3において制御装置8は、図2に示す様に情報読出し手段82を用いて、ステップS2で入力された容器Aの種類に対応する容器Aの底面積Sa及び重量Waを記憶手段83から読み出すと共に、ステップS2で入力された液体の種類に対応する液体の密度Cを記憶手段83から読み出す。記憶手段83から読み出された容器Aの底面積Sa及び重量Wa、並びに液体の密度Cは、制御装置8の深さ算出手段84に与えられる。
更に、制御装置8は、図2に示す様に、情報読出し手段82を用いて、ステップS2で入力された細胞の種類に対応する液体の深さHと最大加速度Amaxとの関係式F(H)を記憶手段83から読み出す。記憶手段83から読み出された関係式F(H)は、制御装置8の演算手段85に与えられる。
【0044】
ステップS4において制御装置8は、図2に示す様に深さ算出手段84を用いて、ステップS1で取得した深さ情報(容器Aと液体の総重量)Idと、ステップS3で読み出した容器Aの底面積Sa及び液体の密度Cとに基づいて、液体の深さHdを算出する。
具体的には、制御装置8の深さ算出手段84が、深さ情報Idである容器Aと液体の総重量から容器Aの重量Waを減算することにより、液体の重量を算出し、算出した液体の重量を該液体の密度Cによって除算することにより、液体の体積を算出し、そして、算出した液体の体積を容器Aの底面積Saによって除算することにより、液体の深さHdを算出する。深さ算出手段84により算出された液体の深さHdは、演算手段85に与えられる。
【0045】
ステップS5において制御装置8は、演算手段85を用いて、ステップS3で読み出した関係式F(H)と、ステップS4で算出した液体の深さHdとに基づいて、最大加速度Amax(Hd)を算出する。
具体的には、制御装置8の演算手段85が、図7に示す液体の深さHと最大加速度Amaxとの関係式F(H)から、ステップS4で算出した液体の深さHdに対応する最大加速度Amax(Hd)を算出する。上述した様に(図7に示す様に)、液体の深さHと最大加速度Amaxには、液体の深さHが大きいほど最大加速度Amaxが大きくなり、液体の深さHが小さいほど最大加速度Amaxが小さくなるという関係があるので、ステップS4で算出される液体の深さHdが大きいほど、ステップS5で算出される最大加速度Amax(Hd)は大きくなり、ステップS4で算出される液体の深さHdが小さいほど、ステップS5で算出される最大加速度Amax(Hd)は小さくなる。
【0046】
例えば、細胞Aに関しては、算出された液体の深さHdが3mmであった場合には、図7に示す関係式F(H)に基づいて、最大加速度Amax(Hd)として12mm/s2が算出されるのに対し、算出された液体の深さHdが6mmであった場合には、最大加速度Amax(Hd)として24mm/s2が算出される。
【0047】
演算手段85により算出された最大加速度Amax(Hd)は、図2に示す様にパターン形成手段86に与えられる。
【0048】
ステップS6において制御装置8は、パターン作成手段86を用いて、ステップS5で算出した最大加速度Amax(Hd)に基づいて速度制御パターンを作成する。ここで、速度制御パターンは、制御すべき容器Aの速度の変化を時間の関数として表したものである。
図8は、ステップS6で実行される制御を示すフローチャートである。図9は、容器Aを移動させるときの始点(Xs,Ys)と終点(Xe,Ye)を示した平面図である。図10は、該始点(Xs,Ys)から終点(Xe,Ye)に向かうと共に大きさが最大加速度Amax(Hd)である最大加速度ベクトルAと、そのX軸方向成分AxとY軸方向成分Ayを示した図である。
【0049】
まず、ステップS61では、情報入力手段9によって、容器Aを移動させるときの始点(Xs,Ys)と終点(Xe,Ye)(図9参照)が入力される。情報入力手段82から入力された始点(Xs,Ys)と終点(Xe,Ye)は、制御装置8のパターン作成手段86に与えられる。
【0050】
ステップS62において、パターン作成手段86は、与えられた始点(Xs,Ys)と終点(Xe,Ye)を用いて、(Xe−Xs)を計算することによって、容器AをX軸方向に沿って移動させる距離(X軸方向への移動距離)Dxを算出すると共に、(Ye−Ys)を計算することによって、容器AをY軸方向に沿って移動させる距離(Y軸方向への移動距離)Dyを算出する。
【0051】
ステップS63において、パターン作成手段86は、始点(Xs,Ys)から終点(Xe,Ye)へ向かう変位ベクトルD(=(Dx,Dy))と、X軸とがなす角度θ(図9参照)を、数式(1)によって算出する。
【0052】
θ=tan−1{Dy/Dx} ・・・ (1)
【0053】
ステップS64において、パターン作成手段86は、ステップS5で算出した最大加速度Amax(Hd)と、ステップS63で算出した角度θに基づいて、始点(Xs,Ys)から終点(Xe,Ye)へ向かうと共に大きさが最大加速度Amax(Hd)である最大加速度ベクトルAの、X軸方向成分AxとY軸方向成分Ay(図10参照)を、数式(2)によって算出する。
【0054】
Ax=Amax(Hd)・cos(θ)
Ay=Amax(Hd)・sin(θ) ・・・ (2)
【0055】
図11(a)及び図11(b)は、容器Aを始点(Xs,Ys)から終点(Xe,Ye)へ移動させるためのX軸方向の速度制御パターンPx及びY軸方向の速度制御パターンPyをグラフで示した図である。ステップS65において、パターン作成手段86は、ステップS62で算出したX軸方向及びY軸方向への移動距離Dx,Dyと、ステップS64で算出した最大加速度ベクトルAのX軸方向成分Ax及びY軸方向成分Ayとに基づいて、図11(a)及び図11(b)に示す様に、容器Aを始点(Xs,Ys)から終点(Xe,Ye)へ移動させるためのX軸方向の速度制御パターンPxとY軸方向の速度制御パターンPyを作成する。尚、図11(a)及び図11(b)では、速度制御パターンPx,Pyの形状を台形形状とした場合が示されている。
【0056】
後述するように速度制御パターンPx,Pyに従って容器Aを搬送した場合、容器Aの速度ベクトルは、X軸方向の速度成分とY軸方向の速度成分との合成によって決定される。従って、X軸方向の速度制御パターンPxとY軸方向の速度制御パターンPyとを別個独立に作成したのでは、容器Aが始点(Xs,Ys)から終点(Xe,Ye)へ移動するときの加速度が、最大加速度Amax(Hd)を超える虞がある。例えば、X軸方向の速度制御パターンPxの傾き(X軸方向の加速度)の最大値Gxが、最大加速度ベクトルAのX軸方向成分Axより大きい場合には、容器Aが始点(Xs,Ys)から終点(Xe,Ye)へ移動するときの加速度は、最大加速度Amax(Hd)を超える。
【0057】
そこで、速度制御パターンPx,Pyは、最大加速度ベクトルAのX軸方向成分Ax及びY軸方向成分Ayに基づいて次のように作成される。即ち、X軸方向の速度制御パターンPxは、そのパターンの傾きの最大値Gxが最大加速度ベクトルAのX軸方向成分Ax以下となるように作成され、Y軸方向の速度制御パターンPyは、そのパターンの傾きの最大値Gyが最大加速度ベクトルAのY軸方向成分Ay以下となるように作成される。
【0058】
又、X軸方向の速度制御パターンPxは、該速度制御パターンPxを表す関数を時間で積分した値が、X軸方向への移動距離Dxに合致するように作成され、Y軸方向の速度制御パターンPyは、該速度制御パターンPyを表す関数を時間で積分した値が、Y軸方向への移動距離Dyに合致するように作成される。
【0059】
パターン形成手段86により作成されたX軸方向の速度制御パターンPxとY軸方向の速度制御パターンPyは、図2に示す様に搬送指令手段87に与えられる。
【0060】
ステップS6の実行後、ステップS7(図6)において搬送指令手段87は、ステップS6で作成したX軸方向の速度制御パターンPxとY軸方向の速度制御パターンPyに基づいて、搬送機構1に対して指令を出す。その結果、容器Aは、ステップS6で作成したX軸方向の速度制御パターンPxに従ってX軸方向へ移動すると共に、Y軸方向の速度制御パターンPyに従ってY軸方向へ移動することとなる。
これにより、始点(Xs,Ys)から終点(Xe,Ye)へ向かう方向についての容器Aの速度は、図12に示すグラフPに従って台形状に変化することとなる。
【0061】
上述したように、X軸方向の速度制御パターンPxは、そのパターンの傾きの最大値Gxが最大加速度ベクトルAのX軸方向成分Ax以下となるように作成され、Y軸方向の速度制御パターンPyは、そのパターンの傾きの最大値Gyが最大加速度ベクトルAのY軸方向成分Ay以下となるように作成されているので、始点(Xs,Ys)から終点(Xe,Ye)へ向かう方向についての加速度の最大値Gは、ステップS5で算出した最大加速度Amax(Hd)を超えることはない。
従って、容器Aは、一方の点である始点(Xs,Ys)から他方の点である終点(Xe,Ye)へ向かって、最大加速度Amax(Hd)以下の加速度で搬送されることとなる。
【0062】
上述した搬送装置100によれば、容器A内の液体の深さHdに応じて、容器Aの底面から細胞が剥がれにくい加速度の最大値(最大加速度Amax(Hd))が算出され、搬送時の容器Aの加速度が最大加速度Amax(Hd)以下となるように搬送機構1が制御されるので、液体の深さHdが小さい容器Aを搬送した場合でも、細胞は容器Aの底面から剥がれにくい。
【0063】
又、制御装置8の制御によって、搬送時の容器Aの加速度を最大加速度Amax(Hd)に等しくした場合、始点(Xs,Ys)から終点(Xe,Ye)までの容器Aの移動時間Tが短くなるので、容器Aの迅速な搬送が可能となる。
【0064】
更に、上述した搬送装置100においては、容器A内の液体の深さHdが大きいほど、制御装置8の演算手段85(ステップS5)によって算出される最大加速度Amaxは大きくなるので、容器Aの迅速な搬送が可能となる。
【0065】
即ち、ステップS4で算出される液体の深さHdが、上述した実施形態よりも大きい場合には、ステップS5で算出される最大加速度Amax(Hd)は、図7に示す液体の深さHと最大加速度Amaxとの関係式F(H)に基づいて大きくなる。従って、搬送時の容器Aの速度変化は、図13(a)に示す様に急となり、始点(Xs,Ys)から終点(Xe,Ye)までの容器Aの移動時間Tは短縮されることとなる。
逆に、ステップS4で算出される液体の深さHdが、上述した実施形態よりも小さい場合には、搬送時の容器Aの速度変化は、図13(b)に示す様に緩やかとなり、始点(Xs,Ys)から終点(Xe,Ye)までの容器Aの移動時間Tは拡張されることとなる。
【0066】
3.変形例
3−1.変形例1
上述した搬送装置100において、深さ情報を検出する検出装置として、重量センサ7に替えて撮像装置を用いてもよい。この場合、液体の深さHdを導出する手段として、深さ算出手段84に替えて画像処理手段が用いられる。
具体的には、撮像装置により容器A内の液体を側方から撮像することによって、容器Aの底面と液体の表面とが映った画像が深さ情報として用いられ、該深さ情報である画像に対して画像処理手段によって画像処理を施すことにより、容器Aの底面と液体の表面とに基づいて液体の深さHdが導出される。
【0067】
本変形例において搬送装置100を制御する場合、ステップS1では、深さ情報(画像)が上記撮像装置から取得される。そして、ステップS4では上記画像処理手段が、ステップS1で取得した画像に対して画像処理を施すことにより、液体の深さHdを導出する。
尚、ステップS4において画像処理手段が、容器Aの底面及び液体の表面を容易に認識することが出来るように、液体は、例えばフェノールレッドなどによって赤色に染色されていてもよい。
【0068】
本変形例に係る搬送装置100によれば、深さ情報である画像のみから液体の深さHdを導出することが出来るので、ステップS2において、容器Aの種類と、容器Aに収容されている液体の種類を入力する必要がなくなると共に、ステップS3において、容器Aの底面積及び重量、並びに液体の密度を読み出す必要がなくなる。
【0069】
3−2.変形例2
図14は、制御装置8のパターン作成手段86によって作成されるX軸方向の速度制御パターンPx及びY軸方向の速度制御パターンPyの他の例をグラフで示した図である。上述した実施形態に係る搬送装置100においては、X軸方向の速度制御パターンPx及びY軸方向の速度制御パターンの形状を台形形状としたが、図14(a)及び図14(b)に示す様に、該形状をS字形状としてよい。
【0070】
速度制御パターンがS字形状である場合、変曲点においてパターンの傾きが最大となるので、制御装置8のパターン作成手段86(ステップS6)では、図14(a)に示す様にX軸方向の速度制御パターンPxは、変曲点における傾きGxが最大加速度ベクトルAのX軸方向成分Ax以下となるように作成され、図14(b)に示す様にY軸方向の速度制御パターンPyは、変曲点における傾きGyが最大加速度ベクトルAのY軸方向成分Ay以下となるように作成される。
【0071】
そして、ステップS7において搬送指令手段87が、図14(a)及び図14(b)に示す速度制御パターンPx,Pyに基づいて搬送機構1に対して指令を出すことにより、搬送時の容器Aの速度は、図15に示すグラフPに従ってS字状に変化することとなる。
【0072】
速度制御パターンがS字形状である場合も、X軸方向の速度制御パターンPxは、そのパターンの傾きの最大値Gxが最大加速度ベクトルAのX軸方向成分Ax以下となるように作成され、Y軸方向の速度制御パターンPyは、そのパターンの傾きの最大値Gyが最大加速度ベクトルAのY軸方向成分Ay以下となるように作成されているので、始点(Xs,Ys)から終点(Xe,Ye)へ向かう方向について加速度の最大値Gは、ステップS5で算出される最大加速度Amax(Hd)を超えることはない。従って、容器Aを搬送した場合でも、細胞は容器Aの底面から剥がれにくい。
【0073】
又、速度制御パターンがS字形状である場合も、ステップS4で算出される液体の深さHdが、上述した他の例よりも大きい場合には、ステップS5で算出される最大加速度Amax(Hd)は、図7に示す液体の深さHと最大加速度Amaxとの関係式F(H)に基づいて大きくなる。従って、容器Aの速度変化は、図16(a)に示す様に急となり、始点(Xs,Ys)から終点(Xe,Ye)までの容器Aの移動時間Tは短縮されることとなり、容器Aの迅速な搬送が可能のとなる。
逆に、ステップS4で算出される液体の深さHdが、上述した他の例よりも小さい場合には、容器Aの速度変化は、図16(b)に示す様に緩やかとなり、始点(Xs,Ys)から終点(Xe,Ye)までの容器Aの移動時間Tは拡張されることとなる。
【0074】
速度制御パターンの形状がS字形状である場合、該形状が台形形状の場合よりも、速度の急激な変化による容器Aへの衝撃が抑制され、容器Aが滑らかに搬送されることとなる。
【0075】
尚、本発明の各部構成は上記実施の形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。例えば、液体の深さHと最大加速度Amaxの関係式F(H)は、図7に示す様に原点を通るものに限らず、Y切片が0以外の値であるものであってもよい。
【0076】
又、上述した実施の形態においては、重量センサ7や撮像装置の検出装置によって深さ情報Idを検出し、該深さ情報Idを制御装置8の情報取得手段81によって前記検出装置から取得していたが、例えば、搬送装置100とは別の装置によって深さ情報Idを検出し、該深さ情報Idを情報入力手段9によって制御装置8に与えてもよい。
【0077】
更に、上述した実施の形態においては、深さ算出手段84によって深さ情報Idから液体の深さHdを算出し、演算手段85によって液体の深さHdから最大加速度Amax(Hd)を算出したが、例えば深さ算出手段84を設けずに、演算手段85において深さ情報Idから最大加速度Amax(Hd)を直接算出してもよい。
又、上述したパターン形成手段86による速度制御パターンPx,Pyの作成を、演算手段85において実行してもよい。
【0078】
更に又、X軸方向及びY軸方向の速度制御パターンPx,Pyを、台形形状やS字形状に限らず他の形状としてもよい。深さ情報Idを検出する検出装置は、上述した重量センサや撮像装置に限られるものではない。上述した搬送装置100は、観察ユニットに限らず、種々の装置への適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の一実施形態に係る搬送装置が配備された観察ユニットを示す斜視図である。
【図2】上記搬送装置の構成を示すブロック図である。
【図3】上記搬送装置に配備されている搬送機構を示す斜視図である。
【図4】上記搬送装置に配備されている重量センサの配置状態を示す鉛直断面図である。
【図5】該重量センサの配置状態の他の例を示す鉛直断面図である。
【図6】上記搬送装置に配備されている搬送機構を制御するためのフローチャートである。
【図7】細胞の種類ごとに、液体の深さと最大加速度との関係をグラフで示した図である。
【図8】上記搬送装置に配備されている制御装置のパターン作成手段において実行される制御を示すフローチャートである。
【図9】容器を移動させるときの始点と終点を示した平面図である。
【図10】最大加速度ベクトルと、そのX軸方向成分とY軸方向成分を示した図である。
【図11】(a)X軸方向の速度制御パターン及び(b)Y軸方向の速度制御パターンをそれぞれグラフで示した図である。
【図12】始点から終点へ向かう方向についての容器の速度変化をグラフで示した図である。
【図13】(a)液体の深さが大きい場合の容器の速度変化、及び(b)液体の深さが小さい場合の容器の速度変化をそれぞれグラフで示した図である。
【図14】(a)X軸方向の速度制御パターンの他の例、及び(b)Y軸方向の速度制御パターンの他の例をそれぞれグラフで示した図である。
【図15】始点から終点へ向かう方向についての容器の速度の変化をグラフで示した図である。
【図16】(a)液体の深さが大きい場合の容器の速度変化、及び(b)液体の深さが小さい場合の容器の速度変化をそれぞれグラフで示した図である。
【符号の説明】
【0080】
1 搬送機構
2 X軸駆動機構
3 Y軸駆動機構
7 重量センサ(検出装置)
8 制御装置
81 情報取得手段
82 情報読出し手段
83 記憶手段
84 深さ算出手段
85 演算手段
86 パターン作成手段
87 搬送指令手段
9 情報入力手段
A 容器
Id 深さ情報
Hd 液体の深さ
Amax(Hd) 最大加速度
Px X軸方向の速度制御パターン
Py Y軸方向の速度制御パターン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が入った容器を搬送する搬送機構と、前記容器内の液体の深さに応じて変化する深さ情報を検出する検出装置と、前記搬送機構を制御する制御装置とを具え、該制御装置は、前記検出装置により検出した深さ情報を取得する情報取得手段と、該情報取得手段により取得した深さ情報に基づいて前記容器の搬送時に該容器に与えることが可能な加速度の最大値を算出する演算手段と、該加速度の最大値以下の加速度で前記容器を搬送するように前記搬送機構に指令を出す搬送指令手段とから構成され、前記演算手段は、前記容器内の液体の深さが大きいほど、前記加速度の最大値として大きな値を算出し、前記容器内の液体の深さが小さいほど、前記加速度の最大値として小さな値を算出する搬送装置。
【請求項2】
前記検出装置は重量センサから構成され、該重量センサによって計測した液体の重量が前記深さ情報として検出される請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記検出装置は撮像装置から構成され、該撮像装置により前記容器内の液体を側方から撮像することによって、該容器の底面と液体の表面とが映った画像が前記深さ情報として検出される請求項1に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記搬送機構は、第1軸と、該第1軸に交差する第2軸とから構成される平面に沿って前記容器を搬送するものであり、該平面上の2点間を一方の点から他方の点まで前記容器を搬送する場合、前記制御装置の搬送指令手段は、一方の点から他方の点に向かうと共に大きさが前記加速度の最大値である加速度ベクトルの、第1軸方向成分と第2軸方向成分とに基づいて、第1軸方向については前記第1軸方向成分以下の加速度で前記容器を搬送すると共に、第2軸方向については前記第2軸方向成分以下の加速度で前記容器を搬送するように前記搬送機構に指令を出す請求項1乃至請求項3の何れかに記載の搬送装置。
【請求項5】
液体が入った容器を搬送する搬送機構を制御するための制御装置であって、前記容器内の液体の深さに応じて変化する深さ情報を取得する情報取得手段と、該情報取得手段により取得した深さ情報に基づいて前記容器の搬送時に該容器に与えることが可能な加速度の最大値を算出する演算手段と、該加速度の最大値以下の加速度で前記容器を搬送するように前記搬送機構に指令を出す搬送指令手段とを具え、前記演算手段は、前記容器内の液体の深さが大きいほど、前記加速度の最大値として大きな値を算出し、前記容器内の液体の深さが小さいほど、前記加速度の最大値として小さな値を算出する制御装置。
【請求項6】
液体が入った容器を搬送する搬送機構を制御するためのプログラムであって、コンピュータに、前記容器内の液体の深さに応じて変化する深さ情報を取得する情報取得ステップと、該情報取得ステップにより取得した深さ情報に基づいて前記容器の搬送時に該容器に与えることが可能な加速度の最大値を算出する演算ステップと、該加速度の最大値以下の加速度で前記容器を搬送するように前記搬送機構に指令を出す搬送指令ステップを実行させ、前記演算ステップにおいては、前記容器内の液体の深さが大きいほど、前記加速度の最大値として大きな値を算出させ、前記容器内の液体の深さが小さいほど、前記加速度の最大値として小さな値を算出させるプログラム。
【請求項1】
液体が入った容器を搬送する搬送機構と、前記容器内の液体の深さに応じて変化する深さ情報を検出する検出装置と、前記搬送機構を制御する制御装置とを具え、該制御装置は、前記検出装置により検出した深さ情報を取得する情報取得手段と、該情報取得手段により取得した深さ情報に基づいて前記容器の搬送時に該容器に与えることが可能な加速度の最大値を算出する演算手段と、該加速度の最大値以下の加速度で前記容器を搬送するように前記搬送機構に指令を出す搬送指令手段とから構成され、前記演算手段は、前記容器内の液体の深さが大きいほど、前記加速度の最大値として大きな値を算出し、前記容器内の液体の深さが小さいほど、前記加速度の最大値として小さな値を算出する搬送装置。
【請求項2】
前記検出装置は重量センサから構成され、該重量センサによって計測した液体の重量が前記深さ情報として検出される請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記検出装置は撮像装置から構成され、該撮像装置により前記容器内の液体を側方から撮像することによって、該容器の底面と液体の表面とが映った画像が前記深さ情報として検出される請求項1に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記搬送機構は、第1軸と、該第1軸に交差する第2軸とから構成される平面に沿って前記容器を搬送するものであり、該平面上の2点間を一方の点から他方の点まで前記容器を搬送する場合、前記制御装置の搬送指令手段は、一方の点から他方の点に向かうと共に大きさが前記加速度の最大値である加速度ベクトルの、第1軸方向成分と第2軸方向成分とに基づいて、第1軸方向については前記第1軸方向成分以下の加速度で前記容器を搬送すると共に、第2軸方向については前記第2軸方向成分以下の加速度で前記容器を搬送するように前記搬送機構に指令を出す請求項1乃至請求項3の何れかに記載の搬送装置。
【請求項5】
液体が入った容器を搬送する搬送機構を制御するための制御装置であって、前記容器内の液体の深さに応じて変化する深さ情報を取得する情報取得手段と、該情報取得手段により取得した深さ情報に基づいて前記容器の搬送時に該容器に与えることが可能な加速度の最大値を算出する演算手段と、該加速度の最大値以下の加速度で前記容器を搬送するように前記搬送機構に指令を出す搬送指令手段とを具え、前記演算手段は、前記容器内の液体の深さが大きいほど、前記加速度の最大値として大きな値を算出し、前記容器内の液体の深さが小さいほど、前記加速度の最大値として小さな値を算出する制御装置。
【請求項6】
液体が入った容器を搬送する搬送機構を制御するためのプログラムであって、コンピュータに、前記容器内の液体の深さに応じて変化する深さ情報を取得する情報取得ステップと、該情報取得ステップにより取得した深さ情報に基づいて前記容器の搬送時に該容器に与えることが可能な加速度の最大値を算出する演算ステップと、該加速度の最大値以下の加速度で前記容器を搬送するように前記搬送機構に指令を出す搬送指令ステップを実行させ、前記演算ステップにおいては、前記容器内の液体の深さが大きいほど、前記加速度の最大値として大きな値を算出させ、前記容器内の液体の深さが小さいほど、前記加速度の最大値として小さな値を算出させるプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−161950(P2010−161950A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−5160(P2009−5160)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
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