説明

搬送装置、搬送方法、搬送プログラム、分析装置、分析方法、および試料分析プログラム

【課題】複数の分析を含む一連の分析を行う場合に、その一連の分析のスループットが大きく低下するのを回避し、可及的に良好なスループットを維持する。
【解決手段】分析の対象である試料を収容する複数の試料容器を容器搭載部に搭載した状態で、分析のための試料搬送を行う搬送装置であって、搬送方向の上流側に位置する第一採取部と、搬送方向において第一採取部の下流側に位置する第二採取部と、容器搭載部上の試料容器を第一採取部側から第二採取部側へ搬送する搬送部とを備える。そして、第一採取部と第二採取部のうち一方の採取部は試料容器からの試料採取を所定の周期で実行する周期的採取部であって、該周期的採取部の該所定の周期での試料採取の実行を、搬送の可否に関する判定結果に基づいて制御するとともに、搬送部による搬送のタイミングを、周期的採取部による試料採取のタイミングに対して非同期となるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析の対象である試料を試料容器に収容した状態で搬送する搬送装置、搬送方法、搬送プログラム、分析装置、分析方法、および試料分析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
尿などの試料の分析を行う場合、利用者の分析目的に応じて複数の分析装置が使用される場合がある。このとき、各分析装置が担う分析項目の全てに対して分析を行う場合には全ての分析装置に対して試料を順次搬送する必要があり、また、ある分析装置で所定の分析を行い、その結果に応じてその他の分析装置での分析を実施するか否かを決定する場合もある。このように複数の分析装置をわたって試料の分析を行おうとする場合、分析に要する時間短縮等の目的で、様々な試料の搬送技術が公開されている(たとえば、特許文献1から3を参照)。
【0003】
たとえば、特許文献1に示す技術では、複数の分析装置が配列されているシステムにおいて、各分析装置の処理能力、すなわち分析に要する時間を踏まえて試料を搬送する順序の調整が行われる。また、特許文献2、3に示す技術では、複数の分析モジュールを有する分析装置で順次試料を流す構成において、ある測定モジュールで分析が行われない試料については、そこで別の試料の分析が行われている間に分析の順序を追い越したり、また特定の分析が行われる試料については、試料搬送の主たる流れから、装置に設けられた取り込み領域に該当する試料を取り込んで分析を行ったりする構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−92171号公報
【特許文献2】特許第3031242号公報
【特許文献3】特許第3031374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ユーザのニーズに応じて試料に対して様々な分析を施すために、一連の分析の流れにおいて複数の分析装置、特に機能の異なる複数の分析装置が設けられ、必要に応じた分析を行う構成が一般的には採用される。そして、一連の分析のスループットは、分析能力を判断する上で、極めて重要な判断パラメータであり、この値を可及的に良好に保ち、より多くの試料を複数の分析装置による分析処理に供することが求められる。
【0006】
一連の分析のスループットは、各分析装置での試料採取や分析処理に要する時間や、分析装置間の試料の搬送に要する時間の影響を受ける。また分析処理の内容によっては、試料の採取、分析を所定の間隔で周期的に行う必要があり、このような場合、試料の搬送のタイミングと分析処理を行うタイミングとが衝突すると、試料搬送時には試料を採取し分析処理を行うことができないことから、少なくとも一方の処理をキャンセルしなければならず、その結果、一連の分析処理の最終的なスループットを下げてしまうおそれがある。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、複数の分析を含む一連の分析を行う場合に、その一連の分析のスループットが大きく低下するのを回避し、可及的に良好なスループットを維持することが可能な、試料の搬送装置、搬送方法、搬送プログラムおよび搬送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては、上記課題を解決するために、周期的な試料の分析を行うための試料採取のタイミングと、その周期的な試料採取が行われる位置と別の試料の採取、分析が行われる位置との間の試料搬送のタイミングを非同期の関係となるように制御する構成を採用した。ここでいう「非同期」とは、周期的な試料採取のタイミングに対する、試料搬送のタイミングが常に一定とならない状態を意味する。これにより、周期的な試料採取のタイミングに対する、試料搬送の相対的なタイミングが変動することで、両タイミングの衝突を可及的に抑制し、仮に衝突が生じたとしても一時的な衝突に終わらすことができ、一連の分析のスループットが大きく低下することを回避できる。
【0009】
そこで、先ず本発明を搬送装置の側面から捉える。詳細には、本発明は、分析の対象である試料を収容する複数の試料容器を容器搭載部に搭載した状態で、搬送方向において上流側に位置し且つ第一の分析処理のために前記試料容器から試料を採取する第一採取部から、該搬送方向において該第一採取部の下流側に位置し且つ第二の分析処理のために該試料容器から試料を採取する第二採取部へ搬送する搬送装置であって、前記第一採取部と前記第二採取部のうち一方の採取部は前記試料容器からの試料採取を所定の周期で実行する周期的採取部である。そして、前記搬送装置は、前記容器搭載部上の試料容器を前記第一採取部側から前記第二採取部側へ搬送する搬送部と、前記搬送部による搬送が可能か否かを判定する搬送判定部と、前記搬送判定部の判定結果に基づいて実行される、前記周期的採取部の前記所定の周期での試料採取のタイミングに対して、前記搬送部による搬送のタイミングを非同期となるように制御する搬送タイミング制御部と、を備える。
【0010】
本発明に係る搬送装置では、第一採取部による試料採取が行われる位置から、第二採取部による試料採取が行われる位置へ搬送部による試料搬送が行われる。この試料搬送は、試料を収容する試料容器を複数、容器搭載部に搭載した状態で行われる。したがって、当該搬送装置は、複数の試料容器を物理的に一体の構成のものに搭載した状態で、いわば複数の試料容器をまとめて搬送することが可能である。そして、この搬送部による搬送は、試料容器から試料を採取している間は行うことができないことを踏まえ、第一採取部での試料採取の状態や第二採取部での試料採取の状態、試料搬送に関するその他の状態等に基づいて、当該搬送の可否が搬送判定部によって判定される。
【0011】
ここで、第一採取部と第二採取部のうち一方が周期的な試料採取を行う周期的採取部である。これは採取された試料が供される分析処理の内容等に応じて決定される。たとえば、試料を試験薬と反応させる必要がある場合、その反応時間を確保するために周期的な試料採取が行われる場合が挙げられる。この周期的採取部による試料採取は周期的に行われるものであるが、その周期的採取の実行の可否が搬送判定部の判定結果に基づいて制御される。すなわち、搬送判定部の判定結果に基づいてその周期的な試料採取がキャンセルされると、結果として周期的採取部による試料採取は、その周期性に従って次回の試料採取のタイミングまで試料採取が行われないことになる。そのため、周期的採取部による試料採取のキャンセルは、一連の分析のスループットの低下につながりやすい。特に、周期的採取部では周期的な試料採取が行われることから、一度試料採取がキャンセルされると、そのキャンセル自体も周期的に発生する可能性があり、スループットの低下に拍車をかける結果となり得る。
【0012】
しかし、本発明に係る搬送装置では、搬送タイミング制御部が、搬送部による搬送のタイミングを、周期的採取部による試料採取のタイミングに対して非同期となるように制御する構成を有しており、これにより、搬送判定部の判定結果に基づいて周期的採取部の試料採取の可否が制御されても、搬送タイミングと周期的な試料採取のタイミングがいわば意図的にばらつくことになるため、両タイミングが衝突して、いずれかの処理がキャンセ
ルされることを可及的に回避することができる。仮に両タイミングが衝突したとしても、この意図的なばらつきにより、衝突の発生を一時的なものとすることができる。
【0013】
ここで、前記搬送判定部によって前記搬送部による搬送が可能と判定されると、該搬送が優先され前記周期的採取部による前記所定の周期での試料採取が回避される構成であってもよい。すなわち、当該構成は、第一採取部から第二採取部への試料搬送を、周期的採取部による試料採取より優先する構成である。このような構成では、特に周期的採取部による試料採取のキャンセルが起こりやすいため、搬送タイミング制御部による搬送タイミングの非同期制御は極めて有用と考えられる。
【0014】
ここで、上記の搬送装置において、前記第一採取部による試料採取の位置と前記第二採取部による試料採取の位置との間の採取位置間距離は、前記容器搭載部での前記搬送方向における試料容器間の最大距離以下である構成であってもよい。複数の試料容器を容器搭載部に搭載した状態で搬送することを踏まえると、全ての試料容器は搬送部によって一体的に搬送されることになる。そして、このように両採取位置間距離が、容器搭載部での前記搬送方向における試料容器間の最大距離以下であると、搬送タイミングと周期的な試料採取のタイミングが衝突しやすくなるため、搬送タイミング制御部による搬送タイミングの非同期制御は極めて有用と考えられる。
【0015】
ここで、上述までの搬送装置において、前記搬送タイミング制御部は、前記搬送判定部によって搬送の可否を判定する所定判定時間、および前記第一採取部と前記第二採取部のうち前記周期的採取部に相当しない採取部による試料採取に関する所定採取時間のうち少なくとも何れかの時間を変化させることで、前記搬送部による搬送のタイミングを、前記周期的採取部による試料採取のタイミングに対して非同期とする構成であってもよい。これらの時間を適切に変化させることで、搬送タイミングの非同期制御が効果的に行われる。なお、この非同期制御は、常時又は断続的に行われていてもよく、もしくはスループットが基準値を下回る状態になったときに行われるようにしてもよい。
【0016】
そして、前記搬送タイミング制御部は、該搬送タイミング制御部による搬送タイミングの非同期制御が行われていないときの前記所定判定時間である基準判定時間より、該所定判定時間を長くすることで、前記搬送部による搬送のタイミングを、前記周期的採取部による試料採取のタイミングに対して非同期としてもよい。または、搬送タイミング制御部による搬送タイミングの非同期制御が行われていないときの前記所定採取時間である基準採取時間より、該所定採取時間を長くすることで、前記搬送部による搬送のタイミングを、前記周期的採取部による試料採取のタイミングに対して非同期としてもよい。当業者においては、これらの時間を長くすることはスループットの低下につながると考えられるため、容易に行われることはなく、スループットを良好に維持するために、より短い時間である上記基準判定時間や基準採取時間の採用が一般的である。しかし、本発明に係る搬送装置では、これらの基準判定時間や基準採取時間よりも長い時間を敢えて採用することで、上記非同期制御を行い、その結果、一連の分析のスループットを向上させるものである。
【0017】
上述までの搬送装置において、前記第一採取部が、前記周期的採取部であって、その場合、前記第一採取部は、前記搬送部による搬送方向に沿って試料の採取位置を変更可能であり、採取位置を変更することで前記容器搭載部において該搬送方向に並べられた二箇所以上の前記試料容器のそれぞれにアクセス可能である構成であってもよい。周期的採取部の試料採取位置が変更可能であることで、周期的な試料採取がキャンセルされることを可及的に回避できるようになる。この試料採取位置の変更の一例として、前記搬送判定部が前記容器搭載部の搬送が可能ではないと判定した場合、前記第一採取部は、該容器搭載部を搬送させない状態で、該容器搭載部において前記搬送方向に沿って並べられた一の搬送
容器側から、該搬送方向とは逆方向で隣接する別の搬送容器側へ、その試料の採取位置を変更する形態が挙げられる。この場合、第二採取部への試料搬送は行えないものの、第一採取部によって周期的な試料採取を行うことが可能であるため、スループットの低下を防止することができる。
【0018】
ここで、上述までの搬送装置において、前記容器搭載部は、前記複数の試料容器を直線状に並べて搭載する試料ラックであってもよい。また、前記容器搭載部は回転テーブルであってもよく、この場合、該回転テーブルの周囲に沿って前記複数の試料容器を搭載し、前記搬送部は、前記回転テーブルを回転させることで該回転テーブル上の前記試料容器を前記第一採取部側から前記第二採取部側へ搬送する。なお、容器搭載部については、これら以外の形態であっても構わない。
【0019】
次に、本発明を搬送方法の側面から捉えることも可能である。すなわち、本発明は、分析の対象である試料を収容する複数の試料容器を容器搭載部に搭載した状態で、搬送方向において上流側に位置し且つ第一の分析処理のために前記試料容器から試料を採取する第一採取部から、該搬送方向において該第一採取部の下流側に位置し且つ第二の分析処理のために該試料容器から試料を採取する第二採取部へ搬送する搬送方法であって、前記第一採取部と前記第二採取部のうち一方の採取部は前記試料容器からの試料採取を所定の周期で実行する周期的採取部である。そして、前記搬送方法は、前記容器搭載部上の試料容器の前記第一採取部側から前記第二採取部側への搬送が可能か否かを判定する搬送判定ステップと、前記搬送判定ステップにおける判定結果に基づいて実行される、前記周期的採取部の該所定の周期での試料採取のタイミングに対して、前記容器搭載部上の試料容器の前記第一採取部側から前記第二採取部側への搬送のタイミングを非同期となるように制御する搬送タイミング制御ステップと、を含む。
【0020】
このように試料分析のために周期的採取部による試料採取が行われる構成において、搬送タイミング制御ステップで、容器搭載部上の試料容器の第一採取部側から第二採取部側への搬送のタイミングを、前記周期的採取部による試料採取のタイミングに対して非同期とすることで、上記搬送装置の場合と同様に、一連の分析のスループットの低下を回避し、良好な状態を維持することが可能となる。また、上記搬送装置について開示した技術的思想は、同様に本発明に係る搬送方法にも適用可能である。
【0021】
次に、本発明を搬送プログラムの側面から捉えることも可能である。すなわち、本発明は、コンピュータによって、分析の対象である試料を収容する複数の試料容器を容器搭載部に搭載した状態で、搬送方向において上流側に位置し且つ第一の分析処理のために前記試料容器から試料を採取する第一採取部から、該搬送方向において該第一採取部の下流側に位置し且つ第二の分析処理のために該試料容器から試料を採取する第二採取部へ搬送するための搬送プログラムであって、前記第一採取部と前記第二採取部のうち一方の採取部は前記試料容器からの試料採取を所定の周期で実行する周期的採取部である。そして、前記搬送プログラムは、前記コンピュータに、前記容器搭載部上の試料容器の前記第一採取部側から前記第二採取部側への搬送が可能か否かを判定する搬送判定ステップと、前記搬送判定ステップにおける判定結果に基づいて実行される、前記周期的採取部の該所定の周期での試料採取のタイミングに対して、前記容器搭載部上の試料容器の前記第一採取部側から前記第二採取部側への搬送のタイミングを非同期となるように制御する搬送タイミング制御ステップと、を実行せしめる。
【0022】
このように試料分析のために周期的採取部による試料採取が行われる構成において、上記搬送プログラムによってコンピュータが、搬送タイミング制御ステップで、容器搭載部上の試料容器の第一採取部側から第二採取部側への搬送のタイミングを、前記周期的採取部による試料採取のタイミングに対して非同期とすることで、上記搬送装置の場合と同様
に、一連の分析のスループットの低下を回避し、良好な状態を維持することが可能となる。また、上記搬送装置について開示した技術的思想は、同様に本発明に係る搬送プログラムにも適用可能である。また、上記プログラムを記録する記録媒体であってコンピュータに読取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に属する。
【0023】
次に、本発明を分析装置の側面から捉えることも可能である。すなわち、本発明は、分析の対象である試料を収容する複数の試料容器を容器搭載部に搭載した状態で、該試料容器内の試料の分析を行う分析装置であって、前記容器搭載部の搬送方向において上流側に位置し、第一の分析処理のために前記試料容器から前記試料を採取する第一採取部と、前記搬送方向において前記第一採取部の下流側に位置し、第二の分析処理のために前記試料容器から前記試料を採取する第二採取部と、前記容器搭載部上の試料容器を前記第一採取部側から前記第二採取部側へ搬送する搬送部と、前記搬送部による搬送が可能か否かを判定する搬送判定部と、前記第一採取部と前記第二採取部のうち一方の採取部は前記試料容器からの試料採取を所定の周期で実行する周期的採取部であって、該周期的採取部の該所定の周期での試料採取の実行を、前記搬送判定部の判定結果に基づいて制御する採取制御部と、前記搬送部による搬送のタイミングを、前記周期的採取部による試料採取のタイミングに対して非同期となるように制御する搬送タイミング制御部と、を備える。
【0024】
このように試料分析のために周期的採取部による試料採取が行われる構成において、搬送タイミング制御部が、容器搭載部上の試料容器の第一採取部側から第二採取部側への搬送のタイミングを、前記周期的採取部による試料採取のタイミングに対して非同期とすることで、分析装置における一連の分析のスループットの低下を回避し、良好な状態を維持することが可能となる。また、上記搬送装置について開示した技術的思想は、同様に本発明に係る分析装置にも適用可能である。
【0025】
次に、本発明を分析方法の側面から捉えることも可能である。すなわち、本発明は、分析の対象である試料を収容する複数の試料容器を容器搭載部に搭載した状態で、該試料容器内の試料の分析を行う分析方法であって、前記容器搭載部の搬送方向において上流側で、第一の分析処理のために前記試料容器から前記試料を採取する第一採取ステップと、前記搬送方向において前記第一採取ステップでの試料採取位置より下流側で、第二の分析処理のために前記試料容器から前記試料を採取する第二採取ステップと、前記容器搭載部上の試料容器を前記第一採取ステップでの採取位置から前記第二採取ステップでの採取位置へ搬送する搬送ステップと、前記搬送ステップでの搬送が可能か否かを判定する搬送判定ステップと、前記第一採取ステップでの試料採取と前記第二採取ステップでの試料採取のうち一方の試料採取は前記試料容器から試料を所定の周期で採取する周期的採取であって、該周期的採取の実行を、前記搬送判定ステップでの判定結果に基づいて制御する採取制御ステップと、前記搬送ステップでの搬送のタイミングを、前記周期的採取のタイミングに対して非同期となるように制御する搬送タイミング制御ステップと、を含む。
【0026】
このように試料分析のために上記周期的採取が行われる構成において、搬送タイミング制御ステップで、容器搭載部上の試料容器の第一採取ステップでの採取位置側から第二採取ステップでの採取位置側への搬送のタイミングを、前記周期的採取のタイミングに対して非同期とすることで、試料分析における一連の分析のスループットの低下を回避し、良好な状態を維持することが可能となる。また、上記搬送装置について開示した技術的思想は、同様に本発明に係る分析方法にも適用可能である。
【0027】
次に、本発明を試料分析プログラムの側面から捉えることも可能である。すなわち、本発明は、コンピュータによって、分析の対象である試料を収容する複数の試料容器を容器搭載部に搭載した状態で、該試料容器内の試料の分析を行うための試料分析プログラムであって、前記コンピュータに、前記容器搭載部の搬送方向において上流側で、第一の分析
処理のために前記試料容器から前記試料を採取する第一採取ステップと、前記搬送方向において前記第一採取ステップでの試料採取位置より下流側で、第二の分析処理のために前記試料容器から前記試料を採取する第二採取ステップと、前記容器搭載部上の試料容器を前記第一採取ステップでの採取位置から前記第二採取ステップでの採取位置へ搬送する搬送ステップと、前記搬送ステップでの搬送が可能か否かを判定する搬送判定ステップと、前記第一採取ステップでの試料採取と前記第二採取ステップでの試料採取のうち一方の試料採取は前記試料容器から試料を所定の周期で採取する周期的採取であって、該周期的採取の実行を、前記搬送判定ステップでの判定結果に基づいて制御する採取制御ステップと、前記搬送ステップでの搬送のタイミングを、前記周期的採取のタイミングに対して非同期となるように制御する搬送タイミング制御ステップと、を実行せしめる。
【0028】
このように試料分析のために上記周期的採取が行われる構成において、上記試料分析プログラムによってコンピュータが、搬送タイミング制御ステップで、容器搭載部上の試料容器の第一採取ステップでの採取位置側から第二採取ステップでの採取位置側への搬送のタイミングを、前記周期的採取のタイミングに対して非同期とすることで、試料分析における一連の分析のスループットの低下を回避し、良好な状態を維持することが可能となる。また、上記搬送装置について開示した技術的思想は、同様に本発明に係る試料分析プログラムにも適用可能である。また、上記試料分析プログラムを記録する記録媒体であってコンピュータに読取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に属する。
【発明の効果】
【0029】
複数の分析を含む一連の分析を行う場合に、その一連の分析のスループットが大きく低下するのを回避し、可及的に良好なスループットを維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】試料の分析を行う分析装置を2台備え、分析装置間の試料の搬送に本発明に係る搬送装置が適用された分析システム概略構成を示す図である。
【図2】図1に示す分析システムの上面図である。
【図3】図1に示す分析システムにおける、試料分析時のシステム構成要素の作動状態を概略的に示した図である。
【図4】図1に示す分析システムにおいて、試料容器の搬送を行う搬送装置の概略構成を示す図である。
【図5A】図1に示す分析システムにおいて、第一分析装置と第二分析装置の分析処理状態を比較して示す第一の図である。
【図5B】図1に示す分析システムにおいて、第一分析装置と第二分析装置の分析処理状態を比較して示す第二の図である。
【図6】図4に示す搬送装置において実行される、試料の搬送制御用の第一のフローチャートである。
【図7】図4に示す搬送装置において実行される、試料の搬送制御用の第二のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に、図面を参照して本発明を実施するための形態に係る搬送装置、搬送方法、搬送プログラム、および搬送システムについて説明する。なお、以下の実施の形態の構成は例示であり、本発明はこの実施の形態の構成に限定されるものではない。
【実施例1】
【0032】
<分析システムの概略>
図1は、試料の所定の分析を行う分析システムSの概略構成を示す図であり、図2は、分析システムSの上面図である。また、図3は、分析システムSで行われる、分析のため
の試料の採取に関連するシステム構成要素の動作状態を示す図である。図1および図2に示すように、分析システムSは、1つの筐体1内に収容されて集約された第一および第二の分析装置A1およびA2と、試料容器としての複数の採尿管30を試料ラック3で支持した状態で分析装置間で搬送するための搬送装置2と、を有している。本実施例では、試料ラック3には8本の採尿管30が直線状に配列されている。
【0033】
この分析システムSは、複数の採尿管30に収容された試料としての尿Bを採取し、尿の成分分析を行うために利用される。第一の分析装置A1および第2の分析装置A2がそれぞれ尿に関連する分析処理を行う装置であり、具体的には第一の分析装置A1は尿定性に関する分析処理を行い、第二の分析装置A2は尿沈渣に関する分析処理を行う。なお、上記分析装置A1、A2の分析処理内容は例示であり、これ以外の分析処理を行う分析装置も分析システムSとして適用可能である。たとえば、上記尿定性分析および尿沈渣分析以外の尿に関する分析項目について処理を行ってもよく、また、血液に関する様々な分析処理を行うこともできる。したがって、分析装置A1、A2で分析される試料の具体的な種類や分析処理の具体的な内容は、限定されない。
【0034】
ここで、図3に示すように、第一の分析装置A1は、採尿管30から尿Bを吸引して採取するための第一のノズル4Aを有している。この第一のノズル4Aは、ノズル用移動装置5のアーム50に支持され、上下方向に移動可能である。さらに、第一のノズル4Aは、試料ラック3が搬送される方向に沿って移動可能となるように構成されており、この点の詳細については後述する。
【0035】
また、第一の分析装置A1の基本的な構成は、従来既知の尿定性分析装置と同様な構成とすることが可能である。すなわち、この第一の分析装置A1は、第一のノズル4Aの上部にチューブ51を介して接続されたシリンジポンプ52aおよび52b、洗浄液槽53、洗浄用容器54、測定部60、および制御部61を備えている。シリンジポンプ52aおよび52bは、洗浄液槽53に貯留された洗浄液をチューブ51を介して第一のノズル4A内に送り込む動作や、第一のノズル4A内に試料吸引用の負圧を生じさせる動作を行う。洗浄用容器54は、第一のノズル4Aを洗浄するためのものであり、洗浄用容器54内に第一のノズル4Aを進入させた状態でチューブ51を介して第一のノズル4A内に洗浄液を送り込むことにより第一のノズル4Aの洗浄が行われる。洗浄用容器54内に供給された洗浄液は、空気ポンプ55や複数の開閉弁Vの切り換え動作により、中間ボトル56を経て廃液槽57に供給される。
【0036】
測定部60は、尿Bが第一のノズル4Aにより吸引され、測定部60に設置された試験片へ吐出され点着させる点着部(図示略)、また、該尿が点着された試験片を用いて尿定性分析を行うための機器(図示略)を備えている。詳細は後述するが、この第一のノズル4Aを用いた第一の分析装置A1での尿定性分析処理は、一定の間隔で周期的に行われる処理である。そのため、第一のノズル4Aによる尿の採尿管30からの採取も周期的に行われることになる。この尿定性分析のための装置構成は、既に公知なものであるから、その詳細な説明は割愛する。また、制御部61は、コンピュータを用いて構成されており、測定部60で得られた測定データに基づいた所定の演算処理や、第一の分析装置A1の各部の動作処理などを実行する。
【0037】
第二の分析装置A2は、その具体的な構成としては、尿沈渣分析を行うことが可能な従来のどのような構成も適用することができる。ただし、本実施例においては、第二の分析装置A2に具備されている採取用の第二のノズル4Bは、上下方向にのみ移動可能となり、搬送方向に沿った移動はできないように構成されている。
【0038】
また、図3に示すように、各採尿管30には、バーコードなどの識別コード31が付さ
れており、分析システムSは、この識別コード31を読み取るためのバーコードリーダ71を備えている。このバーコードリーダ71によって読み取られた個体識別データは、各採尿管の個体を識別するためのデータであり、読み取られた後には分析システムS内の制御部61に送信され、第一および第二の分析装置A1およびA2において尿Bの分析処理結果のデータと関連付けられる参照データとして利用される。さらに、個体識別データは、分析装置A1、A2間の採尿管30の搬送を担う搬送装置2の制御部である搬送制御部70にも送信される。なお、図3に示した第一の分析装置A1の制御部61は、第二の分析装置A2における各種のデータ処理や動作制御をも実行するものとして共用させることが可能であり、このことにより第二の分析装置A2には固有の制御部を具備させない構成とすることも可能である。
【0039】
さらに、図1に示すように、分析システムSの筐体1の外面部には、複数の操作スイッチ63やデータ表示用のディスプレイ64が設けられているが、これらも第一および第二の分析装置A1およびA2用、搬送装置2用のものとして共用することができる。
<搬送装置の構成>
ここで搬送装置2は、最大で8本の採尿管30を試料ラック3に起立保持させた状態で第一の分析装置A1から第二の分析装置A2へ搬送するものであり、これにより試料を各分析装置での分析処理に供させることが可能となる。搬送装置2は、筐体1の前面下部に連結されたフレーム20、このフレーム20の上面部20a上に位置する3組の循環駆動自在なベルト21a、21b、および水平方向に移動自在な2つのレバー22aおよび22b(図2を参照)を備えている。搬送装置2においては、符号n1で示す位置に試料ラック3を供給すると、この試料ラック3は、ベルト21aによって矢印N1方向に搬送された後に、レバー22aによって矢印N2方向に押されて搬送される。なお、後述するように、この矢印N2方向への移動過程において、採尿管30に収容されている尿Bは、各分析装置内へと採取されることになる。次いで、試料ラック3は、ベルト21bによって矢印N3方向に搬送される。
【0040】
このように構成される搬送装置2が分析システムSに設置されていることで、まず、搬送装置2の符号n1で示す箇所に投入された試料ラック3は、既述したように、矢印N1〜N3で示した経路で順次搬送される。なお、試料ラック3が矢印N2方向に搬送される過程においては、まず各採尿管30の識別コード31がバーコードリーダ71により読み取られる。次いで、上流側の第一の分析装置A1は、複数の採尿管30から第一のノズル4Aを利用して尿Bを順次採取し、それらの尿定性分析を行う。下流側の第二の分析装置A2は、第二のノズル4Bを利用して尿Bを採取し、尿沈渣分析を行うこととなる。
【0041】
ここで、第一の分析装置A1から第二分析装置A2への試料ラック3の搬送の詳細について、図4に基づいて説明する。搬送装置2においては、レバー22aが、複数の採尿管30を支持する試料ラック3と接触状態を形成し、レバー22aからの押圧力により、試料ラック3が矢印N2の方向に搬送される構成となっている。このレバー22aは、フレーム20の下面部(図2において、上面部20aの裏側に位置する)に設置された駆動モータ24の出力軸に連結された駆動ネジ25と連結されており、駆動モータ24が駆動することで、レバー22aが矢印N2の方向、もしくはその逆方向に移動可能である。したがって、矢印N2の方向は、各分析装置による尿の採取を可能とする試料ラック3の搬送方向に相当し、その方向に沿った試料ラック3の搬送される経路を、「分析用搬送経路」と称する。
【0042】
上述したように、試料ラック3には最大で8本の採尿管30を直線状に支持可能であり、具体的には、図4に示す状態では8本の採尿管30が、搬送方向に沿って一列に且つ採尿管30同士の間隔が一定距離のΔLとなるように、試料ラック3内に配列されている。なお、図4に示すように、左右端側に位置する採尿管30と、その近傍の試料ラック3の
端部との距離はΔL/2となっており、したがって、試料ラック3の搬送方向に沿ったその長さは8Lとなる。また、試料ラック3の下部の分析用搬送経路の床面に対向する位置であって、試料ラック3の左右端部と隣接する採尿管30同士の間にリブ部6が等間隔で設けられている。図4からも分かるように、この隣接するリブ部6の間隔は、採尿管30同士の間隔と同じΔLである。
【0043】
ここで、第一分析装置A1と第二分析装置A2との間の分析用搬送経路には、試料ラック3の通過量を検出する通過センサ74が設けられている。この通過センサ74は、分析用搬送経路の床面上にわずかに突出した突出部を有し、その突出部が搬送される試料ラック3のリブ部6と接触することで、分析用搬送経路の床内に押し込まれる構成となっている。そして、分析用搬送経路の床内では、この押し込まれた突出部の動きがフォトダイオードを利用して光学的に検知されて、以て試料ラック3のリブ部6の通過を電気的に検知することが可能となる。なお、リブ部6が上記突出部と接触した後に試料ラックが更に搬送されて、その接触状態が解消されると、バネやカウンターウェイトによる付勢力によって再び突出部が分析用搬送経路の床面上に突出した状態となり、次のリブ部6との接触に備える。したがって、通過センサ74は、リブ部6の間隔ΔL単位で、試料ラック3の通過量を検知することが可能である。
【0044】
ここで、搬送装置2には、試料ラック3の搬送を電気的に制御するための搬送制御部70が備えられている。この搬送制御部70はコンピュータに相当し、採尿管30を支持した試料ラック3の上記搬送は、不図示のCPU、メモリ、ハードディスク等を含む当該コンピュータ上で実行されるコンピュータプログラムにより実現される。また、上記搬送装置2への動作指示の入力は、分析システムSに設けられた操作スイッチ63が利用可能である。そして、分析用搬送経路の最上流側に上記バーコードリーダ71が設置されている。このバーコードリーダ71は上述の通り、試料ラック3に支持されている各採尿管30の個体識別を行い、その識別結果を個体識別データとして搬送制御部70に送信する。
【0045】
また、分析用搬送経路において、バーコードリーダ71の下流側であって第一のノズル4Aによる尿の採取位置(以降、「第一採取位置」という。)に対応する位置に、試料ラック3に支持された採尿管30の存在を確認するための第一位置確認センサ72が設置されている。この第一位置確認センサ72は、第一のノズル4Aによる試料採取位置に、採取の対象である尿Bを収容する採尿管が位置しているかを光学的に検知するセンサであり、発光部から出射された検出光が採尿管30で反射され、その反射光を受光部で検知することで、採尿管の第一採取位置での存在を検知する。検出光の出射およびその反射光の受光という比較的簡潔な構成のため、第一確認センサ72はバーコードリーダ71と比べて、コンパクトであり、コストも低く抑えることができる。この点は、後述する第二位置確認センサについても同様である。そして、第一位置確認センサ72による検知の結果は、第一採取位置データとして、電気的に搬送制御部70に送信される。
【0046】
さらに、分析用搬送経路において、第一位置確認センサ72の下流側であって第二のノズル4Bによる尿の採取位置(以降、「第二採取位置」という)に対応する位置に、試料ラック3に支持された採尿管30の存在を確認するための第二位置確認センサ73が設置されている。この第二位置確認センサ73は、第二のノズル4Bによる試料採取位置に、採取の対象である尿Bを収容する採尿管30が位置しているかを、第一位置確認センサ72と同様に光学的に検知するセンサである。第二位置確認センサ73による検知の結果は、第二採取位置データとして、電気的に搬送制御部70に送信される。
【0047】
また、駆動モータ24にはその回転状態を検出可能なエンコーダが設けられており、エンコーダから搬送制御部70へ、駆動モータ24の出力軸の回転位置情報が伝えられる。これにより搬送制御部70は、分析用搬送経路におけるレバー22aの位置を把握するこ
とができる。
【0048】
図4に示す搬送装置2では、第一のノズル4Aによって尿Bの採取が行われる第一採取位置と、第二のノズル4Bによって尿の採取が行われる第二採取位置との間の距離は、試料ラック3における採尿管同士の最大距離(本実施例の場合は、右端側のP1の採尿管30と左端側のP8の採尿管30との間の距離7ΔL)以下となるように設定されている。すなわち、一台の試料ラック3が、第一のノズル4Aと第二のノズル4Bとの間に横たわり、両ノズルが同じ試料ラック3上の異なる採尿管30に同時期にアクセスすることが可能な状態になり得る。
【0049】
このように構成される搬送装置2が、採尿管30を支持している試料ラック3を、第一分析装置A1側から第二分析装置A2側へ搬送することで、第一分析装置A1での第一のノズル4Aを介した尿の採取、分析処理(以下、単に「第一分析処理」という)が行われるとともに、第二分析装置A2での第二のノズル4Bを介した尿の採取、分析処理(以下、単に「第二分析処理」という)が行われる。ここで、両分析装置で行われる尿の採取、分析処理と、試料ラック3の搬送との相関について、図5Aに基づいて説明する。
【0050】
図5Aの下段には第一分析装置A1での採尿管ごとの第一分析処理のタイムチャートが示されている。第一分析装置A1では、時間ΔTの周期で第一分析処理が連続して行われ、当該処理において第一のノズル4Aが採尿管中に下降されるタイミングをT1で示し、第一のノズル4Aが下降中の状態を、斜線を付したバーで示している。ここで、第一のノズル4Aは、尿の採取位置を、図4に示すように3本の採尿管30に対応する三か所の位置(図4では、P8、P7、P6に対応する位置)に変更可能である。したがって、試料ラック3が搬送されない状態が続いたとしても、第一のノズル4A自身がその採取位置を変更することで、少なくとも3本の採尿管30中の尿に対して、連続して第一分析処理を施すことが可能である。また、試料ラック3が第二分析装置A2側へ(N2方向へ)搬送されることで、第一のノズル4Aが他の採尿管30(P6よりも右側に位置する採尿管)にもアクセスすることが可能となる。
【0051】
一方で、図5Aの上段には第二分析装置A2での採尿管ごとの第二分析処理のタイムチャートが示されている。なお、上段と下段とでは、それぞれのタイムチャートの時間軸は一致している。第二分析処理においては、第二のノズル4Bが採尿管中に下降されるタイミングをT2で示し、第二のノズル4Bが下降中の状態を、斜線を付したバーで示し、第二のノズル4Bの下降状態が終了するタイミングをT2’で示している。第二分析処理は、第一分析処理とは異なり、より詳細な尿分析処理であり、第一分析処理のように全ての採尿管30中の尿に対して行われない。したがって、第二分析処理は、第一分析処理と異なって、周期的に行われるものではなく、第一分析処理の結果、対象となると判断された尿を収容する採尿管が、第二のノズル4Bの下方に到達したときに行われる。なお、採尿管の位置は、上述した通り、駆動モータ24内のエンコーダからの情報に基づいて、レバー22aの位置を算出するとともに、試料ラック3の寸法等を考慮して算出することが可能である。以上より、第二分析処理に付される試料の数は、第一分析処理に付される試料の数を超えることはない。一方で、第二分析処理に要する時間は、第一分析処理に要する時間よりも長く、本実施例では第一分析処理に要する時間の二倍程度である。
【0052】
ここで、周期的な第一分析処理を連続的に行うためには、第一のノズル4Aの採取位置を上記のようにP6〜P8に対応する位置で変更するとともに、適切なタイミングでレバー22aにより試料ラック3を搬送する必要がある。しかし、第一分析処理および第二分析処理において、何れかのノズルが対象となる採尿管中に下降されている場合には、当然ながら試料ラック3を搬送することはできないため、第一のノズル4Aと第二のノズル4Bの両者が下降していない状態であるときにのみ、試料ラック3の搬送が可能である。こ
の点を踏まえると、図5Aに示す状態では、二番目の第一分析処理が終わったタイミングから、二番目の第二分析処理が開始されるまでの期間(図中矢印で示される期間)が、試料ラック3の搬送が可能となる候補期間として特定される。この候補期間中に、試料ラック3をレバー22aによって押すことでその搬送が行われる。
【0053】
ここで、第一分析処理と第二分析処理の時間的な相対関係は、必ずしも図5Aに示すような状態が維持されるものではなく、第一分析装置A1で行われる第一分析処理を含む各種の処理に要する時間や、第一分析装置A1と第二分析装置A2との間で行われる各種の処理に要する時間の影響を受けて変化する可能性がある。特に、第二分析処理は、第一分析処理と異なり周期的に行われる分析処理ではないため、第二分析処理を起因として両者の相対関係は変化し得る。その変化した一例を図5Bに、両分析処理のタイムチャートの比較として示す。図5Bに示す例では、二番目の第一分析処理における第一のノズル4Aの下降タイミングT1が、一番目の第二分析処理におけるノズルの下降状態の終了タイミングT2’と一致している。なお、図5Bに示す例では、第一のノズル4Aは、図4中の最も右側の位置にあり、それ以上右側の位置への移動は行えない状態にあるものとする。この場合、二番目の第一分析処理を当初のタイミングで実行しようとすると、一番目の第二分析処理において第二のノズル4Bの下降状態が解除された直後に二番目の第一分析処理において第一のノズル4Aの下降が行われ、更にその下降状態が解除された直後に二番目の第二分析処理において第二のノズル4Bの下降が行われることになる。この結果として、第一のノズル4A、第二のノズル4Bの何れかが下降した状態が続くため、試料ラック3を搬送するための候補期間を特定することができなくなる。
【0054】
そこで、このような場合には、行われるはずだった二番目の第一分析処理がキャンセルされる。これは、第一分析処理のための第一のノズル4Aは、尿の採取位置が変更可能であるため比較的柔軟な処理ができること、第二分析処理は、処理に要する時間が第一分析処理より長いため、そのキャンセルはスループットの大きな低下につながること等の理由による。なお、図5Bにおいては、この二番目の第一分析処理のキャンセルは、点線で表現されている。このように第一分析処理のキャンセルが行われることで、試料ラック3の搬送のための候補期間を確保することはできるが、少なくとも周期的な分析処理である第一分析処理がキャンセルされることで、幾らかはスループットが低下する結果を招く。特に、第一分析処理は周期的に行われるため、一度処理のキャンセルが生じると、その後も暫くは処理のキャンセルが発生し易くなる。
【0055】
以上を踏まえて、搬送装置2による試料ラック3の搬送に関する搬送制御について、図6に基づいて説明する。この搬送制御は、コンピュータでもある搬送制御部70内のメモリに記録されているプログラムが繰り返し実行されることで、実現される一連の搬送処理である。そして、この搬送制御が行われている搬送装置2において、更に図5Bに示すような第一分析処理のキャンセルを可及的に回避するための搬送タイミング制御について、図7に基づいて説明する。この搬送タイミング制御は、搬送制御と同様に、搬送制御部70内のメモリに記録されているプログラムが繰り返し実行されることで、実現される一連の搬送処理である。
【0056】
まず、搬送制御について説明する。S101では、分析システムSにおいて第二分析処理において第二のノズル4Bが下降状態にあるか否かが判定される。ここで肯定判定されると、試料ラック3を搬送することはできなことを意味するため、再度S101の処理が繰り返される。一方で否定判定されると、S102へ進む。S102では、試料ラック3を搬送すべきとする搬送要求があるか否かが判定される。当該搬送要求は、たとえば第一のノズル4Aが図4において最も左側の位置に存在しているときは、当該ノズル4Aは右側に採取位置を変更することが可能であるため、搬送要求は出されないものとし、それ以外の位置に第一のノズル4Aが存在しているときは、採取位置の変更の余地が狭まってい
るかもしくは変更の余地が無いことから搬送要求が出されるものとする。なお、試料ラック3を可能な限り第二分析装置A2側に搬送することを前提とし、搬送要求は常に存在しているものとして、S102の処理は実質的に搬送制御から外しても構わない。S102で肯定判定されるとS103へ進み、否定判定されると本制御を終了する。
【0057】
S103では、図5Aに示すような試料ラック3を第二分析装置A2側に搬送するための搬送候補期間の特定が行われる。上述したように、この搬送候補期間は、第二分析処理において第二のノズル4Bが下降状態となっていない状態であって、且つ第一分析処理において第一のノズル4Aの下降が開始されるまでの期間を言う。この期間内であれば、レバー22aによって試料ラック3が押されることで、その搬送を行うことが可能である。S103の処理が終了すると、S104へ進む。
【0058】
S104では、S103で特定された搬送候補期間に基づいて、試料ラック3の搬送が可能か否かが判定される。当該処理は、本発明に係る搬送判定部による処理に相当する。具体的には、特定された搬送候補期間が、搬送に要する時間より長ければ搬送が可能と判定される。ここで、搬送の最少距離は試料ラック3において隣接する採尿管30同士の距離ΔLである。したがって、搬送候補期間が、距離ΔLをレバー22aの進行速度で除して算出される時間よりも長い場合には、搬送が可能と判定される。なお、第一のノズル4Aが、図4において最も右側の位置に存在しているときは、当該ノズル4Aを最も左側の位置に移動させて、以降の速やかな試料採取に備えるのが好ましい。したがって、この場合には、試料ラック3の搬送距離は2ΔLとなるため、搬送候補期間が、距離2ΔLをレバー22aの進行速度で除して算出される時間よりも長い場合には、そのような搬送が可能と判定されることになる。S104で肯定判定されるとS106へ進み、否定判定されるとS105へ進む。
【0059】
S105では、図5Bに基づいて説明したように、搬送が可能ではないと判定された場合でも、試料ラック3の搬送を優先させるべく、第一分析処理のキャンセルが行われる。これにより、搬送候補時間が短くて又は無くて搬送が不可能であると判定された場合でも試料ラック3の搬送が行うことができる。このS105の処理は、本発明に係る採取制御部による処理に相当する。S105の処理が終了すると、S106へ進む。
【0060】
S106では、レバー22aの押圧により、実際に試料ラック3の搬送が実行される。なお、試料ラック3の搬送量は、通過センサ74の検出と、駆動モータ24内のエンコーダからの検出に基づいて算出され、必要な距離(本実施例では、上述したようにΔLもしくは2ΔL)の搬送が実行されることになる。
【0061】
本搬送制御によれば、試料ラック3の搬送要求がある場合には、その搬送を第一分析処理よりも優先して行うことになる。その結果、試料ラック3の第二分析装置A2側への搬送が円滑に行われることになるが、第一分析処理のキャンセルにより分析システムSのスループットが幾分か低下する。そこで、搬送装置2では、本搬送制御とともに、図7に示す搬送タイミング制御がともに実行されることで、この第一分析処理のキャンセルを可及的に回避することが可能となる。以下に、搬送タイミング制御について説明する。
【0062】
S201では、上記S105による第一分析処理のキャンセル頻度Cfを集計する。このキャンセル頻度Cfは、例えば直近の所定時間内におけるキャンセル発生の数として集計されてもよい。S201の処理が終了すると、S202へ進む。
【0063】
S202では、集計されたキャンセル頻度Cfが、所定頻度以上であるか否かが判定される。この所定頻度は、第一分析処理がキャンセルされることで分析システムSのスループットの低下が許容できない程度であると判定されるときの閾値である。S202で肯定
判定されるとS203へ進み、否定判定されるとS201以降の処理が繰り返される。
【0064】
S203では、図6に示す搬送制御において画定される所定判定時間および第二分析処理に関する所定採取時間の少なくとも何れか一方の変更が行われる。所定判定時間とは、本発明に係る搬送判定部による処理に要する時間であり、搬送制御のS104の処理に要する時間である。このS203の処理が行われていないときは、分析システムSのスループットをより良好な状態に保つために、この所定判定時間は最少時間となる基準判定時間に維持されている。しかし、S203の処理においては、所定判定時間を意図的にこの基準判定時間より長時間化する。また、所定採取時間とは、第二分析処理が行われる時間そのものであり、図5Aに示す状態では、一番目の第二分析処理において第二のノズル4Bが下降開始するタイミングT2から、二番目の第二分析処理において第二のノズル4Bが下降開始するタイミングT2までの時間である。このS203の処理が行われていないときは、分析システムSのスループットをより良好な状態に保つために、この所定採取時間は最少時間となる基準採取時間に維持されている。しかし、S203の処理においては、所定採取時間を意図的にこの基準判定時間より長時間化する。
【0065】
このように所定判定時間や、所定採取時間のように、第一分析処理における第一のノズル4Aの下降状態と、第二分析処理における第二のノズル4Bの下降状態との相関に影響を与える時間を変化させることで、搬送候補期間がばらつきやすくなる。いわば、S203の処理により、第一分析処理における第一のノズル4Aの下降タイミングに対する試料ラック3の搬送を行うタイミングが同期化された状態とならないように、すなわち非同期化されるような制御が行われることになる。この結果、図5Bに示すような第一分析処理のキャンセルをより効果的に回避することができるとともに、仮に第一分析処理のキャンセルが発生したとしても、そのキャンセルを単発的なものに抑えることができる。このS203の処理は、本発明に係る搬送タイミング制御部による処理に相当する。なお、S203の処理が行われた以降も、第一分析処理のキャンセル頻度Cfの集計は継続されている。S203の処理が終了すると、S204へ進む。
【0066】
S204では、S203の処理の結果、キャンセル頻度Cfが許容可能な低頻度状態まで推移してきたか否かが判定される。ここで肯定判定されるとS205へ進み、否定判定されるとS203以降の処理が繰り返される。この繰り返しにおけるS203の処理では、所定判定時間、所定採取時間の更なる長時間化、もしくは一度長時間化された時間の短縮化が行われる。そして、S205では、キャンセル頻度Cfが低頻度状態に回復し、分析システムSのスループットが許容しうる程度に回復したことを踏まえて、S203で長時間化した所定判定時間、所定採取時間をそれぞれの最少時間である基準判定時間、基準採取時間へ復帰させる。これにより、所要時間の最小化による分析システムSのスループットの向上が期待できる。
【0067】
以上より、上記搬送制御および搬送タイミング制御が行われることで、分析システムSのスループットを可及的に良好な状態に維持することが可能となる。なお、上記搬送タイミング制御では、S203における所定判定時間および所定採取時間の長時間化は、キャンセル頻度が所定頻度以上になったときに行われるが、この形態に代えて、搬送装置2において、常時、S203における所定判定時間および所定採取時間の長時間化を行ってもよい。その場合、所定判定時間および所定採取時間は、それぞれ基準判定時間、基準採取時間よりも長い時間であって、且つその時間の長さが一定とならないように時間経過とともにばらつくように調整される。
【実施例2】
【0068】
上記実施例1では、複数の採尿管30が搭載される試料ラック3には、採尿管30が直線上に搭載されているが、この態様に代えて、複数の採尿管30を回転駆動される回転テ
ーブル上に搭載してもよい。この場合、回転テーブルの回転により、その上の採尿管が第一分析装置A1の試料採取位置から、第二分析装置A2の試料採取位置に搬送される構成となり、その搬送に係る制御に、図6、図7に開示した搬送制御および搬送タイミング制御を実質的に適用することが可能である。
【実施例3】
【0069】
<その他の実施例>
本発明は、上述の通り、その実施形態に搬送制御および搬送タイミング制御を行うコンピュータプログラムを含む。さらには、これらのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録させた媒体も、本発明の範疇に属する。当該プログラムが記録された記録媒体については、コンピュータに、この記録媒体のプログラムを読み込ませて実行させることにより、上記搬送制御および搬送タイミング制御が可能となる。
【0070】
ここで、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラム等の情報を電気的、磁気的、光学的、機械的、または化学的作用によって蓄積し、コンピュータから読み取ることができる記録媒体をいう。このような記録媒体のうちコンピュータから取り外し可能なものとしては、例えばフロッピー(登録商標)ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R/W、DVD、ブルーレイディスク、DAT、8mmテープ、メモリカード等がある。また、コンピュータに固定された記録媒体としてハードディスクやROM(リードオンリーメモリ)等がある。
【符号の説明】
【0071】
1・・・・筐体
2・・・・搬送装置
3・・・・試料ラック
4A・・・・第一のノズル
4B・・・・第二のノズル
22a、22b・・・・レバー
24・・・・駆動モータ
30・・・・採尿管
63・・・・操作スイッチ
64・・・・ディスプレイ
70・・・・搬送制御部
74・・・・通過センサ
A1・・・・第一の分析装置
A2・・・・第二の分析装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析の対象である試料を収容する複数の試料容器を容器搭載部に搭載した状態で、搬送方向において上流側に位置し且つ第一の分析処理のために前記試料容器から試料を採取する第一採取部から、該搬送方向において該第一採取部の下流側に位置し且つ第二の分析処理のために該試料容器から試料を採取する第二採取部へ搬送する搬送装置であって、
前記第一採取部と前記第二採取部のうち一方の採取部は前記試料容器からの試料採取を所定の周期で実行する周期的採取部であり、
前記搬送装置は、
前記容器搭載部上の試料容器を前記第一採取部側から前記第二採取部側へ搬送する搬送部と、
前記搬送部による搬送が可能か否かを判定する搬送判定部と、
前記搬送判定部の判定結果に基づいて実行される、前記周期的採取部の前記所定の周期での試料採取のタイミングに対して、前記搬送部による搬送のタイミングを非同期となるように制御する搬送タイミング制御部と、
を備える、搬送装置。
【請求項2】
前記搬送判定部によって前記搬送部による搬送が可能と判定されると、該搬送が優先され前記周期的採取部による前記所定の周期での試料採取が回避される、
請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記第一採取部による試料採取の位置と前記第二採取部による試料採取の位置との間の採取位置間距離は、前記容器搭載部での前記搬送方向における試料容器間の最大距離以下である、
請求項1又は請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記搬送タイミング制御部は、前記搬送判定部によって搬送の可否を判定する所定判定時間、および前記第一採取部と前記第二採取部のうち前記周期的採取部に相当しない採取部による試料採取に関する所定採取時間のうち少なくとも何れかの時間を変化させることで、前記搬送部による搬送のタイミングを、前記周期的採取部による試料採取のタイミングに対して非同期とする、
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記搬送タイミング制御部は、該搬送タイミング制御部による搬送タイミングの非同期制御が行われていないときの前記所定判定時間である基準判定時間より、該所定判定時間を長くすることで、又は搬送タイミング制御部による搬送タイミングの非同期制御が行われていないときの前記所定採取時間である基準採取時間より、該所定採取時間を長くすることで、前記搬送部による搬送のタイミングを、前記周期的採取部による試料採取のタイミングに対して非同期とする、
請求項4に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記第一採取部が、前記周期的採取部であって、
前記第一採取部は、前記搬送部による搬送方向に沿って試料の採取位置を変更可能であり、採取位置を変更することで前記容器搭載部において該搬送方向に並べられた二箇所以上の前記試料容器のそれぞれにアクセス可能である、
請求項1から請求項5の何れか一項に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記搬送判定部が前記容器搭載部の搬送が可能ではないと判定した場合、前記第一採取部は、該容器搭載部を搬送させない状態で、該容器搭載部において前記搬送方向に沿って並べられた一の搬送容器側から、該搬送方向とは逆方向で隣接する別の搬送容器側へ、そ
の試料の採取位置を変更する、
請求項6に記載の搬送装置。
【請求項8】
前記容器搭載部は、前記複数の試料容器を直線状に並べて搭載する試料ラックである、
請求項1から請求項7の何れか一項に記載の搬送装置。
【請求項9】
前記容器搭載部は回転テーブルであって、該回転テーブルの周囲に沿って前記複数の試料容器を搭載し、
前記搬送部は、前記回転テーブルを回転させることで該回転テーブル上の前記試料容器を前記第一採取部側から前記第二採取部側へ搬送する、
請求項1から請求項7の何れか一項に記載の搬送装置。
【請求項10】
分析の対象である試料を収容する複数の試料容器を容器搭載部に搭載した状態で、搬送方向において上流側に位置し且つ第一の分析処理のために前記試料容器から試料を採取する第一採取部から、該搬送方向において該第一採取部の下流側に位置し且つ第二の分析処理のために該試料容器から試料を採取する第二採取部へ搬送する搬送方法であって、
前記第一採取部と前記第二採取部のうち一方の採取部は前記試料容器からの試料採取を所定の周期で実行する周期的採取部であり、
前記搬送方法は、
前記容器搭載部上の試料容器の前記第一採取部側から前記第二採取部側への搬送が可能か否かを判定する搬送判定ステップと、
前記搬送判定ステップにおける判定結果に基づいて実行される、前記周期的採取部の該所定の周期での試料採取のタイミングに対して、前記容器搭載部上の試料容器の前記第一採取部側から前記第二採取部側への搬送のタイミングを非同期となるように制御する搬送タイミング制御ステップと、
を含む、搬送方法。
【請求項11】
前記搬送判定ステップにおいて前記搬送が可能と判定されると、該搬送が優先され前記周期的採取部による前記所定の周期での試料採取が回避される、
請求項10に記載の搬送方法。
【請求項12】
前記第一採取部による試料採取の位置と前記第二採取部による試料採取の位置との間の採取位置間距離は、前記容器搭載部での前記搬送方向における試料容器間の最大距離以下である、
請求項10又は請求項11に記載の搬送方法。
【請求項13】
前記搬送タイミング制御ステップでは、前記搬送判定ステップにおける前記搬送の可否を判定する所定判定時間、および前記第一採取部と前記第二採取部のうち前記周期的採取部に相当しない採取部による試料採取に関する所定採取時間のうち少なくとも何れかの時間が変化させられることで、前記容器搭載部上の試料容器の前記第一採取部側から前記第二採取部側への搬送のタイミングを、前記周期的採取部による試料採取のタイミングに対して非同期とする、
請求項10から請求項12の何れか一項に記載の搬送方法。
【請求項14】
前記搬送タイミング制御ステップでは、該搬送タイミング制御ステップでの搬送タイミングの非同期制御が行われていないときの前記所定判定時間である基準判定時間より、該所定判定時間が長くされることで、又は搬送タイミング制御ステップでの搬送タイミングの非同期制御が行われていないときの前記所定採取時間である基準採取時間より、該所定採取時間が長くされることで、前記容器搭載部上の試料容器の前記第一採取部側から前記第二採取部側への搬送のタイミングを、前記周期的採取部による試料採取のタイミングに
対して非同期とする、
請求項13に記載の搬送方法。
【請求項15】
コンピュータによって、分析の対象である試料を収容する複数の試料容器を容器搭載部に搭載した状態で、搬送方向において上流側に位置し且つ第一の分析処理のために前記試料容器から試料を採取する第一採取部から、該搬送方向において該第一採取部の下流側に位置し且つ第二の分析処理のために該試料容器から試料を採取する第二採取部へ搬送するための搬送プログラムであって、
前記第一採取部と前記第二採取部のうち一方の採取部は前記試料容器からの試料採取を所定の周期で実行する周期的採取部であり、
前記搬送プログラムは、
前記コンピュータに、
前記容器搭載部上の試料容器の前記第一採取部側から前記第二採取部側への搬送が可能か否かを判定する搬送判定ステップと、
前記搬送判定ステップにおける判定結果に基づいて実行される、前記周期的採取部の該所定の周期での試料採取のタイミングに対して、前記容器搭載部上の試料容器の前記第一採取部側から前記第二採取部側への搬送のタイミングを非同期となるように制御する搬送タイミング制御ステップと、
を実行せしめる、搬送プログラム。
【請求項16】
前記搬送判定ステップにおいて前記搬送が可能と判定されると、該搬送が優先され前記周期的採取部による前記所定の周期での試料採取が回避される、
請求項15に記載の搬送プログラム。
【請求項17】
前記第一採取部による試料採取の位置と前記第二採取部による試料採取の位置との間の採取位置間距離は、前記容器搭載部での前記搬送方向における試料容器間の最大距離以下である、
請求項15又は請求項16に記載の搬送プログラム。
【請求項18】
前記搬送タイミング制御ステップでは、前記搬送判定ステップにおける前記搬送の可否を判定する所定判定時間、および前記第一採取部と前記第二採取部のうち前記周期的採取部に相当しない採取部による試料採取に関する所定採取時間のうち少なくとも何れかの時間が変化させられることで、前記容器搭載部上の試料容器の前記第一採取部側から前記第二採取部側への搬送のタイミングを、前記周期的採取部による試料採取のタイミングに対して非同期とする、
請求項15から請求項17の何れか一項に記載の搬送プログラム。
【請求項19】
前記搬送タイミング制御ステップでは、該搬送タイミング制御ステップでの搬送タイミングの非同期制御が行われていないときの前記所定判定時間である基準判定時間より、該所定判定時間が長くされることで、又は搬送タイミング制御ステップでの搬送タイミングの非同期制御が行われていないときの前記所定採取時間である基準採取時間より、該所定採取時間が長くされることで、前記容器搭載部上の試料容器の前記第一採取部側から前記第二採取部側への搬送のタイミングを、前記周期的採取部による試料採取のタイミングに対して非同期とする、
請求項18に記載の搬送プログラム。
【請求項20】
請求項15から請求項19の何れか一項に記載の搬送プログラムを記録する、コンピュータに読み取り可能な記録媒体。
【請求項21】
分析の対象である試料を収容する複数の試料容器を容器搭載部に搭載した状態で、該試
料容器内の試料の分析を行う分析装置であって、
前記容器搭載部の搬送方向において上流側に位置し、第一の分析処理のために前記試料容器から前記試料を採取する第一採取部と、
前記搬送方向において前記第一採取部の下流側に位置し、第二の分析処理のために前記試料容器から前記試料を採取する第二採取部と、
前記容器搭載部上の試料容器を前記第一採取部側から前記第二採取部側へ搬送する搬送部と、
前記搬送部による搬送が可能か否かを判定する搬送判定部と、
前記第一採取部と前記第二採取部のうち一方の採取部は前記試料容器からの試料採取を所定の周期で実行する周期的採取部であって、該周期的採取部の該所定の周期での試料採取の実行を、前記搬送判定部の判定結果に基づいて制御する採取制御部と、
前記搬送部による搬送のタイミングを、前記周期的採取部による試料採取のタイミングに対して非同期となるように制御する搬送タイミング制御部と、
を備える、分析装置。
【請求項22】
前記採取制御部は、前記搬送判定部によって前記搬送部による搬送が可能と判定されると、該搬送を優先し前記周期的採取部による前記所定の周期での試料採取を回避する、
請求項21に記載の分析装置。
【請求項23】
前記第一採取部による試料採取の位置と前記第二採取部による試料採取の位置との間の採取位置間距離は、前記容器搭載部での前記搬送方向における試料容器間の最大距離以下である、
請求項21又は請求項22に記載の分析装置。
【請求項24】
前記搬送タイミング制御部は、前記搬送判定部によって搬送の可否を判定する所定判定時間、および前記第一採取部と前記第二採取部のうち前記周期的採取部に相当しない採取部による試料採取に関する所定採取時間のうち少なくとも何れかの時間を変化させることで、前記搬送部による搬送のタイミングを、前記周期的採取部による試料採取のタイミングに対して非同期とする、
請求項21から請求項23の何れか一項に記載の分析装置。
【請求項25】
前記搬送タイミング制御部は、該搬送タイミング制御部による搬送タイミングの非同期制御が行われていないときの前記所定判定時間である基準判定時間より、該所定判定時間を長くすることで、又は搬送タイミング制御部による搬送タイミングの非同期制御が行われていないときの前記所定採取時間である基準採取時間より、該所定採取時間を長くすることで、前記搬送部による搬送のタイミングを、前記周期的採取部による試料採取のタイミングに対して非同期とする、
請求項24に記載の分析装置。
【請求項26】
分析の対象である試料を収容する複数の試料容器を容器搭載部に搭載した状態で、該試料容器内の試料の分析を行う分析方法であって、
前記容器搭載部の搬送方向において上流側で、第一の分析処理のために前記試料容器から前記試料を採取する第一採取ステップと、
前記搬送方向において前記第一採取ステップでの試料採取位置より下流側で、第二の分析処理のために前記試料容器から前記試料を採取する第二採取ステップと、
前記容器搭載部上の試料容器を前記第一採取ステップでの採取位置から前記第二採取ステップでの採取位置へ搬送する搬送ステップと、
前記搬送ステップでの搬送が可能か否かを判定する搬送判定ステップと、
前記第一採取ステップでの試料採取と前記第二採取ステップでの試料採取のうち一方の試料採取は前記試料容器から試料を所定の周期で採取する周期的採取であって、該周期的
採取の実行を、前記搬送判定ステップでの判定結果に基づいて制御する採取制御ステップと、
前記搬送ステップでの搬送のタイミングを、前記周期的採取のタイミングに対して非同期となるように制御する搬送タイミング制御ステップと、
を含む、分析方法。
【請求項27】
前記採取制御ステップでは、前記搬送判定ステップにおいて前記搬送ステップでの搬送が可能と判定されると、該搬送が優先され前記周期的採取が回避される、
請求項26に記載の分析方法。
【請求項28】
前記第一採取ステップでの試料採取位置と前記第二採取ステップでの試料採取位置との間の採取位置間距離は、前記容器搭載部での前記搬送方向における試料容器間の最大距離以下である、
請求項26又は請求項27に記載の分析方法。
【請求項29】
前記搬送タイミング制御ステップでは、前記搬送判定ステップで搬送の可否を判定する所定判定時間、および前記第一採取ステップでの試料採取と前記第二採取ステップでの試料採取のうち前記周期的採取に相当しない試料採取に関する所定採取時間のうち少なくとも何れかの時間を変化させることで、前記搬送ステップでの搬送のタイミングを、前記周期的採取のタイミングに対して非同期とする、
請求項26から請求項28の何れか一項に記載の分析方法。
【請求項30】
前記搬送タイミング制御ステップでは、該搬送タイミング制御ステップでの搬送タイミングの非同期制御が行われていないときの前記所定判定時間である基準判定時間より、該所定判定時間を長くすることで、又は搬送タイミング制御ステップでの搬送タイミングの非同期制御が行われていないときの前記所定採取時間である基準採取時間より、該所定採取時間を長くすることで、前記搬送ステップでの搬送のタイミングを、前記周期的採取のタイミングに対して非同期とする、
請求項29に記載の分析方法。
【請求項31】
コンピュータによって、分析の対象である試料を収容する複数の試料容器を容器搭載部に搭載した状態で、該試料容器内の試料の分析を行うための試料分析プログラムであって、
前記コンピュータに、
前記容器搭載部の搬送方向において上流側で、第一の分析処理のために前記試料容器から前記試料を採取する第一採取ステップと、
前記搬送方向において前記第一採取ステップでの試料採取位置より下流側で、第二の分析処理のために前記試料容器から前記試料を採取する第二採取ステップと、
前記容器搭載部上の試料容器を前記第一採取ステップでの採取位置から前記第二採取ステップでの採取位置へ搬送する搬送ステップと、
前記搬送ステップでの搬送が可能か否かを判定する搬送判定ステップと、
前記第一採取ステップでの試料採取と前記第二採取ステップでの試料採取のうち一方の試料採取は前記試料容器から試料を所定の周期で採取する周期的採取であって、該周期的採取の実行を、前記搬送判定ステップでの判定結果に基づいて制御する採取制御ステップと、
前記搬送ステップでの搬送のタイミングを、前記周期的採取のタイミングに対して非同期となるように制御する搬送タイミング制御ステップと、
を実行せしめる、試料分析プログラム。
【請求項32】
前記採取制御ステップでは、前記搬送判定ステップにおいて前記搬送ステップでの搬送
が可能と判定されると、該搬送が優先され前記周期的採取が回避される、
請求項31に記載の試料分析プログラム。
【請求項33】
前記第一採取ステップでの試料採取位置と前記第二採取ステップでの試料採取位置との間の採取位置間距離は、前記容器搭載部での前記搬送方向における試料容器間の最大距離以下である、
請求項31又は請求項32に記載の試料分析プログラム。
【請求項34】
前記搬送タイミング制御ステップでは、前記搬送判定ステップで搬送の可否を判定する所定判定時間、および前記第一採取ステップでの試料採取と前記第二採取ステップでの試料採取のうち前記周期的採取に相当しない試料採取に関する所定採取時間のうち少なくとも何れかの時間を変化させることで、前記搬送ステップでの搬送のタイミングを、前記周期的採取のタイミングに対して非同期とする、
請求項31から請求項33の何れか一項に記載の試料分析プログラム。
【請求項35】
前記搬送タイミング制御ステップでは、該搬送タイミング制御ステップでの搬送タイミングの非同期制御が行われていないときの前記所定判定時間である基準判定時間より、該所定判定時間を長くすることで、又は搬送タイミング制御ステップでの搬送タイミングの非同期制御が行われていないときの前記所定採取時間である基準採取時間より、該所定採取時間を長くすることで、前記搬送ステップでの搬送のタイミングを、前記周期的採取のタイミングに対して非同期とする、
請求項34に記載の試料分析プログラム。
【請求項36】
請求項31から請求項35の何れか一項に記載の試料分析プログラムを記録する、コンピュータに読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−252728(P2011−252728A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125228(P2010−125228)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000141897)アークレイ株式会社 (288)
【Fターム(参考)】