説明

搬送装置及びそれを有する熱間プレス成形装置

【課題】通電加熱されたワークを下流工程へ搬送する際、ワークの熱変形を防止ないし抑制することができると共に、下流工程においてワークの位置決めが容易な搬送装置及びそれを有する熱間プレス成形装置を提供すること。
【解決手段】通電位置P1で通電加熱されたワークを、通電位置P1と水平方向に沿って離隔する熱間プレス成形するための加工位置P2へ搬送する搬送装置5であって、通電加熱されたワークの長手方向両端部をクランプ自在な保持部材と、保持部材を少なくとも通電位置P1から加工位置P2へ横行させる駆動機構と、同じ高さに位置する通電位置P1と加工位置P2の間に、通電位置P1側に比べて加工位置P2側が高くなるよう傾斜して延在し、通電加熱されて加工位置P2へ向かって搬送中のワークの長手方向中間部を案内ないし支持自在な案内部材54とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置及びそれを有する熱間プレス成形装置に関し、特にダイクエンチ用の搬送装置及びそれを有する熱間プレス成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高強度が要求される車両部品を量産する工法の一つとして、熱間プレス成形工法ないしダイクエンチ工法が採用されている。ダイクエンチ工法は、鋼板を約900℃まで加熱した後、プレス成形と同時に急冷して、成形品を焼入れする工法である。また、上記鋼板の加熱には、従来、プレス成形装置とは別に設置された連続加熱炉が一般的に用いられている。
【0003】
このような加熱炉として、特許文献1の熱間プレス成形システムは、輻射加熱機を採用し、この輻射加熱機を熱間プレス成形装置の前段に該熱間プレス成形装置とは別途に設置している。また、特許文献1には、ワークの搬送装置として、「ウォーキングビーム、プッシャー& スライダー、ベルトコンベア、チェーンコンベア、プレスのトランスファーアーム」が開示されている。
【0004】
特許文献2には、加熱炉により加熱された金属板材の中間部をフォーク上に載せ、フォークを搬送方向に沿って駆動することにより、金属部材を下側から支持しながら熱間プレス機構まで搬送する搬送装置が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2006−289425号公報
【特許文献2】特開2007−175722号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
加熱されたワークは柔らかいため、加熱されたワークの搬送中、ワークにたわみ又は湾曲が発生するおそれがある。ワークにたわみが発生した状態で、ワークを熱間プレス成形工程へ搬送すると、ワークのたわんだ部分と治具や型との干渉が発生するおそれがある。なお、特許文献1には、加熱されたワークを搬送する際に生じる、このような問題点に関係する記載はない。
【0007】
特許文献2の搬送装置によれば、搬送中、金属部材はその下側から支持されているだけであるため、金属部材の位置ずれが発生し易く、熱間プレス機構において位置決めに手間が掛かるという問題、さらには、搬送速度を上げることが困難であるという問題もある。
【0008】
本発明の目的は、通電加熱されたワークを下流工程へ搬送する際、ワークの熱変形を防止ないし抑制することができると共に、下流工程においてワークの位置決めが容易な搬送装置及びそれを有する熱間プレス成形装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、第1の視点において、通電位置で通電加熱されたワークを、前記通電位置と水平方向に沿って離隔する熱間プレス成形するための加工位置へ搬送する搬送装置であって、通電加熱された前記ワークの長手方向両端部をクランプ自在な保持部材と、前記保持部材を少なくとも前記通電位置から前記加工位置へ横行させる駆動機構と、前記通電位置と前記加工位置の間に延在して、通電加熱されて前記加工位置へ向かって搬送中の前記ワークの長手方向中間部を案内ないし支持自在な案内部材と、を有する搬送装置を提供する。本発明は、第2の視点において前記搬送装置を有する熱間プレス成形装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
熱間プレス成形、特に、ダイクエンチのために加熱されたワークの両端部を保持すると、ワーク中間部が垂れ下がり、又保持力が過大であるとワークが長手方向に伸長する。本発明によれば、通電加熱されたワークの搬送時、保持部材によってワークの両端部を保持することにより、下流工程、すなわち、熱間プレス成形工程における位置決めを容易とすると共に、案内部材によってワークの中間部を支持ないし案内することにより、ワーク中間部の垂れ下がり又保持によるワークの伸張などのワークの熱変形を防止ないし抑制することができる。この結果、通電加熱されたワークを通電位置から加工位置へ搬送する際には、ワークと搬送装置の部品との干渉が防止され、又、加工位置までワークが位置決めされた状態で搬送することができるため、加工位置における位置決めが容易となり、素早く熱間プレス成形を実行することができる。また、ワークが保持状態で搬送されることにより、ワークの位置ずれが防止されるため、通電位置から加工位置へ搬送されるワークの搬送速度を高めることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の好ましい実施の形態において、少なくとも、前記加工位置は前記通電位置と同じ高さに位置し、前記案内部材は、前記通電位置と前記加工位置の間に、該通電位置側に比べて該加工位置側が高くなるよう傾斜して延在する。さらに好ましくは、ワークないしブランクの投入位置、前記通電位置、前記加工位置及びワークないし成形品の払出位置は同高さに位置している。これらの形態によれば、搬送が容易かつ効率化され、本発明による搬送装置にトランスファ方式の搬送を導入することが容易となる。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記案内部材は、前記ワークの下面と摺動可能なレールである。さらに好ましくは、複数の前記案内部材が前記ワークの長手方向に沿って並設される。本形態によれば、ワークが長尺の板材であって、保持位置の間隔が広い場合であっても、確実にワークのたわみを防止ないし抑制することができる。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態において、前記保持部材は、少なくとも前記通電位置及び前記加工位置で、前記ワークをそれぞれ保持自在であると共に、両位置間で往復動自在である。本形態によれば、保持部材を往復動させることにより、搬送装置を簡素に構成することができる。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態において、前記保持部材は複数設けられ、さらに、前記ワークの投入位置及び熱間プレス成形されたワークを払い出す払出位置で前記ワークをそれぞれ保持自在であると共に、前記投入位置と前記通電位置、前記通電位置と前記加工位置、前記加工位置と前記払出位置間をそれぞれ往復動自在である。本形態によれば、搬送装置が全体として簡素化されると共に、ワークの搬送が効率化される。また、本形態によれば、複数のワーク、すなわち、ブランク及び成形品の搬送を同期させることが容易となるため、ブランクの投入、加熱、熱間プレス及び成形品の払い出しを含む一連のサイクルの実施に要する時間が短縮される。
【0015】
本発明の好ましい実施の形態に係る搬送装置は、前記ブランクの搬送方向に沿って延在し、一対の前記保持部材が搭載された一対の平行アームを有し、前記駆動機構は、前記一対の平行アームを、前記搬送方向に沿って横行自在に駆動する搬送方向駆動機構と、前記一対の平行アームを、昇降方向に沿って往復動自在に駆動する昇降方向駆動機構と、前記保持部材が前記ワークを保持自在となるよう、前記一対の平行アームを、前記搬送及び昇降方向に直交する幅方向に沿って往復動自在に駆動する幅方向駆動機構と、を備える。本形態によれば、搬送装置がコンパクトに構成される共にワークの搬送が効率化される。
【0016】
本発明の好ましい実施の形態において、前記搬送装置は、図3(A)〜図3(C)及び図7(B)〜図7(C)を参照すると、通電加熱されたワークW1の長手方向両端部をクランプ自在な保持部材53bと、保持部材53bを少なくとも通電位置P1から加工位置P2へ横行させる駆動機構52aと、同高さに位置する通電位置P1と加工位置P2の間に、通電位置P1側に比べて加工位置P2側が高くなるよう傾斜して延在し、通電加熱されて加工位置P2へ向かって搬送中のワークW1の長手方向中間部を案内ないし支持自在な案内部材54と、を有し、保持部材53bは、少なくとも通電位置P1及び加工位置P2で、ワークW1をそれぞれ保持自在であると共に、両位置P1−P2間で往復動自在である。さらに好ましくは、保持部材53a〜53cは複数設けられ、さらに、ワークW0の投入位置P0及び熱間プレス成形されたワークW2ないし成形品を払い出す払出位置P3でワークWW0〜W2をそれぞれ保持自在であると共に、投入位置P0と通電位置P1、通電位置P1と加工位置P2、加工位置P2と払出位置P3間をそれぞれ往復動自在である。
【0017】
本発明の好ましい実施の形態において、前記熱間プレス成形装置は、ワークを熱間プレスすると共に急冷焼入れする冷却ダイを備える。この形態によれば、通電位置と加工位置が離隔して配置されているため、熱間プレス機構のダイないし冷却ダイにより、熱間プレスと同時に十分な急冷が可能であり、成形品を十分に焼入れすることができる。なお、熱間プレス成形装置は、強制冷却されるダイ、場合によっては自然冷却によってダイクエンチが実行できる温度が維持される冷却ダイを備えることが好ましい。熱間プレス成形装置は、ダイに形成された水、油又は空気等の流体が循環する通路と、前記通路に前記流体を循環させるポンプと、を備えてもよい。
【0018】
本発明の好ましい実施の形態に係る搬送装置は、前記通電位置から前記加工位置まで通電加熱された前記ワークを搬送するプロセスと、前記加工位置から前記ワークが払い出される払出位置まで該成形品を搬送するプロセスとに同期して、さらに、新たな前記ワーククを前記通電位置に投入するプロセスを行う。この形態によれば、装置へのワークないしブランクの供給プロセス、装置内での通電加熱されたワークの搬送プロセス及び装置外へのワークないし成形品の払出プロセスを、同時に実行することができるため、搬送装置ないし搬送プロセスを簡素化することができる。
【0019】
本発明の好ましい実施の形態において、前記熱間プレスは、熱間プレス時に急冷焼入れを行うダイクエンチである。
【0020】
本発明の好ましい実施の形態において、通電位置から加工位置まで、通電加熱されたブランクは、10秒以内、好ましくは5秒又は数秒以内に急速に搬送されて、ブランクの温度低下及び酸化が防止又は抑制される。
【0021】
本発明の実施の形態において、通電加熱は、熱間プレス成形可能な温度にワークを加熱すれば十分である。例えば、ワークが鋼材の場合、A1変態点から液相析出点の間、例えば、850から1200℃の間で通電加熱すればよい。また、熱間プレス機構のダイの温度は、室温から約250℃の間に設定することにより、例えば、A1点以上に加熱されたブランクを20℃/s以上の速度で約220℃以下の温度まで冷却することができ、十分な焼入れ硬化が得られる。
【0022】
本発明は、通電加熱と、熱間加工、特にダイクエンチとが可能な種々の材質、鋼系、アルミニウム系などの種々の金属製のワークの搬送に適用される。
【実施例】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の一実施例を説明する。図1は、本発明の一実施例に係る搬送装置を有する熱間プレス成形装置の外観図である。
【0024】
図1を参照すると、本発明の一実施例に係る搬送装置5を有する熱間プレス成形装置1においては、装置1内に、投入機構2からワークないしブランクが一枚ずつ供給され、通電位置でワークを通電加熱する通電加熱機構3と、通電加熱機構3の下流に熱的に離隔して配置されて前記通電位置と同じ高さに位置し且つ水平方向に沿って離隔している加工位置で熱間プレス成形を行うダイクエンチ式の熱間プレス機構4と、通電位置で通電加熱されたワークを、前記通電位置と同じ高さに位置し且つ水平方向に沿って離隔している熱間プレス成形するための加工位置へトランスファ搬送する搬送装置5とが組み込まれている。搬送装置5は、通電加熱機構3の通電位置と熱間プレス機構4の加工位置の間に配置された案内部材54を有している。なお、熱間プレス成形装置1には、同装置1の払出位置から成形品ないし完成品を取り出すための搬送コンベヤ7が付設されている。
【0025】
本発明の一実施例に係る熱間プレス成形装置1は、通電加熱及びトランスファ搬送を採用したことにより、連続加熱炉を用いた熱間プレス成形システムに比べて、設置に要する面積を半分以下にすることができる。また、本実施例の熱間プレス成形装置1によれば、通電による加熱時間及び通電位置から加工位置への搬送時間等はいずれも数秒であって、トータルで、通電加熱開始から成形終了までに要する時間は数秒〜数10秒である。一方、連続加熱炉を用いた熱間プレス成形システムによれば、加熱炉における輻射加熱に数分を要するため、トータルで、加熱開始から成形終了まで2、3分程度を要する。
【0026】
図2は、図1に示した熱間プレス成形装置の制御構成を説明するためのブロック図である。図2を参照すると、熱間プレス成形装置1は、投入機構2と、通電加熱機構3と、熱間プレス機構4と、搬送装置5と、これらの機構ないし装置2〜5を同期して動作させるための制御機構6と、を含んで構成されている。制御機構6は、さらに搬送コンベア7を制御してもよい。
【0027】
投入機構2は、ロボット機構であって、制御機構6からの指令に応じて、複数枚のワークないしブランクが収容されたマガジンから一枚ずつ取り出して、一枚ずつワークを通電加熱機構3ないし熱間プレス成形装置1におけるワークの投入位置に供給する。
【0028】
通電加熱機構3は、制御機構6からの指令に応じて、投入されたワークのクランプ及びクランプ解除を行うと共に、クランプして搬送停止されたワークに通電を行い加熱する。
【0029】
熱間プレス機構4は、制御機構6からの指令に応じて、加熱されたワークを熱間プレスし且つ急冷することにより、基本的に、一回の熱間プレスによりワークから成形品を形成する。
【0030】
搬送装置5は、制御機構6からの指令に応じて、通電加熱された前記ワークの長手方向両端部をクランプ自在であって、熱間プレス成形装置1ないし通電加熱機構3内にワークないしブランクが投入される投入位置、通電加熱機構3がワークに通電する通電位置、熱間プレス機構4がワークを熱間プレスする加工位置、及び、熱間プレス成形装置1からワークないし成形品が払い出される払出位置でそれぞれ、ワークを保持又は保持解除することができる。また、搬送装置5は、前記投入位置と前記通電位置、前記通電位置と前記加工位置、及び前記加工位置と前記払出位置の間をそれぞれ往復動する。
【0031】
制御機構6は、機構ないし装置2〜5に設けられた各種センサ、例えば、熱間プレス機構4のダイのストロークを監視するストロークセンサ、投入機構2及び搬送装置5乃至それらの駆動手段、例えば、エアシリンダの状態を検出するマイクロスイッチ、及び通電加熱機構3により加熱されたブランクの温度を検出する温度センサなどから出力される情報を受信し、これらの情報に基づいて、機構ないし装置2〜5が同期して動作するよう制御信号を発信するマイクロコンピュータを備えている。
【0032】
図3は、図1に示した搬送装置を説明するための三面図であり、図3(A)は上面図、図3(B)は正面図、図3(C)は側面図である。図4は、図3(C)の拡大図である。
図5は、図3(B)の要部拡大図である。
【0033】
図3(A)〜図3(C)、図4及び図5を参照すると、熱間プレス成形装置1においては、搬送方向に沿って上流から下流に向かって順に、ワークないしブランクが投入される投入位置P0、通電加熱機構3による通電加熱が行われる通電位置P1、熱間プレス機構4による熱間プレスないしダイクエンチが行われる加工位置P2、熱間プレス成形装置1からワークないし成形品が払い出される払出位置P3が等ピッチで設定されている。なお、投入位置P0、通電位置P1、加工位置P2及び払出位置P3は同じ高さに位置している。
【0034】
通電加熱機構3は、通電位置P1でブランクをクランプして通電する複数の電極31と、複数の電極31を昇降させてワークをクランプ及びクランプ解除させる電極昇降用シリンダ32と、上下に対向する一対の電極31を前記所定方向ないしワークの長手方向に沿って移動自在に駆動する可動クランプ用シリンダ33と、移動する一対の電極31を案内する直動ガイド34と、通電位置P1直下に配置され、ブランク中央部を支持自在であり、通電加熱によるブランク中央部の垂下を可及的に防止する支持棒35と、を有している。好ましくは、左右に対向する一対の上下電極(31,31),(31,31)のうち、一側の一対の上下電極(31,31)によるクランプ位置を固定とし、他側の一対の上下電極(31,31)をブランクの長手方向に沿って可動とする。通電加熱時、一側の一対の上下電極(31,31)は固定位置でブランクの一側を保持し、他側の一対の上下電極(31,31)は、ブランクの他側を保持しながらブランクの熱変形に応じてブランクの長手方向に沿って移動することにより、ワークに適正なテンションを印加して、ワークの歪みを可及的に防止する。
【0035】
熱間プレス機構4は、加工位置P2で通電加熱されたワークを熱間プレスして急冷する冷却ダイ41を備えている。
【0036】
搬送装置5は、ワークの搬送方向に沿って延在する一対の平行アーム51と、一対の平行アーム51に搬送方向に沿って所定間隔毎に複数個取り付けられ、一対の平行アーム51が幅方向に沿って接近する際にワークの長手方向両端部をクランプして保持し、同離隔する際に保持解除する保持部材である複数の一対のクランプ53a〜53c(図7(A)参照)と、一対の平行アーム51を、搬送方向、搬送方向に直交する昇降方向、及び搬送及び昇降方向に直交する幅方向に沿って往復動自在に駆動する駆動手段であるシリンダ52a〜52c(図7(A)及び図7(A’)参照)と、通電位置P1と加工位置P2の間に、通電位置P1側に比べて加工位置P2側が高くなるよう傾斜して延在し、通電加熱されて加工位置P2へ向かって搬送中のワークWの長手方向中間部を案内ないし支持自在な案内部材54と、を有している。
【0037】
案内部材54は、ワークの下面と摺動可能なレールであって、パイプから形成されている。特に、図3(A)を参照すると、複数の案内部材54が、ワークの長手方向長さに応じて、ワークの長手方向に沿って並設されている。特に、図5を参照すると、案内部材54の傾斜角度は、ワークの材質、加熱温度及び搬送装置5の昇降方向ストローク幅に応じて設定されている。
【0038】
複数の一対のクランプ53a〜53cは、投入位置P0、通電位置P1、加工位置P2及び払出位置P3間の間隔に対応して、一対の平行アーム51上に等ピッチで配置されている。複数の一対のクランプ53a〜53cには、ワークを挟持する爪、或いはエアシリンダによって駆動されるもの、チャック、或いは吸盤など種々の一対の保持具を採用することができる。なお、前記駆動手段としては、シリンダ52a〜52cに代えて、サーボモータ等を採用することができる。
【0039】
以上説明した、本発明の一実施例に係る搬送装置による基本的な搬送工程、及び熱間プレス成形装置による加熱及び成形工程を説明する。図6は、本発明の一実施例に係る搬送装置による基本的な搬送工程、及び熱間プレス成形装置による加熱及び成形工程を説明するためのフローチャートである。
【0040】
図3(A)〜図3(C)及び図6を参照すると、ステップS1でロボット機構等の投入機構2により最初のワークないしブランク(材料)が投入位置P0にセットされ、ステップS2でワークの投入ないしセットが検出されると搬送装置5が動作を開始し、ステップS3で搬送装置5は投入位置P0から通電位置P1へワークを搬送し、ステップS4で搬送装置5はワークの保持を解除して、通電加熱機構3がワークをクランプし、ステップS5で通電加熱機構3は搬送停止状態のワークを通電加熱し、ステップS6で通電加熱機構
3が備える温度センサ(図2参照)によってワークの温度が所定温度に到達したことが検出されると、ステップS7で通電加熱機構3は通電を停止し、ステップS8で通電加熱機構3はワークのクランプを解除し、ステップS9で通電加熱機構3ないし通電加熱装置が原位置に復帰したことが確認されると、ステップS10で搬送装置5は通電加熱されたワークを保持して通電位置P1から加工位置P2に搬送し、ステップS11で加工位置P2において熱間プレス機構4の冷却ダイ41はワークを熱間プレス成形及び急冷し、すなわち、ダイクエンチし、ステップS12で熱間プレス機構4の冷却ダイ41は原位置に復帰したことが確認されると、ステップS13で搬送装置5はワーク成形品を加工位置P2から払出位置P3に搬送ないし運び出す。
【0041】
以上説明したサイクルが繰り返し連続的に実行されると、ステップS3における投入位置P0から通電位置P1へのワークないしブランクの搬送プロセス、ステップS10における通電位置P1から加工位置P2への通電加熱済のワークの搬送プロセス、及びステップS13における加工位置P2から払出位置P3へのワークないし成形品の搬送プロセスは、同期運転されて同時に実行される。
【0042】
ステップS10で、通電加熱されたワークがプレス工程へ搬送される際、本発明による搬送装置5の案内部材54が機能する。
【0043】
以上説明した、本発明の一実施例に係る熱間プレス成形装置による搬送、加熱及び成形工程の詳細を説明する。図7(A)〜図7(H)は、本発明の一実施例に係る搬送装置による基本的に搬送工程を説明するための工程図である。
【0044】
図7(A)及び図7(A’)を参照すると、搬送装置5の原位置において、一対の平行アーム51は、下方に位置すると共に互いに離隔している。
【0045】
図7(A)から図7(B)を参照すると、一対の平行アーム51は、シリンダ52cに駆動されて幅方向に接近し、複数の一対のクランプ53a〜53cは、投入位置P0にある新規なワークないしブランクW0、通電位置P1にある通電加熱済のワークW1、加工位置P2にあるダイクエンチされたワークないし成形品W2をそれぞれクランプする。なお、複数の一対のクランプ53a〜53cは、それ自体が駆動機構を備える保持機構であってもよく、他者に駆動される保持部材であってもよい。
【0046】
図7(B)から図7(C)を参照すると、一対の平行アーム51は、シリンダ52bに駆動されて上昇する。
【0047】
図7(C)から図7(D)を参照すると、一対の平行アーム51は、シリンダ52aに駆動されて搬送方向下流側に往動して、複数の一対のクランプ53a〜53cは、それぞれ通電位置P1、加工位置P2及び払出位置P3に移動する。
【0048】
図7(D)から図7(E)を参照すると、一対の平行アーム51は、シリンダ52bに駆動されて下降する。
【0049】
図7(E)から図7(F)を参照すると、一対の平行アーム51は、シリンダ52cに駆動されて幅方向に離隔し、複数の一対のクランプ53a〜53cは、通電位置P1で新規なワークないしブランクW0、加工位置P2で通電加熱済のワークW1、払出位置P3でダイクエンチされたワークないし成形品W2をそれぞれアンクランプする。
【0050】
図7(F)から図7(G)を参照すると、一対の平行アーム51は、シリンダ52bに駆動されて上昇し、図7(G)から図7(H)を参照すると、一対の平行アーム51は、シリンダ52aに駆動されて搬送方向上流側に復動して、複数の一対のクランプ53a〜53cは、それぞれ投入位置P0、通電位置P1及び加工位置P2に復帰する。これらの間に、互いに同期して、投入位置P0に新規なワークないしブランクW00が投入され、通電位置P1ではワークW0が通電加熱され、加工位置P2ではワークW1が熱間プレスされ、払出位置P3からは、ワーク成形品W2が取り出される。
【0051】
図8は、本発明の一実施例に係る搬送装置が備える案内部材の機能を説明するための工程図である。
【0052】
図8を参照すると、図6のステップS10において、すなわち、図7(B)〜図7(C)における通電加熱されたワークW1を通電位置P1から加工位置P2へ搬送する際、ワークW1の両端部は一対のクランプ53bによって保持され、ワークW1の中間部下面は案内部材54によって支持ないし案内される。これによって、ワークW1の中間部が熱変形により大きく垂下した場合であっても、垂下した中間部は案内部材54によって下から支持されることにより、ワークW1は案内部材54と摺動しながら、通電位置P1と同高さにある加工位置P2に向かって搬送されていく。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明による搬送装置及びそれを有する熱間プレス成形装置は、金属製板材の成形ないし製造、特に、ダイクエンチに適用され、具体的には、量産性が要求される車両用部品の成形ないし製造、例えば、車両ボディの各種補強材、特に、ドアビーム及びバンパーリインフォース等の成形ないし製造に好適に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施例に係る搬送装置を有する熱間プレス成形装置の外観図である。
【図2】図1に示した熱間プレス成形装置の制御構成を説明するためのブロック図である。
【図3】(A)〜(C)は、図1に示した熱間プレス成形装置を説明するための三面図であり、(A)は上面図、(B)は正面図、(C)は側面図である。
【図4】図3(C)の拡大図である。
【図5】図3(B)の要部拡大図である。
【図6】本発明の一実施例に係る搬送装置の基本的な搬送工程等を説明するためのフローチャートである。
【図7】(A)〜(H)は、本発明の一実施例に係る搬送装置による基本的な搬送工程を説明するための工程図である。
【図8】本発明の一実施例に係る搬送装置が備える案内部材の機能を説明するための工程図である。
【符号の説明】
【0055】
1 熱間プレス成形装置
2 投入機構
3 通電加熱機構
4 熱間プレス機構
5 搬送装置(トランスファ装置)
6 制御機構
7 搬送コンベヤ
31 複数の電極
32 電極昇降用シリンダ
33 可動クランプ用シリンダ
34 直動ガイド
35 支持棒
41 ダイ,冷却ダイ
51 一対の平行アーム
52a〜52c シリンダ(駆動手段)
53a〜53c 一対のクランプ(保持部材)
54 支持棒
P0 投入位置
P1 通電位置
P2 加工位置
P3 払出位置
W0,W00,W1,W2 ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電位置で通電加熱されたワークを、前記通電位置と水平方向に沿って離隔する熱間プレス成形するための加工位置へ搬送する搬送装置であって、
通電加熱された前記ワークの長手方向両端部をクランプ自在な保持部材と、
前記保持部材を少なくとも前記通電位置から前記加工位置へ横行させる駆動機構と、
前記通電位置と前記加工位置の間に延在して、通電加熱されて前記加工位置へ向かって搬送中の前記ワークの長手方向中間部を案内ないし支持自在な案内部材と、
を有する、ことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記加工位置は前記通電位置と同じ高さに位置し、
前記案内部材は、前記通電位置と前記加工位置の間に、該通電位置側に比べて該加工位置側が高くなるよう傾斜して延在することを特徴とする請求項1記載の搬送装置。
【請求項3】
前記案内部材は、前記ワークの下面と摺動可能なレールであることを特徴とする請求項1又は2記載の搬送装置。
【請求項4】
複数の前記案内部材が前記ワークの長手方向に沿って並設されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一記載の搬送装置。
【請求項5】
前記保持部材は、少なくとも前記通電位置及び前記加工位置で、前記ワークをそれぞれ保持自在であると共に、両位置間で往復動自在である、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一記載の搬送装置。
【請求項6】
前記保持部材は複数設けられ、さらに、前記ワークの投入位置及び熱間プレス成形されたワークを払い出す払出位置で前記ワークをそれぞれ保持自在であると共に、前記投入位置と前記通電位置、前記通電位置と前記加工位置、前記加工位置と前記払出位置間をそれぞれ往復動自在である、ことを特徴とする請求項5記載の搬送装置。
【請求項7】
前記ワークの搬送方向に沿って延在し、一対の前記保持部材が搭載された一対の平行アームを有し、
前記駆動機構は、
前記一対の平行アームを、前記搬送方向に沿って横行自在に駆動する搬送方向駆動機構と、
前記一対の平行アームを、昇降方向に沿って往復動自在に駆動する昇降方向駆動機構と、
前記保持部材が前記ワークを保持自在となるよう、前記一対の平行アームを、前記搬送及び昇降方向に直交する幅方向に沿って往復動自在に駆動する幅方向駆動機構と、
を備える、
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一記載の搬送装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一記載の搬送装置を有することを特徴とする熱間プレス成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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