説明

搬送装置及びインクジェット記録装置

【課題】搬送ベルトのばたつきを防止することで記録媒体の搬送を安定化する。
【解決手段】搬送装置5は、記録媒体Kを裏面側から支持しつつ搬送方向に搬送する搬送ベルト6と、この搬送ベルト6における記録媒体Kの支持領域のうち、少なくとも一部の領域を、搬送方向Xの上流側から下流側に向かってカテナリー曲線状に支持するプラテン7とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙などの記録媒体を搬送する搬送装置と、この搬送装置を備えるインクジェット記録装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙や布などの記録媒体に画像を記録する装置として、インクジェット記録装置がある。このインクジェット記録装置は、記録ヘッドのインク吐出口から記録媒体に向かってインクを吐出することにより、記録媒体の表面に画像を記録するようになっている。
【0003】
ところで、このようなインクジェット記録装置においては、記録ヘッドと記録媒体との間隔が不均一であると、インクの着弾精度が低下したり、色ムラが発生したりしてしまう。
【0004】
そのため、図3に示すように、近年のインクジェット記録装置100は、記録ヘッド101との対向位置で記録媒体Kを搬送ベルト102の上面で支持しつつ搬送しており、平板状のプラテンで記録媒体Kを支持しつつ搬送ローラで搬送する場合と比較して、記録ヘッド101と記録媒体Kとの間隔を均一に維持するようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−141618号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に開示のインクジェット記録装置100では、記録媒体Kの搬送中に搬送ベルト102が厚み方向にばたついてしまい、記録媒体Kの搬送が不安定化する場合がある。そして、このような場合には、記録ヘッド101と記録媒体Kとの間隔を均一に維持することができずに、良好な画像記録を行えない等の問題が生じてしまう。特に、画像を高精細化し、記録媒体Kの搬送速度を高くすると、この問題は顕著となる傾向にある。
【0006】
本発明の課題は、搬送ベルトのばたつきを防止することで記録媒体の搬送を安定化することができる搬送装置及びインクジェット記録装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、搬送装置において、
記録媒体を裏面側から支持しつつ搬送方向に搬送する搬送ベルトと、
この搬送ベルトにおける記録媒体の支持領域のうち、少なくとも一部の領域を、前記搬送方向の上流側から下流側に向かってカテナリー曲線状に支持するプラテンとを備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の搬送装置において、
前記搬送ベルトの表面と平行で前記搬送方向と直交する方向に延在し、前記搬送ベルトの表面に記録媒体を案内する紡錘形の搬送ローラを備えることを特徴とする。
【0009】
ここで、紡錘形とは、中央から両端に向かって次第に細くなる略円柱状の形状をいい、軸方向に垂直な断面が略円形であれば、軸方向と平行な断面において側周面が曲線で構成されていても良いし、直線で構成されていても良いし、曲線及び直線で構成されていても良い。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の搬送装置において、
前記搬送ローラは、記録媒体を表面側から支持することを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の搬送装置において、
前記搬送ベルトは、無端ベルトであることを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載の搬送装置において、
前記搬送ベルトは、記録媒体を静電吸着しつつ搬送することを特徴とする。
【0013】
請求項6記載の発明は、インクジェット記録装置において、
請求項1〜5の何れか一項に記載の搬送装置と、
前記搬送ベルトに支持された領域の記録媒体に対し、インクを吐出する記録ヘッドとを備え、
前記プラテンは、前記支持領域のうち、少なくとも前記記録ヘッドと対向する領域をカテナリー曲線状に支持することを特徴とする。
【0014】
請求項7記載の発明は、請求項6記載のインクジェット記録装置において、
前記プラテンは、前記搬送ベルトを介して前記記録ヘッドと対向するプラテン部材を有し、
このプラテン部材は、
弾性部材によって前記記録ヘッドの側に付勢されるとともに、
この記録ヘッドの側部によって当該記録ヘッドの側への移動が拘束されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1〜7の何れか一項に記載の発明によれば、搬送ベルトのばたつきを防止することで記録媒体の搬送を安定化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1(a)は、本発明に係るインクジェット記録装置1の概略構成を示す側面図である。
【0017】
この図に示すように、インクジェット記録装置1は、記録媒体Kに画像を記録する画像記録部2と、画像記録部2に対向させて記録媒体Kを搬送方向Xに搬送する搬送装置5とを備えている。
【0018】
画像記録部2は、交互に配設された4つの記録ヘッド3,…及び照射装置4,…を有している。
記録ヘッド3は、下面に設けられた複数のインク吐出口(図示せず)から記録媒体Kに対して光硬化性のインクを吐出するものである。この記録ヘッド3は、図1(b)に示すように、ライン記録方式によって画像を記録するようになっており、記録媒体Kの幅方向Yに延在している。この幅方向Yにおける記録ヘッド3の両側部には、ベンチコロ30が突出して設けられている。
【0019】
なお、本実施の形態においては、図1(a)に示すように、搬送方向Xの最も上流側の記録ヘッド3はイエローのインクを、2番目に上流側の記録ヘッド3はマゼンダのインクを、3番目に上流側の記録ヘッド3はシアンのインクを、4番目に上流側の記録ヘッド3はブラックのインクを吐出するようになっている。また、各記録ヘッド3に対して搬送方向Xの上流側及び下流側には、記録ヘッド3の前記インク吐出口を遮光する遮光部材(図示せず)が配設されている。また、記録媒体Kの幅方向Yは、搬送方向Xと直行している。
【0020】
照射装置4は、記録ヘッド3よりも搬送方向Xの下流側に配設されている。この照射装置4は、下方の記録媒体Kに向かって光を照射する光源40を内部に備えている。なお、光源40としては、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ブラックライト、熱陰極管、冷陰極管、LED、無電極ランプ及びエキシマランプ等のうち、少なくとも1つが用いられている。
【0021】
搬送装置5は、図1(a),図2に示すように、搬送方向Xの上流側から下流側に向かって元巻きローラ50、従動ローラ51a〜51c及び搬送ベルト6をこの順に備えている。なお、これら元巻きローラ50、従動ローラ51a〜51c及び搬送ベルト6は、それぞれ記録媒体Kの幅方向Yに回転軸を有している。
【0022】
元巻きローラ50は、モータ等の駆動源(図示せず)によって回転駆動自在となっている。この元巻きローラ50には、所定幅を有する長尺な記録媒体Kが、表面を外周側に向けて巻回されている。
【0023】
従動ローラ51a〜51cは、元巻きローラ50から供給される記録媒体Kを搬送ベルト6の表面に案内するものであり、回転自在に設けられている。これら従動ローラ51a〜51cのうち、従動ローラ51a,51cは記録媒体Kを表面側から、従動ローラ51bは記録媒体Kを裏面側から支持している。
【0024】
また、従動ローラ51aは、上下動可能に設けられており、元巻きローラ50及び従動ローラ51bの間で記録媒体Kを下方に案内することによって記録媒体Kに一定のテンションを付与することができるようになっている。
【0025】
また、従動ローラ51cは、本発明における搬送ローラであり、紡錘形に形成されている。これにより、従動ローラ51cは、記録媒体Kのテンションを幅方向Yの中央側よりも端側で緩和することができるようになっている。
【0026】
なお、本実施の形態においては、従動ローラ51cの前記幅方向Yに垂直な断面は円形となっており、前記幅方向Yと平行な断面において側周面が略円弧状に形成されている。また、図2に示すように、記録媒体Kの幅方向Yの長さY0を180mmとした場合に、従動ローラ51cにおける記録媒体Kとの当接部位のうち、中央部の直径X1は31.7mm、端部の直径X2は36mmとなっており、記録媒体Kのテンションが幅方向の中央部よりも端部で約5%緩和されるようになっている。
【0027】
搬送ベルト6は、画像記録部2の下方に配設された環状の無端ベルトであり、上面で記録媒体Kを支持している。この搬送ベルト6は、ステンレス(SUS)製の基材の表面にテトラフルオロエチレン(TFE)を焼き付け処理して形成されている。搬送ベルト6の内周面には、駆動ローラ60,60及びプラテン7が内接している。
【0028】
駆動ローラ60,60は、搬送ベルト6を回転させるものであり、搬送方向Xに所定の間隔をあけて配設されている。これら駆動ローラ60,60は、従動ローラ51cと同形状に形成されており、モータ等の駆動源(図示せず)によって回転駆動自在となっている。
【0029】
プラテン7は、図1(a)に示すように、搬送ベルト6を介して記録媒体Kを裏面側から支持するものであり、インナーガイド板70を備えている。
【0030】
インナーガイド板70は、駆動ローラ60,60の間に配設されており、搬送ベルト6を上面で支持している。このインナーガイド板70の上面は、各記録ヘッド3との対向領域に凹部71を有しており、包絡面が搬送方向Xの上流側から下流側に向かってカテナリーアーチ状、即ち、上方に膨出したカテナリー形状になっている。
【0031】
ここで、カテナリー形状とは、断面がカテナリー曲線(懸垂曲線ともいう)に沿った形状を有する曲面のことである。本実施の形態においては、図1(a)の搬送方向Xと高さ方向Zとの座標平面において、インナーガイド板70における上端部の点PのX座標をX=0、搬送方向Xの下流側端部の点QのZ座標をZ=0とすると、インナーガイド板70の断面のカテナリー曲線は次式で表される。
Z=a(cosh(X/a)−1)
(但し、aは定数を示す。)
【0032】
なお、本実施の形態においては、搬送方向Xにおけるインナーガイド板70の長さL1は390mmであり、インナーガイド板70によって形成されるカテナリーアーチの高さL2は15mmとなっている。また、このインナーガイド板70は、図1(b)に示すように、記録媒体Kの幅方向Yにおいて記録媒体Kよりも長尺になっており、両側部において脚部70a,70aで支持されている。但し、図1(a)では、脚部70aの図示を省略している。
【0033】
各凹部71の内部には、図1(a)に示すように、コイルばね72及びプラテン部材73が配設されている。
コイルばね72は、本発明における弾性部材であり、プラテン部材73を記録ヘッド3の側に付勢するようになっている。なお、本実施の形態においては、コイルばね72による付勢力は500gf程度となっている。
【0034】
プラテン部材73,…は、図1(b)に示すように、正面視略凹字状に形成されており、端部73a,73aにおいて上方に突出している。
これらの端部73a,73aは、コイルばね72からの付勢によって記録ヘッド3のベンチコロ30と当接することにより、記録ヘッド3の側へのプラテン部材73の移動を拘束するようになっている。
【0035】
これら端部73a,73a間の中央部73bの上面は、記録ヘッド3と対向する領域の搬送ベルト6を支持するようになっている。より詳細には、この中央部73bは、図1(a)に示すように、他のプラテン部材73の中央部73b及びインナーガイド板70とによって、搬送方向Xの上流側から下流側に向かってカテナリーアーチ状に搬送ベルト6を支持するようになっている。
【0036】
また、搬送ベルト6と記録媒体Kとの当接部のうち、搬送方向Xの上流側縁部の上方には帯電器61が配設されており、下流側縁部の上方には除電器62が配設されている。
【0037】
帯電器61は、前記上流側縁部に沿って記録媒体Kを直流電圧で帯電させることにより、搬送ベルト6に記録媒体Kを静電吸着させるものである。また、除電器62は、前記下流側縁部に沿って記録媒体Kを除電することにより、搬送ベルト6による記録媒体Kの静電吸着を解除するものである。
【0038】
なお、搬送ベルト6よりも搬送方向Xの下流側には、回転駆動自在な巻き取りローラ(図示せず)などが配設されており、元巻きローラ50から供給される記録媒体Kを巻き取るようになっている。
【0039】
次に、本実施形態に用いられる「インク」について説明する。
本実施形態に用いられるインクは、特に「光硬化技術−樹脂・開始剤の選定と配合条件及び硬化度の測定・評価−(技術協会情報)」に記載の「光硬化システム(第4章)」の「光酸・塩基発生剤を利用する硬化システム(第1節)」、「光誘導型交互共重合(第2節)」等に適合するインクが適用可能であり、通常のラジカル重合により硬化するものであってもよい。
【0040】
具体的に、本実施形態に用いられるインクは、光としての紫外線の被照射により硬化する性質を具備する紫外線硬化型インクであり、主成分として、重合性化合物(公知の重合性化合物を含む。)と、光開始剤と、色材とを少なくとも含むものである。ただし、本実施形態に用いるインクとして、上記「光誘導型交互共重合(第2節)」に適合するインクを用いる場合には、光開始剤は除外されてもよい。
【0041】
上記光硬化型インクは、重合性化合物として、ラジカル重合性化合物を含むラジカル重合系インクとカチオン重合性化合物を含むカチオン重合系インクとに大別されるが、その両系のインクが本実施形態に用いられるインクとしてそれぞれ適用可能であり、ラジカル重合系インクとカチオン重合系インクとを複合させたハイブリッド型インクを本実施形態に用いられるインクとして適用してもよい。
【0042】
しかしながら、酸素による重合反応の阻害が少ない又は無いカチオン重合系インクのほうが機能性・汎用性に優れるため、本実施形態では、特に、カチオン重合系インクを用いている。
【0043】
なお、本実施形態に用いられるカチオン重合系インクは、具体的に、オキセタン化合物,エポキシ化合物,ビニルエーテル化合物等のカチオン重合性化合物と、光カチオン開始剤と、色材とを少なくとも含む混合物であり、上記の通り、紫外線の照射により硬化する性質を具備するものである。
【0044】
ところで、本実施形態に用いられるインク(ラジカル重合系インク,カチオン重合系インク及びハイブリッド型インクを含む。)は、上記の通り、紫外線の被照射により硬化するものであるが、必ずしもこれには限定されず、紫外線以外の光の被照射により硬化するものであってもよい。ここでいう「光」とは、広義の光であって、紫外線、電子線、X線、可視光線、赤外線等の電磁波を含むものである。つまり、本実施形態に用いられるインクには、紫外線以外の光で重合して硬化する重合性化合物と、紫外線以外の光で重合性化合物同士の重合反応を開始させる光開始剤とが適用されてもよい。紫外線以外の光で硬化する光硬化型のインクを本実施形態に用いられるインクとして用いる場合は、その光を照射する光源を本発明に係る照射部として適用しなければならない。
【0045】
次に、本実施形態に用いられる「記録媒体K」について説明する。
本実施形態に用いられる記録媒体Kとしては、通常のインクジェット記録装置に適用される普通紙,再生紙,光沢紙等の各種紙,各種布地,各種不織布,樹脂,金属,ガラス等の材質からなる記録媒体が適用可能である。記録媒体Kの形態としては、ロール状、カットシート状、板状等が適用可能である。本実施形態では、記録媒体Kとして、図1(a)に示すように、ロール状の樹脂製フィルムを用いている。
【0046】
特に、本実施形態で用いられる記録媒体Kとして、いわゆる軟包装に用いられる透明又は不透明な非吸湿性の樹脂製フィルムが適用できる。樹脂製フィルムの具体的な樹脂の種類として、ポリエチレンテレフタレート,ポリエステル,ポリオレフィン,ポリアミド,ポリエステルアミド,ポリエーテル,ポリイミド,ポリアミドイミド,ポリスチレン,ポリカーボネート,ポリ-ρ-フェニレンスルフィド,ポリエーテルエステル,ポリ塩化ビニル,ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン等が適用可能であり、さらには、これら樹脂の共重合体、これら樹脂の混合物、これら樹脂を架橋したもの等も適用可能である。中でも、樹脂製フィルムの樹脂の種類として、延伸したポリエチレンテレフタレート,ポリスチレン,ポリプロピレン,ナイロンのいずれかを選択するのが、樹脂製フィルムの透明性・寸法安定性・剛性・環境負荷・コスト等の面で好ましく、2〜100μm(好ましくは6〜50μm)の厚みを有する樹脂製フィルムを用いるのが好ましい。また、樹脂製フィルムの支持体の表面にコロナ放電処理、易接着処理等の表面処理を施してもよい。また、本実施形態に用いられる記録媒体Kとして、樹脂により表面を被覆した各種紙,顔料を含むフィルム,発泡フィルム等の不透明な公知の記録媒体も適用可能である。
【0047】
なお、本実施の形態においては、記録媒体Kとして、ナイロン、ポリエチレンまたはポリプロピレン製で、厚み20〜180μmのものを用いている。
【0048】
続いて、画像記録時のインクジェット記録装置1の動作について説明する。
まず、元巻きローラ50及び前記巻き取りローラが回転することにより、記録媒体Kを搬送方向Xに搬送する。これにより、従動ローラ51a〜51cを介して記録媒体Kが搬送ベルト6の表面に案内される。
【0049】
このとき、従動ローラ51cは記録媒体Kを表面側から支持し、搬送ベルト6は裏面側から支持するので、これら従動ローラ51c及び搬送ベルト6の協働によって記録媒体Kにテンションが加えられる。また、従動ローラ51cは紡錘形であるので、記録媒体Kのテンションが幅方向Yの中央側から端側に向かって順次緩和されるとともに、記録媒体Kが幅方向Yの中央側から端側の順に搬送ベルト6に案内される。また、搬送ベルト6における記録媒体Kの支持領域の上流側縁部に沿って帯電器61が記録媒体Kを帯電させるので、この上流側縁部の下流側で帯電させる場合と比較して、搬送ベルト6の支持領域全体で記録媒体Kが良好に静電吸着される。
【0050】
次に、駆動ローラ60,60が回転することにより、搬送ベルト6が記録媒体Kを上面で支持しつつ搬送方向Xに搬送する。
【0051】
このとき、プラテン7のインナーガイド板70及びプラテン部材73,…が搬送ベルト6における記録媒体Kの支持領域を、搬送方向Xの上流側から下流側に向かってカテナリー曲線状に支持するので、搬送ベルト6は当該支持領域において搬送方向Xの上流側から下流側に向かってカテナリー曲線状をなして記録媒体Kを搬送することとなる。そのため、この支持領域では、搬送ベルト6は接線方向にのみ応力を生じ、厚み方向には応力を生じないため、厚み方向に安定した状態となる。また、各プラテン部材73,…がコイルばね72によって記録ヘッド3の側に付勢されるとともに、記録ヘッド3のベンチコロ30によって当該記録ヘッド3の側への移動が拘束されているので、記録ヘッド3とプラテン部材73との間隔が一定に維持される。
【0052】
次に、搬送ベルト6を介してプラテン7に支持された領域の記録媒体Kに対し、記録ヘッド3がインクを吐出する。
そして、照射装置4が、記録媒体Kに対して光を照射する。これにより、記録媒体Kに着弾したインクが硬化し、記録媒体Kの表面に画像が記録される。
【0053】
以上のようなインクジェット記録装置1によれば、搬送ベルト6の支持領域を厚み方向に安定した状態とすることができるため、記録媒体Kの搬送中に搬送ベルト6が厚み方向にばたつくのを防止し、記録媒体Kの搬送を安定化することができる。よって、搬送ベルト6に支持された記録媒体Kと記録ヘッド3との間隔を一定に維持することができる。
【0054】
また、コイルばね72やベンチコロ30等によって記録ヘッド3とプラテン部材73との間隔を一定に維持することができるため、記録ヘッド3と記録媒体Kとの間隔を、確実に維持することができる。
【0055】
また、記録媒体Kを搬送ベルト6に良好に静電吸着することができるため、長尺な記録媒体Kや、軟包装用の樹脂製フィルムの記録媒体Kであっても、良好に搬送することができる。よって、記録媒体Kの搬送をいっそう安定化することができる。
【0056】
また、記録媒体Kのテンションを幅方向Yの中央側から端側に向かって順次緩和することができるため、テンションが不規則に変化するのを防止することができる。従って、記録媒体Kに皺が生じるのを防止することができる。
【0057】
また、記録媒体Kを幅方向Yの中央側から端側の順に搬送ベルト6に案内することができるため、従動ローラ51cから搬送ベルト6上に記録媒体Kを搬送するときの記録媒体Kと搬送ベルト6との間の空隙を幅方向Yの中央側から端側に向かって順次移動させることができる。従って、記録媒体Kと搬送ベルト6との間に気泡が生じるのを防止することができる。
【0058】
また、従動ローラ51c及び搬送ベルト6の協働によって記録媒体Kにテンションを加えることができるため、記録媒体Kの皺や、記録媒体K及び搬送ベルト6の間の気泡の発生を確実に防止することができる。また、搬送ベルト6は支持領域全体で記録媒体Kを静電吸着しつつ搬送することができるので、記録媒体Kの皺や、記録媒体K及び搬送ベルト6の間の気泡の発生を、より確実に防止することができる。特に、軟包装用の樹脂フィルム、中でもナイロン、ポリエチレンまたはポリプロピレン製で、厚み20〜180μmのフィルムを記録媒体Kとして連続的に搬送する場合には、上記のような気泡や皺の発生を効果的に防止することができる。
【0059】
なお、上記の実施の形態においては、記録ヘッド3がライン記録方式によって画像を記録することとして説明したが、シリアル記録方式によって画像を記録することとしても良い。
【0060】
また、プラテン7は搬送ベルト6を上方に膨出したカテナリーアーチ状に支持することとして説明したが、下方に凹んだカテナリー曲線状に支持することとしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明に係るインクジェット記録装置の概略構成を示す図であり、(a)は側面図、(b)は(a)の切断線Iにおける断面図である。
【図2】本発明に係る搬送装置5の概略構成を示す平面図である。
【図3】従来のインクジェット記録装置の概略構成を示す側面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 インクジェット記録装置
3 記録ヘッド
5 搬送装置
6 搬送ベルト
7 プラテン
30 ベンチコロ(記録ヘッドの側部)
51c 従動ローラ(搬送ローラ)
71 プラテン部材
72 コイルばね(弾性部材)
K 記録媒体
X 搬送方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を裏面側から支持しつつ搬送方向に搬送する搬送ベルトと、
この搬送ベルトにおける記録媒体の支持領域のうち、少なくとも一部の領域を、前記搬送方向の上流側から下流側に向かってカテナリー曲線状に支持するプラテンとを備えることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
請求項1記載の搬送装置において、
前記搬送ベルトの表面と平行で前記搬送方向と直交する方向に延在し、前記搬送ベルトの表面に記録媒体を案内する紡錘形の搬送ローラを備えることを特徴とする搬送装置。
【請求項3】
請求項2記載の搬送装置において、
前記搬送ローラは、記録媒体を表面側から支持することを特徴とする搬送装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の搬送装置において、
前記搬送ベルトは、無端ベルトであることを特徴とする搬送装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の搬送装置において、
前記搬送ベルトは、記録媒体を静電吸着しつつ搬送することを特徴とする搬送装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載の搬送装置と、
前記搬送ベルトに支持された領域の記録媒体に対し、インクを吐出する記録ヘッドとを備え、
前記プラテンは、前記支持領域のうち、少なくとも前記記録ヘッドと対向する領域をカテナリー曲線状に支持することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項7】
請求項6記載のインクジェット記録装置において、
前記プラテンは、前記搬送ベルトを介して前記記録ヘッドと対向するプラテン部材を有し、
このプラテン部材は、
弾性部材によって前記記録ヘッドの側に付勢されるとともに、
この記録ヘッドの側部によって当該記録ヘッドの側への移動が拘束されていることを特徴とするインクジェット記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−69466(P2007−69466A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−259265(P2005−259265)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】