説明

搬送装置及び培養容器搬送装置

【課題】搬送対象物の受け渡しを行う為の操作や機構を単純化することが可能であり、しかも搬送時に搬送対象物にかかる衝撃を緩和できる搬送装置を提供するものである。
【解決手段】搬送対象物の搬送及び受け渡しを行う搬送装置であって、搬送対象物を収納する搬送用コンテナ1と、前記搬送用コンテナ1ごと搬送対象物を搬送する搬送手段2と、前記搬送用コンテナ1に設けられ、移動可能に、或いは振動を減衰しつつ移動可能に前記搬送用コンテナを支持する支持機構3と、前記搬送手段2に設けられ、搬送時に前記搬送用コンテナ1の移動を抑制すると共に前記搬送用コンテナ1に対する衝撃を緩和し、受け渡し時には前記搬送用コンテナ1の移動抑制を解除する移動制御機構9と、を有することを特徴とする搬送装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置に関し、特に、培養容器の搬送に用いて好適な培養容器搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搬送対象物の搬送及び受け渡しを行う搬送・受け渡し装置には、搬送対象物のホルダーを支持するアーム部が設けられ、アーム部を使用してホルダーごと搬送対象物の受け渡しが行われている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−241699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、アーム部を使用して搬送対象物の受け渡しを行う為には、例えばU字型のアームを搬送対象物ホルダーの両端部に当接してホルダーを保持する必要があり、操作や機構が煩雑となる問題があった。
【0005】
本発明は、搬送対象物の受け渡しを行う為の操作や機構を単純化することが可能であり、しかも搬送時に搬送対象物にかかる衝撃を緩和できる搬送装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の搬送装置は、搬送対象物の搬送及び受け渡しを行う搬送装置であって、搬送対象物を収納する搬送用コンテナと、前記搬送用コンテナごと搬送対象物を搬送する搬送手段と、前記搬送用コンテナに設けられ、移動可能に、或いは振動を減衰しつつ移動可能に前記搬送用コンテナを支持する支持機構と、前記搬送手段に設けられ、搬送時に前記搬送用コンテナの移動を抑制すると共に前記搬送用コンテナに対する衝撃を緩和し、受け渡し時には前記搬送用コンテナの移動抑制を解除する移動制御機構と、を有することを特徴とする。
【0007】
本発明の搬送対象物の搬送及び受け渡しを行う搬送装置においては、移動可能に、或いは振動を減衰しつつ移動可能に前記搬送用コンテナを支持する支持機構を有する搬送用コンテナを搬送手段上で移動させることにより、搬送用コンテナごと搬送対象物の受け渡しをする。
【0008】
また、搬送対象物の搬送時には、搬送手段に設けられた移動制御機構を使用して、前記搬送用コンテナの移動を抑制すると共に前記搬送用コンテナに対する衝撃を緩和し、受け渡し時には前記搬送用コンテナの移動抑制を解除する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の搬送装置によれば、搬送対象物の受け渡しを行う為の操作や機構を単純化することが可能であり、しかも搬送時に搬送対象物にかかる衝撃を緩和できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明を適用した搬送装置の一実施の形態の構成例(移動制御機構が搬送手段内部に収納された状態)を示す側面図(a)及び正面図(b)である。
【図2】本発明を適用した搬送装置の別の形態の構成例(移動制御機構が搬送手段内部に収納された状態)を示す側面図である。
【図3】本発明を適用した搬送装置(移動制御機構が搬送手段内部に収納された状態)を示す側面図(駆動機構を含む)である。
【図4】(a)本発明を適用した搬送装置の構成例を示す側面図(移動制御機構が搬送手段内部から引き出された状態)である。
【0011】
(b)本発明を適用した搬送装置の構成例を示す側面図(移動制御機構が搬送手段内部に収納された状態)である。
【0012】
(c)本発明を適用した搬送装置を構成する支持機構及び移動制御機構の構成例(車輪またはローラーとローラ部材)を示す平面図である。
【0013】
(d)本発明を適用した搬送装置を構成する支持機構及び移動制御機構の構成例(車輪またはローラーとローラ部材)を示す側面図である。
【0014】
(e)本発明を適用した搬送装置を構成する支持機構及び移動制御機構の構成例(車輪またはローラーとローラ部材)を示す斜視図である。
【0015】
(f)本発明を適用した搬送装置を構成する支持機構及び移動制御機構の構成例(ベアリングとベアリング部材)を示す平面図である。
【0016】
(g)本発明を適用した搬送装置を構成する支持機構及び移動制御機構の構成例(ベアリングとベアリング部材)を示す斜視図である。
【図5】本発明を適用した培養容器搬送装置を備えた培養装置の一例を示す構成図である。
【図6】本発明を適用した培養容器搬送装置の搬送対象である培養容器の例を示す説明図である。
【図7】図4の培養装置の培養容器搬入時の制御動作を示す説明図である。
【図8】図4の培養装置の培養容器搬出時の制御動作を示す説明図である。
【図9】搬送時に搬送用コンテナの移動を抑制すると共に搬送用コンテナに対する衝撃を緩和し、受け渡し時には搬送用コンテナの移動抑制を解除する移動制御機構の構成例及び動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明を適用した培養容器搬送装置の一実施の形態の構成例を示す側面図(a)及び正面図(b)である。
【0019】
図3は、本発明を適用した培養容器搬送装置(駆動機構を含む)示す側面図である。
【0020】
図4は、(a)本発明を適用した培養容器搬送装置の構成例を示す側面図(移動制御機構9が搬送手段2の内部から引き出された状態)である。 (b)本発明を適用した培養容器搬送装置の構成例を示す側面図(移動制御機構9が搬送手段1の内部に収納された状態)である。
(c)本発明を適用した培養容器搬送装置を構成する支持機構3及び移動制御機構9の構成例(車輪またはローラー8とローラ部材9)を示す平面図である。
(d)本発明を適用した培養容器搬送装置を構成する支持機構3及び移動制御機構9の構成例(車輪またはローラー8とローラ部材9)を示す側面図である。
(e)本発明を適用した培養容器搬送装置を構成する支持機構3及び移動制御機構9の構成例(車輪またはローラー8とローラ部材9)を示す斜視図である。
(f)本発明を適用した培養容器搬送装置を構成する支持機構3及び移動制御機構9の構成例(ベアリング8とベアリング部材9)を示す平面図である。
(g)本発明を適用した培養容器搬送装置を構成する支持機構3及び移動制御機構9の構成例(ベアリング8とベアリング部材9)を示す斜視図である。
【0021】
図9は、搬送時に搬送用コンテナの移動を抑制すると共に搬送用コンテナに対する衝撃を緩和し、受け渡し時には搬送用コンテナの移動抑制を解除する本発明を適用した、移動制御機構の構成例及び動作例を示す説明図である。
【0022】
図1及び図3において、培養容器搬送装置は、培養容器(不図示)の搬送及び受け渡しを行う搬送装置であって、細胞を培養する培養容器を収納する搬送用コンテナ1と、前記搬送用コンテナ1ごと培養容器を搬送する搬送手段2と、前記搬送用コンテナ1に設けられ、移動可能に、或いは振動を減衰しつつ移動可能に前記搬送用コンテナ1を支持する支持機構3と、前記搬送手段2に設けられ、搬送時に前記搬送用コンテナ1の移動を抑制すると共に前記搬送用コンテナ1に対する衝撃を緩和し、受け渡し時には前記搬送用コンテナ1の移動抑制を解除する移動制御機構9と、を有して構成される。
本実施形態の培養容器搬送装置においては、培養容器を収納する搬送用コンテナ1に移動可能に、或いは振動を減衰しつつ移動可能に搬送用コンテナ1を支持する支持機構3が設けられ、培養容器の受け渡し時には、搬送手段2に設けられた前記搬送用コンテナ1の駆動機構4を操作し、ガイド部材5に沿って搬送用コンテナ1を移動(支持機構3を構成する車輪、ローラーまたはベアリング8を回転・移動)させるだけで、搬送用コンテナ1ごと培養容器の受け渡しをすることができる。
【0023】
なお、培養容器を収納した搬送用コンテナ1の搬送時には、搬送手段2に設けられた移動制御機構9を使用して、前記搬送用コンテナ1の移動を抑制すると共に前記搬送用コンテナ1に対する衝撃を緩和し、受け渡し時には前記搬送用コンテナ1の移動抑制を解除している。
【0024】
本実施形態の移動制御機構9としては、搬送用コンテナ1の搬送時にその支持機構3を構成する車輪、ローラーまたはベアリング8を回転可能に、かつ移動抑制状態で保持すると共に、搬送用コンテナ1の受け渡し時には支持機構3を構成する車輪、ローラーまたはベアリング8の保持を解除するローラー部材またはベアリング部材が使用できる。
【0025】
なお、本実施形態の移動制御機構9を構成するローラー部材またはベアリング部材は、搬送用コンテナ1の受け渡し時には搬送手段2の内部(収納部)に収納されることで、搬送用コンテナ1の支持機構3を構成する車輪、ローラーまたはベアリング8の保持を解除している。
【0026】
また、本実施形態の移動制御機構9を構成するローラー部材またはベアリング部材は、搬送用コンテナ1の搬送時には、収納部から搬送手段2の外部に向けて引き出され、搬送用コンテナ1の支持機構3を構成する車輪、ローラーまたはベアリング8を回転可能に、かつ移動抑制状態で保持する。
【0027】
本実施形態の駆動機構4としては例えば、搬送用コンテナ1の一部を把持するアームであり、水平方向に伸縮自在のアームを使用できる。
【0028】
よって、本実施形態の培養容器搬送装置によれば、培養容器の受け渡しを行う為の操作や機構を単純化できると共に、搬送時に培養容器にかかる衝撃を緩和できる。
【0029】
搬送用コンテナ1の支持機構3は、その構成要素である振動減衰部材6を介して搬送用コンテナ1に接合されている。よって、搬送手段2に設けられた駆動機構4を使用して培養容器を搬送用コンテナ1ごと搬送する際に、振動減衰部材6により搬送用コンテナ1の上下左右の揺れを緩和することができる。
【0030】
振動減衰部材6は、制振合金であるマグネシウム合金(本実施形態ではMg-Zn合金)またはチタンニッケル合金を材料として作製されており、搬送用コンテナ1に結合されている。また、振動減衰部材6は、支持機構3を構成する車軸7を回転可能に保持するための部材でもある。
【0031】
また、振動減衰部材6は表面に潤滑性皮膜または潤滑性金属の層を有するので、搬送用コンテナ1との接合部において潤滑性被膜または潤滑性金属の層が作用し、磨耗による接合状態の劣化を防止することができる。
【0032】
また、振動減衰部材6を前記制振合金と潤滑性金属との焼結体により構成してもよい。
【0033】
さらに、粘弾性を有する部材を振動減衰部材6と搬送用コンテナ1との接合部に設けると、振動を一層減衰させることができる。
【0034】
或いは、振動減衰部材6を前記制振合金と粘弾性材料との積層体(例えば、粘弾性材料を制振合金により挟み込んだ積層体)により構成すると、振動を一層減衰させることができる。
【0035】
搬送用コンテナ1の支持機構3を構成する車輪8は、潤滑性材料により構成されるか、或いは表面に潤滑性皮膜または潤滑性金属の層を有するので、搬送手段2に設けられた前記搬送用コンテナ1の駆動機構4を操作し、ガイド部材5に沿って搬送用コンテナ1を移動(支持機構3を構成する車輪8を回転)させる際の動きを円滑にすることができる。
【0036】
また、ガイド部材は、粘弾性材料により構成されるか、或いは表面に粘弾性材料の層を有する。よって、搬送手段2に設けられた前記搬送用コンテナ1の駆動機構4を操作し、ガイド部材5に沿って搬送用コンテナ1を移動(支持機構3を構成する車輪8を回転)させる際に搬送用コンテナ1の支持機構3を構成する振動減衰部材6がガイド部材と接触しても、衝撃を緩和することができる。
【0037】
潤滑性皮膜は、固体潤滑剤の塗膜であり、グラファイト、二硫化モリブデンおよび二硫化タングステンからなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0038】
塗膜の形成では、固体潤滑剤粉末をピグメントとし、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂およびポリイミド樹脂などの高強度・高密着性・高耐熱性の有機高分子をバインダーとした潤滑塗料が市販されており、これらの塗料を用いてウェット状態の塗膜を形成した後、焼き付けを行う。
【0039】
また潤滑性金属は、ケイ素(Si)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、モリブデン(Mo)タングステン(W)からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0040】
また、前記潤滑性金属は、振動減衰部材6表面との金属間化合物形成により結合されている。
【0041】
粘弾性を有する前記部材は、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂により構成される。
【0042】
熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、MS樹脂、耐衝撃性ポリスチレンなどのスチレン系樹脂、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタアクリレート、アクリル系共重合体などのアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル・アクリル酸エステル共重合体などの塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン・オレフィン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタアクリル酸エステル共重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・ブテン共重合体などのプロピレン系樹脂、非晶質ポリエステルなどを使用することができる。
【0043】
また、熱硬化性樹脂としては、スチレン・ブタジエン、天然ゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、エチレン・アクリルゴム、EPDMなどのエララストマーや、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、飽和および不飽和ポリエステル樹脂などを使用することができる。
【0044】
図5は、本実施形態の一例である培養容器搬送装置15(以下、搬送装置15と略称する)を備えた培養装置の一例を示す構成図である。
【0045】
この培養装置は、恒温および恒湿の雰囲気に維持されるチャンバー11を有している。チャンバー11内には、スタッカー13、搬送装置15および観察装置17が配置されている。
【0046】
スタッカー13は、基台19上に配置され、棚13aにより上下方向に仕切られている。棚13aの上面には、搬送用コンテナ21が載置されている。各搬送用コンテナ21には、細胞を培養する培養容器23が収納されている。この実施形態では、培養容器23は、図6の(a)、(b)、(c)に示すように、ウェルプレート23A、フラスコ23B、ディシュ23Cの3種類とされている。そして、各培養容器23は、同一の形状および大きさをした搬送用コンテナ21に保持部材(不図示)を介して収納されている。
【0047】
搬送装置15は、基台19上に配置されるフレーム25を有している。フレーム25の中心には、上下方向に螺子軸27が配置されている。螺子軸27には移動部材29が螺合されており、第1のモータ31により螺子軸27を回転すると上下方向に移動可能とされている。移動部材29の下側には、移動部材29とともに上下に移動する搬送プレート33(本発明の搬送手段の一例)が配置されている。この搬送プレート33は第2のモータ35により作動される駆動部分(不図示)により水平方向に移動可能とされている。
【0048】
本実施形態の培養容器搬送装置15においては、培養容器23を収納する搬送用コンテナ21に移動可能に、或いは振動を減衰しつつ移動可能に搬送用コンテナ21を支持する支持機構3が設けられ、搬送プレート33に設けられた搬送用コンテナ21の駆動機構4を操作し、ガイド部材5に沿って搬送用コンテナ21を移動(支持機構3を構成する車輪8を回転)させるだけで、搬送用コンテナ21ごと培養容器23の受け渡しをすることができる。
【0049】
よって、本実施形態の培養容器搬送装置15によれば、培養容器23の受け渡しを行う為の操作や機構を単純化できる。
【0050】
なお、培養容器を収納した搬送用コンテナ21搬送時には、搬送プレート33に設けられた移動制御機構9を使用して、前記搬送用コンテナ1の移動を抑制すると共に前記搬送用コンテナ1に対する衝撃を緩和し、受け渡し時には前記搬送用コンテナ1の移動抑制を解除している。
【0051】
本実施形態の移動制御機構9としては、搬送用コンテナ1の搬送時にその支持機構3を構成する車輪、ローラーまたはベアリング8を回転可能に、かつ移動抑制状態で保持すると共に、搬送用コンテナ1の受け渡し時には支持機構3を構成する車輪、ローラーまたはベアリング8の保持を解除するローラー部材またはベアリング部材が使用できる。
【0052】
本実施形態の駆動機構4としては例えば、搬送用コンテナ1の一部を把持するアームであり、水平方向に伸縮自在のアームを使用できる。
【0053】
よって、本実施形態の培養容器搬送装置によれば、培養容器の受け渡しを行う為の操作や機構を単純化できると共に、搬送時に培養容器にかかる衝撃を緩和できる。
【0054】
観察装置17は、基台37上に配置される顕微鏡39を有している。この顕微鏡39は、比較的倍率の低い簡易型の顕微鏡とされている。基台37上には、搬送プレート33により搬送された搬送用コンテナ21を載置する試料台41が配置されている。この試料台41は水平方向(XおよびY方向)に移動可能とされている。搬送プレート33に設けられた駆動機構4を使用して搬送プレート33から試料台41に培養容器23を搬送用コンテナ21ごと送り出して渡すことにより培養容器23内の細胞が観察可能となる。なお、観察時における搬送用コンテナの位置決め保持は、駆動機構4を使用して行えばよい。
チャンバー11の側面の顕微鏡39の上方となる位置には、搬出入口43が形成されている。この搬出入口43の奥側には、第3のモータ45により開閉されるドア47が配置されている。搬出入口43の内側には、搬送用コンテナ21を載置する載置部49が配置されている。この載置部49には、搬送用コンテナ21の有無を検出するセンサ51が配置されている。このセンサ51は載置部49に搬送用コンテナ21が載置されると検出信号を出力する。
【0055】
チャンバー11の側面の外側には、搬出入口43から搬入される培養容器23の種類、および、培養容器23で培養される細胞の種類、状態等を入力する情報入力部53が設けられている。この情報入力部53は、液晶表示部55およびタッチセンサ(不図示)を有している。また、情報入力部53の下側には、搬送プレート33の搬送速度を制御する制御部57が設けられている。この制御部57は、第1および第2のモータ31,35の回転数を制御することにより搬送プレート33の搬送速度を制御する。また、第3のモータ45を駆動してドア47の開閉を行う。
【0056】
図7は、培養容器23の搬入時の制御部57の動作を説明するフローチャートである。
【0057】
先ず、ステップS1では、搬出入口43の載置部49に搬送用コンテナ21が載置されたか否かを判断する。この判断はセンサ51からの検出信号の有無により行われ、センサ51から検出信号が出力されている時に載置部49に搬送用コンテナ21が載置されていると判断する。
【0058】
次に、ステップS2では、ユーザに培養情報の入力を要求する。この入力の要求は情報入力部53の液晶表示部55に入力事項を表示することにより行う。この実施形態では、(1)培養容器23の種類、(2)培養細胞の種類、(3)培養の状態、(4)過去の履歴の有無、(5)保管すべき棚13aを表示する。この表示に対応してユーザは液晶表示部55のタッチセンサ(不図示)をタッチすることにより所定の入力を行う。
【0059】
ここで(1)培養容器23の種類の入力とは、培養容器23がウェルプレート23A、フラスコ23B、ディシュ23Cのどれに該当するかを入力すること、および、培養容器23の大きさを入力することをいう。
【0060】
(2)培養細胞の種類の入力とは、Hela細胞等の細胞の種類を入力することをいう。
【0061】
(3)培養の状態の入力とは、継代直後、実験操作直後等の培養の状態を入力することをいう。
【0062】
(4)過去の履歴の有無の入力とは、培養容器23が過去にチャンバー11内で培養されたものである場合にその旨を入力することをいう。この実施形態では、各培養容器23に管理番号が付されており、この管理番号を入力する。
【0063】
(5)保管すべき棚13aの入力とは、保管すべき棚13aを指定することをいう。
【0064】
次に、ステップS3では、ステップS2で入力された培養情報を入力する。
【0065】
次に、ステップS4では、過去の履歴があるか否かを判断する。
【0066】
履歴がある場合には、ステップS5において、入力された管理番号から過去の履歴を検索する。この実施形態では、制御部57には、管理番号に対応する培養容器23の履歴情報、すなわち、上述した(1)培養容器23の種類、(2)培養細胞の種類、(3)培養の状態が記憶されている。
【0067】
次に、ステップS6では、履歴情報と今回入力された情報に基づいて搬送プレート33の最適な搬送速度を設定する。例えば履歴情報から培養を開始してからの経過時間および生育状況を求める。そして、今回入力された情報において例えば実験操作等が行われていない場合には、履歴情報に基づいて搬送速度を設定する。
【0068】
一方、ステップS4において過去の履歴がない場合には、ステップS7において(1)培養容器23の種類、(2)培養細胞の種類、(3)培養の状態を入力する。そして、ステップS8では、これ等の入力情報に基づいて搬送プレート33の最適な搬送速度を設定する。
【0069】
設定される最適な搬送速度T1は例えば以下の式によって表される。
【0070】
T0=f(A0,A1) …(1)
T1=f(T0,A2) …(2)
A0:培養容器23の種類における培養液がこぼれない最高速度(mm/sec)
A1:細胞の種類における振動ストレスによる影響因子
A2:培養装置に導入前の細胞の状態による影響因子
具体的には、例えば培養容器23をΦ35mmのディッシュとし、このディッシュのリミットまで培養液(培地)を入れた時、搬送の振動によって液面がディッシュの蓋に付かずにいられる最高速度T0=20mm/secであったとする。この時、例えば培養容器23内のHela細胞が振動によるストレスの影響を殆ど受けない細胞であるとすると、因子A1の影響は無視できるものとし、培養装置内での最高速度は20mm/secのままとなる。そして、この最高速度を超えないように最適な搬送速度が設定される。
【0071】
一方、ユーザからの入力情報により、培養装置への導入前に継代操作をしていたとすると、細胞は培養液中に浮遊した状態にあるので、接着した状態に比べ搬送時のストレスの影響が強くなる。従って、この影響の割合を因子A2に代入することで、最高速度T1は例えばT1=16mm/sec程度に減じられ、この速度を超えないように最適な搬送速度が設定される。
【0072】
次に、ステップS9において、ステップS6またはステップS8で求めた最適な搬送速度を記憶する。
【0073】
次に、ステップS10において、搬送プレート33を搬出入口43のドア47の手前まで搬送装置15の最高速度で移動する。
【0074】
次に、ステップS11において、搬出入口43のドア47を開く。
【0075】
次に、ステップS12において、搬送プレート33を移動し、搬送プレート33の駆動機構4を使用して搬送用コンテナ21を載置部49上から搬送プレート33上に移動させて保持する。この移動の際にも設定した搬送速度と同じ速度で移動を行う。
【0076】
次に、ステップS13において、搬送プレート33をステップS6またはステップS9で設定された搬送速度で移動し、搬送プレート33の駆動機構4を使用して搬送用コンテナ21を搬送プレート33上から、ステップS2で指定された棚13aに移動させて収容する。この移動の際にも設定した搬送速度と同じ速度で移動を行う。
【0077】
図8は、この実施形態の培養装置における培養容器23の搬出時の制御部57の動作を説明するフローチャートである。
【0078】
先ず、ステップS1では、ユーザから搬送用コンテナ21を搬出する指示が入力されたか否かを判断する。この実施形態では、ユーザが情報入力部53に、搬出する搬送用コンテナ21の管理番号を入力することにより搬送用コンテナ21を搬出する指示が入力されたと判断する。
【0079】
次に、ステップS2では、入力された管理番号から搬出する指示のあった搬送用コンテナ21の培養容器23の過去の履歴を検索する。
【0080】
次に、ステップS3では、過去の履歴を入力する。
【0081】
次に、ステップS4では、過去の履歴情報から経過時間および生育状況を求める。
【0082】
次に、ステップS5では、これ等の情報に基づいて搬送プレート33の最適な搬送速度を設定する。
【0083】
例えば培養容器23が培養装置内に保管され一定時間t2が経過した場合を考える。このとき正常な培養が進行していれば、培養容器23内では培養容器23の底面に細胞が沈下し、底面に接着した状態となる。
【0084】
この一定時間経過後の速度T2は以下の式によって示される。
【0085】
T2=f(T1,t2,A3) …(3)
T1:培養容器23の搬入時に定められた最適速度(mm/sec)
t2:培養装置への搬入からの経過時間
A3:細胞の生育状況因子
例えば搬入時の最適速度T1=16mm/secであったとし、培養容器23の搬入から10時間程度が経過し、細胞が問題なく培養容器23の底面に接着しつつあるものと推定できるものとする。この時、経過時間t2の経過に伴って細胞は培養容器23の底面に接着しているので、細胞の搬送時のストレスに対する影響は減じられているものと判断できる。従って、例えば経過時間および生育状況の因子をt2およびA3に代入することにより、一定時間経過後の最適速度T2は、例えばT2=18mm/sec程度にまで復元される。ただし、最高速度T0=20mm/sec以上になることはない。
【0086】
なお、正常な培養が起きていなかった場合には、細胞は底面に接着せず、培養液上に浮遊したままとなるため、この状況を例えば観察装置17で観察することにより搬送速度をより的確に設定することができる。
【0087】
次に、ステップS6において、設定された搬送速度を記憶する。
【0088】
次に、ステップS7において、搬送プレート33を指示された搬送用コンテナ21の棚13aまで搬送装置15の最高速度で移動し、搬送プレート33の駆動機構4を使用して搬送用コンテナ21を棚13aから搬送プレート33上に移動させて保持する。この移動の際にも設定した搬送速度と同じ速度で移動を行う。
【0089】
次に、ステップS8において、ステップS5で設定された搬送速度で、搬送アーム33を搬出入口43のドア47の手前まで移動する。
【0090】
次に、ステップS9において、搬出入口43のドア47を開く。
【0091】
次に、ステップS10において、搬送プレート33を移動し、搬送プレート33の駆動機構4を使用して搬送用コンテナ21を搬送プレート33上から載置部49上に移動させて載置する。この移動の際にも設定した搬送速度と同じ速度で移動を行う。
【0092】
上述した培養装置では、培養容器23の種類に基づいて培養容器23の搬送速度を設定するようにしたので、培養容器23内の培養液の揺れにより培養液が漏洩し培養装置内を汚染することを解消することができる。また、培養容器23内の培養液の揺れにより細胞に多大な負荷が作用し、培養容器23内の細胞が底面から剥がれ死滅するおそれを解消することができる。
【0093】
また、上述した培養装置では、細胞の情報に基づいて培養容器23の搬送速度を設定するようにしたので、培養容器23内の培養液の揺れにより細胞に多大な負荷が作用し、培養容器23内の細胞が底面から剥がれ死滅するおそれを解消することができる。
(実施形態の補足事項)
以上、本発明を上述した実施形態によって説明してきたが、本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下のような形態でも良い。
【0094】
上述した実施形態では、培養容器23の種類に基づいて培養容器23の搬送速度を設定したが、搬送の加速度及び減速度を設定してもよい。
【0095】
上述した実施形態では、本発明の培養容器用搬送装置の一実施形態を培養装置内に配置した例について説明したが、例えば、培養装置内の培養容器を外部の精密顕微鏡あるいはクリーンベンチ等に自動的に搬送する搬送装置に適用しても良い。
【0096】
上述した実施形態では、本発明の培養容器用搬送装置の一実施形態を培養装置内に配置した例について説明したが、例えば、培養装置内の培養容器を外部の精密顕微鏡あるいはクリーンベンチ等に自動的に搬送する搬送装置に適用しても良い。
【符号の説明】
【0097】
1:搬送用コンテナ、 2:搬送手段、
3:搬送用コンテナ1の支持機構、
4:搬送手段2に設けられた駆動機構
5:搬送手段2に設けられたガイド部材
6:支持機構3を構成する振動減衰部材、 7:支持機構3を構成する車軸 8:支持機構3を構成する車輪、ローラーまたはベアリング
9:搬送手段2に設けられた移動制御機構
15:搬送装置、23:培養容器、23A:ウェルプレート、
23B:フラスコ、23C:ディッシュ、33:搬送アーム、43:搬出入口、53:情報入力部、57:制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送対象物の搬送及び受け渡しを行う搬送装置であって、
搬送対象物を収納する搬送用コンテナと、
前記搬送用コンテナごと搬送対象物を搬送する搬送手段と、
前記搬送用コンテナに設けられ、移動可能に、或いは振動を減衰しつつ移動可能に前記搬送用コンテナを支持する支持機構と、
前記搬送手段に設けられ、搬送時に前記搬送用コンテナの移動を抑制すると共に前記搬送用コンテナに対する衝撃を緩和し、受け渡し時には前記搬送用コンテナの移動抑制を解除する移動制御機構と、
を有することを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
培養容器の搬送及び受け渡しを行う搬送装置であって、
細胞を培養する培養容器を収納する搬送用コンテナと、
前記搬送用コンテナごと培養容器を搬送する搬送手段と、
前記搬送用コンテナに設けられ、移動可能に、或いは振動を減衰しつつ移動可能に前記搬送用コンテナを支持する支持機構と、
前記搬送手段に設けられ、搬送時に前記搬送用コンテナの移動を抑制すると共に前記搬送用コンテナに対する衝撃を緩和し、受け渡し時には前記搬送用コンテナの移動抑制を解除する移動制御機構と、
を有することを特徴とする培養容器搬送装置。
【請求項3】
培養容器の搬送及び受け渡しを行う搬送装置であって、
細胞を培養する培養容器を保持した培養容器ホルダーを収納する搬送用コンテナと、
前記搬送用コンテナごと培養容器を保持した培養容器ホルダーを搬送する搬送手段と、
前記搬送用コンテナに設けられ、移動可能に、或いは振動を減衰しつつ移動可能に前記搬送用コンテナを支持する支持機構と、
前記搬送手段に設けられ、搬送時に前記搬送用コンテナの移動を抑制すると共に前記搬送用コンテナに対する衝撃を緩和し、受け渡し時には前記搬送用コンテナの移動抑制を解除する移動制御機構と、
を有することを特徴とする培養容器搬送装置。
【請求項4】
前記支持機構は、制振合金により構成される振動減衰部材を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記搬送対象物の受け渡し時における移動方向を案内する、前記搬送手段に設けられたガイド部材を更に有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記ガイド部材は、粘弾性材料により構成されるか、或いは表面に粘弾性材料の層を有することを特徴とする請求項5記載の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−63393(P2011−63393A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216136(P2009−216136)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】