説明

搬送装置及び搬送方法

【課題】被搬送物を鉄道車両内又は鉄道車両外へ容易に搬送し、鉄道車両の製造効率を向上する。
【解決手段】搬送装置1は、少なくとも一部が鉄道車両50内に配置されるレールユニット2、鉄道車両50に取り付けられレールユニット2を吊持する吊持ユニット3、風道Tをレールユニット2に吊り下げるための吊下ユニット4、を備え、レールユニット2は、その長手方向に沿って移動可能に吊持ユニット3に取り付けられ、吊下ユニット4は、レールユニット2に対し長手方向に沿って移動可能に取り付けられている。よって、レールユニット2の端部2aを鉄道車両50外に露出させ、この端部2aにて風道Tを吊下ユニット4で吊り下げ、レールユニット2を長手方向に沿って移動させて端部2aを鉄道車両50内に収容することで、鉄道車両50内へ風道Tが搬入されることとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両内又は鉄道車両外へ被搬送物を搬送するための搬送装置、及びこれを用いた搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の鉄道車両においては、その車内に様々な部材が設置されており、例えば特許文献1の鉄道車両では、冷暖房設備のための空調風道が車内に設置されている。このような鉄道車両を製造する場合には、例えば特許文献2に記載されているように、妻構体を側構体に溶接等で取り付ける前に、空調風道等の被搬送物を鉄道車両内に搬送する。これにより、妻構体の入口よりも広い開口部を通じて被搬送物が鉄道車両内に搬送されることとなり、よって、搬送物が鉄道車両内へ容易に搬送される。
【特許文献1】特開2007−182216号公報
【特許文献2】特開H9−76905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、上述した従来技術では、通常、作業員の手作業で被搬送物が鉄道車両内又は鉄道車両外へ搬送される。そのため、搬送作業に多くの人力及び労力がかかり、製造効率が低下してしまう問題がある。特に、空調風道等の被搬送物を搬送する場合、被搬送物が重いため、かかる問題は顕著となる。
【0004】
そこで、本発明は、鉄道車両内又は鉄道車両外へ被搬送物を容易に搬送することができ、鉄道車両の製造効率を向上することが可能な搬送装置及び搬送方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明に係る搬送装置は、少なくとも一部が鉄道車両内に配置される長尺部材と、鉄道車両に取り付けられ、長尺部材を吊持する吊持手段と、被搬送物を長尺部材に吊り下げるための吊下手段と、を備え、長尺部材は、その長手方向に沿って移動可能に吊持手段に取り付けられ、吊下手段は、長尺部材に対し長手方向に沿って移動可能に取り付けられていることを特徴とする。
【0006】
この搬送装置を用いて被搬送物を搬送する場合、例えば、長尺部材の長手方向(以下、単に「長手方向」という)が鉄道車両の前後方向に沿うように、長尺部材の一部を鉄道車両内に配置する。そして、この長尺部材を吊持手段で吊持する。続いて、鉄道車両内へ被搬送物を搬送するときには、例えば、鉄道車両外に露出した長尺部材の端部にて被搬送物を吊下手段で吊り下げ、この状態で、長尺部材を長手方向に沿って移動させて長尺部材の端部を鉄道車両内に収容する。これにより、鉄道車両内へ被搬送物が搬入されることとなる。一方、鉄道車両外へ被搬送物を搬送するときには、例えば、鉄道車両内にて被搬送物を吊下手段で吊り下げ、この状態で長尺部材を長手方向に沿って移動させて、長尺部材の端部を鉄道車両外に露出させる。これと共に、吊下手段を長手方向に沿って長尺部材の端部まで移動させて、被搬送物を長尺部材の端部まで搬送する。これにより、鉄道車両外へ被搬送物が搬出されることとなる。従って、本発明の搬送装置によれば、大掛かりな設備を用いることなく、鉄道車両内又は鉄道車両外へ被搬送物を容易に搬送することができる。さらに、搬送作業に費やされる人力及び労力が低減されるため、製造効率を向上することが可能となる。
【0007】
また、上記作用効果を好適に奏する構成として、具体的には、長尺部材は、長手方向に沿って延在する第1のレールと、該第1のレールの鉛直方向下方側に固定され長手方向に沿って延在する第2のレールとを有し、吊持手段は、第1のレールに係合する第1の車輪部を有し、吊下手段は、第2のレールに係合する第2の車輪部を有する構成が挙げられる。
【0008】
ここで、第1及び第2のレールは、長手方向に分割可能に構成されていることが好ましい。この場合、搬送装置を容易に取り扱うことができ、搬送装置の設置及び撤去を容易に行うことができる。
【0009】
このとき、隣接する第1のレールの分割部は、端部同士が連結部で互いに連結され、連結部は、長手方向における第2のレールの分割部の中央に位置していることが好ましい。この場合、連結部にあっては、継ぎ目(隣接する第2のレールの分割部間の隙間)に対して長手方向にずれることとなる。その結果、例えば被搬送物が重いものであっても、継ぎ目を基点に長尺部材が折れ曲がるのを防止することができ、長尺部材の被搬送物に対する強度及び耐久性を充分に確保することが可能となる。
【0010】
また、隣接する第2のレールの分割部は、端部同士が連結部で互いに連結され、連結部は、長手方向における第1のレールの分割部の中央に位置していることが好ましい。この場合にも、連結部は、継ぎ目(隣接する第1のレールの分割部間の隙間)に対して長手方向にずれることとなるため、継ぎ目を基点に長尺部材が折れ曲がるのを防止することができ、長尺部材の被搬送物に対する強度及び耐久性を充分に確保することが可能となる。
【0011】
また、吊下手段は、被搬送物を持ち上げるための滑車を有していることが好ましい。この場合、被搬送物が空調風道等の重いものであっても、吊下手段によって被搬送物を長尺部材に容易に吊り下げることができる。その結果、鉄道車両内又は鉄道車両外へ被搬送物を一層容易に搬送することが可能となる。
【0012】
また、吊持手段は、鉄道車両の屋根構体の垂木に取り付けられることが好ましい。この場合、あらゆる垂木構造の鉄道車両で搬送装置を用いることが可能となる。
【0013】
また、本発明に係る搬送方法は、上記搬送装置を用いて被搬送物を鉄道車両内へ搬送するための搬送方法であって、長尺部材の長手方向の端部を鉄道車両外に露出させ、この端部にて被搬送物を吊下手段で吊り下げる工程と、被搬送物を吊り下げた状態で、長尺部材を長手方向に沿って移動させ、長尺部材の端部を鉄道車両内に収容する工程と、を含むことを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る搬送方法は、上記搬送装置を用いて被搬送物を鉄道車両外へ搬送するための搬送方法であって、被搬送物を吊下手段で吊り下げる工程と、長尺部材を長手方向に沿って移動させ、長尺部材の長手方向の端部を鉄道車両外に露出させる工程と、被搬送物を吊り下げた状態で、吊下手段を長手方向に沿って長尺部材の端部まで移動させ、被搬送物を端部まで搬送する工程と、を含むことを特徴とする。
【0015】
これらの搬送方法によれば、大掛かりな設備を用いることなく、鉄道車両内又は鉄道車両外へ被搬送物を容易に搬送することができる。さらに、搬送作業に費やされる人力及び労力が低減されるため、製造効率を向上することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、被搬送物を鉄道車両内又は鉄道車両外へ容易に搬送することができ、鉄道車両の製造効率を向上することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面において、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
まず、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る搬送装置を示す側面図である。図1に示すように、本実施形態の搬送装置1は、鉄道車両50に用いられ、鉄道車両50内外へ被搬送物Tを搬送するためのものである。ここでの搬送装置1は、例えば全長15m〜20mの鉄道車両50において、妻構体51に形成された入口52を通じて空調風道Tを搬送する。この搬送装置1は、レールユニット(長尺部材)2、吊持ユニット(吊持手段)3及び吊下ユニット(吊下手段)4を備えている。なお、空調風道Tとは、例えば鉄道車両50内の屋根構体53側に設置され、冷暖房設備の風道(ダクト)として機能するものである。
【0019】
レールユニット2は、長尺棹状を呈しており、鉄道車両50の前後方向に沿うように配置されている。ここでは、レールユニット2は、その一部が鉄道車両50内に配置されている。このレールユニット2は、その長手方向(以下、単に「長手方向」という)に分割可能に構成されている。つまり、レールユニット2は、複数のレール5が互いに連結されて形成されている。
【0020】
図2は、図1の搬送装置のレールを示す側面図であり、図3は、図1のIII−IIIに沿っての断面図である。図2,3に示すように、レール5は、例えば長さが3.5mとされ、上段レール(第1のレールの分割部)6と、この上段レール6の鉛直方向下方側に例えば溶接等で固定された下段レール7(第2のレールの分割部)と、を有している。上段レール6は、吊持ユニット3と長手方向に沿って摺動可能に係合するためのものであり、上方に開口し且つ長手方向に延在する凹溝形状を呈している。下段レール7は、吊下ユニット4と長手方向に沿って摺動可能に係合するためのものであり、上方に開口し且つ長手方向に延在する凹溝形状を呈している。
【0021】
図1に戻り、レールユニット2では、長手方向に沿う一直線上に複数のレール5が配置され、隣接するレール5,5の各下段レール7,7が、ジョイントクランプ8で互いに連結されている。これにより、下段レール7の凹溝形状が連続するように複数のレール5が互いに連結されることとなる。なお、複数のレール5が互いに連結した状態での上段レール6及び下段レール7が、第1のレール及び第2のレールにそれぞれ相当する。
【0022】
また、各レール5において上段レール6の両端部には、ストッパ9が設けられている。ストッパ9は、吊持ユニット3が上段レール6の両端から逸脱するのを防止する。さらに、レールユニット2の長手方向の両端部に位置するレール5aにおいて、下段レール7aの長手方向外側の端部には、ストッパ10がそれぞれ設けられている。ストッパ10は、下段レール7aの長手方向外側の端部から吊下ユニット4が逸脱するのを防止する。
【0023】
図4は、図1の搬送装置の吊持ユニットを示す拡大図である。図4に示すように、吊持ユニット3は、鉄道車両50に複数取り付けられており、帯板11と、複車(第1の車輪部)12とを有している。帯板11は、帯状を呈し、例えば厚さ2mmの鋼板で形成されている。複車12は、複数の車輪13を含んで構成され、帯板11の延在方向の一端部11aに固定されている。
【0024】
この吊持ユニット3では、帯板11の他端部11bが、鉄道車両50の屋根構体53の垂木54に、スイベルスナップ等の金具Pを介して取り付けられ固定されている。そして、複車12の車輪13が上段レール6に摺動可能に係合している(図3参照)。これにより、レールユニット2は、吊持ユニット3で鉄道車両50に吊るされて保持(吊持)されると共に、吊持ユニット3に対し上段レール6に沿って移動(相対移動)可能とされている。ここでは、レールユニット2は、上段レール6のストッパ9,9間の距離だけ移動可能とされている。
【0025】
図5は、図1の搬送装置の吊下ユニットを示す拡大図である。図5に示すように、吊下ユニット4は、複車(第2の車輪部)14と、滑車15とを有している。複車14は、複数の車輪16を含んで構成されている。この複車14の車輪16は、レールユニット2の下段レール7に摺動可能に係合している(図3参照)。これにより、吊下ユニット4は、レールユニット2に対し下段レール7に沿って移動(相対移動)可能とされている。ここでは、吊下ユニット4は、連続する複数の下段レール7におけるストッパ10,10間の距離だけ移動可能とされている。
【0026】
滑車15は、空調風道Tを持ち上げるものであり、複車14に取り付けられている。ここでの滑車15としては、例えば動滑車が用いられている。この滑車15には、空調風道Tに巻き付けるためのロープ17が接続されている。これにより、吊下ユニット4によれば、空調風道Tを持ち上げてレールユニット2に吊り下げる(ぶら下げる)ことが可能となっている。
【0027】
次に、上述した搬送装置1を用いて空調風道Tを鉄道車両50内に搬送する場合について説明する。
【0028】
まず、鉄道車両50の垂木54に吊持ユニット3を取り付け、レールユニット2を吊持ユニット3で吊持する。ここでは、レールユニット2を、その長手方向の端部2aが入口52から鉄道車両50外に露出する状態で吊持している。換言すると、レールユニット2を、その一部が鉄道車両50内に配置する状態で吊持している。
【0029】
続いて、露出したレールユニット2の端部2aにて、吊下ユニット4で空調風道Tをレールユニット2に吊り下げる。具体的には、図6(a)に示すように、滑車15のロープ17を空調風道Tに巻き付ける。そして、図6(b)に示すように、滑車15で空調風道Tを持ち上げる。
【0030】
続いて、空調風道Tをレールユニット2の端部2aに吊り下げた状態で、端部2aから内側に向かう方向(図示左側)にレールユニット2を上段レール6に沿って移動させる。これにより、図6(c)に示すように、鉄道車両50に対してかかる方向にレールユニット2が移動され、鉄道車両50内に端部2aが収容される。よって、端部2aに吊り下げられた空調風道Tにあっては、端部2aが鉄道車両50内に収容されるのに伴って鉄道車両50内に収容され、鉄道車両50内へスムーズに搬入されることとなる。その後、端部2aより内側に向かって吊下ユニット4が下段レール7に沿って移動され、空調風道Tが鉄道車両50内の取付位置まで搬送される。
【0031】
次に、上述した搬送装置1を用いて空調風道Tを鉄道車両50外に搬送する場合について説明する。
【0032】
まず、鉄道車両50内に空調風道Tを搬送する場合と同様に、鉄道車両50の垂木54に吊持ユニット3を取り付け、レールユニット2を吊持ユニット3で吊持する。ここでは、レールユニット2を、その端部2aが鉄道車両50内に収容された状態で吊持している。つまり、レールユニット2を、その全体が鉄道車両50内に配置する状態で吊持している。
【0033】
続いて、鉄道車両50内において、取り外した空調風道Tを吊下ユニット4でレールユニット2に吊り下げる。そして、空調風道Tをレールユニット2に吊り下げた状態で、レールユニット2の端部2aまで吊下ユニット4を下段レール7に沿って移動させ、空調風道Tを端部2aまで搬送する。
【0034】
続いて、端部2aが入口52から突出されるようにレールユニット2を上段レール6に沿って移動させ、端部2aを鉄道車両50外に露出させる。これにより、端部2aに搬送されて吊り下げられた空調風道Tにあっては、端部2aが鉄道車両50外に露出するのに伴って鉄道車両50外に露出し、鉄道車両50外へスムーズに搬出されることとなる。その後、吊下ユニット4から空調風道Tが外され撤去される。
【0035】
以上、本実施形態によれば、大掛かりな設備を用いることなく、鉄道車両50内及び鉄道車両50外へ容易に空調風道Tを搬送することができる。さらに、作業員の手作業が少なくなることから、搬送作業に費やされる人力及び労力が低減されるため、鉄道車両50の製造効率を向上することが可能となる。特に、空調風道Tは重くて大型であり搬送し難いため、鉄道車両50の製造効率を向上する上記効果は極めて有効である。また、電気駆動が不要なことから、低コスト化が可能となる。さらに、搬送の際、空調風道Tを鉄道車両50にぶつけて空調風道Tが損傷してしまうということが抑制され、品質を向上することができる。
【0036】
ここで、手作業で空調風道Tを搬入・搬出する場合、床構体の高さ等による段差があることから、安全性の低下が懸念されている。この点、本実施形態においては、上述したように作業員の手作業が少なくなるため、高い安全性を確保することができる。
【0037】
また、搬送装置1では、上述したように、吊下ユニット4が、空調風道Tを持ち上げるための滑車15を有している。これにより、重い空調風道Tを搬送する場合でも、吊下ユニット4によって空調風道Tを容易に吊り下げることができる。その結果、鉄道車両50内及び鉄道車両50外へ空調風道Tを一層容易に搬送することができる。
【0038】
また、搬送装置1では、上述したように、屋根構体53の垂木54に吊持ユニット3が取り付けられる。よって、あらゆる垂木構造の鉄道車両にて搬送装置1を用いることが可能となる。また、搬送装置1を用いるに際しては垂木54に吊持ユニット3を取り付けるだけで足り、よって、搬送装置1の設置及び撤去を容易に行うことができる。
【0039】
また、搬送装置1では、上述したように、長手方向に分割可能にレールユニット2が構成されている。よって、搬送装置1の取扱性を向上することができ、搬送装置1の設置及び撤去を一層容易に行うことができる。さらに、搬送装置1を使い回しすることが可能となる。
【0040】
ところで、従来、鉄道車両50を製造する際、妻構体51を側構体に溶接等で取り付ける前に、空調風道Tを鉄道車両50内に搬送する場合がある。この場合、妻構体51の取り付け時に側構体が歪み易い。これに関し、搬送装置1では、上述したように、妻構体51の入口51を通じて空調風道Tを搬送している。つまり、妻構体51の接合後に空調風道Tを搬送している。よって、側構体の歪みを防止でき、鉄道車両50の寸法精度の低下を抑制することができる。
【0041】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。ここでは、上記実施形態と同様な説明は省略し、異なる点について主に説明する。
【0042】
図7は本発明の第2実施形態に係る搬送装置を示す側面図、図8は図7の搬送装置の第1端部レールを示す側面図、図9は図7の搬送装置の第2端部レールを示す側面図、図10は図7の搬送装置の中央レールを示す側面図である。図7に示すように、本実施形態の搬送装置30が、上記実施形態の搬送装置1(図1参照)と異なる点は、レールユニット2に代えて、被搬送物に対する強度及び耐久性が高いレールユニット32を備えた点である。
【0043】
レールユニット32は、長手方向に分割可能に構成されている。具体的には、レールユニット35は、長手方向の一端側(図示左側)の第1端部レール35aと、長手方向の他端側(図示右側)の第2端部レール35bと、これら端部レール35a,35bの間の中央レール35cと、が互いに連結されて形成されている。
【0044】
図8に示すように、第1端部レール35aでは、下段レール7が上段レール6に対し短くなっており、下段レール7の端部7aが、上段レール6の中央部分に位置している。一方、図9に示すように、第2端部レール35bでは、上段レール6が下段レール7に対し短くなっており、上段レール6の端部6aが、下段レール7の中央部分に位置している。
【0045】
図10に示すように、中央レール35cでは、上段レール6の長手方向の一端側半分と下段レール7の長手方向の他端側半分とが互いに積層されている。つまり、中央レール35cでは、上段レール6の端部6aが下段レール7の中央部分に位置し、下段レール7の端部7aが、上段レール6の中央部分に位置している。
【0046】
図7に戻り、レールユニット32では、長手方向に沿う一直線上に複数のレール35が配置され、隣接するレール35,35の各下段レール7,7の端部同士が、ジョイントクランプ(連結部)8で互いに連結されている。これにより、ジョイントクランプ8は、長手方向における上段レール6の中央に位置することになる。つまり、継ぎ目(上段レール6,6間の隙間)Qとジョイントクランプ8とは、長手方向に相互にずれる(離れる)こととなる。なお、ここでは、継ぎ目Qは、上段レール6の中央に位置されている。
【0047】
以上、本実施形態の搬送装置31では、レールユニット32を分割可能とすることで形成された継ぎ目Qが、ジョイントクランプ8に対して長手方向にずれているため、継ぎ目Qを基点にレールユニット32が変形(例えば、反りや撓み)したり、折れ曲がったりするのを防止することができる。よって、レールユニット32の空調風道Tに対する強度及び耐久性を充分に確保することが可能となる。かかる強度及び耐久性は、空調風道Tのように重い被搬送物を搬送する場合には、特に重要である。
【0048】
また、レールユニット32では、継ぎ目Qが上段レール6の中央に位置されるため、レールユニット32が継ぎ目Qを基点に折れ曲がったり等するのを最も好適に防止することができる。よって、レールユニット32の空調風道Tに対する強度及び耐久性を一層充分に確保することが可能となる。
【0049】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0050】
例えば、上記実施形態では、空調風道Tを鉄道車両50内に搬送する場合、レールユニット2を移動させて端部2aを鉄道車両50内に収容することで、空調風道Tを鉄道車両50内へ搬入したが、これに併せて、吊下ユニット4を端部2aから内側に下段レール7に沿って移動させ、空調風道Tを下段レール7に沿って搬送させてもよい。さらに、レールユニット2を移動させるのに先立って、吊下ユニット4を端部2aより内側に向かって移動させることで、空調風道Tを鉄道車両50内へ搬入してもよい。
【0051】
また、空調風道Tを鉄道車両50外に搬送する場合、吊下ユニット4をレールユニット2の端部2aまで移動させつつ、レールユニット2を移動させて端部2aを鉄道車両50外に露出させることで、空調風道Tを鉄道車両50外へ搬出してもよい。さらに、レールユニット2の端部2aを鉄道車両50外に予め露出させ、この状態で空調風道Tが吊り下げられた吊下ユニット4を端部2aまで移動させることで、空調風道Tを鉄道車両50外へ搬出してもよい。
【0052】
また、上記実施形態では、被搬送物として空調風道Tを搬送したが、これ以外の部品や部材、鉄道車両用のぎ装品等を搬送しても勿論よい。また、上記実施形態は、鉄道車両50内及び鉄道車両50外へ空調風道Tを搬送するものであるが、鉄道車両50内又は鉄道車両50外へ搬送するものでもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、複数のレール5,5をジョイントクランプ8で互いに連結してレールユニット2を構成したが、例えばボルト等の種々の連結手段で互いに連結してもよい。さらに、上記実施形態では、長手方向に分割可能にレールユニット2を構成したが、一体形成されたレールユニットとしてもよい。また、下段レール7,7の端部同士を連結したが、場合によっては、上段レール6,6の端部同士を連結してもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、レールユニット2の上段レール6及び下段レール7を凹溝形状としたが、これらレール6,7のそれぞれを断面凸形状のものとしてもよい。要は、レール6,7は、レールユニット2及び吊下ユニット4の長手方向における移動をそれぞれ案内するものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の第1実施形態に係る搬送装置を示す側面図である。
【図2】図1の搬送装置のレールを示す側面図である。
【図3】図1のIII−IIIに沿っての断面図である。
【図4】図1の搬送装置の吊持ユニットを示す拡大図である。
【図5】図1の搬送装置の吊下ユニットを示す拡大図
【図6】図1の搬送装置を用いて空調風道を鉄道車両内に搬送する場合の説明図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る搬送装置を示す側面図である。
【図8】図7の搬送装置の第1端部レールを示す側面図である。
【図9】図7の搬送装置の第2端部レールを示す側面図である。
【図10】図7の搬送装置の中央レールを示す側面図である。
【符号の説明】
【0056】
1…搬送装置、2…レールユニット(長尺部材)、3…吊持ユニット(吊持手段)、4…吊下ユニット(吊下手段)、6…上段レール(第1のレールの分割部)、7…上段レール(第2のレールの分割部)、8…ジョイントクランプ(連結部)、12…複車(第1の車輪部)、14…複車(第2の車輪部)、15…滑車、50…鉄道車両、53…屋根構体、54…垂木、T…空調風道(被搬送物)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両内又は鉄道車両外へ被搬送物を搬送するための搬送装置であって、
少なくとも一部が前記鉄道車両内に配置される長尺部材と、
前記鉄道車両に取り付けられ、前記長尺部材を吊持する吊持手段と、
前記被搬送物を前記長尺部材に吊り下げるための吊下手段と、を備え、
前記長尺部材は、その長手方向に沿って移動可能に前記吊持手段に取り付けられ、
前記吊下手段は、前記長尺部材に対し前記長手方向に沿って移動可能に取り付けられていることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記長尺部材は、前記長手方向に沿って延在する第1のレールと、該第1のレールの鉛直方向下方側に固定され前記長手方向に沿って延在する第2のレールとを有し、
前記吊持手段は、前記第1のレールに係合する第1の車輪部を有し、
前記吊下手段は、前記第2のレールに係合する第2の車輪部を有することを特徴とする請求項1記載の搬送装置。
【請求項3】
前記第1及び第2のレールは、前記長手方向に分割可能に構成されていることを特徴とする請求項2記載の搬送装置。
【請求項4】
隣接する前記第1のレールの分割部は、端部同士が連結部で互いに連結され、
前記連結部は、前記長手方向における前記第2のレールの分割部の中央に位置していることを特徴とする請求項3記載の搬送装置。
【請求項5】
隣接する前記第2のレールの分割部は、端部同士が連結部で互いに連結され、
前記連結部は、前記長手方向における前記第1のレールの分割部の中央に位置していることを特徴とする請求項3記載の搬送装置。
【請求項6】
前記吊下手段は、前記被搬送物を持ち上げるための滑車を有していることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項記載の搬送装置。
【請求項7】
前記吊持手段は、前記鉄道車両の屋根構体の垂木に取り付けられることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項記載の搬送装置。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項記載の搬送装置を用いて被搬送物を鉄道車両内へ搬送するための搬送方法であって、
前記長尺部材の前記長手方向の端部を前記鉄道車両外に露出させ、この端部にて前記被搬送物を前記吊下手段で吊り下げる工程と、
前記被搬送物を吊り下げた状態で、前記長尺部材を前記長手方向に沿って移動させ、前記長尺部材の前記端部を前記鉄道車両内に収容する工程と、を含むことを特徴とする搬送方法。
【請求項9】
請求項1〜7の何れか一項記載の搬送装置を用いて被搬送物を鉄道車両外へ搬送するための搬送方法であって、
前記被搬送物を前記吊下手段で吊り下げる工程と、
前記長尺部材を前記長手方向に沿って移動させ、前記長尺部材の前記長手方向の端部を前記鉄道車両外に露出させる工程と、
前記被搬送物を吊り下げた状態で、前記吊下手段を前記長手方向に沿って前記長尺部材の前記端部まで移動させ、前記被搬送物を前記長尺部材の前記端部まで搬送する工程と、を含むことを特徴とする搬送方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−241784(P2009−241784A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−91619(P2008−91619)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000003377)東急車輛製造株式会社 (332)
【Fターム(参考)】