説明

搬送装置

【課題】 短時間で安定した搬送を行なうことが可能な搬送装置を提供すること。
【解決手段】 無端状体をループ状に回転させることにより被搬送物を搬送する無端状体手段と、上記無端状体手段の無端状体に所定ピッチで設けられ上記被搬送物を無端状体から浮上させた状態で無端状体上に載置させる被搬送物浮上用凸部と、上記無端状体手段に対して離間・配置され上記複数個の被搬送物浮上用凸部の間に保持爪体を差し込んで被搬送物を保持して任意の場所に搬送する被搬送物搬送ユニットと、を具備したもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、プリント基板を搬送するための搬送装置に係り、特に、短時間で安定した搬送を行なうことができるように工夫したものに関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板を搬送する搬送装置としては、例えば、図6に示すようなものがある。まず、ベルトコンベア機構201があり、このベルトコンベア機構201は、一対のプーリ203、205と、これら一対のプーリ203、205に巻回されたベルト207とから構成されている。上記一対のプーリ203、205の一方には図示しない駆動モータからの回転が伝達されるように構成されている。このような構成をなすベルトコンベア機構201によって、プリント基板209を図6中矢印aで示す方向に搬送する。
【0003】
上記ベルトコンベア機構201の上方にはプリント基板搬送ユニット211が配置されている。このプリント基板搬送ユニット211は、ユニット本体213と、このユニット本体213に設けられた複数個の真空吸着パット215等から構成されている。上記プリント基板搬送ユニット211は、図示しない駆動手段によって、X・Y・Z方向に自由に移動可能に構成されている。そして、X・Y軸方向の所定位置においてZ軸方向に下降し、図6中左端まで搬送されたプリント基板209を、複数個の吸着パット215によって吸着・保持する。次いで、Z軸方向に上昇し、X・Y軸方向の任意の場所まで搬送する。そして、Z軸方向に下降して吸着パット215による吸着・保持を解除するものである。
【0004】
又、別のタイプの搬送装置を図7に示す。まず、ベルトコンベア機構301があり、このベルトコンベア機構301は、一対のプーリ303、305と、これら一対のプーリ303、305に巻回されたベルト307とから構成されている。上記一対のプーリ303、305の一方には図示しない駆動モータからの回転が伝達されるように構成されている。このような構成をなすベルトコンベア機構301によって、プリント基板309を図7中矢印aで示す方向に搬送する。
【0005】
上記ベルトコンベア機構301の所定位置にはリフト装置311が設置されている。このリフト装置311は、シリンダー機構313とシリンダー装置313のシリンダーロッド315に連結されたプレート317等から構成されている。このリフト装置311によって、ベルトコンベア機構301によって所定位置まで搬送されたプリント基板309を所定量だけ上昇させるものである。
【0006】
上記ベルトコンベア機構301の上方にはプリント基板搬送ユニット321が配置されている。このプリント基板搬送ユニット321は、ユニット本体323と、このユニット本体323に設けられた一対のガイド325、325等から構成されている。上記プリント基板搬送ユニット321は、図示しない駆動手段によって、X・Y・Z方向に自由に移動可能に構成されている。そして、X・Y軸方向の所定位置においてZ軸方向に下降し、図6中左端まで搬送されると共にリフト装置311によって上昇せられたプリント基板209を、一対のガイド325、325によって保持する。次いで、Z軸方向に上昇し、X・Y軸方向の任意の場所まで搬送する。そして、Z軸方向に下降して一対のガイド325、325による保持を解除するものである。
【0007】
尚、この種の搬送装置を開示するものとして、例えば、特許文献1がある。
【0008】
【特許文献1】特開平11−284397号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来の構成によると次のような問題があった。
まず、最初の従来例の場合であるが、この場合には、プリント基板209に反りが有るような場合には、エアー漏れによって、吸着パット215による吸着・保持が損なわれることがあり、安定した搬送ができないことがあった。
又、吸着パット215の配置は、プリント基板209の品種によって異なっており、よって、取り扱うプリント基板209の品種が変更されるたびに、吸着パットの配置を変更しなければならない等、煩雑な段取作業を余儀なくされてしまうという問題があった。
又、二番目の従来例の場合には、プリント基板搬送ユニット321の他にリフト装置311が必要となってしまい、構成が複雑化すると共に、リフト装置311による上昇動作分だけ時間が掛かってしまい、搬送動作に長時間を要してしまうという問題があった。又、リフト装置311を設置する関係上、ベルトコンベア機構301の下方空間を有効利用して各種作業を行なうことができないという問題もあった。
又、この場合にも、プリント基板209の品種が変更された場合には、プレート217を別の種類のものに変更しなければならない等、煩雑な段取作業を余儀なくされてしまうという問題があった。
【0010】
本発明はこのような点に基づいてなされたものでその目的とするところは、短時間で安定した搬送を行なうことができ、且つ、煩雑な段取作業を不要とすることが可能な搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するべく本願発明の請求項1による搬送装置は、無端状体をループ状に回転させることにより被搬送物を搬送する無端状体手段と、上記無端状体手段の無端状体に所定ピッチで設けられ上記被搬送物を無端状体から浮上させた状態で無端状体上に載置させる被搬送物浮上用凸部と、上記無端状体手段に対して離間・配置され上記複数個の被搬送物浮上用凸部の間に保持爪体を差し込んで被搬送物を保持して任意の場所に搬送する被搬送物搬送ユニットと、を具備したことを特徴とするものである。
又、請求項2による搬送装置は、請求項1記載の搬送装置において、上記被搬送物浮上用凸部は、大径凸部と該大径凸部より突設された小径凸部とから構成されていて、大径凸部と小径凸部との間の段付部上に上記被搬送物を載置するものであることを特徴とするものである。
又、請求項3による搬送装置は、請求項1又は請求項2記載の搬送装置において、上記無端状体はベルトであることを特徴とするものである。
又、請求項4による搬送装置は、請求項1又は請求項2記載の搬送装置において、上記無端状体はチェーンであることを特徴とするものである。
又、請求項5による搬送装置は、請求項1〜請求項4の何れかに記載の搬送装置において、上記被搬送物はプリント基板であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
以上詳述したように本願発明による搬送装置によると、無端状体をループ状に回転させることにより被搬送物を搬送する無端状体手段と、上記無端状体手段の無端状体に所定ピッチで設けられ上記被搬送物を無端状体から浮上させた状態で無端状体上に載置させる被搬送物浮上用凸部と、上記無端状体手段に対して離間・配置され上記複数個の被搬送物浮上用凸部の間に保持爪体を差し込んで被搬送物を保持して任意の場所に搬送する被搬送物搬送ユニットと、を具備した構成になっているので、まず、被搬送物の搬送動作がより安定したものになった。これは、一対の保持爪体によって、被搬送物を下方から引っ掛けて保持するような構成になっているからであり、仮に、被搬送物に反りが有るような場合であっても、何等問題なくこれを保持して搬送することができるからである。又、被搬送物を保持爪体によって保持するだけの構成であるので、被搬送物の大きさ等品種が変更されても、保持爪体側に何等変更を施す必要はなく、従来余儀なくされていた煩雑な段取作業が不要になるものである。
又、被搬送物の保持・搬送に際して、特に、被搬送物を上昇させるような動作を行なう必要はない。これは、被搬送物が被搬送物浮上用凸部によって浮上した状態にあるからである。よって、搬送動作に長時間を要してしまうという問題を解決することができる。
又、無端状体手段の下方の空間は有効利用可能であるので、そこに各種処理装置を設けることができ、それによって、スペースの有効利用を図ることができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図1乃至図5を参照して本発明の一実施の形態を説明する。この実施の形態は、本願発明をプリント基板製造ラインに組み込んだ例を示すものである。
まず、基台1があり、この基台1上には、第1チェーンコンベア機構3と、第2チェーンコンベア機構5が設置されている。
【0014】
上記第1チェーンコンベア機構3は、一対のチェーン7、7をループ状に回転させる構成をなしている。図1では片側のチェーン7のみを示している。上記チェーン7は、3箇所に設置されたスプロケット9、11、13に巻回されていて、又、回転体15、17に支持されている。図示しない反対側のチェーン7も同様の構成にて張設されている。又、図示しない駆動モータによって、スプロケット9が回転駆動され、それによって、チェーン7、7が、図1中矢印bで示す方向にループ状に回転するものである。
【0015】
上記第2チェーンコンベア機構5は、一対のチェーン21、21をループ状に回転させる構成をなしている。図1では片側のチェーン21のみを示している。上記チェーン21は、3箇所に設置されたスプロケット23、25、27に巻回されていて、又、回転体29、31に支持されている。図示しない反対側のチェーン21も同様の構成にて張設されている。又、図示しない駆動モータによって、スプロケット23が回転駆動され、それによって、チェーン21、21が、図1中矢印cで示す方向にループ状に回転するものである。
【0016】
上記チェーン21、21には、被搬送物浮上用凸部41が所定のピッチで取り付けられている。
【0017】
上記被搬送物浮上用凸部41は、図2に示すような形状をなしている。すなわち、大径凸部43があり、この大径凸部43には小径凸部45が突設されている。そして、上記大径凸部43と小径凸部45との間の段付部47上に、プリント基板51を載置するものである。それによって、プリント基板51をチェーン21より僅かに浮上させた状態で載置させることを可能にするものである。又、上記第2チェーンコンベア機構5の下方には、基板プリヒート装置61と溶剤塗布装置63が設置されている。
【0018】
上記第1チェーンコンベア機構3と第2チェーンコンベア機構5の高さをみてみると、第1チェーンコンベア機構3のチェーン7、7の高さと、第2チェーンコンベア機構5の段付部47の高さが一致するように調整されている。
【0019】
上記第2チェーンコンベア機構5の上方には被搬送物搬送ユニット71が配置されている。この被搬送物搬送ユニット71は、図示しない駆動手段によって、X・Y・Z方向に自由に移動可能に構成されている。以下、この被搬送物搬送ユニット71の構成を説明する。
【0020】
図4、図5に示すように、まず、ユニット本体73があり、このユニット本体73の下面側には、一対の保持爪体75、75が離接可能に設置されている。この内、一方の保持爪体75は固定されており、他方の保持爪体75は移動可能に構成されている。すなわち、図5に示すように、ユニット本体73の上には駆動モータ77が設置されている。この駆動モータ77の回転軸79には、 プーリ81が固着されている。このプーリ81には別のプーリ83が対向・配置されていて、これらプーリ83、85にはベルト87が巻回されている。
【0021】
上記プーリ83にはボールネジ87が固着されていて、このボールネジ87にはボールナット89が螺合している。既に説明した他方の保持爪体75はこのボールナット89に固着されている。そして、駆動モータ77を適宜の方向に適当量回転させることにより、他方の保持爪体75を移動させて、一方の保持爪体75との間隔を調整するものである。
【0022】
上記保持爪体75であるが、図3、図4に示すように、3個の保持爪体要素91が取り付けられていて、各保持爪体要素91には数個(この実施の形態では5個)の保持爪93が設けられている。
尚、図3では1個の保持爪体要素91を示している。
【0023】
上記保持爪93のピッチは、前述した被搬送被搬送物浮上用凸部41のピッチに対応している。具体的には、隣接する被搬送被搬送物浮上用凸部41、41の間に保持爪93が入り込むことができるようなものである。
【0024】
以上の構成を基にその作用を説明する。
まず、図示しない製造工程を経て、プリント基板51が第1チェーンコンベア機構3上に搬入される。第1チェーンコンベア機構3上に搬入されたプリント基板51は、第1チェーンコンベア機構3によって、図1中右方向に搬送されていく。そして、第2チェーンコンベア機構5上に搬入される。
【0025】
第2チェーンコンベア機構5上に搬入されたプリント基板51は、第2チェーンコンベア機構5によって、図1中右方向に搬送されながら、基板プリヒート装置61と溶剤塗布装置63とによって、所定の処理が施される。
【0026】
次に、所定の処理が施されたプリント基板51を被搬送物搬送ユニット71によって保持して、図示しない別の場所まで搬送する。具体的には、被搬送物搬送ユニット71をX・Y軸方向の所定位置に移動させる。次いで、駆動モータ77を駆動して、一対の保持爪体75、75の間隔を拡大する。次いで、被搬送物搬送ユニット71をZ軸方向に下降させる。そして、駆動モータ77を駆動して、一対の保持爪体75、75の間隔を狭めることにより、保持爪体75、75の保持爪93を隣接する被搬送被搬送物浮上用凸部41、41の間に差し込む。次いで、被搬送物搬送ユニット71をZ軸方向に上昇させると共に、X・Y軸方向の任意の場所まで搬送する。そして、被搬送物搬送ユニット71をZ軸方向に下降させて、一対の保持爪体75、75の間隔を拡大させる。それによって、保持していたプリント基板51をその場所に置くことができる。
【0027】
以上本実施の形態によると次のような効果を奏することができる。
まず、プリント基板51の搬送動作がより安定したものになった。これは、一対の保持爪体75、75によって、プリント基板51を下方から引っ掛けて保持するような構成になっているからであり、仮に、プリント基板51に反りが有るような場合であっても、何等問題なくこれを保持して搬送することが可能になった。
又、プリント基板51を保持爪体75、75によって挟むようにして保持するだけの構成であるので、プリント基板51の大きさ等品種が変更されても、保持爪体75、75側に何等変更を施す必要はなく、従来余儀なくされていた煩雑な段取作業が不要になるものである。
又、プリント基板51の保持・搬送に際して、特に、プリント基板51を上昇させるような動作を行なう必要はなくなった。これは、プリント基板51が複数個の被搬送被搬送物浮上用凸部41によって、予め浮上した状態に保持されているからである。よって、搬送動作に長時間を要してしまうという問題を解決することができるものである。
又、第2チェーンコンベア機構5の下方の空間は有効利用可能であるので、本実施の形態のように、そこに基板プリヒート装置61と溶剤塗布装置63を設置して作業を行なわせることができる。それによって、スペースの有効利用を図ることができるものである。
【0028】
尚、本発明は前記一実施の形態に限定されるものではない。
例えば、図1に示した構成は一例であり、プリント基板の製造ラインとしては様々な構成がある。
又、前記一実施の形態では被搬送物としてプリント基板を例に挙げて説明したが、それに限定されるもではなく、様々なものが想定される。
又、被搬送物浮上用凸部の構成としても図示したものは一例であり、様々な形状のものが考えられる。例えば、テーパ状(円錐形状の頂部を切断したような形状)に形成したものが考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、例えば、プリント基板を搬送するための搬送装置に係り、特に、短時間で安定した搬送を行なうことができるように工夫したものに関し、例えば、プリント基板の製造ラインにおける搬送装置に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施の形態を示す図で、搬送装置をプリント基板製造ラインに組み込んだ全体の構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施の形態を示す図で、被搬送物浮上用凸部の構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施の形態を示す図で、被搬送物搬送ユニットの構成を示す斜視図である。
【図4】本発明の一実施の形態を示す図で、被搬送物搬送ユニットの構成を示す側面図である。
【図5】本発明の一実施の形態を示す図で、被搬送物搬送ユニットの構成を示す正面図である。
【図6】従来例を示す図で、プリント基板搬送装置の構成を示す正面図である。
【図7】従来例を示す図で、プリント基板搬送装置の構成を示す正面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 基台
3 チェーンコンベア機構
5 チェーンコンベア機構
7 チェーン
21 チェーン
41 被搬送物浮上用凸部
51 プリント基板
71 被搬送物搬送ユニット
75 保持爪体
91 保持爪体要素
93 保持爪













【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状体をループ状に回転させることにより被搬送物を搬送する無端状体手段と、
上記無端状体手段の無端状体に所定ピッチで設けられ上記被搬送物を無端状体から浮上させた状態で無端状体上に載置させる被搬送物浮上用凸部と、
上記無端状体手段に対して離間・配置され上記複数個の被搬送物浮上用凸部の間に保持爪体を差し込んで被搬送物を保持して任意の場所に搬送する被搬送物搬送ユニットと、
を具備したことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
請求項1記載の搬送装置において、
上記被搬送物浮上用凸部は、大径凸部と該大径凸部より突設された小径凸部とから構成されていて、大径凸部と小径凸部との間の段付部上に上記被搬送物を載置するものであることを特徴とする搬送装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の搬送装置において、
上記無端状体はベルトであることを特徴とする搬送装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2記載の搬送装置において、
上記無端状体はチェーンであることを特徴とする搬送装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れかに記載の搬送装置において、
上記被搬送物はプリント基板であることを特徴とする搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−44839(P2006−44839A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−225571(P2004−225571)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(391008537)ASTI株式会社 (73)
【Fターム(参考)】