説明

搬送装置

【課題】駆動回転部材の無端体との接触部分が摩耗しても、駆動回転部材と無端体との接触状態を適切に維持できる搬送装置を提供する。
【解決手段】搬送装置1は、案内体2と、案内体2に沿って移動する無端体3とを備える。搬送装置1は、無端体3とともに移動して物品を搬送する搬送体4と、無端体3を移動させる駆動手段5とを備える。駆動手段5は、無端体3に接触した状態で駆動回転してこの無端体3を移動させる駆動ローラ31を有する。駆動ローラ31を回動支持部材35で支持し、この回動支持部材35をばね部材で付勢し、駆動ローラ31を無端体3に常時接触させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手荷物等の物品を搬送する搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の搬送装置は、案内体に沿って移動する無端体と、無端体に設けられこの無端体とともに移動して手荷物等の物品を搬送する搬送体と、無端体を移動させる駆動部である駆動手段とを備えている。この駆動手段は、無端体に接触してこの無端体を移動させる駆動回転部材と、駆動回転部材とともに無端体を挟持する従動回転部材と、従動回転部材を無端体に常時接触させる付勢部材と、無端体を挟持するガイドローラとを有している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特公昭60−289号公報(第4図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の搬送装置では、駆動回転部材の無端体との接触部分が摩耗した場合に、駆動回転部材と無端体とが非接触になるおそれがある。
【0004】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、駆動回転部材の無端体との接触部分が摩耗しても、駆動回転部材と無端体との接触状態を適切に維持できる搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の搬送装置は、移動可能な無端体と、この無端体に設けられ、この無端体とともに移動して物品を搬送する搬送体と、前記無端体を移動させる駆動手段とを備え、前記駆動手段は、前記無端体に接触した状態で駆動回転してこの無端体を移動させる駆動回転部材と、この駆動回転部材を前記無端体に常時接触させる付勢部材とを有するものである。
【0006】
請求項2記載の搬送装置は、請求項1記載の搬送装置において、駆動手段は、回動支点を中心として回動する回動支持部材を有し、駆動回転部材は、前記回動支持部材によって回転支点を中心として駆動回転可能に支持され、付勢部材は、前記回動支持部材を前記駆動回転部材が前記無端体に向う方向に付勢するものである。
【0007】
請求項3記載の搬送装置は、請求項2記載の搬送装置において、回動支持部材の回動支点は、駆動回転部材の回転支点より無端体の移動方向後方の位置でかつその無端体に近い位置に位置するものである。
【0008】
請求項4記載の搬送装置は、請求項1ないし3のいずれか一記載の搬送装置において、駆動手段は、無端体を駆動回転部材とともに挟持する従動回転部材を有するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、駆動手段が無端体に接触した状態で駆動回転してこの無端体を移動させる駆動回転部材とこの駆動回転部材を無端体に常時接触させる付勢部材とを有するため、駆動回転部材の無端体との接触部分が摩耗しても、駆動回転部材と無端体との接触状態を適切に維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の搬送装置の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0011】
図1において、1は搬送装置で、この搬送装置1は、例えば空港における乗客手荷物受取場等に設置され、手荷物等の物品を循環搬送する手荷物搬送コンベヤである。
【0012】
搬送装置1は、図1に示すように、環状の案内ガイド等の案内体2と、案内体2に沿って移動方向に向って移動するコロ付チェーン等の無端体3と、無端体3に設けられこの無端体3とともに移動して手荷物等の物品(図示せず)を載置搬送する搬送体4と、無端体3を案内体2に沿って移動させる1つの駆動手段5とを備えている。
【0013】
案内体2は、図2および図3に示すように、互いに離間対向する一対の案内レール部材11を有している。各案内レール部材11は、ベース体10に固着された水平状の取付板部12を有し、この取付板部12の内端部には鉛直状の案内板部13が一体に設けられている。案内板部13の対向面である内面が無端体3を案内する案内面14となっている。
【0014】
無端体3は、図1、図3および図4に示すように、隣接する連結部材16同士が回動自在に連結されて構成された無端状本体17を有している。無端状本体17の移動方向左右両側には、鉛直状の被接触面部18a,18bが形成されている。無端状本体17には、円形状をなす複数のコロ19が上下方向の軸20を中心として回転可能に設けられている。コロ19は、互いに離間対向する一対の案内レール部材11の案内板部13間に配置され、これら案内板部13にて案内される。なお、コロ19の直径は、互いに離間対向する案内板部13間の距離と略同じである。
【0015】
搬送体4は、図1および図3に示すように、無端体3の無端状本体17の上部に等間隔をおいて並設された複数のスラット21を有している。各スラット21は、無端体3の移動方向と直交する方向に長手状に形成され、長手方向両端部には円形状の走行部材である走行ローラ22が水平方向の軸23を中心として回転可能に設けられている。走行ローラ22は、ローラ用案内レール部材24の水平状の案内板部25上を回転しながら走行する。また、各スラット21には、ゴム板等からなる略矩形板状のキャリアパネル(図示せず)が固着され、キャリアパネル上に手荷物等の物品が載せられて循環搬送される。
【0016】
駆動手段5は、図1ないし図4に示すように、駆動源である電動モータ30と、外周面部32が無端体3の一方の被接触面部18aに接触した状態で電動モータ30から動力を減速機等を介して受けて駆動回転してその無端体3を案内体2に沿って移動させる円形状の駆動回転部材である駆動ローラ31と、この駆動ローラ31の外周面部32を無端体3の一方の被接触面部18aに所望の接触力をもって常時接触させる付勢部材であるばね部材33とを有している。
【0017】
また、駆動手段5は、回動支点A、例えば上下方向の軸34を中心として回動する略板状のブラケット等の回動支持部材35と、外周面部37が無端体3の他方の被接触面部18bに接触した状態で従動回転し無端体3を駆動ローラ31とともに挟持する円形状の従動回転部材である従動ローラ36とを有している。
【0018】
そして、駆動ローラ31は、回動支持部材35によって回転支点a、例えば上下方向の軸41を中心として駆動回転可能に支持されている。電動モータ30は、回動支持部材35に固着されこの回動支持部材35によって支持されている。なお、回動支持部材35は、図3に示されるように、樹脂製の第1受け部材43と樹脂製の第2受け部材44とにて支えられた状態で、回動支点Aを中心として回動可能となっている。
【0019】
また、回動支持部材35の回動支点Aは、図4に示されるように、駆動ローラ31の回転支点aより無端体3の移動方向後方の位置でかつ無端体3に近い位置に位置している。つまり、回動支持部材35の回動支点Aは、駆動ローラ31の回転支点aより無端体3の移動方向上流側でかつ無端体3側寄りの位置に位置している。
【0020】
さらに、弾性体であるばね部材33は、回動支持部材35を駆動ローラ31が無端体3に向う方向に付勢するもので、例えば円筒状のコイルばね46にて構成されている。このコイルばね46は、図2に示されるように、ボルト取付部材47に取り付けられたボルト48の外周側に配設されている。コイルばね46の一端部がボルト48に螺着されたナット49に当接し、コイルばね46の他端部が回動支持部材35のばね被当接部50に当接している。ばね部材33による回動支持部材35への付勢力はナット49の操作により調整可能となっている。
【0021】
また、従動ローラ36は、ベース体10に固着された固定支持部材51によって回転支点b、例えば上下方向の軸52を中心として従動回転可能に支持されている。従動ローラ36の直径は駆動ローラ31の直径と略同じである。また、駆動ローラ31の回転支点aと従動ローラの回転支点bとは、無端体3を中心として対称に位置する。駆動ローラ31の外周面部32および従動ローラ36の外周面部37は、いずれもウレタン等の樹脂にて形成されている。
【0022】
次に、上記搬送装置1の作用等を説明する。
【0023】
駆動手段5の電動モータ30が作動すると、回動支持部材35にて支持された駆動ローラ31は、ばね部材33の付勢力に基いてその外周面部32の一部が無端体3の無端状本体17の被接触面部18aに押し付けられて接触した状態で、電動モータ30側からの動力で駆動回転する。
【0024】
駆動ローラ31が駆動回転すると、無端体3が駆動ローラ31と従動ローラ36とで移動方向両側から挟持された状態で移動方向に向って案内体2に沿って移動し、その結果、搬送体4上に載せられた手荷物等の物品が搬送体4にて循環搬送される。
【0025】
そして、例えば駆動ローラ31の外周面部32が摩耗したとしても、その摩耗量に応じて回動支持部材35がばね部材33の付勢力によって回動支点Aを中心として回動して、駆動ローラ31が無端体3側にその摩耗量だけ移動するため、駆動ローラ31の外周面部32と無端体3の無端状本体17の被接触面部18aとの接触状態が維持される。
【0026】
また例えば無端体3の無端状本体17の被接触面部18aに凹凸があったとしても、その凹凸に応じて回動支持部材35が回動支点Aを中心に回動し、駆動ローラ31が無端体3の凹凸に追従するため、駆動ローラ31の外周面部32と無端体3の無端状本体17の被接触面部18aとの接触状態が維持される。
【0027】
このように搬送装置1によれば、駆動手段5が無端体3に接触した状態で駆動回転してこの無端体3を移動させる駆動ローラ31とこの駆動ローラ31を無端体3に常時接触させるばね部材33とを有するため、駆動ローラ31の無端体3との接触部分である樹脂製の外周面部32が摩耗した場合、また無端体3の被接触面部18aに凹凸があった場合等でも、駆動ローラ31の外周面部32と無端体3の被接触面部18aとの接触状態を適切に維持でき、無端体3に所望の推進力を与えることができ、よって、適切な搬送作業ができる。
【0028】
また、回動支持部材35の回動支点Aが駆動ローラ31の回転支点aより無端体3の移動方向後方の位置でかつ無端体3に近い位置に位置するため、所望の推進力を得ることができ、所望の推進力を駆動ローラ31から無端体3へ適切に伝えることができる。
【0029】
なお、図5(a)〜(d)に示すように、回動支持部材35の回動支点Aが回動支点B(無端体3からの距離が回転支点aと同じ)や回動支点C(無端体3からの距離が回転支点aより大きい)に変わると、押付け力および推進力の分配比率が変化する。この図から明らかなように、回動支点Aでは、回動支点BおよびCに比べて、大きな推進力が得られる。
【0030】
さらに、無端体3を駆動する駆動手段5が1つで、ばね部材33の付勢力の調整等は一箇所であり、容易にメンテナンス作業等ができる。
【0031】
なお、上記実施の形態では、従動ローラ36を駆動ローラ31と対向する位置に設け、これら2つの駆動ローラ31と従動ローラ36とで無端体3を挟持する構成について説明したが、例えば従動ローラ36を設けない構成、或いは、従動ローラ36の代わりに、無端体3の被接触面部18bと接触する支持板等の支持部材を設けて、その支持部材と駆動ローラ31とで無端体3を挟持する構成等でもよい。また例えば無端体3の移動方向両側方に駆動ローラ31を対称に設けるようにしてもよい。
【0032】
さらに、回動可能な回動支持部材35で駆動ローラ31を支持する構成には限定されず、例えば無端体3の移動方向と交差する方向に水平移動可能な支持部材で駆動ローラ31を支持する構成等でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施の形態に係る搬送装置の平面図である。
【図2】同上搬送装置の駆動手段の平面図である。
【図3】同上駆動手段の断面図である。
【図4】同上駆動手段の概略平面図である。
【図5】同上駆動手段の回動支持部材の回動支点の位置を変更した場合の説明図である。
【符号の説明】
【0034】
1 搬送装置
3 無端体
4 搬送体
5 駆動手段
31 駆動回転部材である駆動ローラ
33 付勢部材であるばね部材
35 回動支持部材
36 従動回転部材である従動ローラ
A 回動支持部材の回動支点
a 駆動回転部材の回転支点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能な無端体と、
この無端体に設けられ、この無端体とともに移動して物品を搬送する搬送体と、
前記無端体を移動させる駆動手段とを備え、
前記駆動手段は、
前記無端体に接触した状態で駆動回転してこの無端体を移動させる駆動回転部材と、
この駆動回転部材を前記無端体に常時接触させる付勢部材とを有する
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
駆動手段は、回動支点を中心として回動する回動支持部材を有し、
駆動回転部材は、前記回動支持部材によって回転支点を中心として駆動回転可能に支持され、
付勢部材は、前記回動支持部材を前記駆動回転部材が前記無端体に向う方向に付勢する
ことを特徴とする請求項1記載の搬送装置。
【請求項3】
回動支持部材の回動支点は、駆動回転部材の回転支点より無端体の移動方向後方の位置でかつその無端体に近い位置に位置する
ことを特徴とする請求項2記載の搬送装置。
【請求項4】
駆動手段は、無端体を駆動回転部材とともに挟持する従動回転部材を有する
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−143608(P2008−143608A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−329122(P2006−329122)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【出願人】(000103426)オークラ輸送機株式会社 (84)
【Fターム(参考)】