説明

搬送装置

【課題】印字が付された錠剤等の被搬送物を搬送する際に、印字のインクが剥がれて最終的には被搬送物における正規の印字箇所以外に付くのを防止すること。
【解決手段】表面に印字Mを付された固形物Wが、搬送部2の移送領域2aを移動する搬送装置1であって、移送領域2aにその表面を覆う布3を固定する。固形物が薬剤の場合には、布が長繊維からなる糸で作られていることが望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印字が付された錠剤等の被搬送物を搬送する際に、印字のインクが剥がれて、最終的にはその剥がれたインクが被搬送物における正規の印字箇所以外に付くのを防止する搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
薬を製造する場合、印刷工程において錠剤やカプセル剤に対してはその表面にインクで文字、記号等の印字を付することが広く行われている。そして、印字後に、包装工程が行われる。包装工程では、錠剤等が振動型パーツフィーダ等の搬送装置に投入される。振動型パーツフィーダの振動によってその移送領域を錠剤等は移動し、振動型パーツフィーダの抜穴から落下する。その後、チューブを通過して、PTPシートに形成された多数の穴にそれぞれ供給され、最終的には図3に示すように穴91を塞ぐようにPTPシート92にカバーフィルム93が貼られて包装される。
【0003】
ところが、PTPシート等に包装された錠剤94等に、正規の印字96箇所以外にインク95が付着していることがあった。これは、錠剤等を供給している際に振動型パーツフィーダの移送領域(表面)に錠剤から印字のインクが転写し、そのインクが錠剤等に再び付くことから生ずる問題である。
【0004】
ところで、振動式パーツフィーダ等の搬送装置には、その移送領域に主にプラスチック材料をコーティングすることが従来から行われている(特許文献1)。コーティングは、移送時の摩擦や衝撃によって錠剤等が割れたり、擦れたりするのを防止することが主な目的である。その目的を達成するために特許文献1の発明では、摩擦係数や、ヤング弾性率の低い材料を使ってコーティングをしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−170136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、これまでのコーティングでは、インクの転写を十分に防げないのが現状である。本発明者らは、特許文献1と同様に、搬送装置の移送領域の滑り抵抗を小さくすれば、インクの転写が防げると思い、研究を続けた。しかしながら、良い結果が得られないことから、現状分析を試みた。
【0007】
印刷工程では鮮明な印字が得られることを目的として、濃い色のインクを厚く錠剤等に印刷している。インクが中まで完全に硬化していれば搬送装置の移送領域に転写されることは無いはずであるが、完全に硬化していることを確認することは難しい。そのため、印字の表面が硬化していれば、錠剤等を包装工程で使用している。そうすると、包装工程では、搬送装置である振動型パーツフィーダからの振動が生じるので、稀にではあるが印字が一部剥がれて、振動型パーツフィーダの移送領域にインクが転写されるようである。
【0008】
本発明者らは、このような現状分析に基づいて、搬送装置の移送領域に対する平滑化の観点からではなく、別の観点から移送領域へのインクの転写を防ぐことにした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、表面に印字が付された固形物を、搬送部の移送領域を移動させる搬送装置であって、移送領域にその表面を覆う布を固定してある。
【0010】
布に使う糸の種類は問わず、例えば短繊維の糸であっても良い。また、固形物の種類も問わず、例えば電子部品等であっても良い。但し、布の上を移動する際に固形物に布の繊維が付くことを避けたい用途の場合、例えば、固形物が薬剤の場合には、布が長繊維からなる糸で作られていることが望ましい。
【0011】
布は移送領域に着脱不能に固定してあっても良いが、固形物の印字のインクによって汚れた場合には交換しやすいことが望ましい。即ち、移送領域に布を着脱可能に固定してあることが望ましい。
【0012】
搬送装置は、固形物が搬送部の移送領域の上を移動するものであれば良く、例えばシュート等であっても良い。但し、移動の際に多くの振動を受けて、固形物に付した印字が剥がれ落ち易いものに布を付けることが効果の面からは望ましい。例えば、搬送部が振動式パーツフィーダのボウルの場合である。
【発明の効果】
【0013】
本発明は搬送部の移送領域を布で覆ってある。布には細かな凹凸があるので、被搬送物に付された印字と布との接触面積が減り、その結果、印字のインクが布に転写され難くなり、それに伴って布からインクが被搬送物に付き難くなる。また、インクが布に転写されても、インクがある程度凹みの中に入りこむことから、布からインクが被搬送物に付き難くなる。本発明は、このように一見、平らであるが、細かな凹凸のある布を利用し、被搬送物を傷つけずに接触面積を減らすという観点から、搬送装置の移送領域へのインクの転写を防ぐことにした。
【0014】
また、布が長繊維からなる糸で作られている場合には、布の上を移動する際に固形物である薬剤に布の繊維が付くことをできるだけ避けることができ、薬剤の品質の向上を図ることができる。
【0015】
さらに、移送領域に布を着脱可能に固定してある場合には、固形物の印字のインクによって布が汚れたときには交換しやすい。
【0016】
また、搬送部が振動式パーツフィーダのボウルである場合には、振動によって固形物が移送されるので、印字が剥がれ易い用途に適用したものと言える。このように、振動するボウルに布を固定してある場合には、固形物から印字が剥がれ落ち難くなる効果を多大に受けられる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の搬送装置を示す斜視図である。
【図2】本発明の搬送装置の使用状態を示す斜視図である。
【図3】PTPシート等で包装された錠剤にインクの汚れが付着している状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1、図2は、本発明を適用する搬送装置の一例を示すものである。搬送装置1は、振動式パーツフィーダであって、その搬送部2であるボウルの移送領域2aのほぼ全面に布3を固定したものである。
【0019】
ボウル2は、盆のような形状の金属板であって、平面視円形の底壁4と、底壁4の外周全周に沿って起立するリング状の周壁5と、周壁5の上端部外周に沿って水平に突出する鍔壁6を備えている。
【0020】
底壁4は、外周から中央部11へ向けて徐々に高くなる勾配の緩いテーパー状である。底壁4の中央部11は、ほぼ水平な円盤状になっており、円盤の中央を図示しない下側の支持部にボルトBで留めることにより、ボウル2が固定される。また、底壁4は、テーパー状の部分12の表面が前述の移送領域2aとなり、移送領域2aの上を被搬送物Wが移動するものである。また、底壁4の移送領域2aには、その外周側から中央部11へ向けて間隔をおいて、被搬送物Wの出口となる複数の抜穴13があけてある。さらに、移送領域2aには、各抜穴13へ被搬送物Wを導く複数のガイド片14が、各抜穴13の近傍であって抜穴13よりも外周側及び内周側に平行に起立して設けてある。
【0021】
布3は、抜穴13の上を塞がないようにして、底壁4の移送領域2aの表面ほぼ全面に両面粘着テープ7で着脱可能に貼着される。なお、図では、移送領域2aではあってもガイド片14及びその近傍の表面には布3を貼っていない。布3には、クリーンルームで使用される無塵衣の布3を用いた。これはポリエステル系長繊維の糸で作られた織物である。
【0022】
上述した振動式パーツフィーダ1に投入する被搬送物Wには、固形物、ここでは円盤状の錠剤が用いられる。錠剤は、円形状の表裏面のうち少なくとも一面には商品等を識別するための印字Mが付されている。
【0023】
上述した振動式パーツフィーダ1は次の要領で錠剤Wを移送する。振動式パーツフィーダ1の上方には、錠剤Wを投入するシュート31が配置されている。このシュート31から錠剤Wを落下させ、振動式パーツフィーダ1の中に投入する。錠剤Wは、布3の上に落ち、振動式パーツフィーダ1の振動により出口である抜穴13へ向かって移動する。そして、錠剤Wは一対のガイド片14の間に導かれ、その間を進行することによって体勢が整えられ、抜穴13から排出される。そして、図示しない柔らかなチューブを通ってPTPシートの穴に供給される。
【0024】
無塵衣の布3を振動式パーツフィーダ1の移送領域2aに貼った場合に、PTPシート等に包装された錠剤にインクが転写され難くなったことを以下の条件で確認した。1枚のPTPシートに15個の錠剤が包装されるものを用いる。60万個の錠剤を1ロットとする。錠剤Wを1ロット分だけPTPシートで包装した結果、1ロット当たり約0.1%の割合でインクの転写された錠剤が発生した。
【0025】
従来品(移送領域2aにナイロンコーティングが施されたもの)の場合、1/4ロット当たり約3.07%の割合でインクの転写された錠剤が発生した。
【0026】
また、塩化ビニルシート(厚さ0.35mm)、ポリカーボネートシート(厚み0.5mm、♯800研磨)、及びテフロン(登録商標)シート(厚み0.09mm)のそれぞれを移送領域2aに貼って、その効果を確認したところ、いずれも上記従来品と同様の割合でインクの転写された錠剤が発生した。これら素材は、いずれもシート状であって、凹凸がないように造られるものである。つまり、滑り抵抗を小さくするものであり、結局のところ、表面の平滑化を図っても効果が得られないことが分かった。
【0027】
本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、布3を貼る面積は広いほうが効果を高める上で望ましいが、狭くてもそれなりに効果が望める。また、布3の糸の原料にはシリコン、塩化ビニール、ポリプロピレン、ポリエステル等を用いても良い。さらに、両面粘着テープ7は、布3の裏面全面に貼ってもよいし、縁部のみに貼ってもよい。なお、被搬送物Wは、薬剤として、錠剤のほかに、カプセル剤等が挙げられる。
【符号の説明】
【0028】
1搬送装置(振動式パーツフィーダ) 2搬送部(ボウル)
2a移送領域
3布 4底壁
5周壁 6鍔壁
7両面粘着テープ
11中央部 12テーパー状の部分
13抜穴 14ガイド片
31シュート
W被搬送物(固形物、錠剤) Bボルト
M印字
91穴 92PTPシート
93カバーフィルム 94錠剤
95インク 96印字

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に印字(M)が付された固形物(W)を、搬送部(2)の移送領域(2a)を移動させる搬送装置(1)であって、
移送領域(2a)にその表面を覆う布(3)を固定してあることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
固形物(W)が薬剤であって、
布(3)が長繊維からなる糸で作られていることを特徴とする請求項1記載の搬送装置。
【請求項3】
移送領域(2a)に布(3)を着脱可能に固定してあることを特徴とする請求項1又は2記載の搬送装置。
【請求項4】
搬送部(2)が振動式パーツフィーダのボウルであることを特徴とする請求項1、2又は3記載の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−265085(P2010−265085A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118270(P2009−118270)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(000003698)富山化学工業株式会社 (37)
【Fターム(参考)】