説明

搬送装置

【課題】被搬送体を搬送するための、安価で簡素な搬送装置を提供する。
【解決手段】被搬送体Wを搬送させる搬送ラインLの上流側搬送コンベヤCaと下流側搬送コンベヤCbとのあいだに配設される搬送装置1であって、立設する支柱8に配設される固定フレーム5に上端が軸支される平行リンク2,2と、該平行リンク2,2を前後動させる第1アクチュエータ3と、前記平行リンク2,2の上端を支点として上下方向に円弧を描きながら前後に揺動可能なように前記平行リンク2,2の下端に軸支される揺動コンベヤ4と、該揺動コンベヤ4の上流側と下流側に位置する前記固定フレーム5に配置される第2アクチュエータ12と該第2アクチュエータ12の下端側に設けられる、前記被搬送体Wの両側縁の突起部Waに係合する爪15を有する一組のアーム14とを具備する搬入用昇降リフタ6および搬出用昇降リフタ7とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は搬送装置に関する。さらに詳しくは、たとえば被搬送体を搬送コンベヤで搬送する搬送ラインの途中に障害要因がある場合の搬送や、搬送コンベヤの配列や長さに制限があるときの搬送コンベヤ間の搬送などに適用して、該被搬送体の搬送姿勢をくずさないで安定して搬送することができる搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、たとえば図11に示されるように、被搬送体W1の搬送ラインL1の途中に障害物Vがある場合には、被搬送体W1を上下に移し換えながら搬送するために、障害物Vをまたがって配設される高所の搬送コンベヤ101と、該搬送コンベヤ101の前後位置に配設された、シリンダロッド102の先端部に支持部材103を介して搬送コンベヤ104を付設した昇降リフタ105とを組み合わせたコンベヤ方式搬送装置106を用いて、上流側搬送コンベヤC1a、下流側搬送コンベヤC1bおよび高所の搬送コンベヤ101を直列設置させる方法がある。なお、図11における矢印は被搬送体W1の搬送方向である。
【0003】
この方法で搬送される被搬送体W1が軽量の箱物である場合、設備が重厚長大となり、過剰品質となる傾向がある。
【0004】
また、高所の搬送コンベヤ101と昇降リフタ105の搬送コンベヤ104とを用いて、被搬送体W1を搬送する場合、たとえば上流側搬送コンベヤC1aから搬送コンベヤ104ヘの移し換え部や、搬送コンベヤ104から高所の搬送コンベヤ101ヘの移し換え部では、被搬送体W1が搬送コンベヤ101、104間の高低誤差などにより引かかりを生じたりして、被搬送体W1の姿勢がずれて搬送されるという不具合が生じる。
【0005】
他の方法として、図12に示されるように、並列に設置される搬送ラインL2の搬送コンベヤ201の前後位置を搬送コンベヤC2aと搬送コンベヤC2bとにより接続して被搬送体W2を搬送するプッシャ・クッション方式搬送装置を用いる方法がある(たとえば特許文献1参照)。この方法では、搬送コンベヤ201の上流側と下流側に、プッシャシリンダ202とクッションシリンダ203を配置して両シリンダ202,203により被搬送体W2の列を挟み込み、1ピッチ送りするようにしている。なお、図12における矢印は被搬送体W2の搬送方向である。
【0006】
この方法は、前記搬送装置106を用いる方法と同様、軽量の被搬送体W2を搬送する場合、設備が重厚長大となり、過剰品質となる傾向がある。
【0007】
さらに、この方法は、搬送ラインL2の全長に渡り隙間無く被搬送体W2を充填しないと搬送できないため、貯蔵、その他搬送ラインL2にサンドカッタや湯口掘りの加工エリアを兼用するなどの目的を伴わない搬送には不適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭46−37270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、叙上の事情に鑑み、被搬送体を搬送するための、安価で簡素な搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の搬送装置は、被搬送体を搬送させる搬送ラインの上流側搬送コンベヤと下流側搬送コンベヤとのあいだに配設される搬送装置であって、
立設する支柱に配設される固定フレームに上端が軸支される平行リンクと、
該平行リンクを前後動させる第1アクチュエータと、
前記平行リンクの上端を支点として上下方向に円弧を描きながら前後に揺動可能なように前記平行リンクの下端に軸支される揺動コンベヤと、
該揺動コンベヤの上流側と下流側に位置する前記固定フレームに配置される第2アクチュエータと該第2アクチュエータの下端側に設けられる、前記被搬送体の両側縁の突起部に係合する爪を有する一組のアームとを具備する搬入用昇降リフタおよび搬出用昇降リフタ
とを備えてなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、揺動コンベヤの上流側と下流側の位置に搬入用昇降リフタと搬出用昇降リフトを併用した構成により、被搬送体を上流側搬送コンベヤから下流側搬送コンベヤへ簡単に移し換えることができるため、安価で簡素な搬送装置を提供することができる。
【0012】
また、上流側搬送コンベヤまたは揺動コンベヤにより搬送されてきた被搬送体の姿勢がずれていても搬入用昇降リフタまたは搬出用昇降リフタへの移し換え部において、一組のアームの爪のあいだに被搬送体の両側縁の突起部が進入するときに該爪により被搬送体の姿勢を矯正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態にかかわる搬送装置の正面図である。
【図2】図1のA−A断面の拡大図である。
【図3】図1のB−B断面の拡大図である。
【図4】図1のC−C断面の拡大図である。
【図5】本実施の形態にかかわる搬送装置の動作を説明する図である。
【図6】本実施の形態にかかわる搬送装置の動作を説明する図である。
【図7】本実施の形態にかかわる搬送装置の動作を説明する図である。
【図8】本実施の形態にかかわる搬送装置の動作を説明する図である。
【図9】本実施の形態にかかわる搬送装置の動作を説明する図である。
【図10】本実施の形態にかかわる搬送装置の動作を説明する図である。
【図11】従来のコンベヤ方式搬送装置を説明する図である。
【図12】他の従来のプッシャ・クッション方式搬送装置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面に基づいて本発明の搬送装置を説明する。図1に示されるように、本発明の一実施の形態にかかわる搬送装置1は、被搬送体Wを搬送させる搬送ラインLの搬入用ベルトコンベヤに相当する上流側搬送コンベヤCaと搬出用ベルトコンベヤに相当する下流側搬送コンベヤCbとのあいだに配設されている。なお、図1における符号Vは、搬送ラインLの上流側搬送コンベヤCaと下流側搬送コンベヤCbとのあいだに存在する障害物である。
前記搬送装置1は、図1〜4に示されるように、平行リンク2,2と、該平行リンク2,2を前後動させる第1アクチュエータ3と、該平行リンク2,2の上端を支点として上下方向に円弧を描きながら前後に揺動可能な揺動コンベヤ4と、該揺動コンベヤ4の上流側と下流側に位置する固定フレーム5に配設される搬入用昇降リフタ6および搬出用昇降リフタ7とから構成されている。なお、図1における矢印Xは被搬送体Wの水平搬送方向であり、矢印Yは被搬送体Wの垂直搬送方向であり、矢印Zは揺動コンベヤ4の揺動方向である。
【0015】
前記平行リンク2,2は、該平行リンク2,2の上端が床面に立設する4本の支柱8の上端部に配設された前記固定フレーム5の下面に支持されるピン9に回動自在に軸支されているとともに、該平行リンク2,2の下端が前記揺動コンベヤ4の両側フレームに設けられる軸受10に回動自在に軸支されている。
前記第1アクチュエータ3は、とくに限定されるものではないが、本実施の形態では、前記固定フレーム5の下面に設けられる一対の支持具11に回動自在に軸支されるシリンダとすることができる。この第1アクチュエータ3としてのシリンダのロッド3aの先端は前記平行リンク2,2のうち一方の平行リンク(図1の紙面左側の平行リンク)2間に配せられる軸部材2aの中央部に軸支されている。このシリンダのロッド3aの伸縮動作により揺動コンベヤ4を平行リンク2,2を介し前後に揺動させることができる。
【0016】
前記揺動コンベヤ4は、いわば前記固定フレーム5の中央に平行リンク2,2を用いて吊り下げられている移換え用の揺動コンベヤに相当する。
この揺動コンベヤ4としては、本発明においては、とくに限定されるものではないが、駆動ローラにより無端状ベルトを駆動させて被搬送体を直線搬送するベルトコンベヤを用いることができる。本実施の形態では、駆動ローラ4aが一端に配置されるヘッドドライブ式ベルトコンベヤが用いられている。
【0017】
前記搬入用昇降リフタ6および搬出用昇降リフタ7は、とくに同じ構成とする必要はないが、本実施の形態では、前記固定フレーム5を貫通して支持される第2アクチュエータ12としての下向き昇降シリンダと該昇降シリンダのロッド12aの下端側に固着されたリフトテーブル13を介して設けられる一組のアーム14とを具備する同じ構成にされている。
また、本実施の形態では、このアーム14は、前記被搬送体Wの両側縁の突起部Waに係合する爪15を有していれば、とくに限定されるものではないが、図1〜2に示されるようにリフトテーブル13の両側部からそれぞれ垂下される第1アーム部材14aと該第1アーム部材14aに対向する第2アーム部材14bとにより一組を構成している。なお、第1アーム部材14aと第2アーム14bは、2枚の板材にされている。
また、前記爪15は、左右の一対の第1アーム部材14aの下部と第2アーム部材14bの下部に設けられている。この一対の爪15の先端間隔は、前記被搬送体Wの本体幅寸法より大きく、かつ前記両側縁の突起部Waの間隔より小さい所定の寸法にされている。すなわち、一対の爪14は、爪14と被搬送体Wおよび突起部Waとのあいだに所定の隙間が確保できるように設けられている。
本実施の形態では、リフトテーブル13に被搬送体Wをハンドリングするハンドリング部材として、開閉動作をしない一組のアーム14を採用することにより、被搬送体Wの昇降リフタ6、7への移し換え部において、一組のアーム14の爪15のあいだに被搬送体Wの両側縁の突起部Waが進入するときに一対の爪15により被搬送体Wの姿勢を搬送方向の中心側に矯正して搬送させる機能を持たせることができる。
【0018】
つぎに、本実施の形態にかかわる搬送装置1の搬送動作について説明する。
まず図5に示されるように、揺動コンベヤ4が行き端(揺動前進端)に位置し、搬出用昇降リフタ7の一組のアーム14は上昇端で待機している。ここで、すでに搬入用昇降リフタ6から移し換えられた揺動コンベヤ4上の被搬送体Wを該搬出用昇降リフタ7の一組のアーム14へ送り込む。この工程と同時に、下降端で待機している搬入用昇降リフタ6の一組のアーム14へ上流側搬送コンベヤCa上の被搬送体Wを送り込んだ後、搬入用昇降リフタ6を上昇する(図6参照)。
【0019】
ついで、図6に示されるように、搬入用昇降リフタ6は搬出用昇降リフタ7と共に、上昇端で被搬送体Wを一組のアーム14内に保持している状態で待機する。
そして、揺動コンベヤ4が、第1アクチュエータ3としてのシリンダのロッド3aを縮引させることにより、平行リンク2の上端側のピン9を回転中心として、上下方向に円弧を描きながら、帰り端(揺動後退端)側に戻る。
この揺動コンベヤ4が帰り端側に戻るに際して、まず揺動コンベヤ4が下方から帰り端側へ向かって円弧を描く動きにより、搬出用昇降リフタ7側の被搬送体Wは、揺動コンベヤ4の搬送面から該搬出用昇降リフタ7の一組のアーム14の一組のアーム14の爪15へ移し換えられる。また、揺動コンベヤ4が帰り端側へ向かって円弧を描く動きにより、搬入用昇降リフタ6の一組のアーム14の下方に移動すると、揺動コンベヤ4の搬送面により搬入用昇降リフタ6側の被搬送体Wが持上げられるため該搬入用昇降リフタ6側の被搬送体Wは、一組のアーム14の爪15との係合が解除されて揺動コンベヤ4へ移し換えられる。
【0020】
ついで、図7に示されるように、搬入用昇降リフタ6の一組のアーム14から揺動コンベヤ4へ移し換えられた被搬送体Wを、揺動コンベヤ4の中間位置まで搬送する。
この工程と同時に、搬出用昇降リフタ7を下降し、下流側搬送コンベヤCb上へ被搬送体Wを移し換える。
【0021】
ついで、図8に示されるように、下流側搬送コンベヤCb上へ移し換えられた被搬送体Wは、搬出用昇降リフタ7の一組のアーム14の爪15との係合が解除されるため、該搬出用昇降リフタ7の一組のアーム14から搬出する。
【0022】
ついで、図9〜10に示されるように、搬出用昇降リフタ7を上昇する。この工程と同時に、下流側搬送コンベヤCb上に移し換えられた被搬送体は、下流に搬送される。
また、上流側搬送コンベヤCa上には、つぎの被搬送体Wが供給されてくる。
【0023】
ついで、図10に示されるように、揺動コンベヤ4が、第1アクチュエータ3としてのシリンダのロッド3aを伸長させることにより、平行リンク2,2の上端側のピン9を回転中心として、上下方向に円弧を描きながら、行き端側に移動する。
その後、搬入用昇降リフタ6が下降した後、上流側搬送コンベヤCaを運転から停止させて、被搬送体Wの両側縁の突起部Waを搬入用昇降リフタ6の一組のアーム14の爪15のあいだに搬入する。
【0024】
本実施の形態は、前述した図5から図10までの工程を繰り返すことにより、被搬送体Wを、上流側搬送コンベヤCa側から下流側搬送コンベヤCb側へ搬送させることができる。
【符号の説明】
【0025】
Ca 上流側搬送コンベヤ
Cb 下流側搬送コンベヤ
L 搬送ライン
W 被搬送体
Wa 被搬送体の突起部
V 障害物
1 搬送装置
2 平行リンク
2a 軸部材
3 第1アクチュエータ
3a ロッド
4 揺動コンベヤ
4a 駆動ローラ
5 固定フレーム
6 搬入用昇降リフタ
7 搬出用昇降リフタ
8 支柱
9 ピン
10 軸受
11 支持具
12 第2アクチュエータ
12a ロッド
13 リフトテーブル
14 アーム
14a 第1アーム部材
14b 第2アーム部材
15 爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送体を搬送させる搬送ラインの上流側搬送コンベヤと下流側搬送コンベヤとのあいだに配設される搬送装置であって、
立設する支柱に配設される固定フレームに上端が軸支される平行リンクと、
該平行リンクを前後動させる第1アクチュエータと、
前記平行リンクの上端を支点として上下方向に円弧を描きながら前後に揺動可能なように前記平行リンクの下端に軸支される揺動コンベヤと、
該揺動コンベヤの上流側と下流側に位置する前記固定フレームに配置される第2アクチュエータと該第2アクチュエータの下端側に設けられる、前記被搬送体の両側縁の突起部に係合する爪を有する一組のアームとを具備する搬入用昇降リフタおよび搬出用昇降リフタ
とを備えてなるとを備えてなることを特徴としている。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−269891(P2010−269891A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−122774(P2009−122774)
【出願日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【出願人】(000191009)新東工業株式会社 (474)
【Fターム(参考)】