説明

搬送装置

【課題】ワークの連続的な加工においても、支持部材に損傷を与えることなく、ワークの下面を支持しつつ搬送することができる搬送装置を提供する。
【解決手段】複数の支持部材を互いに離間して上方に立設させた搬送装置において、複数の支持部材を保持する複数の保持手段と、保持手段をワーク搬送方向に移動させる駆動手段とを備え、複数の支持部材が、それぞれの先端部によりワークの支持面を形成するとともに、支持面に対して平行に移動可能に設けられ、支持面上にワークを支持しつつ搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工の際にワークの下面を支持しつつ搬送する搬送装置に係り、特に複数の支持部材を互いに離間して上方に立設させた搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ光、ウォータージェット、プラズマアーク放電、ガスバーナー等を用いて、ワークに対して切断、熱処理、表面処理等の加工を行う場合には、ワークを直接テーブルの表面に載置すると、ワークを貫通したレーザ光等によりテーブルの表面が損傷するといった問題を生じることがある。また、ワークを貫通し、ワークテーブル表面で反射したレーザ光等により、ワークの加工が必要ない箇所やレーザ光照射装置等を損傷させるといった問題も生じる場合がある。また、効率よくアシストガス等を排出できず、加工自体が上手くいかない場合もある。
【0003】
その対策として、複数の支持部材を互いに離間して上方に立設させ、これらの支持部材の先端によりワークを支持する構成のワークテーブルが知られている。ところが、このワークテーブルにおいは、ワークを貫通したレーザ光等がワークテーブルに照射されることは極めて少なくなり、ワークテーブル等の損傷が非常に低減されたものの、加工位置と支持位置が一致する場合、支持部材の先端部ではワークを貫通したレーザ光等が未だに照射されてしまい、これら支持部材に損傷を与えることとなり、また、加工も上手くいかず、上記問題を完全に解決するものではなかった。
【0004】
そこで、このような問題に対して、レーザ切断用ワーク受台上において、複数本の支持ピンをマトリクス状に配設し、被加工物の切断位置の下部に配設された支持ピンを任意選択的に上下移動させる構成が報告されている(例えば、特許文献1参照。)。また、この支持ピンは、ベルトコンベア上に設けられ、電磁石の選択的通電によって上下移動させる構成が記載されている。
【0005】
しかしながら、このような従来技術のレーザ切断用ワーク受台では、支持ピンがベルトコンベア上に設けられ、電磁石の選択的通電によって上下移動させる構成であることから、電磁石による支持ピンの上下移動は、ベルトコンベアの搬送速度を非常に低速にして又はベルトコンベアを一旦停止させて行う必要があり、ワークの切断等の加工を連続的に行うことは困難であった。また、このレーザ切断用ワーク受台では、支持ピンを上下方向にしか移動することができないため、支持ピンの配置における自由度が大きく制限される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭62−77688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明は、上記問題点に鑑み、複数の支持部材を互いに離間して上方に立設させた搬送装置において、レーザ光等の照射位置に支持部材が配置されないように、任意の支持部材をワーク支持面に対して平行に移動させることにより、ワークの連続的な加工においても、支持部材に損傷を与えることなく、ワークの下面を支持しつつ搬送することができる搬送装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の搬送装置は、複数の支持部材を互いに離間して上方に立設させた搬送装置において、前記複数の支持部材を保持する複数の保持手段と、前記保持手段をワーク搬送方向に移動させる駆動手段とを備え、前記複数の支持部材は、それぞれの先端部によりワークの支持面を形成するとともに、前記支持面に対して平行に移動可能に設けられ、前記支持面上にワークを支持しつつ搬送することを特徴としている。
【0009】
また、本発明の搬送装置における支持部材は、前記先端部が前記支持面の形成を維持しつつ、前記保持手段に対して、ワーク搬送方向と交わる方向に移動可能に設けられていることが好ましい。また、前記保持手段は、ワーク搬送方向に対して互いに相対的に移動可能に設けられていることが好ましい。
【0010】
さらに、本発明の搬送装置においては、ワーク搬送方向に延在し、前記支持部材に係合するガイド手段をさらに備え、前記保持手段は、前記支持部材を保持しつつ、ワーク搬送方向と交わる方向にスライドさせるスライド機構を備え、前記ガイド手段は、前記支持部材との係合、前記スライド機構及び前記駆動手段により、ワーク搬送方向と交わる方向における前記保持部材上の所定位置まで前記支持部材をスライドさせることが好ましい。
【0011】
また、本発明の搬送装置においては、前記保持手段は、前記駆動手段によるワーク搬送方向への駆動力を伝達する把持機構を備え、前記把持機構は、ワーク搬送方向における前記保持手段の位置を選択的に変更する機能を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数の支持部材を互いに離間して上方に立設させた搬送装置において、レーザ光等の照射位置に支持部材が配置されないように、任意の支持部材をワーク支持面に対して平行に移動させることにより、ワークの連続的な加工においても、支持部材に損傷を与えることなく、ワークの下面を支持しつつ搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の搬送装置の一実施形態を用いたレーザ切断加工装置を示す斜視図である。
【図2】本発明の搬送装置の一実施形態における支持部材及び保持手段の一部を示した側面図である。
【図3】本発明の搬送装置の一実施形態における保持手段の側面部を示した正面図(a)及び側面図(b)である。
【図4】本発明の搬送装置の一実施形態における保持手段を示した断面図である。
【図5】本発明の搬送装置の一実施形態における保持手段の内部を示した斜視図である。
【図6】本発明の搬送装置の一実施形態におけるガイド手段を示した上面図である。
【図7】本発明の搬送装置の一実施形態におけるワークの搬送状体を示した上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
1.搬送装置の構成
以下、図面を用いて本発明の搬送装置の実施形態について具体的に説明する。図1は本発明の搬送装置の一実施形態を用いたレーザ切断加工装置を示す斜視図であり、以下に示す実施形態は、図1に示したように、レーザ照射により長尺な鋼板コイル1から所定形状の板状部材2を切断する工程において、鋼板コイル1及び板状部材2を支持しつつ図1の左側から右側へ搬送する構成である。本発明の搬送装置には、駆動手段3と、この駆動手段3によりワーク搬送方向に移動される複数の保持手段4と、この保持手段4により保持された複数の支持手段5とが設けられている。
【0015】
本発明における駆動手段3としては、上記の保持手段をワークの搬送方向に移動させることができるものであればいずれのものでもよく、具体的には駆動モータ等が挙げられる。この駆動手段3による駆動力は、駆動プーリー6及び駆動ワイヤー7を介して保持手段4に伝達される。駆動ワイヤー7は、2組の駆動プーリー6と従動プーリー8との間において、それぞれの直線状の上側周回部がワークの搬送方向に対して平行となるように、無端状に巻回される。そして、図1及び2に示されているように、駆動プーリー6と従動プーリー8との間に巻回された2本の駆動ワイヤー7間において、所定の間隔おきに駆動ワイヤー7の全周にわたって、複数の保持手段4が設けられている。
【0016】
本発明における保持手段4は、図3(a)及び(b)に示されたように、把持機構9により駆動ワイヤー7に固定され、ワーク搬送方向と交わる方向に延在するように配置されている。そして、本発明の搬送装置においては、一つの保持手段4に、ワーク搬送方向と交わる方向に所定間隔で配置され、2本の駆動ワイヤー7に対して交わる方向に延在するように、複数の支持部材5が設けられている。このような構成によれば、複数の保持手段4は、駆動ワイヤー7に伝達された駆動力によって駆動ワイヤー7の長円形の軌道に沿って周回し、駆動ワイヤー7の直線状の上側周回部において、支持部材5のそれぞれの先端部によってワークの支持面が形成される。
【0017】
本発明においては、この把持手段9による駆動ワイヤー7の把持は、ワーク搬送の前後や搬送中において、手動又は自動で解除及び再把持することができ、これにより、ワークの搬送方向における複数の支持手段5の間隔を調整することができる。
【0018】
また、本発明の搬送装置においては、図1及び2に示されたように、上記駆動ワイヤー7が配置された長円形の軌道の外側にガイドレール10を設けるとともに、図3(a)及び(b)に示されたように、それぞれガイドレール10の内側に係合するように4つのコロベアリング11を保持手段4の側面部に備えることが好ましい。このような構成によれば、駆動ワイヤー7の周回に伴って、係合されたコロベアリング11がガイドレール11に沿ってスライドされることにより、駆動ワイヤー7の長円形の軌道に沿った保持手段4の移動が安定的に案内される。
【0019】
さらに、本発明における支持部材5は、図4に示されたように、ピンフランジ12に固定されており、保持手段4のシャフトプレート13の内側に設けられたガイドレール14にベアリング15を介して係合されている。この構成によれば、後述のガイド手段16により支持部材4を所定の位置まで案内することにより、ガイドレール14上をピンフランジ12が好適にスライドし、図5に示されたように、支持部材4がワーク搬送方向と交わる方向に移動することができる。なお、本発明においては、ベアリング15を介したガイドレール14上のピンフランジ12のスライドは、ガイド手段16による支持部材5の案内が終了した際に、停止する程度の転がり抵抗を有する。
【0020】
また、本発明の搬送装置においては、図6に示されたような、駆動手段3によって周回される支持部材5の一部を誘導し、この支持部材5をワーク搬送方向と交わる方向における所定の位置に案内できるガイド手段16が設けられている。本発明におけるガイド手段16は、ワーク搬送方向と交わる方向に対して最大に移動した支持部材5をも収容し得る開口を有する固定ガイド部17と、固定ガイド部から収容された支持部材5をワーク搬送方向と交わる方向における所定の位置に案内する首振ガイド部18とを備えている。
【0021】
このガイド手段16においては、まず、駆動手段3によって周回される支持部材5の一部を固定ガイド部17の開口から収容し、その内側面に沿って首振ガイド部18に誘導させる。次いで、例えばコンピュータ制御によりサーボモータを駆動して首振ガイド部18の下流端の角度を調整する。このような配置において、引き続き駆動手段3により支持部材5を周回させていくと、支持部材5は、この首振ガイド部18内を通過してワーク搬送方向と交わる方向における所定の位置に案内される。
【0022】
このように機能するガイド手段16によれば、図7に示されたように、レーザ光の照射位置に配置される支持部材5を、ワーク搬送方向と交わる方向に移動させることにより、レーザ光がワークを貫通しても、ワークの下面を支持する支持部材5に損傷を与えることがない。また、本願発明の搬送装置によれば、ワーク搬送のための駆動手段3の駆動力を利用して、ワーク搬送方向と交わる方向に支持部材5を移動することができるため、ワークの連続的な加工に好適に適用でき、また、支持部材5の配置における自由度も非常に大きいため、ワーク寸法や加工位置が異なるワークや加工に対応することができる。
【0023】
さらに、本発明の搬送装置における支持部材5は、上下方向に落下可能に支持されていてもよい。このような構成によれば、支持部材5の配置における自由度がさらに増大し、ワーク寸法や加工位置が異なるワークや加工への対応がより向上する。また、本発明における支持部材5は、先端部にマグネットやバキューム等の吸着機構を備えていてもよい。このような構成によれば、鋼板コイル1から切断した板状部材2を選択的に回収することができる。また、搬送によるコイルの振動を抑えることができ、加工精度を向上できる。
【0024】
2.搬送装置の動作
本発明の搬送装置の一実施形態をレーザ切断加工装置に適用した際の動作について説明する。本発明の搬送装置では、図1に示したように、直線状の上側周回部がワークの搬送方向に対して平行となるように、2本の駆動ワイヤー7が無端状に駆動プーリー6と従動プーリー8との間で巻回されている。そして、この2本の駆動ワイヤー7間において、所定の間隔おきに駆動ワイヤー7の全周にわたって、複数の保持手段4が設けられており、これらの保持手段4には、ワーク搬送方向と交わる方向に所定間隔で複数の支持部材5が設けられている。このような構成において、駆動ワイヤー7に駆動力が伝達されると、駆動ワイヤー7の長円形の軌道に沿って複数の保持手段4が周回し、駆動ワイヤー7の直線状の上側周回部において、支持部材5のそれぞれの先端部によってワークの支持面が形成される。
【0025】
上記の本発明の搬送装置を適用したレーザ切断加工装置では、上流側に長尺な鋼板コイル1が配置されており、ここから材料を巻出し、レベラー19を通過させて平坦な板状に延ばした後、本願発明の搬送装置によってレーザ照射装置20のレーザ照射部の下方に鋼板コイル1を搬送する。なお、上記レーザ照射装置のレーザ照射部は、ワーク搬送方向及びこの方向と交わる方向のいずれにも移動可能であり、さらに、ワークの搬送速度を考慮してワークを搬送しながらレーザ切断することが可能である。
【0026】
ここで、ワーク表面におけるレーザ光の照射位置については、制御手段により予め計算することにより、そのレーザ光の照射位置に配置される支持部材5を、ガイド手段16によりワーク搬送方向と交わる方向に移動させることができる。この支持部材のワーク搬送方向と交わる方向への移動は、駆動手段3によって周回される支持部材5の一部を固定ガイド部17の開口から収容し、その内側面に沿って首振ガイド部18に誘導させるとともに、首振ガイド部18の下流端の角度を調整して、支持部材5をこの首振ガイド部18内に通過させ行う。
【0027】
このように、本発明の搬送装置を用いることにより、レーザ光の照射位置に配置される支持部材5をワーク搬送方向と交わる方向に移動させ、レーザ光がワークを貫通しても、ワークの下面を支持する支持部材5に損傷を与えることなく、ワークの下面を支持しつ搬送することができる。その後、上記のようにして切断された板状部材2は、本発明の搬送装置の下流側に配置されたマグネットコンベア21等により選択的に回収することができる。
【符号の説明】
【0028】
1…鋼板コイル、2…板状部材、3…駆動手段、4…保持手段、5…支持部材、
6…駆動プーリー、7…駆動ガイド、8…従動プーリー、9…把持機構、
10…ガイドレール、11…コロベアリング、12…ピンフランジ、
13…シャフトプレート、14…ガイドレール、15…ベアリング、
16…ガイド手段、17…固定ガイド部、18…首振ガイド部、19…レベラー、
20…レーザ照射装置、21…マグネットコンベア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の支持部材を互いに離間して上方に立設させた搬送装置において、
前記複数の支持部材を保持する複数の保持手段と、
前記保持手段をワーク搬送方向に移動させる駆動手段とを備え、
前記複数の支持部材は、それぞれの先端部によりワークの支持面を形成するとともに、前記支持面に対して平行に移動可能に設けられ、
前記支持面上にワークを支持しつつ搬送することを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記支持部材は、前記先端部が前記支持面の形成を維持しつつ、前記保持手段に対して、ワークの搬送方向と交わる方向に移動可能に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記保持手段は、ワーク搬送方向に対して互いに相対的に移動可能に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項4】
ワーク搬送方向に延在し、前記支持部材に係合するガイド手段をさらに備え、
前記保持手段は、前記支持部材を保持しつつ、ワーク搬送方向と交わる方向にスライドさせるスライド機構を備え、
前記ガイド手段は、前記支持部材との係合、前記スライド機構及び前記駆動手段により、ワーク搬送方向と交わる方向における前記保持部材上の所定位置まで前記支持部材をスライドさせることを特徴とする請求項2に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記保持手段は、前記駆動手段によるワーク搬送方向への駆動力を伝達する把持機構を備え、
前記把持機構は、ワーク搬送方向における前記保持手段の位置を選択的に変更する機能を有することを特徴とする請求項3に記載の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−51710(P2012−51710A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197015(P2010−197015)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】