説明

搬送装置

【課題】作業者による作業上の安全性向上および転動体の周囲からの異物等の侵入防止を可能としながら、搬送装置の組立性およびメンテナンス性を向上させることができる搬送装置を提供する。
【解決手段】搬送装置100は搬送ベルトBにより回転駆動される複数のボール160と、搬送ベルトBを上方から覆うとともに物品Wが搬送される搬送路を形成するカバー130と、搬送ベルトBおよびカバー130を支持する機台とを備える。カバー130には各ボール160が貫通してその上部161のみがカバー130の上面131から上方に突出する所定数の収容孔153が設けられる。カバー130は、ボール160が収容された収容孔153を形成している周縁部157がボール160の周囲を囲んでいる状態で各ボール160を回転可能に支持している。カバー130および各ボール160は、一体の状態で機台に対して着脱可能に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動部材により回転駆動される複数の転動体により、機台に固定されたカバーの上面上の物品を搬送する搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送装置において、物品を搬送する複数のローラ(転動体に相当)と、ローラ同士の間の隙間を覆うカバーとを備えるものは知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
また、搬送装置において、機台に対して走行することにより物品を搬送する搬送体が、複数のボール(転動体に相当)を回転可能に支持するものは知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭62−197610号公報(第1頁、第1図−第4図)
【特許文献2】特開平9−240819号公報(段落0014,段落0041、図1−図3,図5)
【特許文献3】特許第3954040号公報(段落0014−段落0019、図1−図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
物品が搬送される搬送路を形成するカバー(例えば、特許文献2に記載されたカバーが相当)と、駆動部材により回転駆動されてカバーの上面上の物品を搬送する複数の転動体と、カバーおよび駆動部材を支持する機台とを備える搬送装置において、転動体間の隙間を覆うカバーと、複数の転動体を支持する転動体支持部材とが、別々に機台に固定される場合には、各転動体と、カバーにおいて該転動体が貫通する貫通孔を形成している周縁部との間の隙間の大きさの管理が困難で、該隙間のバラツキが発生しやすい。
また、ローラコンベヤのローラについては、搬送路の幅方向でのローラの長さが長くなるほど、貫通孔の周縁部での剛性の確保が困難になることもあって、前記隙間の管理および貫通孔を形成する際の寸法管理が困難になる。
【0005】
そして、転動体と貫通孔の周縁部との間の隙間が大きくなると、該隙間から異物等が侵入しやすくなり、侵入した異物等のために、搬送装置の円滑な運転が損なわれて、搬送装置による搬送の作業効率が低下するという問題があった。
一方、前記隙間の管理を厳格に行うと、機台に対するカバーおよび転動体支持部材の組付作業に手間がかかり、搬送装置の組立性およびメンテナンス性が低下するという問題があった。
【0006】
また、既存の物品搬送用の搬送機としてのベルトコンベヤやローラコンベヤに対して、それらコンベヤにより搬送される物品を扱う作業者による作業上の安全性向上および異物等の侵入防止の観点から、ベルトコンベヤ(または、ローラコンベヤ)において、搬送ベルト(または、搬送ローラ)と、該搬送ベルト(または、搬送ローラ)の幅方向に配置される支持フレームとの間の幅方向隙間や、ベルトコンベヤが連設される場合の搬送方向で隣接する搬送ベルト間(または、ローラコンベヤの搬送ローラ間)の搬送方向隙間を上方から覆うカバーを付加する場合にも、前記隙間の管理を厳格に行うと、機台に対するカバーの組付作業に手間がかかり、搬送装置の組立性およびメンテナンス性が低下するという前述した問題と同様の問題があった。
【0007】
本発明は、前述の課題を解決するものであり、本発明の目的は、作業者による作業上の安全性向上および転動体の周囲からの異物等の侵入防止を可能としながら、搬送装置の組立性およびメンテナンス性を向上させることができる搬送装置を提供することである。
そして、本発明の他の目的は、さらに、既存の物品搬送用の搬送機を利用することにより、コストを削減することができる搬送装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、駆動部材により回転駆動される複数である所定数の転動体と、前記駆動部材を上方から覆うとともに物品が搬送される搬送路を形成する前記カバーと、前記駆動部材および前記カバーを支持する機台とを備え、前記転動体が前記カバーの上面上の物品を搬送する搬送装置において、前記カバーには、前記各転動体が貫通してその上部のみが前記上面から上方に突出する前記所定数の貫通孔が設けられ、前記カバーが、前記カバーにおいて前記貫通孔を形成している周縁部が前記転動体の周囲を囲んでいる状態で前記各転動体を回転可能に支持するとともに、前記機台に固定され、前記カバーおよび前記各転動体が、一体の状態で、前記機台に対して着脱可能である搬送カバーユニットを構成することにより、前述した課題を解決したものである。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の構成に加えて、前記駆動部材が、物品搬送用の搬送機に備えられて搬送対象物品を搬送するために走行する搬送体であり、前記機台が、前記搬送機に備えられ、前記各転動体が、前記搬送体により摩擦駆動されることにより、前述した課題を解決したものである。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明の構成に加えて、前記搬送体が無端の搬送ベルトであることにより、前述した課題を解決したものである。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれか1つに係る発明の構成に加えて、前記所定数の前記転動体が、前記搬送路の幅方向に配列された複数の前記転動体により構成される転動体列が前記搬送路での前記物品の搬送方向に複数の列を作って配置され、前記カバーが、互いに枢着された複数の前記リンクプレートを有し、前記各リンクプレートが、転動体群を構成する複数の前記転動体を回転可能に支持することにより、前述した課題を解決したものである。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれか1つに係る発明の構成に加えて、前記カバーが、転動体保持プレートと、前記転動体を1つずつ回転可能に支持する前記所定数のホルダとを有し、前記各ホルダが、前記転動体保持プレートに貫通して設けられた嵌合孔に、前記嵌合孔の貫通方向に挿入可能であることにより、前述した課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の搬送装置は、駆動部材により回転駆動される複数である所定数の転動体と、駆動部材を上方から覆うとともに物品が搬送される搬送路を形成するカバーと、駆動部材およびカバーを支持する機台とを備え、転動体がカバーの上面上の物品を搬送することにより、駆動部材により回転駆動される複数の転動体により、物品をカバーにより形成される搬送路に沿って搬送することができるばかりか、以下のような本発明に特有の効果を奏する。
【0014】
すなわち、請求項1に係る本発明の搬送装置によれば、カバーには、各転動体が貫通してその上部のみが上面から上方に突出する所定数の貫通孔が設けられ、カバーが、カバーにおいて貫通孔を形成している周縁部が転動体の周囲を囲んでいる状態で各転動体を回転可能に支持するとともに、機台に固定され、カバーおよび各転動体が、一体の状態で、機台に対して着脱可能である搬送カバーユニットを構成することにより、カバーおよび各転動体が一体化された1つの搬送カバーユニットを構成するので、カバーおよび各転動体が一体化された状態で貫通孔を規定する周縁部と転動体との間の隙間を設定することにより、この隙間を異物等の侵入防止の観点から小さく設定することができ、この設定された間隙が機台に組み付けられたときにも維持される。このため、搬送装置により搬送される物品Wを扱う作業者による作業上の安全性の向上および転動体の周囲からの異物等の侵入の防止が可能になるとともに、カバーおよび各転動体を機台に組み付ける際の隙間の管理が不要になるので、搬送装置の組立性およびメンテナンス性を向上させることができる。
【0015】
請求項2に係る本発明の搬送装置によれば、請求項1に係る発明が奏する効果に加えて、次の効果が奏される。
駆動部材が、物品搬送用の搬送機に備えられて搬送対象物品を搬送するために走行する搬送体であり、機台が搬送機に備えられ、各転動体が搬送体により摩擦駆動されることにより、既存の搬送機(例えば、ベルトコンベヤまたはローラコンベヤ)に搬送カバーユニットを組み付けることにより、請求項1に係る発明と同様の効果が奏される搬送装置が簡単に得られ、しかも既存の搬送機を利用することで、搬送装置のコストを削減することができる。
しかも、転動体の回転駆動は、既存の搬送機における搬送体を利用して、該搬送体との間の摩擦により行われるので、転動体を回転駆動させるためには、転動体を搬送体と接触させる位置に組み付ければよく、転動体の回転駆動力を確保するための搬送機への搬送カバーユニットの組付けおよび取外しが容易化されて、この点でも搬送装置の組立性およびメンテナンス性を向上させることができる。
【0016】
請求項3に係る本発明の搬送装置によれば、請求項2に係る発明が奏する効果に加えて、次の効果が奏される。
搬送体が無端の搬送ベルトであることにより、転動体が連続体である搬送ベルトにより摩擦駆動されるので、転動体を支持しているカバーが既存の搬送機に適用される際に、カバーにおける転動体の配置に起因する制約が少なくなって、共通の搬送機を利用して搬送機が構成される場合に、適用可能なカバーの選択の範囲が大きくなるため、共通の搬送機を利用して、多様な形態の搬送装置を容易に構成することができる。
【0017】
請求項4に係る本発明の搬送装置によれば、請求項1から請求項3のいずれか1つに係る発明が奏する効果に加えて、次の効果が奏される。
所定数の転動体が、搬送路の幅方向に配列された複数の転動体により構成される転動体列が搬送路での物品の搬送方向に複数の列を作って配置され、カバーが、互いに枢着された複数のリンクプレートを有し、各リンクプレートが、転動体群を構成する複数の転動体を回転可能に支持することにより、また、転動体群を回転可能に支持するリンクプレートの数を変更することにより、カバーの大きさを容易に変更できるので、ニーズに応じた多様な形態の搬送装置を容易に構成することができ、また転動体を備える既存のコンベヤチェーンの利用が可能になるので、この場合には、搬送カバーユニットを備える搬送装置のコストを削減することができる。
【0018】
請求項5に係る本発明の搬送装置によれば、請求項1から請求項3のいずれか1つに係る発明が奏する効果に加えて、次の効果が奏される。
カバーが、転動体保持プレートと、転動体を1つずつ回転可能に支持する所定数のホルダとを有し、各ホルダが、転動体保持プレートに貫通して設けられた嵌合孔に、嵌合孔の貫通方向に挿入可能であることとにより、転動体をカバーに装着するためには、転動体保持プレートに設けられた嵌合孔に、該嵌合孔の貫通方向にホルダが挿入されればよいので、転動体保持プレートへのホルダの装着が容易になり、カバーへの転動体の組付工数が削減されて、転動体を支持するカバーのコスト、ひいては搬送装置のコストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施例である搬送装置の要部平面図。
【図2】図1のII−II線での要部断面図。
【図3】図1のIII−III線での一部の要部断面図。
【図4】図1の搬送装置の搬送カバーユニットの一部斜視図であり、一部が分解されて示された図。
【図5】本発明の第2実施例である搬送装置の一部を示し、図3に相当する図。
【図6】本発明の第3実施例である搬送装置の搬送カバーユニットの一部を示し、図4に相当する図。
【図7】本発明の第3実施例である搬送装置の一部を示し、図2での拡大図に相当する図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の搬送装置は、駆動部材により回転駆動される複数である所定数の転動体と、前記駆動部材を上方から覆うとともに物品が搬送される搬送路を形成する前記カバーと、前記駆動部材および前記カバーを支持する機台とを備え、前記転動体が前記カバーの上面上の物品を搬送する搬送装置において、前記カバーには、前記各転動体が貫通してその上部のみが前記上面から上方に突出する前記所定数の貫通孔が設けられ、前記カバーが、前記カバーにおいて前記貫通孔を形成している周縁部が前記転動体の周囲を囲んでいる状態で前記各転動体を回転可能に支持するとともに、前記機台に固定され、前記カバーおよび前記各転動体が、一体の状態で、前記機台に対して着脱可能である搬送カバーユニットを構成することにより、作業者による作業上の安全性向上および転動体の周囲からの異物等の侵入防止を可能としながら、搬送装置の組立性およびメンテナンス性を向上させることができるものであれば、その具体的な態様はいかなるものであっても構わない。
【0021】
例えば、本発明の搬送装置における転動体は、ボールおよびローラのいずれでも構わない。
転動体を回転駆動する駆動部材は、転動体を回転させる部材であればいかなるものでもよく、例えば、転動体を摩擦駆動するもの、または転動体と一体に回転する回転部材を駆動するもの(例えば、電動モータ)でよい。
【実施例】
【0022】
以下、本発明の実施例を、図1〜図7を参照して説明する。
図1〜図4は、本発明の第1実施例を説明するための図である。
図1,図2を参照すると、本発明の第1実施例である搬送装置100は、駆動部材としての搬送ベルトBにより回転駆動される複数である所定数の転動体としてのボール160と、搬送ベルトBを上方から覆うとともに物品Wが搬送される搬送路101を形成する搬送路形成部材としてのカバー130と、搬送ベルトBおよびカバー130を支持する機台110とを備え、回転するボール160がカバー130の上面131上の物品Wを搬送方向A1に搬送する。
【0023】
ここで、上面131は、搬送路101の搬送路面である。
また、搬送方向A1は、搬送路101において搬送ベルトBにより駆動されて回転(または、転動)するボール160により搬送される物品Wの移動方向であって搬送路101に沿う方向である。そして、幅方向A2は搬送路101の幅方向であり、搬送方向A1に直交する方向である。また、搬送方向A1に平行な方向を前後方向とし、搬送方向A1を前方とし、搬送方向A1とは反対の方向を後方とする。
【0024】
図1〜図3を参照すると、搬送ベルトBおよび機台110は、既存の物品搬送用の搬送機としてのベルトコンベヤCの構成部材である。
具体的には、このベルトコンベヤCは、それ自体で搬送対象物品(図示されず)を搬送可能な搬送装置であり、設置部としての床(図示されず)に設置される機台110と、前記搬送対象物品を搬送するために走行する搬送体である無端の搬送ベルトBと、搬送ベルトBを駆動する駆動機構120(図2参照)とを備える。
なお、前記搬送対象物品とは、ベルトコンベヤCの搬送ベルトBにより搬送される物品であり、搬送装置100により搬送される物品Wとの区別をするための便宜上の表現である。
【0025】
機台110は、前記床に設置される複数の脚部(図示されず。以下、単に「脚部」という。)と、搬送方向A1および幅方向A2で離隔している脚部に固定される支持部材としての1対の支持フレーム111と、幅方向A2で離隔している1対の支持フレーム111にボルトF1により固定されるとともに搬送ベルトBを走行可能に支持するための搬送体支持部材であるベルト受け112と、各支持フレーム111にボルトF2により固定されるとともに搬送ベルトBを下方から覆う搬送体カバーであるベルトカバー114とを有する。各支持フレーム111は、搬送方向A1で離隔している複数の脚部に固定されている。
【0026】
ベルト受け112において、搬送ベルトBとの接触面113は、水平面に平行な平面により構成される。このため、ボール160とベルト受け112とにより挟持されて走行する搬送ベルトBは、接触面113により平面状の状態で走行するので、各ボール160との接触状態の維持が容易になる。なお、ベルト受け112を備えていない既存のベルトコンベヤにおいては、ベルト受け112が既存の該ベルトコンベヤに付加することにより設けられてもよい。
【0027】
駆動機構120は、搬送ベルトBを走行させる駆動源としての逆回転可能な電動モータ(図示されず)と、該電動モータにより回転駆動される駆動ローラ121と、1対の被動ローラ122と、蛇行防止用の1対のガイドローラ123とを有する。
図1〜図3には、前記電動モータが正回転する場合の状態が示されている。
【0028】
図1に示されるように、カバー130は、搬送ベルトBの上方に配置されるとともに、1対の支持フレーム111の上部に載置されて、1対の支持フレーム111に跨がって上方から搬送ベルトBを覆う。幅方向A2で、搬送ベルトBの幅Wbは、カバー130の幅Wcよりも狭い。
このため、幅方向A2で搬送ベルトBの外側に位置する1対の支持フレーム111と、搬送ベルトBとの間の幅方向A2での隙間は、カバー130により上方から覆われる。
【0029】
図1,図2,図4を参照すると、カバー130は、上面131の一部であるとともに物品Wが載置される載置面131cを有する複数の転動体保持プレートとしてのリンクプレート140と、搬送方向A1で隣接するリンクプレート140同士を互いに枢着するための連結部材としてのヒンジピンPと、ボール160を1つずつ回転可能に支持するホルダ150とを有する。
リンクプレート140と、ホルダ150を構成する各ホルダ151,152とは、形成材料(例えば、合成樹脂)により一体成形されている。
【0030】
各リンクプレート140は、幅方向A2に間隔を置いて配置されるとともに前後方向での両端部である複数の第1ヒンジ部141および複数の第2ヒンジ部142と、幅方向A2に間隔を置いて配置されるとともに転動体群166(図1参照)を構成する複数である一定数の、本実施例では6つのボール160をそれぞれ回転可能に支持する同数の転動体支持部143とを有する。
カバー130は、搬送方向A1に配列された複数のリンクプレート140が、搬送方向A1で隣接するリンクプレート140同士が幅方向A2で交互に配置された第1ヒンジ部141および第2ヒンジ部142に挿通されたヒンジピンPを介して連結されて一体化されることにより、構成されている。
【0031】
図1,図3,図4を参照すると、リンクプレート140は、幅方向A2での両端部140aに、リンクプレート140を、したがってカバー130を、両支持フレーム111に着脱可能に結合するための結合部148を有する。リンクプレート140は、結合部148において、該結合部148に設けられた挿通孔148aに結合具としてのボルトF3により支持フレーム111に結合されて、機台110に固定される。
ここで、両端部140aは、幅方向A2でのカバー130の両端部を構成する。
ヒンジピンPは、幅方向A2でのリンクプレート140の幅よりもやや短い幅方向長さを有し、端部140aに着脱可能に設けられる抜止め部材(図示されず)により、抜止めされる。
【0032】
図2,図4を参照すると、転動体支持部143は、幅方向A2で隣接する第1ヒンジ部141の間で前後方向に凹んだ凹部により構成され、該転動体支持部143に、ボール160を回転可能に支持する転動体ユニットHが装着される。転動体支持部143は、前後方向で一方向側に開放する空隙部144を形成し、該空隙部144に対して、前後方向で、転動体ユニットHの挿入および抜出しが行われる。
転動体支持部143の両側面には、転動体ユニットHが挿入されるときに案内部となる嵌合溝145と、挿入された転動体ユニットHと係合することにより該転動体ユニットHの外れ防止部となる係止突起146とが設けられている。
【0033】
転動体ユニットHは、貫通孔としての上収容孔153が設けられた上ホルダ151および貫通孔としての下収容孔154が設けられた下ホルダ152を有するホルダ150と、上下方向で合わされた上ホルダ151および下ホルダ152の内部に収容されたボール160とにより構成される。各ホルダ151,152は、嵌合溝145に嵌合する嵌合部となる凸部を構成する段部155,156を有する。
カバー130の一部であるホルダ150は、収容孔を構成する両上収容孔、下収容孔153,154を形成している部分である周縁部157,158が、ボール160の周囲を全周に亘って囲んでいる状態で、両収容孔153,154に収容された状態のボール160を回転可能に支持する。
【0034】
また、ボール160がホルダ150に収容された状態で、上面131において、ボール160と周縁部157との間の隙間G(図2参照)は、上収容孔153の形成の際に、ボール160の回転を許容する範囲で小さくなるように設定される。
そして、図2に示されるように、ボール160がホルダ150に収容された状態で、その上部161および下部162が、上ホルダ151の上収容孔153および下ホルダ152の下収容孔154からそれぞれ突出している。
【0035】
図1,図2,図4を参照すると、転動体ユニットHが各転動体支持部143に装着されて、ボール160がホルダ150を介してリンクプレート140に回転可能に支持された状態で、ヒンジピンPにより各リンクプレート140が連結されて、カバー130が構成される。そして、カバー130および該カバー130に支持されたボール160は、一体の状態で、機台110の支持フレーム111に対して着脱可能である搬送カバーユニットUを構成する。
したがって、カバー130が支持フレーム111に固定されることにより、カバー130およびすべてのボール160が機台110に組み付けられる。
このとき、ボール160がホルダ150に収容された状態において、上面131におけるボール160と周縁部157との間の隙間Gは、ホルダ150に対するボール160の位置の変化に応じて変化するものの、ボール160がホルダ150を介してリンクプレート140に取り付けられた状態、さらには、ボール160を支持しているカバー130が支持フレーム111に固定された状態でも、支持フレーム111へのカバー130の組付自体により変化することはなく、維持される。
【0036】
カバー130が支持フレーム111に固定された状態で、前記所定数の、この実施例ではカバー130に保持されるすべてのボール160は、搬送路101の幅方向A2に配列された複数のボール160(本実施例では、転動体群166である。)により構成される転動体列167が搬送方向A1に複数の列を作って配置される。
【0037】
図2に示されるように、カバー130の転動体支持部143にホルダ150を介して支持されている各ボール160において、その上部161のみが、上ホルダ151の上収容孔153を貫通して上面131の一部である上ホルダ151の上面131aおよびリンクプレート140よりも上方に突出し、ボール160の下部162のみが、下ホルダ152の下収容孔154を貫通して下面132の一部である下ホルダ152の下面132aおよびリンクプレート140よりも下方に突出している(図3も参照)。
そして、上部161においてカバー130上の物品Wに接触可能なボール160は、下部162において搬送ベルトBに接触し、該搬送ベルトBにより摩擦駆動されて回転して、物品Wを搬送方向A1に搬送する。
【0038】
次に、前述のように構成された実施形態の作用および効果について説明する。
搬送装置100は、搬送ベルトBにより回転駆動される複数のボール160と、搬送ベルトBを上方から覆うとともに物品Wが搬送される搬送路101を形成するカバー130と、搬送ベルトBおよびカバー130を支持する機台110とを備え、ボール160がカバー130の上面131上の物品Wを搬送することにより、搬送ベルトBにより回転駆動される複数のボール160により、物品Wをカバー130により形成される搬送路101に沿って搬送することができる。
【0039】
カバー130には、各ボール160が貫通してその上部161のみが上面131から上方に突出する複数である前記所定数の貫通孔としての上収容孔153が設けられ、カバー130は、上収容孔153を形成している周縁部157がボール160の周囲を囲んでいる状態で各ボール160を回転可能に支持するとともに、機台110に固定され、カバー130および各ボール160は、一体の状態で、機台110に対して着脱可能である搬送カバーユニットUを構成する。
この構成により、カバー130および各ボール160が一体化された1つの搬送カバーユニットUを構成するので、カバー130および各ボール160が一体化された状態で上収容孔153の周縁部157とボール160との間の隙間Gを設定することにより、この隙間Gを異物等の侵入防止の観点から小さく設定することができ、該間隙Gが機台110に組み付けられたときにも維持される。このため、搬送装置100により搬送される物品Wを扱う作業者による作業上の安全性の向上およびボール160の周囲からの異物等の侵入の防止が可能になるとともに、カバー130および各ボール160を機台110に組み付ける際の隙間Gの管理が不要になるので、搬送装置100の組立性およびメンテナンス性を向上させることができる。
【0040】
各ボール160を回転駆動する駆動部材が、ベルトコンベヤCに備えられて搬送対象物品を搬送するために走行する搬送ベルトBであり、機台110は、ベルトコンベヤCに備えられ、各ボール160が、搬送ベルトBにより摩擦駆動される。
この構成により、既存のベルトコンベヤCに搬送カバーユニットUを組み付けることにより、搬送装置100が簡単に得られ、しかも既存のベルトコンベヤCを利用することで、搬送装置100のコストを削減することができる。
しかも、ボール160の回転駆動は、既存のベルトコンベヤCにおける搬送ベルトBを利用して、該搬送ベルトBとの間の摩擦により行われるので、ボール160を回転駆動させるためには、ボール160を搬送ベルトBと接触させる位置に組み付ければよく、ボール160の回転駆動力を確保するためのベルトコンベヤCへの搬送カバーユニットUの組付けおよび取外しが容易化されて、この点でも搬送装置100の組立性およびメンテナンス性を向上させることができる。
【0041】
また、各ボール160を回転駆動する駆動部材が無端の搬送ベルトBであることにより、ボール160が連続体である搬送ベルトBにより摩擦駆動されるので、ボール160を支持しているカバー130が既存の搬送機に適用される際に、カバー130におけるボール160の配置に起因する制約が少なくなって、共通のベルトコンベヤCを利用して搬送装置100が構成される場合に、適用可能なカバー130の選択の範囲が大きくなるため、共通のベルトコンベヤCを利用して、多様な形態の搬送装置100を容易に構成することができる。
【0042】
所定数のボール160は、幅方向A2に配列された複数のボール160により構成される転動体列167が搬送方向A1に複数の列を作って配置され、カバー130が、互いに枢着された複数のリンクプレート140を有し、各リンクプレート140が、転動体群166を構成する複数のボール160を回転可能に支持する。
この構成により、転動体群166を回転可能に支持するリンクプレート140の数を変更することにより、カバー130の大きさを容易に変更できるので、ニーズに応じた多様な形態の搬送装置100を容易に構成することができ、またボールを備える既存のコンベヤチェーンの利用が可能になるので、この場合には、搬送カバーユニットUを備える搬送装置100のコストを削減することができる。
さらに、転動体列167が、幅方向A2に配列された複数の一定数のボール160で構成される転動体群166により構成されることにより、搬送方向A1でのリンクプレート140の連結数を変更するのみで、搬送路101の幅が一定で、かつニーズに応じて搬送方向A1での長さが変更可能なカバー130を容易に構成することができる。
【0043】
次に、図5〜図7を参照して、本発明の第2,第3実施例を説明する。第2,第3実施例は、第1実施例とは、部分的に異なるものの、その他は基本的に同一の構成を有するものである。そのため、同一の部分についての説明は省略または簡略にし、異なる点を中心に説明する。なお、第1実施例の部材等と同一の部材等または対応する部材等については、基本的に第1実施例における符号と同一の符号が使用されている。
【0044】
第2実施例である搬送装置100のカバー130において、各リンクプレート140の端部140aには、第1実施例での結合部148(図1,図3参照)が設けられておらず、カバー130を支持フレーム111に着脱可能に固定するためにカバー130が有する結合部149は、金属製のヒンジピンPが支持フレーム111を貫通して延びている両端部Pa(図5では、一方の端部Paが示されている。)に設けられたねじ部により構成される。
リンクプレート140は、幅方向A2で両支持フレーム111の間に配置されていて、ヒンジピンPを介して、結合部149において結合具としてのナットF6により支持フレーム111に結合されて、機台110に固定される。
そして、第1実施例と同様に、幅方向A2で、搬送ベルトBの幅は、カバー130の幅よりも狭い。このため、1対の支持フレーム111と搬送ベルトBとの間の幅方向A2での隙間は、カバー130により上方から覆われる。
【0045】
また、ベルトカバー114は、ベルト受け112が有するフランジ112bと、1対の支持フレーム111を連結する連結フレーム116とに挟持されて保持される。
フランジ112bは、ベルト受け112においてボルトF1により固定される側部112aに連なり、各支持フレーム111に沿って前後方向に延びている。また、前記脚部に(図5には、1つの脚部117が示されている。)に結合される複数の連結フレーム116は、搬送方向A1に間隔を置いて配置されるとともに、ボルトF4により各支持フレーム111に固定されて、ベルトカバー114を下方から支持する。
【0046】
この第2実施例によれば、第1実施例と同様の作用および効果が奏されるほか、次の作用および効果が奏される。
カバー130が幅方向A2で機台110の1対の支持フレーム111の間に配置されるので、リンクプレート140が結合部148を有する第1実施例のカバー130とは異なり、該結合部148がない分、各リンクプレート140において物品Wが搬送されない領域を、幅方向A2で減少させることができるため、リンクプレート140の小型化および軽量化を可能としながら、搬送路101における所要の搬送領域を確保することができる。
【0047】
図6,図7を参照すると、本発明の第3実施例において、搬送装置100が備えるカバー330は、1以上の、本実施例では、1つの平板状の転動体保持プレート340(以下、「プレート340」という。)と、該プレート340に保持されるとともにボール160を保持するホルダ350とにより構成される。
プレート340には、複数のボール160が、搬送方向A1および搬送路101の幅方向A2に配置されていて、例えば、第1実施例と同様に、所定数のボール160が、幅方向A2に配列された複数のボール160からなる転動体群166により構成される転動体列167が搬送方向A1に複数の列を作って配置されている。別の例として、複数のボール160が、搬送方向A1および幅方向A2にランダムに配置されていてもよい。
【0048】
プレート340は、搬送方向A1および幅方向A2に間隔を置いて配置されるとともに、各ボール160を回転可能に支持する所定数の転動体支持部343と、幅方向A2でのプレート340の両端部340aに設けられた結合部348とを有する。結合部348にはボルト(図示されず)が挿通される挿通孔348aが設けられ、第1実施例と同様に、各支持フレーム111(図1,図3参照)に該ボルト(図示されず)により固定される。ここで、両端部340aは、幅方向A2でのカバー330の両端部を構成する。
転動体支持部343には、プレート340を貫通するとともに、上方に向かって拡径するテーパ壁面345により規定される嵌合部としての嵌合孔344が設けられる。嵌合孔344の貫通方向は、プレート340が支持フレーム111に固定された状態で、上下方向である。
【0049】
転動体ユニットHは、貫通孔としての収容孔353が設けられたホルダ350と、収容孔353に収容された状態でホルダ350に回転可能に支持されるボール160とにより構成される。
プレート340およびホルダ350のそれぞれは、形成材料(例えば、合成樹脂)により一体成形されている。
【0050】
ホルダ350は、嵌合孔344に軽圧入の状態で嵌合される嵌合部としての嵌合凸部351と、保持プレート340の下面に当接する抜止め部としての円環状のフランジ352とを有する。嵌合凸部351の外周面351aは、上方に向かって拡径しているテーパ面により構成される。
ボール160は、ホルダ350の弾性変形を利用して収容孔353に回転可能に収容され、ホルダ350は、その弾性変形を利用して、嵌合凸部351側から嵌合孔344に、嵌合孔344の貫通方向に挿入されて、嵌合される。
カバー330の一部であるホルダ350は、各収容孔353を形成している部分である周縁部357が、ボール160の周囲を全周に亘って囲んでいる状態でボール160を回転可能に支持する。カバー330の上面331において、ボール160と周縁部357との間には、隙間Gが形成されている。
カバー330および該カバー330に支持されたボール160は、一体の状態で、機台110に対して着脱可能である搬送カバーユニットU3を構成する。
【0051】
また、図7に示されるように、転動体ユニットHが転動体支持部343に装着されて、カバー330の転動体支持部143にホルダ350を介して支持されている各ボール160において、その上部161のみが、ホルダ350の収容孔353を貫通して上面331の一部であるホルダ350の上面331aおよびプレート340よりも上方に突出し、および下部162のみが、収容孔353を貫通してカバー330の下面332の一部であるホルダ350の下面332aおよびプレート340よりも下方に突出している。
そして、上部161においてカバー330上の物品Wに接触可能なボール160は、下部162において搬送ベルトBに接触し、該搬送ベルトBにより摩擦駆動されて回転する。
【0052】
この第3実施例によれば、第1実施例と同様の作用および効果が奏されるほか、次の作用および効果が奏される。
カバー330が、プレート340と、ボール160を1つずつ回転可能に支持する所定数のホルダ350とを有し、各ホルダ350が、プレート340に貫通して設けられた嵌合孔344に、嵌合孔344の貫通方向に挿入可能である。
この構成により、ボール160をカバー330に装着するためには、プレート340に設けられた嵌合孔344に、該嵌合孔344の貫通方向にホルダ350が挿入されればよいので、プレート340へのホルダ350の装着が容易になり、カバー330へのボール160の組付工数が削減されて、ボール160を支持するカバー330のコスト、ひいては搬送装置100のコストを削減することができる。
また、プレート340が1つの平板状の部材であることにより、カバー330の部品点数が削減され、またその構造が簡素化されるので、カバー330のコストを削減でき、ひいては搬送装置100のコストを削減することができる。
【0053】
以下、前述した実施例の一部の構成を変更した実施例について、変更した構成に関して説明する。
既存の搬送機は、ベルトコンベヤC以外のコンベヤであってもよい。例えば、既存の搬送機がローラコンベヤである場合、搬送体は搬送ローラである。
ホルダは、本体に対して着脱可能な部材でなく、本体に一体化されて(例えば、一体成形により一体化されて)設けられてもよい。
周縁部157,158,357は、全周に渡ってボール160を囲む場合とほぼ同様のボール160の回転が得られる支持形態が確保される範囲で、その一部が分断されて(例えば、ホルダ150,350にスリットが形成される場合。)、ボール160の一部が周縁部157,158により囲まれていなくてもよい。
転動体がローラである場合、ローラと周縁部との間の間隙の形状は、矩形状である。
転動体列167を構成する転動体の数と、転動体群166を構成する転動体の数とは異なっていてもよい。
搬送装置100には、搬送体を備える既存の搬送機が利用されなくてもよい。この場合、転動体を回転駆動する駆動部材は、転動体を回転駆動する専用の部材であり、例えば駆動用ベルトまたは駆動用ローラである。
【符号の説明】
【0054】
100・・・搬送装置
101・・・搬送路
110・・・機台
130,330・・・カバー
131,331・・・上面
140・・・リンクプレート
153・・・上収容孔
157・・・周縁部
160・・・ボール
161・・・上部
166・・・転動体群
167・・・転動体列
340・・・転動体保持プレート
344・・・嵌合孔
350・・・ホルダ
357・・・周縁部
W ・・・物品
C ・・・ベルトコンベヤ
B ・・・搬送ベルト
U,U3・・・搬送カバーユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動部材により回転駆動される複数である所定数の転動体と、前記駆動部材を上方から覆うとともに物品が搬送される搬送路を形成する前記カバーと、前記駆動部材および前記カバーを支持する機台とを備え、前記転動体が前記カバーの上面上の物品を搬送する搬送装置において、
前記カバーには、前記各転動体が貫通してその上部のみが前記上面から上方に突出する前記所定数の貫通孔が設けられ、
前記カバーが、前記カバーにおいて前記貫通孔を形成している周縁部が前記転動体の周囲を囲んでいる状態で前記各転動体を回転可能に支持するとともに、前記機台に固定され、
前記カバーおよび前記各転動体が、一体の状態で、前記機台に対して着脱可能である搬送カバーユニットを構成することを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記駆動部材が、物品搬送用の搬送機に備えられて搬送対象物品を搬送するために走行する搬送体であり、
前記機台が、前記搬送機に備えられ、
前記各転動体が、前記搬送体により摩擦駆動されることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記搬送体が無端の搬送ベルトであることを特徴とする請求項2記載の搬送装置。
【請求項4】
前記所定数の前記転動体が、前記搬送路の幅方向に配列された複数の前記転動体により構成される転動体列が前記搬送路での前記物品の搬送方向に複数の列を作って配置され、
前記カバーが、互いに枢着された複数の前記リンクプレートを有し、
前記各リンクプレートが、転動体群を構成する複数の前記転動体を回転可能に支持することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の搬送装置。
【請求項5】
前記カバーが、転動体保持プレートと、前記転動体を1つずつ回転可能に支持する前記所定数のホルダとを有し、
前記各ホルダが、前記転動体保持プレートに貫通して設けられた嵌合孔に、前記嵌合孔の貫通方向に挿入可能であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−6654(P2013−6654A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139856(P2011−139856)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【Fターム(参考)】