説明

搬送装置

【課題】RFIDタグが付された荷物を搬送するための搬送装置において、被搬送物品に付されたRFIDタグを精度良く読み取ることを可能とすること。
【解決手段】搬送装置1は、その前面に設けられた物品搬送部5と、この物品搬送部5の動作を操作するための操作部10とを有している。物品搬送部5には、RFIDタグを読み書きするためのリーダライタ用アンテナ20が設けられている。さらに、リーダライタ用アンテナ20の背面には、アンテナ20よりも大きな面積の網状金属部材25が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置、特に、フォークリフト等物品を搬送するための搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リーダライタとRFID(Radio Frequency Identification)タグを利用したRFIDシステムが普及しつつある。RFIDタグは、タグごとに識別可能なID情報を保有しており、物品に貼り付けられたRFIDタグをリーダライタで読み書きすることで、無線通信にて、各物品のID情報を入手することができる。
【0003】
このRFIDシステムは、工場や倉庫における物品管理システムとしての利用が見込まれている。具体的には、例えば特許文献1や特許文献2に開示されているように、荷物や搬送用パレットにRFIDタグを付けておき、その情報をフォークリフトに備え付けられたリーダライタにて読み書きする、といったシステムが提案されている。このシステムは、物品の搬送先の情報や在庫の情報等を、無線を介して識別・収集できることから、工場や倉庫における物品管理・物流管理を効率良く行うことができる。
【0004】
しかしながら、工場や倉庫には、搬送対象荷物の他にも数多くの荷物が納められているため、荷物とリーダライタ用のアンテナとが離れている場合、搬送していない他の荷物に付されたRFIDタグも読み取ってしまうことがある。これに対して、荷物とリーダライタ用アンテナとが近い場合、搬送していない他の荷物に付されたRFIDタグを読み取ってしまう可能性は小さくなるが、アンテナの指向性には限界があるため、広範囲に配置されたRFIDタグを確実に読み取ることが難しくなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−321899号公報
【特許文献2】特開2006−347713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、荷物や搬送用パレット等の被搬送物品に付されたRFIDタグを精度良く読み取ることが可能な搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態である搬送装置は、
RFIDタグが付された被搬送物品を搬送するための搬送装置であって、
前記搬送装置の前面に設けられ、前記被搬送物品を搬送するための物品搬送部と、前記搬送装置及び前記物品搬送部の動作をコントロールするための操作部と、を有しており、
前記RFIDタグを読み書きするためのリーダライタ用アンテナが、その放射面が前記被搬送物品を向くように、前記搬送装置に設けられており、
前記リーダライタ用アンテナの背面側には、前記リーダライタ用アンテナよりも大きな面積を有する網状金属部材が配置されている、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、特に、リーダライタ用アンテナの背面側に、リーダライタ用アンテナよりも大きな面積の網状金属部材を配置しているため、搬送装置の操作性を大きく妨げることなく、被搬送物品に付されたRFIDタグを精度良く読み取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一実施形態であるフォークリフトと荷物の概略外観図である。
【図2】網状金属部材(金網)及びリーダライタ用アンテナ部分の外観拡大図である。
【図3】前記フォークリフトと荷物の位置関係を説明するための側面図である。
【図4】リーダライタ用アンテナによるタグの読み取り原理を説明するための部分拡大図である。
【図5】前記金網の部分拡大図である。
【図6】前記網状金属部材(金網)の他の例を示す概略外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る搬送装置の実施例につき、添付図面を参照して説明する。
【0011】
図1に示す搬送装置はフォークリフト1であって、搬送用パレット40上に積載された被搬送物品(荷物)50を搬送するための物品搬送部として機能するフォーク部5、及び、フォークリフト1やフォーク部5の動作をコントロールするための操作部として機能する運転席10を有している。RFIDシステムとしてはUHF帯のRFIDシステムを利用している。
【0012】
フォーク部5は上下動が可能であって、フォークリフト1の前面に設けられている。図示しないが、運転席10には、フォーク部5を動作させるためのリフトレバーや、フォークリフト1の本体を動作させるためのハンドル、ブレーキペダル、アクセルペダル等が設けられている。フォークリフト1の基本構成は、周知のフォークリフトの構成と同じである。
【0013】
図3に示すように、搬送用パレット40に搭載された各荷物50の一方主面側には、UHF帯RFIDタグ51がそれぞれ付されている。このRFIDタグ51は、メモリー回路やロジック回路等を有したRFID用ICチップとこのICチップに接続されたアンテナ素子を備えている。アンテナ素子としてはダイポールアンテナが利用されている。荷物50は、各荷物50に取り付けられたRFIDタグ51のアンテナ素子がリーダライタ用アンテナ20と向かい合うように、パレット40上に整列配置されている。
【0014】
図1及び図3に示すように、RFIDタグ51を読み書きするためのリーダライタ用アンテナ20は、その放射面20aが荷物50のRFIDタグ51の取り付け面を向くように、フォークリフト1の前面に設けられている。より具体的には、フォークリフト1のフォーク部5の荷物50と対向する面に取り付けられている。リーダライタ用アンテナ20はパッチアンテナであって、このリーダライタ用アンテナ20には、アンテナ素子にて読み取った情報を処理するための情報処理回路やこの情報を表示するための表示装置等が接続されている。これらの情報処理回路や表示装置等は、リーダライタ用アンテナ20と同じ筺体に収められていてもよいし、リーダライタ用アンテナ20の筺体とは異なる筺体に設けられていてもよい。
【0015】
図1、図2及び図3に示すように、リーダライタ用アンテナ20の背面側(リーダライタ用アンテナ20の放射面20aとは反対面側)に網状金属部材25が配置されている。この網状金属部材25は金網である。この金網25は、フォークリフト1のフォーク部5に設けられており、フォーク部5に、その主面が荷物50のRFIDタグ51が付された面と対向するように、取り付けられている。このように可動部であるフォーク部5にリーダライタ用アンテナ20と金網25の両者が設けられていると、リーダライタ用アンテナ20と金網25との相対位置が変わることはない。この金網25は、リーダライタ用アンテナ20よりも大きな面積を有している。即ち、この金網25は、図5に示すように、線状金属材25a,25bを編み込んだものであり、グリッド状に整列された複数の開口部25cを有している。この金網25の面積は、荷物50のタグ51が付された面(対向面)の面積とほぼ同等であることが好ましい。金網25の面積が荷物50の対向面の面積よりも小さすぎると、複数のRFIDタグ51の全てをきちんと読むことが難しくなり、大きすぎると、搬送していない他の荷物に付されたRFIDタグを読んでしまうことがある。
【0016】
このフォークリフト1においては、特に、フォークリフト1の前面に取り付けられたリーダライタ用アンテナ20とフォークリフト1やフォーク部5を操作するための運転席10との間であって、リーダライタ用アンテナ20の背面側に、リーダライタよりも大きな面積の網状金属部材(金網)25を配置しているため、リーダライタ用アンテナ20をRFIDタグ51に近接させた場合であっても、複数の荷物50に付された複数のRFIDタグ51の各ID情報を精度良く読み取ることができる。
【0017】
より具体的に言うと、荷物50とフォークリフト1とが離れている場合は、搬送していない他の荷物に付されたRFIDタグも読み取ってしまうことがあるため、リーダライタ用アンテナ20によるタグ51の読み取りは、フォーク部5をパレット40に差し込む際、あるいは、フォーク部5をパレット40に差し込んだ状態で開始する。このとき、リーダライタ用アンテナ20とRFIDタグ51との距離は近い。従って、図4に示すように、リーダライタ用アンテナ20から放射される電磁波のうちRFIDタグ51に直接的に届く電磁波Aは、RFIDタグ51できちんと拾うことができる。即ち、この電磁波Aは、金網25の有無にかかわらず、リーダライタとRFIDタグ51との交信に寄与する。
【0018】
一方、金網25が無い場合、RFIDタグ51に直接的には届かなかった電磁波は、荷物50やパレット40で一部反射され、この反射された電磁波は、リーダライタとRFIDタグ51の交信には寄与しない。しかし、本実施例のように金網25が配置してあると、図4の電磁波Bのように、荷物50やパレット40で反射された電磁波が、さらに金網25で反射され、この電磁波の一部がRFIDタグ51に届くため、RFIDタグ51との交信に寄与する電磁波の量が多くなる。この結果、複数の荷物50に付された複数のRFIDタグ51の各ID情報を読み取ることができようになる。また、図5に示すように、金網25は開口部25cを有しているため、運転席10からの視認性を大きく劣化させることは無く、運転者によるフォークリフト1の操作性やフォーク部5の操作性はほとんど損なわれない。
【0019】
本実施例において、荷物50は段ボール箱のようなケースであってもよいが、少なくともRFIDタグ51が付されている面が金属面のケースであることが好ましい。ケースの外装が全て金属面であっても構わない。ケース自体が金属製のケースであってもよいし、樹脂製のケースの表面を金属化したものであってもよい。樹脂中に金属粉末を混合し、これを成型したものであってもよい。少なくともRFIDタグ51が取り付けられた面が金属であれば、リーダライタ用アンテナ20から放射される電磁波は、ケースの金属面で反射されるため、RFIDタグ51との交信に寄与しない電磁波の量を少なくすることができる。
【0020】
また、金網25の開口部25aの開口径はキャリア周波数のλ/4以下であることが好ましい。即ち、UHF帯RFIDシステムであれば、開口部25aの開口径を2.5〜25cm程度にしておくことが好ましい。このような範囲の開口径にしておけば、金網25を反射材として十分に機能させることができる。なお、開口部25aの形状は正方形に限定されるものではなく、横方向長さ(X)と縦方向長さ(Y)が異なっていても構わない。また、円形や楕円形など任意の形状を持っていても構わない。
【0021】
また、金網25は、平状金網に限定されるものではなく、図6に示すように、リーダライタの背面方向に設けられた主面部26aとリーダライタ20の側面方向に設けられた四つの側部(第1側部〜第4側部26b〜26e)とを有する蓋状の金網であってもよい。なお、四つの側部のうち、例えば第4側部26eが無い形状であってもよく、全ての側部に金網が設けられている必要は無い。また、椀状(パラボラ状)の金網であってもよい。
【0022】
なお、本発明に係る搬送装置は、前記実施例に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変形することができる。
【0023】
例えば、利用するRFIDシステムはUHF帯RFIDシステムに限定されるものではなく、例えばHF帯RFIDシステムなど、各種周波数帯のRFIDシステムを利用することができる。
【0024】
被搬送物品は、ケースのような荷物の他、これを搭載するためのパレットであってもよい。つまり、RFIDタグは荷物のほか、パレットにも取り付けられていてもよい。パレットのみに取り付けられていてもよい。被搬送物品はケースに収容されていてもよい。この場合、ケースは搬送用にのみ使用される。
【0025】
また、リーダライタと金網の両者がフォークリフトのフォーク部に設けられている構成に限定されるものではなく、例えば、金網をフォークリフトのバックレスト部やリフト本体部に設け、リーダライタはフォーク部に設けるといった構成を採用してもよく、金網とリーダライタの両者をバックレスト部やリフト本体部に設けてもよい。
【0026】
また、RFIDタグのアンテナは、ダイポールアンテナの他、ループアンテナや逆Fアンテナ、パッチアンテナ等の各種アンテナを利用することができる。リーダライタ用アンテナも同様に、パッチアンテナの他、ダイポールアンテナやループアンテナ、逆Fアンテナ等の各種アンテナを利用することができる。
【0027】
また、搬送装置はフォークリフトに限定されるものではなく、例えば荷物を運搬するための手押し台車や自動車であってもよい。
【0028】
また、網状金属部材として金網を利用したが、この部材は、線状金属を編み込んで形成された金網に限定されるものではなく、例えば、絶縁性の平板状基材に開口部を複数設け、この平板状基材の表面のうち、リーダライタ用アンテナの取り付け面を金属化したものを用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、フォークリフト等の搬送装置に有用であり、特に、倉庫や工場における被搬送物品の情報管理に利用できる点で優れている。
【符号の説明】
【0030】
1…フォークリフト
5…フォーク部
10…運転席
20…リーダライタ用アンテナ
25…金網
50…荷物
51…RFIDタグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFIDタグが付された被搬送物品を搬送するための搬送装置であって、
前記搬送装置の前面に設けられ、前記被搬送物品を搬送するための物品搬送部と、前記搬送装置及び前記物品搬送部の動作をコントロールするための操作部と、を有しており、
前記RFIDタグを読み書きするためのリーダライタ用アンテナが、その放射面が前記被搬送物品を向くように、前記搬送装置に設けられており、
前記リーダライタ用アンテナの背面側には、前記リーダライタ用アンテナよりも大きな面積を有する網状金属部材が配置されている、
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記被搬送物品は、少なくとも前記RFIDタグが付されている面が金属面のケースであること、または、該ケースに収容されていること、を特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記リーダライタ用アンテナ及び前記網状金属部材は、前記搬送装置の前記物品搬送部に設けられていること、を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記網状金属部材における開口部の開口径は、キャリア周波数のλ/4以下であること、を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項5】
前記網状金属部材は、前記リーダライタ用アンテナの背面側に設けられた主面部と、前記リーダライタ用アンテナの側面側に設けられた側面部とを有すること、を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項6】
前記物品搬送部としてのフォーク部と、前記操作部としての運転席とを有したフォークリフトとして構成されていること、を特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−79123(P2013−79123A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219140(P2011−219140)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【出願人】(501474450)株式会社シーデックス (5)
【Fターム(参考)】