説明

搬送装置

【課題】ラインの拡幅や延長に要する工程を簡素化できるとともに、製作コストを低減できる搬送装置を提供する。
【解決手段】スラット30の上下面を反転させることなく、スラット30を一枚ずつ折り返すとともに、搬送部2の後端部に位置するスラット30A、および逆送部3の前端部に位置するスラット30Dに、各内側リンクプレート52・72を介して駆動力を付与することで、駆動力が付与されるスラット30A・30Dよりも下流側に位置するスラット30を押し出す駆動機構40および従動機構60を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置に関し、詳しくは、スラットコンベアを用いた搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車の組立設備や物流設備において、一対のチェーンの間に複数枚のスラット(搬送板)を掛け渡した、いわゆるスラットコンベアを用いた搬送装置が用いられている(例えば、特許文献1を参照)。上記搬送装置においては、スラットの上側にワークを載置した状態でチェーンを駆動することによりワークを搬送したり、スラットの上側に作業者が起立した状態でチェーンを駆動することにより作業者を移動させたりするのである。
【0003】
特許文献1に記載の搬送装置は、取り付け板を介してスラットをチェーンに固定している。このため、図24に示すように、スラット230の搬送方向における上流側端部および下流側端部に配設されるスプロケット243にチェーンを捲回する必要がある(図24に示すチェーンの周回軌跡244T参照)。つまり、特許文献1に記載の搬送装置では、スラット230の搬送軌跡の全周にわたってチェーンを配設する必要がある。
【0004】
このため、ラインの拡幅や延長を行うときに、チェーンをスプロケット243から切り離して延長作業や短縮作業を行う必要があった。つまり、ラインの拡幅や延長に要する工程が煩雑であった。
また、スラット230の枚数に応じた長さの特殊チェーンが必要となり製作コストが増大していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−286545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、ラインの拡幅や延長に要する工程を簡素化できるとともに、製作コストを低減できる搬送装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1においては、係合部が形成される複数枚のスラットを、搬送部に沿って搬送方向に連続的に移動させるとともに、前記搬送部に対して前記スラットの厚みよりも長い距離を離間して配置される逆送部に沿って前記搬送方向と反対の方向に連続的に移動させる搬送装置であって、前記搬送部の搬送方向における上流側端部に配置され、前記スラットの係合部と係合する被係合部が形成される上流側係合部材を備え、前記逆送部の搬送方向における下流側端部から、前記搬送部の搬送方向における上流側端部まで、前記スラットを前記上流側係合部材に係合させる上流側駆動機構と、前記搬送部の搬送方向における下流側端部に配置され、前記スラットの係合部と係合する被係合部が形成される下流側係合部材を備え、前記搬送部の搬送方向における下流側端部から、前記逆送部の搬送方向における上流側端部まで、前記スラットを前記下流側係合部材に係合させる下流側駆動機構と、を具備し、前記スラットは、搬送方向に沿って隣接した状態で、前記搬送部および前記逆送部に配設され、前記上流側駆動機構は、前記スラットの上下面を反転させることなく、前記スラットを一枚ずつ前記逆送部から前記搬送部に移動させるとともに、前記搬送部の搬送方向における上流側端部に位置する前記スラットに、前記上流側係合部材を介して駆動力を付与することで、前記駆動力が付与されるスラットよりも前記搬送部の搬送方向における下流側に位置する前記スラットを押し出し、前記下流側駆動機構は、前記スラットの上下面を反転させることなく、前記スラットを一枚ずつ前記搬送部から前記逆送部に移動させるとともに、前記逆送部の搬送方向における上流側端部に位置する前記スラットに、前記下流側係合部材を介して駆動力を付与することで、前記駆動力が付与されるスラットよりも前記逆送部の搬送方向における下流側に位置する前記スラットを押し出す、ものである。
【0008】
請求項2においては、前記各駆動機構は、前記各駆動機構の搬送方向における内側の端部に配設される内側端部部材と、前記各駆動機構の搬送方向における外側の端部に配設される外側端部部材と、前記スラットの搬送方向と直交する方向の側部において搬送方向に回動自在に前記各端部材に捲回されるとともに、前記スラットの搬送方向における幅ごとに前記各係合部材を支持する環状のチェーンと、をさらに備える、ものである。
【0009】
請求項3においては、前記各駆動機構の各端部部材は、少なくともいずれか一つが、所定の駆動源により駆動力が付与されるスプロケットによって構成される、ものである。
【0010】
請求項4においては、前記スラットは、搬送方向と直交する方向の側部より延出する係合ピンを、前記係合部として形成し、前記各駆動機構の各係合部材は、一側部が前記係合ピンに向けて延出し、前記延出部分にて前記係合ピンと係合可能に窪んだ凹部を、前記被係合部として形成する、ものである。
【0011】
請求項5においては、前記各駆動機構の各係合部材の被係合部は、前記各端部部材の非接触側に形成される、ものである。
【0012】
請求項6においては、前記各駆動機構の各係合部材は、搬送方向と直交する方向を回転軸方向として、前記チェーンに対して相対的に回動可能に支持される、ものである。
【0013】
請求項7においては、前記各駆動機構の各チェーンは、前記スラットの搬送方向における幅に対応する長さの複数の細切れのチェーンを、複数の継手リンクによって連結することで環状のチェーンとして構成され、前記継手リンクは、異なる二つの前記細切れのチェーンのうち、一方の前記細切れのチェーンの搬送方向における上流側端部に位置するプレートと、他方の前記細切れのチェーンの搬送方向における下流側端部に位置するプレートとを、リンクプレートで挟むとともに連結ピンで支持することで、前記異なる二つの細切れのチェーンを連結し、前記各駆動機構の各係合部材は、前記連結ピンで支持される部材に前記被係合部を形成することで構成される、ものである。
【0014】
請求項8においては、前記各駆動機構の各係合部材には、前記細切れのチェーンの搬送方向における下流側端部に位置するプレートを支持する連結ピンが挿通される基準孔と、前記細切れのチェーンの搬送方向における上流側端部に位置するプレートを支持する連結ピンが挿通されるとともに、前記連結ピンが上下方向に沿って摺動可能な長孔状の副基準孔と、が形成され、前記基準孔に挿通される連結ピンを中心に、前記チェーンに対して相対的に回動する、ものである。
【0015】
請求項9においては、前記各駆動機構の各チェーンには、前記スラットの搬送方向における幅ごとに、搬送方向と直交する方向の側部より延出するとともに、前記各係合部材を支持する延長ピンが取り付けられる、ものである。
【0016】
請求項10においては、前記各駆動機構の各係合部材は、前記延長ピンを中心に、前記チェーンに対して相対的に回動する、ものである。
【0017】
請求項11においては、前記各駆動機構の各係合部材には、前記延長ピンを基準として、前記凹部が形成される側と反対側に、摺動ピンが取り付けられ、前記各駆動機構は、前記摺動ピンを摺動させるとともに、前記各チェーンの搬送方向における内側の端部にて、前記延長ピンに対する前記摺動ピンの距離を変動させるカムガイドをさらに備え、前記スラットを前記各係合部材に係合させるとき、および前記スラットを前記各係合部材より離脱させるときに、前記スラットの係合ピンより前記各係合部材の凹部を逃がす方向に、前記各係合部材を回動させる、ものである。
【0018】
請求項12においては、前記各駆動機構の各チェーンの周回軌跡は、前記搬送方向における内側に向かうにつれて、各チェーンの周回軌跡の上下中央部側に収束する、ものである。
【0019】
請求項13においては、前記各駆動機構は、前記内側端部部材の外径寸法を、前記外側端部部材の外径寸法よりも小さく設定するとともに、前記各端部部材の中心を同一の高さ位置に設定する、ものである。
【0020】
請求項14においては、前記各駆動機構の各チェーンの周回軌跡には、搬送方向における外側端部に、搬送方向に沿って直線状に形成されるとともに、前記スラットの搬送方向における幅以上の距離が設定される直線部と、前記直線部よりも搬送方向における内側に、上下方向における外側に曲線状に膨らむ曲線部が形成される、ものである。
【0021】
請求項15においては、前記各駆動機構は、前記各チェーンの内側に配設され、前記各チェーンの周回軌跡に対応する形状の上下面が形成されるチェーンガイド、をさらに備え、前記各駆動機構の各チェーンは、前記各チェーンガイドの上下面を摺動することで、所定の周回軌跡を描く、ものである。
【0022】
請求項16においては、前記各駆動機構のいずれか一方は、所定の駆動源により、前記チェーンを周回させて前記スラットに駆動力を付与し、前記各駆動機構の他方は、前記各駆動機構の一方からの駆動力により、前記チェーンを周回させて前記スラットに駆動力を付与する、ものである。
【0023】
請求項17においては、前記各駆動機構は、前記スラットの搬送方向と直交する方向の側部に前記チェーンが複数配設され、前記各駆動機構の少なくともいずれか一方は、前記内側端部部材がスプロケットによって構成され、前記内側端部部材を回動可能に支持する駆動軸を回動させて、前記各駆動機構の各チェーンを周回させる、ものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、スラットの搬送軌跡における上流側端部および下流側端部だけに一般的なチェーンが配設されるため、ラインの拡幅や延長に要する工程を簡素化できるとともに、製作コストを低減できる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】搬送装置を模式的に示す図。(a)斜視図。(b)左側面図。
【図2】駆動機構を模式的に示す図。(a)左側面図。(b)正面図。
【図3】継手リンクを示す図。(a)分解斜視図。(b)左側面図。
【図4】チェーンガイドの形状およびチェーンの周回軌跡を示す図。
【図5】スラットに駆動力を付与する状態を示す左側面図。(a)駆動機構を示す図。(b)従動機構を示す図。
【図6】スラットの動きを示す左側面図。(a)駆動時の状態を示す図。(b)駆動後の状態を示す図。
【図7】搬送部から逆送部へ移動するときのスラットの動作を示す説明図。(a)後端部が逆送部へ落下する図。(b)前端部が搬送部近傍を移動する図。(c)前端部が逆送部近傍を移動する図。
【図8】従動機構の内側リンクプレートがスラットと係合するまでの流れを示す説明図。(a)内側スプロケットの捲回部分を移動する図。(b)曲線部を移動する図。(c)係合するときの図(d)係合した後の図。(e)スラットに押圧されて回動する図。(f)直線部を移動する図。
【図9】従動機構の内側リンクプレートが回動する動作を示す説明図。
【図10】チェーンに作用する回転モーメントを示す説明図。
【図11】駆動機構にチェーンガイドを備えない場合の、搬送装置の動作を示す左側面図。(a)駆動時の状態を示す図。(b)内側リンクプレートが回動する図。(c)係合ピンが脱落した図。
【図12】直線部が形成されない場合の、従動機構のチェーンに駆動力を付与するスラットが移行したときの状態を示す説明図。(a)概略側面図。(b)拡大図。
【図13】従動機構のチェーンに駆動力を付与するスラットが移行したときの状態を示す図。(a)概略左側面図。(b)拡大図。
【図14】曲線部が形成されない場合の、従動機構の内側リンクプレートの副基準孔と連結ピンとの関係を示す図。(a)内側リンクプレートの位置を示す図。(b)拡大図。
【図15】従動機構の内側リンクプレートの副基準孔と連結ピンとの関係を示す図。(a)内側リンクプレートの位置を示す図。(b)拡大図。
【図16】継手リンクの第一の変形例を示す分解斜視図。
【図17】継手リンクの第二の変形例を示す分解斜視図。
【図18】第二実施形態の駆動機構を示す左側面図。
【図19】駆動機構の正面図。
【図20】第二実施形態のチェーンガイドの形状およびチェーンの周回軌跡を示す図。
【図21】ハートカムの分解斜視図。
【図22】カム溝の形状を示す断面図。
【図23】従動機構のハートカムがスラットと係合するときの動作を示す説明図。
【図24】従来の搬送装置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下では、第一実施形態の搬送装置1について説明する。
【0027】
搬送装置1は、図1に示すように、被搬送物が載置される複数枚のスラット30を、無端状に駆動させて被搬送物(例えば、人や製品や車両等)を搬送する、いわゆるスラットコンベアである。
搬送装置1は、ベースプレート10、搬送フレーム20、複数枚のスラット30、駆動機構40、および従動機構60等を具備する。
【0028】
なお、以下では、説明の便宜上、図1(a)に示す矢印F方向を前方向として「搬送装置1の前後方向」を規定する。また、図1(a)に示す矢印U方向を上方向として「搬送装置1の上下方向」を規定する。そして、図1(a)に示す矢印L方向を左方向として「搬送装置1の左右方向」を規定する。
【0029】
ベースプレート10は、搬送装置1の基礎となる部材である。ベースプレート10には、駆動機構40や従動機構60等を支持するための図示せぬフレーム等が固定される。
【0030】
搬送フレーム20は、被搬送物がスラット30に載置された際にかかる荷重を受けるものである。ベースプレート10と搬送フレーム20との間には、スラット30の厚み(スラット30の上下方向の長さ寸法)よりも大きな隙間が形成され、前記隙間をベースプレート10の上面に位置するスラット30が通過する。
【0031】
図1および図2に示すように、スラット30は、プラスチックや鉄やアルミニウム等からなる略板状部材であり、板面が上下方向を向いた状態で搬送装置1の左右中央部に配設される。スラット30には係合ピン31が取り付けられる。
【0032】
係合ピン31は、略円柱状に形成され、スラット30の前側の左右両側部より左右方向に突出する。
なお、スラット30の構成は、第一実施形態に限定されるものでなく、スラット30に係合ピン31に対応する軸部を形成する構成であっても構わない。
【0033】
スラット30は、前後方向に隣接した状態でベースプレート10および搬送フレーム20の上面に配設される。
【0034】
搬送装置1は、搬送フレーム20の上面に位置するスラット30を前方向に連続的に移動させ、ベースプレート10の上面に位置するスラット30を後方向に連続的に移動させる。
このとき、搬送装置1は、搬送フレーム20の前端部よりも前方に移動したスラット30を、ベースプレート10に移動させる。また、搬送装置1は、搬送フレーム20の後端部よりも後方に移動したスラット30を、搬送フレーム20に移動させる。
以下では、搬送フレーム20からベースプレート10へ移動させる動作、およびベースプレート10から搬送フレーム20へ移動させる動作を「折り返し動作」と表記する。
【0035】
搬送装置1においては、搬送フレーム20の上面が搬送部2として形成されるとともに、ベースプレート10の上面がスラット30の厚みよりも長い距離を離間して配置される逆送部3として形成される。
このような搬送部2および逆送部3は、スラット30が円滑に移動できるように、摩擦係数の低い滑らかな平面に構成されている。
【0036】
前記被搬送物は、搬送部2に位置するスラット30に載置される。すなわち、第一実施形態では、前方向が搬送方向であり、後方向が搬送方向と反対の方向である。
そして、第一実施形態では、搬送部2においては、後側が搬送方向における上流側であり、逆送部3においては、前側が搬送方向における上流側である。
【0037】
駆動機構40は、スラット30の折り返し動作を行うとともに搬送部2の後端部に位置するスラット30に対して前方向への駆動力を付与するものである。駆動機構40は、搬送部2の後端部(搬送方向における上流側端部)に配置される。図2に示すように、駆動機構40は、駆動軸41、内側スプロケット42、外側スプロケット43、チェーン44、チェーンガイド45、および外側フレーム46等を備える。
【0038】
各スプロケット42・43、チェーン44、チェーンガイド45、および外側フレーム46は、搬送装置1の左右両側に互いに左右対称に配置される。
このため、以下では、左側に配置される各スプロケット42・43、チェーン44、チェーンガイド45、および外側フレーム46についてのみ説明を行う。
【0039】
駆動軸41は、左右方向を軸方向として、左右両端部で内側スプロケット42を支持する。駆動軸41は、図示せぬモータから駆動力が付与されて内側スプロケット42を回動させる。なお、駆動軸41を回動させる駆動源は、モータでなくても構わない。
【0040】
内側スプロケット42は、搬送フレーム20の後端部よりも前方に配設され、スラット30の係合ピン31の下方に配置される。内側スプロケット42の外径寸法は、外側スプロケット43の外径寸法よりも小さな寸法が設定される。
【0041】
外側スプロケット43は、内側スプロケット42の後方に所定の間隔だけ離間して配設される。各スプロケット42・43は、その中心が同一の高さ位置に設定されている。
【0042】
チェーン44は、各スプロケット42・43に捲回される。チェーン44には、チェーンガイド45の上下面を摺動可能なローラ44aが取り付けられる。すなわち、チェーン44は、スラット30の左右方向(搬送方向と直交する方向)の側部において搬送方向に回動自在に捲回される。
【0043】
すなわち、第一実施形態の内側スプロケット42は、駆動機構40の搬送方向における内側の端部に配設される内側端部部材として機能する。
また、第一実施形態の外側スプロケット43は、駆動機構40の搬送方向における外側の端部に配設される外側端部部材として機能する。
【0044】
図2および図3に示すように、チェーン44は、搬送方向における幅に対応する長さの複数の細切れのチェーンを、複数の継手リンク50によって連結することで、環状のチェーン44として構成される。
すなわち、図3(b)においては、前側に示すプレート44bと後側に示すプレート44bとは、異なる細切れのチェーンのプレートであり、継手リンク50によって連結されている。
【0045】
継手リンク50は、外側リンクプレート51、内側リンクプレート52、二つの連結ピン53・54、およびクリップ55を有する。
【0046】
外側リンクプレート51は、チェーン44のプレート44bと略同一の形状に形成され、各連結ピン53・54の左端部が取付固定される。外側リンクプレート51は、チェーン44のプレート44bよりも左側に配置される。
【0047】
内側リンクプレート52は、その上部が外側リンクプレート51よりも上方向に延出する。つまり、内側リンクプレート52は、一側部がスラット30の係合ピン31に向けて延出する。内側リンクプレート52は、チェーン44のプレート44bよりも右側に配置される。
内側リンクプレート52には、凹部52a、基準孔52b、および副基準孔52cが形成される。
【0048】
被係合部としての凹部52aは、前記延出部分の前後中央部に形成される。凹部52aは、下方向に向かうにつれて内側リンクプレート52の前後中央部に徐々に収束する略テーパ状に形成される。凹部52aの底面は、スラット30の係合ピン31の下部(スラット30の係合ピン31を上下に二分割したもののうち、下側の半円部分)と略同一形状に形成される。
【0049】
つまり、内側リンクプレート52の凹部52aは、前記延出部分にて、左側部(搬送方向と直交する方向の側部)より延出するスラット30の係合ピン31と係合可能に形成される窪みである。
【0050】
基準孔52bは、内側リンクプレート52を左右方向に貫通するとともに、各連結ピン53・54の外径寸法と略同一の内径寸法が設定される略円状の孔部である。基準孔52bは、内側リンクプレート52の下流側(図3では前側)に形成される。
【0051】
副基準孔52cは、内側リンクプレート52の上流側(図3では後側)に形成され、内側リンクプレート52を左右方向に貫通する。副基準孔52cの上面および底面は、基準孔52bの上面および底面(基準孔52bを上下に二分割したもののうち、上下両側の半円部分)と略同一形状に形成される。
副基準孔52cは、その上面および底面が上下方向に沿って直線的に繋げられ、上流側の連結ピン54が上下方向に沿って摺動可能な長孔状に形成される。
【0052】
基準孔52bおよび副基準孔52cは、その中心が互いに同じ高さ位置に位置する。つまり、副基準孔52cは、基準孔52bよりも上下方向に突出している。
内側リンクプレート52は、基準孔52bに対する副基準孔52cの下方向への突出寸法だけ、その下流側が上流側よりも下方向に延出することで、剛性を確保している。
【0053】
下流側の連結ピン53は、基準孔52bに挿通されるとともに、前記細切れのチェーンの下流側端部に位置するプレート44b(図3(b)に示す前側のプレート44b)を支持する。
上流側の連結ピン54は、副基準孔52cに挿通されるとともに、前記細切れのチェーンの上流側端部に位置するプレート44b(図3(b)に示す後側のプレート44b)を支持する。
【0054】
ここで、上流側の連結ピン54が副基準孔52cを上下方向に沿って摺動できるため、内側リンクプレート52は、下流側の連結ピン53(基準孔52bに挿通される連結ピン)を中心に、チェーン44に対して相対的に回動可能に構成される。
【0055】
クリップ55は、各連結ピン53・54と係合可能な形状に形成され、各連結ピン53・54に挿着されて、各連結ピン53・54の外れ止めとして機能する。
【0056】
このように、継手リンク50は、異なる二つの前記細切れのチェーンうち、一方の前記細切れのチェーンの上流側端部に位置するプレート44bと、他方の前記細切れのチェーンの下流側端部に位置するプレート44bとを、各リンクプレート51・52で左右方向から挟むとともに各連結ピン53・54で支持する。これにより、継手リンク50は、異なる二つの前記細切れのチェーンを連結する。
チェーン44は、このようにしてスラット30の搬送方向における幅ごとに、内側リンクプレート52を支持する。
【0057】
このように、各スプロケット42・43(各端部部材)に捲回されるチェーン44を用いることで、搬送装置1は、シンプルな構成で内側リンクプレート52をスラット30の搬送方向における幅ごとに支持できる。
【0058】
なお、搬送装置1は、必ずしも各スプロケット42・43にチェーン44を捲回する構成である必要はなく、例えば、ベルトやプーリ等を用いても構わない。
【0059】
図2および図4に示すように、チェーンガイド45は、チェーン44を支持するものである。チェーンガイド45は、チェーン44の内側に配設される略板状の部材である。チェーンガイド45の前後両端部は、各スプロケット42・43の近傍まで延出し、各スプロケット42・43の回動に干渉しないような円弧状に形成される。
【0060】
チェーン44は、ローラ44aがチェーンガイド45の上下面を摺動することで、所定の周回軌跡を描く。すなわち、チェーンガイド45の上下面は、チェーン44の周回軌跡44Tに対応する形状に形成される。
チェーン44の周回軌跡44Tには、直線部44Taおよび曲線部44Tbが形成される。
【0061】
直線部44Taは、チェーン44の周回軌跡44Tの後端部(搬送方向における外側端部)に、搬送方向に沿って直線状に形成される部分である。直線部44Taは、外側スプロケット43の捲回部分より前方向に延びる。直線部44Taの高さ位置は、外側スプロケット43の捲回部分の上下両端部の高さ位置に対応する。
【0062】
外側スプロケット43の捲回部分を周回する前、および周回した後、チェーン44は直線部44Taを周回する。外側スプロケット43の捲回部分を周回する前後において、チェーン44は、その高さ位置が変動しない。
このような直線部44Taは、スラット30の搬送方向における幅以上の距離が設定される(図13に示す符号L1・L2参照)。
【0063】
内側リンクプレート52の凹部52aは、直線部44Taを移動するときに、搬送部2および逆送部3に位置するスラット30の係合ピン31と同じ高さ位置に位置する。このとき、内側リンクプレート52には、スラット30が係合した状態である。
【0064】
曲線部44Tbは、直線部44Taよりも前側(搬送方向における内側)に曲線状に形成される部分である。曲線部44Tbは、直線部44Taの前端部から内側スプロケット42の捲回部分までにおいて、その前後中途部が上下方向における外側に曲線状に膨らむ。
つまり、曲線部44Tbは、直線部44Taの前端部から、内側スプロケット42の捲回部分までを結ぶ直線に対して、緩やかに膨らんでいる(図15に示す周回軌跡64T・64TB参照)。
【0065】
図2に示すように、外側フレーム46は、外側スプロケット43の後方および右方に離間して配設され、スラット30の係合ピン31の下方に配置される。外側フレーム46は、その前端面が略円弧状に窪み、内側リンクプレート52の凹部52aとの間で、スラット30の係合ピン31を挟むことができるように構成される。
【0066】
図5に示すように、従動機構60は、駆動軸41に代えて従動軸61を備える点を除いて、駆動機構40に対して前後対称に構成される。すなわち、従動機構60は搬送部2の搬送方向における下流側端部に配置される。
また、搬送フレーム20の後端部は、スラット30の後端部から係合ピン31までの前後方向の幅に対応する間隔だけ、外側スプロケット63の上端部より前方に位置している。
【0067】
以上のように、搬送装置1は、その前後両端部だけに各チェーン44・64が配設される構成である(図1に示す各チェーン44・64の周回軌跡44T・64T参照)。
【0068】
次に、搬送装置1の動作について説明する。
なお、搬送装置1は、図5および図6に示す状態から、スラット30の駆動を開始するものとする。
【0069】
以下では、搬送部2に位置するスラット30のうち、上流側端部に位置するスラット30を「スラット30A」、下流側端部に位置するスラット30を「スラット30C」、スラット30A・30Cの間に位置するスラット30を「スラット30B」と表記する。
また、逆送部3に位置するスラット30のうち、上流側端部に位置するスラット30を「スラット30D」、スラット30Dの下流側に位置するスラット30を「スラット30E」と表記する。
そして、折り返しているスラット30を「スラット30R」と表記する。
【0070】
図5(a)に示すように、搬送装置1は、駆動軸41に駆動力を付与して内側スプロケット42を回動させる。そして、チェーン44を介して外側スプロケット43を回動させ、チェーン44を周回させる(図5(a)の各スプロケット42・43に示す矢印参照)。
【0071】
このとき、図5(a)および図6(a)に示すように、搬送部2の上流側端部に位置するスラット30Aは、その係合ピン31が凹部52aと係合する内側リンクプレート52によって前方向に移動させられる。すなわち、駆動機構40は、搬送部2の上流側端部に位置するスラット30Aに、内側リンクプレート52を介して駆動力を付与する(図5(a)に示す力F1参照)。
なお、図5(a)に示す状態では、搬送部2の上流側端部に位置するスラット30Aの下流側に位置するスラット30Bも内側リンクプレート52と係合している。このため、搬送装置1は、スラット30A・30Bの計二枚に対して駆動力を付与することとなる。
【0072】
スラット30は、搬送方向に隣接した状態で搬送部2に並べられている。このため、駆動機構40は、駆動力が付与されるスラット30Aよりも下流側に位置するスラット30B・30Cを押し出すこととなる(図6(a)に示す矢印M1参照)。
図6(b)に示すように、搬送装置1は、このようにして搬送部2に位置するスラット30A・30B・30Cを前方向に移動させる。
【0073】
図5(b)および図6(a)に示すように、搬送部2の下流側端部に位置するスラット30Cは、従動機構60の内側リンクプレート72と係合している。従って、従動機構60のチェーン64には、前記スラット30Cと係合する内側リンクプレート72を介して、駆動力が付与される(図5(a)に示す力F2参照)。
これにより、従動軸61と各スプロケット62・63とが回動して、チェーン64は周回する(図5(b)の各スプロケット62・63に示す矢印参照)。
【0074】
チェーン64の周回により、従動機構60は、駆動機構40の場合と同様に、上流側端部に位置するスラット30Dに、内側リンクプレート72を介して駆動力を付与する(図5(a)に示す力F3参照)。
そして、図6に示すように、駆動力が付与されるスラット30Dよりも逆送部3の下流側に位置するスラット30Eを押し出す(図6(a)および図6(b)に示す矢印M2参照)。
【0075】
このとき、搬送装置1は、折り返しているスラット30Rを各内側リンクプレート52・72に係合させた状態で、各外側スプロケット43・63の捲回部分を移動させることで、折り返し動作を行う。折り返し動作の詳細については後述する。
【0076】
このように、駆動機構40(駆動機構40および従動機構60のいずれか一方)は、所定の駆動源により、チェーン44を周回させてスラット30に駆動力を付与する。従動機構60(駆動機構40および従動機構60の他方)は、駆動機構40からの駆動力により、チェーン64を周回させてスラット30に駆動力を付与する。
【0077】
このように構成することで、駆動機構40の駆動軸41を所定の駆動源により駆動させるだけで、スラット30を駆動できる。つまり、従動機構60の従動軸61を所定の駆動源により駆動させる必要がなくなる。このため、搬送装置1のコストを低減できるとともに、搬送装置1の構成をシンプルにできる。
【0078】
なお、従動機構60には、必ずしも従動軸61を配設する必要はない。ただし、従動機構60のチェーン64の位相を確実に合わせることができるという観点から、従動軸61を配設することが好ましい。
【0079】
図5および図6に示すように、内側リンクプレート52より搬送部2の上流側端部に位置するスラット30Aが離脱するまでの間、搬送装置1は、搬送部2に位置するスラット30B・30Cを押し出す。
搬送部2の上流側端部に位置するスラット30Aは、内側リンクプレート52がチェーン44の周回軌跡44Tの曲線部44Tbを周回するときに、内側リンクプレート52より離脱する(図4参照)。
【0080】
これにより、駆動機構40は、搬送部2に位置するスラット30A・30B・30Cを、スラット一枚分、搬送方向に沿って移動させる。これは、従動機構60においても同様である。
【0081】
スラット一枚分移動させたとき、図6(a)に示す逆送部3の下流側端部に位置するスラット30Eが、図6(a)に示す搬送部2の上流側端部に位置するスラット30Aの位置まで移動する。
つまり、搬送部2の上流側端部に位置するスラット30Aが、その上流側に位置するスラット(スラット30E)に移行する。
【0082】
このとき、搬送部2の下流側端部に位置するスラット30Cは、その上流側に位置するスラット(スラット30B)に移行する。つまり、従動機構60の内側リンクプレート72には、搬送部2に位置するスラット30Bが係合する。また、駆動機構40の内側リンクプレート52には、逆送部3に位置するスラット30Eが係合する。
そして、逆送部3の上流側端部に位置するスラット30Dも、その上流側に位置するスラット(スラット30C)に移行する。
【0083】
このように、搬送装置1は、搬送部2および逆送部3の下流側端部にて、スラット30を各内側リンクプレート52・72に係合させるとともに、搬送部2および逆送部3の上流側端部にて、各内側リンクプレート52・72よりスラット30を離脱させる。
【0084】
すなわち、駆動機構40は、逆送部3の搬送方向における下流側端部から、搬送部2の搬送方向における上流側端部まで、スラット30を内側リンクプレート52に係合させる上流側駆動機構として機能する。また、内側リンクプレート52は、上流側係合部材として機能する。
従動機構60は、搬送部2の搬送方向における下流側端部から、逆送部3の搬送方向における上流側端部まで、スラット30を内側リンクプレート72に係合させる下流側駆動機構として機能する。また、内側リンクプレート72は、下流側係合部材として機能する。
【0085】
搬送装置1は、このようなスラット30と各内側リンクプレート52・72との係合および離脱を繰り返すことで、スラット30を無端状に駆動させて被搬送物を搬送する。
【0086】
これによれば、搬送装置1は、その前後両端部(スラット30の搬送軌跡における上流側端部および下流側端部)に各チェーン44・64を配設するだけで、スラット30を移動できる。従って、スラット30の搬送軌跡の全周にチェーンを配設する必要がなくなる(図24参照)。
【0087】
このため、ラインの拡幅や延長等において、各チェーン44・64を各スプロケット42・43・62・62から切り離して延長作業を行う必要がなくなる。また、ラインの縮小等において、各チェーン44・64の短縮作業を行う必要がなくなる。
つまり、搬送装置1では、搬送フレーム20等を取り替えるだけで、ラインの拡幅や延長や縮小等を行うことができる。このため、ラインの拡幅や延長や縮小等に要する工程を簡素化できる。
【0088】
また、搬送装置1は、スラット30に各内側リンクプレート52・72を係合させる構成、言い換えれば、スラット30に各チェーン44・64を直接係合しない構成である。このため、各チェーン44・64として、一般的なチェーン(例えば、市販のローラチェーン)を用いることができる。
【0089】
つまり、搬送装置1は、一般的なチェーンが搬送装置1の前後両端部だけに配設される構成であるため、搬送装置1の製作コストを低減できる。また、ラインの延長等により、スラット30の枚数が増えた場合でも、各チェーン44・64の長さは変動しない。つまり、ラインの延長等においても、作業に要するコストを低減できる。
さらに、搬送装置1の製作に要する期間を短縮できるとともに、搬送装置1を自動車の組立設備等で用いた際に、各チェーン44・64の予備在庫を持つ必要がなくなる。
【0090】
スラット30は、作業域(搬送部2の前後中途部に位置するスラット30B)において、各内側リンクプレート52・72より離脱させた状態で移動する。このため、搬送装置1は、作業域において、スラット30を隙間なく移動できる。
【0091】
これによれば、搬送装置1は、各チェーン44・64が伸びた場合でも、作業域において、スラット30間に隙間が生じることを防止できる。従って、搬送装置1は、被搬送物の部品等が落下して、スラット30の隙間に挟まれるような事態の発生を防止できる。
すなわち、搬送装置1は、各チェーン44・64の伸びに起因する作業性の悪化を防止できる。つまり、搬送装置1は、作業性を向上できる。
【0092】
次に、従動機構60によるスラット30Rの折り返し動作(搬送部2から逆送部3へ移動させる動作)について説明する。
なお、図7においては、図面を見やすくするために、チェーンガイド65の表記を省略している。
【0093】
図7(a)に示すように、外側スプロケット63は、搬送フレーム20よりも前方に配設されている。このため、スラット30Rは、外側スプロケット63の上端部まで移動したときに、自重により後端部が搬送部2より落下する。
つまり、スラット30Rは、係合ピン31の軸心を中心として図7(a)における時計回り方向に回動する。
【0094】
内側リンクプレート72が外側スプロケット63の捲回部分を移動するとき、図7(b)および図7(c)に示すように、スラット30Rは、内側リンクプレート72と外側フレーム66とに支持されて移動する。
すなわち、スラット30Rは、外側フレーム66により、係合ピン31が内側リンクプレート72の凹部72aから落下することなく折り返す。
【0095】
これにより、従動機構60は、スラット30の上下面を反転させることなく、スラット30を一枚ずつ搬送部2から逆送部3に移動させる(図7に示すスラット30Rの上面30a参照)。
【0096】
また、駆動機構40によるスラット30の折り返し動作(逆送部3から搬送部2へ移動させる動作)に関しても、従動機構60の場合と同様である。
【0097】
すなわち、駆動機構40は、外側スプロケット43の捲回部分を内側リンクプレート52が移動するときに、スラット30の前端部を外側スプロケット43の形状に沿うように回動させ、逆送部3から搬送部2に向けて傾斜させる(図6(b)に示すスラット30R参照)。
その後、駆動機構40は、内側リンクプレート52をさらに移動させることで、スラット30の後端部を搬送部2の高さまで移動させ、折り返し動作を完了する(図6(a)に示すスラット30A参照)。
【0098】
これにより、駆動機構40は、スラット30の上下面を反転させることなく、スラット30を一枚ずつ逆送部3から搬送部2に移動させる。
つまり、搬送装置1は、スラット30の上面30aが常に上を向いた状態でスラット30を移動させる構成である。
【0099】
このようにスラット30の上下面を反転させない構成とすることで、各外側スプロケット43・63の外径寸法を、スラット30の搬送方向における幅よりも短い寸法に設定できる(図24参照)。従って、搬送装置1の上下方向の幅を狭くできる。つまり、搬送装置1をコンパクトにできる。
【0100】
なお、各チェーン44・64は、搬送方向に回動自在に構成されていればよく、必ずしも四つのスプロケット42・43・62・63に捲回する必要はない。
例えば、駆動機構40および従動機構60は、内側スプロケット62および外側スプロケット43・63に代えて、各チェーン44・64を周回可能に支持するような所定のローラ等を配設し、チェーン44を前記ローラと内側スプロケット42とに捲回し、チェーン64を前記ローラに捲回しても構わない。この場合、駆動軸41は、内側スプロケット42を支持するとともに、所定の駆動源により内側スプロケット42を回動させる。
【0101】
つまり、各チェーン44・64が捲回される部材(各端部部材)は、少なくともいずれか一つが、所定の駆動源により駆動力が付与されるスプロケットによって構成されていればよい。
【0102】
これにより、各スプロケット42・43・62・63の個数を減らすことができるため、搬送装置1の製作コストをより低減できる。
【0103】
ここで、仮に、外側スプロケット63に従動軸61を取り付けた場合、スラット30の折り返し動作に従動軸61が干渉してしまう。
【0104】
つまり、図24に示すようなスラット30の搬送軌跡の全周にチェーンを配設するような構成では、前記チェーンが捲回されるスプロケットが、各外側スプロケット43・63に対応する位置に配設される。従って、スラット30の上下面を反転させることなく折り返す場合、前記チェーンが捲回されるスプロケットに駆動軸を配設できない。
この場合、前記チェーンが捲回されるスプロケットに加えて、別途駆動用のスプロケットやチェーン等を配設し、その駆動力を前記スプロケットに付与する必要がある。
【0105】
一方、搬送装置1は、内側スプロケット62に従動軸61を配設するだけで、スラット30の折り返し動作に従動軸61が干渉することを防止できる。
以上より、各チェーン44・64が捲回される部材(各端部部材)のうち、スプロケットによって構成される部材は、駆動機構40および従動機構60の搬送方向における内側の端部に配設される部材(内側端部部材)であることが好ましい。また、駆動機構40の搬送方向における内側の端部に配設される部材であることがより好ましい。
【0106】
このように、駆動機構40および従動機構60は、左右方向(搬送方向と直交する方向)の側部に各チェーン44・64が複数配設される。
また、駆動機構40(駆動機構40および従動機構60の少なくともいずれか一方)は、搬送方向における内側の端部にてチェーン44が捲回される部材(内側端部部材)がスプロケットによって構成され、前記スプロケット(内側スプロケット42)を回動可能に支持する駆動軸41を回動させて、各チェーン44・64を周回させる。
【0107】
これによれば、搬送装置1は、スラット30を駆動させるために別途駆動用のスプロケット等を配設する必要がなくなる。このため、搬送装置1は、その構造をよりシンプルにできる。
【0108】
また、第一実施形態では、各内側リンクプレート52・72の凹部52a・72aを、チェーン44・64が捲回されるスプロケット(各端部部材)の非接触側に形成している。
【0109】
ここで、「非接触側」とは、各内側リンクプレート52・72が各スプロケット42・43・62・63の捲回部分を移動するときに、凹部52a・72aが各スプロケット42・43・62・63より離間する側を指す。
つまり、各内側リンクプレート52・72が各スプロケット42・43・62・63の捲回部分を移動するとき、各スプロケット42・43・62・63の径方向外側(外周側)に凹部52a・72aが位置する(例えば、図7(a)に示す内側リンクプレート72参照)。
【0110】
これにより、スラット30の係合ピン31等が各スプロケット42・43・62・63に干渉することを防止できる。
【0111】
次に、搬送部2に位置するスラット30Bを、従動機構60の内側リンクプレート72に係合させるときの動作を説明する。
なお、係合時の動作に関しては、逆送部3に位置するスラット30Eを駆動機構40の内側リンクプレート52に係合させるときの動作についても同様である。
【0112】
図8(a)に示すように、スラット30Bを内側スプロケット62の後方まで移動させたとき、内側リンクプレート72は、内側スプロケット62の捲回部分を移動している。
【0113】
スラット30Bをさらに移動させたとき、図8(b)および図9に示すように、内側リンクプレート72は、チェーン64の周回軌跡64Tの曲線部64Tb上を移動する。このとき、凹部72aの高さ位置は、徐々にスラット30Bの係合ピン31の高さ位置に合わされる(図9の後端に示す内側リンクプレート72参照)。
また、内側リンクプレート72は、その自重により副基準孔72cと下流側の連結ピン74とが当接するまで、図8(b)および図9における時計回り方向に回動している。
【0114】
ここで、スラット30Bを内側リンクプレート72によって押し出す構成であるため、スラット30Bと内側リンクプレート72とは、互いに同じ速度で移動する。
このため、チェーン64の周回軌跡64Tの曲線部64Tbを内側リンクプレート72が移動するとき、スラット30Bは、内側リンクプレート72に接近する。
【0115】
そして、図8(c)および図9に示すように、チェーン64の周回軌跡64Tの曲線部64Tbの前後中途部において、スラット30Bは、内側リンクプレート72に追いつき、係合ピン31と凹部72aとが当接する(図9の後から二番目に示す内側リンクプレート72参照)。つまり、スラット30Bと内側リンクプレート72とは係合する。
【0116】
この状態よりさらにスラット30Bを移動させたとき、図8(d)および図9に示すように、スラット30Bは、内側リンクプレート72を追い抜こうとする(図9の前後中央に示す内側リンクプレート72参照)。
つまり、内側リンクプレート72は、スラット30Bの係合ピン31が凹部72aに接触して押圧される。
【0117】
この押圧により、内側リンクプレート72には、図8(d)および図9における反時計回り方向のトルクがかかる。つまり、内側リンクプレート72は回動する(図9に示す矢印R参照)。
【0118】
これにより、内側リンクプレート72は、スラット30Bからの前方向への押圧を吸収する。
【0119】
そして、図8(f)、図8(e)、および図9に示すように、チェーン64の周回軌跡64Tの直線部64Taまで移動したとき、内側リンクプレート72の凹部72aは、スラット30Bの係合ピン31との前後方向および上下方向の位置が合う(図9の前端と前から二番目とに示す内側リンクプレート72およびスラット30Bの搬送軌跡30T参照)。
その後、内側リンクプレート72は、スラット30Bと同じ速度で前方向に向かって移動する。
【0120】
つまり、従動機構60は、左右方向(搬送方向と直交する方向)を回転軸方向として、内側リンクプレート72をチェーン64に対して相対的に回動可能に構成することで、内側リンクプレート72の凹部72aとスラット30Bの係合ピン31との接触を緩衝しているのである。
【0121】
すなわち、搬送装置1は、スラット30と搬送方向における下流側端部で係合する下流側係合部材として、チェーン64に対して相対的に回動可能な内側リンクプレート72を用いることにより、係合時の摩耗を低減できる。
【0122】
なお、搬送装置1は、スラット30を各内側リンクプレート52・72より離脱させる場合の動作に関しても、係合時の場合と同様に各内側リンクプレート52・72を回動させ、各内側リンクプレート52・72の摩耗を低減している。
【0123】
スラット30を係合させるための構成は、第一実施形態に限定されるものでない。例えば、スラット30に内側リンクプレート52を取り付けるとともに、各チェーン44・64にスラット30の係合ピン31と略同一形状のピンを取り付ける構成であっても構わない。
ただし、シンプルな構成でスラット30を各内側リンクプレート52・72に係合できるという観点から、搬送装置1は、スラット30に係合ピン31を形成するとともに、各内側リンクプレート52・72に凹部52a・72aを形成する構成であることが好ましい。
【0124】
ここで、図10および図11に示すように、スラット30の駆動を開始するとき、搬送部2の前端部に位置するスラット30Aと係合する内側リンクプレート52に対して、搬送方向に沿った偶力が作用する(図10に示す左方向への矢印参照)。この偶力により、チェーン44に対して、図10における反時計回り方向に沿った回転モーメントが作用する(図10に示す符号M参照)。
【0125】
仮に、図11(a)に示すように、チェーンガイド45を配設しない場合、搬送装置1は、前記回転モーメントをチェーン44のテンション力により吸収することとなる。
【0126】
この場合、図10および図11(b)に示すように、前記回転モーメントがチェーン44のテンション力を超えたときに、図10および図11における反時計回り方向に内側リンクプレート52が回動してしまう(図10に示す反時計回り方向への矢印参照)。
そして、図10および図11(c)に示すように、スラット30Aが内側リンクプレート52から逃げてしまい(係合ピン31が内側リンクプレート52の凹部52aから脱落してしまい)、スラット30を駆動できない。
【0127】
そこで、搬送装置1では、チェーン44の内側にチェーンガイド45を配設することで、前記回転モーメントをチェーンガイド45によって支持している。これは、従動機構60においても同様である。
【0128】
これにより、駆動時にスラット30が各内側リンクプレート52・72から脱落することなく確実にスラット30を駆動できる。
【0129】
各チェーン44・64の周回軌跡44T・64Tには、必ずしも直線部44Ta・64Taおよび曲線部44Tb・44Tbを形成する必要はない。例えば、図12に示すように、各スプロケット62・63の捲回部分を直線的に繋ぐ周回軌跡64TAのような形状であっても構わない。
【0130】
この場合、搬送部2の下流側端部に位置するスラットが、スラット30Rからスラット30Cに移行するときに、スラット30Cの係合ピン31と内側リンクプレート72の凹部72aとの間には、クリアランスCが形成される可能性がある。
つまり、スラット30Cを内側リンクプレート72に係合させるタイミングが遅れてしまう可能性がある。
【0131】
クリアランスCが形成された場合には、スラット30Cでチェーン64に駆動力を付与することができなくなってしまう。すなわち、搬送装置1は、駆動力を付与するスラット30の枚数が一枚減った状態で、スラット30を押し出す必要がある。
つまり、スラット30を押し出す各内側リンクプレート52・72(例えば、搬送部2の上流側端部に位置するスラット30Aと係合している内側リンクプレート52等)に大きな負荷がかかってしまう。
【0132】
このような場合には、前記大きな負荷に各チェーン44・64が耐えることができず、各リンクプレート52・72と係合しているスラット30が逃げてしまう(離脱してしまう)。この場合、各チェーン44・64が空回りしてしまうため、搬送装置1は、スラット30を駆動できなくなってしまう。
【0133】
仮に、前記大きな負荷に各チェーン44・64が耐えることができた場合でも、スラット30Cと内側リンクプレート72との係合タイミングが遅れてしまうため、スラット30が脈動してしまう。
【0134】
一方、図13に示すように、チェーン64の周回軌跡64Tに直線部64Taを形成した場合、スラット30Cと内側リンクプレート72とが係合する位置を上流側にずらし、係合タイミングを早めることができる。
従って、搬送装置1は、搬送部2の下流側端部に位置するスラット30Cが移行する前に、その上流側に位置するスラット30Bを内側リンクプレート72に係合できる。
これにより、搬送装置1は、前記クリアランスCの発生を防止しているのである。これは、駆動機構40のチェーン44の周回軌跡44Tに直線部44Taを形成しない場合においても同様である。
【0135】
以上のように、各チェーン44・64の空回りおよびスラット30の脈動を防止できるという観点から、各チェーン44・64の周回軌跡44T・64Tには、直線部44Ta・64Taを形成することが好ましい。
直線部44Ta・64Taは、スラット30の搬送方向における幅以上の長さにすることが好ましい(図13に示す符号L1・L2参照)。これにより、より確実に各チェーン44・64の空回りおよびスラット30の脈動を防止できる。
【0136】
各チェーン44・64の周回軌跡44T・64Tは、例えば、図14に示すように、内側スプロケット62の捲回部分から直線部64Taの後端部までを直線的に繋ぐ周回軌跡64TBのような形状であっても構わない。
【0137】
この場合、内側リンクプレート72は、曲線部64Tbを移動する場合と比較して、搬送部2に位置するスラット30Bによって、より前方向に押圧されることとなる。
【0138】
従って、図14および図15に示すように、内側リンクプレート72は、より大きく回動してしまう。つまり、内側リンクプレート72の副基準孔72cの底面に、下流側の連結ピン74が接触する可能性がある。
このため、内側リンクプレート72の副基準孔72cは、下流側の連結ピン74が接触しない程度に、その上下方向の長さ寸法を大きくする必要がある。
【0139】
つまり、曲線部64Tbを形成した場合と比較して、内側リンクプレート72の強度が低下してしまう可能性がある。
また、内側リンクプレート72が係合時に大きく回動することで、その機械摩擦が大きくなってしまうため、内側リンクプレート72の寿命が短くなってしてしまう可能性がある。
【0140】
つまり、内側リンクプレート72の強度の低下を防止できるとともに内側リンクプレート72を長寿命化できるという観点から、チェーン64の周回軌跡64Tには、曲線部64Tbを形成することが好ましい。
これは、駆動機構40においても同様である。また、スラット30を各内側リンクプレート52・72より離脱させる場合においても同様である。
【0141】
各チェーン44・64の周回軌跡44T・64Tは、同一径のスプロケットにチェーンを捲回し、各スプロケットの捲回部分を直線的に繋いだトラック形状(図20に示す周回軌跡144T参照)であっても構わない。
【0142】
この場合、各内側リンクプレート52・72は、各内側スプロケット42・62の捲回部分を移動する間に、スラット30と係合する構成となる。
従って、各内側リンクプレート52・72は、図14に示すような内側スプロケット62から直線部64Taの後端部までを直線的に繋ぐ周回軌跡64TBを移動する場合と比較して、係合するスラット30によって、より前方向に押圧されることとなる。
【0143】
すなわち、各内側リンクプレート52・72は、図14に示すような周回軌跡64TBを移動する場合よりもさらに大きく回動する。つまり、各内側リンクプレート52・72の副基準孔52c・72cの上下方向の長さ寸法をより大きくする必要がある。このため、機械摩擦がより大きくなってしまう。
【0144】
以上より、各チェーン44・64の周回軌跡44T・64Tは、搬送方向における内側に向かうにつれて、各チェーン44・64の周回軌跡44T・64Tの上下中央部側に収束することが好ましい。
【0145】
このように構成することで、各内側リンクプレート52・72の強度の低下を防止できるとともに長寿命化できる。
【0146】
第一実施形態の駆動機構40および従動機構60は、各内側スプロケット42・62(内側端部部材)の外径寸法を、各外側スプロケット43・63(外側端部部材)の外径寸法よりも短く設定するとともに、各スプロケット42・43・62・63の中心を同一の高さ位置に設定する。
【0147】
これにより、シンプルな構成で、前記収束するチェーン44・64の周回軌跡44T・64Tを描くことができる。
【0148】
なお、各内側スプロケット42・62の外径寸法は、必ずしも各外側スプロケット43・63の外径寸法よりも短い寸法である必要はない。すなわち、各スプロケット42・43・62・63の外径寸法を同一の寸法に設定し、各チェーンガイド45・65により前記収束するチェーン44・64の周回軌跡44T・64Tを描くように構成しても構わない。
【0149】
搬送装置1は、前方向を搬送方向としてスラット30を移動させる構成としたが、各スプロケット42・43・62・63を逆回転させて、搬送方向と反対の方向にスラット30を移動させても構わない。
この場合、各内側リンクプレート52・72は、スラット30との係合時に、各チェーン44・64の弛みにより、各内側リンクプレート52・72の凹部52a・72aとスラット30の係合ピン31との接触を緩衝する。
このような場合においては、駆動機構40が下流側駆動機構として機能するとともに、従動機構60が上流側駆動機構として機能する。
【0150】
すなわち、各内側リンクプレート52・72には、必ずしも長孔形状の副基準孔52c・72cを形成する必要はない。仮に、略円状の副基準孔52c・72cを形成した場合、各内側リンクプレート52・72は、搬送方向に関わらず、各チェーン44・64の弛みにより各内側リンクプレート52・72の凹部52a・72aとスラット30の係合ピン31との接触を緩衝する。
【0151】
なお、継手リンク50の構成は、第一実施形態に限定されるものでない。
【0152】
すなわち、図16に示す継手リンク50の第一の変形例にあるように、内側リンクプレート52とプレート56とでチェーン44のプレート44bを左右両側から挟みこんでも構わない。このようなプレート56には、内側リンクプレート52の凹部52aおよび各基準孔52b・52cと略同一形状の凹部56aおよび各基準孔56b・56cが形成される。
【0153】
また、図17に示す継手リンク50の第二の変形例にあるように、図16に示す各プレート52・56の上部を左右方向に連続して形成するプレート57を用いる構成であっても構わない。このようなプレート57には、側面視において内側リンクプレート52の凹部52aおよび各基準孔52b・52cと略同一形状の凹部57aおよび各基準孔57b・57cが形成される。
【0154】
このような第一および第二の変形例の継手リンクを搬送装置1に適用することにより、スラット30と係合する係合部材(上流側係合部材および下流側係合部材)の強度を上げることができる。
【0155】
つまり、前記係合部材は、各継手リンク50・70の各連結ピン53・54・73・74に支持される部材に凹部52a・72aが形成されていればよい。
これにより、前記係合部材を各チェーン44・64に容易に取り付けることができる。
【0156】
次に、第二実施形態の搬送装置101について説明する。
第二実施形態の搬送装置101は、駆動機構140および従動機構160の構成が、第一実施形態の搬送装置101と異なっている。このため、第二実施形態では、第一実施形態の搬送装置1と同一構成の部材(例えば、ベースプレート10等)に関して、第一実施形態の搬送装置1と同一の符号を付して説明する。
【0157】
図18および図19に示すように、駆動機構140は、駆動軸141、内側スプロケット142、外側スプロケット143、チェーン144、チェーンガイド145、外側フレーム146、複数のハートカム150、およびカムガイド151等を備える。
【0158】
各スプロケット142・143、チェーン144、チェーンガイド145、外側フレーム146、ハートカム150、およびカムガイド151は、搬送装置1の左右両側に互いに左右対称に配置される。
このため、以下では、左側に配置される各スプロケット142・143、チェーン144、チェーンガイド145、外側フレーム146、ハートカム150、およびカムガイド151についてのみ説明を行う。
【0159】
駆動軸141、外側スプロケット143、および外側フレーム146は、第一実施形態の駆動軸41、外側スプロケット43、および外側フレーム46と同様に構成される(図2参照)。
【0160】
内側スプロケット142は、その外径寸法が外側スプロケット143の外径寸法と同一の寸法に設定される。
【0161】
チェーン144は、所定の長さの細切れのチェーンを継手リンクによって連結することで環状のチェーン144として構成される。
チェーン144には、スラット30の搬送方向における幅ごとに、右側部(搬送方向と直交する方向の側部)より延出する延長ピン144cが取り付けられる。
【0162】
チェーン144は、第一実施形態のチェーン44と異なり、必ずしもスラット30の搬送方向における幅に対応する長さの細切れのチェーンを連結する必要はない。
細切れのチェーンを連結する継手リンクには、市販の継手リンクが用いられる。つまり、チェーン144は、第一実施形態にあるような内側リンクプレート52を支持しない(図3参照)。
【0163】
チェーン144の周回軌跡144Tは、図20に示すように、同一径の各スプロケット142・143の捲回部分を前後方向に沿って直線的に繋いだトラック形状に形成される。
すなわち、チェーンガイド145の上下面は、チェーン144の周回軌跡144Tに沿った直線状に形成される。
【0164】
図21に示すように、ハートカム150は、側面視において、概ねハート状(前後両端部が上側に延出するとともに、前後中途部が前後中央部に収束するように下方に延出する形状)に形成される部材である。
【0165】
ハートカム150の前後方向および上下方向の略中央部分には、左右方向に貫通する孔部が形成される。当該孔部に延長ピン144cを挿通し、延長ピン144cにEリング155を挿着することで、ハートカム150は、延長ピン144cに支持されて、延長ピン144cを中心に、チェーン144に対して相対的に回動する。
すなわち、チェーン144は、スラット30の搬送方向における幅ごとに、ハートカム150を支持する(図18参照)。
【0166】
このように、延長ピン144cによりハートカム150を支持する構成とすることで、ハートカム150をチェーン144に容易に取り付けることができる。
【0167】
ハートカム150には、凹部150aが形成されるとともに、二つのローラ150bおよび摺動ピン150cが取り付けられる。
【0168】
凹部150aは、スラット30の係合ピン31と係合可能な形状に形成され、ハートカム150の上部における前後中央部に形成される。
【0169】
各ローラ150bは、ハートカム150の上部における前後両端部に取り付けられる。
【0170】
摺動ピン150cは、ハートカム150の下部に取り付けられ、ハートカム150より右側に突出する。
【0171】
図19および図22に示すように、カムガイド151は、ハートカム150の摺動ピン150cをガイドするためのものである。カムガイド151は、ハートカム150の右方に配設され、スラット30の係合ピン31の下方に配置される。
カムガイド151の左側面(ハートカム150と対向する側面)には、ガイド溝151aが形成される。
【0172】
ガイド溝151aは、前端部の形状を除いてチェーン144の周回軌跡144Tに沿った形状(チェーン144の周回軌跡144Tを縮小した形状)となる。
ガイド溝151aの前端部は、上側よりチェーン144の周回軌跡144Tよりも緩やかに前下方向に向かって延出し、上下中途部にて後下方向へ直線的に延出する。そして、前下方向へ直線的に延出し、周回軌跡144Tよりも緩やかに後下方向に向かって延出する。
【0173】
このようなガイド溝151aには、ハートカム150の摺動ピン150cが配置される。従って、摺動ピン150cは、ハートカム150が移動するときに、カムガイド151のガイド溝151aを摺動する。
【0174】
つまり、カムガイド151は、前端部(チェーン144の搬送方向における内側の端部)にて、延長ピン144cに対する摺動ピン150cの距離を変動させる。
【0175】
従動機構160は、駆動軸141に代えて従動軸を備える点を除いて、駆動機構140に対して前後対称に構成される。
【0176】
以下では、第二実施形態の搬送装置101の動作について、第一実施形態の搬送装置1と異なる点を中心に説明する。
なお、搬送装置1は、図18に示す状態から駆動を開始するものとする。
【0177】
搬送装置101は、駆動機構140の駆動軸141に駆動力を与えて内側スプロケット142を回動させ、チェーン144を周回させる。
すなわち、第二実施形態では、ハートカム150を介して搬送部2の上流側端部に位置するスラット30Aに駆動力を付与する。
【0178】
ハートカム150は、チェーン144に対して相対的に回動可能であるため、スラット30Aに駆動力を付与するときに、図18における時計回り方向に回動する。
【0179】
そこで、第二実施形態では、ハートカム150が所定の角度だけ回動したときに各ローラ150bと接触するガイドをハートカム150の上方に配設している。
【0180】
これにより、ハートカム150の回動を所定の角度まで許容するとともに、ハートカム150が所定の角度まで回動したときに、前記ガイドに各ローラ150bを接触させて、フリクションロスを低減している。これは、従動機構160においても同様である。
従って、ハートカム150は、所定の角度だけ回動した状態で、搬送部2の上流側端部に位置するスラット30Aに駆動力を付与する。
【0181】
搬送部2の上流側端部に位置するスラット30Aを押し出すことにより、搬送装置101は、第一実施形態の搬送装置1の場合と同様に、搬送部2の下流側端部に位置するスラット30Cを介して従動機構160のチェーンを駆動させる(図6参照)。
これにより、搬送装置101は、逆送部3の上流側端部に位置するスラット30Dを押し出し、スラット30を駆動させる(図6参照)。
【0182】
次に、搬送部2に位置するスラット30Bを従動機構160のハートカム170に係合させるときの動作について説明する。
【0183】
図23に示すように、ハートカム170は、内側スプロケットの捲回部分を移動する間に、スラット30Bと係合する。
【0184】
このとき、従動機構160のハートカム170の摺動ピン170cは、図23に示すように、ハートカム170の移動に伴ってガイド溝171aの後端部を摺動する。
ガイド溝171aの後端部が周回軌跡164Tに沿った形状に形成されていないため、ハートカム170には、ガイド溝171aの形状に応じてトルクがかかる。
【0185】
すなわち、ハートカム170は、スラット30Bと係合する前から回動を開始する。このとき、ハートカム170は、凹部170aが上方向を向いた状態となるように回動する。
つまり、従動機構160は、スラット30Bをハートカム170に係合させるときに、ハートカム170の凹部170aをスラット30Bの係合ピン31より逃がす方向に、ハートカム170を回動させる。
【0186】
このように、従動機構160は、ハートカム170の摺動ピン170cがガイド溝171aを摺動する構成とすることで、スラット30Bと係合する前からハートカム170を回動させて、係合時のハートカム170の動作を緩やかにしている。
これにより、ハートカム170の機械摩耗を低減できるため、ハートカム170を長寿命化できる。
【0187】
また、従動機構160では、スラット30Bをハートカム170に係合させてから、内側スプロケットの捲回部分を移動するまでの間、スラット30Bがハートカム170を追い抜こうとする。このとき、ハートカム170は回動する。
これにより、搬送装置101は、ハートカム170の凹部170aとスラット30Bの係合ピン31との接触を緩衝している。
すなわち、搬送装置101は、スラット30と搬送方向における下流側端部で係合する下流側係合部材としてハートカム170を用いることにより、係合時の摩耗を低減できる。
【0188】
ハートカム170は、搬送方向と反対の方向にスラット30を移動させた場合でも、スラット30との係合時に回動し、凹部170aとスラット30Bの係合ピン31との接触を緩衝できる。
【0189】
これは、駆動機構140においても同様である。また、スラット30を各ハートカム150・170より離脱させるときにおいても同様である。
【0190】
このように、駆動機構140のハートカム150は、延長ピン144cを基準として、凹部150aが形成される側と反対側に、摺動ピン150cが取り付けられる上流側係合部材として機能する。
また、従動機構160のハートカム170は、延長ピン164cを基準として、凹部170aが形成される側と反対側に、摺動ピン170cが取り付けられる下流側係合部材として機能する。
【0191】
なお、各カムガイド151・171のガイド溝151a・171aの形状は、第二実施形態に限定されるものでない。すなわち、スラット30の係合ピン31の動きに合わせて、各ハートカム150・170の凹部150a・170aを逃がすように、各ハートカム150・170を回動させる形状であればよい。
【0192】
また、各周回軌跡144T・164Tに、第一実施形態の周回軌跡44Tにあるような、直線部44Taおよび曲線部44Tbを形成しても構わない(図4参照)。この場合、駆動機構140および従動機構160は、各カムガイド151・171および各摺動ピン150c・170cを備える必要はない。
【符号の説明】
【0193】
1 搬送装置
2 搬送部
3 逆送部
30 スラット
31 係合ピン
40 駆動機構(上流側駆動機構)
52 内側リンクプレート(上流側係合部材)
52a 凹部(被係合部)
60 従動機構(下流側駆動機構)
72 内側リンクプレート(下流側係合部材)
72a 凹部(被係合部)
150 ハートカム(上流側係合部材)
150a 凹部(被係合部)
170 ハートカム(下流側係合部材)
170a 凹部(被係合部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
係合部が形成される複数枚のスラットを、搬送部に沿って搬送方向に連続的に移動させるとともに、前記搬送部に対して前記スラットの厚みよりも長い距離を離間して配置される逆送部に沿って前記搬送方向と反対の方向に連続的に移動させる搬送装置であって、
前記搬送部の搬送方向における上流側端部に配置され、前記スラットの係合部と係合する被係合部が形成される上流側係合部材を備え、前記逆送部の搬送方向における下流側端部から、前記搬送部の搬送方向における上流側端部まで、前記スラットを前記上流側係合部材に係合させる上流側駆動機構と、
前記搬送部の搬送方向における下流側端部に配置され、前記スラットの係合部と係合する被係合部が形成される下流側係合部材を備え、前記搬送部の搬送方向における下流側端部から、前記逆送部の搬送方向における上流側端部まで、前記スラットを前記下流側係合部材に係合させる下流側駆動機構と、
を具備し、
前記スラットは、
搬送方向に沿って隣接した状態で、前記搬送部および前記逆送部に配設され、
前記上流側駆動機構は、
前記スラットの上下面を反転させることなく、前記スラットを一枚ずつ前記逆送部から前記搬送部に移動させるとともに、前記搬送部の搬送方向における上流側端部に位置する前記スラットに、前記上流側係合部材を介して駆動力を付与することで、前記駆動力が付与されるスラットよりも前記搬送部の搬送方向における下流側に位置する前記スラットを押し出し、
前記下流側駆動機構は、
前記スラットの上下面を反転させることなく、前記スラットを一枚ずつ前記搬送部から前記逆送部に移動させるとともに、前記逆送部の搬送方向における上流側端部に位置する前記スラットに、前記下流側係合部材を介して駆動力を付与することで、前記駆動力が付与されるスラットよりも前記逆送部の搬送方向における下流側に位置する前記スラットを押し出す、
搬送装置。
【請求項2】
前記各駆動機構は、
前記各駆動機構の搬送方向における内側の端部に配設される内側端部部材と、
前記各駆動機構の搬送方向における外側の端部に配設される外側端部部材と、
前記スラットの搬送方向と直交する方向の側部において搬送方向に回動自在に前記各端部材に捲回されるとともに、前記スラットの搬送方向における幅ごとに前記各係合部材を支持する環状のチェーンと、
をさらに備える、
請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記各駆動機構の各端部部材は、
少なくともいずれか一つが、所定の駆動源により駆動力が付与されるスプロケットによって構成される、
請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記スラットは、
搬送方向と直交する方向の側部より延出する係合ピンを、前記係合部として形成し、
前記各駆動機構の各係合部材は、
一側部が前記係合ピンに向けて延出し、前記延出部分にて前記係合ピンと係合可能に窪んだ凹部を、前記被係合部として形成する、
請求項2または請求項3に記載の搬送装置。
【請求項5】
前記各駆動機構の各係合部材の被係合部は、
前記各端部部材の非接触側に形成される、
請求項4に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記各駆動機構の各係合部材は、
搬送方向と直交する方向を回転軸方向として、前記チェーンに対して相対的に回動可能に支持される、
請求項2から請求項5までのいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記各駆動機構の各チェーンは、
前記スラットの搬送方向における幅に対応する長さの複数の細切れのチェーンを、複数の継手リンクによって連結することで環状のチェーンとして構成され、
前記継手リンクは、
異なる二つの前記細切れのチェーンのうち、一方の前記細切れのチェーンの搬送方向における上流側端部に位置するプレートと、他方の前記細切れのチェーンの搬送方向における下流側端部に位置するプレートとを、リンクプレートで挟むとともに連結ピンで支持することで、前記異なる二つの細切れのチェーンを連結し、
前記各駆動機構の各係合部材は、
前記連結ピンで支持される部材に前記被係合部を形成することで構成される、
請求項2から請求項6までのいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項8】
前記各駆動機構の各係合部材には、
前記細切れのチェーンの搬送方向における下流側端部に位置するプレートを支持する連結ピンが挿通される基準孔と、
前記細切れのチェーンの搬送方向における上流側端部に位置するプレートを支持する連結ピンが挿通されるとともに、前記連結ピンが上下方向に沿って摺動可能な長孔状の副基準孔と、
が形成され、
前記基準孔に挿通される連結ピンを中心に、前記チェーンに対して相対的に回動する、
請求項7に記載の搬送装置。
【請求項9】
前記各駆動機構の各チェーンには、
前記スラットの搬送方向における幅ごとに、搬送方向と直交する方向の側部より延出するとともに、前記各係合部材を支持する延長ピンが取り付けられる、
請求項2から請求項6までのいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項10】
前記各駆動機構の各係合部材は、
前記延長ピンを中心に、前記チェーンに対して相対的に回動する、
請求項9に記載の搬送装置。
【請求項11】
前記各駆動機構の各係合部材には、
前記延長ピンを基準として、前記凹部が形成される側と反対側に、摺動ピンが取り付けられ、
前記各駆動機構は、
前記摺動ピンを摺動させるとともに、前記各チェーンの搬送方向における内側の端部にて、前記延長ピンに対する前記摺動ピンの距離を変動させるカムガイドをさらに備え、
前記スラットを前記各係合部材に係合させるとき、および前記スラットを前記各係合部材より離脱させるときに、前記スラットの係合ピンより前記各係合部材の凹部を逃がす方向に、前記各係合部材を回動させる、
請求項9または請求項10に記載の搬送装置。
【請求項12】
前記各駆動機構の各チェーンの周回軌跡は、
前記搬送方向における内側に向かうにつれて、各チェーンの周回軌跡の上下中央部側に収束する、
請求項2から請求項10までのいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項13】
前記各駆動機構は、
前記内側端部部材の外径寸法を、前記外側端部部材の外径寸法よりも小さく設定するとともに、前記各端部部材の中心を同一の高さ位置に設定する、
請求項12に記載の搬送装置。
【請求項14】
前記各駆動機構の各チェーンの周回軌跡には、
搬送方向における外側端部に、搬送方向に沿って直線状に形成されるとともに、前記スラットの搬送方向における幅以上の距離が設定される直線部と、
前記直線部よりも搬送方向における内側に、上下方向における外側に曲線状に膨らむ曲線部が形成される、
請求項12または請求項13に記載の搬送装置。
【請求項15】
前記各駆動機構は、
前記各チェーンの内側に配設され、前記各チェーンの周回軌跡に対応する形状の上下面が形成されるチェーンガイド、
をさらに備え、
前記各駆動機構の各チェーンは、
前記各チェーンガイドの上下面を摺動することで、所定の周回軌跡を描く、
請求項2から請求項14までのいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項16】
前記各駆動機構のいずれか一方は、
所定の駆動源により、前記チェーンを周回させて前記スラットに駆動力を付与し、
前記各駆動機構の他方は、
前記各駆動機構の一方からの駆動力により、前記チェーンを周回させて前記スラットに駆動力を付与する、
請求項2から請求項15までのいずれか一項に記載の搬送装置。
【請求項17】
前記各駆動機構は、
前記スラットの搬送方向と直交する方向の側部に前記チェーンが複数配設され、
前記各駆動機構の少なくともいずれか一方は、
前記内側端部部材がスプロケットによって構成され、前記内側端部部材を回動可能に支持する駆動軸を回動させて、前記各駆動機構の各チェーンを周回させる、
請求項2から請求項16までのいずれか一項に記載の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2013−86918(P2013−86918A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228362(P2011−228362)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】