説明

搬送装置

物品を生産または加工するラインの途中に設置され、上流側装置から下流側装置へプリント基板を搬送する搬送装置(10)は、該搬送装置のベース部(20)と、該ベース部上で前記上流側装置と前記下流側装置との間を往復移動する移送部(30)と、該移送部の上端部に設けられ、前記上流側装置から受け取った物品を前記下流側装置に引き渡す物品受渡機構(40)と、前記移送部(30)を往復移動させる駆動機構とからなっている。この搬送装置(10)は、移送部(30)の位置に応じて上流側装置と移送部(30)との間または下流側装置と移送部(30)との間に作業者等が前記ラインを横断できるスペースが形成されるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、物品を生産または加工するラインの途中に設置され、上流側装置から下流側装置へ該物品を搬送する搬送装置、特に、プリント基板に電子部品を装着する表面実装ラインの途中に設置され、上流側装置から下流側装置へ該プリント基板を搬送する搬送装置に関するものである。
【背景技術】
一般に、プリント基板に電子部品を装着する表面実装ラインは、基板供給装置、クリームはんだ印刷機、はんだ印刷外観検査装置、高速実装機、異形部品実装機、リフロー前外観検査装置、リフロー炉、リフロー後外観検査装置、基板収納装置等から構成され、これら各装置が順次、上流側から下流側に向け、連結配列されている。
そのため、表面実装ラインの長さは最低でも10メートルを超えるものとなり、上記各装置の保守点検、電子部品補充等のために作業者が装置の一側から反対側に回って作業を行いたい場合、図8に示すように、作業者Wは、表面実装ラインPの一端を迂回して当該装置の反対側へ行く必要があり、不便で作業効率が低下するという問題点があった。
そこで、上記問題点を解消するための装置の従来例としては、例えば、特開平10−337358号公報に開示されているものがある。これは、図9に示すように、上流側装置160の搬送体160Aと、下流側装置180の搬送体180Aとの間に中間部搬送体170Aを設け、この中間部搬送体170Aを下流側搬送体180Aに対し、跳ね上げ式に開閉可能に形成し、その跳ね上げにより両搬送体間に横断用のスペースを確保しようとしたものである。
また、この種の装置の他の従来例としては、例えば、実開平5−65932号公報に開示されているものがある。これは、図10に示すように、上流側装置から下流側装置へプリント基板を搬送するコンベア装置270であって、コンベア270Aを回転または上下動できるようにし、その回転または上動により該コンベアと下流側装置のコンベアとの間に横断用のスペースを確保しようとしたものである。
しかしながら、前記第1のタイプの公知装置においては、作業者が装置の反対側に回って作業を行おうとした際に、中間部搬送体170A上に加工対象品Mが存在していないことを確認し、加工対象品Mが存在していない場合に限って中間部搬送体170Aを手動または自動で跳ね上げることができる。また、上流側搬送体160Aと中間部搬送体170Aとの間または該中間部搬送体と下流側搬送体180Aとの間で加工対象品Mが搬送中でないことを確認し、加工対象品Mが搬送中でない場合に限って、中間部搬送体170Aを手動または自動で跳ね上げることができる。
また、前記第2のタイプの公知装置においても、上流側装置のコンベアとコンベア装置270との間または該コンベア装置と下流側装置のコンベアとの間でプリント基板が搬送中でないことを確認し、プリント基板が搬送中でない場合に限って、コンベア270Aを手動または自動で回転や上下動させることができる。
したがって、前記各公知装置においては、作業者が装置の反対側に回って作業を行おうとする度に、作業者自身が往来できるスペースを確保しなければならず、特に手動で行う場合にはスペースを確保する動作と元に戻す動作とが必要になり、極めて煩わしいという欠点があった。
また、前記装置においては、上流側搬送体160Aと中間部搬送体170Aとの間または該中間部搬送体と下流側搬送体180Aとの間で加工対象品が搬送中である場合や上流側装置のコンベアとコンベア装置270のコンベア270Aとの間または該コンベアと下流側装置のコンベアとの間でプリント基板が搬送中である場合には、作業者が往来できるスペースを確保する操作・処理を行うことができず、依然として作業効率が悪いという問題点があった。
【発明の開示】
本発明の主たる目的は、このような従来装置が有する欠点に鑑みてなされたもので、作業者が何の操作もすることなく何時でもラインの途中を横断できるスペースを確保することが可能な搬送装置を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明に係る搬送装置は、物品を生産または加工するラインの途中に設置され、上流側装置から下流側装置へ該物品を搬送する搬送装置であって、該搬送装置のベース部と、該ベース部上で前記上流側装置と前記下流側装置との間を往復移動する移送部と、該移送部の上端部に設けられ、前記上流側装置から受け取った前記物品を前記下流側装置に引き渡す物品受渡機構と、前記移送部を往復移動させる駆動機構とからなり、前記移送部の位置に応じて前記上流側装置と該移送部との間または前記下流側装置と該移送部との間に形成されるスペースを作業者等が往来できるスペースが形成されるように構成したことを特徴とするものである。
前記移送部は、その移動方向に沿って延伸し、かつ該ベース部の下側に固定された一対の平行なガイドロッドに支承されて往復移動するように構成することが望ましい。
前記駆動機構は、前記ベース部上面に前記移送部移動方向に沿って形成した溝部内に張設した索状体と、該移送部の下部に固定された駆動モータと、該駆動モータにより水平軸線周りに回転駆動されるように軸受部に軸支され、前記索状体が巻回されたプーリとからなり、該プーリの回転方向に合わせて前記移送部が往復移動するように構成することができる。
また、前記駆動機構は、前記ベース部上面に前記移送部移動方向に沿って形成した溝部内に張設したチェーンと、該移送部の下部に固定された駆動モータと、該駆動モータにより水平軸線周りに回転駆動されるように軸受部に軸支され、前記チェーンに噛合するチェーンホイールとからなり、該チェーンホイールの回転方向に合わせて前記移送部が往復移動するように構成することができる。
さらにまた、前記駆動機構は、前記移送部の下部に固定された駆動モータと、該駆動モータにより水平軸線周りに回転駆動されるように軸受部に軸支され、前記ベース部上面に前記移送部移動方向に沿って形成した溝部の底面に当接しつつ該移送部移動方向に沿って転動する駆動ローラとからなり、該駆動ローラの回転方向に合わせて前記移送部が往復移動するように構成することができる。
また、前記物品受渡機構は、前記物品のサイズに合わせて前記移送部移動方向に直交する方向の間隔が調整可能な左右一対のベルト転送装置とを含んでなり、物品を該ベルト転送装置に載置しつつ前記移送部を往動させることにより、該物品を前記上流側装置から前記下流側装置に搬送するように構成することが望ましい。
また、本発明に係る搬送装置は、前記物品がプリント基板であり、前記生産または加工するラインが該プリント基板に電子部品を装着する表面実装ラインであることを特徴とするものである。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の実施形態の一例としての搬送装置の全体構成を示す斜視図である。第2図は、第1図のA−A矢視断面斜視図である。第3図は、搬送装置の斜め下方からの斜視図である。第4図は、移送部の下部の構成を示す部分拡大斜視図である。第5図は、搬送装置を実装ライン内に配置した状態を示す側面図である。第6図は、駆動機構の改変例を備えた搬送装置の部分断面斜視図である。第7図は、駆動機構の他の改変例を備えた搬送装置の部分断面斜視図である。第8図は、横断不能な普通の実装ラインの平面略図である。第9図は、公知例の側面略図である。第10図は、他の公知例の平面略図である。
【発明を実施するための最良の形態】
第1図〜第4図において、20は搬送装置10のベース部、30はベース部20上を表面実装ラインに沿って往復移動する移送部、40は移送部30の上端部に設けられた物品受渡機構、50は移送部30を往復移動させる駆動機構である。21はベース部20上面に形成された踏板部、22は踏板部21に形成され、移送部30の移動方向に沿って該踏板部21の両端まで延伸する溝部、23はベース部20下面側にその両端部が固定されている左右一対の平行なガイドロッドで、該ガイドロッド23も移送部30の移動方向に沿って延伸している。
51は溝部22内に張設した索状体としてのスチールワイヤで、該スチールワイヤ51の両端部は溝部22の両端部近傍でベース部20にそれぞれ固定されている。52は移送部30の下部に取着した駆動モータ、53は該駆動モータ52により水平軸線周りに回転駆動されるように軸受部に軸支され、スチールワイヤ51が巻回されたプーリである。そして、これらスチールワイヤ51、駆動モータ52およびプーリ53が駆動機構50を構成する。
物品受渡機構40は固定側ベルト転送装置41および可動側ベルト転送装置42を備えている。該可動側ベルト転送装置42の位置を調整して両ベルト転送装置41、42間の間隔をプリント基板(図示略)の幅に合わせた後、転送モータ43を駆動することにより、プリント基板が両ベルト転送装置41、42によって後述する上流側装置から後述する下流側装置に向けて転送されるようになっている。24はベース部20の底面四隅部に設けられた支持脚で、該支持脚24により、ベース部20を搬送装置10の設置床面から離間して支持する。
25は、ベース部20の後端部、すなわち上流側装置に面する該ベース部の長手方向一端部に垂直に立設された、移送部30の後進を規制する第1の停止枠体であり、26は、ベース部20の前端部、すなわち下流側装置に面する該ベース部の長手方向他端部に垂直に立設された、移送部30の前進を規制する第2の停止枠体である。また、27は、移送部30の後部に後方に向けて突設された第1のリミットスイッチであり、28は、該移送部30の前部に前方に向けて突設された第2のリミットスイッチである。
前記第1及び第2のリミットスイッチ27、28は、搬送装置10の各部の動作を制御するシーケンス制御装置(図示略)を介して前記駆動モータ52にそれぞれ電気的に接続されており、第1のリミットスイッチ27は移送部30の後進により前記第1の停止枠体25に当接された瞬間に動作し、該駆動モータ52の回路を開成させて該移送部を停止させ、第2のリミットスイッチ28は該移送部30の前進により前記第2の停止枠体26に当接された瞬間に動作し、該駆動モータ52の回路を開成させて該移送部を停止させる。
31は移送部30の左右一対の側枠30A、30Bの下端に固定された底板であり、該移送部30は両側枠30A、30Bと該底板31とで前記ベース部20をその両側及び下側から抱え込むように配設されている。第4図において、32は移送部30の側枠30Aに内方に向けて突設された支持腕で、該支持腕32に駆動モータ52とプーリ53を軸支する軸受部53Aが支持されている。33は底板31上に固着した左右一対のブロック状の摺動子で、前後方向に貫通する貫通孔33Aをそれぞれ有し、この貫通孔33Aに前記ガイドロッド23が挿通されている。これにより、移送部30は一対のガイドロッド23に支承されてベース部20上を前後方向に往復移動できるようにされている。
ここで、移送部30をベース部20上で前記2つの停止枠体25、26間を往復移動させるためには、先ず駆動モータ52を起動して該駆動モータ52に作動連結されたプーリ53を回転させ、該プーリ53に巻回されたスチールワイヤ51の一端を牽引させる。ところが、スチールワイヤ51は前述したようにその両端がベース部20に固定されているので、反作用としてプーリ53がスチールワイヤ51の巻き取り方向に変位しようとする。その結果、プーリ53を介して駆動モータ52、支持腕32と順次、その変位しようとする力が移送部30に伝達されるので、該移送部30は、該モータ52の正・逆回転に従って、前記摺動子33の貫通孔33Aに挿通されたガイドロッド23に案内されてベース部20上を往復動せしめられる。
第5図は、搬送装置10を実装ライン内に配置した状態を示す図である。
同図において、60は上流側装置の一例としての異形部品実装機、70は下流側装置の一例としてのリフロー前外観検査装置である。第5図(A)は、上流側装置としての異形部品実装機60側のコンベア60Aから図示しないプリント基板が搬送装置10の移送部30の物品受渡機構40に供給されている状態、または供給されるのを待っている状態を示すものである。このとき、移送部30は、該実装機60に隣接する前記第1停止枠体25に接して停止しているため、該移送部30と下流側装置としてのリフロー前外観検査装置70に隣接する前記第2停止枠体26との間に作業者の横断を許す広いスペース80が確保されるので、作業者は何の操作もすることなく該スペース80を利用して自由に往来することができる。第5図(B)は、搬送装置10の移送部30の物品受渡機構40から図示しないプリント基板が前記リフロー前外観検査装置70のコンベア70A上に搬出されている状態、または搬出されるのを待っている状態を示すものである。このとき、移送部30は、該検査装置70に隣接する前記第2停止枠体26に接して停止しているため、該移送部と前記第1停止枠体25との間に作業者の横断を許す広いスペース90が確保されるので、作業者は、前記の場合と同様に、何の操作もすることなく該スペース90を利用して自由に往来することができる。したがって、作業者は移送部30の位置に応じてスペース80またはスペース90を利用すれば、何時でも自由に往来することができる。
なお、移送部30が移動しているときは事故を予防するという観点から作業者の往来を禁止し、作業者にランプやブザーで警報を発したり、作業者が搬送装置10に近付き過ぎたときはセンサにより移送部30を緊急停止させてもよい。しかし、移送部30が異形部品実装機60とリフロー前外観検査装置70との中間位置にある場合のスペース80およびスペース90に十分な余裕があれば、作業者の往来を禁止することは必ずしも要しない。また、リフロー前外観検査装置70が保守点検等の理由により長時間にわたって停止する場合にも、第5図(B)に示す状態で物品受渡機構40上にプリント基板を載置したままリフロー前外観検査装置70の運転再開を待つことができるので、バッファ装置としても利用できる。
第6図は、上記駆動機構50の一改変例50′を示したもので、この改変された駆動機構50′は、上記スチールワイヤ51をチェーン54に置換し、上記プーリ53をチェーンホイール55に置換してなるものであり、他の部分の構成は上記駆動機構のそれと同一であり、その動作も上記のものと同様である。なお、チェーン54としてはラダーチェーン、ローラチェーン等を、また、チェーンホイール55としてはスプロケット等を使用すればよい。
第7図は、上記駆動機構50の他の改変例50″を示したもので、この改変された駆動機構50″は、上記の如きスチールワイヤやチェーン等を具備せず、前記駆動モータ52と硬質ウレタン等の合成樹脂または硬質ゴム等から作られていて、該駆動モータにより水平軸線周りに回転駆動されるように前記軸受部53Aに軸支された駆動ローラ56とからなっており、該駆動ローラ56はその周面が前記溝部22の底面に当接し、移送部30を往復移動させるべく該溝部22に案内されて転動するようにされている。
以上、本発明の実施形態を図面を参照して詳述したが、本発明は該実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で、それに各種の改変を施して実施することが可能である。
産業上の利用性
本発明に係る搬送装置は上記のように構成されているので、従来装置のように作業者が往来するスペースを確保するための操作・処理を行うことができない場合があるといったことがなく、作業者は、何時でも何の操作もすることなく自動的に形成されるスペースを横断することによって、実装ラインの途中でその両側間を自由に往来することができるため、極めて便利であり、従来装置に比し流れ作業の作業効率を大幅に増大させることができる。
また、本発明の装置においては、従来装置のように手動による操作がないので、作業者の労力を軽減することができる。
さらに、本発明装置においては、バッファ装置としても機能させることができるという利点をも有する。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品を生産または加工するラインの途中に設置され、上流側装置から下流側装置へ該物品を搬送する搬送装置であって、該搬送装置のベース部と、該ベース部上で前記上流側装置と前記下流側装置との間を往復移動する移送部と、該移送部の上端部に設けられ、前記上流側装置から受け取った前記物品を前記下流側装置に引き渡す物品受渡機構と、前記移送部を往復移動させる駆動機構とからなり、前記移送部の位置に応じて前記上流側装置と該移送部との間または前記下流側装置と該移送部との間に作業者等が往来できるスペースが形成されるように構成したことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記移送部は、その移動方向に沿って延伸し、かつ該ベース部の下側に固定された一対の平行なガイドロッドに支承されて往復移動するように構成したことを特徴とする請求項1記載の搬送装置。
【請求項3】
前記駆動機構は、前記ベース部上面に前記移送部移動方向に沿って形成した溝部内に張設した索状体と、該移送部の下部に固定された駆動モータと、該駆動モータの回転が伝達されるように軸支され、前記索状体が巻回されたプーリとからなり、該プーリの回転方向に合わせて前記移送部が往復移動するように構成したことを特徴とする請求項1記載の搬送装置。
【請求項4】
前記駆動機構は、前記ベース部上面に前記移送部移動方向に沿って形成した溝部内に張設したチェーンと、該移送部の下部に固定された駆動モータと、該駆動モータの回転が伝達されるように軸支され、前記チェーンに噛合するチェーンホイールとからなり、該チェーンホイールの回転方向に合わせて移送部が往復移動するように構成したことを特徴とする請求項1記載の搬送装置。
【請求項5】
前記駆動機構は、前記移送部の下部に固定された駆動モータと、該駆動モータにより水平軸線周りに回転駆動されるように軸受部に軸支され、前記ベース部上面に前記移送部移動方向に沿って形成した溝部の底面に当接しつつ該移送部移動方向に沿って転動する駆動ローラとからなり、該駆動ローラを回転方向に合わせて前記移送部が往復移動するように構成したことを特徴とする請求項1記載の搬送装置。
【請求項6】
前記物品受渡機構は、前記物品のサイズに合わせて前記移送部移動方向に直交する方向の間隔が調整可能な左右一対のベルト転送装置とを含んでなり、物品を該ベルト転送装置に載置しつつ前記移送部を往動させることにより、該物品を上流側装置から下流側装置に搬送するように構成したことを特徴とする請求項1記載の搬送装置。
【請求項7】
前記物品がプリント基板であり、前記生産または加工するラインが該プリント基板に電子部品を装着する表面実装ラインであることを特徴とする請求項1記載の搬送装置。

【国際公開番号】WO2004/026738
【国際公開日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【発行日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−537540(P2004−537540)
【国際出願番号】PCT/JP2003/011026
【国際出願日】平成15年8月29日(2003.8.29)
【出願人】(000209474)谷電機工業株式会社 (25)
【Fターム(参考)】