説明

搭載型排ガス分析計

【課題】
直流電源を逆接続した際に生じる逆電流による機器の破損を好適に防止することができるとともに、正常接続時において排ガス分析部以外での電力消費が実質的にゼロである搭載型排ガス分析計を提供することである。
【解決手段】
車両又は船舶に搭載され、当該車両又は船舶からの排ガスを分析する搭載型排ガス分析計1であって、直流電源2と、排ガス分析部3と、前記直流電源2からの電力を前記排気ガス分析部3に供給する電力供給経路4と、前記排ガス分析部3に並列に接続され、前記直流電源2を逆接続したときに流れる逆電流のみを導通する逆電流導通手段5と、当該逆電流導通手段5に逆電流が流れたことを検出する逆電流検出手段6と、前記電力供給経路4上に設けられた遮断手段7と、を備え、前記遮断手段7が、前記逆電流検出手段6により逆電流が検出されると作用して、前記電力供給経路4を遮断するものであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両又は船舶に搭載され、その車両又は船舶からの排ガスに含まれる物質成分を分析する搭載型排ガス分析計に関し、特に、直流電源の逆接続により生じる機器の破損の防止機能を有する排ガス分析計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の直流電源の逆接続による機器の破損を防止するものとして、回路上に単に整流用のダイオードを直列に設けて逆電流を流れないようにするもの(以下、前者という。)や、引用文献1に示すように、直流電源が正しく接続されたときのみ、回路上に設けた常開接点がリレーコイルの励磁によって閉じ、直流電流が負荷に供給されるように構成したもの(以下、後者という。)がある。
【0003】
前者は、ダイオードを順方向に電流が流れる構成になっており、正常接続時においてダイオードの順方向電圧によって電圧降下が生じ、余分な電圧が消費される。また後者も、正常接続時においてダイオード及びリレーコイルにおいて電力が消費される。
【0004】
しかし、このように正常接続時にダイオードやリレーコイル等において電力が消費されることは、長時間の測定が要求される搭載型排ガス分析計においては、動作時間の短縮に繋がってしまい問題である。かといって、正常接続時のダイオードやリレーコイル等の消費電力をカバーするために、直流電源の容量を大きくすることは、搭載型排ガス分析計の大型化、重量化に繋がり、その結果、測定結果に影響を与えてしまうという問題を生じてしまう。
【特許文献1】特開平5−130734
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、上記問題点を一挙に解決するためになされたものであり、直流電源を逆接続した際に生じる逆電流による機器の破損を好適に防止することができるとともに、正常接続時に余分な電力を消費しない搭載型排ガス分析計を提供することをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明に係る搭載型排ガス分析計は、車両又は船舶に搭載され、当該車両又は船舶からの排ガスを分析する搭載型排ガス分析計であって、直流電源と、排ガス分析部と、前記直流電源からの電力を前記排気ガス分析部に供給する電力供給経路と、前記排ガス分析部に並列に接続され、前記直流電源を逆接続したときに流れる逆電流のみを導通する逆電流導通手段と、当該逆電流導通手段に逆電流が流れたことを検出する逆電流検出手段と、前記電力供給経路上に設けられた遮断手段と、を備え、前記遮断手段が、前記逆電流検出手段により逆電流が検出されると作用して、前記電力供給経路を遮断するものであることを特徴とする。ここで逆電流とは、直流電源を正常に接続した時に流れる電流とは逆向きに流れる電流のことである。
【0007】
このようなものであれば、逆接続した際に生じる逆電流による排ガス分析部の破損を好適に防ぐことができるとともに、正常接続時には排ガス分析部以外での電力消費を実質的にゼロにすることができる。したがって、搭載型排ガス分析計の作動可能な時間を直流電源の容量を大きくする必要なく延長することができる。
【0008】
具体的な実施の形態としては、前記逆電流導通手段が、前記直流電源が逆接続されたときのみ電流を流すダイオードであることが望ましい。
【0009】
さらに具体的な実施の形態としては、前記逆電流検出手段が、前記逆電流導通手段に直列に接続されたリレーコイルであり、前記遮断手段が、前記リレーコイルの励磁により開放される常閉接点であることが望ましい。
【0010】
このような搭載型排ガス分析計では、逆接続されたときに膨大な電力を浪費してしまうので、前記電力供給回路上に設けられ、前記直流電源が逆接続されたことを報知する報知手段をさらに有していることが好ましい。
【0011】
これにより、当該分析計の使用者等が直流電源が逆接続されていることを認知することができるので、逆接続による直流電源の消費電力を少なくすることができ、本発明に係る搭載型排ガス分析計の利便性を向上させることができる。
【0012】
前記報知手段の具体的な実施の形態としては、直流電源が逆接続されたときに流れる逆電流によって発光する発光手段又は音を発する音出力手段であることが考えられる。例えば発光手段としては発光ダイオード、音出力手段としてはブザーである。
【発明の効果】
【0013】
このように本発明によれば、逆接続した際に生じる逆電流による機器の破損を好適に防ぐことができるとともに、正常接続時において排ガス分析部以外での電力消費が実質的にゼロである搭載型排ガス分析計を提供することができる。したがって、搭載型排ガス分析計の作動可能な時間を、直流電源の容量を大きくする必要なく延長することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
<第1実施形態>
【0015】
以下に本発明の第1実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
本実施形態に係る搭載型排ガス分析計1は、車両のトランク等に積み込んで車両を実走行させながら、排ガス中の種々の成分濃度を測定することが可能なもので、図1に模式的に示すように、直流電源2と、排ガス分析部3と、直流電源2からの電力を排ガス分析部3に供給する電力供給経路4と、排ガス分析部3に並列に接続され、直流電源2を逆接続したときに流れる逆電流のみを導通する逆電流導通手段5と、逆電流導通手段5に逆電流が流れたことを検出する逆電流検出手段6と、電力供給経路4上に設けられた遮断手段7とを備えている。
【0017】
以下に各部2〜7を説明する。
【0018】
直流電源2は、充放電可能なものであり、例えばバッテリーである。
【0019】
排ガス分析部3は、後述する電力供給経路4上に設けられ、直流電源2から電力を供給され、車両の内燃機関から排出された排ガス中の種々の成分濃度を測定するものである。例えば、CO、CO、HOの濃度を測定するための赤外線ガス分析計、THCの濃度を測定するための水素炎イオン化分析計、NOの濃度を測定するための化学発光式窒素酸化物分析計などから構成されている。
【0020】
電力供給経路4は、直流電源2からの電力を排ガス分析部3に供給するものであり、直流電源2の正極が接続されるべき第1接続端子411、直流電源2の負極が接続されるべき第2接続端子421と、第1接続端子411と排ガス分析部3とを接続する第1供給路41と、第2接続端子421と排ガス分析部3とを接続する第2供給路42とからなる。そして本実施形態では、第1供給路41上に、使用者等により手動で操作される主スイッチ8を設けている。この主スイッチ8をオンすることによって直流電源2が正常に接続されているならば、当該直流電源2からの電力が排ガス分析部3に供給される。
【0021】
逆電流導通手段5は、直流電源2が逆接続されたときのみ電流を流すダイオードであり、排ガス分析部3に並列に接続されている。この逆電流導通手段5は、後述する逆電流検出手段6と互いに直列接続されることにより逆電流流通路9を構成し、この逆電流流通路9は、第1供給路41及び第2供給路42に架設されている。
【0022】
逆電流検出手段6は、本実施形態においては、逆電流導通手段5に直列に接続されたリレーコイルであり、直流電流が流れたことにより生じる励磁によって後述する遮断手段7を操作するものである。
【0023】
遮断手段7は、電力供給経路4上に設けられた常閉接点であり、リレーコイル6の励磁により開放されるものである。具体的には、遮断手段7は、第1供給路41上において、第1供給路41と逆電流流通路との接点Pよりも排ガス分析部3側に設けるようにしている。
【0024】
次に、本実施形態に係る搭載型排ガス分析計1の動作について図2及び図3を参照して説明する。
【0025】
図2に示すように、直流電源2を正常接続したときには、直流電源2の正極が第1接続端子411に接続され、負極が第2接続端子421に接続される。このとき主スイッチ8をオンにすると電力供給経路4に電流が順方向に流れ、排ガス分析部3へ電力が供給される。そして、排ガス分析部3が車両からの排ガスを分析する。このとき、逆電流導通手段であるダイオード5には電流が流れないため、逆電流検出手段であるリレーコイル6により、遮断手段である常閉接点7が開放することはない。
【0026】
一方、図3に示すように、直流電源2を逆接続したときには、直流電源2の正極が第2接続端子421に接続され、負極が第1接続端子411に接続される。このとき逆電流が生じて、ダイオード5を有する逆電流流通路9に逆電流が流れる。そして、リレーコイル6により励磁が生じて第1供給路41上に設けた常閉接点7が開放され、電力供給経路4が遮断される。故に、主スイッチ8をオンにしても排ガス分析部3に逆電流が流れることがないので、排ガス分析部3等の破損を防ぐことができる。
【0027】
このように構成した本実施形態に係る搭載型排ガス分析計1によれば、逆接続した際に生じる逆電流による排ガス分析部3の破損を好適に防ぐことができるとともに、正常接続時において、正常接続時において排ガス分析部以外での電力消費が実質的にゼロである搭載型排ガス分析計1を提供することができる。従って、搭載型排ガス分析計1の作動可能な時間を直流電源の容量を大きくする必要なく延ばすことができる。
【0028】
<第2実施形態>
【0029】
以下に本発明の第2実施形態について図面を参照して説明する。なお、前記第1実施形態に対応するものには同一の符号を付している。
【0030】
本実施形態に係る搭載型排ガス分析計1は、図4に示すように、前記第1実施形態においてさらに、直流電源2が逆接続されたことを報知する報知手段10を設けている。本実施形態では、報知手段10として発光手段を用いている。
【0031】
発光手段101は、直流電源2が逆接続されたときに流れる逆電流によって発光するものであり、例えば発光ダイオードなどを用いることができる。そして、本実施形態では、発光ダイオード101は、逆電流流通路9上において、逆電流導通手段であるダイオード5と逆電流検出手段であるリレーコイル6との間に設けるようにしている。なお、発光ダイオード101の設置場所は、逆電流が流れる経路上であれば何処であっても良い。
【0032】
このように構成した本実施形態に係る搭載型排ガス分析計1によれば、当該分析計1の使用者等が直流電源2が逆接続されていることを認知することができるので、逆接続による直流電源2の消費電力を少なくすることができ、搭載型排ガス分析計1の利便性を向上させることができる。
【0033】
<第3実施形態>
【0034】
以下に本発明の第3実施形態について図面を参照して説明する。なお、前記第1、第2実施形態に対応するものには同一の符号を付している。
【0035】
本実施形態に係る搭載型排ガス分析計は、図5に示すように、第1供給路41及び第2供給路42に架設する逆電流流通路9とは別に、第3供給路43を有し、さらに第1供給路41上に第1の常開接点44を有している。
【0036】
この第三供給路43は、主スイッチ8と当該主スイッチ8に並列に接続された第2常開接点45と、主スイッチ8に直列に接続された第2のリレーコイル46と、遮断手段としての常閉接点7とを有している。そして、第2のリレーコイル46に電流が流れると第1の常開接点44及び第2の常開接点45が閉じて電流が流れるようにしている。
【0037】
次にこのように構成した本実施形態に係る搭載型排ガス分析計1の動作について説明する。
【0038】
まず、直流電源2を正常接続したときには、直流電源2の正極が第1接続端子411に接続され、負極が第2接続端子421に接続される。このとき主スイッチ8をオンにすると第3供給路43上の第2のリレーコイル46に電流が流れる。そしてそのときに生じる励磁によって第1の常開接点44と第2の常開接点がともに閉じる。これにより排ガス分析部3へ電力が供給される。そして、排ガス分析部3が車両からの排ガスを分析する。このとき、逆電流導通手段であるダイオード5には電流が流れないため、逆電流検出手段であるリレーコイル6により、遮断手段である常閉接点7が開放することはない。
【0039】
一方、直流電源2を逆接続したときには、直流電源2の正極が第2接続端子421に接続され、負極が第1接続端子411に接続される。このとき逆電流が生じて、ダイオード5を有する逆電流流通路9に逆電流が流れる。そして、リレーコイル6により励磁が生じて第3供給路41上に設けた常閉接点7が開放される。このとき、主スイッチをオンにしたとしても第2のリレーコイル46には電流が流れないため、第1の常開接点44及び第2の常開接点45が閉じることはなく、排ガス分析部3に逆電流が流れることを防止することができ、排ガス分析部3等の破損を防ぐことができる。
【0040】
<その他の変形実施形態>
【0041】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0042】
前記第1実施形態では、遮断手段を第1供給路41上において、第1供給路41と逆電流流通路9との接点Pよりも排ガス分析部3側に設けるようにしているが、これに限られることはなく、図6に示すように、接点Pに対して排ガス分析部3の反対側に設けても良いし、図7に示すように、第2供給路42と逆電流流通路9との接点Qよりも排ガス分析部3側に設けるようにしても良いし、図8に示すように、接点Qに対して排ガス分析部3の反対側に設けるようにしても良い。
【0043】
前記第2実施形態では、報知手段として発光手段を用いたが、これに限られることはなく、図9に示すように、報知手段10として、直流電源2が逆接続されたときに流れる逆電流によって音を発する音出力手段、例えば、ブザーなどを用いることもできる。図9においては、ブザー102を、リレーコイル6に並列に接続させている。
【0044】
前記第2実施形態において、報知手段として、発光手段と音出力手段とを同時に用いるようにしても良い。
【0045】
その他、前述した各実施形態や変形実施形態の一部又は全部を適宜組み合わせてよいし、本発明は前記各実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1実施形態における搭載型排ガス分析計を示す模式的構成図。
【図2】同実施形態において直流電源を正常接続した場合の回路構成図。
【図3】同実施形態において直流電源を逆接続した場合の回路構成図。
【図4】本発明の第2実施形態における搭載型排ガス分析計を示す回路構成図。
【図5】本発明の第3実施形態における搭載型排ガス分析計を示す回路構成図。
【図6】本発明の変形実施形態における搭載型排ガス分析計を示す回路構成図。
【図7】本発明の別の変形実施形態における搭載型排ガス分析計を示す回路構成図。
【図8】本発明のさらに異なる変形実施形態における搭載型排ガス分析計を示す回路構成図。
【図9】本発明のその他の変形実施形態における搭載型排ガス分析計を示す回路構成図。
【符号の説明】
【0047】
1 ・・・搭載型排ガス分析計
2 ・・・直流電源
3 ・・・排ガス分析部
4 ・・・電力供給経路
5 ・・・逆電流導通手段(ダイオード)
6 ・・・逆電流検出手段(リレーコイル)
7 ・・・遮断手段(常閉接点)
10 ・・・報知手段
101・・・発光手段(発光ダイオード)
102・・・音出力手段(ブザー)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両又は船舶に搭載され、当該車両又は船舶からの排ガスを分析する搭載型排ガス分析計であって、
直流電源と、
排ガス分析部と、
前記直流電源からの電力を前記排気ガス分析部に供給する電力供給経路と、
前記排ガス分析部に並列に接続され、前記直流電源を逆接続したときに流れる逆電流のみを導通する逆電流導通手段と、
当該逆電流導通手段に逆電流が流れたことを検出する逆電流検出手段と、
前記電力供給経路上に設けられた遮断手段と、を備え、
前記遮断手段が、前記逆電流検出手段により逆電流が検出されると作用して、前記電力供給経路を遮断するものであることを特徴とする搭載型排ガス分析計。
【請求項2】
前記逆電流導通手段が、前記直流電源が逆接続されたときのみ電流を流すダイオードであることを特徴とする請求項1記載の搭載型排ガス分析計。
【請求項3】
前記逆電流検出手段が、前記逆電流導通手段に直列に接続されたリレーコイルであり、
前記遮断手段が、前記リレーコイルの励磁により開放される常閉接点であることを特徴とする請求項1記載の搭載型排ガス分析計。
【請求項4】
前記直流電源が逆接続されたことを報知する報知手段を有していることを特徴とする請求項1、2又は3記載の搭載型排ガス分析計。
【請求項5】
前記報知手段が、前記直流電源が逆接続されたときに流れる逆電流によって発光する発光手段を有していることを特徴とする請求項4記載の搭載型排ガス分析計。
【請求項6】
前記報知手段が、前記直流電源が逆接続されたときに流れる逆電流によって音を発する音出力手段を有していることを特徴とする請求項4又は5記載の搭載型排ガス分析計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−329738(P2006−329738A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−151883(P2005−151883)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【出願人】(000155023)株式会社堀場製作所 (638)
【Fターム(参考)】