説明

携帯可能電子装置、携帯可能電子装置の処理装置、及び携帯可能電子装置の処理システム

【課題】 より速く非接触通信を行う事ができる携帯可能電子装置、携帯可能電子装置の処理装置、及び携帯可能電子装置の処理システムを提供する。
【解決手段】 一実施形態に係る携帯可能電子装置は、前記外部機器から送信された初期応答要求コマンドを受信する受信部と、前記受信部により受信された前記初期応答要求コマンドを解析し、前記初期応答要求コマンドにより示された通信速度を認識する通信速度認識部と、前記初期応答要求コマンドに対するレスポンスを生成するコマンド処理部と、通信速度を設定する通信速度設定部と、前記コマンド処理部により生成された前記レスポンスを前記通信速度設定部により設定された通信速度で前記外部機器に送信する送信部と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、携帯可能電子装置、携帯可能電子装置の処理装置、及び携帯可能電子装置の処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、携帯可能電子装置として用いられるICカードは、プラスチックなどで形成されたカード状の本体と本体に埋め込まれたICモジュールとを備えている。ICモジュールは、ICチップを有している。ICチップは、電源が無い状態でもデータを保持することができるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read−Only Memory)またはフラッシュROMなどの不揮発性メモリと、種々の演算を実行するCPUとを有している。
【0003】
ICカードは、例えば、国際標準規格ISO/IEC7816、及びISO/IEC14443に準拠したICカードである。ICカードは、携帯性に優れ、且つ、外部装置との通信及び複雑な演算処理を行う事ができる。また、偽造が難しい為、ICカードは、機密性の高い情報などを格納してセキュリティシステム、電子商取引などに用いられることが想定される。
【0004】
また、近年、非接触通信によりデータの送受信を行うことができるICカードが一般的に普及している。上記したような非接触通信を行うICカードは、ICチップとアンテナとを備えている。ICカードは、ICカードを処理するICカード処理装置のリーダライタから発せられる磁界を受けて、カード内のアンテナを電磁誘導により起電させることにより動作する。また、ICカードは、非接触通信により処理装置からコマンドを受信した場合、受信したコマンドに応じてアプリケーションを実行する。これにより、ICカードは、種々の機能を実現することができる。
【0005】
ICカードの処理装置は、標準の通信速度で、無線通信により初期応答要求コマンドを送信する。ICカードは、初期応答要求コマンドを受信する場合、初期応答要求コマンドに対するレスポンス(初期応答)を生成し、生成したレスポンスを処理装置に送信する。処理装置は、レスポンスを受け取ることにより、通信可能範囲にICカードが存在することを認識することができる。
【0006】
さらに、ICカードの処理装置は、ICカードとの間で通信速度を設定するためのコマンドをICカードに送信する。ICカードは、通信速度を設定する為のコマンドが示す通信速度を自身に設定する。これにより、処理装置及びICカードは、互いに設定された通信速度で通信を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3488166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ICカードがサポートする通信速度は、例えば、106kbps、212kbps、424kbps、及び847kbpsなどである。しかしICカードによっては、106kbps、212kbps、または424kbpsまでしかサポートしていないものが存在する。
【0009】
この為、上記のICカードの処理装置及びICカードは、初期応答要求コマンド、初期応答要求コマンドに対するレスポンス(初期応答)、通信速度を設定するためのコマンド、及び通信速度を設定するためのコマンドに対するレスポンスを、標準の通信速度として106kbpsで送受信する。
【0010】
しかし、通信速度が決定されるまでのコマンド及びレスポンス処理が低速で送受信される為、処理に時間がかかるという課題がある。
【0011】
そこで、より速く非接触通信を行う事ができる携帯可能電子装置、携帯可能電子装置の処理装置、及び携帯可能電子装置の処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一実施形態に係る携帯可能電子装置は、前記外部機器から送信された初期応答要求コマンドを受信する受信部と、前記受信部により受信された前記初期応答要求コマンドを解析し、前記初期応答要求コマンドにより示された通信速度を認識する通信速度認識部と、前記初期応答要求コマンドに対するレスポンスを生成するコマンド処理部と、通信速度を設定する通信速度設定部と、前記コマンド処理部により生成された前記レスポンスを前記通信速度設定部により設定された通信速度で前記外部機器に送信する送信部と、を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、一実施形態に係るICカード処理システムについて説明するための図である。
【図2】図2は、一実施形態に係るICカードについて説明するための図である。
【図3】図3は、一実施形態に係るICカード処理システムについて説明するための図である。
【図4】図4は、一実施形態に係るICカード処理システムについて説明するための図である。
【図5】図5は、一実施形態に係るICカード処理システムについて説明するための図である。
【図6】図6は、一実施形態に係るICカード処理システムについて説明するための図である。
【図7】図7は、一実施形態に係るICカード処理システムについて説明するための図である。
【図8】図8は、一実施形態に係るICカード処理システムについて説明するための図である。
【図9】図9は、一実施形態に係るICカード処理システムについて説明するための図である。
【図10】図10は、一実施形態に係るICカード処理システムについて説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係る携帯可能電子装置、携帯可能電子装置の処理装置、及び携帯可能電子装置の処理システムについて詳細に説明する。
【0015】
本実施形態に係る携帯可能電子装置(ICカード)20及びICカードを処理する処理装置(端末装置)10は、例えば、ISO/IEC14443などにより規定されている非接触通信の機能を備える。これにより、ICカード20及び端末装置10は、互いにデータの送受信を行うことができる。
【0016】
図1は、一実施形態に係るICカード処理システム1の構成例を示す。
ICカード処理システム1は、ICカード20を処理する端末装置10と、ICカード20と、を備える。端末装置10とICカード20とは、上記したように非接触通信により互いに種々のデータを送受信する。
【0017】
端末装置10は、CPU11、ROM12、RAM13、不揮発性メモリ14、送受信部15、共振部16、ロジック部17、上位インターフェース18、及び電源部19を備える。CPU11、ROM12、RAM13、不揮発性メモリ14、送受信部15、共振部16、ロジック部17、及び上位インターフェース18は、それぞれバスを介して互いに接続されている。
【0018】
CPU11は、端末装置10全体の制御を司る制御部として機能する。CPU11は、ROM12又は不揮発性メモリ14に記憶されている制御プログラム及び制御データに基づいて種々の処理を行う。例えば、CPU11は、送受信部15及び共振部16を介してICカード20とコマンド及びレスポンスの送受信を行う。
【0019】
ROM12は、予め制御用のプログラム及び制御データなどを記憶する不揮発性のメモリである。RAM13は、ワーキングメモリとして機能する揮発性のメモリである。RAM13は、CPU11の処理中のデータなどを一時的に格納する。例えば、RAM13は、送受信部15及び共振部16を介して外部の機器と送受信するデータを一時的に格納する。また、RAM13は、CPU11が実行するプログラムを一時的に格納する。
【0020】
不揮発性メモリ14は、例えばEEPROM、FRAMなどを備える。不揮発性メモリ14は、例えば、制御用のプログラム、制御データ、アプリケーション、及びアプリケーションに用いられるデータなどを記憶する。
【0021】
送受信部15及び共振部16は、ICカード20と通信を行うためのインターフェース装置である。
【0022】
送受信部15は、共振部16により送受信するデータに対して信号処理を施す。例えば、送受信部15は、符号化、復号、変調、及び復調を行なう。送受信部15は、符号化及び変調を施したデータを共振部16に供給する。
【0023】
なお、CPU11は、共振部16によりICカード20にデータを送信する場合の通信速度の設定を行う。送受信部15は、CPU11により設定された通信速度でICカード20に送信するデータの制御を行う。また、送受信部15は、CPU11により設定された通信速度でICカード20から受信するデータの解析を行う。
【0024】
共振部16は、例えば所定の共振周波数を有するアンテナを有する。共振部16は、送受信部15から供給されるデータに応じて磁界を発生させる。これにより、端末装置10は、通信可能範囲に存在するICカード20に対してデータを非接触で送信することができる。
【0025】
また、共振部16は、磁界を検知し、検知した磁界に応じてデータを生成する。これにより、共振部16は、データを非接触で受信することができる。共振部16は、受信したデータを送受信部15に供給する。送受信部15は、共振部16により受信したデータに対して復調及び復号を行う。これにより、端末装置10は、ICカード20から送信された元のデータを取得することができる。
【0026】
ロジック部17は、所定の演算処理を行う。例えば、ロジック部17は、CPU11の制御に基づいて、データの暗号化、復号、及び乱数生成などの演算処理を行う。
【0027】
上位インターフェース18は、上位端末と通信するためのインターフェースである。上位端末は、例えば操作部及び表示部などを備える。操作部は、例えば操作キーなどを備え、操作者により入力される操作に基づいて、操作信号を生成する。表示部は、種々の情報を表示する。上位インターフェース18は、上位端末からデータを受け取り、CPU11に伝送する。また、上位インターフェース18は、送受信部15及び共振部16によりICカード20から取得したデータを上位端末に伝送する構成であってもよい。
【0028】
電源部19は、端末装置10の各部に電力を供給する。
【0029】
また、不揮発性メモリ14は、通信速度に関する一覧表(通信速度テーブル)を記憶する記憶部14aを有する。記憶部14aは、例えば、上位インターフェース18を介して上位端末から入力される通信速度テーブルを記憶する。また、端末装置10が操作入力を受け付ける操作部を有する場合、記憶部14aは、操作部に入力される操作に応じた通信速度テーブルを記憶する構成であってもよい。また、ROM12が通信速度テーブルを記憶する記憶部14aを備える構成であってもよい。なお、通信速度テーブルについては後述する。
【0030】
図2は、一実施形態に係るICカード20の構成例を示す。
図2に示すように、ICカード20は、例えば、矩形状の本体21と、本体21内に内蔵されたICモジュール22とを備える。ICモジュール22は、ICチップ23と、共振部(アンテナ)24とを備える。ICチップ23と共振部24とは、互いに接続された状態でICモジュール22内に形成されている。
【0031】
なお、本体21は、少なくとも共振部24が配設されるICモジュール22を設置可能な形状であれば、矩形状に限らず如何なる形状であっても良い。
【0032】
ICチップ23は、CPU25、ROM26、RAM27、不揮発性メモリ28、送受信部29、電源部31、及びロジック部32などを備える。CPU25、ROM26、RAM27、不揮発性メモリ28、送受信部29、電源部31、及びロジック部32は、バスを介して互いに接続されている。
【0033】
共振部24は、端末装置(外部機器)10の共振部16と通信を行うためのインターフェースである。共振部24は、例えば、ICモジュール22内に所定の形状で配設される金属線により構成されるアンテナコイルを備える。
【0034】
ICカード20は、端末装置10に送信するデータに応じてアンテナコイルにより磁界を発生させる。これにより、ICカード20は、端末装置10に対してデータを送信することができる。また、ICカード20は、電磁誘導によりアンテナコイルに発生する誘導電流に基づいて端末装置10から送信されるデータを認識する。
【0035】
CPU25は、ICカード20全体の制御を司る制御部として機能する。CPU25は、ROM26あるいは不揮発性メモリ28に記憶されている制御プログラム及び制御データに基づいて種々の処理を行う。例えば、端末装置10から受信したコマンドに応じて種々の処理を行い、処理結果としてのレスポンスなどのデータの生成を行なう。
【0036】
ROM26は、予め制御用のプログラム及び制御データなどを記憶する不揮発性のメモリである。ROM26は、製造段階で制御プログラム及び制御データなどを記憶した状態でICカード20内に組み込まれる。即ち、ROM26に記憶される制御プログラム及び制御データは、予めICカード20の仕様に応じて組み込まれる。
【0037】
RAM27は、ワーキングメモリとして機能する揮発性のメモリである。RAM27は、CPU25の処理中のデータなどを一時的に格納する。例えば、RAM27は、共振部24を介して端末装置10から受信したデータを一時的に格納する。またRAM27は、共振部24を介して端末装置10に送信するデータを一時的に格納する。またさらに、RAM27は、CPU25が実行するプログラムを一時的に格納する。
【0038】
不揮発性メモリ28は、例えば、EEPROMあるいはフラッシュROMなどのデータの書き込み及び書換えが可能な不揮発性のメモリを備える。不揮発性メモリ28は、ICカード20の運用用途に応じて制御プログラム及び種々のデータを格納する。
【0039】
たとえば、不揮発性メモリ28では、プログラムファイル及びデータファイルなどが創成される。創成された各ファイルには、制御プログラム及び種々のデータなどが書き込まれる。CPU25は、不揮発性メモリ28、または、ROM26に記憶されているプログラムを実行することにより、種々の処理を実現することができる。
【0040】
送受信部29は、端末装置10に送信するデータに対して符号化、負荷変調などの信号処理を行う。例えば、送受信部29は、端末装置10に送信するデータの変調(増幅)を行う。送受信部29は、信号処理を施したデータを共振部24に送信する。
【0041】
また、送受信部29は、共振部24により受信する信号に対して復調、及び復号を行う。例えば、送受信部29は、共振部24により受信する信号の解析を行う。これにより、送受信部29は、2値の論理データを取得する。送受信部29は、解析したデータをバスを介してCPU25に送信する。
【0042】
なお、CPU25は、共振部24により端末装置10にデータを送信する場合の通信速度の設定を行う。送受信部29は、CPU25により設定された通信速度で端末装置10に送信するデータの制御を行う。また、送受信部29は、CPU25により設定された通信速度で端末装置10から受信するデータの解析を行う。
【0043】
電源部31は、共振部24により受け取られた電波(例えばキャリア波)に基づいて電力を生成する。さらに、電源部31は、動作クロックを生成する。電源部31は、生成した電力及び動作クロックをICカード20の各部に供給する。ICカード20の各部は、電力の供給を受けた場合、動作可能な状態になる。
【0044】
ロジック部32は、演算処理をハードウエアにより行う演算部である。例えば、ロジック部32は、端末装置10からのコマンドに基づいて、暗号化、復号、及び乱数の生成などの処理を行う。例えば、端末装置10から相互認証コマンドを受信する場合、ロジック部32は、乱数を生成し、生成した乱数をCPU25に伝送する。
【0045】
また、不揮発性メモリ28は、通信速度テーブルを記憶する記憶部28aを備えている。記憶部28aは、例えば、ICカード20のファイルの創成時に外部から入力される通信速度テーブルを記憶する。また、ROM26が記憶部28aを備える構成であってもよい。この場合、ROM26は、通信速度テーブルを記憶した状態でICチップ23に組み込まれる。なお、通信速度テーブルについては後述する。
【0046】
図3は、一実施形態に係るICカード処理システム1の動作について示す。
端末装置10は、ICカード20の検知を行なう為に、共振部16により送信する初期応答要求コマンドを生成する(ステップS11)。端末装置10は、図4に示すような初期応答要求コマンドを生成する。
【0047】
図4は、初期応答要求コマンドの例を示す。図4により示されるように、初期応答要求コマンドは、「APf」、「AFI」、「PARAM」、及び「CRC_B」を有する。
【0048】
APfは、初期応答要求コマンドで使用されるパラメータである。APfは、例えば1byteのデータである。
【0049】
AFIは、端末装置10が応用分野を特定する為に用いられる識別子である。AFIは、例えば8bit(1byte)で表現される値である。即ち、端末装置10は、初期応答要求コマンドの先頭から9bit乃至16bit目にAFIの値を設定する。
【0050】
PARAMは、属性情報のパラメータである。PARAMは、例えば8bit(1byte)のデータである。PARAMは、コマンドの種類、及び、スロットマーカ方式またはタイムスロット方式などのアンチコリジョンで使用されるスロットの数などを示す。
【0051】
CRC_Bは、巡回冗長検査符号である。CRC_Bは、例えば、16bit(2byte)で表現される値である。CRC_Bは、CRC_Bを含むコマンドをキャラクタとして有するフレーム内のデータビットから計算される値である。ICカード20は、受信したコマンドのCRC_Bを用いて、受信したコマンドが正常に伝送されたものであるか否かを判断する。
【0052】
さらに、図4に示すPARAMは、例えば図5により示されるような構成を備える。
図5は、PARAMの構成の例を示す。図5により示されるように、PARAMは、例えばビットb1乃至ビットb8の8ビット(1バイトにより構成される)。PARAMは、スロット数を示す情報(Number of slots)、REQB/WUPB、及び通信速度情報を有する。
【0053】
Number of slotsは、ビットb1乃至b3に設定されるデータである。Number of slotsは、上記したように、スロットマーカー方式またはタイムスロット方式などのアンチコリジョンで使用されるスロットの数などを示す。
【0054】
REQB/WUPBは、ビットb4に設定されるデータである。REQB/WUPBは、当該初期応答要求コマンドが、REQBコマンド(リクエストコマンド)であるのか、WUPBコマンド(ウェークアップコマンド)であるのかを示す。
【0055】
通信速度情報は、例えばビットb5乃至ビットb8に設定されるデータである。通信速度情報は、端末装置10とICカード20との間で行われる通信の通信速度を設定する為の情報である。端末装置10は、記憶部14aにより記憶されている通信速度テーブルに基づいて、通信速度情報の値を設定する。
【0056】
図6は、通信速度テーブルの例を示す。図6により示されるように、通信速度テーブルは、通信速度を示す情報と、ビットb5乃至ビットb8に対応する値とが対応付けられたテーブルを有する。
【0057】
例えば、端末装置10は、通信速度を106kbpsで設定する場合、初期応答要求コマンドのPARAMのビットb5乃至ビットb8に「0000」をセットする。端末装置10は、通信速度を212kbpsで設定する場合、初期応答要求コマンドのPARAMのビットb5乃至ビットb8に「0001」をセットする。端末装置10は、通信速度を424kbpsで設定する場合、初期応答要求コマンドのPARAMのビットb5乃至ビットb8に「0010」をセットする。端末装置10は、通信速度を847kbpsで設定する場合、初期応答要求コマンドのPARAMのビットb5乃至ビットb8に「0011」をセットする。
【0058】
端末装置10は、生成した初期応答要求コマンドを共振部16により繰り返し通信可能範囲に送信する(ステップS12)。なお、端末装置10は、標準の通信速度(例えば106kbps)で認識されるように初期応答要求コマンドを送信する。
【0059】
ICカード20は、端末装置10の共振部16の通信可能範囲内に進入する場合、活性化されてアイドル状態になる。さらに、ICカード20は、初期応答要求コマンドを受信する。
【0060】
ICカード20のCPU25は、受信した初期応答要求コマンドを解析する(ステップS13)。なお、ICカード20のCPU25は、受信した初期応答要求コマンドを標準の通信速度(例えば106kbps)で解析する。これにより、CPU25は、初期応答要求コマンドの「APf」、「AFI」、「PARAM」、及び「CRC_B」のそれぞれの値を認識する。CPU25は、認識した値と、記憶部28aに記憶されている通信情報テーブルとに基づいて、初期応答要求コマンドにより示される通信速度を認識する(ステップS14)。
【0061】
上記したように、ICカード20は、通信情報テーブルを記憶部28aにより予め記憶する。CPU25は、PARAMのビットb5乃至ビットb8の値と、通信情報テーブルのb5乃至b8とを比較することにより、通信速度を認識する。
【0062】
例えば、PARAMのビットb5乃至ビットb8の値が「0000」である場合、CPU25は、通信速度を106kbpsと認識する。また、PARAMのビットb5乃至ビットb8の値が「0001」である場合、CPU25は、通信速度を212kbpsと認識する。また、PARAMのビットb5乃至ビットb8の値が「0010」である場合、CPU25は、通信速度を424kbpsと認識する。また、PARAMのビットb5乃至ビットb8の値が「0011」である場合、CPU25は、通信速度を847kbpsと認識する。
【0063】
さらに、CPU25は、認識した通信速度が当該ICカード20においてサポートされているか否か判断する。この為に、ICカード20は、ROM26または不揮発性メモリ28に、自身がサポートする通信速度を示す情報を予め記憶する。CPU25は、認識した通信速度をサポートしている場合、初期応答要求コマンドに対するレスポンス(初期応答)を生成する(ステップS15)。CPU25は、例えば、図7に示すようなレスポンスを生成する。
【0064】
図7は、初期応答要求コマンドに対するレスポンスの例を示す。図7により示されるように、このレスポンスは、「APa」、「PUPI」、「応用データ」、「プロトコル情報」及び「CRC_B」を有する。
【0065】
APaは、初期応答要求コマンドに対するレスポンス(初期応答)で使用されるパラメータである。APaは、例えば1byteのデータである。
【0066】
PUPIは、擬似固有ICカード(PICC)識別子である。PUPIは、衝突防止処理(アンチコリジョン)時に、端末装置10側からICカード20を識別するために使用される。PUPIは、例えば、4byteのデータである。
【0067】
応用データは、ICカード20にどのようなアプリケーションが書き込まれているかを端末装置10に伝える為のデータである。応用データは、例えば4byteのデータである。
【0068】
プロトコル情報は、ICカード20がサポートする応用プロトコルの状態を表す。例えば、プロトコル情報は、ICカード20がサポートする通信速度を示す情報を含む。プロトコル情報は、例えば3byteのデータである。
【0069】
CRC_Bは、巡回冗長検査符号である。CRC_Bは、例えば、2byteで表現される値である。CRC_Bは、CRC_Bを含むコマンドをキャラクタとして有するフレーム内のデータビットから計算される値である。
【0070】
さらに、図7に示すプロトコル情報は、例えば図8により示されるような構成を備える。
図8は、プロトコル情報の構成の例を示す。図8により示されるように、プロトコル情報は、例えば、通信速度情報、最大フレーム長、プロトコルタイプ、フレーム待ち時間係数、応用データ符号化、及びフレームオプションを有する。
【0071】
最大フレーム長は、ICカード20が受信可能な最大フレーム長を示す。プロトコルタイプは、ICカード20がサポートしているプロトコルタイプを示す。フレーム待ち時間係数は、端末装置10から送信されたコマンド(コマンドを含むフレーム)の最後からICカード20が応答を開始するまでの最大時間を示す。応用データ符号化は、ICカード20がサポートする符号化の形式を示す。フレームオプションは、ICカード20がノードアドレス(NAD)をサポートしているか、カード識別子(CID)をサポートしているかを示す。
【0072】
通信速度情報は、ICカード20が自身に設定する通信速度を示す。上記したように、CPU25は、初期応答要求コマンドが示す通信速度が当該ICカード20においてサポートされているか否か判断する。初期応答要求コマンドが示す通信速度をサポートしている場合、ICカード20は、初期応答要求コマンドが示す通信速度を自身に設定する。
【0073】
通信速度情報は、例えば8ビットのデータである。通信速度情報のうちの4ビット(例えばビットb1乃至ビットb4)は、「0000」が設定される。さらに、CPU25は、記憶部28aにより記憶されている通信速度テーブルに基づいて残りのビットb5乃至ビットb8に値を設定する。
【0074】
例えば、CPU25は、自身に106kbpsの通信速度を設定する場合、通信速度情報として「00000000」の値をセットする。また、CPU25は、自身に212kbpsの通信速度を設定する場合、通信速度情報として「00000001」の値をセットする。また、CPU25は、自身に424kbpsの通信速度を設定する場合、通信速度情報として「00000010」の値をセットする。また、CPU25は、自身に847kbpsの通信速度を設定する場合、通信速度情報として「00000011」の値をセットする。
【0075】
ICカード20は、生成した初期応答要求コマンドに対するレスポンス(初期応答)を共振部24により端末装置10に送信する(ステップS16)。なお、ICカード20は、標準の通信速度で認識されるように初期応答要求コマンドに対するレスポンス(初期応答)を送信する。さらに、CPU25は、初期応答要求コマンドが示す通信速度を自身に設定する(ステップS17)。
【0076】
端末装置10は、初期応答要求コマンドに対するレスポンス(初期応答)を受信する場合、受信したレスポンスを標準の通信速度で解析する。これにより、端末装置10は、自身の通信可能範囲内にICカード20が存在することを認識する(ステップS18)。
【0077】
また、端末装置10は、レスポンスに含まれる通信速度情報を確認し、自身の通信速度を設定する(ステップS19)。この場合、端末装置10は、レスポンスに含まれる通信速度情報、または、初期応答要求コマンドに付加した通信速度情報に基づく通信速度を自身に設定する。これ以降、端末装置10及びICカード20は、自身に設定された通信速度でコマンド及びレスポンスの送受信を行う。
【0078】
即ち、端末装置10は、コマンドを生成し、設定した通信速度で認識されるように生成したコマンドを送信する(ステップS20)。ICカード20は、コマンドを受信した場合、受信したコマンドを設定した通信速度で解析する。ICカードは、解析したコマンドに基づいてコマンド処理を実行し、レスポンスを生成する(ステップS21)。
【0079】
ICカード20は、レスポンスを設定した通信速度で認識されるように送信する(ステップS22)。端末装置10は、レスポンスを受信した場合、受信したレスポンスを設定した通信速度で解析する。
【0080】
上記の構成によると、端末装置10及びICカード20は、共通する通信速度テーブルを記憶する記憶部を有する。端末装置10は、通信速度テーブルの情報に基づいて、初期応答要求コマンドに通信速度情報を付加する。ICカード20は、初期応答要求コマンドを受信する場合、初期応答要求コマンドが有する通信速度情報に基づいて、自身の通信速度を設定し、レスポンスを端末装置10に送信する。端末装置10は、レスポンスを受信する場合、初期応答要求コマンドが有する通信速度がICカード20に設定されたことを認識し、設定された通信速度で以降の処理を行う。
【0081】
この構成によると、より早い段階で、通信速度の設定を行うことができる。また、通信プロトコルの活性化処理を省略することができる。この結果、より速く非接触通信を行う事ができる携帯可能電子装置、携帯可能電子装置の処理装置、及び携帯可能電子装置の処理システムを提供することができる。
【0082】
次に、端末装置10の通信可能範囲内に複数枚のICカードが存在する例について説明する。
図9は、端末装置10の通信可能範囲に第1のICカード20Aと第2のICカード20Bとが存在する例を示す。なお、第1のICカード20Aは、通信速度=847kbpsに対応可能である。また、第2のICカード20Bは、通信速度424kbpsに対応可能であるとする。
【0083】
端末装置10は、ICカード20の検知を行なう為に、共振部16により送信する初期応答要求コマンドを生成する。この場合、端末装置10は、通信速度=847kbpsに対応する値を通信速度情報に設定する。即ち、端末装置10は、通信速度テーブルに基づき、初期応答要求コマンドのPARAMのビットb5乃至ビットb8に「0011」をセットする。
【0084】
端末装置10は、生成した初期応答要求コマンドを共振部16により通信可能範囲に送信する(ステップS31)。なお、端末装置10は、標準の通信速度(例えば106kbps)で認識されるように初期応答要求コマンドを送信する。
【0085】
第1のICカード20A及び第2のICカード20Bは、端末装置10の共振部16の通信可能範囲内に進入する場合、活性化されてアイドル状態になる。さらに、第1のICカード20A及び第2のICカード20Bは、初期応答要求コマンドを受信する。
【0086】
第1のICカード20A及び第2のICカード20BのCPU25は、受信した初期応答要求コマンドを解析する。なお、第1のICカード20A及び第2のICカード20BのCPU25は、受信した初期応答要求コマンドを標準の通信速度(例えば106kbps)で解析する。これにより、CPU25は、初期応答要求コマンドの「APf」、「AFI」、「PARAM」、及び「CRC_B」のそれぞれの値を認識する。CPU25は、認識した値と、記憶部28aに記憶されている通信情報テーブルとに基づいて、初期応答要求コマンドにより示される通信速度を認識する。
【0087】
さらに、CPU25は、認識した通信速度が当該ICカード20においてサポートされているか否か判断する。この為に、ICカード20は、ROM26または不揮発性メモリ28に、自身がサポートする通信速度を示す情報を予め記憶する。CPU25は、認識した通信速度をサポートしている場合、初期応答要求コマンドに対するレスポンス(初期応答)を生成し、送信する。図9に示される例によると、第1のICカード20Aは、847kbpsの通信速度に対応可能であるが、第2のICカード20Bは、847kbpsの通信速度に対応することが出来ない。第1のICカード20Aは、生成したレスポンスを送信する(ステップS32)。なお、第2のICカード20Bは、レスポンスの送信を行わない。
【0088】
なお、第1のICカード20Aは、標準の通信速度で認識されるように初期応答要求コマンドに対するレスポンス(初期応答)を送信する。さらに、第1のICカード20AのCPU25は、初期応答要求コマンドが示す通信速度(847kbps)を自身に設定する。
【0089】
端末装置10は、初期応答要求コマンドに対するレスポンス(初期応答)を受信する場合、受信したレスポンスを標準の通信速度で解析する。これにより、端末装置10は、自身の通信可能範囲内に第1のICカード20Aが存在することを認識する(ステップS33)。
【0090】
また、端末装置10は、異なる通信速度情報を設定して初期応答要求コマンドを生成する。この場合、端末装置10は、通信速度=424kbpsに対応する値を通信速度情報に設定する。即ち、端末装置10は、通信速度テーブルに基づき、初期応答要求コマンドのPARAMのビットb5乃至ビットb8に「0010」をセットする。
【0091】
端末装置10は、生成した初期応答要求コマンドを共振部16により通信可能範囲に送信する(ステップS34)。なお、端末装置10は、標準の通信速度(例えば106kbps)で認識されるように初期応答要求コマンドを送信する。
【0092】
第2のICカード20Bは、初期応答要求コマンドを受信する。第2のICカード20BのCPU25は、受信した初期応答要求コマンドを解析し、初期応答要求コマンドにより示される通信速度を認識する。第2のICカード20Bは、424kbpsの通信速度に対応可能であるため、レスポンスを生成し、生成したレスポンスを送信する(ステップS35)。なお、第1のICカード20Aは、既に端末装置10との通信が確立されている為、初期応答要求コマンドに対するレスポンス(初期応答)の送信を行わない。
【0093】
なお、第2のICカード20Bは、標準の通信速度で認識されるように初期応答要求コマンドに対するレスポンス(初期応答)を送信する。さらに、第2のICカード20BのCPU25は、初期応答要求コマンドが示す通信速度(424kbps)を自身に設定する。
【0094】
端末装置10は、初期応答要求コマンドに対するレスポンス(初期応答)を受信する場合、受信したレスポンスを標準の通信速度で解析する。これにより、端末装置10は、自身の通信可能範囲内に第2のICカード20Bが存在することを認識する(ステップS36)。
【0095】
さらに、端末装置10は、212kbpsに対応する値を通信速度情報に設定し、初期応答要求コマンドを生成し、送信する(ステップS37)。
【0096】
この場合、第1のICカード20A及び第2のICカード20Bは、既に端末装置10との通信が確立されている為、初期応答要求コマンドに対するレスポンス(初期応答)の送信を行わない。
【0097】
端末装置10は、初期応答要求コマンドを送信してから所定時間以内にレスポンスを受信しないことを認識する(ステップS38)。
【0098】
さらに、端末装置10は、106kbpsに対応する値を通信速度情報に設定し、初期応答要求コマンドを生成し、送信する(ステップS39)。
【0099】
この場合も、第1のICカード20A及び第2のICカード20Bは、既に端末装置10との通信が確立されている為、初期応答要求コマンドに対するレスポンス(初期応答)の送信を行わない。
【0100】
端末装置10は、初期応答要求コマンドを送信してから所定時間以内にレスポンスを受信しないことを認識する(ステップS40)。以上の処理により、端末装置10は、通信可能範囲内に第1のICカード20Aと第2のICカード20Bとが存在することを認識することができる。
【0101】
端末装置10は、レスポンスに含まれる通信速度情報、または、初期応答要求コマンドに付加した通信速度情報に基づく通信速度でICカード20とコマンド及びレスポンスの送受信を行う。即ち、端末装置10は、第1のICカード20Aとコマンド及びレスポンスの送受信を行う場合、847kbpsの通信速度で通信する。また、端末装置10は、第2のICカード20Bとコマンド及びレスポンスの送受信を行う場合、424kbpsの通信速度で通信する。
【0102】
次に、端末装置10の通信可能範囲内に通信可能速度が同じである複数枚のICカードが存在する例について説明する。
図10は、端末装置10の通信可能範囲に第1のICカード20Aと第2のICカード20Bとが存在する例を示す。なお、第1のICカード20A及び第2のICカード20Bは、847kbpsの通信速度に対応可能であるとする。
【0103】
端末装置10は、ICカード20の検知を行なう為に、共振部16により送信する初期応答要求コマンドを生成する。この場合、端末装置10は、通信速度=847kbpsに対応する値を通信速度情報に設定する。即ち、端末装置10は、通信速度テーブルに基づき、初期応答要求コマンドのPARAMのビットb5乃至ビットb8に「0011」をセットする。
【0104】
端末装置10は、生成した初期応答要求コマンドを共振部16により通信可能範囲に送信する(ステップS51)。なお、端末装置10は、標準の通信速度(例えば106kbps)で認識されるように初期応答要求コマンドを送信する。
【0105】
第1のICカード20A及び第2のICカード20Bは、端末装置10の共振部16の通信可能範囲内に進入する場合、活性化されてアイドル状態になる。さらに、第1のICカード20A及び第2のICカード20Bは、初期応答要求コマンドを受信する。
【0106】
第1のICカード20A及び第2のICカード20BのCPU25は、受信した初期応答要求コマンドを解析する。なお、第1のICカード20A及び第2のICカード20BのCPU25は、受信した初期応答要求コマンドを標準の通信速度(例えば106kbps)で解析する。これにより、CPU25は、初期応答要求コマンドの「APf」、「AFI」、「PARAM」、及び「CRC_B」のそれぞれの値を認識する。CPU25は、認識した値と、記憶部28aに記憶されている通信情報テーブルとに基づいて、初期応答要求コマンドにより示される通信速度を認識する。
【0107】
さらに、CPU25は、認識した通信速度が当該ICカード20においてサポートされているか否か判断する。この為に、ICカード20は、ROM26または不揮発性メモリ28に、自身がサポートする通信速度を示す情報を予め記憶する。CPU25は、認識した通信速度をサポートしている場合、初期応答要求コマンドに対するレスポンス(初期応答)を生成し、送信する。図10に示される例によると、第1のICカード20A及び第2のICカード20Bは、847kbpsの通信速度に対応可能である。この為、第1のICカード20Aと第2のICカード20Bとの両方が、生成したレスポンスを端末装置10に送信する(ステップS52)。さらに、第1のICカード20A及び第2のICカード20BのCPU25は、初期応答要求コマンドが示す通信速度(847kbps)を自身に設定する。
【0108】
上記の場合、端末装置10は、第1のICカード20Aと第2のICカード20Bとの両方から送信されるレスポンスを受信する。ここで端末装置10は、コリジョンが生じたことを認識する(ステップS53)。
【0109】
この場合、端末装置10は、再度847kbpsに対応する値を通信速度情報に設定し、スロット数を設定し、初期応答要求コマンドを生成する。即ち、端末装置10は、初期応答要求コマンドのPARAMのNumber of slotsに、スロット数に対応する値を設定する。なお、ここでのスロットは、タイムスロット方式におけるスロット、スロットマーカ方式におけるスロット、または他のアンチコリジョン処理におけるスロットを示すものであってもよい。
【0110】
端末装置10は、生成した初期応答要求コマンドを通信可能範囲に送信する(ステップS54)。なお、端末装置10は、847kbpsの通信速度で認識されるように初期応答要求コマンドを送信する。
【0111】
第1のICカード20A及び第2のICカード20Bは、初期応答要求コマンドを受信し、受信した初期応答要求コマンドを解析する。なお、第1のICカード20A及び第2のICカード20BのCPU25は、受信した初期応答要求コマンドを847kbpsの通信速度で解析する。これにより、CPU25は、初期応答要求コマンドの「APf」、「AFI」、「PARAM」、及び「CRC_B」のそれぞれの値を認識する。
【0112】
さらに、第1のICカード20A及び第2のICカード20BのCPU25は、PARAMのNumber of slotsを解析することにより、端末装置10により設定されたスロット数を認識する。第1のICカード20A及び第2のICカード20Bは、例えばロジック部32により乱数を生成し、生成された乱数に対応するスロット番号をそれぞれ選択する。例えば、第1のICカード20A及び第2のICカード20Bは、生成された乱数の一部の1bitを特定し、特定された1bitが示す値に「1」を加えた値を自身のスロット番号として選択する。
【0113】
図10に示す例では、第1のICカード20Aがスロット1(スロット番号=1)を選択し(ステップS55)、第2のICカード20Bがスロット2(スロット番号=2)を選択したとする(ステップS56)。
【0114】
第1のICカード20A及び第2のICカード20Bは、受信した初期応答要求コマンドに対するレスポンス(初期応答)を生成する。第1のICカード20Aは、生成された初期応答要求コマンドに対するレスポンス(初期応答)をスロット1で送信する(ステップS57)。
【0115】
端末装置10は、初期応答要求コマンドに対するレスポンス(初期応答)を受信する場合、受信したレスポンスを標準の通信速度で解析する。これにより、端末装置10は、自身の通信可能範囲内に第1のICカード20Aが存在することを認識する(ステップS58)。
【0116】
さらに、端末装置10は、スロット2を選択したICカード(第2のICカード20B)に対して、初期応用要求コマンドを送信する(ステップS59)。第2のICカード20Bは、生成された初期応答要求コマンドに対するレスポンス(初期応答)をスロット2で送信する(ステップS60)。
【0117】
端末装置10は、初期応答要求コマンドに対するレスポンス(初期応答)を受信し、受信したレスポンスを標準の通信速度で解析する。これにより、端末装置10は、自身の通信可能範囲内に第2のICカード20Bが存在することを認識する(ステップS61)。この時点で、端末装置10は、847kbpsの通信速度で通信可能なICカード20を認識したことになる。
【0118】
端末装置10は、レスポンスに含まれる通信速度情報、または、初期応答要求コマンドに付加した通信速度情報に基づく通信速度で認識したICカード20とコマンド及びレスポンスの送受信を行うことができる。
【0119】
さらに、端末装置10は、ステップS51乃至ステップS61の処理を424kbps、212kbps、及び106kbpsの通信速度でそれぞれ行うことにより、通信可能範囲内に存在する他のICカード20を認識することが出来る。
【0120】
なお、上記の実施形態では、通信速度テーブルは、単に通信速度と値とが対応付けられたテーブルとして説明したが、この構成に限定されない。例えば、ICカード20から端末装置10に送信する場合の通信速度と、端末装置10からICカード20に送信する場合の通信速度とをそれぞれ個別に設定できる構成であってもよい。
【0121】
この場合、図6に示される通信速度テーブルは、例えば、ビットb8及びビットb7と、端末装置10からICカード20に送信する場合の通信速度とが対応付けられる。また、例えば、ビットb6及びビットb5と、ICカード20から端末装置10に送信する場合の通信速度とが対応付けられる。これにより、より柔軟に通信速度の設定を行うことができる。
【0122】
なお、上述の各実施の形態で説明した機能は、ハードウエアを用いて構成するに留まらず、ソフトウエアを用いて各機能を記載したプログラムをコンピュータに読み込ませて実現することもできる。また、各機能は、適宜ソフトウエア、ハードウエアのいずれかを選択して構成するものであっても良い。
【0123】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0124】
1…ICカード処理システム、10…端末装置、12…ROM、13…RAM、14…不揮発性メモリ、14a…記憶部、15…送受信部、16…共振部、17…ロジック部、18…上位インターフェース、19…電源部、20…ICカード、21…本体、22…ICモジュール、23…ICチップ、24…共振部、25…CPU、26…ROM、27…RAM、28…不揮発性メモリ、28a…記憶部、29…送受信部、31…電源部、32…ロジック部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部機器と非接触通信を行う携帯可能電子装置であって、
前記外部機器から送信された初期応答要求コマンドを受信する受信部と、
前記受信部により受信された前記初期応答要求コマンドを解析し、前記初期応答要求コマンドにより示された通信速度を認識する通信速度認識部と、
前記初期応答要求コマンドに対するレスポンスを生成するコマンド処理部と、
通信速度を設定する通信速度設定部と、
前記コマンド処理部により生成された前記レスポンスを前記通信速度設定部により設定された通信速度で前記外部機器に送信する送信部と、
を具備する携帯可能電子装置。
【請求項2】
前記コマンド処理部は、前記通信速度認識部により認識された通信速度を示す情報を、前記レスポンスに付加する、請求項1に記載の携帯可能電子装置。
【請求項3】
前記コマンド処理部は、前記通信速度認識部により認識された通信速度が、前記通信速度設定部により設定することが出来る通信速度ではない場合、前記レスポンスを生成せず、前記通信速度認識部により認識された通信速度が、前記通信速度設定部により設定することが出来る通信速度である場合、前記レスポンスを生成する、請求項2に記載の携帯可能電子装置。
【請求項4】
前記通信速度設定部は、前記送信部により前記レスポンスが送信された後に、前記通信速度認識部により認識された通信速度を当該携帯可能電子装置の通信速度として設定する、請求項3に記載の携帯可能電子装置。
【請求項5】
前記各部を備えるICモジュールと、
前記ICモジュールが配設される本体と、
を具備する請求項1に記載の携帯可能電子装置。
【請求項6】
携帯可能電子装置と非接触通信を行う携帯可能電子装置の処理装置であって、
通信速度を示す情報を含む初期応答要求コマンドを生成するコマンド生成部と、
通信速度を設定する通信速度設定部と、
前記コマンド生成部により生成された前記初期応答要求コマンドを前記通信速度設定部により設定された通信速度で前記携帯可能電子装置に送信する送信部と、
前記携帯可能電子装置から送信されたレスポンスを受信する受信部と、
前記受信部により受信された前記レスポンスに基づいて、通信可能範囲内に存在する前記携帯可能電子装置の通信速度を認識する通信速度認識部と、
を具備する携帯可能電子装置の処理装置。
【請求項7】
前記通信速度認識部は、前記受信部により受信された前記レスポンスを解析し、前記レスポンスにより示された通信速度を前記携帯可能電子装置の通信速度として認識する、請求項6に記載の携帯可能電子装置の処理装置。
【請求項8】
前記コマンド生成部は、前記送信部により前記初期応答要求コマンドが送信されてから所定時間以内に前記受信部により前記レスポンスを受信しなかった場合、送信された前記初期応答要求コマンドとは異なる通信速度を示す情報を含む新たな初期応答要求コマンドを生成する、請求項7に記載の携帯可能電子装置の処理装置。
【請求項9】
前記通信速度設定部は、前記受信部により前記レスポンスを受信する場合、前記通信速度認識部により認識された通信速度を当該処理装置の通信速度として設定する、請求項8に記載の携帯可能電子装置の処理装置。
【請求項10】
携帯可能電子装置と、前記携帯可能電子装置と非接触通信を行う携帯可能電子装置の処理装置とを備える携帯可能電子装置処理システムであって、
前記処理装置は、
通信速度を示す情報を含む初期応答要求コマンドを生成するコマンド生成部と、
前記処理装置の通信速度を設定する第1の通信速度設定部と、
前記コマンド生成部により生成された前記初期応答要求コマンドを前記第1の通信速度設定部により設定された通信速度で前記携帯可能電子装置に送信する第1の送信部と、
前記携帯可能電子装置から送信されたレスポンスを受信する第1の受信部と、
前記第1の受信部により受信された前記レスポンスに基づいて、通信可能範囲内に存在する前記携帯可能電子装置の通信速度を認識する第1の通信速度認識部と、
を具備し、
前記携帯可能電子装置は、
前記処理装置から送信された初期応答要求コマンドを受信する第2の受信部と、
前記第2の受信部により受信された前記初期応答要求コマンドを解析し、前記初期応答要求コマンドにより示された通信速度を認識する第2の通信速度認識部と、
前記初期応答要求コマンドに対するレスポンスを生成するコマンド処理部と、
前記携帯可能電子装置の通信速度を設定する第2の通信速度設定部と、
前記コマンド処理部により生成された前記レスポンスを前記第2の通信速度設定部により設定された通信速度で前記処理装置に送信する第2の送信部と、
を具備する携帯可能電子装置処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−198676(P2012−198676A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61554(P2011−61554)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.FRAM
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】