説明

携帯型ナビゲーション装置

【課題】正確な移動距離や移動方向を検出して、正確な現在位置を検出すること。
【解決手段】加速度センサ(SN3)で検出した加速度のデータに基づいてユーザが歩行しているか否かを検出する歩行検出手段(KC13)と、前記加速度データに基づいて、ユーザの歩行の1周期分の加速度の履歴があったか否かを検出する歩行周期検出手段(KC18)と、ユーザが歩行を停止しているか否かを判別するための停止判別時間の間、前記歩行検出手段(KC13)が歩行を検出しなかったか否かを判別する停止判別手段(KC14)と、前記停止判別手段(KC14)により歩行を検出しなかったと判別された場合に、速度検出記憶手段(KC12)に記憶された前記移動速度を0とする速度リセット手段(KC15)と、を有する携帯型ナビゲーション装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザが指定した出発地から目的地までの経路を示す経路案内用画像を表示可能な携帯型ナビゲーション装置に関し、特に、携帯型ナビゲーション装置の移動時の加速度を検出する加速度センサ及び携帯型ナビゲーション装置の磁方位を検出するための地磁気センサを有する携帯型ナビゲーション装置に関する。
本発明は、ナビゲーションプログラムが組み込まれた携帯電話やPDA(Personal Digital Assistance)、ノートパソコン等の携帯可能なナビゲーション装置に好適に適用可能である。
【背景技術】
【0002】
現在、出発地から目的地までの経路案内(ナビゲーション)を行うナビゲーション装置として、車に搭載され、車の移動経路を案内するカーナビゲーション装置や、携帯電話やPDA等の携帯端末にナビゲーション用のソフトウェアを組み込み、ユーザを目的地まで経路案内する画像を表示する携帯型ナビゲーション装置が知られている。このようなナビゲーション装置では、GPS(Global Positioning System:全地球無線側位システム)を利用して、現在位置を検出している。また、携帯電話やPHS等でGPSを使用する場合、GPS衛星からの電波だけでなく基地局との通信も利用する場合(MS−base方式等)もある。しかしながら、GPS衛星からの電波や、携帯電話の基地局からの電波が受信できない場所(例えば、トンネルの中や地下鉄構内、建築物内部等)では、現在位置を確認することができない。
【0003】
GPS等を使用せずに、装置の移動距離を検出する技術として、下記の特許文献1記載の従来技術が公知である。
(特許文献1(特許第3359781号明細書)記載の技術)
特許文献1には、3次元加速度センサ(8010〜8030)により検出したX,Y,Z軸方向の加速度を2回積分して得た変位(移動距離)と、GPSやPHSとの交信により取得しておいた絶対座標と、に基づいて、現在位置を検出する技術が記載されている。
【0004】
また、GPS等を使用せずに装置の移動距離や移動方向を検出する技術として、下記の特許文献2記載の従来技術が公知である。
(特許文献2(特開平2−216011号公報)記載の技術)
特許文献2には、歩数カウント回路部によりカウントした歩数と、地磁気センサ回路部により検出した進行方向と、歩幅と、に基づいて移動方向及び移動距離を演算する技術が記載されている。
【0005】
しかしながら、前記特許文献2記載の技術では、地磁気センサを使用しているために、人間(装置)の移動方向と地磁気センサの向きとが常に一定でなければ進行方向が定められないという問題がある(特許文献2公報第3頁右上欄第4行〜第12行参照)。
したがって、前記特許文献2記載の技術では、ユーザの腰等に所定の姿勢で装着される歩数計や、所定の姿勢で保持される車載型のカーナビゲーション装置等では、移動方向及び移動距離を検出することができる。しかし、携帯電話等の携帯型ナビゲーション装置では、例えば、ユーザが手で持ったり、ポケットに入れた状態で保持される可能性があり、装置の姿勢が不明であり、ユーザの移動方向と地磁気センサの向きが異なる可能性が高い。したがって、特許文献2記載の技術では、携帯型ナビゲーション装置では、進行方向及び移動距離を正確に検出できず、正確な現在位置を検出できない問題がある。
【0006】
このような問題を解決する方法として、例えば、前記特許文献2記載の従来技術に、下記の特許文献3記載の電子コンパスの従来技術を組み合わせることが考えられる。
(特許文献3(特開平8−278137号公報)記載の技術)
特許文献3には、3次元地磁気センサ部(1)から得られたX,Y,Z軸方向の地磁気の方向と、傾斜センサ部(2)から得られた傾斜量と、に基づいて、誤差のない磁方位(θmg)を検出する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3359781号明細書(「0031」〜「0037」、第7図〜第9図)
【特許文献2】特開平2−216011号公報(公報第2頁右上欄第19行〜公報第3頁右上欄第16行、第1図〜第4図)
【特許文献3】特開平8−278137号公報(「0016」〜「0055」、第1図〜第4図、第7図、第8図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記特許文献1〜3記載の技術を、携帯型ナビゲーション装置に使用した場合、携帯型ナビゲーション装置が傾斜した状態でも、GPSを使用せずに移動方向や移動距離を検出することができ、現在位置を検出できる。
携帯型ナビゲーション装置で現在位置を検出する場合、GPS等が利用できる場合には、GPS等を利用した方が正確な現在位置が分かるので、GPS等を利用することが望ましい。したがって、GPS等が利用できない状態で、前記特許文献1〜3記載の従来技術を使用して、移動距離及び移動方向を検出して現在位置を検出することが望ましい。
【0009】
しかしながら、GPS等を利用できる状態から、利用できない状態になる際には、ユーザが携帯型ナビゲーション装置を保持した状態で移動しており、携帯型ナビゲーション装置が速度(速さ及び方向)を有している可能性が高い。即ち、GPSが利用できなくなる際に、携帯型ナビゲーション装置を固定し、移動していない状態にすることは現実的には不可能であり、移動距離及び移動方向の検出を開始する際に、通常、携帯型ナビゲーション装置は速度(初速度)を有している。前記特許文献1記載の技術のように加速度を積分して速度を求める場合、初速度が0でないと、移動距離の演算時に初速度が誤差成分として蓄積される。同様に、特許文献3記載の技術でも、初速度が0でないと、移動方向の検出時に初速度が誤差として悪影響を及ぼす。即ち、前記特許文献1〜3記載の技術では、移動距離及び移動方向に誤差が含まれているので、正確な移動距離及び移動方向を検出できず、正確な現在位置を検出できないという問題がある。
【0010】
本発明は、前述の事情に鑑み、加速度センサ等を使用して移動距離や移動方向を検出する携帯型ナビゲーション装置において、正確な移動距離や移動方向を検出して、正確な現在位置を検出することを第1の技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
次に、前記課題を解決した本発明を説明するが、本発明の要素には、後述の実施の形態の具体例(実施例)の要素との対応を容易にするため、実施例の要素の符号をカッコで囲んだものを付記する。また、本発明を後述の実施例の符号と対応させて説明する理由は、本発明の理解を容易にするためであり、本発明の範囲を実施例に限定するためではない。
【0012】
前記課題を解決するために第1発明の携帯型ナビゲーション装置は、
経路案内用の地図データを記憶する地図データ記憶手段(KC5B)と、
前記地図データを使用して、出発地から目的地までの経路案内用画像を表示する経路案内画像表示手段(KC23)と、
携帯型ナビゲーション装置(1)の移動時の加速度を検出する加速度センサ(SN3)と、
地磁気を検出する地磁気センサ(SN1)と、
前記加速度センサ(SN3)で検出した加速度のデータを記憶する加速度データ記憶手段(KC11B)と、
前記加速度データに基づいて携帯型ナビゲーション装置(1)の移動速度を求め、記憶する速度検出記憶手段(KC12)と、
前記地磁気に基づいて前記携帯型ナビゲーション装置(1)の磁方位を検出する磁方位検出手段(KC10B)と、
前記移動速度及び前記磁方位に基づいて移動距離と移動方向を検出する移動距離検出手段(KC19)と、
前記加速度データに基づいてユーザが歩行しているか否かを検出する歩行検出手段(KC13)と、
前記加速度データに基づいて、ユーザの歩行の1周期分の加速度の履歴があったか否かを検出する歩行周期検出手段(KC18)と、
ユーザが歩行を停止しているか否かを判別するための停止判別時間を記憶する停止判別時間記憶手段(KC14B)と、
前記歩行検出手段(KC13)が前記停止判別時間の間、歩行を検出しなかったか否かを判別する停止判別手段(KC14)と、
前記停止判別手段(KC14)により前記歩行検出手段(KC13)が前記停止判別時間の間、歩行を検出しなかったと判別された場合に、速度検出記憶手段(KC12)に記憶された前記移動速度を0とする速度リセット手段(KC15)と、
を有することを特徴とする。
【0013】
(第1発明の作用)
前記構成要件を備えた第1発明の携帯型ナビゲーション装置(1)では、地図データ記憶手段(KC5B)に記憶された経路案内用の地図データを使用して、経路案内画像表示手段(KC23)は、出発地から目的地までの経路案内用画像を表示する。加速度センサ(SN3)は、携帯型ナビゲーション装置(1)の移動時の加速度を検出する。地磁気センサ(SN1)は、地磁気を検出し、磁方位検出手段(KC10B)は、前記地磁気に基づいて前記携帯型ナビゲーション装置(1)の磁方位を検出する。加速度データ記憶手段(KC11B)に記憶された加速度データに基づいて、速度検出記憶手段(KC12)は、携帯型ナビゲーション装置(1)の移動速度を求め、記憶する。
【0014】
移動距離検出手段(KC19)は、前記移動速度及び前記磁方位に基づいて移動距離と移動方向を検出する。歩行検出手段(KC13)は、前記加速度データに基づいてユーザが歩行しているか否かを検出する。停止判別手段(KC14)は、停止判別時間記憶手段(KC14B)に記憶された停止判別時間の間、前記歩行検出手段(KC13)が歩行を検出しなかったか否かを判別する。歩行周期検出手段(KC18)は、前記加速度データに基づいて、ユーザの歩行の1周期分の加速度の履歴があったか否かを検出する。前記停止判別手段(KC14)により前記歩行検出手段(KC13)が前記停止判別時間の間、歩行を検出しなかったと判別された場合に、速度リセット手段(KC15)は、速度検出記憶手段(KC12)に記憶された前記移動速度を0とする。
【0015】
したがって、第1発明の携帯型ナビゲーション装置(1)は、ユーザの歩行の1周期分の加速度の履歴がなく、停止判別時間の間、ユーザが歩行していないと判別した場合に、ユーザが停止しており、携帯型ナビゲーション装置(1)が停止していると判別する。そして、ユーザ及び携帯型ナビゲーション装置(1)が停止していると判別すると、移動速度をリセットする。この結果、携帯型ナビゲーション装置(1)の停止を検出して速度をリセットするので、リセット後の移動距離及び移動方向を検出する際に、誤差が含まれなくなる。したがって、第1発明の携帯型ナビゲーション装置(1)は、正確な移動距離及び移動方向を検出できる。そして、現在位置の検出に前記正確な移動距離及び移動方向を使用した場合、正確な現在位置を検出することができる。
【0016】
(第1発明の形態1)
第1発明の形態1の携帯型ナビゲーション装置(1)は、前記第1発明において、
ユーザの歩幅を記憶する歩幅記憶手段(KC8)と、
前記歩行検出手段(KC13)で歩行が検出された場合に、前記歩幅、前記移動速度及び前記磁方位に基づいて前記移動距離及び前記移動方向を検出する前記移動距離検出手段(KC19)と、
を有することを特徴とする。
【0017】
(第1発明の形態1の作用)
前記構成要件を備えた第1発明の形態1の携帯型ナビゲーション装置(1)では、前記移動距離検出手段(KC19)は、前記歩行検出手段(KC13)で歩行が検出された場合に、歩幅記憶手段(KC8)に記憶されたユーザの歩幅、前記移動速度及び前記磁方位に基づいて前記移動距離及び前記移動方向を検出する。
したがって、第1発明の形態1の携帯型ナビゲーション装置(1)では、加速度を2回積分して移動距離を求めなくても、歩行の検出と歩幅とに基づいて移動距離を検出できる。
【0018】
(第1発明の形態2)
第1発明の形態2の携帯型ナビゲーション装置(1)は、前記第1発明の形態1において、
ユーザの身長を入力する身長入力キー(12)と、
前記身長入力キー(12)により入力された身長を記憶する身長記憶手段(KC6A)と、
前記身長に基づいて前記歩幅を演算する歩幅演算手段(KC7)と、
前記前記歩幅演算手段(KC7)により演算された前記歩幅を記憶する前記歩幅記憶手段(KC8)と、
を有することを特徴とする。
【0019】
(第1発明の形態2の作用)
前記構成要件を備えた第1発明の形態2の携帯型ナビゲーション装置(1)では、身長入力キー(12)によって入力されたユーザの身長は、身長記憶手段(KC6A)によって記憶される。歩幅演算手段(KC7)は、前記身長に基づいて前記歩幅を演算する。歩幅記憶手段(KC8)は、前記歩幅演算手段(KC7)により演算された前記歩幅を記憶する。
したがって、第1発明の形態2の携帯型ナビゲーション装置(1)では、ユーザの身長に基づいて歩幅が自動的に計算され、移動距離が検出できる。
【0020】
(第1発明の形態3)
第1発明の形態3の携帯型ナビゲーション装置(1)は、前記第1発明及び第1発明の形態1、2のいずれかにおいて、
前記地図データと、地磁気に対する偏角のデータとを記憶する前記地図データ記憶手段(KC5B)と、
前記偏角のデータと、前記磁方位とに基づいて、真方位を演算する真方位演算手段(KC10C)と、
を有することを特徴とする。
【0021】
(第1発明の形態3の作用)
前記構成要件を備えた第1発明の形態3の携帯型ナビゲーション装置(1)では、地図データ記憶手段(KC5B)は、前記地図データと、地磁気に対する偏角のデータとを記憶する。真方位演算手段(KC10C)は、前記偏角のデータと、前記磁方位とに基づいて、真方位を演算する。
したがって、第1発明の形態3の携帯型ナビゲーション装置(1)は、磁方位ではなく、真方位を検出でき、前記真方位に基づいて、正確な移動方向を検出できる。
【発明の効果】
【0022】
前述の本発明は、加速度センサを使用して移動距離や移動方向を検出する携帯型ナビゲーション装置において、正確な移動距離や移動方向を検出して、正確な現在位置を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、本発明の経路案内システムの実施例1の説明図である。
【図2】図2は前記図1に示す経路案内システムの携帯端末の機能をブロック図(機能ブロック図)で示した図である。
【図3】図3は実施例1の携帯端末のブロック図であり、前記図2の続きの図である。
【図4】図4は実施例1の経路探索条件画像の説明図である。
【図5】図5は、携帯電話の水平面からの傾斜角の説明図である。
【図6】図6は、携帯電話と磁方位の北及び真方位の北との関係を示す説明図である。
【図7】図7は、携帯電話の移動方向の説明図である。
【図8】図8は、実施例1の経路案内用画像の説明図である。
【図9】図9は実施例1の経路案内システムのサーバの機能をブロック図(機能ブロック図)で示した図である。
【図10】図10は実施例1の経路案内システムの携帯電話が備えている経路案内プログラムの現在位置検出処理のメインフローチャートである。
【図11】図11は、実施例1の携帯電話の移動停止検出処理のフローチャートであり、図10のST4のサブルーチンのフローチャートである。
【図12】図12は、実施例1の携帯電話の移動距離検出処理のフローチャートであり、図11のST21のサブルーチンのフローチャートである。
【図13】図13は、実施例1の携帯電話の移動距離演算処理のフローチャートであり、図12のST32、ST35、ST38のサブルーチンのフローチャートである。
【図14】図14は、X軸方向の加速度データの一例の説明図である。
【図15】図15は、前記図14に示す加速度データの波形を示す図である。
【図16】図16は、前記図14に示す加速度データに基づいて算出された差分総和の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に図面を参照しながら、本発明の実施の形態の具体例(実施例)を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0025】
図1は、本発明の経路案内システムの実施例1の説明図である。
図1において、実施例1の経路案内システムSは、ユーザが携帯可能な携帯型ナビゲーション装置としての携帯電話1を有する。前記携帯電話1は、携帯電話ネットワーク2を介して携帯電話事業者のデータ通信装置3と接続している。そして、前記データ通信装置3は、専用線4やインターネット6を介して、経路案内データ配信サーバ7やその他の情報配信業者(コンテンツプロバイダ、アプリケーションサービスプロバイダ)の情報配信サーバ8に接続されている。なお、実施例1では、経路案内データ配信サーバ7は、専用線4を介してデータ通信装置3に接続されているが、インターネット6を介して接続することも可能である。
【0026】
前記携帯電話1は、表示画像が表示される情報表示画面11や、ユーザが各種入力を行う入力キー(身長入力キー)12を有し、内部にプログラム等が記録された記憶装置(記録媒体)を備えている。そして、実施例1の携帯電話1は、携帯電話の現在位置を三次元側位可能なGPS(Global Positioning System、全地球無線側位システム)装置を内蔵している。
また、前記経路案内データ配信サーバ7も、サーバ本体16及びディスプレイ(図示せず)、キーボードやマウス等の入力装置(図示せず)、ハードディスクドライブ(記録媒体、図示せず)、CDドライブ等の光学ドライブ(記録媒体読み取り装置、図示せず)等を有している。
【0027】
(携帯電話1の制御部の説明)
図2は前記図1に示す経路案内システムの携帯端末の機能をブロック図(機能ブロック図)で示した図である。
図3は実施例1の携帯端末のブロック図であり、前記図2の続きの図である。
図2、図3において、携帯電話1のコントローラKCは、外部との信号の入出力および入出力信号レベルの調節等を行うI/O(入出力インターフェース)、必要な処理を行うためのプログラムおよびデータ等が記憶されたROM(リードオンリーメモリ、記録媒体)、必要なデータを一時的に記憶するためのRAM(ランダムアクセスメモリ、記録媒体)、ROM等に記憶されたプログラムに応じた処理を行うCPU(中央演算処理装置)、ならびにクロック発振器等を有するマイクロコンピュータにより構成されており、前記ROM等に記憶されたプログラムを実行することにより種々の機能を実現することができる。
【0028】
(携帯電話のコントローラKCに接続された信号入力要素)
前記携帯電話1のコントローラKCは、前記入力キー12やGPS装置、3次元地磁気センサ(地磁気センサ)SN1、傾斜センサSN2、加速度センサSN3、その他の信号入力要素からの信号が入力されている。
前記入力キー12は、ユーザによりそれらが入力されたことを検出して、その検出信号をコントローラKCに入力する。
前記GPS装置は、側位開始の入力信号に応じて、衛星から発射された時刻信号の電波の到達時間等から地球上の携帯電話1の位置を側位し、側位結果をコントローラKCに入力する。
【0029】
前記3次元地磁気センサSN1は、磁方位を検出する。実施例1の3次元地磁気センサSN1は、高感度、高精度の地磁気センサを直交する3軸(X,Y,Z軸)方向に配置したセンサである。このような地磁気センサは従来公知なので(例えば、特開2002-090432号公報等参照)、詳細な説明は省略する。なお、前記特許文献3記載の3次元地磁気センサを使用することも可能である。
前記傾斜センサSN2は、携帯電話1の水平面に対する傾斜量を検出する。実施例1の傾斜センサSN2は、従来公知の傾斜センサ(例えば、特許文献3等参照)を使用しているので、詳細な説明は省略する。
【0030】
前記加速度センサSN3は、携帯電話1の移動時の加速度を検出する。実施例1の加速度センサSN3は、直交する3軸(X,Y,Z軸)方向の加速度を検出可能な従来公知の加速度センサ(例えば、特許文献1等参照)を使用しているので、詳細な説明は省略する。また、実施例1の前記加速度センサSN3から出力される加速度データAx,Ay,Azは、8bitのデジタル出力に変換されており、加速度が−1G(=−9.8m/s2)の場合を0、加速度が0の場合を128、加速度が+1Gの場合を255としたデジタルデータが出力される。即ち、実施例1の加速度センサSN3は、−1G〜+1Gの加速度を0〜255の範囲内のデジタルデータに調整して、加速度データAx,Ay,Azとして出力する。前記出力データの調整方法等は、設計に応じて適宜変更可能である。
【0031】
(携帯電話のコントローラKCに接続された制御要素)
また、携帯電話1のコントローラKCは、液晶駆動回路KD1、GPS駆動回路KD2や図示しない電源回路、その他の制御要素に接続されており、それらの作動制御信号を出力している。
前記液晶駆動回路KD1は、液晶表示パネルの表示用電極のオン・オフを制御して情報表示画面11に表示画像を表示する。
前記GPS駆動回路KD2は、前記GPS装置に側位開始の信号を出力してGPSを駆動する。
【0032】
(携帯電話のコントローラKCの機能)
携帯電話1のコントローラKCは、経路案内用プログラム(ナビゲーションソフトウェア)P1、通話制御プログラムP2や、その他のプログラム等を有しており、前記各信号出力要素からの出力信号に応じた処理を実行して、前記各制御要素に制御信号を出力する機能(制御手段)を有している。前記コントローラKCの経路案内用プログラムP1の機能(制御手段)を次に説明する。なお、前記通話制御プログラムP2は、携帯電話1の通話を制御する従来公知のプログラムであり、従来公知の種々の技術を採用可能であるため、詳細な説明は省略する。
【0033】
KC1:液晶駆動回路制御手段
図2において、液晶駆動回路制御手段KC1は、前記液晶駆動回路KD1を制御して、前記情報表示画面11に画像を表示する。
KC2:GPS制御手段
GPS制御手段KC2は、GPS駆動回路KD2を介してGPS装置の駆動を制御して、所定の入力信号または所定の時間間隔で携帯電話1の現在位置をGPS装置により計測する。
【0034】
図4は実施例1の経路探索条件画面の説明図である。
KC3:経路検索条件入力画面表示手段
経路検索条件入力画面表示手段KC3は、経路検索条件記憶手段KC3Aを有し、情報表示画面11に出発地及び目的地を含む経路探索条件を入力するための経路検索条件入力画面(図4参照)を表示する。図4において、実施例1の経路検索条件入力画面には、出発地を入力するための出発地入力欄、目的地を入力するための目的地入力欄、経路案内の出発日時または到着日時を入力するための日時入力欄、検索する経路の数を入力するための検索経路数入力欄、経路案内時に利用する交通手段を入力するための交通手段入力欄、および、経路案内データ配信サーバ(サーバ)7へ検索条件の送信を実行するための検索条件送信アイコン(検索アイコン)が表示されている。
【0035】
KC3A:経路検索条件記憶手段
経路検索条件記憶手段KC3Aは、前記経路検索条件入力画像(図4参照)への入力により設定された経路検索条件(出発地や目的地、出発日時等)を記憶する。
KC4:端末側データ送信手段
端末側データ送信手段KC4は、経路検索条件データ送信手段KC4Aを有し、経路案内データ配信サーバ7に対して、経路検索条件等のデータを送信する。
【0036】
KC4A:経路検索条件データ送信手段
経路検索条件データ送信手段KC4Aは、前記経路検索条件入力画像(図3参照)に表示された検索条件送信アイコンが選択された場合に、経路検索条件記憶手段KC3Aに記憶された経路検索条件のデータをサーバ7に送信する。
KC5:端末側データ受信手段
端末側データ受信手段KC5は、検索結果受信手段KC5Aと、地図データ受信手段KC5Bとを有し、経路案内データ配信サーバ7から送信された地図データ等を受信する。
【0037】
KC5A:検索結果受信手段
検索結果受信手段KC5Aは、携帯電話1から送信した経路検索条件に応じて経路案内データ配信サーバ7が作成した経路データであって、出発地を出発してから目的地に到着するまでの経路を表す経路データを経路案内データ配信サーバ7から受信する。
KC5B:地図データ受信手段(地図データ記憶手段)
地図データ受信手段KC5Bは、サーバから送信された地図データを受信し、記憶する。実施例1の地図データ受信手段KC5Bは、携帯電話1の現在位置に応じて、サーバから送信された所定の範囲の複数の単位地図のデータを受信する。なお、地図を単位地図に分割し、必要な単位地図データを送受信する技術は従来公知(例えば、特開2003−214860号公報等参照)であるので、詳細な説明は省略する。また、実施例1の地図データ受信手段KC5Bは、前記単位地図データと共にサーバ7から送信される地磁気の偏角データを受信し、記憶する。
【0038】
KC6:身長入力画像表示手段
身長入力画像表示手段KC6は、身長記憶手段KC6Aを有し、携帯電話1のユーザの身長を入力するための身長入力画像(図示せず)を情報表示画面11に表示する。
KC6A:身長記憶手段
身長記憶手段KC6Aは、前記身長入力画像が表示された時に、入力キー12により入力された身長データを記憶する。
【0039】
KC7:歩幅演算手段
歩幅演算手段KC7は、前記身長記憶手段KC6Aに記憶された身長データに基づいてユーザの歩幅STPを演算する。なお、実施例1の歩幅演算手段KC7は、ユーザの身長×0.45を歩幅STPとして演算する。
KC8:歩幅記憶手段
歩幅記憶手段KC8は、前記歩幅演算手段KC7で演算された歩幅STPを記憶する。
【0040】
図5は、携帯電話の水平面からの傾斜角の説明図である。
KC9:傾斜角検出手段
傾斜角検出手段KC9は、傾斜データ記憶手段KC9Aを有し、前記傾斜センサSN2から出力された傾斜データに基づいて、携帯電話1の傾斜角を演算する。図5において、実施例1の傾斜角検出手段KC9は、携帯電話1の加速度センサSN3や3次元地磁気センサSN1で加速度や磁方位等を観測する設定された観測座標系のX軸、Y軸、Z軸の中のX軸、Y軸と、水平面に投影した座標系のX'軸、Y'軸、Z'軸の中のX'軸、Y'軸との傾斜角α、βを演算する。なお、前記傾斜角α、βの演算方法は、従来公知なので(例えば、特許文献3等参照)、詳細な説明は省略する。
KC9A:傾斜データ記憶手段
傾斜データ記憶手段KC9Aは、前記傾斜センサSN2から出力された傾斜データと、前記傾斜角検出手段KC9で検出された傾斜角α、βを記憶する。
【0041】
KC10:方位検出手段
方位検出手段KC10は、地磁気データ記憶手段KC10Aと、磁方位演算手段KC10B(磁方位検出手段)と、真方位演算手段KC10Cとを有し、前記3次元地磁気センサSN1から出力された地磁気データ等に基づいて、方位を検出する。
KC10A:地磁気データ記憶手段
地磁気データ記憶手段KC10Aは、前記3次元地磁気センサSN1から出力された地磁気データを記憶する。
【0042】
図6は、携帯電話と磁方位の北及び真方位の北との関係を示す説明図である。
KC10B:磁方位演算手段(磁方位検出手段)
磁方位演算手段KC10Bは、前記地磁気データと、傾斜角度α、βとに基づいて、水平面上において、磁方位の北(Nmg)と携帯電話1のX'軸との角度(磁方位)Θmg(図6参照)を演算する。なお、この磁方位Θmgの演算方法は、従来公知であるので(例えば、特許文献3等参照)、詳細な説明は省略する。
KC10C:真方位演算手段
真方位演算手段KC10Cは、前記磁方位Θmgと、前記地図データ受信手段KC5Bに記憶された真方位と磁方位との成す角(偏角)Θhとに基づいて、真方位の北(Ntr)と携帯電話1のX'軸との角度(真方位)Θtr(図6参照)を演算する。即ち、実施例1の携帯電話1では、磁方位Θmgそのものを使用せず、磁方位Θmgに基づいて演算される真方位Θtrを使用する。
【0043】
KC11:加速度データ管理手段
加速度データ管理手段KC11は、加速度演算手段KC11Aと、加速度データ記憶手段KC11Bと、サンプリング間隔記憶手段KC11Cと、サンプリング間隔計測タイマTM1と、加速度データシフト手段KC11Dとを有し、加速度センサSN3から出力される加速度データAx〜Azの読取、演算、記憶等の管理を行う。
【0044】
KC11A:加速度演算手段
加速度演算手段KC11Aは、前記傾斜角度α、βと、加速度センサSN3から出力され、読取った読取加速度データAx,Ay,Azに基づいて、水平面の座標系(X'、Y'、Z'軸)上の加速度データax、ay、azを演算する(座標変換を行う)。なお、前記座標変換は従来公知なので(例えば、特許文献3の「0037」の「数3」参照)、詳細な説明は省略する。
【0045】
KC11B:加速度データ記憶手段
加速度データ記憶手段KC11Bは、前記加速度演算手段KC11Aで演算された加速度データax〜azを記憶する。実施例1の加速度データ記憶手段KC11Bは、演算されたX'軸、Y'軸、Z'軸の3軸方向の加速度データax,ay,azを各軸毎に記憶する。また、実施例1の加速度データ記憶手段KC11Bは、各軸毎に、M0〜M149までの合計150個分の履歴を記憶可能な記憶領域を有しており、M149に最新の加速度データが記憶される。なお、前記記憶領域の個数は設計に応じて適宜変更可能である。
【0046】
KC11C:サンプリング間隔記憶手段
サンプリング間隔記憶手段KC11Cは、前記加速度データを取得する間隔(サンプリング間隔)t1を記憶する。実施例1のサンプリング間隔記憶手段KC11Cは、前記サンプリング間隔t1として10msを記憶している。
TM1:サンプリング間隔計測タイマ
サンプリング間隔計測タイマTM1は、前記サンプリング間隔t1がセットされ、サンプリング間隔t1が経過するとタイムアップする。
【0047】
KC11D:加速度データシフト手段
加速度データシフト手段KC11Dは、新たな加速度データを記憶する際に、M1〜M149に記憶された加速度データを、M0〜M148に記憶させる(シフトさせる)。
KC12:移動速度検出手段(速度検出記憶手段)
移動速度検出手段KC12は、移動速度演算手段KC12Aと、移動速度記憶手段KC12Bとを有し、前記加速度データax,ay,azに基づいて、携帯電話1の移動速度Vx,Vy,Vzを検出する。
【0048】
KC12A:移動速度演算手段
移動速度演算手段KC12Aは、M149に記憶された最新の加速度データax,ay,azに基づいて、携帯電話1の移動速度Vx,Vy,Vzを演算する。なお、実施例1の移動速度演算手段KC12Aは、移動速度Vx〜Vzを演算する際に、先ず、0〜255の加速度データax〜azを、−9.8m/s2(=−1G)〜+9.8m/s2(=+1G)の加速度データA'x,A'y,A'zに逆変換する。そして、後述する移動速度記憶手段KC12Bに記憶された移動速度Vx,Vy,Vzと、加速度データA'x,A'y,A'zと、サンプリング間隔t1とに基づいて、最新の移動速度Vx,Vy,Vzを以下の式(1)により演算し、更新する。
V(x,y,z)=V(x,y,z)+A'(x,y,z)×t1
………(1)
なお、移動速度の演算は、この演算方法に限定されず、例えば、M0〜M149に記憶された加速度データを積分する演算方法により求めることも可能である。
KC12B:移動速度記憶手段
移動速度記憶手段KC12Bは、前記移動速度演算手段KC12Aで演算された携帯電話1の移動速度Vx,Vy,Vzを記憶する。
【0049】
KC13:歩行検出手段
歩行検出手段KC13は、停止判別加速度記憶手段KC13Aを有し、前記加速度データに基づいてユーザが歩行しているか否か、即ち、携帯電話1が移動しているか否かを検出する。実施例1の歩行検出手段KC13は、先ず、0〜255の加速度データax、ay、azから、正負の方向を考慮した加速度データax'(=ax−128)、ay'(=ay−128)、az'(=az−128)を演算する。そして、この加速度データax'〜az'に基づいて、最新の加速度の大きさ、即ち、{(a'x)2+(a'y)2+(a'z)21/2が停止判別加速度atよりも大きいか否かを判別し、停止判別加速度よりも大きい場合に、歩行していると判別する。なお、実施例1の歩行検出手段KC13は、加速度の大きさに基づいて歩行の検出を行ったが、各軸毎に加速度ax、ay、azの絶対値が所定の停止判別加速度atよりも大きいか否かの判別を行い、いずれか1つが停止判別加速度atよりも大きい場合に歩行していると判別することも可能である。
【0050】
KC13A:停止判別加速度記憶手段
停止判別加速度記憶手段KC13Aは、ユーザが歩行しているか否かの判別を行うための停止判別加速度atを記憶する。実施例1の停止判別加速度記憶手段KC13Aは、停止判別加速度atとして、約0.3G(8bitデータで35)を記憶している。これは、通常、ユーザの歩行時には、1周期に0.5G〜0.6Gの加速度が観測されることに基づいて設定されている。しかし、前記停止判別加速度atの値は、0.3G程度に限定されず、設計に応じて適切な値に変更可能である。
【0051】
KC14:停止判別手段
停止判別手段KC14は、停止検出カウンタKC14Aと、停止判別カウント値記憶手段KC14Bとを有し、所定の停止判別時間の間、歩行検出手段KC13がユーザの歩行を検出しなかったか否か(停止しているか否か)を判別する。即ち、実施例1の停止判別手段KC14は、ユーザが歩行していても瞬間的に加速度が0となることがあるので、所定の停止判別時間の間継続してユーザの歩行を検出しなかった場合に、ユーザが停止しているものと判別している。なお、実施例1の停止判別手段KC14は、歩行していないと判別した回数が150回以上になった場合、即ち、1.5秒(=10ms(サンプリング間隔t1)×150回、停止判別時間)以上、加速度の大きさが停止判別加速度at以下の場合に、携帯電話1は停止していると判別する。なお、実施例1の停止判別手段KC14は、歩行していないと判別した回数をカウントすることにより停止の判別を行ったが、停止継続時間を計測するタイマを使用し、継続して所定の停止判別時間以上歩行していないと判別した場合に、停止していると判別することも可能である。
【0052】
KC14A:停止検出カウンタ
停止検出カウンタKC14Aは、前記歩行検出手段KC13が歩行を検出しなかった回数Ntをカウントする。なお、カウント値Ntは、歩行検出手段KC13が歩行を検出した場合に、リセット(0に初期化)される。
KC14B:停止判別カウント値記憶手段(停止判別時間記憶手段)
停止判別カウント値記憶手段KC14B(停止判別時間記憶手段)は、停止判別カウント値Nhを記憶する。実施例1の停止判別カウント値記憶手段KC14Bは、前記停止判別カウント値Nhとして150回、即ち、停止判別時間として1.5秒を記憶する。なお、実施例1の停止判別カウント値記憶手段KC14Bは、150個の記憶領域(M0〜M149)を有する加速度データ記憶手段KC11Bに応じて前記停止判別カウント値Nhを150回(1.5秒)としたが、これに限定されず、適宜変更可能である。
【0053】
KC15:速度リセット手段
速度リセット手段KC15は、前記停止判別手段KC14により、前記歩行検出手段KC13が停止判別時間の間、歩行を検出しなかったと判別された場合に、前記移動速度記憶手段KC12Bに記憶された移動速度Vx〜Vzを0にする。
KC16:移動距離演算開始判別手段
移動距離演算開始判別手段KC16は、移動距離の演算を実行できる程度まで加速度データが蓄積されたか否かを判別することにより、移動距離の演算を開始するか否かを判別する。実施例1の移動距離演算開始判別手段KC16は、加速度データ記憶手段KC11BのM0(最も古い履歴データの記憶領域)に記憶された加速度データax〜azのいずれか一つが0でない場合に、M0〜M149に加速度データが記憶され、移動距離の演算を実行できると判別する。
【0054】
KC17:加速度データ有効性判別手段
加速度データ有効性判別手段KC17は、加速度有効性判別用閾値記憶手段KC17Aを有し、加速度データ記憶手段KC11Bに記憶された加速度データが移動距離を演算する際に有効なデータであるか否かを判別する。携帯電話1を携帯したユーザが歩行する場合、1歩ごとに所定の周期で加速度(特に上下方向の加速度)が変動する。なお、実施例1の経路案内システムSでは、携帯電話1を携帯したユーザは80歩/分〜160歩/分で歩行しているものと想定している。したがって、最も歩行の遅い人の1歩の周期は、750ms程度(=60秒/80歩)を想定している。したがって、最大で750msの範囲内の加速度の履歴の波形(後述する図15参照)の山と谷(加速度の最大値と最小値)が、所定の大きさ以上になる。実施例1の加速度データ有効性判別手段KC17は、M0〜M74に記憶された加速度データの最大値と最小値の差が、所定の加速度有効性判別用閾値as以上であるか否かを判別して、加速度の変動が、ユーザが停止中に受けた何らかの外乱等によるものなのか、ユーザの歩行によるものなのかを判別する。なお、実施例1の加速度データ有効性判別手段KC17は、前記加速度有効性判別用閾値asとの対比により判別したが、これに限定されず、例えば、加速度データの最大値が148以上(即ち、正の加速度)で、最小値が108以下(即ち、負の加速度)であることを判別条件として付加することも可能である。
【0055】
KC17A:加速度有効性判別用閾値記憶手段
加速度有効性判別用閾値記憶手段KC17Aは、前記加速度データ有効性判別手段KC17で判別を行う際に使用される加速度有効性判別用閾値asを記憶する。実施例1の加速度有効性判別用閾値記憶手段KC17Aは、加速度有効性判別用閾値asとして、as=25(即ち、0.2G程度)を記憶する。なお、前記加速度有効性判別用閾値asの値は適宜変更可能である。
KC18:歩行周期検出手段
図3において、歩行周期検出手段KC18は、差分総和演算手段KC18Aと、差分総和記憶手段KC18Bと、差分総和差判別手段KC18Cとを有し、加速度データに基づいて歩行周期の検出を行う。なお、実施例1の経路案内システムSでは、携帯電話1を携帯したユーザが80歩/分〜160歩/分で歩行しているものと想定しているので、実施例1の歩行周期検出手段KC18は、1歩の周期が375ms(=60秒/160歩)〜750ms(=60秒/80歩)の範囲内にあると想定している。
【0056】
KC18A:差分総和演算手段
差分総和演算手段KC18Aは、ある加速度データと、その加速度データから予想される周期分後の加速度データとの差分を演算し、その差分を、所定の期間分加算した総和を演算する。前述のように、実施例1の歩行周期検出手段KC18では、ユーザの歩行周期が375ms〜750msに想定されているので、750ms分の加速度データの履歴を示す波形と同じ波形が370ms〜750ms後に存在するはずである。したがって、実施例1の差分総和演算手段KC18Aは、まず、M0〜M74に記憶された750ms分の加速度データと、370ms後のM37〜M111に記憶された加速度データとの差分の絶対値の総和を差分総和S37として各軸毎に演算する。即ち、一般化された差分総和Snは以下の式(2)((数1))により表され、差分総和S37は、以下の式(2')((数1))で表される。
【数1】

そして、実施例1の差分総和演算手段KC18Aは、差分総和SnをS37〜S75まで演算する。なお、前記差分総和Snの演算は、加減算だけであり、実施例1の差分総和演算手段KC18Aは、積和演算のモジュールを使用し且つ、DSP(Digital Signal Processor)を使用するので、高速に処理でき且つ、処理による負荷も軽くすることができる。
【0057】
KC18B:差分総和記憶手段
差分総和記憶手段KC18Bは、前記差分総和演算手段KC18Aで演算された差分総和S37〜S75を記憶する。
KC18C:差分総和差判別手段
差分総和差判別手段KC18Cは、差分総和差閾値Ssを記憶する差分総和差閾値記憶手段KC18C1を有し、差分総和S37〜S75の最大値Smaxと最小値Sminとの差が、差分総和差閾値Ss以上であるか否かを判別する。加速度の履歴の波形が一致した場合、差分総和Snの値が最小となる。即ち、差分総和Snの値が最小となった時に、波形が1周期分ずれたことになり、Snが最小となったときのnの値×10ms(サンプリング間隔)がユーザの歩行の1周期として検出できる。しかしながら、波形が周期的でない場合や、周期が長すぎる場合には、差分総和の最大値Smaxと最小値Sminとの差が十分でなくなる。したがって、差分総和差判別手段KC18Cは、前記最大値Smaxと最小値Sminとの差が差分総和差閾値Ss以上であるか否かを判別して、1周期分の加速度の履歴があったか否か、即ち、ユーザが1歩歩いたか否かを判別する。なお、実施例1の差分総和差閾値Ssは、最小値Sminに設定されている。即ち、最大値Smaxが最小値Sminの2倍以上あるか否かにより判別され、この場合に、ユーザが1歩歩いたものと演算する。
【0058】
KC19:移動距離検出手段
移動距離検出手段KC19は、移動方向演算手段KC19Aと、移動距離演算手段KC19Bとを有し、携帯電話1の移動方向Θv及び移動距離Lを検出する。なお、実施例1の携帯電話1では、ユーザが1歩歩行した場合に、移動距離及び移動方向が検出される。
図7は、携帯電話の移動方向の説明図である。
KC19A:移動方向演算手段
移動方向演算手段KC19Aは、前記移動速度Vx〜Vzに基づいて、水平面上の移動方向を演算する。実施例1の移動方向演算手段KC19Aは、前記水平面上でのX'軸方向の移動速度Vxと、Y'軸方向の移動速度Vyから、水平面上において、X'軸と移動方向との成す角Θvを演算する。
【0059】
KC19B:移動距離演算手段
移動距離演算手段KC19Bは、前記歩幅STPと、移動方向の成す角Θvと、真方位Θtrとに基づいて、水平面上の座標系での移動距離Lを演算する。実施例1の移動距離演算手段KC19Bは、移動距離Lとして、真方位北(真北Ntr)の方向の移動距離Lの成分Lnと、真方位西(真西Wtr)の方向の移動距離Lの成分Lwとが演算される。そして、前記移動距離Lの各成分Ln、Lwは、それぞれ、以下の式(3)、式(4)で表される。
Ln=STP×cos(Θv−Θtr) ………(3)
Lw=STP×sin(Θv−Θtr) ………(4)
即ち、実施例1の移動距離演算手段KC19Bは、真北から西に向かって角(Θv−Θtr)の方向に歩幅STP分移動したものとして、演算される。
【0060】
KC20:加速度データ初期化手段
加速度データ初期化手段KC20は、加速度有効性判別用閾値記憶手段KC17Aで加速度データが有効でないと判別された場合や、差分総和差判別手段KC18Cで1周期が検出できなかった場合に、移動距離の演算に使用されない加速度データax〜azを0に初期化する(加速度データを消去する)。なお、この場合、実施例1の加速度データ初期化手段KC20は、有効性や1周期の検出で使用されたM0〜M74に記憶された加速度データを消去する。
また、加速度データ初期化手段KC20は、移動距離検出手段KC19で移動距離L等の演算が終了した場合に、移動距離Lの演算に使用された加速度データax〜azを0に初期化する。この場合、実施例1の加速度データ初期化手段KC20は、移動距離Lの演算に使用されたM0〜Mnの加速度データ(1周期分の加速度データ)を消去する。なお、前記Mnのnは、Snが最小となったときのnの値を意味する。
【0061】
KC21:現在位置検出手段
現在位置検出手段KC21は、GPS受信不可判別手段KC21Aと、現在位置記憶手段KC21Bとを有し、携帯電話1の現在位置を検出する。実施例1の現在位置検出手段KC21は、GPS衛星からの電波を受信可能な状態では、GPSに基づいて現在位置を検出する。そして、GPS衛星からの電波が受信不可な状態では、前記現在位置記憶手段KC21Bに記憶された直前の現在位置と、前記移動距離検出手段KC19で検出された移動方向及び移動距離とに基づいて最新の現在位置の検出、更新を行う。
【0062】
KC21A:GPS受信不可判別手段
GPS受信不可判別手段KC21Aは、GPS衛星からの電波が受信できなくなったか否かを判別する。即ち、地下街やトンネル、建築物内に移動したか否かを判別する。実施例1のGPS受信不可判別手段KC21Aは、GPS装置から所定の間隔で出力されるGPS衛星からの電波データが連続して所定のGPS受信不可判別時間tg(例えば、10秒間)受信できなかった場合に、GPS衛星からの電波が受信できなくなったと判別し、加速度データの検出や移動距離及び移動方向の検出を開始する。
【0063】
KC21B:現在位置記憶手段
現在位置記憶手段KC21Bは、GPSが使用できる状態では、GPSからの信号に基づいて検出された現在位置を記憶し、GPSが使用できない状態では現在位置検出手段KC21で検出された現在位置を記憶する。
図8は、実施例1の経路案内用画像の説明図である。
KC22:経路案内用画像作成手段
経路案内用画像作成手段KC22は、現在位置と、検索結果受信手段KC5Aに記憶された検索結果の経路データと、前記地図データ受信手段KC5Bに記憶された地図データと、に基づいて、経路案内用画像(図8参照)を作成する。
【0064】
KC23:経路案内画像表示手段
経路案内画像表示手段KC23は、前記経路案内用画像作成手段KC22で作成された経路案内用画像(図8参照)を情報表示画面11に表示する。
FL1:移動距離演算完了判別フラグ
移動距離演算完了判別フラグFL1は、初期値は「0」であり、3軸(X'軸、Y'軸、Z'軸)の中でいずれかの軸方向の加速度データに基づいて移動距離及び移動方向が演算できた場合に「1」となり、できなかった場合に「0」となる。
【0065】
(経路案内データ配信サーバ7の制御部の説明)
図9は実施例1の経路案内システムのサーバの機能をブロック図(機能ブロック図)で示した図である。
図9において、経路案内データ配信サーバ7のコントローラSCは、外部との信号の入出力および入出力信号レベルの調節等を行うI/O(入出力インターフェース)、必要な処理を行うためのプログラムおよびデータ等が記憶されたROM(リードオンリーメモリ、ハードディスク等の記録媒体)、必要なデータを一時的に記憶するためのRAM(ランダムアクセスメモリ、記録媒体)、ROM等に記憶されたプログラムに応じた処理を行うCPU(中央演算処理装置)、ならびにクロック発振器等を有するマイクロコンピュータにより構成されており、前記ROM等に記憶されたプログラムを実行することにより種々の機能を実現することができる。
【0066】
(サーバのコントローラSCに接続された信号入力要素)
前記経路案内データ配信サーバ7のコントローラSCは、キーボードやマウス等の入力装置やその他の信号入力要素からの信号が入力されている。
前記入力装置は、ユーザによりそれらが入力されたことを検出して、その検出信号をコントローラSCに入力する。
【0067】
(サーバのコントローラSCに接続された制御要素)
また、経路案内データ配信サーバ7のコントローラSCは、ディスプレイや図示しない電源回路、その他の制御要素に接続されており、それらの作動制御信号を出力している。
前記ディスプレイには、ユーザの操作に応じた表示画像が表示される。
【0068】
(サーバのコントローラSCの機能)
経路案内データ配信サーバ7のコントローラSCは、携帯電話1のナビゲーションソフト(経路案内用プログラムP1)から送信された各データの処理を行う経路案内データ(地図データ)配信用アプリケーションプログラムP3や、その他のプログラム等を有しており、前記各信号出力要素等からの出力信号に応じた処理を実行して、前記各制御要素等に制御信号を出力する機能(制御手段)を有している。次に、前記コントローラSCの地図データ配信用アプリケーションプログラムP3の機能(制御手段)を説明する。
【0069】
SC1:サーバ側データ受信手段
サーバ側データ受信手段SC1は、検索条件データ受信手段SC1Aを有し、前記携帯電話1から送信された経路検索条件のデータ等を受信する。
SC1A:検索条件データ受信手段
検索条件データ受信手段SC1Aは、前記携帯電話1から送信された前記経路検索条件のデータを受信し、記憶する。
【0070】
SC2:地図データ記憶手段
地図データ記憶手段SC2は、地図データを記憶する。実施例1の地図データ記憶手段SC2に記憶された地図データは、緯度・経度に基づいて所定の範囲の単位地図に分割した単位地図データにより構成されている。また、各単位地図データには、磁方位の北と真方位の北との成す角(偏角)Θhが関連づけられて記憶されている。なお、実施例1の地図データは、ベクタ地図データが使用されている。
【0071】
SC3:経路作成手段
経路作成手段SC3は、受信した前記経路検索条件に応じて、前記出発地を出発してから前記目的地に到着するまでの経路を決定し、前記出発地の位置を示す出発地位置データと、前記目的地の位置を示す目的地位置データとを含む最適な経路のデータ(経路データ)を作成する。なお、経路検索条件において、交通機関を利用することが指定されている場合、交通機関を含めた最適経路が作成され、検索する経路の数が複数指定されている場合には、指定された数に応じた複数の経路を作成する。なお、前記最適経路データを作成する技術は、従来公知であるので(例えば、特開2003−214860号公報等参照)、詳細な説明は省略する。
【0072】
SC4:サーバ側データ送信手段
サーバ側データ送信手段SC4は、経路データ送信手段SC4Aと、地図情報送信手段SC4Bとを有し、経路案内データ配信サーバ7から携帯電話1に経路データや地図データ等を送信する。
SC4A:経路データ送信手段
経路データ送信手段SC4Aは、経路作成手段SC3で作成された経路データを前記携帯電話1に送信する。
SC4B:地図情報送信手段
地図情報送信手段SC4Bは、携帯電話1の現在位置に応じた地図データを前記携帯電話1に送信する。
【0073】
(フローチャートの説明)
図10は実施例1の経路案内システムの携帯電話が備えている経路案内プログラムの現在位置検出処理のメインフローチャートである。
図10のフローチャートの各ST(ステップ)の処理は、携帯電話1のコントローラKCの経路案内用プログラムP1に従って行われる。また、この処理は携帯電話1の他の各種処理と並行して実行される。
【0074】
図10に示すフローチャートは携帯端末1の経路案内用プログラムP1が実行された時に開始される。
図10のST1において、GPS衛星からの電波を受信したか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST2に移り、ノー(N)の場合はST3に移る。
ST2において、受信したGPS衛星からの電波に基づいて携帯電話1の現在位置を更新する。そして、ST1に戻る。
ST3において、GPS衛星からの電波を連続してGPS受信不可判別時間tg(例えば、10秒)以上受信できなかったか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST4に移り、ノー(N)の場合はST1に戻る。
【0075】
ST4において、ユーザの歩行及び停止を検出すると共に、移動距離及び移動方向を検出する移動停止検出処理(後述する図11のサブルーチン参照)を実行する。そして、ST5に移る。
ST5において、ST4で検出された移動距離及び移動方向と、現在位置(直前の現在位置)とに基づいて、現在位置を更新する。そして、ST1に戻る。
【0076】
(移動停止検出処理(ST4のサブルーチン)のフローチャートの説明)
図11は、実施例1の携帯電話の移動停止検出処理のフローチャートであり、図10のST4のサブルーチンのフローチャートである。
図11のST11において、サンプリング間隔計測タイマTM1にサンプリング間隔t1をセットする。そして、ST12に移る。
ST12において、サンプリング間隔計測タイマTM1がタイムアップしたか、即ち、サンプリング間隔t1が経過したか否かを判別する。ノー(N)の場合はST12を繰り返し、イエス(Y)の場合はST13に移る。
【0077】
ST13において、加速度データ記憶手段KC11BのM1〜M149に記憶された加速度データをM0〜M148にシフトする。そして、ST14に移る。
ST14において、以下の(1)〜(4)の処理を実行してST15に移る。
(1)傾斜センサSN2からの出力に基づいて、傾斜角α、βを演算する。
(2)傾斜角α、βと、3次元地磁気センサSN1からの出力データに基づいて、磁方位Θmg及び真方位Θtrを演算する。
(3)3次元加速度センサSN3から出力された加速度データAx、Ay、Azを読取り、読取加速度データAx、Ay、Azと、傾斜角α、βとに基づいて、水平面上の加速度ax、ay、azを演算し、加速度データ記憶手段KC11BのM149に記憶する。
(4)ax〜azに基づいて、A'x,A'y,A'zを演算し、移動速度Vx〜Vzを演算する。
【0078】
ST15において、加速度の大きさ({(ax')2+(ay')2+(az')21/2)が停止判別加速度atよりも大きいか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST16に移り、ノー(N)の場合はST17に移る。
ST16において、停止検出カウンタKC14Aのカウント値Nt=0とする。即ち、加速度の大きさが停止判別加速度at以上であり、ユーザが歩行中であると判別したので、カウント値Ntを0に初期化する。そして、ST20に移る。
【0079】
ST17において、停止検出カウンタKC14Aのカウント値Nt=Nt+1とする。即ち、加速度の大きさが停止判別加速度at以下であり、ユーザが歩行しておらず、停止している可能性があると判別したので、カウント値Ntに1を加算する。そして、ST18に移る。
ST18において、カウント値Ntが停止判別カウント値N1(=150回)以上であるか否かを判別する。即ち、1.5秒(停止判別時間)以上ユーザが歩行していないと判別されたか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST19に移り、ノー(N)の場合はST20に移る。
ST19において、移動速度Vx〜Vzを初期化する。そして、ST20に移る。
【0080】
ST20において、M0に記憶された加速度データax〜azが全て0であるか否かを判別する。即ち、移動距離等の演算に必要なサンプリングした加速度データが十分蓄積されたか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST11に戻り、ノー(N)の場合はST21に移る。
ST21において、移動距離Lや移動方向の検出を行う移動距離検出処理(後述する図12のサブルーチン参照)を実行する。そして、図11の移動停止検出処理を終了して、図10のST4に戻る。
【0081】
(移動距離検出処理(ST21のサブルーチン)のフローチャートの説明)
図12は、実施例1の携帯電話の移動距離検出処理のフローチャートであり、図11のST21のサブルーチンのフローチャートである。
図12のST31において、移動距離Lや移動方向等の演算を行う際に使用する加速度データをX'軸方向の加速度データに設定する。そして、ST32に移る。
ST32において、X'軸方向の加速度データに基づいて、移動距離L及び移動方向の演算を行う移動距離演算処理(後述する図13のサブルーチン参照)を実行する。そして、ST33に移る。
ST33において、移動距離演算完了判別フラグFL1が「0」であるか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST34に移り、ノー(N)の場合はST41に移る。
【0082】
ST34において、X'軸方向の加速度データで移動距離L等の演算ができなかったので、移動距離L等の演算を行う際に使用する加速度データをY'軸方向の加速度データに設定する。そして、ST35に移る。
ST35において、Y'軸方向の加速度データに基づいて、移動距離L及び移動方向の演算を行う前記ST32と同様の移動距離演算処理(後述する図13のサブルーチン参照)を実行する。そして、ST36に移る。
ST36において、移動距離演算完了判別フラグFL1が「0」であるか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST37に移り、ノー(N)の場合はST41に移る。
【0083】
ST37において、X'軸方向及びY'軸方向の加速度データで移動距離L等の演算ができなかったので、移動距離L等の演算を行う際に使用する加速度データをZ'軸方向の加速度データに設定する。そして、ST38に移る。
ST38において、Z'軸方向の加速度データに基づいて、移動距離L及び移動方向の演算を行う前記ST32、ST35と同様の移動距離演算処理(後述する図13のサブルーチン参照)を実行する。そして、ST39に移る。
ST39において、移動距離演算完了判別フラグFL1が「0」であるか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST40に移り、ノー(N)の場合はST41に移る。
【0084】
ST40において、X'軸方向、Y'軸方向及びZ'軸方向の加速度データに基づいて、移動距離L等の演算ができなかったので、M0〜M74に記憶された演算に使用できない加速度データを消去する。そして、図12の移動距離検出処理を終了して図11のST21に戻る。
ST41において、X'軸方向、Y'軸方向及びZ'軸方向のいずれか1つの軸方向の加速度データに基づいて、移動距離L等の演算ができたので、演算で使用された1周期分(1歩分)の加速度データ、即ち、M0〜Mnに記憶された加速度データを消去する。即ち、携帯電話1の姿勢(傾斜)により、いずれか1つの軸方向の加速度しか検出できない場合等も考えられるので、いずれか1つの軸方向の加速度データに基づいて移動距離L等の演算ができた場合、その他の2軸方向の加速度データについても、同期をとるために消去する。そして、図12の移動距離検出処理を終了して図11のST21に戻る。
【0085】
(移動距離演算処理(ST32、ST35、ST38のサブルーチン)のフローチャートの説明)
図13は、実施例1の携帯電話の移動距離演算処理のフローチャートであり、図12のST32、ST35、ST38のサブルーチンのフローチャートである。
図13のST51において、M0〜M74に記憶された加速度データの最大値と最小値の差が、所定の加速度有効性判別用閾値as以上であるか否かを判別する。即ち、図12のST31、ST34、ST37で設定された軸方向の加速度データが移動距離L等を演算する際に有効なデータであるか否かを判別する。ノー(N)の場合はST52に写り、イエス(Y)の場合はST53に移る。
ST52において、移動距離演算完了判別フラグFL1を「0」とする。そして、図13の移動距離演算処理を終了して図12のST32、ST35、ST38のいずれかに戻る。
【0086】
図14は、X軸方向の加速度データの一例の説明図である。
図15は、前記図14に示す加速度データの波形を示す図である。
図16は、前記図14に示す加速度データに基づいて算出された差分総和の説明図である。
ST53において、差分総和S37〜S75を演算する。図14〜図16において、例えば、図14に示す加速度データが得られた場合に、図16に示す差分総和S37〜S75を演算する。そして、ST54に移る。
ST54において、差分総和S37〜S75の最大値Smax(図16の場合はS75)と、最小値Smin(図16の場合はS53)を検出する。そして、ST55に移る。
【0087】
ST55において、Smax−Sminが差分総和差閾値Ss以上であるか否かを判別する。即ち、1周期分の加速度の履歴があったか否かを判別し、ユーザが1歩歩いたか否かを判別する。なお、実施例1の差分総和差閾値Ssは、最小値Sminに設定されているので、最大値Smaxが最小値Sminの2倍以上あるか否かを判別する。イエス(Y)の場合はST56に移り、ノー(N)の場合は図13の移動距離演算処理を終了して図12のST32、ST35、ST38のいずれかに戻る。
【0088】
ST56において、次の処理(1)、(2)を実行し、ST57に移る。
(1)移動速度Vx〜Vzから水平面上の座標系での進行方向Θvを演算する。
(2)歩幅STPと、Θv、Θtrとから、移動距離Lの真北方向成分Ln及び真西方向成分Lwとを演算する。
ST57において、移動距離演算完了判別フラグFL1を「1」とする。そして、図13の移動距離演算処理を終了して図12のST32、ST35、ST38のいずれかに戻る。
【0089】
(実施例1の作用)
前記構成を備えた実施例1の経路案内システムSでは、携帯電話1の現在位置を検出する際に、GPSが使用可能な場合は、GPSを使用して現在位置を検出する。一方、GPSが使用できない場合には、ユーザの歩行により加速度データの履歴に周期的な波形(図15参照)が表れることに注目して、加速度データに基づいて、ユーザの歩行を検出して、移動距離及び移動方向を検出し、検出された移動距離及び移動方向に基づいて現在位置が検出される(更新される)。
【0090】
そして、実施例1の経路案内システムSでは、移動距離や移動方向の検出が行われる際に、加速度データに基づいて、携帯電話1が停止しているか否かが判別される。そして、携帯電話1が停止していると判別された場合、移動速度Vx〜Vzが0に初期化(リセット)される。即ち、リセット後に行われる移動距離L及び移動方向の検出(演算)において、誤差がなくなる。したがって、移動速度がリセットされるので、リセットされない場合と比較して、正確な移動距離及び移動方向を検出でき、正確な現在位置を検出することができる。
【0091】
また、実施例1の経路案内システムSの携帯電話1は、ユーザが1歩歩いたことと、1歩の歩幅STPとから移動距離Lを演算している。したがって、移動速度の誤差が影響を受ける加速度の2回積分により移動距離Lを求める場合に比べ、誤差が少なくなる。そして、実施例1の携帯電話1では、前記歩幅STPは、ユーザの身長に応じて、自動的に計算される。
さらに、実施例1の携帯電話1では、磁方位Θmgではなく、真方位Θtrを使用しているので、真方位に基づいてより正確な移動方向を検出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、種々の変更を行うことが可能である。
例えば、実施例1では、傾斜センサSN2を設けたが、傾斜センサSN2を省略し、3次元加速度センサSN3により、鉛直方向の重力加速度G(9.8m/s2)を検出して傾斜角α、βを演算することも可能である。
また、実施例1では、真方位を使用したが、磁方位を使用して移動方向等を演算することも可能である。
【0093】
また、実施例1では、歩幅STPを自動的に計算する場合に、身長に基づいて係数0.45を乗じて算出したが、男性と女性で係数を変えるようにすることも可能である。また、歩幅STPを直接入力するように構成することも可能であるし、携帯電話1の製造出荷時に歩幅STPを所定の値に固定しておくことも可能である。
さらに、実施例1では、1歩の検出と歩幅とから移動距離を演算したが、移動速度を積分して移動距離を求めることも可能である。なお、移動速度を積分して移動距離を検出した場合でも、停止時に移動速度のリセットが行われるので、リセットが行われない従来技術と比較して、誤差が少なく正確な移動距離を検出できる。
【0094】
また、実施例1では、GPSが使用できない場合に移動距離L等の演算を行い、現在位置を検出したが、GPSが出力するDOP値(Dilution of Precision、GPS衛星の配置から計算した精度の指標、DOP値が小さいほど精度が高い)が所定の値より小さい場合は、GPSに基づいた現在位置の信頼度が高いとしてGPSの位置情報を採用し、DOP値が所定の値より大きい場合には、GPSから検出される現在位置の信頼度が低いとして、移動距離Lの演算を実行して現在位置を検出するように構成することも可能である。
【0095】
さらに、実施例1では、加速度の大きさに基づいて、歩行しているか否かの判別を行ったが、これに限定されず、例えば、加速度データの履歴の波形をフーリエ変換し、所定の周波数(例えば、2Hz)のスペクトルを検出した場合に歩行と判別し、検出しなかった場合に歩行してないと判別することも可能である。前記フーリエ変換を行う場合には、例えば、高速フーリエ変換(FFT)用のモジュールを使用することにより、高速且つ低負荷で演算できる。
【0096】
また、実施例1では、携帯型ナビゲーション装置はGPSを備えているが、本発明は、GPSを備えていない携帯型ナビゲーション装置にも適用可能である。GPSを備えていない携帯型ナビゲーション装置では、前記移動距離L等を検出して現在位置を検出できる。
さらに、実施例1では携帯型ナビゲーション装置として携帯電話1を挙げたが、これに限定されず、PHSやPDA、携帯可能なパーソナルコンピュータ(ノートパソコン等)、車から取り外して携帯して使用可能なカーナビゲーション装置等の携帯型ナビゲーション装置にも適用可能である。
【0097】
また、実施例1では、加速度センサSN3から出力された読取加速度データAx〜Azを座標変換した加速度データax〜azを記憶し、このデータに基づいて処理を行ったが、これに限定されず、座標変換前のデータAx〜Azを記憶し、このデータに基づいて各処理を実行することも可能である。
【符号の説明】
【0098】
1…携帯型ナビゲーション装置、
12…身長入力キー、
KC5B…地図データ受信手段、
KC6A…身長記憶手段、
KC7…歩幅演算手段、
KC8…歩幅記憶手段、
KC11B…加速度データ記憶手段、
KC12…移動速度検出手段、
KC13…歩行検出手段、
KC14…停止判別手段、
KC14B…停止判別時間記憶手段、
KC15…速度リセット手段、
KC18…歩行周期検出手段、
KC10C…真方位演算手段、
KC19…移動距離検出手段、
KC23…経路案内画像表示手段、
SN1…地磁気センサ、
SN3…加速度センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経路案内用の地図データを記憶する地図データ記憶手段と、
前記地図データを使用して、出発地から目的地までの経路案内用画像を表示する経路案内画像表示手段と、
携帯型ナビゲーション装置の移動時の加速度を検出する加速度センサと、
地磁気を検出する地磁気センサと、
前記加速度センサで検出した加速度のデータを記憶する加速度データ記憶手段と、
前記加速度データに基づいて携帯型ナビゲーション装置の移動速度を求め、記憶する速度検出記憶手段と、
前記地磁気に基づいて前記携帯型ナビゲーション装置の磁方位を検出する磁方位検出手段と、
前記移動速度及び前記磁方位に基づいて移動距離と移動方向を検出する移動距離検出手段と、
前記加速度データに基づいてユーザが歩行しているか否かを検出する歩行検出手段と、
前記加速度データに基づいて、ユーザの歩行の1周期分の加速度の履歴があったか否かを検出する歩行周期検出手段と、
ユーザが歩行を停止しているか否かを判別するための停止判別時間を記憶する停止判別時間記憶手段と、
前記歩行検出手段が前記停止判別時間の間、歩行を検出しなかったか否かを判別する停止判別手段と、
前記停止判別手段により前記歩行検出手段が前記停止判別時間の間、歩行を検出しなかったと判別された場合に、速度検出記憶手段に記憶された前記移動速度を0とする速度リセット手段と、
を有する前記携帯型ナビゲーション装置。
【請求項2】
ユーザの歩幅を記憶する歩幅記憶手段と、
前記歩行検出手段で歩行が検出された場合に、前記歩幅、前記移動速度及び前記磁方位に基づいて前記移動距離及び前記移動方向を検出する前記移動距離検出手段と、
を有する請求項1記載の携帯型ナビゲーション装置。
【請求項3】
ユーザの身長を入力する身長入力キーと、
前記身長入力キーにより入力された身長を記憶する身長記憶手段と、
前記身長に基づいて前記歩幅を演算する歩幅演算手段と、
前記歩幅演算手段により演算された前記歩幅を記憶する前記歩幅記憶手段と、
を有する請求項2記載の携帯型ナビゲーション装置。
【請求項4】
前記地図データと、地磁気に対する偏角のデータとを記憶する前記地図データ記憶手段と、
前記偏角のデータと、前記磁方位とに基づいて、真方位を演算する真方位演算手段と、
を有する請求項1ないし3のいずれか記載の携帯型ナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−258130(P2009−258130A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182617(P2009−182617)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【分割の表示】特願2004−98868(P2004−98868)の分割
【原出願日】平成16年3月30日(2004.3.30)
【出願人】(500168811)株式会社ナビタイムジャパン (410)
【Fターム(参考)】