説明

携帯型加湿装置

【課題】外出先でも顔面の対象部位の加湿を容易に行うことができ、且つ搬送時または使用時に水を生じないような携帯型加湿装置を提供すること
【解決手段】水タンク11と、水タンク内の水を霧または水蒸気にする霧または水蒸気発生装置13と、発生した霧または水蒸気を顔面の対象部位に当てるための吹き出し口15を備える。吹き出し口15は、水は通過しないが水蒸気は通過する素材で構成された水蒸気透過膜23で覆われていてもよく、伸縮および折り曲げ自在で眼の周囲に適合するアダプタ19の上端に形成されていてもよい。加湿の対象部位は、眼、鼻または口とすることができる。霧または水蒸気発生装置は高酸素濃度の霧または水蒸気を発生したり、霧または水蒸気の発生量を調節可能であってよい。また水タンク11内の水の温度を調節する温度調節器33を備えることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔面の対象部位に霧または水蒸気を当てて対象部位の乾燥を防止する携帯型加湿装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、湿度センサで部屋の現在湿度を検出し、湿度設定手段による設定湿度と比較し、その差に対応して加湿制御手段が自動的に加湿量を選定し、さらに設定湿度と部屋の室温の状態に対応して、加湿量の補正も行う加湿器が開示されている。このように従来の加湿装置は、部屋全体の湿度を調節することを目的とするものであった。
【0003】
しかしパソコン操作など近年目を酷使する作業の増加により目の乾きによる違和感を訴えて、これを外出先で軽減する必要が生じてきた。従来は目薬の点眼や目の洗浄などでこの違和感を軽減してきたが、目薬の点眼はコンタクトレンズに悪影響を及ぼしたり、含有されている防腐剤により角膜障害を生じる可能性がある。目の洗浄はトイレなど水場を必要とするため必ずしも必要時にできるものではなかった。
【0004】
一方、加湿器を携帯型とする場合には、搬送時または使用時に、水の入ったタンクから水が漏れ出ないようにしなければならない。
【0005】
【特許文献1】特開平5−52392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明の課題は、外出先でも顔面の対象部位の加湿を容易に行うことができ、且つ搬送時または使用時に水を生じないような携帯型加湿装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の携帯型加湿装置は、水タンクと、水タンク内の水を霧または水蒸気にする霧または水蒸気発生装置と、上記霧または水蒸気発生装置により発生した霧または水蒸気を顔面の対象部位に当てるための吹き出し口を備えることを特徴とするものである。
【0008】
上記吹き出し口は、水は通過しないが水蒸気は通過する素材で構成された水蒸気透過膜で覆われていてもよい。
また上記対象部位は眼、鼻または口とすることができる。
【0009】
また上記吹き出し口が眼の位置に合わせて2カ所形成されており、上記水タンクと吹き出し口との間に霧または水蒸気を誘導する筒部が形成されていてもよい。
また上記吹き出し口は、伸縮および折り曲げ自在で上記顔面の対象部位の周囲に適合するアダプタの上端に形成されていてもよい。
【0010】
また上記霧または水蒸気発生装置は高酸素濃度の霧または水蒸気を発生するようにすることもできる。
また上記水タンク内の水は芳香剤を含むことができる。
また上記水タンク内の水の温度を調節する温度調節器を備えていてもよい。
また上記霧または水蒸気発生装置は霧または水蒸気の発生量を調節可能であってもよい。
また、水タンクから供給される水を保持し、該水から水蒸気発生装置により蒸気を発生させるための蒸気発生部をさらに備えていてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の携帯型加湿装置は、霧または水蒸気発生装置から発生した霧または水蒸気を顔面の対象部位に当てることができるから、外出先などで眼、鼻、口などを加湿してドライアイや鼻、口内の乾燥に痛みなどを抑えることができる。また大量の霧や水蒸気を眼に供給することで、眼球上に水滴を発生させ、眼を開閉することで眼に入ったゴミや異物を水滴や涙と一緒に除去することができる。
【0012】
また吹き出し口が、水は通過しないが水蒸気は通過する素材で構成された水蒸気透過膜で覆われていれば、携帯型加湿装置をハンドバック等に入れて持ち歩いても、吹き出し口から水タンク内の水がこぼれ出ることを防止できる。また、水蒸気透過膜を有するアダプタの代わりに、例えばプラスチック製の中蓋をパッキン構造又はネジ構造により嵌合させて、漏水をより完全に防止することができる。
【0013】
また吹き出し口が眼の位置に合わせて2カ所形成されており、水タンクと吹き出し口との間に霧または水蒸気を誘導する筒部が形成されていれば、霧または水蒸気発生装置から発生した霧または水蒸気を効率的に対象部位に供給することができる。
【0014】
また吹き出し口が伸縮および折り曲げ自在で顔面の対象部位の周囲に適合するアダプタの上端に形成されていれば、アダプタを伸縮したり、適宜の角度に折り曲げることで、吹き出し口と対象部位とをフィットさせ、霧または水蒸気を効率的に対象部位に供給することができる。
【0015】
また霧または水蒸気発生装置が高酸素濃度の霧または水蒸気を発生できれば、対象部位に高酸素濃度の霧または水蒸気を供給して、例えば眼の角膜の新陳代謝を向上させたり、体内への酸素の供給をスムースに行うことが可能となる。
また水タンク内の水が芳香剤を含めば、芳香剤成分が呼吸器系を介して体内に取り込まれることで、リラックス効果などが得られる。
【0016】
また水タンク内の水の温度を調節する温度調節器を備えていれば、最適な温度の霧または水蒸気を対象部位に供給することができる。
また霧または水蒸気発生装置が霧または水蒸気の発生量を調節可能であれば、眼、鼻、口などの対象部位の乾燥具合に応じて、対象部位に供給する霧または水蒸気の量を調節することができる。
また水タンクから供給される水を保持し、該水から水蒸気発生装置により蒸気を発生させるための蒸気発生部をさらに備えることによって、蒸気の量を使用者が必要に応じて適宜調整することが容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の携帯型加湿装置について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の携帯型加湿装置1の一例として両眼のドライアイを防止するための加湿装置の使用状態を示す斜視図である。携帯型加湿装置1は本体部3と蓋部5とを備えており、蓋部5は本体部3の一側部に対して回動可能に接続されている。図2に示すように蓋部5を閉鎖した状態は、蓋部5の周囲に設けられたパッキン7の作用により後述する水タンク内の水が外部へ漏れ出ないようになっており、使用者はこの状態で携帯型加湿装置1をバック等に入れて携帯することができる。
本体部3の上面には、人の眼の位置に合わせて2つの筒部9が形成されており、本体部3の内部には、水タンク11及び水タンクの下に霧または水蒸気発生装置13が設けられている。2つの筒部9の内側は水タンク11に連絡しており、各筒部9の上端は吹き出し口15となっている。各筒部9は本体部3に一体形成された基部17と、基部17の周囲に上下に移動可能に設けられたアダプタ19とから構成されている。アダプタ19の上端にはゴムやシリコン等の柔軟な材料で形成された当接部21が設けられており、眼またはその周囲が当接部21に当たったときに眼またはその周囲が傷つくことを防止している。
【0018】
なお、本実施形態ではアダプタ19は上下方向のみ移動自在であるが、図5に示すように、蛇腹状に形成されたゴムや軟質プラスチック等によりアダプタ19を伸縮および折り曲げ自在に構成し、吹き出し口15が任意の角度で眼の周囲に適合するように構成することもできる。
【0019】
吹き出し口15は、水は通過しないが水蒸気は通過する素材で構成された水蒸気透過膜23で覆われている。このような水蒸気透過膜23の例としては、ゴアテックス(登録商標)やエントラント(登録商標)などが挙げられる。吹き出し口15を水蒸気透過膜23で覆うことにより、携帯型加湿装置1をバック等に入れて携帯する場合に、水タンク11内の水が外に漏れることを防止できるとともに、吹き出し口15からの水漏れを防止するための水密キャップなどが不要となる。水漏れ防止をより完全にするためにアダプタ19を基部17にパッキン構造やネジ構造(図示せず)により取外し自在とし、携帯時にはアダプタ19の代わりにプラスチック製の中蓋を嵌合させてもよい。この場合には、上記のような水蒸気透過膜は不要である。
【0020】
水タンク11は2つの吹き出し口15の下方に亘って延び、その側部には給水口25に通じる給水パイプ27が形成されている。これにより水タンク11内の水の量が減少したとき、給水口25から水タンク11内へ水を補給することができる。
【0021】
霧または水蒸気発生装置13は、本実施形態では超音波振動子14を使用している。即ち、超音波発生源としてセラミック系の超音波振動子14を水面下に設置し、超音波振動により水の表面に噴水状の水柱を形成させ、その先端部から水を霧化させて散布させるようにしている。図4に示すように超音波振動子14はスイッチ29をONにしたときに電源31により励起され、水タンク11内の水を霧化することができる。このように生成した霧または水蒸気は、筒部9を介して吹き出し口15から眼に当てられる。なお、図4に示すように水タンク11内に温度調節器である電熱線33を配線しておき、スイッチ35を操作することで水タンク11内の水を加熱し、霧または水蒸気を眼に最適な温度にすることもできる。また超音波振動子14の電源は電池を利用できる他、携帯電話のアダプタから充電可能としたり、パーソナルコンピュータのUSB端子を電源とするようにしてもよい。
【0022】
霧または水蒸気発生装置13は、超音波振動子を使用する方式の他にもヒータを設置した電熱式、電極を設置した電極式、空調機内の蒸発皿(バン)にヒータを設置したバン型加湿器などの蒸気発生器や、高圧の水をノズルから噴霧する方式、モータの遠心力により水を霧状にして噴霧する方式などの水噴霧加湿装置、あるいはタンク内に給水し、円盤状の吸水材を回転させ加湿する方式、吸水材の上から滴下して加湿する方式などの気化加湿装置が適用できる。
【0023】
図4には示されていないが、霧または水蒸気発生装置13から発生する霧または水蒸気の発生量を調節するために超音波振動子14に掛かる電圧を変更できる調節ダイアルを設けるようにしてもよい。また水タンク11内に入れる水に高濃度の酸素を溶解させておき、高酸素濃度の霧または水蒸気を発生させるようにしてもよい。更に水タンク11内に入れる水に清涼感のあるメントール、ミントあるいはアロマテラピー用のハーブオイルなどの芳香剤を適量混入し、芳香剤が霧または水蒸気に混ざって気化するようにしてもよい。
【0024】
以上本発明の携帯型加湿装置1をドライアイを防止するための加湿装置として具体的に説明したが、眼以外にも鼻または口の加湿を目的とする装置であってもよい。この場合、鼻または口の形状に合うように筒部9を適宜の形状としたり、鼻または口の形状に合うようなアダプタを図1に示す携帯型加湿装置1の基部17に取り付けて携帯型加湿装置1を汎用的に使用できるようにすることもできる。
【0025】
さらに本発明の携帯型加湿装置においては、水タンクから供給される水を保持し、該水から水蒸気発生装置により蒸気を発生させるための蒸気発生部(加熱部)をさらに設けることができる。蒸気発生部(加熱部)を設けた携帯型加湿装置の一例の模式図を図6に示す。水タンク内の水は、使用時に、蒸気発生部(加熱部)へと供給される。蒸気発生部への水の供給量は、水量調節ツマミにより使用者が適宜調整することができる。水タンクと水量調節ツマミの構成の一例を図7に示す。図6では電池部として示される水蒸気発生装置により蒸気発生部内の水は加熱されて蒸気となり、当該蒸気は筒部を通って吹出し口から外部へと放出される。
【産業上の利用可能性】
【0026】
眼、鼻、口等が乾燥することを防止するために霧または水蒸気を対象部位に付与する携帯型加湿装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の携帯型加湿装置の使用状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の携帯型加湿装置の蓋部を閉鎖した状態を示す側面図である。
【図3】本発明の携帯型加湿装置の蓋部を開放した状態を示す側面図である。
【図4】本発明の携帯型加湿装置の回路図である。
【図5】アダプタの他の実施形態を示す斜視図である。
【図6】蒸気発生部を備えた本発明の携帯型加湿装置の構成の模式図である。
【図7】水タンクと水量調節ツマミの構成の一例である。
【符号の説明】
【0028】
1 携帯型加湿装置
3 本体部
5 蓋部
7 パッキン
9 筒部
11 水タンク
13 霧または水蒸気発生装置
14 超音波振動子
15 吹き出し口
17 基部
19 アダプタ
21 当接部
23 水蒸気透過膜
25 給水口
27 給水パイプ
29 スイッチ
31 電源
33 電熱線
35 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水タンクと、
水タンク内の水を霧または水蒸気にする霧または水蒸気発生装置と、
前記霧または水蒸気発生装置により発生した霧または水蒸気を顔面の対象部位に当てるための吹き出し口を備えることを特徴とする携帯型加湿装置。
【請求項2】
請求項1において、前記吹き出し口は、水は通過しないが水蒸気は通過する素材で構成された水蒸気透過膜で覆われていることを特徴とする携帯型加湿装置。
【請求項3】
請求項1または2のいずれか一項において、前記対象部位は眼、鼻または口であることを特徴とする携帯型加湿装置。
【請求項4】
請求項1または2のいずれか一項において、前記吹き出し口が眼の位置に合わせて2カ所形成されており、前記水タンクと吹き出し口との間に霧または水蒸気を誘導する筒部が形成されていることを特徴とする携帯型加湿装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、前記吹き出し口は、伸縮および折り曲げ自在で前記顔面の対象部位の周囲に適合するアダプタの上端に形成されていることを特徴とする携帯型加湿装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項において、前記霧または水蒸気発生装置は高酸素濃度の霧または水蒸気を発生することを特徴とする携帯型加湿装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかにおいて、前記水タンク内の水は芳香剤を含むことを特徴とする携帯型加湿装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかにおいて、前記水タンク内の水の温度を調節する温度調節器を備えることを特徴とする携帯型加湿装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかにおいて、前記霧または水蒸気発生装置は霧または水蒸気の発生量を調節可能であることを特徴とする携帯型加湿装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかにおいて、水タンクから供給される水を保持し、該水から水蒸気発生装置により蒸気を発生させるための蒸気発生部をさらに備えていることを特徴とする携帯型加湿装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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