携帯型受信機および放送受信方法
【課題】携帯型受信機で複数の放送サービスを受信可能であるとき、表示画面の変化を観察することで各放送サービスの放送エリアを直感的に把握することができる。
【解決手段】チューナ部104は、ワンセグ放送等の複数の放送サービスを受信する。位置特定部128は、携帯型受信機100の現在位置を特定する。放送サービス情報取得部124は、複数の放送局の位置を示す情報を少なくとも含む放送サービス情報を取得する。位置関係算出部138は、現在位置と各放送局との間の距離を放送サービス情報に基づき算出する。優先提示制御部140は、各放送局のうち携帯型受信機100との間の距離が近い方の放送サービスを優先的に提示する。
【解決手段】チューナ部104は、ワンセグ放送等の複数の放送サービスを受信する。位置特定部128は、携帯型受信機100の現在位置を特定する。放送サービス情報取得部124は、複数の放送局の位置を示す情報を少なくとも含む放送サービス情報を取得する。位置関係算出部138は、現在位置と各放送局との間の距離を放送サービス情報に基づき算出する。優先提示制御部140は、各放送局のうち携帯型受信機100との間の距離が近い方の放送サービスを優先的に提示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放送を受信可能な携帯型受信機、および携帯型受信機における放送受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地上デジタルテレビ放送では、広帯域放送(以下フルセグ放送、または12セグ放送と呼ぶ)と狭帯域放送(以下ワンセグ放送と呼ぶ)とで同一の映像コンテンツを同一時刻に放送する所謂サイマル放送が行われている。一方、サイマル放送を行わず、フルセグ放送とは異なる独自の映像コンテンツを特定のサービスエリア内のみで放送するエリアワンセグ放送の実証実験が現在行われている。エリアワンセグ放送は、サービスエリアが半径数メートル程度の小規模ものから、半径数十〜数百メートルである比較的規模の大きいものまで様々なものが想定されている。
【0003】
ユーザがエリアワンセグ放送を受信するには、エリアワンセグ放送の放送局のチャンネル情報を取得する必要がある。特許文献1には、基地局からエリアワンセグ放送を受信可能な移動局に対して、自基地局のカバーエリア内において放送されるエリアワンセグ放送の放送番組紹介情報およびチャンネル設定情報を含む放送サービス提供情報を送信する技術が開示されている。移動局のディスプレイにテキスト表示された放送番組紹介情報をユーザが選択すると、移動局はチャンネル設定情報に基づいてエリアワンセグ放送番組を受信することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−166153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
携帯端末の現在位置で複数の放送波を受信可能である場合、携帯端末のユーザはその場所から移動しても引き続きエリアワンセグ放送を受信し続けられるか否かを確認できると便利である。この場合、特許文献1に記載の技術のように、放送サービスの受信可能範囲などの情報がテキストで提供されても、受信可能範囲の地名やランドマーク名などが分からなければ、ユーザは受信可能範囲に近づいているか遠ざかっているかを知ることができない。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、携帯型受信機において複数の放送サービスを受信可能であるとき、各放送サービスの受信可能範囲をユーザに直感的に把握させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、複数の放送局から提供される複数の放送サービスを受信可能な携帯型受信機である。携帯型受信機は、複数の放送サービスをそれぞれ受信するチューナ部と、携帯型受信機の現在位置を特定する位置特定部と、複数の放送局の位置を示す情報を少なくとも含む放送サービス情報を記憶する放送サービス情報記憶部と、現在位置と各放送局との間の距離を放送サービス情報に基づいて算出する位置関係算出部と、各放送局のうち携帯型受信機との間の距離が近い方の放送局の放送サービスを優先的に提示する優先提示制御部と、を備える。
【0008】
この態様によると、携帯型受信機において複数の放送サービスを受信可能であるとき、放送サービスが再生される態様を観察することで、携帯型受信機のユーザはいずれの放送サービスを提供する放送局に近い位置にいるのかを直感的に把握することができる。
なお、「優先的に提示」とは、他の放送サービスよりもユーザがより見やすいかまたは目立つ態様で表示すること、または一方が他方よりも認知されやすい態様で提示することを言う。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、携帯型受信機で複数の放送サービスを受信可能であるとき、各放送サービスの受信可能範囲をユーザに直感的に把握させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る携帯型受信機を含む放送受信システムの概略構成図である。
【図2】管理サーバから携帯型受信機に提供される放送サービス情報の内容を示す表である。
【図3】一実施形態に係る携帯型受信機の構成を示すブロック図である。
【図4】携帯型受信機とワンセグ放送局との位置関係を簡潔に表した図である。
【図5】二つの放送エリアが重なっているときの画面レイアウトの決定方法を説明する図である。
【図6】携帯型受信機が放送局B1からB2まで移動するときの画面レイアウトの変化を説明する図である。
【図7】携帯型受信機が放送局B1からB2まで移動するときの画面レイアウトの変化を説明する図である。
【図8】携帯型受信機が放送局B1からB2まで移動するときの音量の変化を説明する図である。
【図9】(a)〜(d)は、4つの放送サービスを受信可能な場合に、放送局までの距離に応じて各放送サービスの表示サイズを変更する実施例を説明する図である。
【図10】(a)〜(d)は、各放送局の位置する方角を表示する実施例を説明する図である。
【図11】携帯型受信機が放送局B1からB2まで移動するときの各放送サービスの表示時間の変化を説明する図である。
【図12】複数の実施例を組み合わせた例を示す図である。
【図13】複数の放送エリアが重なっているときに携帯型受信機上でいずれかの放送サービスを優先表示する処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る携帯型受信機100を含む放送システム10の概略構成図である。
【0013】
携帯型受信機100は、ワンセグ放送を受信するアンテナ、受信したワンセグ放送から得られた放送コンテンツを再生するためのディスプレイ200およびスピーカ(図示せず)を少なくとも備える携帯端末である。また、携帯型受信機100は、GPS(Global Positioning System)衛星22から発せられる電波を受信するアンテナと、管理サーバ12と無線通信を行うアンテナとをさらに備える。無線通信は、LAN(Local Area Network)を利用してもよいし携帯電話網を利用してもよい。携帯型受信機100は、例えば、スマートフォン、携帯電話機、タブレット端末、ノートパソコン等であってもよい。
なお、以降の記述では、説明を簡単にするために、ワンセグ放送とこのワンセグ放送で放送される放送コンテンツとを総称してワンセグ放送サービス、または単に放送サービスと呼ぶことがある。
【0014】
図示しない放送設備に接続されたワンセグ放送局B1、B2は、放送局毎に予め設定されているチャンネル番号(周波数)を使って放送コンテンツを変調し放送波として発信する。ワンセグ放送局B1、B2は、それぞれの送信出力に応じて、数m〜数百mの受信可能範囲(以下、「放送エリア」と呼ぶ)A1、A2を有する。
【0015】
LAN等のネットワークを介して管理サーバ12と接続された無線通信装置14は、複数の放送局B1、B2をその中に含む通信範囲16内で携帯型受信機100と通信可能である。管理サーバ12は、無線通信装置14の通信範囲16内で提供されているワンセグ放送局B1、B2に関する情報(以下、「放送サービス情報」と呼ぶ)を保持している。管理サーバ12は、携帯型受信機100からの問い合わせに応じて放送サービス情報を無線通信装置14を介して提供するように構成されている。
【0016】
なお、以下では、携帯型受信機100が放送サービス情報を管理サーバ12から無線通信装置14を介して取得する場合について述べるが、放送サービス情報の取得方法はこれに限られず任意の方法を用いることができる。
【0017】
携帯型受信機100がワンセグ放送局の放送エリア内にある場合、携帯型受信機に組み込まれているワンセグ視聴用のアプリケーションを起動させると、アプリケーションが放送サービス情報に基づき自動的に選局を行い、ワンセグ放送サービスを受信しディスプレイ200に表示する。図1では、携帯型受信機100が放送エリアA1、A2の両方に含まれているので、ワンセグ放送局B1、B2の両方が放送する放送サービスを受信することができる。
【0018】
本実施形態では、図1のように携帯型受信機100が複数の放送局から放送サービスを受信可能である場合、受信機からの距離が最も近い放送局によって提供される放送サービスを、他の放送局から提供される放送サービスよりも優先的に提示する。ここで、「優先的に提示」とは、他のエリア放送サービスよりもユーザがより見やすいかまたは目立つ態様で表示すること、または一方が他方よりも認知されやすい態様で提示することを言う。優先的な提示の具体例は、図5以降を参照して後述する。
【0019】
図2は、管理サーバ12から携帯型受信機100に提供される放送サービス情報の内容を示す表50である。放送サービス情報には、無線通信装置14の通信範囲16内に位置する各ワンセグ放送局について、放送局名52、チャンネル54、周波数56、放送局の緯度および経度58、各放送局の放送エリア半径60、および放送時間62を少なくとも含む。
【0020】
図3は、本実施形態に係る携帯型受信機100の構成を示すブロック図である。この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリその他のLSI、種々の装置で実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0021】
チューナ部104は、放送サービス情報取得部124で取得される放送サービス情報に基づき、受信可能なワンセグ放送の周波数にチューニングする。チューナ部104は、ワンセグ受信アンテナ102を介して受信したワンセグ放送に検波、復調、誤り訂正等の処理を施して放送信号を取得し、得られた放送信号をデマルチプレクサ106に送る。本実施形態では、複数のワンセグ放送波を同時に受信するために、アンテナ102およびチューナ部104組が2組以上(図では4組)設けられている。
【0022】
デマルチプレクサ106は、放送信号から放送サービス(放送コンテンツ)としての音声データおよび映像データを取り出し、それぞれ音声デコーダ108またはビデオデコーダ110に送る。
【0023】
音声デコーダ108は、取り出された音声データを復号し、得られた音声信号を音声出力部114に送る。音声出力部114は、送られた音声信号をスピーカ118で出力する。
【0024】
ビデオデコーダ110は、取り出された映像データを復号し、得られた映像信号を画像合成部112に送る。画像合成部112は、後述する優先提示制御部140からの指令に応じて、複数の放送信号から取り出された映像データのスケーリング、映像データの合成、必要に応じてメニュー表示の合成等を行い、画像出力部116に送る。画像出力部116は、送られた映像信号をディスプレイ200で表示する。
【0025】
放送サービス情報取得部124は、アンテナ122を介して管理サーバ12から放送サービス情報を取得する。取得した放送サービス情報は、記憶装置150に格納される。記憶装置150は、例えばハードディスク、DVD(Digital Versatile Disc)(登録商標)等の光学ディスク、SDカード(登録商標)などの不揮発性メモリなどが含まれるが、これら以外であってもよい。
【0026】
位置特定部128は、GPSアンテナ126で受信されるGPS信号に基づき、所定の時間間隔で携帯型受信機100の現在位置、例えば緯度および経度を特定する。
【0027】
位置関係算出部138は、位置特定部128によって特定された携帯型受信機100の現在位置と、放送サービス情報に含まれる各放送局の緯度および経度とを使用して、所定の時間間隔(例えば数十秒)で携帯型受信機100から各放送局までの距離を算出する。距離の算出に加えて、携帯型受信機100から見た各放送局の方角を求めてもよい。
【0028】
優先提示制御部140は、位置関係算出部138により求められた各放送局の距離に基づき、放送サービスの様々な優先提示態様を制御する。優先提示制御部140は、画面レイアウト決定部142、音声調整部144、透明度調整部146および切換指示部148を含む。
【0029】
画面レイアウト決定部142は、携帯型受信機100の現在位置から放送局までの距離の近い方の放送サービスを、距離の遠い方の放送サービスよりも大きく表示する画面レイアウトを決定する。決定された画面レイアウトの情報は、画像合成部112に送られる。
【0030】
また、画面レイアウト決定部142は、携帯型受信機100の現在位置から見て各放送局の位置する方角に相当する向きに、各放送局によって提供される放送サービスを表示するような画面レイアウトを決定してもよい。
【0031】
受信可能な放送サービスのうち、放送が休止中のものがある場合は、その放送サービスを表示すべき領域に放送開始時刻などの放送サービス情報を表示したり、またはその放送サービスに表示領域を割り当てないようにしてもよい。
【0032】
音声調整部144は、携帯型受信機100の現在位置から放送局までの距離の近い方の放送サービスの音声を、距離の遠い方の放送サービスの音声よりも大きな音量に決定する。決定された音量が音声出力部114に設定される。
【0033】
透明度調整部146は、携帯型受信機100の現在位置から放送局までの距離の近い方の放送サービスを、距離の遠い方の放送サービスよりも濃く表示する。より具体的には、ディスプレイ200の上面に配置されたフィルタ152の透明度を変化させることで、各放送サービスの濃さを変化させる。
【0034】
切換指示部148は、受信可能な放送サービスを順次切り換えて表示させる。より具体的には、切換指示部148は、携帯型受信機100の現在位置から放送局までの距離の近い方の放送サービスの表示時間が、距離の遠い方の放送サービスの表示時間よりもそれぞれ長くなるように、それぞれの表示時間を決定する。この表示時間の情報は画像合成部112に送られる。
【0035】
画像合成部112は、優先提示制御部140からの指令に基づき、複数の放送局から受信した放送サービスの映像信号を合成または切り換える。すなわち、画面レイアウト決定部142から送られた画面レイアウトにしたがって各放送局からの映像信号を合成したり、切換指示部148から送られた表示時間にしたがって、各放送局からの映像信号を切り換えたりする。
【0036】
音声出力部114は、音声調整部144によって設定された音量で各放送局から受信した放送サービスの音声信号を出力する。
【0037】
続いて、上記のように構成された携帯型受信機100の実施例について説明する。
【0038】
実施例1.
図4は、携帯型受信機100とワンセグ放送局B1、B2との位置関係を簡潔に表した図である。以下の説明では、各図面中の星印が携帯型受信機100の現在位置を表すものとする。
【0039】
携帯型受信機100は、放送局B1の放送エリアA1、放送局B2の放送エリアA2の重なる部分に位置しており、両方の放送サービスを受信可能であるとする。また、携帯型受信機100から放送局B1までの距離をL1、放送局B2までの距離をL2とする。位置関係算出部138は、所定の時間間隔でこれらの距離L1、L2を算出する。
【0040】
図5は、図4に示すように二つの放送エリアが重なっているときに、画面レイアウト決定部142による画面レイアウトの決定方法を説明する図である。
【0041】
図5は、携帯型受信機100のディスプレイ200内の、放送局B1から提供される放送サービスが表示される領域S1と、放送局B2から提供される放送サービスが表示される領域S2のレイアウトを示している。ディスプレイ200の表示領域全体の幅をW、高さをH、縦横比K=W/Hとする。また、領域S1の幅をw1、高さをh1とし、領域S2の幅をw2、高さをh2とする。画面レイアウト決定部142は、次式にしたがってこれらの値を算出する。
【0042】
(数1)
w1=W/(1+L1/L2)
h1=w1/K
w2=W/(1+L2/L1)
h2=w2/K
【0043】
上記のようにすると、携帯型受信機から放送局までの距離が近いほど、その放送局の放送サービスが表示される領域のサイズが大きくなり、放送局から離れるほど領域のサイズが小さくなる。この様子を図6を参照して説明する。
【0044】
図6は、図4に示すように二つの放送局B1、B2による二つの放送エリアA1、A2が存在する場合に、携帯型受信機100が放送局B1からB2まで移動したときの画面レイアウトの変化を説明する図である。図中の上段左側から下段右側に向けて時間の経過を表し、上下各段で点線よりも上側の地図202は、時刻t1〜t6における携帯型受信機100と放送局B1、B2および放送エリアA1、A2との位置関係を表し、点線よりも下側はそれぞれの位置関係にあるときのディスプレイ200内の画面レイアウトを表す。
【0045】
時刻t1では、携帯型受信機100は放送局B1の位置にある。この位置は放送エリアA2の外になり放送サービスS2を受信できないので、放送サービスS1のみがディスプレイ200の全体に表示される。
【0046】
時刻t2では、携帯型受信機100が放送エリアA1、A2の両方の中に入り、両方の放送サービスを同時に受信可能になる。数1にしたがって、各放送サービスに割り当てる領域のサイズが算出される。時刻t3〜t5にかけて、携帯型受信機100が放送局B1から放送局B2の方向に移動すると、携帯型受信機100から放送局B1までの距離が減少するとともに、放送局B2までの距離が増大する。これにつれて、ディスプレイ内で放送サービスS1の占める面積が小さくなるとともに、放送サービスS2の占める面積が大きくなる。
【0047】
時刻t6では、携帯型受信機100が放送局B2の位置にある。この位置は放送エリアA1の外になり放送サービスS1を受信できないので、放送サービスS2のみがディスプレイの全体に表示される。
【0048】
以上のように、携帯型受信機から放送局までの距離に応じて画面レイアウトを変更することによって、複数の放送サービスを受信可能な位置に携帯型受信機がある場合、ユーザは、ディスプレイのレイアウト変化を観察することで各放送サービスの放送エリアを直感的に把握することが可能になる。例えば、ユーザが携帯型表示機を持って移動中にディスプレイ内で放送サービスの表示サイズが小さくなっていく場合、ユーザは自分がその放送サービスの放送エリアから離れつつあることを認識することができる。したがって、その場に留まり放送サービスを見続けるか否かの判断材料とすることができる。また、放送サービスの表示がディスプレイから消えれば、ユーザはその放送サービスの放送エリア外に出たことを認識することができる。
【0049】
実施例2.
携帯型受信機から放送局までの距離に応じて放送サービスの画面レイアウトを変更する代わりに、放送サービスの表示の濃さを変更するようにしてもよい。携帯型受信機100のディスプレイに重ねられたフィルタ152は、印加される電圧に応じて透明度C(0≦C≦1)が変化するように構成されており、透明度調整部146からの指令に応じて動作する。なお、C=0が完全な不透明、C=1が完全な透明を意味する。
【0050】
図7は、二つの放送局B1、B2による二つの放送エリアA1、A2が存在する場合に、携帯型受信機100が放送局B1からB2まで移動したときの画面レイアウトの変化を説明する図である。図中の上段左側から下段右側に向けて時間の経過を表し、上下各段で点線よりも上側の地図202は、時刻t1〜t6における携帯型受信機100と放送局B1、B2および放送エリアA1、A2との位置関係を表し、点線よりも下側はそれぞれの位置関係にあるときのディスプレイ200内の画面レイアウトを表す。
【0051】
位置関係算出部138が放送局B1、B2までの距離L1、L2をそれぞれ求める。透明度調整部146は、値の小さい方をLminとし、距離比R1、R2をRn=Ln/Lmin(n=1、2)で計算する。そして、各放送サービスS1、S2の表示領域にかかるフィルタの透明度Cn=1/Rnを設定する。
【0052】
時刻t1では、携帯型受信機100は放送局B1の位置にある。この位置は放送エリアA2の外になり放送サービスS2を受信できないので、放送サービスS1のみがディスプレイ200の上半分に表示され、下半分には何も表示されない。
【0053】
時刻t2では、携帯型受信機100が放送エリアA1、A2の両方の中に入り、両方の放送サービスを同時に受信可能になる。放送サービスS1、S2に対応するフィルタの透明度C1、C2がそれぞれ求められる。時刻t2〜t3の間は、放送サービスS1の透明度C1=1であり、放送サービスS2に対応するフィルタの透明度は0から1まで増加する。したがって、放送サービスS2の映像が次第に濃くなっていくように見える。
【0054】
時刻t4になると、放送局B1、B2までの距離が等しくなるので、両方の放送サービスとも透明度C=1になる。時刻t5になると、今度は放送サービスS2の透明度C2=1になり、放送サービスS1の透明度は1から減少していく。時刻t6では、携帯型受信機100が放送局B2の位置まで移動し、放送エリアA1の外になり放送サービスS1を受信できないので、放送サービスS2のみがディスプレイ200の下半分に表示され、上半分には何も表示されない。
【0055】
以上のように、携帯型受信機から放送局までの距離に応じて放送サービスの表示の濃さを変更することで、複数の放送サービスを受信可能な位置に携帯型受信機がある場合、ユーザは各放送サービスの放送エリアを直感的に把握することが可能になる。
【0056】
実施例3.
携帯型受信機から各放送局までの距離に応じて放送サービスの表示の濃さを変えることに加えて、各放送サービスの音量を変更するようにしてもよい。
【0057】
図8は、音量を変える実施例を説明する図である。図中の時間軸、位置関係および表示画面は図7と同様である。さらに、図8には、各放送サービスS1、S2の音量のイメージを表す図形V1、V2も描かれている。
【0058】
音声調整部144は、音量の基準値をV0に対して、それぞれの放送サービスの音量V1、V2をVn=V0/Rn(n=1、2)で算出し、算出した音量を音声出力部114に設定する。音声出力部114は設定された音量V1、V2にしたがって音声を出力する。こうすると、時刻t2〜t5にかけて、携帯型受信機100が放送局B1からB2に向かうにつれて、放送サービスS1の音量V1が小さくなるとともに、放送サービスS2の音量V2が大きくなる。携帯型受信機が放送エリア外にあるときは、当然そのコンテンツの音量も0になる。これにより、ユーザは音量の変化からも各放送サービスの放送エリアを直感的に把握することが可能になる。
【0059】
上記のようにすると、放送サービスS1とS2の音声が重なり合い実質的に聞き取れなくなる。そこで、放送局までの距離が近い方の放送サービスの音声のみが出力されるようにしてもよい。図8の例では、時刻t1〜t3の間は、放送サービスS1の音声のみが出力される。放送局B1までの距離と放送局B2までの距離が等しくなる時刻t4以降は、放送サービスS2の音声のみが出力される。
【0060】
実施例4.
上記の実施例では、受信可能な放送サービスが二つである場合について説明した。続いて、図9(a)〜(d)を参照して、受信可能な放送サービスが4つである場合に、各放送局までの距離に応じて放送サービスの表示サイズを変更する方法について説明する。
【0061】
図9(a)は、携帯型受信機100が4つの放送エリアA1〜A4の重複する範囲に位置する様子を示す。位置関係算出部138は、図9(b)に示すように、各放送局B1〜B4までの距離L1〜L4をそれぞれ算出する。図9(c)に示すように、ディスプレイ200は、4つの放送サービスを同時に表示するために4つの領域に等分割される。各領域の対角線長さをX0とする。画面レイアウト決定部142は、各領域で表示する放送サービスの表示サイズを算出する。
【0062】
まず、画面レイアウト決定部142は、算出した距離L1〜L4の中で最も距離の短いものをLminとして選択する。続いて、放送サービスS1〜S4について、それぞれの距離比R1〜R4をRn=Ln/Lmin(n=1〜4)で計算する。さらに、各放送サービスS1〜S4の表示サイズの対角線長さX1〜X4を、Xn=X0/Rn(n=1〜4)で計算する。
【0063】
この結果、図9(d)に示すように、携帯型受信機100から放送局までの距離が最も近い放送サービスS1は最大サイズで表示され、距離が遠くなる放送サービスS2、S3、S4の順で小さなサイズで表示される。例えばL4=4・L1であれば、S4の表示サイズはS1の表示サイズの25%になる。
【0064】
以上のようにすることで、受信可能な放送サービスが二つの場合と同様に、ユーザは各放送サービスの表示サイズの変化を観察することで、各放送サービスの放送エリアを直感的に把握することが可能になる。例えば、ユーザが携帯型表示機を持って移動中にある放送サービスの表示サイズが次第に大きくなっていく場合、ユーザはその放送サービスの放送局に近づいていることを認識でき、また、放送サービスの表示サイズが次第に小さくなっていく場合、ユーザはその放送サービスの放送エリアから離れつつあることを認識することができる。
【0065】
なお、受信可能な放送サービスが三つである場合は、ディスプレイ200を分割した領域の一つをブラックアウトにして使用すればよい。また、上記と同様の手法で、ディスプレイ200を6分割、8分割等にすることで、同時に表示可能な放送サービス数を増やしてもよい。
【0066】
実施例5.
実施例4では、ユーザは放送サービスの表示サイズの変化から放送局に近づいているか遠ざかっているかを認識することができるが、各放送局の大まかな方角が分かると、特定の放送局に向けて移動したい場合などに便利である。
【0067】
図10(a)〜(d)は、各放送局の位置する方角を合わせて表示する実施例を説明する図である。図10(a)は、図9(a)と同様に、携帯型受信機100が4つの放送エリアA1〜A4の重複する範囲に位置する様子を示す。
【0068】
位置関係算出部138は、図10(b)に示すように、各放送局B1〜B4までの距離L1〜L4をそれぞれ算出する。位置関係算出部138はさらに、図示しない電子コンパスおよびGPS情報をもとにして、携帯型受信機100を中心とした各放送局B1〜B4の方角を、北向きを0度とした時計回りの角度θ1〜θ4として算出する。なお、ディスプレイ200には電子コンパスによって北の方向が表示され、携帯型受信機100のユーザはこれを見てディスプレイ200の上側が北向きになるような状態で受信機を保持するものとする。
【0069】
図10(c)に示すように、ディスプレイ200は、4つの放送サービスを同時に表示するために4つの領域に等分割される。画面レイアウト決定部142は、実施例4と同様にして、各領域で表示する放送サービスの表示サイズを算出する。さらに、画面レイアウト決定部142は、図10(d)に示すように、画面中心から見て各放送局の位置する方向の領域に、対応する放送サービスの表示S1〜S4を配置する。各放送局の位置する方向を表す矢印Y1〜Y4を合わせて表示してもよい。
【0070】
各放送局の位置する方向が対角線方向にない場合や、同方向に二つの放送局が存在する場合には、図10(b)で求めたθnの小さい順に、右上、右下、左下、左上の領域という順番で時計回りに放送サービスを表示してもよい。
【0071】
このように、実施例5では、携帯型受信機100から見た各放送サービスの放送局の方角を求め、この方角に合わせて放送サービスや矢印をディスプレイ200内に表示するようにした。これにより、ユーザは、どの方向に移動すれば放送サービスの受信感度がよくなるかを直感的に理解することができる。
【0072】
実施例6.
複数の放送サービスをディスプレイに同時に表示する代わりに、放送サービスを交互に切り換えて表示するようにしてもよい。この場合、携帯型受信機100から放送局までの距離が近い方の放送サービスを長く、距離が遠い方の放送サービスを短い時間表示することで、放送エリアをユーザに把握させることができる。
【0073】
図11は、このような実施例を示す。図11の左側の地図210、212、214は、携帯型受信機100の現在位置と、放送局B1、B2および放送エリアA1、A2との位置関係を示す。タイムテーブル220、222、224は、地図210、212、214にそれぞれ対応する、放送サービスS1、S2の切換の様子を示す図である。この実施例では、二つの放送サービスS1、S2を繰り返して表示する周期Tが一定であり、切換指示部148が、携帯型受信機100から各放送局までの距離に応じて、この周期T内で各放送サービスを表示する時間を設定する。
【0074】
地図210に示す位置では、携帯型受信機100から放送局B1までの距離の方が近いので、対応する放送サービスS1の表示時間が放送サービスS2の表示時間よりも長く設定される。地図212に示す位置では、放送局B1までの距離と放送局B2間での距離が等しいので、放送サービスS1とS2の表示時間が等しく設定される。地図214に示す位置では、携帯型受信機100から放送局B2までの距離の方が近いので、対応する放送サービスS2の表示時間が放送サービスS1の表示時間よりも長く設定される。
【0075】
実施例7.
上述した各実施例は互いに組み合わせて使用することができる。図12は、その一例を示す。図11と同様に、地図210、212、214は、携帯型受信機100の現在位置と、放送局B1、B2および放送エリアA1、A2との位置関係を示す。タイムテーブル220、222、224は、地図210、212、214にそれぞれ対応する、放送サービスS1、S2の優先表示時間の切換の様子を示す。画面240、242、244は、ディスプレイ200内の放送サービスS1、S2の表示態様を示す。
【0076】
この例では、切換指示部148が、受信可能な放送サービスのそれぞれに対して優先表示時間を設定する。優先表示時間は、携帯型受信機100から放送局までの距離の近い方が距離の遠い方よりも長く設定される。すなわち、地図210に示す位置では、携帯型受信機100から放送局B1までの距離の方が近いので、対応する放送サービスS1の優先表示時間が放送サービスS2よりも長く設定される。地図212に示す位置では、放送局B1までの距離と放送局B2間での距離が等しいので、放送サービスS1とS2の優先表示時間が等しく設定される。地図214に示す位置では、携帯型受信機100から放送局B2までの距離の方が近いので、対応する放送サービスS2の優先表示時間が放送サービスS1よりも長く設定される。
【0077】
それぞれの優先表示時間中では、優先表示中の放送サービスのサイズおよび濃さが、他方の放送サービスよりも大きくかつ濃く表示される。さらに、優先表示中の放送サービスの音量が、他方の放送サービスよりも大きく再生される。
【0078】
図13は、複数の放送エリアが重なっているときに、携帯型受信機100上でいずれかの放送サービスを優先表示する処理のフローチャートである。この処理は、所定の時間間隔で繰り返し実行される。
【0079】
放送サービス情報取得部134は、管理サーバ12から、現在位置の付近で受信可能な放送局の放送サービス情報を取得する(S10)。位置特定部128は、携帯型受信機100の現在位置を取得する(S12)。位置関係算出部138は、携帯型受信機100と各放送局の間の距離をそれぞれ算出する(S14)。優先提示制御部140は、算出された距離に応じて、画面のレイアウトを決定する(S16)。画面出力部は、決定されたレイアウトにしたがって、各放送局の放送サービスを合成して表示する(S18)。
【0080】
以上説明したように、本実施形態によれば、携帯型受信機において複数の放送サービスを受信可能であるとき、放送サービスが再生される画面を観察することで、携帯型受信機のユーザは、いずれの放送サービスを提供する放送局に近い位置にいるのかを直感的に把握することができる。
【0081】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。これらの実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0082】
位置特定部128によって特定された現在位置周辺の予め定められた範囲(例えば、現在位置を中心に1km四方など)の地図データを管理サーバ12または記憶装置150などから取得する地図取得部(図示せず)と、ディスプレイ200に表示される範囲内に位置する放送局の放送エリアを図形化し、これをその範囲の地図データに重畳させて作成した地図画像をディスプレイ200に表示する地図表示部(図示せず)とをさらに備えてもよい。これにより、実際の放送サービスの範囲および放送局の位置を詳細に知ることができる。
【0083】
放送サービス情報には、各ワンセグ放送局の特色、放送中の番組内容などの追加情報が含まれていてもよい。放送エリアに加えて、これらの情報が地図画像に重畳されて表示されてもよい。
【0084】
実施の形態では、携帯型受信機でワンセグ放送を受信することを説明した。しかし、本発明はワンセグ放送の受信に限られず、フルセグメント放送や12セグメント放送などを受信する場合にも適用することができる。また、将来実施される可能性がある二つ以上のセグメントを利用する放送を受信する場合にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0085】
10 放送システム、 12 管理サーバ、 50 放送サービス情報、 100 携帯型受信機、 104 チューナ部、 112 画像合成部、 124 放送サービス情報取得部、 128 位置特定部、 138 位置関係算出部、 140 優先提示制御部、 142 画面レイアウト決定部、 144 音声調整部、 146 透明度調整部、 148 切換指示部、 150 記憶装置、 200 ディスプレイ、 A 放送エリア、 B 放送局、 S 放送サービス。
【技術分野】
【0001】
本発明は、放送を受信可能な携帯型受信機、および携帯型受信機における放送受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地上デジタルテレビ放送では、広帯域放送(以下フルセグ放送、または12セグ放送と呼ぶ)と狭帯域放送(以下ワンセグ放送と呼ぶ)とで同一の映像コンテンツを同一時刻に放送する所謂サイマル放送が行われている。一方、サイマル放送を行わず、フルセグ放送とは異なる独自の映像コンテンツを特定のサービスエリア内のみで放送するエリアワンセグ放送の実証実験が現在行われている。エリアワンセグ放送は、サービスエリアが半径数メートル程度の小規模ものから、半径数十〜数百メートルである比較的規模の大きいものまで様々なものが想定されている。
【0003】
ユーザがエリアワンセグ放送を受信するには、エリアワンセグ放送の放送局のチャンネル情報を取得する必要がある。特許文献1には、基地局からエリアワンセグ放送を受信可能な移動局に対して、自基地局のカバーエリア内において放送されるエリアワンセグ放送の放送番組紹介情報およびチャンネル設定情報を含む放送サービス提供情報を送信する技術が開示されている。移動局のディスプレイにテキスト表示された放送番組紹介情報をユーザが選択すると、移動局はチャンネル設定情報に基づいてエリアワンセグ放送番組を受信することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−166153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
携帯端末の現在位置で複数の放送波を受信可能である場合、携帯端末のユーザはその場所から移動しても引き続きエリアワンセグ放送を受信し続けられるか否かを確認できると便利である。この場合、特許文献1に記載の技術のように、放送サービスの受信可能範囲などの情報がテキストで提供されても、受信可能範囲の地名やランドマーク名などが分からなければ、ユーザは受信可能範囲に近づいているか遠ざかっているかを知ることができない。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、携帯型受信機において複数の放送サービスを受信可能であるとき、各放送サービスの受信可能範囲をユーザに直感的に把握させる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、複数の放送局から提供される複数の放送サービスを受信可能な携帯型受信機である。携帯型受信機は、複数の放送サービスをそれぞれ受信するチューナ部と、携帯型受信機の現在位置を特定する位置特定部と、複数の放送局の位置を示す情報を少なくとも含む放送サービス情報を記憶する放送サービス情報記憶部と、現在位置と各放送局との間の距離を放送サービス情報に基づいて算出する位置関係算出部と、各放送局のうち携帯型受信機との間の距離が近い方の放送局の放送サービスを優先的に提示する優先提示制御部と、を備える。
【0008】
この態様によると、携帯型受信機において複数の放送サービスを受信可能であるとき、放送サービスが再生される態様を観察することで、携帯型受信機のユーザはいずれの放送サービスを提供する放送局に近い位置にいるのかを直感的に把握することができる。
なお、「優先的に提示」とは、他の放送サービスよりもユーザがより見やすいかまたは目立つ態様で表示すること、または一方が他方よりも認知されやすい態様で提示することを言う。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、携帯型受信機で複数の放送サービスを受信可能であるとき、各放送サービスの受信可能範囲をユーザに直感的に把握させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る携帯型受信機を含む放送受信システムの概略構成図である。
【図2】管理サーバから携帯型受信機に提供される放送サービス情報の内容を示す表である。
【図3】一実施形態に係る携帯型受信機の構成を示すブロック図である。
【図4】携帯型受信機とワンセグ放送局との位置関係を簡潔に表した図である。
【図5】二つの放送エリアが重なっているときの画面レイアウトの決定方法を説明する図である。
【図6】携帯型受信機が放送局B1からB2まで移動するときの画面レイアウトの変化を説明する図である。
【図7】携帯型受信機が放送局B1からB2まで移動するときの画面レイアウトの変化を説明する図である。
【図8】携帯型受信機が放送局B1からB2まで移動するときの音量の変化を説明する図である。
【図9】(a)〜(d)は、4つの放送サービスを受信可能な場合に、放送局までの距離に応じて各放送サービスの表示サイズを変更する実施例を説明する図である。
【図10】(a)〜(d)は、各放送局の位置する方角を表示する実施例を説明する図である。
【図11】携帯型受信機が放送局B1からB2まで移動するときの各放送サービスの表示時間の変化を説明する図である。
【図12】複数の実施例を組み合わせた例を示す図である。
【図13】複数の放送エリアが重なっているときに携帯型受信機上でいずれかの放送サービスを優先表示する処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る携帯型受信機100を含む放送システム10の概略構成図である。
【0013】
携帯型受信機100は、ワンセグ放送を受信するアンテナ、受信したワンセグ放送から得られた放送コンテンツを再生するためのディスプレイ200およびスピーカ(図示せず)を少なくとも備える携帯端末である。また、携帯型受信機100は、GPS(Global Positioning System)衛星22から発せられる電波を受信するアンテナと、管理サーバ12と無線通信を行うアンテナとをさらに備える。無線通信は、LAN(Local Area Network)を利用してもよいし携帯電話網を利用してもよい。携帯型受信機100は、例えば、スマートフォン、携帯電話機、タブレット端末、ノートパソコン等であってもよい。
なお、以降の記述では、説明を簡単にするために、ワンセグ放送とこのワンセグ放送で放送される放送コンテンツとを総称してワンセグ放送サービス、または単に放送サービスと呼ぶことがある。
【0014】
図示しない放送設備に接続されたワンセグ放送局B1、B2は、放送局毎に予め設定されているチャンネル番号(周波数)を使って放送コンテンツを変調し放送波として発信する。ワンセグ放送局B1、B2は、それぞれの送信出力に応じて、数m〜数百mの受信可能範囲(以下、「放送エリア」と呼ぶ)A1、A2を有する。
【0015】
LAN等のネットワークを介して管理サーバ12と接続された無線通信装置14は、複数の放送局B1、B2をその中に含む通信範囲16内で携帯型受信機100と通信可能である。管理サーバ12は、無線通信装置14の通信範囲16内で提供されているワンセグ放送局B1、B2に関する情報(以下、「放送サービス情報」と呼ぶ)を保持している。管理サーバ12は、携帯型受信機100からの問い合わせに応じて放送サービス情報を無線通信装置14を介して提供するように構成されている。
【0016】
なお、以下では、携帯型受信機100が放送サービス情報を管理サーバ12から無線通信装置14を介して取得する場合について述べるが、放送サービス情報の取得方法はこれに限られず任意の方法を用いることができる。
【0017】
携帯型受信機100がワンセグ放送局の放送エリア内にある場合、携帯型受信機に組み込まれているワンセグ視聴用のアプリケーションを起動させると、アプリケーションが放送サービス情報に基づき自動的に選局を行い、ワンセグ放送サービスを受信しディスプレイ200に表示する。図1では、携帯型受信機100が放送エリアA1、A2の両方に含まれているので、ワンセグ放送局B1、B2の両方が放送する放送サービスを受信することができる。
【0018】
本実施形態では、図1のように携帯型受信機100が複数の放送局から放送サービスを受信可能である場合、受信機からの距離が最も近い放送局によって提供される放送サービスを、他の放送局から提供される放送サービスよりも優先的に提示する。ここで、「優先的に提示」とは、他のエリア放送サービスよりもユーザがより見やすいかまたは目立つ態様で表示すること、または一方が他方よりも認知されやすい態様で提示することを言う。優先的な提示の具体例は、図5以降を参照して後述する。
【0019】
図2は、管理サーバ12から携帯型受信機100に提供される放送サービス情報の内容を示す表50である。放送サービス情報には、無線通信装置14の通信範囲16内に位置する各ワンセグ放送局について、放送局名52、チャンネル54、周波数56、放送局の緯度および経度58、各放送局の放送エリア半径60、および放送時間62を少なくとも含む。
【0020】
図3は、本実施形態に係る携帯型受信機100の構成を示すブロック図である。この構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリその他のLSI、種々の装置で実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0021】
チューナ部104は、放送サービス情報取得部124で取得される放送サービス情報に基づき、受信可能なワンセグ放送の周波数にチューニングする。チューナ部104は、ワンセグ受信アンテナ102を介して受信したワンセグ放送に検波、復調、誤り訂正等の処理を施して放送信号を取得し、得られた放送信号をデマルチプレクサ106に送る。本実施形態では、複数のワンセグ放送波を同時に受信するために、アンテナ102およびチューナ部104組が2組以上(図では4組)設けられている。
【0022】
デマルチプレクサ106は、放送信号から放送サービス(放送コンテンツ)としての音声データおよび映像データを取り出し、それぞれ音声デコーダ108またはビデオデコーダ110に送る。
【0023】
音声デコーダ108は、取り出された音声データを復号し、得られた音声信号を音声出力部114に送る。音声出力部114は、送られた音声信号をスピーカ118で出力する。
【0024】
ビデオデコーダ110は、取り出された映像データを復号し、得られた映像信号を画像合成部112に送る。画像合成部112は、後述する優先提示制御部140からの指令に応じて、複数の放送信号から取り出された映像データのスケーリング、映像データの合成、必要に応じてメニュー表示の合成等を行い、画像出力部116に送る。画像出力部116は、送られた映像信号をディスプレイ200で表示する。
【0025】
放送サービス情報取得部124は、アンテナ122を介して管理サーバ12から放送サービス情報を取得する。取得した放送サービス情報は、記憶装置150に格納される。記憶装置150は、例えばハードディスク、DVD(Digital Versatile Disc)(登録商標)等の光学ディスク、SDカード(登録商標)などの不揮発性メモリなどが含まれるが、これら以外であってもよい。
【0026】
位置特定部128は、GPSアンテナ126で受信されるGPS信号に基づき、所定の時間間隔で携帯型受信機100の現在位置、例えば緯度および経度を特定する。
【0027】
位置関係算出部138は、位置特定部128によって特定された携帯型受信機100の現在位置と、放送サービス情報に含まれる各放送局の緯度および経度とを使用して、所定の時間間隔(例えば数十秒)で携帯型受信機100から各放送局までの距離を算出する。距離の算出に加えて、携帯型受信機100から見た各放送局の方角を求めてもよい。
【0028】
優先提示制御部140は、位置関係算出部138により求められた各放送局の距離に基づき、放送サービスの様々な優先提示態様を制御する。優先提示制御部140は、画面レイアウト決定部142、音声調整部144、透明度調整部146および切換指示部148を含む。
【0029】
画面レイアウト決定部142は、携帯型受信機100の現在位置から放送局までの距離の近い方の放送サービスを、距離の遠い方の放送サービスよりも大きく表示する画面レイアウトを決定する。決定された画面レイアウトの情報は、画像合成部112に送られる。
【0030】
また、画面レイアウト決定部142は、携帯型受信機100の現在位置から見て各放送局の位置する方角に相当する向きに、各放送局によって提供される放送サービスを表示するような画面レイアウトを決定してもよい。
【0031】
受信可能な放送サービスのうち、放送が休止中のものがある場合は、その放送サービスを表示すべき領域に放送開始時刻などの放送サービス情報を表示したり、またはその放送サービスに表示領域を割り当てないようにしてもよい。
【0032】
音声調整部144は、携帯型受信機100の現在位置から放送局までの距離の近い方の放送サービスの音声を、距離の遠い方の放送サービスの音声よりも大きな音量に決定する。決定された音量が音声出力部114に設定される。
【0033】
透明度調整部146は、携帯型受信機100の現在位置から放送局までの距離の近い方の放送サービスを、距離の遠い方の放送サービスよりも濃く表示する。より具体的には、ディスプレイ200の上面に配置されたフィルタ152の透明度を変化させることで、各放送サービスの濃さを変化させる。
【0034】
切換指示部148は、受信可能な放送サービスを順次切り換えて表示させる。より具体的には、切換指示部148は、携帯型受信機100の現在位置から放送局までの距離の近い方の放送サービスの表示時間が、距離の遠い方の放送サービスの表示時間よりもそれぞれ長くなるように、それぞれの表示時間を決定する。この表示時間の情報は画像合成部112に送られる。
【0035】
画像合成部112は、優先提示制御部140からの指令に基づき、複数の放送局から受信した放送サービスの映像信号を合成または切り換える。すなわち、画面レイアウト決定部142から送られた画面レイアウトにしたがって各放送局からの映像信号を合成したり、切換指示部148から送られた表示時間にしたがって、各放送局からの映像信号を切り換えたりする。
【0036】
音声出力部114は、音声調整部144によって設定された音量で各放送局から受信した放送サービスの音声信号を出力する。
【0037】
続いて、上記のように構成された携帯型受信機100の実施例について説明する。
【0038】
実施例1.
図4は、携帯型受信機100とワンセグ放送局B1、B2との位置関係を簡潔に表した図である。以下の説明では、各図面中の星印が携帯型受信機100の現在位置を表すものとする。
【0039】
携帯型受信機100は、放送局B1の放送エリアA1、放送局B2の放送エリアA2の重なる部分に位置しており、両方の放送サービスを受信可能であるとする。また、携帯型受信機100から放送局B1までの距離をL1、放送局B2までの距離をL2とする。位置関係算出部138は、所定の時間間隔でこれらの距離L1、L2を算出する。
【0040】
図5は、図4に示すように二つの放送エリアが重なっているときに、画面レイアウト決定部142による画面レイアウトの決定方法を説明する図である。
【0041】
図5は、携帯型受信機100のディスプレイ200内の、放送局B1から提供される放送サービスが表示される領域S1と、放送局B2から提供される放送サービスが表示される領域S2のレイアウトを示している。ディスプレイ200の表示領域全体の幅をW、高さをH、縦横比K=W/Hとする。また、領域S1の幅をw1、高さをh1とし、領域S2の幅をw2、高さをh2とする。画面レイアウト決定部142は、次式にしたがってこれらの値を算出する。
【0042】
(数1)
w1=W/(1+L1/L2)
h1=w1/K
w2=W/(1+L2/L1)
h2=w2/K
【0043】
上記のようにすると、携帯型受信機から放送局までの距離が近いほど、その放送局の放送サービスが表示される領域のサイズが大きくなり、放送局から離れるほど領域のサイズが小さくなる。この様子を図6を参照して説明する。
【0044】
図6は、図4に示すように二つの放送局B1、B2による二つの放送エリアA1、A2が存在する場合に、携帯型受信機100が放送局B1からB2まで移動したときの画面レイアウトの変化を説明する図である。図中の上段左側から下段右側に向けて時間の経過を表し、上下各段で点線よりも上側の地図202は、時刻t1〜t6における携帯型受信機100と放送局B1、B2および放送エリアA1、A2との位置関係を表し、点線よりも下側はそれぞれの位置関係にあるときのディスプレイ200内の画面レイアウトを表す。
【0045】
時刻t1では、携帯型受信機100は放送局B1の位置にある。この位置は放送エリアA2の外になり放送サービスS2を受信できないので、放送サービスS1のみがディスプレイ200の全体に表示される。
【0046】
時刻t2では、携帯型受信機100が放送エリアA1、A2の両方の中に入り、両方の放送サービスを同時に受信可能になる。数1にしたがって、各放送サービスに割り当てる領域のサイズが算出される。時刻t3〜t5にかけて、携帯型受信機100が放送局B1から放送局B2の方向に移動すると、携帯型受信機100から放送局B1までの距離が減少するとともに、放送局B2までの距離が増大する。これにつれて、ディスプレイ内で放送サービスS1の占める面積が小さくなるとともに、放送サービスS2の占める面積が大きくなる。
【0047】
時刻t6では、携帯型受信機100が放送局B2の位置にある。この位置は放送エリアA1の外になり放送サービスS1を受信できないので、放送サービスS2のみがディスプレイの全体に表示される。
【0048】
以上のように、携帯型受信機から放送局までの距離に応じて画面レイアウトを変更することによって、複数の放送サービスを受信可能な位置に携帯型受信機がある場合、ユーザは、ディスプレイのレイアウト変化を観察することで各放送サービスの放送エリアを直感的に把握することが可能になる。例えば、ユーザが携帯型表示機を持って移動中にディスプレイ内で放送サービスの表示サイズが小さくなっていく場合、ユーザは自分がその放送サービスの放送エリアから離れつつあることを認識することができる。したがって、その場に留まり放送サービスを見続けるか否かの判断材料とすることができる。また、放送サービスの表示がディスプレイから消えれば、ユーザはその放送サービスの放送エリア外に出たことを認識することができる。
【0049】
実施例2.
携帯型受信機から放送局までの距離に応じて放送サービスの画面レイアウトを変更する代わりに、放送サービスの表示の濃さを変更するようにしてもよい。携帯型受信機100のディスプレイに重ねられたフィルタ152は、印加される電圧に応じて透明度C(0≦C≦1)が変化するように構成されており、透明度調整部146からの指令に応じて動作する。なお、C=0が完全な不透明、C=1が完全な透明を意味する。
【0050】
図7は、二つの放送局B1、B2による二つの放送エリアA1、A2が存在する場合に、携帯型受信機100が放送局B1からB2まで移動したときの画面レイアウトの変化を説明する図である。図中の上段左側から下段右側に向けて時間の経過を表し、上下各段で点線よりも上側の地図202は、時刻t1〜t6における携帯型受信機100と放送局B1、B2および放送エリアA1、A2との位置関係を表し、点線よりも下側はそれぞれの位置関係にあるときのディスプレイ200内の画面レイアウトを表す。
【0051】
位置関係算出部138が放送局B1、B2までの距離L1、L2をそれぞれ求める。透明度調整部146は、値の小さい方をLminとし、距離比R1、R2をRn=Ln/Lmin(n=1、2)で計算する。そして、各放送サービスS1、S2の表示領域にかかるフィルタの透明度Cn=1/Rnを設定する。
【0052】
時刻t1では、携帯型受信機100は放送局B1の位置にある。この位置は放送エリアA2の外になり放送サービスS2を受信できないので、放送サービスS1のみがディスプレイ200の上半分に表示され、下半分には何も表示されない。
【0053】
時刻t2では、携帯型受信機100が放送エリアA1、A2の両方の中に入り、両方の放送サービスを同時に受信可能になる。放送サービスS1、S2に対応するフィルタの透明度C1、C2がそれぞれ求められる。時刻t2〜t3の間は、放送サービスS1の透明度C1=1であり、放送サービスS2に対応するフィルタの透明度は0から1まで増加する。したがって、放送サービスS2の映像が次第に濃くなっていくように見える。
【0054】
時刻t4になると、放送局B1、B2までの距離が等しくなるので、両方の放送サービスとも透明度C=1になる。時刻t5になると、今度は放送サービスS2の透明度C2=1になり、放送サービスS1の透明度は1から減少していく。時刻t6では、携帯型受信機100が放送局B2の位置まで移動し、放送エリアA1の外になり放送サービスS1を受信できないので、放送サービスS2のみがディスプレイ200の下半分に表示され、上半分には何も表示されない。
【0055】
以上のように、携帯型受信機から放送局までの距離に応じて放送サービスの表示の濃さを変更することで、複数の放送サービスを受信可能な位置に携帯型受信機がある場合、ユーザは各放送サービスの放送エリアを直感的に把握することが可能になる。
【0056】
実施例3.
携帯型受信機から各放送局までの距離に応じて放送サービスの表示の濃さを変えることに加えて、各放送サービスの音量を変更するようにしてもよい。
【0057】
図8は、音量を変える実施例を説明する図である。図中の時間軸、位置関係および表示画面は図7と同様である。さらに、図8には、各放送サービスS1、S2の音量のイメージを表す図形V1、V2も描かれている。
【0058】
音声調整部144は、音量の基準値をV0に対して、それぞれの放送サービスの音量V1、V2をVn=V0/Rn(n=1、2)で算出し、算出した音量を音声出力部114に設定する。音声出力部114は設定された音量V1、V2にしたがって音声を出力する。こうすると、時刻t2〜t5にかけて、携帯型受信機100が放送局B1からB2に向かうにつれて、放送サービスS1の音量V1が小さくなるとともに、放送サービスS2の音量V2が大きくなる。携帯型受信機が放送エリア外にあるときは、当然そのコンテンツの音量も0になる。これにより、ユーザは音量の変化からも各放送サービスの放送エリアを直感的に把握することが可能になる。
【0059】
上記のようにすると、放送サービスS1とS2の音声が重なり合い実質的に聞き取れなくなる。そこで、放送局までの距離が近い方の放送サービスの音声のみが出力されるようにしてもよい。図8の例では、時刻t1〜t3の間は、放送サービスS1の音声のみが出力される。放送局B1までの距離と放送局B2までの距離が等しくなる時刻t4以降は、放送サービスS2の音声のみが出力される。
【0060】
実施例4.
上記の実施例では、受信可能な放送サービスが二つである場合について説明した。続いて、図9(a)〜(d)を参照して、受信可能な放送サービスが4つである場合に、各放送局までの距離に応じて放送サービスの表示サイズを変更する方法について説明する。
【0061】
図9(a)は、携帯型受信機100が4つの放送エリアA1〜A4の重複する範囲に位置する様子を示す。位置関係算出部138は、図9(b)に示すように、各放送局B1〜B4までの距離L1〜L4をそれぞれ算出する。図9(c)に示すように、ディスプレイ200は、4つの放送サービスを同時に表示するために4つの領域に等分割される。各領域の対角線長さをX0とする。画面レイアウト決定部142は、各領域で表示する放送サービスの表示サイズを算出する。
【0062】
まず、画面レイアウト決定部142は、算出した距離L1〜L4の中で最も距離の短いものをLminとして選択する。続いて、放送サービスS1〜S4について、それぞれの距離比R1〜R4をRn=Ln/Lmin(n=1〜4)で計算する。さらに、各放送サービスS1〜S4の表示サイズの対角線長さX1〜X4を、Xn=X0/Rn(n=1〜4)で計算する。
【0063】
この結果、図9(d)に示すように、携帯型受信機100から放送局までの距離が最も近い放送サービスS1は最大サイズで表示され、距離が遠くなる放送サービスS2、S3、S4の順で小さなサイズで表示される。例えばL4=4・L1であれば、S4の表示サイズはS1の表示サイズの25%になる。
【0064】
以上のようにすることで、受信可能な放送サービスが二つの場合と同様に、ユーザは各放送サービスの表示サイズの変化を観察することで、各放送サービスの放送エリアを直感的に把握することが可能になる。例えば、ユーザが携帯型表示機を持って移動中にある放送サービスの表示サイズが次第に大きくなっていく場合、ユーザはその放送サービスの放送局に近づいていることを認識でき、また、放送サービスの表示サイズが次第に小さくなっていく場合、ユーザはその放送サービスの放送エリアから離れつつあることを認識することができる。
【0065】
なお、受信可能な放送サービスが三つである場合は、ディスプレイ200を分割した領域の一つをブラックアウトにして使用すればよい。また、上記と同様の手法で、ディスプレイ200を6分割、8分割等にすることで、同時に表示可能な放送サービス数を増やしてもよい。
【0066】
実施例5.
実施例4では、ユーザは放送サービスの表示サイズの変化から放送局に近づいているか遠ざかっているかを認識することができるが、各放送局の大まかな方角が分かると、特定の放送局に向けて移動したい場合などに便利である。
【0067】
図10(a)〜(d)は、各放送局の位置する方角を合わせて表示する実施例を説明する図である。図10(a)は、図9(a)と同様に、携帯型受信機100が4つの放送エリアA1〜A4の重複する範囲に位置する様子を示す。
【0068】
位置関係算出部138は、図10(b)に示すように、各放送局B1〜B4までの距離L1〜L4をそれぞれ算出する。位置関係算出部138はさらに、図示しない電子コンパスおよびGPS情報をもとにして、携帯型受信機100を中心とした各放送局B1〜B4の方角を、北向きを0度とした時計回りの角度θ1〜θ4として算出する。なお、ディスプレイ200には電子コンパスによって北の方向が表示され、携帯型受信機100のユーザはこれを見てディスプレイ200の上側が北向きになるような状態で受信機を保持するものとする。
【0069】
図10(c)に示すように、ディスプレイ200は、4つの放送サービスを同時に表示するために4つの領域に等分割される。画面レイアウト決定部142は、実施例4と同様にして、各領域で表示する放送サービスの表示サイズを算出する。さらに、画面レイアウト決定部142は、図10(d)に示すように、画面中心から見て各放送局の位置する方向の領域に、対応する放送サービスの表示S1〜S4を配置する。各放送局の位置する方向を表す矢印Y1〜Y4を合わせて表示してもよい。
【0070】
各放送局の位置する方向が対角線方向にない場合や、同方向に二つの放送局が存在する場合には、図10(b)で求めたθnの小さい順に、右上、右下、左下、左上の領域という順番で時計回りに放送サービスを表示してもよい。
【0071】
このように、実施例5では、携帯型受信機100から見た各放送サービスの放送局の方角を求め、この方角に合わせて放送サービスや矢印をディスプレイ200内に表示するようにした。これにより、ユーザは、どの方向に移動すれば放送サービスの受信感度がよくなるかを直感的に理解することができる。
【0072】
実施例6.
複数の放送サービスをディスプレイに同時に表示する代わりに、放送サービスを交互に切り換えて表示するようにしてもよい。この場合、携帯型受信機100から放送局までの距離が近い方の放送サービスを長く、距離が遠い方の放送サービスを短い時間表示することで、放送エリアをユーザに把握させることができる。
【0073】
図11は、このような実施例を示す。図11の左側の地図210、212、214は、携帯型受信機100の現在位置と、放送局B1、B2および放送エリアA1、A2との位置関係を示す。タイムテーブル220、222、224は、地図210、212、214にそれぞれ対応する、放送サービスS1、S2の切換の様子を示す図である。この実施例では、二つの放送サービスS1、S2を繰り返して表示する周期Tが一定であり、切換指示部148が、携帯型受信機100から各放送局までの距離に応じて、この周期T内で各放送サービスを表示する時間を設定する。
【0074】
地図210に示す位置では、携帯型受信機100から放送局B1までの距離の方が近いので、対応する放送サービスS1の表示時間が放送サービスS2の表示時間よりも長く設定される。地図212に示す位置では、放送局B1までの距離と放送局B2間での距離が等しいので、放送サービスS1とS2の表示時間が等しく設定される。地図214に示す位置では、携帯型受信機100から放送局B2までの距離の方が近いので、対応する放送サービスS2の表示時間が放送サービスS1の表示時間よりも長く設定される。
【0075】
実施例7.
上述した各実施例は互いに組み合わせて使用することができる。図12は、その一例を示す。図11と同様に、地図210、212、214は、携帯型受信機100の現在位置と、放送局B1、B2および放送エリアA1、A2との位置関係を示す。タイムテーブル220、222、224は、地図210、212、214にそれぞれ対応する、放送サービスS1、S2の優先表示時間の切換の様子を示す。画面240、242、244は、ディスプレイ200内の放送サービスS1、S2の表示態様を示す。
【0076】
この例では、切換指示部148が、受信可能な放送サービスのそれぞれに対して優先表示時間を設定する。優先表示時間は、携帯型受信機100から放送局までの距離の近い方が距離の遠い方よりも長く設定される。すなわち、地図210に示す位置では、携帯型受信機100から放送局B1までの距離の方が近いので、対応する放送サービスS1の優先表示時間が放送サービスS2よりも長く設定される。地図212に示す位置では、放送局B1までの距離と放送局B2間での距離が等しいので、放送サービスS1とS2の優先表示時間が等しく設定される。地図214に示す位置では、携帯型受信機100から放送局B2までの距離の方が近いので、対応する放送サービスS2の優先表示時間が放送サービスS1よりも長く設定される。
【0077】
それぞれの優先表示時間中では、優先表示中の放送サービスのサイズおよび濃さが、他方の放送サービスよりも大きくかつ濃く表示される。さらに、優先表示中の放送サービスの音量が、他方の放送サービスよりも大きく再生される。
【0078】
図13は、複数の放送エリアが重なっているときに、携帯型受信機100上でいずれかの放送サービスを優先表示する処理のフローチャートである。この処理は、所定の時間間隔で繰り返し実行される。
【0079】
放送サービス情報取得部134は、管理サーバ12から、現在位置の付近で受信可能な放送局の放送サービス情報を取得する(S10)。位置特定部128は、携帯型受信機100の現在位置を取得する(S12)。位置関係算出部138は、携帯型受信機100と各放送局の間の距離をそれぞれ算出する(S14)。優先提示制御部140は、算出された距離に応じて、画面のレイアウトを決定する(S16)。画面出力部は、決定されたレイアウトにしたがって、各放送局の放送サービスを合成して表示する(S18)。
【0080】
以上説明したように、本実施形態によれば、携帯型受信機において複数の放送サービスを受信可能であるとき、放送サービスが再生される画面を観察することで、携帯型受信機のユーザは、いずれの放送サービスを提供する放送局に近い位置にいるのかを直感的に把握することができる。
【0081】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。これらの実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0082】
位置特定部128によって特定された現在位置周辺の予め定められた範囲(例えば、現在位置を中心に1km四方など)の地図データを管理サーバ12または記憶装置150などから取得する地図取得部(図示せず)と、ディスプレイ200に表示される範囲内に位置する放送局の放送エリアを図形化し、これをその範囲の地図データに重畳させて作成した地図画像をディスプレイ200に表示する地図表示部(図示せず)とをさらに備えてもよい。これにより、実際の放送サービスの範囲および放送局の位置を詳細に知ることができる。
【0083】
放送サービス情報には、各ワンセグ放送局の特色、放送中の番組内容などの追加情報が含まれていてもよい。放送エリアに加えて、これらの情報が地図画像に重畳されて表示されてもよい。
【0084】
実施の形態では、携帯型受信機でワンセグ放送を受信することを説明した。しかし、本発明はワンセグ放送の受信に限られず、フルセグメント放送や12セグメント放送などを受信する場合にも適用することができる。また、将来実施される可能性がある二つ以上のセグメントを利用する放送を受信する場合にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0085】
10 放送システム、 12 管理サーバ、 50 放送サービス情報、 100 携帯型受信機、 104 チューナ部、 112 画像合成部、 124 放送サービス情報取得部、 128 位置特定部、 138 位置関係算出部、 140 優先提示制御部、 142 画面レイアウト決定部、 144 音声調整部、 146 透明度調整部、 148 切換指示部、 150 記憶装置、 200 ディスプレイ、 A 放送エリア、 B 放送局、 S 放送サービス。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の放送局から提供される複数の放送サービスを受信可能な携帯型受信機であって、
前記複数の放送サービスをそれぞれ受信するチューナ部と、
前記携帯型受信機の現在位置を特定する位置特定部と、
前記複数の放送局の位置を示す情報を少なくとも含む放送サービス情報を記憶する放送サービス情報記憶部と、
前記現在位置と各放送局との間の距離を前記放送サービス情報に基づいて算出する位置関係算出部と、
前記各放送局のうち前記携帯型受信機との間の前記距離が近い方の放送局の放送サービスを優先的に提示する優先提示制御部と、
を備えることを特徴とする携帯型受信機。
【請求項2】
前記優先提示制御部は、前記距離が近い方の放送局の放送サービスの映像を、前記距離が遠い方の放送局の放送サービスの映像よりも表示部に大きく表示されるように制御することを特徴とする請求項1に記載の携帯型受信機。
【請求項3】
前記優先提示制御部は、前記距離が近い方の放送局の放送サービスの映像を、前記距離が遠い方の放送局の放送サービスの映像よりも表示部に濃く表示されるように制御することを特徴とする請求項1または2に記載の携帯型受信機。
【請求項4】
前記優先提示制御部は、前記距離が近い方の放送局の放送サービスの音声を、前記距離が遠い方の放送局の放送サービスの音声よりも大きな音量となるように制御することを特徴とする請求項2または3に記載の携帯型受信機。
【請求項5】
前記優先提示制御部は、表示部に表示される画面の中心に対して、前記携帯型受信機の現在位置から見て各放送局の位置する方角に相当する向きに、各放送局によって提供される放送サービスの映像を表示することを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載の携帯型受信機。
【請求項6】
前記優先提示制御部は、前記距離が近い方の放送局の放送サービスの提示時間を、前記距離が遠い方の放送局の放送サービスの提示時間よりも長くなるように、前記複数の放送サービスを交互に切り換えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の携帯型受信機。
【請求項7】
複数の放送局から提供される複数の放送サービスを受信可能な携帯型受信機に用いられる放送受信方法であって、
前記携帯型受信機の現在位置を特定し、
前記複数の放送局の位置を示す情報を少なくとも含む放送サービス情報を記憶し、
前記現在位置と各放送局との間の距離を前記放送サービス情報に基づいて算出し、
前記各放送局のうち前記携帯型受信機との間の前記距離が近い方の放送局の放送サービスを優先的に提示する放送受信方法。
【請求項1】
複数の放送局から提供される複数の放送サービスを受信可能な携帯型受信機であって、
前記複数の放送サービスをそれぞれ受信するチューナ部と、
前記携帯型受信機の現在位置を特定する位置特定部と、
前記複数の放送局の位置を示す情報を少なくとも含む放送サービス情報を記憶する放送サービス情報記憶部と、
前記現在位置と各放送局との間の距離を前記放送サービス情報に基づいて算出する位置関係算出部と、
前記各放送局のうち前記携帯型受信機との間の前記距離が近い方の放送局の放送サービスを優先的に提示する優先提示制御部と、
を備えることを特徴とする携帯型受信機。
【請求項2】
前記優先提示制御部は、前記距離が近い方の放送局の放送サービスの映像を、前記距離が遠い方の放送局の放送サービスの映像よりも表示部に大きく表示されるように制御することを特徴とする請求項1に記載の携帯型受信機。
【請求項3】
前記優先提示制御部は、前記距離が近い方の放送局の放送サービスの映像を、前記距離が遠い方の放送局の放送サービスの映像よりも表示部に濃く表示されるように制御することを特徴とする請求項1または2に記載の携帯型受信機。
【請求項4】
前記優先提示制御部は、前記距離が近い方の放送局の放送サービスの音声を、前記距離が遠い方の放送局の放送サービスの音声よりも大きな音量となるように制御することを特徴とする請求項2または3に記載の携帯型受信機。
【請求項5】
前記優先提示制御部は、表示部に表示される画面の中心に対して、前記携帯型受信機の現在位置から見て各放送局の位置する方角に相当する向きに、各放送局によって提供される放送サービスの映像を表示することを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載の携帯型受信機。
【請求項6】
前記優先提示制御部は、前記距離が近い方の放送局の放送サービスの提示時間を、前記距離が遠い方の放送局の放送サービスの提示時間よりも長くなるように、前記複数の放送サービスを交互に切り換えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の携帯型受信機。
【請求項7】
複数の放送局から提供される複数の放送サービスを受信可能な携帯型受信機に用いられる放送受信方法であって、
前記携帯型受信機の現在位置を特定し、
前記複数の放送局の位置を示す情報を少なくとも含む放送サービス情報を記憶し、
前記現在位置と各放送局との間の距離を前記放送サービス情報に基づいて算出し、
前記各放送局のうち前記携帯型受信機との間の前記距離が近い方の放送局の放送サービスを優先的に提示する放送受信方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−257118(P2012−257118A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129496(P2011−129496)
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】
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