説明

携帯型情報読取端末

【課題】外部装置と無線通信する機能を備えたメイン基板が他の機能基板とも通信することが可能となる構成を、簡単な構成で且つ小形に実現することができる携帯型情報読取端末を提供する。
【解決手段】メイン基板2には、外部のプリンタにデータを送信するためのBluetooth通信回路8が搭載されている。メイン基板2は、キーボード基板3または表示基板4との間でデータ通信する場合は、Bluetooth通信回路8を通じてデータ通信するようになっている。この場合、メイン基板2は、外部のプリンタにデータを送信する場合は、切替回路13によりゲインの大きなチップアンテナ9を使用し、キーボード基板3または表示基板4との間でデータ通信する場合は、ゲインの小さなパターンアンテナ10を使用するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部装置と無線通信を行なう無線通信手段を備えた携帯型情報読取端末に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物流(ロジスティクス)における商品管理方法の一つとして、各商品の搬入・搬出・仕分け・在庫管理・社内移動・売上発生時点等において、あらかじめ商品・値札・カード・外箱等に記載又は貼付されているバーコード等の情報コードを、光学情報読取装置を用いて読み取り、その情報をホスト装置に入力し、入力した情報を解析してホスト装置内に構築されたデータベースを逐次更新することにより、商品管理を効率的に行う技術が実用化されている。このようにバーコード等の情報コードを利用した商品管理方法によれば、情報コードとして記録された商品情報を、光学情報読取装置を介して瞬時にかつ正確に読み取ってホスト装置に入力することができるので、入力作業時間の短縮や、入力作業の軽減、誤入力の低減等を図ることができる。
【0003】
また、当初、ホスト装置等にケーブルを介して接続された単なる入力装置であった光学情報読取装置は、小型化・軽量化・高機能化が進むことによって、自由に持ち運びが可能な単体の装置として構成されるようになってきた。つまり、読み取った情報コードを装置内に一旦蓄積しておき、その後、ホスト装置へまとめて無線通信により出力可能に構成することによって、ケーブルを介してホスト装置に接続されない形態のものが用いられるようになったのである。このような装置によれば、ホスト装置から離れた任意の場所で読み取りが行えるので、作業性の大幅な向上を図ることができる。
【特許文献1】特開平10−301668号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このように近年の光学情報読取装置の機能が複雑化、高度化した結果、1枚の基板で全ての処理を実行することが困難となることから、複数の基板に機能を分割することが行なわれているものの、基板間をケーブルで接続しなければならず、基板の枚数が多くなると、基板の配置が困難となる。
【0005】
このような問題を解決するために、特許文献1では、携帯情報端末装置の機能を複数のカード(メイン基板と所定の機能に特化した機能基板)に分散し、それらのカード間を光通信で通信することによりカードの配置の自由化を高めることを提案している。
しかしながら、メイン基板に、ホスト装置と通信するための無線通信機能に加えて機能基板と通信するための光通信機能を新たに搭載することは、メイン基板の構成が複雑化してしまい、メイン基板の小形化という要請に反するものである。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、外部装置と無線通信する機能を備えたメイン基板が他の機能基板とも通信することが可能となる構成を、簡単な構成で且つ小形に実現することができる携帯型情報読取端末を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明によれば、メイン基板に搭載された第1の無線通信手段により外部装置と通信することができる。ここで、制御手段は、機能基板と通信する必要が生じたときは、第1の無線通信手段により機能基板の第2の無線通信手段と通信する。従って、基板の配置の自由化を高めながら、特別な手段を設けることなく機能基板と通信することができるので、構成の簡単化を図ることができる。
【0008】
請求項2の発明によれば、機能基板の第2の無線通信手段と通信する場合は、外部装置と通信する場合と比較して小出力でするので、省電力を図ることができると共に外部への影響を防止できる。
請求項3の発明によれば、第2の無線通信手段のアンテナとして、回路パターンの一部となる銅箔パターンを利用して形成するようにしたので、アンテナの構成を簡単化することができる。
【0009】
請求項4の発明によれば、入力操作を行なうためのキーボード用の機能基板の配置の自由化を高めることができる。
請求項5の発明によれば、出力用の表示器用の機能基板の配置の自由化を高めることができる。
【0010】
請求項6の発明によれば、本発明をBluetoothの通信機能を備えた携帯型情報読取端末に適用することができる。
請求項7の発明によれば、本発明をRFIDの通信機能を備えた携帯型情報読取端末に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を携帯型コードリーダに適用した一実施例について図面を参照して説明する。
図1は、携帯型コードリーダの構成を概略的に示すブロック図である。この図1において、携帯型コードリーダ(携帯型情報読取端末に相当)1内には、メイン基板2、キーボード基板(機能基板に相当)3、表示基板(機能基板に相当)4が配置されており、これらの基板は、後述するように互いにBluetooth(登録商標)でデータ通信するようになっている。
【0012】
メイン基板2は、制御回路(制御手段に相当)5、光学情報読取回路6、無線モジュール7を構成するBluetooth通信回路(第1の無線通信手段に相当)8、チップアンテナ9及びパターンアンテナ10、電源回路11、二次電池12から構成されている。パターンアンテナ10は、回路パターンの一部として銅箔パターンを利用して形成されている。Bluetooth通信回路8は、マスタに設定されていると共に、使用するアンテナを切替回路13によりチップアンテナ9とパターンアンテナ10との何れかに切替可能となっている。これらの切替回路13、チップアンテナ9、パターンアンテナ10から出力切替手段が構成されている。パターンアンテナ10のゲインは、その特性上、チップアンテナ9のゲインよりも小さくなっている。
【0013】
キーボード基板3は、キーボード14、キーボードデコード回路15、Bluetooth通信回路(第2の無線通信手段に相当)16、パターンアンテナ17を備えて構成されている。Bluetooth通信回路16は、スレーブに設定されている。
表示基板4は、表示装置(入力手段に相当)18、表示制御回路19、Bluetooth通信回路20、パターンアンテナ21から構成されている。Bluetooth通信回路(第2の無線通信手段に相当)20は、スレーブに設定されている。
【0014】
メイン基板2の制御回路5は、キーボード基板3のキーボードデコード回路15からBluetooth通信にて送られてきたキーボード情報に基づいてコードの読取りが指示されたと判断したときは、照明用LED22を点灯した状態で、光学情報読取回路6によるCCD23からの光学情報を読取ったり、外部機器とのBluetooth通信など必要な処理を実施したりする。また、メイン基板2の制御回路5は、表示装置18の表示内容の更新にあたり、表示基板4の表示制御回路19に対してBluetooth通信にて必要な情報を送る。
【0015】
光学情報読取回路6は、商品のバーコードを読取り、内部に蓄積されたバーコード−価格対比表を使用して売上を求めて売上伝票を図示しない外部装置としてのプリンタに発行させる。このプリンタとの通信にBluetoothを用いている。
キーボード基板3及び表示基板4のパターンアンテナ10は、メイン基板2のチップアンテナ9またはパターンアンテナ10との間でBluetooth無線による通信が可能となっている。
【0016】
図2は、メイン基板2、キーボード基板3、表示基板4を概略的に示す斜視図である。この図2において、各基板2〜4の裏面(電子部品の実装面の反対面)にはBluetooth通信回路8,16,20がそれぞれ搭載されていると共に、当該Bluetooth通信回路8,16,20と接続されたパターンアンテナ10,15,21が回路パターンでそれぞれ形成されている。また、メイン基板2には、Bluetooth通信回路8と接続されたチップアンテナ9が実装されている。
【0017】
ここで、メイン基板2、キーボード基板3、表示基板4の各Bluetooth通信回路8,16,20には、通信相手を特定するために以下の通信設定情報が設定されている。
(1)接続対象機器のBluetoothデバイス名
(2)接続対象機器のBluetoothアドレス名
メイン基板2、キーボード基板3、表示基板4にはピンコネクタ24が実装されており、それらの基板2〜4が有する電源端子間はピンコネクタ24に接続されたケーブル25で接続されている。これにより、メイン基板2の電源回路11から他の基板3,4に給電可能となっている(図1参照)。
【0018】
次に上記構成の作用について説明する。
図3は、メイン基板2の制御回路5による起動処理を示している。この図3において、携帯型コードリーダ1の電源をオンすると、メイン基板2、キーボード基板3、表示基板4がそれぞれ起動処理を実行する。
【0019】
図3は、メイン基板2の起動処理を示すフローチャートである。この図3に示すように、メイン基板2の制御回路5は、無線モジュール7のアンテナをゲインの低いパターンアンテナ10に設定してから(S1)、Bluetooth無線の相手局を表示基板4に設定すると共に(S2)、表示基板4に表示データを送信する(S3)。これにより、表示基板4に対してBluetoothにより表示データが送信されるので、表示基板4の表示装置18には初期画面が表示される。
【0020】
次に、Bluetooth無線の相手局をキーボード基板3に設定し(S4)、キーボード操作があるまで待機する(S5)。
ユーザによりキーボード操作が行われると(S5:YES)、その内容を確認し(S6)、バーコード読取以外の処理を指示するものである場合には(S6:NO)、その内容に基づいた処理を実施し(S13)、再びキーボード操作待機状態となる(S5)。ユーザによりバーコード読取処理の指示が行なわれたことを確認した場合には(S6:YES)、商品のバーコード読取を行ってから(S7)、無線の相手局を表示基板4に設定し(S8)、読取データおよび売上データを表示基板4に送信する(S9)。これにより、表示装置18には、読取データおよび売上データが表示される。
【0021】
次に、無線の相手局をキーボード基板3に設定し(S10)、キーボード操作を待つ(S11)。ユーザによりキーボード操作が行われたことを確認した場合に(S11:YES)、データプリント以外の操作であったときは(S12:NO)、追加読取としてステップS7に戻る。ユーザによりデータプリントの指示が行なわれたことを確認した場合には(S12:YES)、アンテナをゲインの高いチップアンテナ9に設定し(S14)、相手局をプリンタに設定した上で(S15)、プリンタに売上データを送信する(S16)。この場合、この売上データはブロック単位で送信され、ブロック送信ごとに送信データが終了したかどうかの確認を行うようになっている(S17)。送信データが終了していない場合には(S17:NO)、キーボード確認のための規定のインターバル(たとえば0.1秒)になったかどうかを確認し(S18)、インターバルに達していない場合には(S19:NO)、ステップS16に戻って次のブロックを送信する。
【0022】
規定のインターバルに達した場合には(S18:YES)、アンテナをゲインの低いパターンアンテナ10に設定すると共に(S19)、無線の相手局をキーボード基板3に設定してから(S20)、キーボード操作があったかどうかの確認を行う(S21)。キーボード操作が確認されなかった場合には(S22:NO)、ステップS14に戻ってプリンタへの売上データの送信を継続する。キーボード操作が行われたことを確認した場合には(S21:YES)、その内容を確認し(S22)、プリンタへの送信を停止するものでない場合には(S22:NO)、その内容に基づいた処理を実施してから(S26)、ステップS14に戻る。プリンタへの送信停止の指示を受けた場合には(S22:YES)、アンテナをゲインの高いチップアンテナ9に設定すると共に(S23)、無線の相手局をプリンタに設定し(S24)、プリンタの紙送りなどのプリンタ終了処理を行い(S25)、ステップS1に戻る。ステップS17にて送信データ終了であった場合にも、「YES」と判断してステップS25の処理に移行する。
以上の動作により、メイン基板2は、キーボード基板3及び表示基板4との間でBluetooth通信により入力データまたは出力データの入出力が行なわれる。
【0023】
このような実施例によれば、メイン基板2が有するBluetooth通信機能を利用して他の機能基板であるキーボード基板3及び表示基板4とBluetooth通信によりデータの入出力を行なうようにしたので、複数の基板間を光通信によりデータ通信を実行する構成のものと違って、メイン基板2の構成が複雑化することなく実施することができる。
【0024】
また、メイン基板2が外部装置であるプリンタと通信するときは通常出力で行ない、携帯型コードリーダ1内部のキーボード基板3または表示基板4と通信するときは通常出力で行なうようにしたので、Bluetoothによる通信が他のBluetooth通信の障害となってしまうことを防止できる。
【0025】
さらに、このようにBluetooth通信の出力を切替える手段として、チップアンテナ9とパターンアンテナ10とを切替えるようにしたので、ソフトにより一つのアンテナのゲインを切替える構成のものと違って、ソフトが複雑化することなく容易に実施することができる。
【0026】
しかも、Bluetooth通信による情報伝達は無線によるものであるので、機能基板を任意の位置へ実装することが可能であり、形状への制約が無く、電源用のピンコネクタ24の接続だけですむ。また、メイン基板2のアンテナのうち外部機器であるプリンタとの通信用として、ゲインの高いチップアンテナ9を使用するが、キーボード基板3及び表示基板4のアンテナはゲインが低くてもよいことから、パターンアンテナ10を使用することによってコストを抑制することができる。
【0027】
本発明は、上記実施例に限定されることなく、次のように変形または拡張できる。
メイン基板に搭載されているパターンアンテナ10を省略し、チップアンテナ9に対する出力を切替えるようにしてもよいし、チップアンテナ9を省略し、パターンアンテナ10に対する出力を切替えるようにしてもよい。
無線通信手段としてBluetooth通信回路に代えて、メイン基板の外部との通信方法がRFIDの場合は、メイン基板をRFID親局に設定し、機能基板にRFID子局に設定し、それらの間でRFIDタグ通信を行なうようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施例における携帯型コードリーダの電気的構成を示すブロック図
【図2】メイン基板、表示基板、キーボード基板を示す斜視図
【図3】メイン基板の起動処理を示すフローチャート(その1)
【図4】メイン基板の起動処理を示すフローチャート(その2)
【符号の説明】
【0029】
図面中、1は携帯型コードリーダ(携帯型情報読取端末)、2はメイン基板、3はキーボード基板(機能基板)、4は表示基板(機能基板)、8はBluetooth通信回路(第1の無線通信手段)、9はチップアンテナ(出力切替手段)、10はパターンアンテナ(出力切替手段)、13は切替回路(出力切替手段)、16はBluetooth通信回路(第2の無線通信手段)、20はBluetooth通信回路(第2の無線通信手段)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部装置と無線通信を行なう第1の無線通信手段を備えた携帯型情報読取端末であって、
前記第1の無線通信手段及び当該第1の無線通信手段を含む全体の動作を制御する制御手段を有したメイン基板と、
前記制御手段に対してデータを出力する出力手段または前記制御手段が出力したデータを入力する入力手段などの所定の機能手段を有した機能基板と、
この機能基板に設けられ、前記機能手段と通信する第2の無線通信手段とを備え、
前記制御手段は、前記第1の無線通信手段を通じて前記第2の無線通信手段と通信することにより前記機能手段との間でデータを入出力することを特徴とする携帯型情報読取端末。
【請求項2】
前記第1の無線通信手段は、通信出力を大出力とそれより小さな小出力とに切替可能な出力切替手段を備え、
前記制御手段は、前記外部装置と通信する場合は大出力で、前記機能基板の前記第2の無線通信手段と通信する場合は小出力となるように前記出力切替手段を制御することを特徴とする請求項1記載の携帯型情報読取端末。
【請求項3】
前記第2の無線通信手段は、前記機能基板上に回路パターンの一部として銅箔パターンで形成されたアンテナを備えていることを特徴とする請求項1または2記載の携帯型情報読取端末。
【請求項4】
前記出力手段は、入力操作を行なうためのキーボードであることを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の携帯型情報読取端末。
【請求項5】
前記入力手段は、液晶パネルやエレクトロルミネセンスパネルなどの表示パネルを有する表示器であることを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載の携帯型情報読取端末。
【請求項6】
前記第1の無線通信手段は、Bluetooth(登録商標)のマスタに設定され、
前記第2の無線通信手段は、Bluetoothのスレーブに設定されていることを特徴とする請求項1ないし5の何れかに記載の携帯型情報読取端末。
【請求項7】
前記第1の無線通信手段は、RFIDの親局に設定され、
前記第2の無線通信手段は、RFIDの子局に設定されていることを特徴とする請求項1ないし5の何れかに記載の携帯型情報読取端末。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−114952(P2007−114952A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−304429(P2005−304429)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】