説明

携帯型測距装置

【課題】 測定対象物までの距離とともに被測定面の傾斜を広範囲に亘って判定すること。
【解決手段】 対物レンズ18を介して測定対象物に向けて測距光を出射し、その反射光を対物レンズ20を介して受光素子22で受光し、測距光と反射光間の位相差を基に測定対象物までの距離を演算部24で演算し、筐体38にも受けた基準面42の当接する被測定面の傾斜を0〜360°の範囲で傾斜計14で測定し、この測定値を演算部24に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯型測距装置に係り、特に、距離測定とともに傾斜角を測定するに好適な携帯型測距装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯型測距装置として、例えば、測定に適した目標物(光をある程度反射できる目標物)がある場合は、ノンプリズム型の測距装置として、また測定に適した目標物がない場合は、目標物に設置した反射ターゲットを利用するプリズム型の測距装置として測距可能にしたものが提案されている。下記特許文献では、電気気泡管を用いて装置本体の水平を検出し、装置本体が水平になっているときには、測定対象物までの水平距離を測定し、装置本体が傾斜したときには電気気泡管で傾斜角を求め、この傾斜角と測定対象までの斜距離を基に測定対象までの水平距離を測定することができる。
【0003】
【特許文献1】特開2002−39748号公報(第3頁〜第5頁、図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来技術においては、傾斜角を電気気泡管を用いて検出しているため、測定範囲が狭く、基準平面が大きく傾斜したときには傾斜角を正確に測定することができず、したがって正確な斜距離を求めることができないことがある.さらに、従来技術においては、装置本体の鉛直に対する傾斜は測定できるものの、装置本体が設置された平面自体(被測定面)の傾斜は測定できず、使い勝手が悪いという問題もあった。
【0005】
本発明の目的は、測定対象物までの距離を測定できるとともに被測定面の傾斜角を広範囲に亘って測定することができる携帯型測距装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、光軸を測定対象物(測定対象物に設置した反射プリズムや反射板といった反射ターゲットも含む)に向けて測距光を出射してその反射光を受光し、出射した測距光と受光した反射光との位相差を基に前記測定対象物までの距離を測定する光波距離計と、前記光波距離計を内蔵するとともに、鉛直軸に直交し前記光波距離計の光軸(送光側の光軸および受光側の光軸)と平行で被測定面に当接可能な基準面を少なくとも有する筐体と、前記筐体に対し前記光軸の前後方向に傾動自在に支持された振り子を有し、前記筐体が傾斜したときに前記振り子の傾動に応じて前記基準面の傾斜角を電気的に測定するデジタル傾斜計とを備えた構成とした。
【0007】
(作用)光波距離計を用いて測定対象物に向けて測距光を出射し、測定対象物で反射した戻り光を受光し、測距光と戻り光の位相差を基に測定対象物までの距離を測定する。筐体が傾斜している場合は、振子の傾動に応じて基準面の傾斜を電気的に測定する傾斜計により光波距離計の傾斜が求まり、斜距離と同時に水平距離も求まる。また、基準面を被測定面に当接させれば、傾斜計により被測定面の傾斜がデジタル表示される。
【0008】
請求項2に係る発明は、光軸を測定対象物(測定対象物に設置した反射プリズムや反射板といった反射ターゲットも含む)に向けて測距光を出射してその反射光を受光し、出射した測距光と受光した反射光との位相差を基に前記測定対象物までの距離を測定する光波距離計と、前記光波距離計を内蔵するとともに、鉛直軸に直交し前記光波距離計の光軸と平行で被測定面に当接可能な第1の基準面と前記第1の基準面に直交し被測定面に当接可能な第2の基準面とを有する筐体と、前記筐体に対し前記光軸前後方向に傾動自在に支持された第1の振り子を有し、前記筐体が傾斜したときに前記第1の振り子の傾動に応じて前記第1の基準面の傾斜角を電気的に測定するデジタル傾斜計と、前記筐体に対し傾動自在に支持された第2の振り子を有し、前記筐体が傾斜したときに前記第2の掘り子の傾動に応じて前記第2の基準面の傾斜角を電気的に測定する第2の傾斜計とを備えた構成とした。
【0009】
(作用)光波距離計を用いて測定対象物に向けて測距光を出射し、測定対象物で反射した戻り光を受光し、測距光と戻り光の位相差を基に測定対象物までの距離を測定する。筐体が傾斜している場合は、振子の傾動に応じて基準面の傾斜を電気的に測定する傾斜計により光波距離計の傾斜が求まり、斜距離と同時に水平距離も求まる。また、第1の基準面または第2の基準面を被測定面に当接させれば、第1の傾斜計または第2の傾斜計により被測定面の傾斜がデジタル表示される。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1または2の携帯型測距装置において、前記傾斜計を、コイルを巻回したコアを吊り線で筐体から懸吊して構成した振り子と、前記コイルを挟んで前記振り子の傾動方向に対向配置した水久磁石と、筐体が傾斜したときの前記振り子の位置変化に相当する電流を出力する位置検出器と、前記位置検出器の出力が一定となるように前記コイルに電流を出力する作動増幅器とを備え、該コイルと前記磁石間での電磁気作用により振り子が筐体内の一定位置に保持され、このときの前記コイルに流れる電流を傾斜角として検出しデジタル表示するように構成したものである。
【0011】
(作用)筐体(の基準面)が傾斜しても振り子は常に位置検出器による平衡位置に保持されるので、基準面の当接する被測定面の傾斜角0〜360°に亘って測定することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上の説明から明らかなように、請求項1に係る発明によれば、測定対象物までの距離およびコンパクトな筐体に設けた基準面の当接する被測定面の傾斜をそれぞれ簡単に測定することができる。特に、室内の縦横高さの寸法測度や壁や天井や床の傾き判定に非常に便利で、大工さんの作業の大幅な効率化を期待できる。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、測定対象物までの距離およびコンパクトな筐体に設けた基準面の当接する被測定面の傾斜をそれぞれ簡単に測定することができ、特に筐体に基準面が2カ所あるため被測定対象面の傾斜測定に便利である。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、筐体(の基準面)が傾斜しても振り子は常に位置検出器による平衡位置に保持されるので、基準面の当接する被測定面の傾斜を0〜360°の広範囲で正確に測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0016】
図1〜4は本発明の一実施例である携帯型測距装置を示し、図1は平面視した同製置のブロック構成図、図2は同装置の斜視図、図3は同装置を構成する傾斜計の回路構成図、図4は傾斜計の要部である振り子の斜視図である。
【0017】
図1において、携帯型測距装置10は、片手で持てる程度の矩形状の筐体38内に光波距離計12と傾斜計14を備え、携帯可能に構成されている。
【0018】
光波距離計12は、発光部として、発光源である可視光LEDなどの発光素子16と、この発光を集光して測定対象物に向けて測距光として出射する送光側対物レンズ18と、測定対象物から反射された反射光を受光する受光側対物レンズ20と、対物レンズ20を透過した入射光を受光するフォトダイオードなどの受光素子22と、測距光と入射光との位相差を基に測定対象物までの距離を測定演算する演算部24とを備えて構成されている。なお、送光側の光軸L1と受光側の光軸L2は平行に配置されている。
【0019】
測定対象物までの距離を測定するに際しては、測距光の周渡数を短距離用と長距離用の数種の周波数によって明暗の長さ、すなわち波長λを変化させ、それぞれの1/2波長の距離を測定することで、測定対象までの距離が短い場合と長い場合に分けて距離を測定することができる。例えば、測距光の周波数を15MHにすると、波長λ=20mとなり、10mまでの距離が測れる。一方、測距光の周波数を150kHzにすれば、λ=20mとなり1kmまでの距離を測定することができる。
【0020】
一方、傾斜計14は、被測定面の傾斜を0〜360°に亘って測定し、この測定値をデジタル値で出力することができるように構成されている。
【0021】
具体的には、傾斜計14は、図3に示すように、コア25、フィードバックコイル26、永久磁石28、振り子30、位置検出器32、差動増幅器34、抵抗36を備える。振り子30は、図4に示すように、フィードバックコイル26を捲回したコア25が板状の吊り線31の下端寄りに取り付けられ、筐体38に対し固定保持された支点40に上端側が懸吊支持されて、光波距離計12の光軸(送光側の光軸L1,受光側の光軸L2)の前後方向(図1の上下方向、図3矢印方向)にのみ傾動(揺動)可能に設けられている。振り子30の揺動方向には、フィードバックコイル26を挟んで永久磁石28のN極とS極が相対向配置されている。さらに振り子30の(吊り線40)の先端側(下端側)には位置検出器32が相対向して配置され、位置検出器32の一方が差動増幅器34のマイナス入力端子に接続され、位置検出器32の他方が差動増幅器34のプラス端子に接続されている。そして、差動増幅器34はフィードバックコイル26を介して抵抗36に接続され、抵抗36の電圧Eが図示しない電庄計によって測定できるように構成されている。
【0022】
そして、振り子30が傾くと、位置検出器32が振り子30位置の変化を検出し、位置検出器32における変化が0となるように、差動増幅器34からフィードバックコイル26に電流が出力されて、フィードバックコイル26に流れる電流と永久磁石28間の電磁気作用により、振り子30が元の位置に保持される、即ち、振り子30は常に元の位置に保持される。
【0023】
即ち、筐体38には、光波距離計12の光軸と平行で光波距離計12の鉛直軸Ly(図1の紙面と垂直な軸)と直交する基準面42(図1の紙面垂直方向手前側である筐体38の前面側に形成されている)が設けられ、筐体38(の基準面42)が水平面に設置されたときには、振り子30は、鉛直軸Lyに平行であって、光波距離計12の光軸および筐体38に設けられた基準面42と直交している。そして図3において、傾斜計14(筐体38)が左側が下となるように傾斜したときには、図示するように、フィードバックコイル26にはN−Nが生じ、逆に傾斜計14が(筐体38)が右側が下となるように傾斜したときには、フィードバックコイル26にはS−Sが生じる。このように、振り子30の傾斜に応じた電流がフィードバックコイル26に流れて、位置検出器32が平衡となるように振り子30が作動する。
【0024】
このときのフィードバックコイル26に流れる電流は抵抗36を介して出力電圧Eに変換され、この出力電圧Eは、基準面42の傾斜角すなわち基準面42が当接する被測定面Fの傾斜として出力され、この出力電圧Eはアナログデジタル変換器(図示省略)を介して演算部22に出力され、デジタルデータとして筐体38の上面に設けられた表示部39に表示される。
【0025】
また、演算部24では、光波距離計12で測定した測定対象物までの距離(斜距離)と傾斜計14で求めた傾斜角から測定対象物までの水平距離を演算し、表示部39には斜距離とともに水平距離も併せて表示される。
【0026】
なお、本実施例では、出力電圧Eに関して温度補償することについては配慮されていないが、温度補償を行うに際しては、例えば、特公平5−14202号公報に紀載されている構成を採用することができる。
【0027】
このように本実施例における傾斜計14では、筐体38が振り子30の揺動可能な方向に対し如何に傾斜したとしても、振り子30が常に一定に初期位置に保持されるので、基準面42が当接する被測定面の傾斜を0〜360°という広範囲で測定することができる。
【0028】
図5および6は、本発明の第2の実施例である携帯型測距装置を示し、図5は平面視した同装置のブロック構成図、図6は同装置の斜視図である。
【0029】
この第2の実施例では、筐体38には、鉛直軸Lyと垂直な第1の基準面42と、第1の基準面42に直交する第2の基準面44とを設け、傾斜計14と同一の機能を有する傾斜計14a,14bを光波距離計12とともに筐体38内に内蔵したものであり、他の構成は第1の実施例で示す図1のものと同様である。
【0030】
傾斜計14aは、振り子30が傾斜したときに、筐体38の傾斜に伴って、第1の基準面42の傾斜角(光軸方向の傾斜角)を測定する第1の傾斜計として構成されており、傾斜計14bは、振り子30が傾斜したときに、筐体38の傾斜に伴って、第2の基準面44の傾斜角(光軸と90°方向の傾斜角)を測定する第2の傾斜計として構成されている。各傾斜計14a、14bの測定値はそれぞれデジタルデ一夕に変換された後、演算部22に出力されるようになっている。そして各傾斜計14a、14bはそれぞれの基準面の当接する被測定面の傾斜を0〜360°の範囲で測定可能であり、例えば、傾斜計14aを用いて床などの水平度を測定することができ、傾斜計14aまたは14bを用いて柱などの鉛直度を測定することができる。
【0031】
なお、前記した実施例では、測距光送光側の光軸L1と測距光受光側の光軸L2が平行に構成されているが、従来技術の欄で示した特許文献(特開2002−39748号公報)で図示されているように、送光側の光軸L1と受光側の光軸L2を同軸に構成した構造であってもよい。
【0032】
また、前記した実施例では、傾斜計14(14a、14b)を、コイル26を巻回したコアを吊り線31で筐体から懸吊して構成した振り子30と、コイル26を挟んで振り子30の傾動方向に対向配置した永久磁石28と、筐体38が傾斜したときの振り子30の位置変化に相当する電流を出力する位置検出器32と、位置検出器32の出力が一定となるようにコイル26に電流を出力する差動増幅器34とを備え、コイル26と磁石28間での電磁気作用により振り子30が磁石28内の一定位置に保持され、このときのコイル26に流れる電流を傾斜角として検出する構成となっているが、筐体38に対し光軸の前後方向に傾動自在に支持された振り子30を有し、筐体38が傾斜したときに振り子30の傾動に応じて基準面42(44)の傾斜角を電気的に測定するデジタル傾斜計であれば、実施例の構成に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る携帯型測距装置の第1の実施例を示す平面視ブロック構成図である。
【図2】同装置の斜視図である。
【図3】同装置を構成する傾斜計の回路構成図である。
【図4】傾斜計の要部である振り子の斜視図である。
【図5】本発明に係る携帯型測距装置の第2実施例を示すブロック構成図である。
【図6】同装置の斜視図である。
【符号の説明】
【0034】
10 携帯型測距装置
12 光波距離計
14 傾斜計
16 発光素子
18 送光側対物レンズ
20 受光側対物レンズ
22 受光素子
24 演算部
30 振り子
32 位置検出器
34 差動増幅器
38 筐体
42 基準面(第1の基準面)
44 第2の基準面
Ly 鉛直軸
L1 送光側の光軸
L2 受光側の光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸を測定対象物に向けて測距光を出射してその反射光を受光し、出射した測距光と受光した反射光との位相差を基に前記測定対象物までの距離を測定する光波距離計と、前記光波距離計を内蔵するとともに、鉛直軸に直交し前記光波距離計の光軸と平行で被測定面に当接可能な基準面を少なくとも有する筐体と、前記筐体に対し前記光軸の前後方向に傾動自在に支持された振り子を有し、前記筐体が傾斜したときに前記振り子の傾動に応じて前記基準面の傾斜角を電気的に測定するデジタル傾斜計とを備えてなる携帯型測距装置。
【請求項2】
光軸を測定対象物に向けて測距光を出射してその反射光を受光し、出射した測距光と受光した反射光との位相差を基に前記測定対象物までの距離を測定する光波距離計と、前記光波距離計を内蔵するとともに、鉛直軸に直交し前記光波距離計の光軸と平行で被測定面に当接可能な第1の基準面と前記第1の基準面に直交し被測定面に当接可能な第2の基準面とを有する筐体と、前記筐体に対し前記光軸の前後方向に傾動自在に支持された第1の振り子を有し、前記筐体が傾斜したときに前記第1の振り子の傾動に応じて前記第1の基準面の傾斜角を電気的に測定するデジタル傾斜計と、前記筐体に対し傾動自在に支持された第2の振り子を有し、前記筐体が傾斜したときに前記第2の振り子の傾動に応じて前記第2の基準面の傾斜角を電気的に測定する第2の傾斜計とを備えてなる携帯型測距装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の携帯型測距装置において、前記傾斜計は、コイルを巻回したコアを吊り線で筐体から懸吊して構成した振り子と、前記コイルを挟んで前記振り子の傾動方向に対向配置した永久磁石と、筐体が傾斜したときの前記振り子の位置変化に相当する電流を出力する位置検出器と、前記位置検出器の出力が一定となるように前記コイルに電流を出力する差動増幅器とを備え、該コイルと前記磁石間での電磁気作用により振り子が筐体内の一定位置に保持され、このときの前記コイルに流れる電流を傾斜角0〜360°として検出しデジタル表示するように構成されたことを特徴とする携帯型測距装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−281379(P2008−281379A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−124177(P2007−124177)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【出願人】(000148623)株式会社 ソキア・トプコン (114)
【Fターム(参考)】