説明

携帯型無線通信機、及び、携帯型無線通信機と警報機のセット

【課題】 正規の使用時に警報が発せられることを防止することができるとともに、使用していない時には盗難を防止することができる携帯型無線通信機を提供する。
【解決手段】 外部機器と無線通信する携帯型無線通信機であって、アンテナと、第1通信回路と、特定のデータを記憶している第2通信回路と、アンテナを第1通信回路に接続した第1状態と、アンテナを第2通信回路に接続した第2状態とを切り換える切り換え手段とを備えている。第1状態では、第1通信回路が、アンテナを介して外部機器と無線通信することが可能である。第2状態では、第2通信回路が、アンテナを介して前記特定のデータを無線送信することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯型無線通信機の盗難防止技術に関する。
【背景技術】
【0002】
引用文献1には、製品の盗難を防止する技術が開示されている。これらの技術では、製品に取り付けたICタグに、その製品が清算済みであるか否かを示すデータを記憶させる。また、店舗の出口には、ICタグと無線通信する警報機を設置する。警報機の通信範囲内にICタグ(すなわち、製品)が進入したら、無線通信によって警報機がICタグから前記データを読み取る。警報機は、未清算であることを示すデータを読み取った場合には、警報を発する。これによって、未清算の製品が店舗外に持ち出されることを防止する。また、引用文献2にも、類似の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−240767号公報
【特許文献2】特開2007−200239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、RFID等の無線通信技術を用いて、種々の情報を管理することが一般的になっている。例えば、非接触のICタグを製品に取り付け、携帯型無線通信機によってICタグからデータを読み取ることで、製品の在庫管理等を行うことが一般的に行われている。このような、携帯型無線通信機が盗難されると、携帯型無線通信機に記憶されている情報や、その情報の管理方法や、無線通信の方式等が外部に知られる虞がある。したがって、携帯型無線通信機の盗難を防止する必要がある。携帯型無線通信機にICタグを取り付け、上述した特許文献1、2の技術により携帯型無線通信機の盗難を防止することが考えられる。しかしながら、このような方法では、携帯型無線通信機を用いて在庫管理等の正規の作業を行っている場合に、その作業者が警報機に近づくと、警報機が警報を発してしまい、作業の妨げとなる。
【0005】
したがって、本明細書では、正規の使用時に警報が発せられることを防止することができるとともに、使用していない時には盗難を防止することができる携帯型無線通信機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する携帯型無線通信機は、外部機器と無線通信する。この携帯型無線通信機は、アンテナと、第1通信回路と、特定のデータを記憶している第2通信回路と、アンテナを第1通信回路に接続した第1状態と、アンテナを第2通信回路に接続した第2状態とを切り換える切り換え手段とを備えている。第1状態では、第1通信回路が、アンテナを介して外部機器と無線通信することが可能である。第2状態では、第2通信回路が、アンテナを介して前記特定のデータを無線送信することが可能である。
【0007】
なお、第2状態では、第2通信回路は、どのようなタイミングで前記特定のデータを無線送信してもよい。例えば、第2通信回路が、前記特定のデータを定期的に無線送信してもよい。また、第2通信回路が、外部から特定の信号を受信したときに、前記特定のデータを無線送信してもよい。
【0008】
この携帯型無線通信機は、無線通信可能な警報機と共に使用される。携帯型無線通信機の第2通信回路は、アンテナを介して特定のデータを無線送信することができる。警報機は、前記特定のデータを受信したときに警報を発するように設定しておく。携帯型無線通信機が第1状態である場合には、第1通信回路がアンテナに接続されており、第1通信回路がアンテナを介して外部機器と無線通信することが可能である。例えば、第1通信回路によって、在庫管理等の作業を行うことができる。このとき、第2通信回路はアンテナに接続されていないので、前記特定のデータが無線送信されることがない。したがって、第1通信回路を用いて通信(例えば、在庫管理等の作業)を行っている場合には、携帯型無線通信機が警報機の通信範囲内に持ち込まれても、警報機が警報を発することはない。一方、携帯型無線通信機が第2状態である場合には、第1通信回路がアンテナに接続されておらず、第1通信回路は無線通信を行うことができない。すなわち、第2状態では、第1通信回路を用いて通信(例えば、在庫管理等の作業)を行うことはできない。第2状態では、第2通信回路がアンテナに接続されており、第2通信回路がアンテナを介して前記特定のデータを送信することができる。このため、第2状態にある携帯型無線通信機器が警報機の通信範囲内に持ち込まれた場合には、警報機で警報を発することがで、盗難を防止することができる。このように、この携帯型無線通信機では、第1通信回路で通信が可能な第1状態では警報が発せられることが防止され、第1通信回路によって通信ができない第2状態では警報を発することができる。したがって、ユーザは、携帯型無線通信機を使用しないときには、携帯型無線通信機を第2状態としておくことで、携帯型無線通信機の盗難を防止することができる。すなわち、この携帯型無線通信機は、正規の使用時に警報が発せられることを防止することができるとともに、使用していない時には盗難を防止することができる。また、このように第1通信回路と第2通信回路とでアンテナを共用することで、携帯型無線通信機の小型化を図ることができる。
【0009】
上述した携帯型無線通信機は、第2状態では、第2通信回路が、アンテナを介して特定の信号を受信したときに、アンテナを介して前記特定のデータを無線送信するように構成されていることが好ましい。
【0010】
このような構成によれば、警報機で前記特定の信号を定期的に無線送信するようにしておけば、携帯型無線通信機が警報機の通信範囲内に持ち込まれたときに、第2通信回路が前記特定の信号に応答して前記特定のデータを無線送信する。したがって、警報機が、前記特定のデータを受信し、警報を発することができる。
【0011】
上述した携帯型無線通信機は、バッテリと、電源スイッチをさらに備えていることが好ましい。電源スイッチは、バッテリの電力が第1通信回路に供給されるオン状態と、バッテリの電力が第1通信回路に供給されないオフ状態とを切り換えることが好ましい。また、携帯型無線通信機は、オフ状態にあるときに第2状態となることが好ましい。
【0012】
このような構成によれば、携帯型無線通信機をオフ状態とすると、これに連動して携帯型無線通信機が第2状態となる。すなわち、携帯型無線通信機がその使用がされることがないオフ状態に切り換えられると、自動的に、携帯型無線通信機が第2状態に切り換えられる。なお、携帯型無線通信機がオン状態にあるときには、第1状態と第2状態の切り換えをどのように行ってもよい。
【0013】
上述した携帯型無線通信機は、加速度センサをさらに有していることが好ましい。そして、第1状態において予め決められた時間に亘って予め決められた大きさ以上の加速度が加速度センサで検出されない場合に、携帯型無線通信機が第1状態から第2状態に切り換わることが好ましい。
【0014】
このような構成によれば、携帯型無線通信機が第1状態のまま所定時間以上使用されていないと、携帯型無線通信機が第1状態から第2状態に切り換わる。したがって、第1状態のまま携帯型無線通信機が放置され続けることを防止することができる。
【0015】
上述した携帯型無線通信機は、第1状態にあるときに充電器に接続されると、第1状態から第2状態に切り換わることが好ましい。
【0016】
このような構成によれば、充電器に接続すると携帯型無線通信機が第2状態に切り換わるので、第1状態のまま携帯型無線通信機が放置され続けることを防止することができる。
【0017】
上述した携帯型無線通信機は、キースイッチをさらに備えており、第2状態にあるときに、キースイッチによってパスワードが入力されると、第2状態から第1状態に切り換わることが好ましい。
【0018】
このような構成によれば、他人が携帯型無線通信機を第2状態から第1状態に切り換えて、携帯型無線通信機を外部に持ち出すことを防止することができる。
【0019】
また、本明細書は、携帯型無線通信機と、警報機とのセットを提供する。このセットは、上述した何れか一つの携帯型無線通信機と、警報機とを備えている。警報機は、無線通信可能であり、無線通信によって前記特定のデータを受信したときに、警報を発する。また、警報機は、無線通信可能であり、前記特定の信号を繰り返し無線送信し、無線通信によって前記特定のデータを受信したときに、警報を発するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】RFIDリーダライタ10と警報機50の使用状態を示す図。
【図2】RFIDリーダライタ10の構成を示すブロック図。
【図3】警報機50の構成を示すブロック図。
【図4】オン状態においてRFIDリーダライタ10が実行する処理を示すフローチャート。
【図5】電源をオンした時にRFIDリーダライタ10が実行する処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に示すRFIDリーダライタ10は、店舗内や倉庫内等の外部から区画された領域内で使用される携帯型のRFIDリーダライタである。RFIDリーダライタ10は、製品に取り付けられているRFIDタグと通信する。RFIDリーダライタ10は、RFIDタグからデータを読み出したり、RFIDタグにデータを書き込んだりすることで、製品の在庫管理等に使用される。RFIDリーダライタ10が使用される領域の出入口100には、警報機50が設置されている。警報機50は、出入口100の両側に設置されているゲート60と、コントローラボックス62を備えている。ゲート60とコントローラボックス62は電気的に接続されている。ゲート60は、RFIDリーダライタ10と無線通信するためのアンテナを内蔵している。コントローラボックス62は、ゲート60のアンテナを介して所定のデータを受信したときに、警報を発する。
【0022】
図2に示すように、RFIDリーダライタ10は、多数の構成要素を備えている。表示装置12は、制御回路24から入力される信号に従って、種々の情報を表示する。
【0023】
キースイッチユニット14は、多数のキースイッチにより構成されている。これらのキースイッチを操作することで、制御回路24に種々の信号が入力される。
【0024】
加速度センサ16は、RFIDリーダライタ10に加わる加速度を検出する。加速度センサ16で検出された加速度のデータは、制御回路24に入力される。
【0025】
アンテナ18は、無線信号を送受信するためのアンテナである。スイッチング素子20は、アンテナ18をRFID通信回路36に接続した第1状態と、アンテナ18をICチップ34に接続した第2状態とを切り換える。なお、第1状態ではアンテナ18がICチップ34から切断され、第2状態ではアンテナ18がRFID通信回路36から切断される。
【0026】
ICチップ34は、半導体により構成された通信回路を備えている。ICチップ34の通信回路は、データを記憶する記憶領域を備えている。ICチップ34の記憶領域には、予め決められたデータ(以下、識別データという)が記憶されている。アンテナ18をICチップ34に接続した第2状態においては、ICチップ34は、アンテナ18を介して外部と無線通信することができる。例えば、ICチップ34は、アンテナ18を介して識別データを外部に無線送信することができる。
【0027】
RFID通信回路36は、RFIDタグと無線通信するための通信回路である。アンテナ18をRFID通信回路36に接続した第1状態においては、RFID通信回路36は、RFIDタグと無線通信することができる。RFID通信回路36は、制御回路24によって制御される。例えば、RFID通信回路36は、制御回路24から書き込みコマンドと書き込むべきデータの入力を受け、その書き込みコマンドとデータとをアンテナ18を介して無線送信する。これによって、RFIDタグにデータを書き込むことができる。また、RFID通信回路36は、制御回路24から読み出しコマンドの入力を受け、その読み出しコマンドをアンテナ18を介して無線送信する。すると、RFIDタグから応答信号が送信されるので、RFID通信回路36は、アンテナ18を介してRFIDタグからの応答信号を受信する。これによって、RFIDタグからデータを読み出すことができる。RFID通信回路36が読み出したデータは、制御回路24に入力される。
【0028】
切換回路22は、制御回路24によって制御される。切換回路22は、制御回路24からの指令に基づいて、スイッチング素子20をスイッチングさせる。
【0029】
制御回路24は、RFIDリーダライタ10の各部を制御する。例えば、制御回路24は、RFID通信回路36を介して取得したデータ(RFIDタグから読み出したデータ)を記憶装置38に記憶させるとともに、表示装置12に表示させる。
【0030】
電源回路26は、バッテリ30と制御回路24との間に介装されている。電源回路26は、電源スイッチ28を有している。電源回路26は、電源スイッチ28に対して行われる操作に応じて、制御回路24にバッテリ30の電力が供給されるオン状態と、制御回路24にバッテリ30の電力が供給されないオフ状態とを切り換える。なお、オン状態では、バッテリ30の電力が、制御回路24及びこれに接続されている各部(例えば、RFID通信回路36等)に供給される。また、以下では、オン状態からオフ状態に切り換えることを電源をオンするといい、その逆を電源をオフするという。
【0031】
充電回路32は、バッテリ30と制御回路24に接続されている。また、図示していないが、充電回路32は、一対の充電端子を有している。一対の充電端子にRFIDリーダライタ10の充電器(図示省略)が接続されると、充電回路32を介して充電器からバッテリ30に電力が供給される。これによって、バッテリ30が充電される。充電回路32は、充電端子間の電圧を検出することで、充電器が接続されているか否かを検出する。充電器が接続されているか否かを示す信号は、充電回路32から制御回路24に入力される。
【0032】
記憶装置38は、種々のデータを記憶することができる。また、記憶装置38は、RFIDリーダライタ10の各部を制御するための制御プログラムを記憶している。制御回路24は、記憶装置38が記憶している制御プログラムに従って各部を制御する。
【0033】
図3に示すように、警報機50は、アンテナ52と、通信回路54と、制御回路56と、ブザー58を備えている。アンテナ52は、図1のゲート60に内蔵されており、通信回路54と制御回路56とブザー58は、図1のコントローラボックス62に内蔵されている。
【0034】
通信回路54とブザー58は、制御回路56に接続されている。また、アンテナ52は、通信回路54に接続されている。通信回路54は、アンテナ52を介して、RFIDリーダライタ10と無線通信する。制御回路56は、通信回路54で受信された信号から、データを取得する。また、制御回路56は、上述した識別データ(RFIDリーダライタ10のICチップ34が記憶しているデータ)を受信したときは、ブザー58によって警報音を発生させる。
【0035】
次に、RFIDリーダライタ10と警報機50の動作について説明する。最初に、スイッチング素子20がアンテナ18をRFID通信回路36に接続している状態(第1状態)にあるときのRFIDリーダライタ10の動作について説明する。上述した様に、警報機50は、繰り返し問い合わせコマンドを無線送信している。第1状態にあるRFIDリーダライタ10が警報機50の通信範囲内に持ち込まれると、警報機50から無線送信された信号が、RFIDリーダライタ10のアンテナ18で受信される。アンテナ18がRFID通信回路36に接続されているので、アンテナ18で受信された問い合わせコマンドが、RFID通信回路36を介して制御回路24に入力される。制御回路24は、問い合わせコマンドを受信すると、これを無視する。すなわち、RFIDリーダライタ10は、問い合わせコマンドに対して信号を返信しない。したがって、第1状態にあるRFIDリーダライタ10を警報機50の通信範囲内に持ち込んでも、警報機50は警報を発しない。このように、RFIDリーダライタ10が第1状態(すなわち、在庫管理等の作業を実施可能な状態)にある場合には、警報機50は警報を発しない。したがって、ユーザが在庫管理等の作業を実施しているときに、警報機50が警報を発して、作業の妨げになることが防止される。
【0036】
次に、スイッチング素子20がアンテナ18をICチップ34に接続している状態(第2状態)にあるときのRFIDリーダライタ10の動作について説明する。上述した様に、警報機50は、繰り返し問い合わせコマンドを無線送信している。第2状態にあるRFIDリーダライタ10が警報機50の通信範囲内に持ち込まれると、警報機50から無線送信された信号が、RFIDリーダライタ10のアンテナ18で受信される。アンテナ18がICチップ34に接続されているので、アンテナ18で無線信号から電気信号に変換された信号が、ICチップ34に入力される。ICチップ34は、入力された電気信号から電力を得ることで動作する。また、ICチップ34は、入力された電気信号により、問い合わせコマンドを受信する。ICチップ34は、問い合わせコマンドを受信すると、これに応答して自身が記憶している識別データをアンテナ18を介して無線送信する。無線送信された識別データは、警報機50のアンテナ52と通信回路54を介して制御回路56に入力される。制御回路56は、識別データの入力を受けると、ブザー58を鳴動させることで、警報を発する。このように、第2状態にあるRFIDリーダライタ10が警報機50の通信範囲内に持ち込まれると、警報機50が警報を発する。上述したように、第2状態は、RFID通信回路36がアンテナ18に接続されておらず、RFID通信回路36がRFIDタグと通信できない状態である。すなわち、第2状態は、RFIDリーダライタ10で作業を行っていない状態である。このように作業を行っていない状態にあるRFIDリーダライタ10が警報機50の通信範囲内に持ち込まれた場合には、警報機50が警報を発するので、RFIDリーダライタ10の盗難が防止される。
【0037】
次に、RFIDリーダライタ10の第1状態と第2状態の切り換えについて説明する。後に詳述するが、RFIDリーダライタ10がオフ状態にあるときは、必ずRFIDリーダライタ10は第2状態にある。図4は、電源をオンするときのRFIDリーダライタ10の動作を示している。ユーザが電源スイッチ28により電源をオンする操作を行うことで、図4の処理が開始される。ステップS2では、電源回路26が、制御回路24に電力を供給する。ステップS4では、制御回路24が、表示装置12にパスワードを入力する旨のメッセージを表示させるとともに、パスワードの入力待ちの状態となる。ユーザがキースイッチユニット14によって制御回路24に正しいパスワードを入力すると、制御回路24はステップS6でYESと判定する。この場合には、制御回路24は、切換回路22にスイッチング素子20をスイッチングさせることによって、アンテナ18をRFID通信回路36に接続する。すなわち、RFIDリーダライタ10が第2状態から第1状態に切り換えられる。これにより、RFIDリーダライタ10は、RFIDタグと通信可能な状態(すなわち、在庫管理等の作業を実施可能な状態)となる。一方、ユーザが正しいパスワードを入力しなかった場合には、制御回路24はステップS6でNOと判定する。この場合には、ステップS10で、電源回路26が電源をオフする。このように、RFIDリーダライタ10は、正しいパスワードが入力されない限り、第1状態にはならない。
【0038】
図4のステップS8で第2状態に切り換えられたRFIDリーダライタ10は、図5の処理を実行する。なお、図5は、第1状態と第2状態との切り換えに関する処理のみを示している。実際には、RFIDリーダライタ10は、図5の処理と平行して、無線通信等の種々の処理を実行する。図5のステップS12では、制御回路24は、時間カウント値Tを0に設定する。なお、時間カウント値Tは、制御回路24が後の判定のために用いる変数である。制御回路24は、時間カウント値Tを0に設定した後に、時間の経過に伴って時間カウント値Tを増大させる。ステップS14では、制御回路24は、加速度センサ16が検出する現在の加速度Aを読み取る。そして、加速度Aが、予め決められた閾値A以上であるか否かを判定する。加速度Aが閾値Aよりも小さいことは、ユーザが作業を行っておらず、RFIDリーダライタ10が第1状態のまま放置されていることを意味する。加速度Aが閾値Aよりも小さい場合には、制御回路24は、ステップS16で、時間カウント値Tが、予め決められた閾値T以上であるか否かを判定する。時間カウント値Tが閾値Tより小さい場合には、再度、ステップS14が実行される。したがって、RFIDリーダライタ10が第1状態のまま放置されていると、ステップS14とステップS16が繰り返し実行される。そして、放置されている時間が閾値Tにより示される時間を超えると、時間カウント値Tが閾値T以上となり、ステップS16でYESと判定される。すると、制御回路24は、ステップS22で、アンテナ18をICチップ34に接続する。すなわち、RFIDリーダライタ10が、第1状態から第2状態に切り換えられる。これによって、警報機50が反応しない第1状態のまま、RFIDリーダライタ10が放置され続けることが防止される。なお、ステップS22では、制御回路24に対する電力の供給は継続される。すなわち、RFIDリーダライタ10は、RFIDタグとの通信は不可能であるが、その他の操作は可能な状態(いわゆる、スリープ状態)となる。スリープ状態から第1状態に復帰させる場合には、電源をオンする場合と同様に、パスワードの入力が必要となる。
【0039】
ステップS14で、加速度Aが閾値A以上である場合(すなわち、ユーザがRFIDリーダライタ10を持っている場合)には、制御回路24は、ステップS18を実行する。ステップS18では、制御回路24は、充電回路32から入力される信号(充電器が接続されているか否かを示す信号)に基づいて、RFIDリーダライタ10に充電器が接続されているか否かを判定する。充電器が接続されている場合には、制御回路24は、ステップS22でRFIDリーダライタ10を第2状態(スリープ状態)に切り換える。充電器が接続されたことは、通常は、在庫管理等の作業が終了したことを意味する。したがって、充電器が接続されたときに自動的にRFIDリーダライタ10を第2状態に切り換えることで、警報機50が反応しない第1状態のままRFIDリーダライタ10が放置され続けることを防止することができる。
【0040】
ステップS18で充電器が接続されていないと判定した場合には、制御回路24は、ステップS20で、電源オフの操作がされたか否かを判定する。ユーザが電源スイッチ28によって電源オフの操作をすると、ステップS20でYESと判定される。すると、制御回路24は、ステップS24で、アンテナ18をICチップ34に接続する(すなわち、第1状態から第2状態に切り換える)。さらに、制御回路24は、電源をオフする。このように、電源をオフする際には、必ず、RFIDリーダライタ10が第2状態に切り換えられる。したがって、RFIDリーダライタ10が使用されないオフ状態においては、RFIDリーダライタ10の盗難が防止される。
【0041】
ステップS20でNOと判定された場合には、制御回路24は、再度ステップS12を実行する。ユーザがRFIDリーダライタ10を用いて作業を行っている間は、ステップS12、S14、S18、S20により構成されるループが繰り返し実行される。このループが繰り返されている間(すなわち、ユーザの作業中)は、RFIDリーダライタ10が第1状態にあり、警報機50が警報を発することがない。
【0042】
以上に説明したように、実施形態のRFIDリーダライタ10は、電源がオフされた場合、一定時間以上所定の加速度が検出されない場合(すなわち、ユーザがRFIDリーダライタ10を放置している場合)、及び、充電器が接続された場合に、第1状態から第2状態に切り換えられる。すなわち、ユーザがRFIDリーダライタ10を使用してない場合には、RFIDリーダライタ10が第2状態となる。これによって、RFIDリーダライタ10の盗難を防止することができる。また、ユーザがRFIDリーダライタ10を使用している場合には、RFIDリーダライタ10が第1状態となる。これによって、RFIDリーダライタ10の使用中に警報が発せられることが防止される。
【0043】
また、実施形態のRFIDリーダライタ10では、アンテナ18がICチップ34とRFID通信回路36とで共用されるので、RFIDリーダライタ10の小型化を図ることができる。また、ICチップ34でも、比較的好感度のアンテナ18を介して無線通信することができるので、ICチップ34と警報機50との間の通信の信頼性を高めることができる。
【0044】
なお、上述した実施形態では、ステップS22でRFIDリーダライタ10をスリープ状態としたが、ステップS22でRFIDリーダライタ10の電源をオフしてもよい。
【0045】
また、上述した実施形態では、ICチップ34が、警報機50から送信された信号を受信することで電力の供給を得たが、RFIDリーダライタ10のバッテリ30から電力の供給を受けてもよい。また、上述した実施形態では、ICチップ34が、警報機50からの信号を受信したときに、これに応答して、識別データを無線送信した。しかしながら、バッテリ30からICチップ34に電力が供給される場合には、第2状態にある間はICチップ34が定期的に識別データを無線送信してもよい。このような構成によれば、警報機50は問い合わせコマンドを無線送信する必要がないので、警報機50の構成を簡略化することができる。
【0046】
また、上述した実施形態では、警報機50からの問い合わせコマンドを第1状態のRFIDリーダライタ10が受信したときに、制御回路24が問い合わせコマンドに対する応答信号を送信しなかった。しかしながら、このような場合に、制御回路24が、識別データと異なるデータを応答信号として無線送信してもよい。この場合、警報機50で第1状態における応答信号を受信したときに、警報機50から警報を発しないように設定しておくことで、第1状態にあるRFIDリーダライタ10に対して警報を発することを防止することができる。
【0047】
また、上述した実施形態では、電源のオン−オフと、第1状態と第2状態の切り換えが連動していたが、これらが連動していなくてもよい。例えば、第1状態と第2状態の切り換えスイッチを電源スイッチ28とは別にRFIDリーダライタ10に設置しておき、このスイッチによって切り換えるようにしてもよい。
【0048】
また、上述した実施形態では、警報機50が、警報として音を発したが、他の方法により警報を発してもよい。例えば、ランプを点灯させたり、画像を表示したり、離れた位置にいる従業員等に通報したりしてもよいし、これらを組み合わせてもよい。
【0049】
また、上述した実施形態では、RFIDリーダライタ10について説明したが、他の携帯型無線通信機に上述した構成を適用してもよい。例えば、RFIDリーダや、RFID以外の通信方式を用いる携帯型無線通信機に適用してもよい。
【0050】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0051】
10:RFIDリーダライタ
12:表示装置
14:キースイッチユニット
16:加速度センサ
18:アンテナ
20:スイッチング素子
22:切換回路
24:制御回路
26:電源回路
28:電源スイッチ
30:バッテリ
32:充電回路
34:ICチップ
36:通信回路
38:記憶装置
50:警報機
52:アンテナ
54:通信回路
56:制御回路
58:ブザー
60:ゲート
62:コントローラボックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部機器と無線通信する携帯型無線通信機であって、
アンテナと、
第1通信回路と、
特定のデータを記憶している第2通信回路と、
アンテナを第1通信回路に接続した第1状態と、アンテナを第2通信回路に接続した第2状態とを切り換える切り換え手段と、
を備えており、
第1状態では、第1通信回路が、アンテナを介して外部機器と無線通信することが可能であり、
第2状態では、第2通信回路が、アンテナを介して前記特定のデータを無線送信することが可能である、
ことを特徴とする携帯型無線通信機。
【請求項2】
第2状態では、第2通信回路が、アンテナを介して特定の信号を受信したときに、アンテナを介して前記特定のデータを無線送信することを特徴とする請求項1に記載の携帯型無線通信機。
【請求項3】
バッテリと、
バッテリの電力が第1通信回路に供給されるオン状態と、バッテリの電力が第1通信回路に供給されないオフ状態とを切り換える電源スイッチと、
をさらに備えており、
オフ状態にあるときに第2状態となる、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の携帯型無線通信機。
【請求項4】
加速度センサをさらに有しており、
第1状態において予め決められた時間に亘って予め決められた大きさ以上の加速度が加速度センサで検出されない場合に、第1状態から第2状態に切り換わることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の携帯型無線通信機。
【請求項5】
第1状態にあるときに充電器に接続されると、第1状態から第2状態に切り換わることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の携帯型無線通信機。
【請求項6】
キースイッチをさらに備えており、
第2状態にあるときに、キースイッチによってパスワードが入力されると、第2状態から第1状態に切り換わることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の携帯型無線通信機。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載の携帯型無線通信機と、警報機とのセットであって、
警報機は、無線通信可能であり、無線通信によって前記特定のデータを受信したときに、警報を発する、
ことを特徴とするセット。
【請求項8】
請求項2に記載の携帯型無線通信機と、警報機とのセットであって、
警報機は、無線通信可能であり、前記特定の信号を繰り返し無線送信し、無線通信によって前記特定のデータを受信したときに、警報を発する、
ことを特徴とするセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−25465(P2013−25465A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157974(P2011−157974)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】