説明

携帯型生体信号測定装置

【課題】 ホルタ心電計等の携帯型生体信号測定装置において、装着状態で表示画面を確認することが容易でなかった。
【解決手段】 表示部6を本体に対してヒンジ61で回動可能に支持する。これにより、表示部6のみを操作することでその表示画面を上向きにすることが可能となるため、装着状態であっても表示内容を容易に確認することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生体信号測定装置に関し、特にホルタ心電計を代表とする小型で携帯可能な生体信号測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、心電図は、心疾患の診断指標として幅広く用いられており、健康診断等における短時間の測定から、不整脈などの症状を呈する被検者に対しする比較的長時間、例えば24時間連続した測定等、様々な測定方法と、各測定方法に適した測定機器(心電計)が用いられている。また、心電図とともに、呼吸状態や動脈血酸素飽和度(SpO2)や、血圧など、他の生体信号も診断に有用な情報として用いられている。
【0003】
心電計の中でも、日常生活中に24時間連続して測定を行う場合に用いられるホルタ心電計や、病室にいる被検者の心電図を遠隔的に常時測定する際に用いられる心電図テレメータは、被検者に装着した状態で長時間心電図の記録、送信を行う必要がある。そのため、小消費電力と被検者の負担軽減を実現するため、装置の小型化が積極的に行われてきた。その結果、半導体メモリやデジタル信号処理等、デジタル技術を取り入れた小型、計量の心電計や心電図テレメータが実現されてきている。また、この種の心電計においては、心電図以外に動脈血酸素飽和度(SpO2)や、血圧など、様々な生体信号を測定可能な機能を有するものも多い。なお、本明細書において生体信号測定装置とは、生体信号の測定機能を有する機器を指し、測定した生体信号を外部装置に送信するだけで、メモリ等に記録する機能は有していない機器も含む。
【0004】
この種の小型心電計(以下、携帯型生体信号測定装置という)には、機器の動作状態やバッテリ残量、エラーの発生などをユーザである被検者に報知するため、小型の表示装置(通常は液晶表示装置)が内蔵されているのが一般的である。使い勝手や機能向上という観点からは表示装置は大きい方が好ましい。一方で、装置の厚みが大きいと装着感が悪くなるため、装置は薄型形状となるように設計されることが多い。そのため、表示装置は通常心電計の最も大きな側面、つまり装着時に装置の正面となる面に設けられるのが一般的である(例えば特許文献1の図1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−263075号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような携帯型生体信号測定装置を例えば衣服のベルトなどに装着した状態で、表示装置に表示された内容を確認しようとすると、ユーザは前屈みの姿勢を取ったり、表示装置が自分の方を向くように衣服ごと携帯型生体信号測定装置全体を持ち上げたりする必要があった。しかしながら、このような操作は煩わしく、不便である。
【0007】
しかも、このようにして表示装置を見た場合、その表示内容は上下さかさまであるため、表示内容を把握するのも容易とは言えなかった。
【0008】
この点について図5を用いて説明する。図5(a)は、携帯型生体信号測定装置を衣服のベルトに装着した状態を被検者に向かって見た状態を示している。この状態で被検者から装置を見おろすと、装置の上面以外はほとんど見えない(図5(b))。そのため、装置の下部を持ち上げるようにして表示装置が上を向くようにして、表示内容を確認する必要がある(図5(c))。
【0009】
図5(c)の状態になると、ようやく表示内容を見ることができるようになるが、表示は上下さかさまであるため、瞬時には表示内容を把握することができない。そのため、一旦ベルトから外し、表示内容の向きを正しく見られる状態にすることによって表示内容を確認している被検者も存在するであろう。
【0010】
本発明はこのような従来技術の課題に鑑みなされたものであり、装着状態であっても表示内容を容易かつ的確に把握できる携帯型生体信号測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的は、センサにより検出された生体信号を受信し、外部機器に出力又は内蔵した記憶装置に記録する携帯型生体信号測定装置であって、装置本体と、装置の動作状態や測定したデータを表示するための表示部とを有し、表示部が、その上端部分を軸として回動可能に装置本体に支持されていることを特徴とする携帯型生体信号測定装置によって達成される。
【発明の効果】
【0012】
このような構成により、本発明による携帯型生体信号測定装置によれば、装着状態であってもその表示画面に表示された内容を容易かつ正確に把握することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明をその好適な実施形態に基づき詳細に説明する。
(回路構成)
図1は、本発明の実施形態に係る携帯型生体信号測定装置の一例としてのホルタ心電計の回路構成例を示すブロック図である。
図1において、1はROM2に格納されている制御プログラムを実行してホルタ心電計全体の制御を司るCPU、2はCPU1が実行するプログラムや処理に必要なパラメータ等を記憶するROM、3は各種処理経過等を一時的に記憶するRAM、4は被検者から収集した心電図情報等をディジタルデータの形式で記憶する記憶装置としてのメモリカードである。
【0014】
5はメモリカード4を装着するためのカードスロット、6は例えば液晶表示装置からなる表示部である。7は表示部6が閉位置にあるか、開位置にあるかを検出する表示部位置検出部、8は電源のオン、オフや測定の開始、停止、各種イベント入力などを行ったり、各種の設定を行なうためのスイッチ、ボタンなどからなる操作部である。
【0015】
また、9は生体よりのアナログ検出情報を対応するディジタル情報に変換するアナログ−ディジタル変換器(A/D変換器)、10は生体情報を取得するための電極、センサ等を接続するためのセンサ用I/Fである。本実施形態の携帯型心電計には、SpO2(動脈血酸素飽和度)センサ11、心電図測定用の電極12及び血圧・脈波測定用のカフ13が接続可能である。
20は例えばホストコンピュータやプリンタ、あるいは心電計等の外部機器40と通信を行うための通信インタフェースである。
【0016】
このような構成を有するホルタ心電計を用いて例えば心電図の測定及び記録を行う場合、被検者の体表面の所定の位置に心電図用電極12の電極部分を取り付け、コネクタ部分をセンサ用I/F10に接続する。そして、操作部8から被検者の個人情報(例えば氏名、年齢、性別など)を入力し、ユーザ情報としてメモリカード4に記録する。
【0017】
被検者による測定開始指示などにより、測定及び記録が開始され、検出された電気信号はノイズ除去や増幅処理などを行い、A/D変換器9でディジタル信号に変換された後、メモリカード4へ記憶される。
【0018】
(表示部6の構成)
図2は、本実施形態に係るホルタ心電計の外観例を示す図で、図2(a)は斜視図、図2(b)は右側面図である。図1と同じ構成要素には同じ参照数字を付した。
本実施形態のホルタ心電計は、表示部6がその表示画面と本体との角度を変えられるようにヒンジ61を介して本体に取り付けされている。具体的には表示部6が上端部分を軸として回動可能なように、ヒンジ61を介して本体に支持されており、平板状の表示部6の下端部分を持ち上げることで表示部6が上方に回動する。
【0019】
また、表示部6には、操作部8を構成する各種スイッチ、ボタンのうち、表示部6を見ながら行う操作に用いるスイッチ、ボタンが設けられている。このような操作には例えば階層メニュー形式のユーザインタフェースの操作や、表示内容の切替(例えば表示形式の変更、表示項目の変更など)操作などがある。図2の例では、設定項目を選択するためのカーソルボタン、設定画面などのメニュー表示を行わせるためのメニューボタン、測定したデータを一時的に表示させるためのINFOボタン、設定したメニュー項目の確定や実行を指示するためのエンターボタンが表示部6に設けられている。
【0020】
図3は表示部を回動させて表示画面を上方に向けた状態を示す斜視図である。ここでは、表示部6が図2の状態にあることを閉状態、閉状態から表示部が回動して表示画面と本体とのなす角度θが所定値以上となった状態を開状態と呼ぶ。開状態と見なす角θは正の値として任意に設定可能であるが、被検者が下を向いた状態で表示画面の文字を視認できる角度においては少なくとも開状態と判断されるように設定することが好ましい。具体的には、例えばθ=30°で開状態と判断されるように設定したり、少しでも回動が認められたならば開状態と判断されるように設定したりすることができる。従って、少なくとも図3の状態は開状態に含まれる。
【0021】
表示部6が閉状態、開状態のいずれにあるかの検出は任意の方法によって行うことができるが、例えば表示部6が閉状態にある場合には外光が遮断され、開状態となると外光を検出できる位置に設けた光センサや、閉状態にある場合には閉、開状態にある場合には開となるスイッチなどを表示部位置検出部7として用いることができる。もちろん、ヒンジ61の軸の回転量を検出することにより表示部6の状態変化を検出するなど、他の任意の方法で状態(位置)検出を行うこともできる。
【0022】
このように、表示部6を心電計本体に対して回動可能に、かつ回動により表示画面を上方に向けられるように支持することにより、装着時に表示内容を確認したい場合には表示部6のみを操作し、画面を上方に向けることが可能となり、非常に便利である。
【0023】
さらに、本実施形態のホルタ心電計においては、表示部6が開状態になった場合にはその表示内容を180°回転させることにより、開状態で表示画面を見た場合に正しい方向で表示がなされているようにするので、表示内容を直ちにかつ正しく把握することが可能となる。
【0024】
そして、表示画面を見ながら行う操作に用いるボタンが表示部6に設けられているため、ボタンを手探りする必要なく、表示画面を見ながら各種の操作、例えば各種設定や、測定中のデータを表示させて正しく測定できているかどうかを確認するなどの操作を容易に行うことが可能となる。
【0025】
図3は、本実施形態のホルタ心電計における表示制御処理を説明するフローチャートである。この処理は例えばROM2に記憶される制御プログラムをCPU1が実行することによって実現される。
【0026】
まず、例えば電源投入時において、表示部位置検出部7の検出状態を確認し(ステップS101)、検出状態が開状態かどうかを判定する(ステップS103)。そして、開状態であれば、表示する向きを現在と180°回転するよう、例えば表示部6に設定もしくは指示する(ステップS105)。
【0027】
以後は、表示部位置検出部7の検出状態を例えば定期的に確認し(ステップS107)、状態に変化があれば(ステップS109、「Y」)、表示方向を180°回転させ(ステップS111)、変化がなければ(ステップS109、「N」)表示方向はそのままとする処理を繰り返す。
【0028】
このように、表示部6が開状態になった場合及び開状態から閉状態に戻った場合にそれぞれ表示方向を180°回転させることで、いずれの状態においても正しい向きで文字が表示されるため、被検者が特に意識することなく、容易かつ確実に表示内容を把握することが可能になる。
【0029】
なお、図3の例では、表示部位置検出部7の検出状態を確認しに行く構成であったが、例えば表示部位置検出部7が状態変化を検出した場合にCPU1へ割り込みをかける構成とし、割り込み処理として表示方向の回転処理を行うようにしてもよい。
【0030】
以上説明したように、本実施形態によれば、携帯型心電計の表示部を本体に対して回動可能に支持し、表示画面の角度を表示部の操作のみで変更することが可能であるため、装着時に表示内容を把握することが容易である。また、表示部が開状態となった場合には開状態で正しく文字が表示されるように表示方向を変更することにより、装着状態においても表示内容を容易かつ正確に把握することが可能になる。さらに、操作部を構成するスイッチ、ボタン等のうち、表示内容を見ながら行う操作に必要なものを表示部6に設けることにより、開状態での操作を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態に係るホルタ心電計の構成例を示すブロック図である。
【図2】、
【図3】本発明の実施形態に係るホルタ心電計の外観例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係るホルタ心電計における表示制御処理を説明するフローチャートである。
【図5】従来の携帯型生体信号測定装置における問題点を説明する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサにより検出された生体信号を受信し、外部機器に出力又は内蔵した記憶装置に記録する携帯型生体信号測定装置であって、
装置本体と、
装置の動作状態や測定したデータを表示するための表示部とを有し、
前記表示部が、その上端部分を軸として回動可能に前記装置本体に支持されていることを特徴とする携帯型生体信号測定装置。
【請求項2】
前記表示部が前記装置本体に対して所定量以上回動したことを検出する位置検出手段と、
前記位置検出手段の前記検出に応答して、前記表示部における表示方向を変更させる制御手段とをさらに有することを特徴とする請求項1記載の携帯型生体信号測定装置。
【請求項3】
前記携帯型生体信号測定装置に対して指示を与えるための、複数の入力手段から構成される操作部をさらに有し、
前記操作部を構成する前記複数の入力手段の一部が前記表示部に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の携帯型生体信号測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate