説明

携帯型紙幣識別装置

【課題】紙幣の識別を精度良く行うことの可能な操作性の良い携帯型紙幣識別装置を提案すること。
【解決手段】携帯型紙幣識別装置1は、掌に乗るサイズのケース2に紙幣挿入口6および紙幣排出口7を形成し、紙幣挿入口6に挿入した紙幣9を内蔵の紙幣搬送機構によって紙幣排出口7に向けて搬送し、搬送される紙幣9の担持情報を磁気ヘッド32および3組のホトセンサ33,34,35からなる読取部によって読み取り、読み取った情報に基づき制御部41において当該紙幣9の真偽を識別している。紙幣搬送機構によって定まった速度で搬送される紙幣を読み取るので、紙幣担持情報を常に適切に読み取ることができる。よって、識別精度の高い携帯型紙幣識別装置が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精度の高い紙幣識別を行うことのできる操作性の良い携帯型紙幣識別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
偽札が流通することを阻止するためには、商品の販売時などにおいてその場で受け取った紙幣の真偽を識別できることが望ましい。このために、各種の携帯型紙幣識別装置が提案され、商品化されている。
【0003】
既存の携帯型紙幣識別装置は、紙幣担持情報を磁気センサ、ホトセンサなどによって読み取って識別する形式のもの、紫外線などの特定波長の光を紙幣に照射して紙幣の発光状態を目視することにより識別する形式のもの等が知られている。所定レベル以上の識別精度を確保するためには前者の方式が望ましい。
【0004】
センサを用いて紙幣担持情報を読み取る方式の携帯型紙幣識別装置としては、小型偽造紙幣識別機(神鋼電機株式会社製)が知られており、この識別機は、そのケースの間に紙幣を挟みボタンを押すと紙幣の真偽の識別が行われる電池駆動式の構造となっている。また、簡易米ドル・ユーロ鑑別器MD100型(日本シーディーアール株式会社製)が知られており、この鑑別器は、ケースに紙幣を挟んだ状態で紙幣を手前に引くことにより紙幣担持情報が読み取られてその識別が行われるハンドスキャン方式となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の携帯型紙幣識別装置において、ケースに挟んだ紙幣を読み取る場合には、紙幣を挟む位置、紙幣の皺、折れ曲がりなどに起因して紙幣担持情報の読み取りが適切に行われない可能性がある。また、紙幣を手で引きながら紙幣担持情報を読み取る場合には、紙幣の移動速度にばらつきがあるので、やはり紙幣担持情報を適切に読み取ることができない可能性がある。紙幣担持情報の読み取りが不十分であると、真札が偽札であると識別される可能性もあり、精度良く紙幣の真偽を識別できない。
【0006】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、精度良く紙幣を識別することのできる携帯型紙幣識別装置を提案することにある。
【0007】
また、本発明の課題は、持ち易く操作性の良い携帯型紙幣識別装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の携帯型紙幣識別装置は、
掌に乗るサイズのケースと、
このケースに形成されている紙幣挿入口および紙幣排出口と、
前記紙幣挿入口から挿入された紙幣を前記紙幣排出口に向けて搬送して当該紙幣排出口から排出するために、前記ケースに内蔵されている紙幣搬送機構と、
前記紙幣搬送機構によって搬送される紙幣に担持されている紙幣担持情報を読み取るために、前記ケースに内蔵されている読取部と、
この読取部により読み取られた紙幣担持情報に基づき紙幣の真偽を識別する識別機能を備え、前記ケースに内蔵されている制御部と、
前記制御部による識別結果を報知するために前記ケースの外面あるいは内部に配置されている識別結果出力部と、
前記ケースに内蔵されている電池式の電源部と、
前記ケースの外面に配置されている電源スイッチとを有していることを特徴としている。
【0009】
本発明の携帯型紙幣識別装置は、掌に乗るサイズのケースに紙幣挿入口および紙幣排出口を形成し、紙幣挿入口に挿入した紙幣を紙幣搬送機構によって紙幣排出口に向けて搬送し、搬送される紙幣の担持情報を読取部によって読み取り、読み取った情報に基づき制御部において当該紙幣の真偽を識別するようになっている。紙幣搬送機構によって定まった速度で搬送される紙幣を読み取るので、紙幣担持情報を常に適切に読み取ることができる。よって、識別精度の高い携帯型紙幣識別装置が得られる。
【0010】
ここで、本発明の携帯型紙幣識別装置の前記ケースは、手によって保持するための装置保持側部分と、前記紙幣挿入口および前記紙幣排出口が形成されている紙幣識別側部分とを備えており、当該携帯型紙幣識別装置の重心が前記装置保持側部分に位置していることを特徴としている。
【0011】
例えば、重量のある前記電池式の電源部を前記装置保持側部分に内蔵することにより、重心位置を前記装置保持側部分に配置することができる。
【0012】
重心が位置する装置保持側部分を手で持てば、自然と、紙幣識別側部分が上になった状態で携帯型紙幣識別装置が保持される。この結果、紙幣挿入口への紙幣の挿入が容易となり、持ちやすく、操作しやすい携帯型紙幣識別装置を得ることができる。
【0013】
また、前記ケースを偏平な直方体形状のものとすることができる。この場合には、当該ケースにおける長辺方向の一方の側の部分を前記装置保持側部分とし、他方の側の部分を前記紙幣識別側部分とすればよい。そして、前記紙幣識別側部分の内部に、前記ケースの短辺方向に延びる前記紙幣搬送路を形成し、短辺方向の一方のケース側面に前記紙幣挿入口を形成し、他方のケース側面に前記紙幣排出口を形成すればよい。
【0014】
さらに、この場合には、前記装置保持側部分と前記紙幣識別側部分の境界に位置する前記ケースの表面部分に前記電源スイッチを配置すれば、装置保持側部分を握った手の親指などによって電源スイッチを操作し易くなる。また、前記紙幣識別側部分における前記ケースの表面部分に、前記識別結果出力部として機能する複数個のLEDランプを配置すれば、ケースを持った手によって識別結果出力部が隠されて見えないなどの弊害も発生しないので望ましい。
【0015】
次に、本発明の携帯型紙幣識別装置では、前記識別結果出力部が、LEDランプなどの視覚情報表示部、ブザーなどの聴覚情報表示部、および、振動などの触覚情報表示部のうちのいずれか一つであることを特徴としている。例えば、識別結果を相手に知られたくない場合などにおいては、振動などの触覚情報表示部を用いることが望ましい。
【0016】
また、本発明の携帯型紙幣識別装置では、前記電源部に装着されている電池は充電式電池であり、前記ケースには、前記電池を充電するために用いる充電用のプラグ差込口が配置されていることを特徴としている。プラグ差込口として、ACアダプター用プラグ差込口を備えていてもよい。一般には、充電用およびACアダプター用の共通のプラグ差込口が用いられる。
【0017】
さらに、本発明の携帯型紙幣識別装置では、前記ケースに、前記制御部と外部との間でデータ通信を行うための通信用コネクタが配置されていることを特徴としている。また、制御部に記憶手段を追加するためのインターフェイスコネクタを備えていても良い。
【0018】
一方、本発明の携帯型紙幣識別装置の前記制御部は、電源がオフ状態において、前記電源スイッチが所定時間以上継続して操作され続けた場合、および/または、前記紙幣挿入口に紙幣が挿入されたことが検出された場合に、電源をオンに切り替えることを特徴としている。このようにすれば、使用していない状態で電源スイッチが不用意に操作されて電源がオンして無駄に電力が消費されてしまうという弊害を防止できる。
【0019】
また、使用中に電源スイッチが不用意に操作されて電源がオフされてしまうことを防止するためには、電源がオン状態において、前記電源スイッチが所定時間以上継続して操作され続けた場合に電源をオフに切り替えることが望ましい。さらに、電源を切り忘れて無駄な電力が消費されることを防止するためには、前記紙幣挿入口に紙幣が継続して所定時間以上に亘って挿入されない場合に電源をオフに切り替えることが望ましい。
【0020】
本発明において、前記読取部で読み取られた後の紙幣が前記紙幣排出口から落下するのを防止するための紙幣落下防止機構を有していることが望ましい。
【0021】
また、各種の紙幣を識別できるようにするために、識別モードを切り替えるために操作される少なくとも一つの手動操作部材を有し、前記制御部の前記識別機能として、同一通貨における金種の異なる紙幣のそれぞれを識別するための複数の金種別識別モード、異なる通貨の紙幣を識別するための複数の通貨別識別モード、紙幣識別精度の異なる複数の精度別識別モードのうちの少なくとも一つを用意しておき、前記制御部は、前記手動操作部材が操作されると、前記識別モードの切替制御を行うようにすることが望ましい。
【0022】
これに加えて、使用場所、使用状況などに応じて識別精度を変更できるようにするために、前記制御部の前記識別機能として、紙幣識別精度の異なる複数の精度別識別モードを用意しておくことが望ましい。
【0023】
次に、手動操作部材の代わりに、加速度を検出する加速度センサを前記ケースに内蔵しておき、前記制御部は、予め定めた値以上の加速度が検出されると、識別モードの切替制御を行うようにすることもできる。このようにすれば、携帯型紙幣識別装置を手で持って振ることにより、識別モードを切り替えることができる。
【0024】
また、加速度センサを用いて、電源のオンオフを切り替えるようにしてもよい。
【0025】
次に、本発明の携帯型紙幣識別装置は、
前記紙幣挿入口を封鎖しており、挿入される紙幣によって当該紙幣挿入口を開く方向に退避させることのできる挿入口側防塵フラップと、
前記紙幣排出口を封鎖しており、前記紙幣搬送機構によって前記紙幣排出口に向けて排出される紙幣によって当該紙幣排出口を開く方向に退避させることのできる排出口側防塵フラップとを有していることを特徴としている。
【0026】
携帯型紙幣識別装置は、屋外などにおける塵、埃が発生しやすい環境下で使用されることが多い。紙幣挿入口および紙幣排出口が開口状態のままであると、これらを介して外部から塵、埃などの異物が内部に侵入しやすい。異物が内部に侵入して紙幣搬送機構の駆動部分に入り込むと、動作不良などの不具合が発生する。不具合を解消するためには、分解、解析、組立などの多くの工数が必要になる。
【0027】
本発明では、紙幣識別動作を行うとき以外は、紙幣挿入口および紙幣排出口が封鎖されている。したがって、外部から塵、埃などの異物が内部に侵入して不具合が生ずることを回避あるいは抑制できる。
【0028】
ここで、前記排出口側防塵フラップは、紙幣排出方向にのみ開くことのできる状態で前記紙幣排出口を封鎖していることが望ましい。誤って、紙幣排出口から紙幣を挿入しようとした場合には、排出口側防塵フラップが開かないので、誤挿入を防止でき、また、誤挿入に起因して内部に紙幣が詰まってしまうという弊害も回避できる。
【0029】
また、挿入側防塵フラップおよび排出側防塵フラップは、ばね部材によって閉じ方向に付勢しておけばよい。
【0030】
この場合には、ばね部材によって閉じ方向に付勢されている排出口側防塵フラップによって、紙幣排出口から排出される紙幣が押し付けられて、紙幣排出口から落下することを防止できる。よって、ばね部材による付勢力を適切に設定しておけば、当該排出口側防塵フラップを利用して、読取部で読み取られた後の紙幣が紙幣排出口から落下することを防止するための紙幣落下防止機構を構成することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の携帯型紙幣識別装置は、紙幣挿入口から挿入された紙幣を内蔵の紙幣搬送機構によって紙幣排出口に向けて所定の速度で搬送しながら紙幣担持情報を読み取り、読み取り情報に基づき紙幣の真偽を識別するように構成されている。したがって、従来のようなケースに挟んだ紙幣の担持情報を読み取る構成や、ケースに挟んだ紙幣が手で引き抜かれる間に担持情報を読み取る構成の携帯型紙幣識別装置に比べて精度良く紙幣の識別を行うことができる。
【0032】
また、手で保持されるケースの装置保持側部分に電池式の電源部などの重量のある部分を配置するなどの部品レイアウトを採用することにより、持ちやすく操作性の良い携帯型紙幣識別装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した携帯型紙幣識別装置の実施の形態を説明する。
【0034】
図1は本発明を適用した携帯型紙幣識別装置を示す外観斜視図である。携帯型紙幣識別装置1は、偏平な直方体形状をしたケース2を備えており、このケース2は例えば長辺方向Hの寸法が120mm、短辺方向Wの寸法が60mm、厚さが25mm程度の大きさであり、平均的な成人の掌に乗るサイズのものである。ケース2は厚さ方向に重ね合わせた表面側ケース片3aと、裏面側ケース片3bから構成されており、この内部に各部が配置されている。
【0035】
ケース2の長辺方向Hの一方の側の端部が装置保持側部分2Aとされ、それ以外の部分が紙幣識別側部分2Bとされている。装置保持側部分2Aには重量のある充電式電池4が内蔵された電源部5が配置されており、携帯型紙幣識別装置1の重心が、ケース2の長辺方向Hにおける中心よりも当該装置保持側部分2Aの側に位置している。この装置保持側部分2Aの領域内に重心が位置していることがより望ましい。
【0036】
ケース2における紙幣識別側部分2Bの一方の側面部分2aには紙幣挿入口6が開いている。反対側の側面部分2bには紙幣排出口7が開いている。これらの間には、ケース2の内部をケース短辺方向Wに延びる紙幣搬送路8が形成されている。紙幣挿入口6から挿入された紙幣9は、当該紙幣搬送路8に沿って、紙幣排出口7に向けて搬送される。
【0037】
ケース2の紙幣識別側部分2Bにおける表面部分2cには、その一方の角部分に2個のLEDランプ11、12が配置されている。LEDランプ11は緑色発光LEDであり、紙幣が真札の場合に点灯駆動され、LED12は赤色発光LEDであり、紙幣が偽札の場合に点灯駆動される。ケース2の表面部分2cにおける紙幣識別側部分2Bと装置保持側部分2Aの境界部分には、その短辺方向Wの中央に電源スイッチ13が配置されている。
【0038】
ケース2の側面部分2aにおける紙幣挿入口6の隣接位置には、充電式電池4を充電するための充電用プラグ差込口14が配置されている。このプラグ差込口14はACアダプター用プラグ差込口としても機能し、AC電源を用いることも可能となっている。また、ケース2の紙幣識別側部分2Bの側の端面2dには外部との間でデータ通信を行うために用いる通信用コネクタ15が配置されている。
【0039】
図2は紙幣識別側部分2Bの内部の概略構成および制御系を示す説明図である。この図も参照して説明すると、ケース2の紙幣識別側部分2Bの内部には、紙幣挿入口6から挿入された紙幣9を紙幣搬送路8に沿って搬送して紙幣排出口7から排出するための紙幣搬送機構が組み込まれている。紙幣搬送機構は、紙幣搬送路8の下側に沿って、短辺方向Wに延びる左右一対の搬送ベルト21A、21Bを備え、これらの搬送ベルト21A、21Bは、それぞれ、駆動側ローラ22A、22Bと、従動側ローラ23A、23Bとの間に架け渡されている。駆動側ローラ22A、22Bは搬送モータ24によって駆動される。紙幣搬送路8の上側には、搬送ベルト21A、21Bを介して、駆動側ローラ22A、22B、従動側ローラ23A、23Bをそれぞれ押圧している送りローラ25A、25B、26A、26Bが配置されている。
【0040】
紙幣搬送路8における紙幣挿入口6の近傍には、紙幣9の挿入を検出するためのセンサ31が配置されている。送りローラ25A、25Bと送りローラ26A、26Bとの間の紙幣搬送路部分には、紙幣の磁気特性を読み取るための磁気ヘッド32と、紙幣の光学特性を読み取るための複数個、例えば、3組の紙幣識別用のホトセンサ33、34、35が配置されている。各ホトセンサ33〜35は例えば透過型ホトセンサであり、紙幣搬送路8の上側には発光素子33a〜35aが配置され、紙幣搬送路8の下側には、受光素子33b〜35bが対向配置されている。紙幣排出口7の近傍には、排出される紙幣9の後端を検出するためのセンサ36が配置されている。
【0041】
各センサ31、36の検出信号、磁気ヘッド32および各ホトセンサ33〜35による検出信号は、制御部41に入力される。制御部41は、ケース2に内蔵した回路基板上に作り込まれている。制御部41は、センサ31の検出信号に基づき、紙幣が紙幣挿入口6から挿入されたことを検出すると、搬送モータ24を駆動して、挿入された紙幣を紙幣搬送路8に沿って内部に送り込む。紙幣搬送路8に沿って送り込まれる紙幣の長手方向の情報(磁気特性パターン、光透過特性パターン)が磁気ヘッド32と、3組のホトセンサ33〜35によって読み取られる。
【0042】
制御部41は、読み取られた紙幣担持情報を、記憶部42に予め記憶保持されている紙幣識別情報と比較して、その真偽の識別を行う識別部43が備わっている。真札であると判断された場合には、制御部41はLEDランプ11を所定の形態で点灯駆動してその旨を報知する。逆に偽札であると判断された場合には、制御部41はLEDランプ12を所定の形態で点灯駆動してその旨を報知する。
【0043】
ここで、制御部41の識別機能として、各種の紙幣を識別できるようにするために、同一通貨における金種の異なる紙幣のそれぞれを識別するための複数の金種別識別モードを用意しておくことができる。例えば、日本通貨の場合には、壱万円札、五千円札および千円札の識別モードを用意しておく。また、識別モード切替用の手動操作部材をケース2の表面部分2cなどに配置しておく。手動操作部材が操作される毎に、制御部41が識別モードを予め定めた順番で、壱万円札識別モード、五千円札識別モードおよび千円札識別モードに切替制御すればよい。
【0044】
また、異なる通貨の紙幣を識別するための複数の通貨別識別モードを用意しておくこともできる。例えば、日本円の識別モードと、中国元の識別モードを用意しておき、手動操作部材が操作されるとこれらのモードの切替を行なうようにすればよい。2種類の手動操作部材を配置しておき、一方が操作されると金種別の識別モードが切り替わり、他方が操作されると、通貨別の識別モードが切り替わるようにすることもできる。
【0045】
これに加えて、使用場所、使用状況などに応じて識別精度を変更できるようにするために、紙幣識別精度の異なる複数の精度別識別モードを用意しておき、これを切り替えるようにしてもよい。
【0046】
さらに、本例の制御部41は電源オンオフ制御部44を備えており、電源がオフ状態において、電源スイッチ13が所定時間以上継続して操作され続けた場合に、電源をオンに切り替えるようにしている。このようにすれば、使用していない状態で電源スイッチ13が不用意に操作されて電源がオンして無駄に電力が消費されてしまうという弊害を防止できる。また、電源がオン状態においても、電源スイッチ13が所定時間以上継続して操作され続けた後に電源をオフに切り替えるようにしている。これにより、使用中に電源スイッチ13が不用意に操作されて電源がオフされてしまうことを防止できる。
【0047】
また、本例の制御部41は、電源スイッチ13とは独立して、紙幣挿入口6に紙幣が挿入されたことがセンサ31で検出された場合に電源をオンに切り替えるようにしている。また、電源を切り忘れて無駄な電力が消費されることを防止するためには、紙幣挿入口6に紙幣が継続して所定時間以上に亘って挿入されない場合には強制的に電源をオフに切り替えるようにしている。
【0048】
なお、制御部41に記憶手段を追加するためのインターフェイスコネクタを、ケース2に配置しておいてもよい。
【0049】
一方、本例の携帯型紙幣識別装置1では、その紙幣排出口7の近傍にソレノイド51を備えた紙幣落下防止機構が備わっている。制御部41は、紙幣の挿入を検出するセンサ31によって紙幣が挿入されたことが検出されると、ソレノイド51を励磁して、その作動ロッド52を紙幣搬送路8から退避させ、紙幣の通過を可能にする。このため、紙幣排出口7の側は常に封鎖されており、紙幣排出口の側から紙幣が挿入されることを防止できる。
【0050】
また、紙幣排出口側のセンサ36によって紙幣の後端が検出されると、ソレノイド51を消磁して、その作動ロッド52を再び紙幣搬送路側に突出させた状態に戻す。この結果、作動ロッド52によって紙幣9の後端部分が上側の紙幣搬送ガイド53との間に挟持される。このため、紙幣排出口7から紙幣が落下してしまうことを防止できる。この状態で、紙幣を手で引き出せばよい。
【0051】
このように構成した本例の携帯型紙幣識別装置1は、掌に乗るサイズのケース2に紙幣挿入口6および紙幣排出口7を形成し、紙幣挿入口6に挿入した紙幣9を内蔵の紙幣搬送機構によって紙幣排出口7に向けて搬送し、搬送される紙幣9の担持情報を磁気ヘッド32および3組のホトセンサ33、34、35からなる読取部によって読み取り、読み取った情報に基づき制御部41において当該紙幣9の真偽を識別している。紙幣搬送機構によって定まった速度で搬送される紙幣を読み取るので、紙幣担持情報を常に適切に読み取ることができる。よって、識別精度の高い携帯型紙幣識別装置が得られる。
【0052】
また、ケース2は、手によって保持するための装置保持側部分2Aと、紙幣挿入口6および紙幣排出口7が形成されている紙幣識別側部分2Bとを備えており、当該携帯型紙幣識別装置1の重心が装置保持側部分2Aの側に位置するように、重量のある電池式の電源部を装置保持側部分2Aに内蔵してある。
【0053】
重心が位置する装置保持側部分2Aを手で持てば、自然と、紙幣識別側部分2Bが上に向いた状態で携帯型紙幣識別装置1が保持される。この結果、紙幣挿入口6への紙幣の挿入が容易となり、持ちやすく、操作しやすい。
【0054】
また、電源スイッチ13が、装置保持側部分2Aと紙幣識別側部分2Bの境界部分に配置されているので、装置保持側部分2Aを握った手の親指などによって電源スイッチ13を操作し易くなる。また、紙幣識別側部分2Bにおけるケース2の表面部分2cに、識別結果出力部として機能する2個のLEDランプ11、12が配置されており、ケース2を持った手によってこれらが隠されて見えないなどの弊害も発生しない。
【0055】
(紙幣挿入口および紙幣排出口の別の例)
ここで、携帯型紙幣識別装置1は一般に店頭などの屋外で使用される場合が多い。そのような場合には、塵、埃などの異物が紙幣挿入口6、紙幣排出口7から内部に侵入して、紙幣搬送機構の駆動部分に入り込み、動作不良などの不具合が発生するおそれがある。このような不具合の発生を回避するためには、紙幣挿入口6および紙幣排出口7に防塵フラップを取り付けて封鎖しておき、紙幣識別時にのみ、防塵フラップを開けるようにすればよい。
【0056】
図3は防塵フラップが備わっている紙幣挿入口および紙幣排出口を備えた携帯型紙幣識別装置を示す説明図である。本例の携帯型紙幣識別装置100の基本構成は上記の携帯型紙幣識別装置1と同一であるので、対応する部位には同一の符号を付し、それらの説明は省略する。
【0057】
紙幣挿入口6には、その内側に当該紙幣挿入口6を封鎖可能な大きさの挿入口側防塵フラップ61が取り付けられている。挿入口側防塵フラップ61は、その両側の端面における上端部分に形成した支軸62を中心として、表面側ケース片3aに形成した軸受部(図示せず)によって開閉可能に支持されている。挿入口側防塵フラップ61は、内側から紙幣挿入口6を封鎖している垂直姿勢の閉じ位置61Aから紙幣挿入方向に所定角度だけ旋回した開き位置61Bまで開くことが可能である。また、挿入口側防塵フラップ61の両側の端部は、それぞれ、捻りばね63によって常に紙幣挿入口6の側に付勢されている。付勢力は、紙幣挿入口6から挿入される紙幣9によって挿入口側防塵フラップ61を開けることができるように調節されている。
【0058】
紙幣排出口7にも、その内側に当該紙幣排出口7を封鎖可能な大きさの排出口側防塵フラップ65が取り付けられている。排出口側防塵フラップ65は、その両側の端面における上端部分に形成した支軸66を中心として、表面側ケース片3aに形成した軸受部(図示せず)によって開閉可能に支持されている。排出口側防塵フラップ65は、内側から紙幣排出口7を封鎖している垂直姿勢の閉じ位置65Aから紙幣排出方向に所定角度だけ旋回した開き位置65Bまで開くことが可能である。排出口側防塵フラップ65における紙幣排出口7とは反対側の裏面側ケース片3bの部位には、ストッパ68が形成されており、排出口側防塵フラップ65を紙幣排出方向とは逆方向に開けることができないようになっている。排出口側防塵フラップ65の両側の端部は、それぞれ、捻りばね67によって常に紙幣排出口7の側に付勢されている。付勢力は、紙幣排出口7に向けて排出される紙幣9によって排出口側防塵フラップ65を開けることができるように調節されている。
【0059】
本例の携帯型紙幣識別装置100では、その紙幣挿入口6および紙幣排出口7がそれぞれ挿入口側防塵フラップ61および排出口側防塵フラップ65によって封鎖されている。したがって、外部から塵、埃などの異物が、紙幣挿入口6あるいは紙幣排出口7から内部に侵入することを防止できる。紙幣識別時には、紙幣9を紙幣挿入口6に挿入すると、挿入された紙幣9によって挿入口側防塵フラップ61が簡単に開くので、紙幣9の挿入操作に支障がない。また、紙幣搬送機構によって紙幣排出口7に向けて搬送される紙幣9によって、紙幣排出口7を封鎖している排出口側防塵フラップ65も簡単に開くので、紙幣排出動作に支障がない。
【0060】
さらに、排出口側防塵フラップ65は、紙幣排出方向とは逆方向には開けることができない。このため、誤って紙幣9を紙幣排出口7の側から挿入しようとしても、排出口側防塵フラップ65によって挿入が阻止される。よって、紙幣の誤挿入を防止することもできる。
【0061】
これに加えて、排出口側防塵フラップ65を用いて紙幣落下防止機構を構成することもできる。すなわち、捻りばね67のばね力を適切に設定しておけば、紙幣排出口7から排出される紙幣を、排出口側防塵フラップ65と、紙幣排出口7の内側面との間に挟持して、落下しないようにすることが可能である。このようにすれば、上記の携帯型紙幣識別装置1のようにソレノイド51を用いて紙幣落下防止機構を構成する必要がない。
【0062】
(その他の実施の形態)
上記の例では、識別結果出力部として2個のLEDランプ11、12を用いているが、液晶表示器を用いることもできる。また、識別結果出力部として、このような視覚表示部の代わりに、あるいは、これと共に、ブザー、音声メッセージなどの聴覚情報表示部、振動などの触覚情報表示部を用いることができる。一般的には、ランプとブザーを併用して、識別結果を報知するようにすればよい。また、相手に識別結果を知られたくない場合などにおいては、振動モータなどのバイブレータを用いた触覚情報表示部を用いればよい。
【0063】
次に、上記の例では、電源スイッチ13により電源をオンオフしているが、例えば、加速度を検出する加速度センサをケース2に内蔵し、制御部41が、予め定めた値以上の加速度が検出されると、電源をオンからオフに、あるいはオフからオンに切り替えるようにしてもよい。このようにすれば、携帯型紙幣識別装置1を手に持って強く振ると、電源をオンオフできる。同様に、識別モードの切替制御も加速度センサを用いて行うことが可能である。
【0064】
なお、以上の説明は紙幣の識別についての例であるが、本発明は、紙幣以外の紙葉類を識別するための携帯型識別装置として用いることができる。例えば、入場券、ギフト券などの識別に用いることができる。本明細書では、理解を容易にするために「紙幣」という用語を用いており、紙幣以外の紙葉類を排除することを意図したものではない。よって、特許請求の範囲の解釈に当たっては当然に紙幣以外の紙葉類が含まれるものと理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明を適用した携帯型紙幣識別装置の外観斜視図である。
【図2】図1の携帯型紙幣識別装置の紙幣識別側部分の断面構成および制御系を示す説明図である。
【図3】本発明を適用した携帯型紙幣識別装置の別の例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0066】
1 携帯型紙幣識別装置
2 ケース
2A 装置保持側部分
2B 紙幣識別側部分
4 充電式電池
5 電源部
6 紙幣挿入口
7 紙幣排出口
8 紙幣搬送路
9 紙幣
11,12 LEDランプ
13 電源スイッチ
14 充電用プラグ差込口
15 通信用コネクタ
21A,21B 搬送ベルト
22A,22B 駆動側ローラ
23A,23B 従動側ローラ
24 搬送モータ
25A,25B,26A,26B 送りローラ
31,36 センサ
32 磁気ヘッド
33,34,35 ホトセンサ
41 制御部
42 記憶部
43 識別部
44 電源オンオフ制御部
51 ソレノイド
52 作動ロッド
53 紙幣搬送ガイド
61 挿入口側防塵フラップ
61A 閉じ位置
61B 開き位置
62 支軸
63 捻りばね
65 排出口側防塵フラップ
65A 閉じ位置
65B 開き位置
66 支軸
67 捻りばね
68 ストッパ
100 携帯型紙幣識別装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掌に乗るサイズのケースと、
このケースに形成されている紙幣挿入口および紙幣排出口と、
前記紙幣挿入口から挿入された紙幣を前記紙幣排出口に向けて搬送して当該紙幣排出口から排出するために、前記ケースに内蔵されている紙幣搬送機構と、
この紙幣搬送機構によって搬送される紙幣に担持されている紙幣担持情報を読み取るために、前記ケースに内蔵されている読取部と、
この読取部によって読み取られた紙幣担持情報に基づき紙幣の真偽を識別する識別機能を備え、前記ケースに内蔵されている制御部と、
前記制御部による識別結果を報知するために前記ケースの外面あるいは内部に配置されている識別結果出力部と、
前記ケースに内蔵されている電池式の電源部と、
前記ケースの外面に配置されている電源スイッチとを有していることを特徴とする携帯型紙幣識別装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記ケースは、手によって保持するための装置保持側部分と、前記紙幣挿入口および前記紙幣排出口が形成されている紙幣識別側部分とを備えており、
当該携帯型紙幣識別装置の重心が前記装置保持側部分に位置していることを特徴とする携帯型紙幣識別装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記電池式の電源部は、前記装置保持側部分に内蔵されていることを特徴とする携帯型紙幣識別装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記ケースは偏平な直方体形状をしており、
当該ケースにおける長辺方向の一方の側の部分が前記装置保持側部分であり、他方の側の部分が前記紙幣識別側部分であり、
前記紙幣識別側部分の内部には、前記ケースの短辺方向に延びる前記紙幣搬送路が形成され、短辺方向の一方のケース側面には前記紙幣挿入口が形成され、他方のケース側面には前記紙幣排出口が形成されていることを特徴とする携帯型紙幣識別装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記装置保持側部分と前記紙幣識別側部分の境界に位置する前記ケースの表面部分に、前記電源スイッチが配置されており、
前記紙幣識別側部分における前記ケースの表面部分に、前記識別結果出力部として機能する複数個のLEDランプが配置されていることを特徴とする携帯型紙幣識別装置。
【請求項6】
請求項1ないし4のうちのいずれかの項において、
前記識別結果出力部は、LEDランプなどの視覚情報表示部、ブザーなどの聴覚情報表示部、および、振動などの触覚情報表示部のうちのいずれか一つであることを特徴とする携帯型紙幣識別装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のうちのいずれかの項において、
前記電源部に装着されている電池は充電式電池であり、
前記ケースには、前記電池を充電するために用いる充電用のプラグ差込口、および/または、ACアダプター用プラグ差込口が配置されていることを特徴とする携帯型紙幣識別装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のうちのいずれかの項において、
前記ケースには、前記制御部と外部との間でデータ通信を行うための通信用コネクタが配置されていることを特徴とする携帯型紙幣識別装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のうちのいずれかの項において、
前記ケースには、前記制御部に記憶手段を追加するためのインターフェイスコネクタを備えていることを特徴とする携帯型紙幣識別装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のうちのいずれかの項において、
前記制御部は、電源がオフ状態において、前記電源スイッチが所定時間以上継続して操作され続けた場合、および/または、前記紙幣挿入口に紙幣が挿入されたことが検出された場合に、電源をオンに切り替えることを特徴とする携帯型紙幣識別装置。
【請求項11】
請求項10において、
前記制御部は、電源がオン状態において、前記電源スイッチが所定時間以上継続して操作され続けた場合、および/または、前記紙幣挿入口に紙幣が継続して所定時間以上に亘って挿入されない場合に、電源をオフに切り替えることを特徴とする携帯型紙幣識別装置。
【請求項12】
請求項1ないし11のうちのいずれかの項において、
前記読取部で読み取られた後の紙幣が前記紙幣排出口から落下することを防止するための紙幣落下防止機構を有していることを特徴とする携帯型紙幣識別装置。
【請求項13】
請求項1ないし12のうちのいずれかの項において、
識別モードを切り替えるために操作される少なくとも一つの手動操作部材を有し、
前記制御部の前記識別機能として、同一通貨における金種の異なる紙幣のそれぞれを識別するための複数の金種別識別モード、異なる通貨の紙幣を識別するための複数の通貨別識別モード、紙幣識別精度の異なる複数の精度別識別モードのうちの少なくとも一つが用意されており、
前記制御部は、前記手動操作部材が操作されると、前記識別モードの切替制御を行うことを特徴とする携帯型紙幣識別装置。
【請求項14】
請求項1ないし12のうちのいずれかの項において、
加速度を検出する加速度センサが前記ケースに内蔵されており、
前記制御部の前記識別機能として、同一通貨における金種の異なる紙幣のそれぞれを識別するための複数の金種別識別モード、異なる通貨の紙幣を識別するための複数の通貨別識別モード、紙幣識別精度の異なる複数の精度別識別モードのうちの少なくとも一つが用意されており、
前記制御部は、予め定めた値以上の加速度が検出されると、前記識別モードの切替制御を行うことを特徴とする携帯型紙幣識別装置。
【請求項15】
請求項1ないし13のうちのいずれかの項において、
加速度を検出する加速度センサが前記ケースに内蔵されており、
前記制御部は、予め定めた値以上の加速度が検出されると、オン状態の電源をオフに、オフ状態の電源をオンに切り替えることを特徴とする携帯型紙幣識別装置。
【請求項16】
請求項1ないし15のうちのいずれかの項において、
前記紙幣挿入口を封鎖しており、挿入される紙幣によって当該紙幣挿入口を開く方向に退避させることのできる挿入口側防塵フラップと、
前記紙幣排出口を封鎖しており、前記紙幣搬送機構によって前記紙幣排出口に向けて排出される紙幣によって当該紙幣排出口を開く方向に退避させることのできる排出口側防塵フラップとを有していることを特徴とする携帯型紙幣識別装置。
【請求項17】
請求項16において、
前記排出口側防塵フラップは、紙幣排出方向にのみ開くことのできる状態で前記紙幣排出口を封鎖していることを特徴とする携帯型紙幣識別装置。
【請求項18】
請求項17において、
前記挿入口側防塵フラップおよび前記排出口側防塵フラップは、それぞれ、ばね部材によって閉じ方向に付勢されていることを特徴とする携帯型紙幣識別装置。
【請求項19】
請求項18において、
前記読取部で読み取られた後の紙幣が前記紙幣排出口から落下することを防止するための紙幣落下防止機構を有しており、
この紙幣落下防止機構は、前記ばね部材によって閉じ方向に付勢されている前記排出口側防塵フラップであることを特徴とする携帯型紙幣識別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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