説明

携帯型芳香器具用の芳香拡散装置、携帯型芳香器具用の芳香拡散装置と携帯型芳香器具とのセット品、および携帯型芳香器具から香りを拡散させる方法

【課題】携帯型芳香器具の内部に収容された芳香剤の香りを強制的に外部に拡散させることができる、携帯型芳香器具用の芳香拡散装置などを提供することを目的とする。
【解決手段】携帯型芳香器具9をセットするためのセット手段(21)と、携帯型芳香器具9の通気孔周面97の一部に沿うような開口形状の空気吹出スリット31と、を備え、携帯型芳香器具9をセット手段(21)にセットした状態において、空気吹出スリット31が、携帯型芳香器具9の通気孔周面97の一部に沿い、複数個の通気孔94の一部に近接対向するように構成されており、空気吹出スリット31と近接対向する通気孔94に向けて空気吹出スリット31から空気を吹出すことで、携帯型芳香器具9から外部に香りが強制的に拡散されるように構成した、携帯型芳香器具用の芳香拡散装置11とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯型芳香器具用の芳香拡散装置、携帯型芳香器具用の芳香拡散装置と携帯型芳香器具とのセット品、および携帯型芳香器具から香りを拡散させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ミント等の香りが心身をリラックスさせるなどの効果(アロマテラピー効果)をもたらす事実が医学的に証明され、これに伴い屋内等で芳香性の植物から抽出した精油(エッセンシャルオイル)を香炉等で揮発させて心身をリラックスさせる一種のアロマテラピーが行われてきている。また、ある種の香りによって、アルツハイマー型認知症が改善したとの報告もあり、注目を集めている。
しかし、従来は上述したように屋内等でアロマテラピーを行うだけであり、身体等に着けて持ち運びすることは困難であるため、いつでもアロマテラピー効果を得ることはできなかった。
【0003】
そこで、身に着けて持ち運びすることが可能な携帯型芳香器具が提唱されている。このような携帯型芳香器具としては、例えば、芳香剤を内部に収容するとともに、この芳香剤に含まれる香りを外部に漂わせるための通気孔を設けたものがある。
【0004】
例えば、鎖を取り付けたペンダントタイプの携帯型芳香器具であれば、首から吊り下げて胸元にアクセサリーとして身に着けることにより、自然気化した香りが徐々に通気孔から外部に漂い、この香りが口からと鼻腔より吸収され大脳に届くことによって、外出先であっても手軽にアロマテラピー効果を得ることができる。
【0005】
このようなペンダントタイプの携帯型芳香器具としては、例えば、下記先行特許文献1に記載されているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平6−38628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、携帯型芳香器具は、比較的小さな通気孔を通じて香りを漂わせるため、広い範囲に香りを拡散させるには不向きであった。例えば、外出先ではペンダントとして使用して個人的に香りを楽しむ一方、自宅等ではその香りを広い範囲に拡散させることができれば好ましいのであるが、広い範囲に香りを拡散させることは難しかった。
【0008】
本発明は、上述の事柄に留意してなされたものであって、携帯型芳香器具の内部に収容された芳香剤の香りを強制的に外部に拡散させることができる、携帯型芳香器具用の芳香拡散装置などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、内部に収容された芳香剤の香りを外部に漂わせるための複数個の通気孔が同一周面上に形成された通気孔周面を備えた携帯型芳香器具をセットして、前記香りを外部に強制的に拡散させる、携帯型芳香器具用の芳香拡散装置であって、前記携帯型芳香器具をセットするためのセット手段と、前記携帯型芳香器具の前記通気孔周面の一部に沿うような開口形状の空気吹出スリットと、を備え、携帯型芳香器具をセット手段にセットした状態において、空気吹出スリットが、携帯型芳香器具の通気孔周面の一部に沿い、複数個の通気孔の一部に近接対向するように構成されており、空気吹出スリットと近接対向する通気孔に向けて空気吹出スリットから空気を吹出すことで、携帯型芳香器具から外部に香りが強制的に拡散されるように構成した、携帯型芳香器具用の芳香拡散装置とした。
【0010】
この携帯型芳香器具用の芳香拡散装置は、ペンダントタイプなどの携帯型芳香器具をセットし、空気吹出スリットから空気を噴出すことで、セットされた携帯型芳香器具から外部に香りを強制的に拡散することができる。空気吹出スリットから空気を吹出すためには、種々の出願時公知手段、またはこれらと均等な手段を用いることができる。
【0011】
セットされる携帯型芳香器具は、側面が円柱状であり、空気吹出スリットは、携帯型芳香器具の通気孔周面の一部に円弧状に沿うような、内向き円弧状の開口形状である、携帯型芳香器具用の芳香拡散装置とすることができる。
【0012】
ここで、セットされる携帯型芳香器具には、内部に収容された芳香剤の香りを外部に漂わせるための四個の通気孔が等間隔で同一周面上に形成されており、内向き円弧状の開口形状の空気吹出スリットの円弧中心角度が、160〜170度である、携帯型芳香器具用の芳香拡散装置とすることが好ましい。
【0013】
この携帯型芳香器具用の芳香拡散装置は、空気吹出スリットの円弧中心角度が160〜170度であることにより、四個の通気孔のうち隣り合う二つの通気孔が空気吹出スリットと近接対向しやすくなり、この二つの通気孔に向けて空気吹出スリットから空気を吹出すことで携帯型芳香器具の香りを強制的に拡散させやすくなる。
【0014】
このとき、セット手段は、横にした携帯型芳香器具が、その側面を上方から嵌合してセットされるように、芳香拡散装置の上面に溝状に形成した断面円弧状の芳香器具嵌合溝であり、空気吹出スリットは、前記芳香器具嵌合溝の内周面に周方向に沿って設けられている、携帯型芳香器具用の芳香拡散装置とすることが好ましい。
【0015】
この携帯型芳香器具用の芳香拡散装置は、携帯型芳香器具のセットが容易である。
【0016】
一方、このとき、セット手段は、携帯型芳香器具が、下端側から挿入してセットされる、芳香拡散装置の上面に形成した芳香器具挿入穴であり、この芳香器具挿入穴は、セットした携帯型芳香器具の複数個の通気孔が、芳香器具挿入穴に入り込んで隠れない程度の深さであり、空気吹出スリットは、前記芳香器具挿入穴の開口部上方に設けられている、携帯型芳香器具用の芳香拡散装置とすることも好ましい。
【0017】
この携帯型芳香器具用の芳香拡散装置も、携帯型芳香器具のセットが容易である。
【0018】
また、前記課題は、上記何れかの携帯型芳香器具用の芳香拡散装置と携帯型芳香器具とがセットになった、携帯型芳香器具用の芳香拡散装置と携帯型芳香器具とのセット品によっても解決される。
【0019】
さらに、前記課題は、内部に収容された芳香剤の香りを外部に漂わせるための複数個の通気孔が同一周面上に形成された通気孔周面を備えた、側面が円柱状の携帯型芳香器具に対して、この携帯型芳香器具の前記通気孔周面の一部に円弧状に沿うような内向き円弧状の開口形状の空気吹出スリットを前記携帯型芳香器具の前記通気孔周面の一部に沿わせて前記複数個の通気孔の一部に近接対向させ、この状態で、前記空気吹出スリットと近接対向する前記通気孔に向けて前記空気吹出スリットから空気を吹出すことで前記携帯型芳香器具から前記香りを外部に強制的に拡散させる、携帯型芳香器具から香りを拡散させる方法によっても解決される。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、携帯型芳香器具の内部に収容された芳香剤の香りを強制的に外部に拡散させることができる、携帯型芳香器具用の芳香拡散装置などを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第一実施形態の携帯型芳香器具用の芳香拡散装置に携帯型芳香器具をセットする様子を示す斜視図である。
【図2】第一実施形態の携帯型芳香器具用の芳香拡散装置に携帯型芳香器具をセットした状態を示す斜視図である。
【図3】図2におけるB−B線を通る垂直断面(四個の通気孔の中央部を含む)を示す拡大断面図である。
【図4】図3の拡大断面図から携帯型芳香器具を取り外した状態を示す拡大断面図である。
【図5】第二実施形態の携帯型芳香器具用の芳香拡散装置に携帯型芳香器具をセットする様子を示す斜視図である。
【図6】第二実施形態の携帯型芳香器具用の芳香拡散装置に携帯型芳香器具をセットした状態を示す斜視図である。
【図7】図6におけるC−C線を通る水平断面(四個の通気孔の中央部を含む)を示す一部拡大断面図である。
【図8】携帯型芳香器具を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図を用いて携帯型芳香器具用の芳香拡散装置(以降、「芳香拡散装置」と省略することがある)などを例示説明する。本発明の芳香拡散装置は、携帯型芳香器具をセットして香りを強制的に拡散させるものであるので、最初に、芳香拡散装置にセットされる携帯型芳香器具について説明した後、芳香拡散装置について説明する。
【0023】
[携帯型芳香器具]
携帯型芳香器具は、内部に収容された芳香剤の香りを外部に漂わせるための複数個の通気孔が同一周面上に形成された構造を備えている。ここで、複数個の通気孔が形成された同一周面を通気孔周面と称する。携帯型芳香器具としては、例えば、ペンダントタイプのものやブローチタイプのものなど種々のタイプのものが考えられるが、本実施形態の芳香拡散装置では、図8に示すような、ペンダントタイプの携帯型芳香器具9がセットされる。ここで、図8(a)は正面図、同図(b)は断面図、同図(c)は同図(a)におけるA−A線を通る水平断面(四個の通気孔の中央部を含む)を示す拡大断面図である。
【0024】
この携帯型芳香器具9は、上部が開口し有底となっている容器本体91と、この容器本体91の開口に着脱自在に取付けられる蓋体92と、この蓋体92を取付けた容器本体91の内部に収納された、芳香剤96が染み込んだ芳香吸収体95と、を備えている。ここで、蓋体92は、蓋体本体と、この蓋体本体の下部から下方に向けて延設された、蓋体本体よりも小径の筒状体と、を備える。そして、この筒状体の内側に芳香吸収体95の上端が嵌め込まれており、芳香吸収体95が嵌め込まれた蓋体92を容器本体91に取付けることで、芳香吸収体95が内部に収納される。本実施形態では、蓋体92の筒状体が容器本体91の開口付近に内嵌めされることで、蓋体92が容器本体91に取付けられる。具体的には、筒状体の外周と容器本体91の開口付近の内周とにネジ溝が切ってあり、これによって、蓋体92の筒状体が容器本体91の開口付近に螺合する構成としてある。
【0025】
また、蓋体92には、筒状体の内側空間を上方に延長するように、蓋体本体の下部から上部に向けて円柱穴が形成されており、この円柱穴と蓋体92の外方を連通させるように、四個の円形状の通気孔94が形成されている。これら四個の通気孔94は、携帯型芳香器具9の同一周面上に等間隔で形成されている。前述したように、四個の通気孔94が形成されている同一周面を通気孔周面97と称する。通気孔周面97は四個の通気孔94を備えた細リング状の周面となる。
【0026】
また、携帯型芳香器具9の上端(蓋体92の上部)にはドーム状突起が設けられ、このドーム状突起に設けた紐孔98に、鎖や紐など(図示せず)が通されて両端が結ばれ、これを首から吊り下げてペンダントとして身に着けることができるようになっている。
【0027】
このペンダントタイプの携帯型芳香器具9を身に着けることによって、携帯型芳香器具9内部の芳香剤96の香りが、四個の通気孔94を通じて外部に漂い、アロマテラピー効果を個人的に得ることができるのである。しかし、その香りを広い範囲に強制的に拡散させることは困難性が高かったため、本願発明者は、これを可能にする芳香拡散装置を発明したのである。以降、芳香拡散装置の各構成要素について説明する。
【0028】
[第一実施形態の芳香拡散装置]
以下、第一実施形態の芳香拡散装置11について、図1〜図4を用いて説明する。本実施形態の芳香拡散装置11は、芳香拡散装置本体110が立方体を基本とした外形形状であり、携帯型芳香器具9が上乗せされる。そして、基本的構成として、セット手段(本実施形態では芳香器具嵌合溝21)と空気吹出スリット31を備えている。これらの要素などについて、以下に詳説する。また、本発明およびその構成要素は、以下の説明に限定されるものではない。
【0029】
1.セット手段(第一実施形態)
セット手段は、携帯型芳香器具9を芳香拡散装置11にセットして取付けるためのものである。本実施形態では、セット手段として、芳香拡散装置11(芳香拡散装置本体110)の上面に溝状に形成した断面円弧状の芳香器具嵌合溝21を用いてある。この芳香器具嵌合溝21には、携帯型芳香器具9が横倒し状態(倒れた状態)でセットされる。即ち、携帯型芳香器具9の側面が嵌合してセットされるように、携帯型芳香器具9の側面よりも若干大きなカーブを描く円弧状の芳香器具嵌合溝21としてある。
【0030】
2.空気吹出スリット(第一実施形態)
空気吹出スリット31は、携帯型芳香器具9の通気孔周面97の一部に沿うような開口形状である。本実施形態では、図1と図3に示すように、携帯型芳香器具9の通気孔周面97の一部(概ね半分)に円弧状に沿うような内向き円弧状の開口形状の空気吹出スリット31としてある。さらに、本実施形態では、空気吹出スリット31が、芳香器具嵌合溝21の内周面に周方向に沿って設けられており、空気吹出スリット31と芳香器具嵌合溝21とでは、それぞれの円弧長とそれぞれの円弧中心角度とが概ね等しくなっている。換言すると、芳香器具嵌合溝21が長さ方向に分断された様な構造となっており、この分断箇所が空気吹出スリット31(空気吹出口)となっているのである。空気吹出スリット31の幅は、携帯型芳香器具の通気孔の直径と概ね同じ寸法であるこことが好ましい。
【0031】
空気吹出スリット31の円弧中心角度θは160〜170度であることが好ましいところ、図4に示すように、本実施形態では170度の円弧中心角度θとしてある。よって、芳香器具嵌合溝21の円弧中心角度も概ね170度となっている。
【0032】
この空気吹出スリット31からは、携帯型芳香器具9の設置方向に向けて空気が吹出される。空気を吹出すための構造については、種々の出願時公知手段、またはこれらと均等な手段を用いることができる。例えば、図3に示すように、芳香拡散装置11に内蔵されたブロア手段4と、このブロア手段4の空気放出口と空気吹出スリット31を連結する空気搬送路51と、ブロア手段4に動作電力を供給する電力供給手段と、を備えた構造とすることができる。電力供給手段としても、種々の手段を用いることができる。本実施形態では、芳香拡散装置11の側面にUSBプラグ6を取付けてあり、パソコンなどの外部USBジャッック(図示せず)を介して外部から電源供給を受ける方式としてある。
【0033】
3.芳香拡散装置の使用方法(第一実施形態)
本実施形態の芳香拡散装置11の使用方法は以下の通りである。まず、図1に示すように、セットするペンダントタイプの携帯型芳香器具9を横に倒して、芳香拡散装置11の芳香器具嵌合溝21に携帯型芳香器具9の側面を嵌合する。そして、携帯型芳香器具9の通気孔周面97の四個の通気孔94の一部が空気吹出スリット31に近接対向するように、携帯型芳香器具9を芳香器具嵌合溝21の内側で長さ方向にスライドさせて位置調整する。
また、空気吹出スリット31の円弧中心角度θは170度としてあるため、通常は、四個の通気孔94のうち二個の通気孔94が空気吹出スリット32と近接対向するようになっている。しかし、そうなっていない場合には、携帯型芳香器具9を芳香器具嵌合溝21の内側で回転させて位置調整を加えることが好ましい。
その後、ブロア手段4の動作スイッチ(図示せず)を入れるなどして、ブロア手段4を動作させ、空気吹出スリット31と近接対向する通気孔94に向けて空気吹出スリット31から空気を吹出させる。
【0034】
図3、図4に示すように、空気吹出スリット31から吹出した空気は、空気吹出スリット31と近接対向する二個の通気孔94から携帯型芳香器具9の内部に入り、芳香剤の香りとともに、残り二個の通気孔94(空気吹出スリット31と近接対向していない通気孔94)から外部に出る。これによって、セットした携帯型芳香器具9から外部に香りが強制的に拡散されるのである。なお、空気吹出スリット31と近接対向していない通気孔94は開放されており、障害物で遮られていないため、ここから芳香剤の香りが外部に拡散されるのである。
【0035】
ここで、携帯型芳香器具9を芳香器具嵌合溝21の内側で長さ方向にスライドさせて位置調整したが、このような調節が不要になるように、携帯型芳香器具9の位置決め手段を芳香拡散装置11に設けてもよい。例えば、芳香器具嵌合溝21の長さを、セットする携帯型芳香器具9に合わせたり、携帯型芳香器具9の上端又は下端を突き当てて位置決めする位置決めピンを、芳香器具嵌合溝21に取付けたりすることなどが可能である。
【0036】
[第二実施形態の芳香拡散装置]
以下、第二実施形態の芳香拡散装置について、図5〜図7を用いて説明する。本実施形態の芳香拡散装置12は、芳香拡散装置本体121と、この芳香拡散装置本体121の上に取付けた半ドーナツ状の空気吹出スリット構成体13と、を備える。セットされる携帯型芳香器具9は第一実施形態と同じである。また、第一実施形態の芳香拡散装置11と同様、基本的構成として、セット手段(本実施形態では芳香器具挿入穴22)と空気吹出スリット32を備えているが、これらは、具体的構成において、第一実施形態とは異なる。これら要素などについて、以下に詳説する。
【0037】
1.セット手段(第二実施形態)
本実施形態では、セット手段として、芳香拡散装置12(芳香拡散装置本体121)の上面に形成した断面円形状の芳香器具挿入穴22を用いてある点で第一実施形態とは異なる。この芳香器具挿入穴22には、携帯型芳香器具9が下端側から挿入されセットされる。即ち、携帯型芳香器具9が挿入可能なように、携帯型芳香器具9の断面形状よりも若干大きな形状の芳香器具挿入穴22としてある。
【0038】
また、芳香器具挿入穴22の深さは、セットした携帯型芳香器具9の複数個の通気孔94が、芳香器具挿入穴22に入り込んで隠れない程度の深さとなっている。即ち、セットした携帯型芳香器具9の通気孔周面97が芳香器具挿入穴22から上方に出るような深さとなっている。ここで、セットする携帯型芳香器具9に合わせて、芳香器具挿入穴22の深さを調節する深さ調節手段を設けてもよい。例えば、芳香器具挿入穴22に挿入して底上げする、底上げスペーサーを備えた構成とすることなどが可能である。
【0039】
2.空気吹出スリット(第二実施形態)
本実施形態でも、図5と図7に示すように、携帯型芳香器具9の通気孔周面97の一部に円弧状に沿うような内向き円弧状の開口形状の空気吹出スリット32を用いてある。しかし、本実施形態では、空気吹出スリット32が、芳香器具挿入穴22の開口部上方に設けられている点で、第一実施形態とは異なる。詳しくは、半ドーナツ状の空気吹出スリット構成体13の内周面に周方向に沿うように空気吹出スリット32が設けられている。
【0040】
本実施形態においても、図7に示すように、空気吹出スリット32の円弧中心角度θは170度としてある。また、半ドーナツ状の空気吹出スリット構成体13の内周面の円弧中心角度も概ね170度となっている。なお、図7(a)は、図6におけるC−C線を通る水平断面(四個の通気孔の中央部を含む)を示す一部拡大断面図であり、同図(b)は、同図(a)の一部拡大断面図から携帯型芳香器具を取り外した状態を示す一部拡大断面図である。
【0041】
また、携帯型芳香器具9をセットした状態で、空気吹出スリット32が、四個の通気孔94のうち二個の通気孔94と必ず近接対向するように、芳香拡散装置12と携帯型芳香器具9の回転位置決め手段を設けてもよい。例えば、携帯型芳香器具9の側面と芳香器具挿入穴22の内周にDカットを施して位置決めするようにしてもよい。
【0042】
この空気吹出スリット32からも、第一実施形態と同様に、携帯型芳香器具9の設置方向に向けて空気が吹出される。空気を吹出すための構造についても、第一実施形態と同様に、種々の手段を用いることができる。例えば、芳香拡散装置12に内蔵されたブロア手段(図示せず)と、このブロア手段の空気放出口と空気吹出スリット32を連結する空気搬送路52と、ブロア手段に動作電力を供給する電力供給手段と、を備えた構造とすることができる。本実施形態では、芳香拡散装置12に二次電池(図示せず)を内蔵し、この二次電池からブロア手段に動作電力を供給する方式としてある。そして、二次電池への充電は、芳香拡散装置の側面に取付けたUSBプラグ6を介して、パソコンなどの外部USBジャック(図示せず)から電源供給を受ける方式としてある。
【0043】
3.芳香拡散装置の使用方法(第二実施形態)
本実施形態の芳香拡散装置12の使用方法は以下の通りである。まず、図5に示すように、セットするペンダントタイプの携帯型芳香器具9を、起立させた状態で、芳香拡散装置12の芳香器具挿入穴22に下端側から挿入する。携帯型芳香器具9の四個の通気孔94は芳香器具挿入穴22の開口部上方に位置する。そして、携帯型芳香器具9の通気孔周面97に設けた四個の通気孔94のうち、その一部が空気吹出スリット32に近接対向する。図7(b)に示すように、空気吹出スリット32の円弧中心角度θは170度としてあるため、通常は、四個の通気孔94のうち二個の通気孔94が空気吹出スリット32と近接対向するようになっている。しかし、そうなっていない場合には、携帯型芳香器具9を芳香器具挿入穴22の内側で回転させて位置調整することが好ましい。
【0044】
その後、ブロア手段の動作スイッチ(図示せず)を入れるなどして、ブロア手段を動作させ、空気吹出スリット32と近接対向する通気孔94に向けて空気吹出スリット32から空気を吹出させる。吹出した空気は、空気吹出スリット32と近接対向する通気孔94から携帯型芳香器具9の内部に入り、芳香剤の香りとともに、残りの通気孔94などから外部に出る。これによって、セットした携帯型芳香器具9から外部に香りが強制的に拡散されるのである。なお、空気吹出スリット32と近接対向していない通気孔94は、障害物で遮られていないため、ここから芳香剤の香りが外部に拡散されるのである。
【0045】
以上、特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、当該技術分野における熟練者等により、本出願の願書に添付された特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変更及び修正が可能である。
【0046】
例えば、芳香拡散装置の筐体を構成する材料は特に制限されない。例えば、金属、アルミ、チタン、木材、プラスチックなどを用いることができる。
【0047】
また、芳香拡散装置に内蔵されたブロア手段も特に制限されない。一般的な回転ファンによるものの他、圧電振動子を用いたいわゆる圧電マイクロブロアなどを使用することができる。これにより、装置の小型化や薄型化が可能となる。圧電マイクロブロアとしては、例えば、特開2009-097393や特開2009-089504に記載されている。
【0048】
また、芳香拡散装置に内蔵されたブロア手段に動作電力を供給する電力供給手段も特に制限されない。例えば、芳香拡散装置に取付けたUSBプラグを介して外部から電源供給を受ける方式や、芳香拡散装置に内蔵した電池手段による方式の他、家庭用AC電源や車のシガーソケットなどから電力供給を受けるための変圧回路を備えた構成などとしてもよい。
【0049】
また、本発明の芳香拡散装置は、様々な場面で活用することができる。例えば、デスクワーク時の使用、スポーツ時の使用、車内での使用、医療施設などでの使用などである。車内に取付ける場合などには、両面テープやマジックテープ(登録商標)を用いたり、吸盤手段などを用いたりしてもよい。
【0050】
また、本発明の芳香拡散装置は、様々な外形とすることができる。本願発明の範囲において、人形や乗り物の形状としたり、種々の装飾を施したりすることができる。本体に木のミニチュアを数多く取付けて、森の様に構成してもよい。
【0051】
また、本発明の芳香拡散装置は単独で製造販売することができるが、携帯型芳香器具とセットの形で、即ち、携帯型芳香器具用の芳香拡散装置と携帯型芳香器具とのセット品として製造販売することもできる。
【符号の説明】
【0052】
11,12 芳香拡散装置
110,121 芳香拡散装置本体
13 空気吹出スリット構成体

21 芳香器具嵌合溝(セット手段)
22 芳香器具挿入穴(セット手段)

31,32 空気吹出スリット

4 ブロア手段

51,52 空気搬送路

6 USBプラグ

9 携帯型芳香器具(ペンダントタイプ)
91 容器本体
92 蓋体
94 通気孔
95 芳香吸収体
96 芳香剤
97 通気孔周面
98 紐孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に収容された芳香剤の香りを外部に漂わせるための複数個の通気孔が同一周面上に形成された通気孔周面を備えた携帯型芳香器具をセットして、前記香りを外部に強制的に拡散させる、携帯型芳香器具用の芳香拡散装置であって、
前記携帯型芳香器具をセットするためのセット手段と、
前記携帯型芳香器具の前記通気孔周面の一部に沿うような開口形状の空気吹出スリットと、を備え、
携帯型芳香器具をセット手段にセットした状態において、空気吹出スリットが、携帯型芳香器具の通気孔周面の一部に沿い、複数個の通気孔の一部に近接対向するように構成されており、
空気吹出スリットと近接対向する通気孔に向けて空気吹出スリットから空気を吹出すことで、携帯型芳香器具から外部に香りが強制的に拡散されるように構成した、
携帯型芳香器具用の芳香拡散装置。

【請求項2】
セットされる携帯型芳香器具は、側面が円柱状であり、
空気吹出スリットは、携帯型芳香器具の通気孔周面の一部に円弧状に沿うような、内向き円弧状の開口形状である、
請求項1記載の携帯型芳香器具用の芳香拡散装置

【請求項3】
セットされる携帯型芳香器具には、内部に収容された芳香剤の香りを外部に漂わせるための四個の通気孔が等間隔で同一周面上に形成されており、
内向き円弧状の開口形状の空気吹出スリットの円弧中心角度が、160〜170度である、
請求項2記載の携帯型芳香器具用の芳香拡散装置。

【請求項4】
セット手段は、
横にした携帯型芳香器具が、その側面を上方から嵌合してセットされるように、芳香拡散装置の上面に溝状に形成した断面円弧状の芳香器具嵌合溝であり、
空気吹出スリットは、
前記芳香器具嵌合溝の内周面に周方向に沿って設けられている、
請求項2又は3記載の携帯型芳香器具用の芳香拡散装置。

【請求項5】
セット手段は、
携帯型芳香器具が、下端側から挿入してセットされる、芳香拡散装置の上面に形成した芳香器具挿入穴であり、
この芳香器具挿入穴は、
セットした携帯型芳香器具の複数個の通気孔が、芳香器具挿入穴に入り込んで隠れない程度の深さであり、
空気吹出スリットは、
前記芳香器具挿入穴の開口部上方に設けられている、
請求項2又は3記載の携帯型芳香器具用の芳香拡散装置。

【請求項6】
請求項1〜5何れか記載の携帯型芳香器具用の芳香拡散装置と携帯型芳香器具とがセットになった、携帯型芳香器具用の芳香拡散装置と携帯型芳香器具とのセット品。

【請求項7】
内部に収容された芳香剤の香りを外部に漂わせるための複数個の通気孔が同一周面上に形成された通気孔周面を備えた、側面が円柱状の携帯型芳香器具に対して、この携帯型芳香器具の前記通気孔周面の一部に円弧状に沿うような内向き円弧状の開口形状の空気吹出スリットを前記携帯型芳香器具の前記通気孔周面の一部に沿わせて前記複数個の通気孔の一部に近接対向させ、この状態で、前記空気吹出スリットと近接対向する前記通気孔に向けて前記空気吹出スリットから空気を吹出すことで前記携帯型芳香器具から前記香りを外部に強制的に拡散させる、携帯型芳香器具から香りを拡散させる方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−102986(P2013−102986A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249272(P2011−249272)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(511277227)有限会社山本精機 (1)
【Fターム(参考)】