説明

携帯型質量分析計のための低流量でのイオン差動移動度ベース周囲圧力イオン事前フィルタリングとイオン集束との結合

イオンの移動度に基づいて大気圧で作動する前置フィルターと、イオン流をイオン検出器の中へと配向させるイオン集束アセンブリ、例えば、質量分析計(MS)とを備える、イオンを分析するための方法および装置。移動度に基づくフィルターは、円筒状電場非対称波形イオン移動度分析計(FAIMS)、平面または吸引示差移動度分析計(DMS)、またはイオン移動度分析計(IMS)であり得る。イオン集束アセンブリは、イオンが通って流れる開口部を有する2つのグリッドと、2つのDC電源と、グリッド間に電場を生成するための時変電源とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、米国特許出願第61/233,565号(名称「Coupling Differential Mobility Based Ambient Pressure Ion Prefiltering and Ion Focusing At Low Flow Rate for a Portable API Mass Spectrometer」、2009年8月13日出願)の利益を主張し、これらの出願の内容は、その全体が本明細書に援用される。
【0002】
(発明の分野)
出願人の教示は、試料調製のためのイオン移動度分析、フィルタリング、およびイオン移動度分析計における検出に関する。
【背景技術】
【0003】
高電界において、イオン移動度は、印加された電界強度に依存するようになり、イオンドリフト速度は、もはや電界強度と線形的には挙動し得ない。電界非対称波形イオン移動度分析計(FAIMS、RF−IMSとしても知られる)は、これらの著しく高い電界を利用し、高低の強度電界におけるその移動度の差異に基づいてイオン種を識別する。
【0004】
FAIMS分析計は、イオン化源、例えば、紫外線光イオン化ランプを使用して、ガス試料を、ガス試料中の特定の化学物質に対応する各イオンタイプを有するイオン種の混合物に変換する。次に、イオン種は、イオンフィルターを通過し、ここで特定の電界が電極間に印加され、フィルターを通過することが許容されるイオンタイプを選択する。一旦フィルターを通ると、そのイオンタイプは、検出器電極に衝突し、電気信号を生成する。試料中のイオン種の混合物を検出するためにフィルター電極間に印加される電界は、生成される範囲およびスペクトル上を走査されることができる。イオンフィルタリングは、イオンフィルター電極間に生成される2つの電界、非対称の周期的な無線周波数(RF)電界、およびDC補償電界の組み合わせを介して達成される。非対称RF電界は、そのピーク正電界強度と負電界強度との間に著しい差異を有する。非対称RF電界は、イオンを散乱させ、それらが中和されるイオンフィルター電極にそれらを偏向させるが、補償電界は、特定イオンの散乱を防ぎ、それが検出器に向けて通過できるようにする。イオンは、低電界でのその移動度に対する、高電界でのイオンの移動度の差異に基づいて、器具内においてフィルタリングされる。つまり、イオンは、低電界におけるそれらの移動度に対する、高電界におけるそれらの移動度の挙動に依存する化合物によって分離される。
【0005】
FAIMSアプローチは、イオンの移動度が、印加された電界強度の影響を受けることを発見した非特許文献1に基づく。40Tdである電界とガス密度との比(E/N)(大気圧においてE>10,700V/cm)より上で、移動度係数K(E)は、電界に非線形の依存性を有する。この移動度は、各イオン種に特異的であると考えられる。以下は、MasonおよびMcDanielによるいくつかの例である(非特許文献1)。クラスターイオンCOCOの依存度は、電界強度が高まるにつれて増加する(参照文献[非特許文献1]における図7−1−K−1)。いくつかの分子および原子イオンの場合、移動度の係数は、より複雑な態様で変化し得る。例えば、原子イオンKの場合、一酸化炭素ガス中の移動度係数は、電界の増加につれて20%増加するが、E/Nが最大200Tdを超えると、係数は減少し始める(参照文献[非特許文献1]における図7−1−K−3)。例えば、N、N、およびN等のいくつかの他のイオンの場合、移動度はごくわずかに変化する(参照文献[非特許文献1]における図7−1−H−1/2)。図1Aは、電界に対する3つの可能なイオン移動度の依存性を概略的に説明する。簡潔にするため、弱電界(Eは約10〜10V/cm)における移動度K(Emin)の低電界値が、3つのイオンタイプすべてに対して同一であると推定する。しかしながら、Emaxにおいて、移動度係数K(Emax)の値は、各イオンタイプに対して異なる。
【0006】
移動度係数K(E)の電界依存性は、E/N[18]の偶数乗の級数展開によって表すことができ、
【0007】
【数1】

式中、K(0)は、弱電界におけるイオンの移動度の係数であり、α、αは、展開係数である。この式は、式2に示されるように、有効なα(E)を使用することによって簡略化することができる[非特許文献2]。
【0008】
【数2】

この式に従って、α(E)>0の場合、移動度係数K(E)は、電界強度とともに増加し、α(E)〜0の場合、移動度K(E)は変化せず、α(E)<0の場合、次に、K(E)は電界強度が増加するにつれて減少する。電界依存性移動度係数の式は、運動量とエネルギーとのバランスの問題にも由来し得る。イオンエネルギーε=3/2kTeffは、その有効温度の関数として表すことができる[18〜20]。
【0009】
【数3】

α(E)<0が、式3において提示されるモデルに基づいて説明され得る場合、イオン中和断面Ω(Teff)の値は、剛球相互作用に関して著しく変化せず[非特許文献2、非特許文献3]、換算質量μは一定である。これらの条件下、イオンの有効温度またはエネルギーが増加すると、移動度K(E)は減少することがわかる。物理的に、この効果は、単純な説明を有する。電界強度が増加すると、イオンは、中和ガスを通してより激しく駆動される。これは、イオン中性衝突頻度を増加させ、平均イオン速度の減少およびイオン移動度係数の減少をもたらす。
【0010】
しかしながら、剛球モデルは、あるイオンを用いると、移動度が電界の増加に伴って増加することを示す実験結果を説明しない(α(E)>0)。E/Nの上昇値での移動度の増加に関する可能な説明の1つは、高電界強度においてイオンクラスター分離が起こることを可能にする場合に提供される。弱電界における大気条件下のイオンは、一般に、遊離状態で存在しない。通常、それらは水等のn極分子が付着したクラスター形態で存在する(例えば、MH(H0))。電界強度が増加すると、イオンの運動エネルギーおよび結果として有効温度(Teff)が、衝突の間に付与されたエネルギーに起因して増加する。これは、イオンクラスターリングのレベルの減少(nの減少)をもたらし、結果としてイオンのイオン断面Ω(Teff)および還元質量μを小さくする。次に、式3に従って、クラスター分離に起因して、断面および換算質量が、Teffの増加を相殺するのに十分な態様で減少する場合、α(E)>0である事例を説明することができる。
【0011】
α(E)〜0である第3の事例は、イオンの有効温度の増加を相殺する、クラスター分離に起因するイオン断面の減少によって説明することができる。これは、イオンの移動度係数の正味変化をもたらさない。
【0012】
イオンフィルタリングのFAIMSの動作機序は、以下に説明される。図1Bに示されるように、中性分子の局所イオン化に起因して、2つの電極間の狭い間隙において同一の位置に形成される電界に対する異なる移動度係数の依存性を有する3種類のイオン(すなわち、α(E)>0、α(E)<0、α(E)〜0)を考慮されたい。キャリアガス流は、これらのイオンを間隙の間のドリフト管の縦下方に輸送する。次に、非対称RF電界が電極に印加されると、イオンは、キャリアガスとともにドリフト管を下方に移動しながら、RF電界に応答して、キャリアガス流に対して垂直方向に振動する。最大電界強度|Emax|>10,000V/cmおよび最小電界強度|Emin|<<|Emax|を有する簡素化された非対称RF電界波長(図1C)をここで使用し、RF−IMSの動作原理を説明する。非対称RF波形は、時間平均電界がゼロであるように設計され、
【0013】
【数4】

は、高電界が印加される期間の部分であり、tは、低電界が印加される時間である。βは、期間の高電界および低電界の部分において曲線下面積に対応する定数である。y方向のイオン速度は、以下によって求められる。
【0014】
【数5】

ここで、Kは、イオン種のイオン移動度の係数であり、Eは、電界強度である。ここで、Kは、イオン種のイオン移動度の係数であり、Eは、この事例全体においてy方向の電界強度である。正極性RF電圧パルス(t中)の増幅は、10,000V/cmを超える電界強度を生成し、次に上部電極に向かう速度
【0015】
【数6】

は、図1Aに示されるように、高電界条件での各イオンの移動度Kupの係数が異なるので、イオン種のそれぞれに対して異なる(図1B)。α(E)>0を有するイオンは、より速く移動し、α(E)<0を有するイオンは、最小速度を有し、したがって、各イオンの軌道の傾斜も異なる。期間(t)の次の部分において、RF電界の極性が一旦切り替わると、3つのイオンタイプのすべてが同一速度
【0016】
【数7】

で、下部プレートに向かって下方に移動し始める。この低電界強度条件において(図1Aを参照)、3つのイオンタイプのすべてが同一の移動度係数Kdownを有する。したがって、3つのイオン軌道のすべては、期間のこの部分において同一の傾斜を有する(図1B)。
【0017】
y方向のその初期位置からのイオン移動は、y方向のイオン速度に電界が印加される時間Δtの長さが掛けられたものである。
【0018】
【数8】

印加されたRF電界の1つの期間において、イオンは、正および負のy方向の両方に移動する。式2を式5に代入することによって、RF電界の1つの期間にわたるイオンの平均移動は、以下のように表記され得る。
【0019】
【数9】

式1を使用して、この式は、以下のように書き換えることができる。
【0020】
【数10】

βは、印加されたRF電界によって決定される定数であるので、RF電界の期間T=t+t当たりのイオンのy移動は、その高および低電界条件の間のイオン移動度の変化に依存する。キャリアガスがz方向にイオンを輸送すると仮定する。イオンフィルタープレート間のイオン滞留時間tres中におけるその初期位置からの(電界に起因する)総イオン移動Y(y方向)は、以下のように表すことができる。
【0021】
【数11】

イオンフィルター領域内の平均イオン滞留時間は、式9によって求められる。Aは、フィルター領域の断面積であり、Lは、イオンフィルター電極の長さであり、Vは、イオンフィルター領域の体積であり、V=AL、Qはキャリアガスの体積流量である。
【0022】
【数12】

式9を式8に代入すると、式1からβ=|Emax|tとなり、RFパルスの負荷サイクルをD=t/Tとして定義する。イオン種の移動に関する式である式8は、以下のように書き換えることができ、
【0023】
【数13】

式中、Yは、ここでイオンフィルター領域の平均イオン滞留時間に基づくy方向のイオンの総移動である。式10から、間隙におけるイオンの垂直移動は、低および高電界強度条件の間の移動度係数の差異に比例することは明らかである。異なるΔK値を有する異なるイオン種は、指定のtresに対するYの異なる値まで移動する。最大電界値、イオンフィルター領域の体積、負荷サイクル、および流量を含むすべての他のパラメータは、一次的にすべてのイオン種に対して本質的に同一である。
【0024】
RF電界に加えて、低い強度DC電界(|E|<|Emin|<<|Emax|)が、イオンの平均RF誘導(y配向)運動とは反対の方向に印加される場合、特定イオン種の軌道は、「直線化」され得る(図1D(1)、1D(2)、1D(3)を参照されたい)。これは、特定のイオン種が、イオンフィルター電極間を制約なく通過できるようにする一方で、すべての他の種のイオンは、フィルター電極の中へと偏向させられる。フィルターを「調整」し、RF誘導された運動を補償するDC電圧は、イオン種に特徴的であり、補償電圧と呼ばれる。ガス試料中のイオンの全体スペクトルは、フィルターに印加されたDC補償電圧を傾斜させるか、または一掃することによって得ることができる。イオン電流に対する一掃電圧の値は、RF−IMSスペクトルを形成する。イオンフィルター電極の1つに印加される電圧を一掃する代わりに、固定DC電圧(補償電圧)が印加される場合、分析計は、連続イオンフィルターとして作動し、1種類のみのイオンを通過させる。
【0025】
IMS分析器または上述されるFAIMS分析器等のイオン分析器へのイオン流またはそれに沿ったイオン流を集束および/または制御することによってイオンのより多くの部分が分析に供され得るので、イオン分析器の感度は、著しく強化され得る。イオン集束は、動作のために低い電力、サイズ、および重量を要する低流量分析器の使用も可能にし得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0026】
【非特許文献1】W.McDaniel and Edward A.Mason,The mobility and diffusion of ions in gases,John Wiley & Sons,1973
【非特許文献2】T.W.Carr,Plasma Chromatography,Plenum Press,New York and London,1984
【非特許文献3】E.A.Mason and E.W.McDaniel,Transport Properties of Ions in Gases,Wiley,New York,1988
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
したがって、イオン分析器の一部分へのイオン流またはそれに沿ったイオン流の集束および制御を向上させる方法および装置を提供することが、出願人の教示の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0028】
イオン集束を向上させる1つのアプローチは、イオンの流路に沿ったイオン集束アセンブリを用いることである。イオン集束アセンブリは、イオン分析器、例えば、微分移動度分析計(DMS)、イオン移動度分析計(IMS)、質量分析計(MS)、またはそれらの組み合わせの入口の上流および/または前に位置してもよい。
【0029】
別の態様において、デュアルチャネルイオン移動度ベースのフィルターを、前置フィルターとしてMSに用いて、干渉物質の量を著しく減少させるか、または他の望ましくない粒子が分析のためのMSに進入しないようにし得る。デュアルチャネルイオン移動度ベースのフィルターは、IMSおよびDMSの少なくとも1つを含んでもよい。1つのチャネルは、周囲の環境から試料を受容し得る一方で、二番目のチャネルは、純粋および/または清潔な輸送ガスを含んでもよい。試料イオンの一部分を第1のチャネルから第2のチャネルに配向した後に、第2のチャネルのイオンは、次に、著しく少ない量の望ましくない粒子を有するMSに送達されてもよい。したがって、MSの感度および/または選択性は、大幅に強化され得る。
【0030】
さらなる態様において、MSの前置フィルターとして動作するDMSを有する小型分析器システムは、MSへのイオン入力においてイオン集束を用いることによって実現され、MS入力オリフィスのサイズを減少させ、MSへの必要な流量を減少させ、MS内に真空を維持するために必要とされる真空ポンプのサイズおよび電力を低減し、それによってDMS−MS分析器システムの全体サイズおよび電力消費要件を大幅に減少させる。通常、DMSは、試料分析のためにMSよりも著しく高い流量を必要とする。MS内で十分な真空を維持しながら、高い流量を支持するために、MSは、真空を維持するために十分な電力および能力の1つまたは複数のポンプを用いなければならない。例えば、MSは、DMS前置フィルターからの1リットル/分流量を支持するために必要とされ得る。より小型のDMS−MSシステムの場合、真空ポンプのサイズは、DMS−MSシステムの全体サイズに関する重大な欠点となる。したがって、MS入口においてイオン集束を用いることによって、機側操作可能であり、可搬式であり、携帯可能であり得る、電力要件の低い小型DMS−MS分析器システムが実現される。
【0031】
MSとともにDMSを用いる利点は、例えば、異性および/または等圧化合物が同一の質量対電荷(m/z)比を有する場合でさえも、DMSがそれらの化合物を区別できることである。異なる等圧化合物は、通常異なる形態または構造を有するので、異なる等圧化合物は、異なるイオン移動度特性を有し、したがって、DMSによって区別または分離され得る。そのため、MS単独では同一のm/zを有する異なる化合物を区別できないが、DMS−MSシステムは、MSを使用する利点を保持しながら、この問題を補償する。
【0032】
前述の説明および図面において、少なくとも以下の問題に取り組む:1)可搬式MSの低流量インターフェース、2)大気圧条件下での有効なイオン集束、および3)デュアルチャネル分析器システム。
【0033】
とりわけ、記載されるシステムおよび方法は、複数のイオン流で配置されたイオンを受容するためのイオン入口、イオンを検出するためのイオン検出器、およびイオン入口からの複数のイオン流を少なくとも1つの集束イオン流に集め、少なくとも1つの集束イオン流をイオン検出器に向かって配向するためのイオン集束アセンブリ、ならびに大気圧作動式イオン前置フィルターを含む試料分析システムを含む。
【0034】
試料分析システムは、少なくとも1つのイオン流を集束させ、あるイオン種がイオン検出器を通過することを選択的に可能にするための少なくとも1つのフィルターチャネルを含むことができる。一態様において、少なくとも1つのフィルターチャネルは、移動度ベースのフィルターを含む。移動度ベースのフィルターは、円筒状FAIMS、平面DMS、IMS、および吸引DMAから成る群から選択することができる。
【0035】
一態様において、イオン集束アセンブリは、イオンが通って流れ得る少なくとも1つの開口部を有する第1のグリッドと、イオンが通って流れ得る少なくとも1つの開口部を有する第2のグリッドと、第1および第2のDC電源と、時変電源とを含む。別の態様において、イオン集束アセンブリは、イオン流に対して垂直な電界を印加するための第1および第2の電極を含む。別の態様において、イオン集束アセンブリは、第1の電極対と第2の電極対との間に電界を印加するための第1および第2の電極対を含み、ここで電界は、イオン流に対して平行である。
【0036】
一態様において、イオン検出器は、イオン検出のための入口オリフィスを含む分析器具を含む。一態様において、イオン検出器は、入口オリフィスを含む質量分析計を含む。一態様において、少なくとも1つの集束イオン流を配向するステップは、縦軸に沿った狭いイオン流への集束イオン流を、質量分析計の入口オリフィスに直接集束させるステップを含む。一態様において、オリフィスの直径は、約100ミクロン、75ミクロン、50ミクロン、25ミクロン、20ミクロン、10ミクロン、および5ミクロンのうちの1つよりもおよそ下回る。
【0037】
一態様において、配向ステップは、縦軸に沿った狭いイオン流への集束イオン流を、イオン移動度ベースフィルターの入口に直接集束させるステップを含む。試料分析システムは、DMS動作に適切な流量、イオン集束、およびイオン検出器への流れを可能にするために最適化された低動力吸入ポンプを含むことができる。一態様において、イオン集束アセンブリは、イオン検出器に向かって直角にイオンを偏向するため、および中性検体が、イオン検出器に導入されることを防ぐための偏向器電極を備える。
【0038】
記載されるシステムおよび方法は、とりわけ、試料を分析するための方法を含み、イオン入口でイオンを受容するステップと、イオンをイオン集束アセンブリに通過させるステップと、イオンを少なくとも1つの集束イオン流に集めるステップと、イオンを大気圧作動式イオン前置フィルターに通過させるステップと、少なくとも1つの集束イオン流をイオン検出器に通過させるステップとを含む。イオンをイオン集束アセンブリに通過させるステップは、少なくとも1つの開口部を介して、イオンを第1のグリッドに通過させるステップと、イオン集束アセンブリを使用してイオンを少なくとも1つの集束イオン流に集めるステップと、少なくとも1つのフィルターチャネルへの少なくとも1つの開口部を介して、少なくとも1つの集束イオン流を第2のグリッドに通過させるステップと、を含むことができる。
【0039】
一態様において、イオンをイオン集束アセンブリに通過させるステップは、イオンをイオン流に対して垂直な電界を通過させるステップと、イオン集束アセンブリを使用して、イオンを少なくとも1つの集束イオン流に集めるステップとを含む。一態様において、イオンをイオン集束アセンブリに通過させるステップは、電極をイオン流に対して平行な電界を通過させるステップと、イオン集束アセンブリを使用して、イオンを少なくとも1つの集束イオン流に集めるステップとを含む。
【0040】
一態様において、試料を分析するための方法は、DCバイアス電圧を、第1および第2のグリッドの少なくとも1つに印加するステップを含む。DCバイアス電圧は、地電圧、基準電圧、正電圧、および負電圧から成る群から選択することができる。
【0041】
一態様において、試料を分析するための方法は、第1および第2のグリッド全体にDC電位の差異を印加し、それによって、第1グリッドと第2グリッドとの間に電界を生成するステップと、第1グリッドと第2グリッドとの間の電界を使用して、イオンを少なくとも1つの集束イオン流に集めるステップとを含む。
【0042】
別の態様において、試料を分析するための方法は、第1および第2グリッド全体に時変電圧を印加するステップと、第1および第2グリッド全体で時変電圧を使用して、イオンを少なくとも1つの集束イオン流に集めるステップとを含む。
【0043】
記載されるシステムおよび方法は、とりわけ、イオン入口でイオンを受容する手段と、イオンをイオン集束アセンブリに通し、イオンを少なくとも1つの集束イオン流に集める手段と、少なくとも1つの集束イオン流にイオン検出器を通過させる手段と、を含む、試料を分析するためのシステムを含む。
【0044】
一態様において、イオンにイオン集束アセンブリを通過させるステップは、少なくとも1つの開口部を介して、イオンを第1のグリッドに通過させるための手段と、イオン集束アセンブリを使用して、イオンを少なくとも1つの集束イオン流に集めるための手段と、少なくとも1つのフィルターチャネルへの少なくとも1つの開口部を介して、少なくとも1つの集束イオン流を第2のグリッドに通過させるための手段とを含む。
【0045】
一態様において、イオンにイオン集束アセンブリを通過させるための手段は、イオンにイオン流に対して垂直な電界を通過させるための手段と、イオン集束アセンブリを使用して、イオンを少なくとも1つの集束イオン流に集めるための手段とを含む。別の態様において、イオンにイオン集束アセンブリを通過させるステップは、イオンにイオン流に対して平行な電界を通過させるための手段と、イオン集束アセンブリを使用してイオンを少なくとも1つの集束イオン流に集めるための手段とを含む。
【0046】
試料を分析するためのシステムは、DCバイアス電圧を第1および第2のグリッドの少なくとも1つに印加するための手段を含む。DCバイアス電圧は、地電圧、基準電圧、正電圧、および負電圧から成る群から選択することができる。
【0047】
一態様において、試料を分析するためのシステムは、第1および第2のグリッド全体にDC電位の差異を印加し、それによって第1のグリッドと第2のグリッドとの間に電界を生成するための手段と、第1のグリッドと第2のグリッドとの間に電界を使用して、イオンを少なくとも1つの集束イオン流に集めるための手段とを含む。試料を分析するためのシステムは、第1および第2のグリッド全体に時変電圧を印加するための手段と、第1および第2のグリッド全体で時変電圧を使用して、イオンを少なくとも1つの集束イオン流に集めるための手段とを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
出願人の教示に関する前述および他の目的、特徴、および利点は、同様の参照機構が異なる図を通して同一の部分を指す、添付の図面において説明されるように、出願人の教示の好適な実施形態に関する以下の特定の記載から明白となるであろう。図面は、必ずしも一定の縮尺ではなく、代わりに、出願人の教示の原理を説明することに重点が置かれる。
【図1A】図1Aは、3つの異なるイオン種の電界に対する移動度依存性を示す。
【図1B】図1Bは、キャリアガス流と非対称無線周波数電界波形の同時影響下での、イオンフィルターの上部平行プレート電極と下部平行プレート電極との間の間隙におけるイオンの軌道を示す。
【図1C】図1Cは、イオンフィルタリングに使用される簡素化された非対称RF電界波形を示す。
【図1D】図1D1は、RF電界によってもたらされた移動を相殺するように印加される補償電圧を示す。図1D2は、印加されたRF電界のみを有する初期位置からのイオンの軌跡、および印加された相補電界のみを有するイオンの軌跡を示す。図1D3は、印加されたRF電界および相補電界の両方を有するイオンの軌跡を示す。
【図2】図2は、出願人の教示の例示的実施形態に従う、化学センサーシステムの概略である。
【図3A】図3Aは、出願人の教示の例示的実施形態に従う、エレクトロスプレーを含む液体試料調製区画を備える、化学センサーシステムを示す。
【図3B】図3Bは、出願人の教示の例示的実施形態に従う、エレクトロスプレーを含む液体試料調製区画を備える、化学センサーシステムを示す。
【図3B1】図3B1は、出願人の教示の例示的実施形態に従う、機械加工エレクトロスプレーヘッドを示す。
【図3C】図3Cは、出願人の教示の例示的実施形態に従う、サーペンタイン電極を示す。
【図3D】図3Dは、出願人の教示の例示的実施形態に従う、筐体を形成する基板を示す。
【図4A】図4Aは、出願人の教示の例示的実施形態に従う、間隙の絶縁基板を有するFAIMS分析計を示す。
【図4B】図4Bは、出願人の教示の例示的実施形態に従う、代替構造電極実施形態を示す。
【図4C】図4Cは、出願人の教示の例示的実施形態に従う、電極の端に重複する絶縁スペーサーを有する、フィルターの側面断面図を示す。
【図4D】図4Dは、出願人の教示の例示的実施形態に従う、スプレーの先端に至る分離チャネルに供給する試料容器を有するエレクトロスプレーヘッドを示す。
【図5A】図5Aは、出願人の教示の例示的実施形態に従う、イオン脱溶媒和のための対称AC無線周波数電界を示す。
【図5B】図5Bは、出願人の教示の例示的実施形態に従う、FAIMSデバイスに統合される脱溶媒和領域を示す。
【図6】図6は、質量分析計に接続される先行技術の円筒状FAIMSを示す。
【図7A】図7Aおよび7Bは、出願人の教示の例示的実施形態に従う、改善された円筒状FAIMSデバイスを示す。
【図7B】図7Aおよび7Bは、出願人の教示の例示的実施形態に従う、改善された円筒状FAIMSデバイスを示す。
【図8】図8は、出願人の教示の例示的実施形態に従う、エレクトロスプレー載置タワーを示す。
【図9A】図9Aは、出願人の教示の例示的実施形態に従う、ガイド電極と協働するエレクトロスプレーヘッドを示す。
【図9B】図9Bは、出願人の教示の例示的実施形態に従う、ガイド電極と協働するエレクトロスプレーヘッドを示す。
【図10A】図10Aは、出願人の教示の例示的実施形態に従う、制御システムを示す。
【図10B】図10Bは、出願人の教示の例示的実施形態に従う、制御システムを示す。
【図11A】図11Aは、出願人の教示の例示的実施形態に従う、チップレセプタクルを示す。
【図11B】図11Bは、出願人の教示の例示的実施形態に従う、質量分析計と連動するチップレセプタクルを示す。
【図12】図12Aおよび12Bは、出願人の教示の例示的実施形態に従う、平面FAIMSを示す。図12Cおよび12Dは、先行技術の円筒状FAIMSデバイスを示す。
【図13A】図13Aおよび13Bは、出願人の教示の例示的実施形態に従う、上基板のオリフィスを通って上から、または側面からのいずれかで、イオン領域内に挿入されるエレクトロスプレーの先端を示す。
【図13B】図13Aおよび13Bは、出願人の教示の例示的実施形態に従う、上基板のオリフィスを通って上から、または側面からのいずれかで、イオン領域内に挿入されるエレクトロスプレーの先端を示す。
【図14A】図14Aおよび14Bは、出願人の教示の例示的実施形態に従う、縦電界駆動実施形態を示す。
【図14B】図14Aおよび14Bは、出願人の教示の例示的実施形態に従う、縦電界駆動実施形態を示す。
【図15A】図15Aおよび15Bは、出願人の教示の例示的実施形態に従う、分割ガス流の実施形態を示す。
【図15B】図15Aおよび15Bは、出願人の教示の例示的実施形態に従う、分割ガス流の実施形態を示す。
【図16】図16は、出願人の教示の例示的実施形態に従う、デュアルチャネルの実施形態を示す。
【図17】図17は、出願人の教示の例示的実施形態に従う、異なるイオン化源の相補電圧に対するケトンの依存を示す。
【図18】図18は、出願人の教示の例示的実施形態に従う、デュアルチャネルの実施形態を示す。
【図19】図19は、出願人の教示の例示的実施形態に従う、検出スペクトルを示す。
【図20】図20は、出願人の教示の例示的実施形態に従う、イオン集束アセンブリを含む、イオン移動度に基づく分析システムを示す。
【図21】図21は、出願人の教示の例示的実施形態に従う、デュアルチャネル移動度分光分析計を含む、試料分析システムを示す。
【図22】図22は、出願人の教示の例示的実施形態に従う、デュアルチャネルシステムのブロック図を示す。
【図23A】図23A〜23Cは、出願人の教示の例示的実施形態に従う、イオン移動度フィルターのイオン強度と相補電圧とのプロットを示す。
【図23B】図23A〜23Cは、出願人の教示の例示的実施形態に従う、イオン移動度フィルターのイオン強度と相補電圧とのプロットを示す。
【図23C】図23A〜23Cは、出願人の教示の例示的実施形態に従う、イオン移動度フィルターのイオン強度と相補電圧とのプロットを示す。
【図24A】図24A〜24Cは、出願人の教示の例示的実施形態に従って、偏向器電極が正および負に偏向される場合、トルエンおよびSF6のイオン移動度フィルターにおける第1のチャネルから第2のチャネルへの移動の係数を図示するプロットを示す。
【図24B】図24A〜24Cは、出願人の教示の例示的実施形態に従って、偏向器電極が正および負に偏向される場合、トルエンおよびSF6のイオン移動度フィルターにおける第1のチャネルから第2のチャネルへの移動の係数を図示するプロットを示す。
【図24C】図24A〜24Cは、出願人の教示の例示的実施形態に従って、偏向器電極が正および負に偏向される場合、トルエンおよびSF6のイオン移動度フィルターにおける第1のチャネルから第2のチャネルへの移動の係数を図示するプロットを示す。
【図25】図25は、MSの高フロー消費を利用する、典型的な先行技術のDMS−MSシステムを示す。
【図26】図26は、出願人の教示の例示的実施形態に従って、MSの低流量大気圧インターフェースを支持するDMS前置フィルターを含む、DMS−MSシステムを示す。
【図27】図27は、出願人の教示の例示的実施形態に従う、イオン集束アセンブリを含む、DMS−MSシステムを示す。
【図28】図28は、出願人の教示の例示的実施形態に従う、低動力吸入ポンプを含む、DMS−MSシステムを示す。
【図29】図29は、出願人の教示の例示的実施形態に従う、DMS流からのライン外に位置したMSインターフェースおよびオリフィスを含む、DMS−MSシステムを示す。
【図30A】図30A〜30Cは、出願人の教示の例示的実施形態に従う、イオン集束アセンブリの例を示す。
【図30B】図30A〜30Cは、出願人の教示の例示的実施形態に従う、イオン集束アセンブリの例を示す。
【図30C】図30A〜30Cは、出願人の教示の例示的実施形態に従う、イオン集束アセンブリの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
出願人の教示に関する好適な実施形態の説明は、以下のとおりである。
【0050】
出願人の教示は、好ましくは、高電界非対称波形イオン移動度分光分析によって可能となる、液体試料中の化合物を分析するための方法および装置を提供する。
【0051】
図2に示される出願人の教示に関する例示的実施形態において、化学センサーシステム10は、試料調製区画10Aと、フィルター区画10Bと、出力区画10Cとを含む。実際に、液体試料Sは、試料調製区画10Aにおいてイオン化され、次に形成されたイオンがフィルター区画10Bを通過およびフィルタリングさせられ、フィルター区画を通過するイオンは、検出のために出力区画10Cに送達される。液体試料調製区画10A、フィルター区画10B、および出力区画10Cは、コントローラ区画10Dの制御および指示下で作動する。好ましくは、コントローラ区画10Dは、システム10の動作を制御し、検出データDを評価および報告する。
【0052】
出願人の教示に関する好適な実施形態において、液体試料調製区画10Aは、液体試料Sを受容、調整、およびイオン化するエレクトロスプレーヘッドを含む。これは、区画10Bにおいて、好適な平面高電界非対称イオン移動度分析計(PFAIMS)フィルターに輸送され、後者は、送達されたイオンをフィルタリングし、関心のイオン種を出力区画10Cに通過させる。出願人の教示に関する種々の実施形態において、出力区画10Cにおける機能は、イオン種の即時検出、またはそこでのイオン種の検出のための質量分析計(MS)等の別の構成要素へのイオンの輸送を含んでもよく、検出されたイオン種を示すデータDの読取値を使用できる。
【0053】
当業者に理解されるように、平坦な表面を有するFAIMSフィルターは、出願人の教示に関する実施形態において好適であるが、出願人の教示に関する実施形態は、フィルター、検出器、流路、電極等を含む、非平面部分および表面によって作動可能である。本明細書におけるPFAIMSの説明は、例示を目的とするものであり、限定ではない。
【0054】
図3A、3Bの実施形態において、液体試料調製区画10Aは、液体試料Sを受領するためのチャンバ14を有する、エレクトロスプレー試料イオン化源またはヘッド12を含む。出願人の教示の実践において、液体試料Sは、溶媒X中に、バイオ化合物、例えば、化合物AおよびBを含有してもよい。出願人の教示は、液体試料中の化合物の1つまたは複数を識別することに努める。
【0055】
区画10Aのエレクトロスプレーデバイスの実践において、高電圧電位18は、コントローラ10Dによって、エレクトロスプレーヘッド12のチャンバ14内の液体試料Sに印加される。コントローラ10Dによって駆動される、エレクトロスプレーの先端20と誘引電極22における液体試料Sとの間の電位差異は、イオン領域23において、試料Sの溶媒X中の化合物A、Bをイオン化する。これは、化合物AおよびBを表すイオン24および26、ならびに溶媒分子28を形成する。好適な実施形態において、イオンおよび溶媒は、流路30に沿って、PFAIMSイオンフィルター40の平行フィルター電極44、46の間のフィルター区画10Bの中に駆動されるか、または引き込まれる。
【0056】
PFAIMSフィルターデバイス40におけるフィルタリングは、特にイオンサイズおよび形状の影響を受ける、イオン移動度の差異に基づく。これは、特徴に基づくイオン種の分離を可能にする。出願人の教示の一実践において、高強度非対称波形無線周波数(RF)信号48およびDC補償信号50は、コントローラ10D内のRF/DC生成器回路によって、フィルター電極44、46に印加される。非対称電界は、高電界強度条件と低電界強度条件との間で交代し、それらの移動度に従って、電界に応答してイオンを移動させる。通常、電界内の移動度は、低電界のそれとは異なる。この移動度の差異は、イオンがフィルター電極間のフィルターを通って縦方向に移動すると、イオンの正味横方向移動をもたらす。補償偏向信号の不在下、これらのイオンは、フィルター電極の1つに衝突し、中和される。選択された補償偏向信号50(または他の補償)の存在下、特定のイオン種は、流路の中心に向かって戻され、フィルターを通過する。したがって、補償された非対称RF信号48の存在下、それらの種に従うイオンの相互からの分離を達成することができる。非選択種は、電極に衝突して中和され、関心の種は、フィルターを通過する。データおよびシステムコントローラ10Dは、どのイオン種がフィルターを通過するかを選択するために、フィルター電極44、46に印加される信号48、50を規制する。
【0057】
当然のことながら、PFAIMSフィルター40を用いて達成され得るような化合物AおよびBのいずれか、または両方の不明瞭な識別が得られるように、イオン24および26を単離することが望ましい。PFAIMSフィルター40は、イオンAとBとをそれらの移動度に基づいて区別し、原則として、コントローラ10Dによって適用される補償に従って、出力区画10Cにおける検出のために一方または他方のみが提示されるようにする。例えば、イオン24は、図3A、3Bにおいて、フィルター40を通過するイオン24’として示される。
【0058】
図3A、3Bを再度参照して、出力区画10Cは、検出器電極70、72を備える検出器69を含む。コントローラ10Dは、フィルター40を通過するイオンの指標として、電極70、72上の電流を測定する。これらの電極は、コントローラ10Dからの偏向信号71、73による電位に保持される。フィルター40を通過したイオン24’は、電極の極性および検出器電極上の制御信号71、73に応じて、コントローラ10Dの制御下、検出器電極70、72上にそれらの電荷を課する。さらに、補償(すなわち、バイアス電圧)を一掃することによって、試料S中のイオン種の完全スペクトルを検出することができる。
【0059】
コントローラ10Dの精密な制御によって、異なる動作レジームを選択することが可能であり、結果として、関心のイオン種のフィルタリングを標的とすることができる。出願人の教示に関する一実施形態の実践において、非対称電気信号48は、補償バイアス電圧50と併せて印加され、結果として、フィルターは、電子コントローラ10Dによって制御されるように、望ましいイオン種を通過させる。同様に、既定の電圧範囲を超えるバイアス電圧50を一掃することによって、試料S中のイオン種の完全スペクトルを達成することができる。
【0060】
別の実施形態において、非対称電気信号は、望ましいイオン種の通過を可能にし、補償は、バイアス電圧を相殺する必要なく、再度、電子コントローラによって供給される制御信号の指示下で、非対称電気信号の負荷サイクルを変化させる形態である。これらの特徴によって、装置を調整することもでき、すなわち、イオン種をフィルタリングするように調整して、望ましい選択種のみを検出器に通過させることができる。
【0061】
出願人の教示に関するさらなる利点は、フィルターが、同様の移動度を有するが、曲線の異なる複数のイオン種を通過させることができ、それらを同時に検出できることである。各検出器電極70、72が異なる極性で保持される場合、次に、フィルターを通過する複数のイオン種(同様の移動度を有するが、極性が異なる)は、同時に検出され得る。検出されたイオンを、適用された制御信号48、50および電位バイアス信号71、73と相関させて、図2のデータDにおいて示される検出イオンの種を決定する。
【0062】
この多機能性は、図3Aに示されるような出力区画10Cを参照することによってさらに理解されてもよく、上部電極70は、フィルター40を通過する関心のイオンと同一の極性で、既定の電圧で保持されるが、下部電極72は、別のレベル、恐らく地面で保持される。上部電極70は、検出のための電極72に対して下方にイオン24’を偏向する。しかしながら、いずれかの電極は、イオン負荷および極性、ならびに電極に印加される信号に応じて、イオンを検出してもよい。したがって、同様の移動度を有するが、極性の異なる、フィルターを通過する複数のイオン種は、上部電極70を第1の検出器として使用し、下部電極72を第2の検出器として使用することによって、かつコントローラ10Dの2つの異なる検出器回路を使用して、同時に検出することができ、したがって、2つの異なる出力が放出される。したがって、検出器69は、PFAIMSフィルター40を通る複数の種、例えば、炭化水素ガスバックグラウンドに硫黄を含む、ガス試料等を同時に検出し得る。
【0063】
電子コントローラ10Dは、制御電子信号をシステム10に供給する。制御回路は搭載されていてもされていなくてもよく、PFAIMSデバイスは、制御回路10Dに接続する、図4Aに示されるリードおよび接触パッドを少なくとも備える、制御部分を有する。コントローラからの信号は、そのような接続を介して、フィルター電極に印加される。
【0064】
図4Aの実施形態において、PFAIMSシステム10は、その上に形成された(金等の)フィルター電極44、46とともに、間隙された絶縁基板52、54(例えば、Pyrex(登録商標)ガラス、セラミック、樹脂等)を有する分析計チップ100を含む。基板52、54は、それらの間にドリフト管29および流路30を定義し、したがって、筐体機能を果たす。好ましくは、基板は、絶縁しているか、または電極の絶縁載置のための表面60、62を有する。電極44、46は、イオンフィルター40を形成し、流路30全体で相互に面するこれらの絶縁表面60、62上に載置されたフィルター電極を有する。
【0065】
図4A、4B、4Cに示されるように、基板52、54は、スペーサー53、55によって分離され、スペーサは、絶縁であり、セラミック、樹脂、テフロン(登録商標)等から形成され得るか、またはシリコンウエハーをエッチングもしくはダイシングすることによって、あるいは例えば、基板52、54の拡張を形成することによって形成されてもよい。スペーサーの厚みは、電極44、46を担持する基板52、54の表面間の距離「D」を定義する。図4Aの一実施形態において、シリコンスペーサーは、電極53’、55’として使用することができ、拘束電圧は、コントローラ10Dによってシリコンスペーサー電極に印加され、フィルタリングされたイオンを流路の中心に拘束する。この拘束によって、より多くのイオンが検出器に衝突することができ、次に検出を向上させる。
【0066】
図4Bに示される出願人の教示に関するさらなる代替実施形態において、代替構造電極44x、46xは、基板52、54の代わりになり、それらは載置され、スペーサー53、55を絶縁することによって分離されて、その内部に流路30を形成する。流路の一端において、試料調製区画10Aは、イオンをフィルター区画10Bに供給し、他端において、フィルタリングされたイオンを出力区画10Cに通過させる。基板が構造機能を果たし、筐体を形成するのと同様に、構造電極44x、46xも電極でありながら筐体の機能を果たす。基板に関して、これらの電極の外面は、平面であってもなくてもよく、絶縁表面61によって被覆されてもよい。
【0067】
側断面図で示される、図4Cの実施形態において、絶縁スペーサー53、55は、フィルター電極44、46の端44f、46fと重複する。これは、流路(すなわち、ドリフト管)29を流れるイオンが、電極端44f、46fから離れて、フィルター電極44と46との間の均一横電界の領域に拘束されることを保証し、ここで非均一フリンジ電界「f」が存在する。さらなる利点は、すべてのイオンが強制的にフィルター電極間を通過し、その均一な電界に供されることである。
【0068】
図3Aに戻り、動作中、イオン24、26は、フィルター40に流れ込む。いくつかのイオンは、フィルター電極44、46と衝突すると中和される。これらの中和されたイオンは、一般に搬送ガスによってパージされる。パージは、例えば、流路30を加熱することによって、例えば、電流を適切に構成されたフィルター電極(例えば、図3Dに示されるサーペンタイン44’、46’)に印加するか、または抵抗スペーサー電極に印加することによって達成することもできる。図4Aのスペーサー電極53、55は、抵抗材料で形成することができ、したがって、加熱可能な電極53r、55rとして使用することができる。
【0069】
イオン24は、図3Aの出力区画10Cに通過される。排気口42は、分子28を通過したイオン24から排出するために提供される。このイオン24の単離は、検出機能を容易にし、より正確な化学分析を可能にする。しかし、この予防措置をもってしても、いくつかの溶媒分子は、関心のイオン24に付着したままであり得る。したがって、好適な実施形態において、例えば24および26等のイオンをフィルタリングする前に脱溶媒和するための装置が提供される。脱溶媒和は、加熱によって達成されてもよい。例えば、電極44、46、53r、55rのいずれかは、コントローラ10Dによってそこに適用されるヒーター信号を有し得る。別の実施形態において、流入ガス流は、図3Bに示されるように、ヒーター素子89によって加熱されてもよい。
【0070】
当業者には当然のことながら、エレクトロスプレーされたイオンの脱溶媒和または「乾燥」が、エレクトロスプレー過程の重要な部分である。エレクトロスプレーの先端から最初にイオンが発射される場合、それは、イオンをコーティングする多量の溶媒を有する液滴の形態である。空気を通ってカウンター電極に向かって移動するにつれて、溶媒が蒸発し、最終的に、脱溶媒和されたイオンを残し、次にそれらを分析することができる。分析前の不完全な脱溶媒和は、分析を曲解し得る。さらに、他の何らかの支援なしに、イオンを十分に溶媒和できるようにするには、長いイオン移動距離を必要とし得る。したがって、この脱溶媒和は、出願人の教示の実践において有益であることが理解されるであろう。
【0071】
出願人の教示に関する別の実施形態において、対称RF電界を使用して、分析前にエレクトロスプレーにおいて生成されたイオンの脱溶媒和を強化する。図5A、5Bに示されるように、キャリアガス流に垂直に適応される対称無線周波電界によって、エレクトロスプレー過程において、対称に振動するようにイオンを生成させ、それらがドリフト管を下るにつれて加熱され、この信号からの正味偏向なしに、イオンが脱溶媒和されるようにする。
【0072】
より具体的に、イオンと中性分子との相互作用は、それらの有効温度を上昇させ、それらの脱溶媒和を強化する。それらの振動中、イオンは中和空気分子に影響を与え、それらの内部温度を上昇させる。イオンの内部温度の上昇は、溶媒の蒸発を強化し、脱溶媒和された電荷イオンを実現するための時間を短縮する。この作用は、比較的短いドリフト管にわたって脱溶媒和が行われるようにする。脱溶媒和は、より正確な検出データをもたらし、上記アプローチは、出願人の教示のPFAIMSフィルターと容易に統合される。
【0073】
脱溶媒和電界は、間に間隙を有し、相互に平行に構成された2つの電極間に電圧を印加することによって生成することができる。例えば、電極対44、46および53、55のいずれかを、コントローラ10Dの制御下、この機能に使用してもよい。好ましくは、図3Bに示されるように、個別の脱溶媒和電極77、79をこの機能に使用してもよい。
【0074】
出願人の教示に関するさらなる実施形態において、微小エレクトロスプレーヘッド80は、図3Bおよび3B1に概略的に示される、基板52に載置される。電極82、84、86、88は、基板52の反対側に形成され、エレクトロスプレーイオン24、26をドリフト管29内の流路30のイオン領域23にガイドする。誘引電極22は、電位をそこに印加し、イオン24、26をイオン領域23に誘引する。キャリアガス流90は、イオン24、26を捕捉し、既述のフィルタリング機能のためにそれらをフィルター40に搬送するために望ましい流量で設定される。ガス排気91は、キャリアガス90を含み、非イオン化成分および中和イオンを運び出す。
【0075】
電極22、82、84、86、88、および脱溶媒和電極77、79にも印加される電位は、相互およびフィルター電極44、46から独立して設定および制御することができる。例えば、これは有利に、アトラクター電極22が、あらゆる他の電極、例えば、隣接するフィルター電極46とは異なる信号で駆動されるようにする。これは、基板の絶縁表面の提供によって特に促進され、電極単離は、フィルター駆動要件とは独立してイオン導入の最適化を可能にする。
【0076】
この構成は、ガイド電極82、84、86、88およびアトラクター電極22が、パルスモードで個々に操作される(例えば、スイッチオンオフされる)ようにすることもできる。このモードで、選択量のイオンをイオン領域23に導入することができる。これらのイオンが、例えば、オリフィスから検出器72に移動する時間は、「飛行時間」(「TOF」)FAIMSモードの操作で使用することができる。このモードで、飛行時間は、イオン種に随伴し、したがって、種識別に対する追加の情報を提供する。これは、円筒状FAIMSデバイスの改善をもたらす。
【0077】
IMSの技術分野において熟練する者に理解されるように、このTOFは、IMSデバイスにおいて実践される飛行時間の類似であるが、現在はFAIMS構造内で実践されていない。したがって、この新しい発明は、1つの操作装置においてIMSおよびFAIMS検出データの両方を提供し、FAIMSおよびIMSデータの組み合わせは、より良い検出結果をもたらし得る。
【0078】
例えば、図3A−3B、4A−4Bに示される好適な実施形態において、筐体64は、基板52、54によって形成され、入力部分10Aからイオンフィルター10Bを通って、出力部分10Cまで延長して定義された内部流路30を有する。より具体的に、基板52、54は、作業表面60、62を提示し、そこで電極の形成を支持する。これらの表面60、62は、例えば、ガラスまたはセラミック基板を使用して形成される場合、湾曲または平面であってもよく、好ましくは絶縁している(または絶縁されてもよい)。これは、マイクロエレクトロメカニカルシステム(Micro−Electro−Mechanical Systems(MEMS))またはマルチ−チップモジュール(Multi−Chip Module(MCM))、もしくは他の過程等の大量生産技術に役立ち、極小パッケージおよび小電極サイズをもたらす。そのように、イオンフィルターは、好ましくは、その間に定義された流路30を有する表面フィルター電極44、46によって、これらの絶縁表面上で定義され、次に基板の絶縁表面は、次に、騒音を低減し、性能を向上させるために、制御信号48、50をフィルター電極において検出器電極70、72から単離する。これは、参照することにより本明細書に組み込まれる、第5,420,424号に記載されるような従来の先行技術FAIMS装置の外部シリンダーの拡張導電領域とは異なる。
【0079】
幾何学的および物理学的考慮に起因して、先行技術の円筒状設計におけるイオンは、ドリフト管断面に分布し、したがって、わずかなイオンのみが、質量分析計入口96付近の領域Rにおいて使用できることがさらに理解されるであろう。図6に示される円筒状FAIMSの先行技術構成において(参照することにより本明細書に組み込まれる、国際公開第PCT/CA99/00715号を参照)、イオンを質量分析計入口96への追加送達を可能にすることによって、この短所を克服する試みが行われる。しかしながら、中和試料分子はまた、試料イオン24と中性分子、例えば、溶媒分子28との間に分離がないため、質量分析計入口96に進入できるようにする。これは、質量分析計において著しく複雑なスペクトル、および解像度の劣化をもたらす。
【0080】
出願人の教示は、例えば、図3Bの構成におけるこれらの短所を克服する。出願人の教示の実践において、検出器領域69に進入するイオン24のすべては、視覚的に、質量分析計入口96に集束される。これは、特に、イオンが単にMS入口でなく、流路環境全体に分布する、円筒状FAIMSデバイスと比較して、検出の効率の劇的な増加、およびシステムの感度の向上をもたらす。
【0081】
さらに、図7Aに示される出願人の教示の新しい円筒状設計を参照して、エレクトロスプレーの先端20は、アトラクター電極22’の誘引下、外部電極44Cのオリフィス31’を介して、フローチャネル30’に試料を注入し、試料は、ガスGのフローによって、フィルター区画10B’に向かって搬送される。アトラクター電極は、内部電極46Cに隣接して形成されるが、絶縁体ストリップIn1、In2によって電気的に単離される。したがって、アトラクター電極は、隣接する電極、例えば、46Cから分離して、独立して偏向することができる。この実施形態はまた、部品数を減少させる一方で、機能的および構造的コンポーネントを組み合わせ、例えば、内部シリンダーコンポーネントを、例えば、絶縁層In1、In2の結合機能を介して、一緒に噛合させることができる。
【0082】
図7Bに示される代替実施形態において、アトラクター電極22”は、外部リング電極44C”に隣接して形成され、絶縁リングIn3によってそこから絶縁される。エレクトロスプレーの先端20は、個別の電極であり得るか、または内部電極46C’の延長であり得る、リング46C”の内部に側方から試料Sを導入し、アトラクター電極22”の誘引下で、試料は、フィルター区画10B”のフローチャネル30”におけるガスGによって搬送される。再度、電極22”は、絶縁器In3によって電極44C’から単離され、したがって、電極は、独立して駆動可能である。
【0083】
図8に示される出願人の教示に関するさらなる実施形態において、基板52に取り付けられたエレクトロスプレーアセンブリ80”は、エレクトロスプレーヘッド12を含む。イオンは、電極「F」(本実施形態では3つ)をオリフィス31に向かってガイドすることによって搬送され、誘引電極22およびガイド電極、例えば、82、84および/または86、88によってイオン領域23に誘引される。
【0084】
好ましくは、個別のDCバイアス「DC」は、各ガイド電極に印加され、イオンをイオン領域23に向けてガイドする電位勾配を形成する。ガイド電極は、対称RF信号「DS」を適用することによってさらなる機能に使用して、前述されるように、脱溶媒和を強化することができる。
【0085】
洗浄ガスGは、ポートP1において導入され、脱溶媒和をさらに強化する。このガス流は、チャンバ93内のガイドイオンに対向し、ポートP2、P3から排気される。好ましくは、これは、オリフィス31全体に圧力勾配を用いることなく作動する。
【0086】
スプレー条件を改善するために、先端20と上部ガイド電極F1との間の分離20Sは、出願人の教示の実践において調整することができる。一実践において、筐体12aaの位置は、ベースBに対して調整することができ、次に、分離20Sを調整する。代替例において、ヘッド12の高さは、電極F1に対して調整することができる。
【0087】
代替実施形態において、図9Aおよび9Bに示されるように、間隙を介したガイド電極F(図9A)またはF1、F2、F3(図9B)は、カーテンガス流CGに浸漬される。このフローは、筐体H1内に拘束されないか、または含有されてもよい。エレクトロスプレーヘッド12は、マウントM1において調整可能に載置され、その送達角度は、基板52の表面に対して調整することができる。さらに、その高さは、基板に対して調整することができる。
【0088】
図4Aを再度参照して、試料容器92は、液体試料Sを受容し、次に液体試料Sは、上記のとおりイオン化およびフィルタリングされる。そのような実施形態において、単一の分析計チップ100は、イオン化源、例えば、マイクロ流体エレクトロスプレーモジュール80’の一部、および平面高電界非対称波形イオン移動度フィルター40の両方を統合する。内部検出器が含まれてもよいか、または検出のためにイオンが出力される。種々の微細加工マイクロ流体コンポーネントは、イオン源として、またはエレクトロスプレー、ナノエレクトロスプレー、液体クロマトグラフィー、電気泳動分離を含む、それらの組み合わせとして使用されてもよい。
【0089】
別の実施形態において、図4Aのエレクトロスプレーヘッド80’は、(好ましくは、陽極結合またはろう着によって)基板52に取り付けられてもよい。ガイド電極82および84は、本実施形態において必要とされない。
【0090】
図4Dの実施形態において、マイクロ流体エレクトロスプレーモジュール80’は、先端オリフィス20’に次いで先端20に至る長いサーペンタイン分離チャネル92aに供給する、試料容器92を含む。チャネル92aは、先端20におけるイオン化に先行して、試料中の組成物を調整または分離するための、液体クロマトグラフィーまたは電気泳動分離器等であってもよい。
【0091】
そのようなチップ100の動機は、マイクロ流体モジュールの有無に関わらず、試料調製および分析における変動性を排除することであり、これは、ヒトの相互作用を減少し、すべての主要コンポーネントを単一構造に統合するデバイスを提供することによって達成される。これらのチップ100は、低製造コストをもたらし、結果として、使い捨てることができる。各試料分析に新しいチップを使用することは、試料から試料への二次汚染を排除する。さらに、ヒトの介入の減少によって、試料調製時間が減少する。従来の配置において、エレクトロスプレーの先端またはマイクロ流体コンポーネントの位置は、あらゆるフィルターまたは質量分析計の入口に対して、毎回再調整されなければならない。これは、時間と費用を増大させる。出願人の教示の統合マイクロ流体チップ/PFAIMS装置を用いて、マイクロ流体コンポーネントおよびPFAIMS入口の相対位置を固定する。分析が完了すると、全体チップを簡単に廃棄し、新しいチップを分析対象で質量分析計に載置される可能性のある試料とともに搭載される。これは、著しく速い分析時間および高いスループットを可能にする。
【0092】
図10Aに示される、出願人の教示の例示的実施形態において、コントローラ10Dは、エレクトロスプレーコントローラ10D1、RF非対称駆動信号およびDC制御バイアスをフィルター電極44、46に印加するための高電圧RF波形&DC生成器10D3と連動する波形生成器(合成器)10D2、および検出器電極上のイオンを検出するための検出エレクトロニクス10D4を含む、いくつかのサブシステムを含む。コンピュータ10D5は、データを収集し、システムを制御する。一実施形態において、RF電界は、高電圧パルスを急速に生成するためにフライバック変圧器を組み込むソフトスイッチ半共鳴回路によって、生成器10D3内で生成される。回路は、約10〜70%の負荷サイクルで、約100KHz〜4MHzの周波数で、少なくとも1400ボルトのピーク対ピークRF電圧を提供する。フィルター電極を駆動するための試料RF波形は、図10Bに示されるが、その変型例もまた出願人の教示の実践内である。
【0093】
好ましくは、チップ100は、チップ受容器アセンブリ220に挿入される。アセンブリ220は、チップを受容するためのソケット222を含む。ソケットは、コントローラ10Dに電気的に接続される。チップ受容器220の好適な実施形態は、図11Bに示されるように、化学センサーシステム10を質量分析計MS98に結合するというさらなる機能を果たす。チップ受容器アセンブリ220は、システム10の出口オリフィス99が、オリフィス99xを介して、MSオリフィス入口96と連携するように、質量分析計の表面224に固定され、それによって、イオン24’は、検出および分析のためにMSに配向される。
【0094】
フィルター40を通過するイオン24の検出は、図3Aの検出器電極70、72と併せて上述されるように形成されてもよい。代替実施形態は、図3Bに示され、電極70は、ここで偏向器電極として使用され、イオンを質量分析計98の吸入口96に向かってイオン24’を偏向させる。イオンは、電極72a、72bを集束することによってガイドまたは集束され、基板54’のオリフィス99および載置アダプター102を介してプレナムガスチャンバ101を通過する。チャンバ101への低流量プレナムガスを提供することは、中和された試料イオンまたは溶媒分子が、質量分析計の吸入口96に進入することを防ぐ。質量分析計の吸入口に集束されるイオンは、次に、標準質量分析計手次に従って検出される。当然のことながら、プレナムチャンバ101は、本実施形態において有益に使用され得るが、図11Bには示されない。
【0095】
出願人の教示のアセンブリは、例えば、図3B、11B、および12A〜12Bに示されるように、(プレナムチャンバの有無に関わらず)質量分析計の入口96に対して真直ぐに容易に載置することができる。偏向器電極(側方載置、図3Bまたは12A〜12B)は、イオンのほぼ100%が質量分析計に偏向されるのを可能にする。
【0096】
この高効率は、質量分析計の入口96に載置される、ドリフト管内の総イオンのほんのわずかが、それらを入口96に推進する電界の影響を受け、結果として、先行技術において使用できるほんのわずかなイオンのみが検出される、図12C〜12Dに示される先行技術の円筒状設計とは対照的である。
【0097】
ここで当然のことながら、出願人の教示の実践において、化学分析は、いくつかのイオン検出器を使用して行うことができる。図3Aおよび4Aの実施形態において、検出器は、全体がアセンブリ10の内部にある。図3Bの実施形態において、アセンブリ10は、アダプター102を介して、検出器としての質量分析計98に密接に噛合される。図3Bの実施形態において、集束電極72a、72b上の電流が監視される場合、次に、質量分析計98の検出情報を処理するために、追加の検出器情報が入手可能である。集束電極72a、72bがない場合であっても、出願人の教示のFAIMSスペクトルは、質量分析計における総イオン電流を監視することによって再構成することができる。
【0098】
出願人の教示に関する代替実施形態は、図13A、13Bに示され、エレクトロスプレーの先端20は、上部基板52’のオリフィス31を通って上から(図13A)、または側方から(図13B)イオン領域23内に挿入された。アトラクター電極104、106は、それらがガス流90内をフィルター電極44、46に向けて移動するにつれて、流路30内のイオンを誘引およびガイドする。図13Aにおいて、エレクトロスプレーの先端20からの液滴を、排水孔54bとともに提供され得る容器54aに収集する。
【0099】
イオンがイオンフィルターを通過した後、および出力区画10Cに進入する前に、イオンを濃縮することが望ましい。これは、検出器における信号とノイズとの比を改善し、感度を向上させる。イオントラップまたはイオンウェルは、このようにイオンを収集し、それらを濃縮した後、濃縮イオンを一度に出力区画に送達することができる。中性端子は、イオントラップに収集されず、イオントラップTからのガス流によって連続的に除去されている。
【0100】
イオントラップは、例えば、図3A、B、Cに示されるような出願人の教示の多数の実施形態に適用することができる。例示的実施形態は、図13Aに示され、イオントラップTは、いくつかの適切な偏向電極対で形成される。一実施例として、正イオンの場合、電極は、最小電位が電極対76bの領域内で形成され、電極対76aおよび76c上の電位が高くなるように偏向される。イオンは、トラップ内に蓄積することができ、所望の時間が経過した後、所望の数のイオンの収集をもたらし、トラップは、電極76a、76b、76cに印加される電圧を調整することによって開くことができる。トラップが開くと、トラップされたイオン24’は、出力区画10Cに流れ込む。
【0101】
上述される実施形態において、イオンフィルター40は、間隙を置いた電極44、46を含み、これらは、イオンがドリフト管29内のガス流90によって推進されると、RFおよびDC生成器10D3によって駆動される。図14A、14Bの実施形態において、縦方向の電界によって駆動される出願人の教示に関する実施形態、ドリフト管29内でイオンを運ぶ新規の方法が示される。
【0102】
図14A、14Bの実施形態において、イオンは、電極110および112によって生成された縦電界を使用して、出力区画10Cに向かって推進される。これらの実施形態は、極めて小型設計の簡素化されたガス流構造を特徴とし、ガス流は随意ですらある。
【0103】
一実施形態において、イオンは、実際にガス流122とは反対方向に移動し、電界ベクター120によって推進される。イオン移動方向とは反対のこのガス流は、試料イオンの脱溶媒和を強化する。また清潔なイオンフィルター40を中性試料分子のない状態に維持する。これは、結果として、イオンクラスター形成のレベルを低下させ、より正確なイオン種の検出をもたらす。さらに、カウンターガス流を一掃し、イオン化領域23における前の試料の記憶効果を低減する。この実施形態は、上からイオン領域23内に挿入されるか、または図示されるように、側方載置される、統合エレクトロスプレー先端20を含むことができる。
【0104】
図14A、14Bの縦電界駆動実施形態において、イオン24、26は、ガス流122なしに、むしろ縦RF&DC発電器10D3’に沿って、一式の協働電極110、112によって生成される縦電界の作用によって伝達される。特定の電極バイアススキームにおいて、PFAIMSの動作の実施例として、電極対110a〜h、112a〜hのいくつか、またはすべてには同一のRF電圧が印加されるが、縦電位勾配が形成されてイオンを検出器に向かって駆動するように、DC電位は段階的である。この実施形態は、ガス流なしに動作することができるか、または随意に、中性および溶媒分子を排気口124から排気する、排ガス流122を含むことができる。
【0105】
一実施例において、電極110、112aは、10vdcがそこに印加されていてもよく、次に電極110h、112hには100vdcが印加されていてもよい。ここで、領域10A内の負イオンは、電極対110a−112aによって誘引され、さらに対110h、112hによって誘引され、次にフィルターを通過した場合、それらの運動量によってそれらが検出器領域10Cに運び込まれる。
【0106】
RFおよび補償は、種々の電極110a〜h、112a〜hに印加されてもよく、上記のように動作する。
【0107】
図14Aの別の実施形態において、エレクトロスプレーの先端は、オリフィス31の上のイオン化領域23(図示せず)の外側にあり得、電極112jは、 誘引電極として機能する。図14Bの縦電界駆動実施形態において、イオンフィルターは、媒体140、142、例えば、低温酸化物材料を絶縁することによって、電極134、136から絶縁された間隙抵抗層144、146を含む。好ましくは、基板は絶縁している。抵抗層144、146は、好ましくは、絶縁層140、142上に蒸着されたセラミック材料である。ターミナル電極対150、152、154、156は、抵抗層と接触し、各抵抗層全体での電圧降下を可能にし、縦電界ベクトル120を生成する。電極150および154は、印加に従って偏向され、例えば、それらは1000ボルトにおいてであってもよく、一方電極152および156は、ゼロボルトにおいてであり得る。
【0108】
図14Bの実施形態が円筒状設計で実装される場合、次に電極150および154がリング電極を形成し、電極152および156がリング電極を形成し、抵抗層144、146がシリンダーを形成する。
【0109】
出願人の教示は、飛行時間型二次イオン移動度分析機能を示すこともできる。例えば、図14Aの実施形態において、電極104、106をパルスして、イオン化される先端20から試料を引き込み、時間サイクルを開始する。電極110a〜h、112a〜hを、それらの隣接に対して偏向し、生成された縦電界勾配によって、イオンが出力区画10Cに向かって駆動されるようにする。カウンターガス流122を適用して、試料中性端子を一掃することができる。これらの電極の組み合わせを使用して、上述のイオントラップTを形成することができる(図13Aを参照)。
【0110】
図15Aの分割ガス流実施形態において、エレクトロスプレーニードル12は、基板52を通してイオン領域23に挿入されるが、図3Aに示されるように、ドリフト管に外的に載置されてもよい。この設計におけるイオン流生成器は、流路30の反対側に、複数の分割電極160、162を含み、縦電界Eを形成する。好適な実施形態において、1つまたは複数の個別の電極160’、162’は、ガス入口170の下流に配置され、ガスの分流を越えて、縦電界Eを拡張し、それによってフィルター40へのイオン流が、ドリフトガス流層172によって運ばれるように保証する。
【0111】
図15Bの実施形態において、質量分析計98は、ドリフト管30の端部に直接連結される。この設計の利点は、イオンフィルター40が、分割ガス流によって、試料中性端子を含まない状態に保たれることである。これは、中性試料分子とイオンとのクラスターリングを防ぎ、これは、より高い検出精度をもたらす。中性端子Nを排出するための通気デバイス103は、中性端子をMS吸気外に保つ。
【0112】
バッフル174を図示されるように配置し、ドリフトガスフロー流172の速度に対して、排ガスフロー流176の速度を規制してもよい。通常、ドリフトガスフロー流172は、排ガスフロー流176よりも高い速度である。しかしながら、ドリフトガスフロー流とは異なる速度の排ガスフロー流を形成するための他の手段は、出願人の教示の範囲内である。
【0113】
図15A、15Bの実施形態において、単に大気試料中に引き込むためのポートであるか、またはエレクトロスプレー、ガスクロマトグラフ、液体クロマトグラフ等であるかに関わらず、種々の試料調製区画を使用することができる。何が使用されるかに関わらず、示される分割ガスの実施形態は、クラスター化を防ぐことができ、イオン種の良好な識別を可能にする。
【0114】
一般に、試料イオンは、単量体またはクラスター状態で見出される傾向がある。指定イオン種の単量体量とクラスター量との関係は、試料の濃度および特定の実験条件(例えば、湿度、温度、流量、RF電界の強度)から独立する。単量体およびクラスター状態はいずれも、化学識別に有用な情報を提供する。クラスター化を促進する状態、および単量体イオンのみの形成を促進する環境において、個別に同一の試料を調査することが有用となる。図16に示されるような実施形態の平坦な2つのチャネルPFAIMSを使用して、これを達成することができる。
【0115】
図16のデュアルチャネル実施形態において、第1のチャネル「I」は、イオン領域194内のドリフトガス流190中のイオン24および分子28の受領に関して示される。PFAIMSフィルター電極44、46および検出器電極70、72も含まれる。
【0116】
単量体状態の試料イオンを調べるために、(電極198と200との間の電界の作用によって)イオンをフロー流から抽出し、それらは、上部チャンバ「II」に上流する。中性分子28、通常、溶媒は、チャネル「I」を通って流れ続け、ドリフトガス排気口192から出る。エレクトロスプレーの先端20と誘引電極191との間の電位差異は、基板56のオリフィス196を通る、イオン領域194へのイオンを加速させる。第2のガス流202は、試料中性端子がチャンバ「II」に進入するのを防ぎ、イオン24をPFAIMSフィルター40に搬送し(チャンバII内の電極44、46)、次に、通過したイオンは、例えば、図3Aに示されるような検出器電極70、72または図3Bに示されるような質量分析計によって検出される。第2のガス流202は、フロー204として排出される。偏向およびアトラクター電極198、200が励起されない場合、次に、試料イオンは、局所検出器電極72および70によって、チャンバ「I」においてクラスター状態で認めることができる。あるいは、電極198および200を励起するか、励起しないことによって、著しく多くの情報を取得し、化学試料をより良好に識別することができる。
【0117】
図17は、ブタノンからデカノンまでの、出願人の教示の一実践において得られる相同系のケトン試料を示す。図面から、同一の化学種の場合、クラスターイオン(上部プロット)は、単量体イオン(下部プロット)と比較して、極めて異なる補償信号を要することが明らかである。そのため、単量体およびクラスターピークのピーク位置の差異を観察することによって、化学化合物の識別レベルを著しく増加させることができる。例えば、ブタノンの場合、単量体状態でのピーク位置は、−9ボルト付近で起こるが、クラスターピークは、約ゼロである。デカノンの場合、例えば、単量体ピークは、ゼロ付近であるが、クラスターピークは、約+4ボルトである。
【0118】
図18に示される実施形態の動機は、実施形態16のそれと同一である。このシステムにおいて、単量体状態とクラスター状態操作条件の切り替えは、カーテンガス流190aおよび192aの制御によって達成される。カーテンガスが適用されると、試料中性端子28は、チャネル「II」に進入するのを防ぎ、単量体状態のイオンを調査することができる。カーテンガス190aおよび192aは、同一方向で流れ、例えば、オリフィス196で排出されてもよい。一方、チャネル「II」内のガス流は、図16のシステムと同一の構成のままである。ガイド電極206および208は、イオンをチャネル「II」にガイドするように含まれる。イオンをチャネル「II」に誘引するために、誘引電極200も使用される。カーテンガスがオフの場合、試料中性端子および試料イオンは、ポンプ204aを使用してチャネル「II」に引き込まれ得るため、クラスター状態のイオンが観察されてもよい。ガス流202および204が使用されてもよい。出力区画は、質量分析計に接続されてもよい。
【0119】
出願人の教示の適用において、高電界非対称イオン移動度フィルタリング技術は、高周波高電圧の波形を使用する。電界は、イオン輸送に対して垂直に印加され、平面構成を好む。この好適な平面構成は、ドリフト管を小寸法で、好ましくはマイクロマシニングによって、安価に製造されるのを可能にする。またエレクトロニクスを小型化することができ、推定される総電力は、4ワット(未加熱)以下、電界機器に適切なレベルであり得る。
【0120】
エレクトロスプレーおよびフィルタリングコンポーネントを組み合わせる新規の装置について説明した。マイクロマシン加工されたPFAIMS−エレクトロスプレーインターフェースチップをさらに開示する。PFAIMS−エレクトロスプレーインターフェースチップは、エレクトロスプレー質量分析のすべての既存のバイオ分子フィルタリング法と比較して、固有の利点を提供する。同時に、このアプローチは、キャピラリー電気泳動等の多くの液中分離技術と併せて使用することができる。
【0121】
出願人の教示に関する実施形態の実践において、トリブチルアミンをPFAIMSフィルターおよび検出器にエレクトロスプレーした。溶媒中のアミンおよび溶媒溶離液単独に関して得られたスペクトルは、図19に示される。溶離液単独の場合、実質的に反応はなく、アミンの場合に著しい反応がある。これは、出願人の教示に関する実践的な値および機能を証明する。
【0122】
出願人の教示は、改善された化学分析を小型の低コストパッケージで提供する。出願人の教示は、先行技術のTOF−IMSおよびFAIMSデバイスのコスト、サイズ、または性能の限界を、小型の対応可能なパッケージのイオン移動度に基づく化学種区別のための新規の方法および装置で克服する。結果として、新規の平面、高電界非対称イオン移動度分析計デバイスは、エレクトロスプレーの先端と密接に結合され、新規クラスの化学センサー、すなわち、スタンドアロンデバイスとしてか、またはMSに連結されるかのいずれかを達成することができる。広範囲の化学化合物を識別するための正確な実時間または近実時間、原位置、直交データを急速に生成することができる、対応可能な統合PFAIMS化学センサーを提供できる。これらのセンサーは、広範な種の同時検出を行うさらなる能力を有し、試料中の正イオンおよび負イオンの両方を同時に検出する能力を有する。なおもさらに驚くべきことに、これは、費用効率の優れた小型の大量生産可能なパッケージで達成することができ、低電力要件の電界において操作することができ、さらに種々の検出種を完全に識別することができる直交データを生成することが可能である。
【0123】
先行技術の円筒状設計を超えるPFAIMS設計の別の利点は、PFAIMSが電界強度に対する異なるα依存性を有する、すべてのイオンタイプをフィルタリングし、それらに作用する能力である(αに関する詳細は、背景区画を参照)。この事実は、未知の複雑な試料混合物において、測定を行う複雑性を著しく減少させることができる。
【0124】
当業者には当然のことながら、図12C〜Dに示される先行技術の円筒状設計において、ラジアル電界分布は、均一でない。しかしながら、図3A、Bに示されるPFAIMS等の出願人の教示の実践において、PFAIMS設計におけるイオンフィルター電極間の電界分布(フリンジ電界を無視する)は、均一であり、かつ電界は均一である。
【0125】
平面FAIMS設計におけるイオンの分離時間は、イオン集束の条件に到達する場合、先行技術の円筒状FAIMS設計よりも著しく低い(最大10倍)ことがわかった。
【0126】
図20は、出願人の教示に関する例示的実施形態に従って、イオン集束アセンブリ2002を含む、イオン移動度ベースの分析器システム2000を示す。異音移動度ベースの分析器は、イオン移動度の特徴に基づいて、IMS、DMS、FAIMS(上述されるような)、および/またはイオンフィルター/分離器を含み得る。システム2000は、イオン入口2042、第1のグリッド2004、第2のグリッド2006、第1のDC源2008、第2のDC源2012、時変電源2010を含み得る。グリッド2004は、1つまたは複数のイオンが通って流れ得る、複数の開口部2032、2034、2036、2038、および2040を含んでもよい。グリッド2006は、イオンが通って流れ得る、1つまたは複数の開口部2028および2030を含んでもよい。一実施形態において、システム2000は、第1のフィルターチャネル2020および第2のフィルターチャネル2022を含み得る。第1のフィルターチャネル2020は、DMSフィルター2024を含み得る。第2のフィルターチャネル2022は、第2のDMSフィルター2026を含み得る。あるいは、フィルター2024および2026は、限定されないが、IMSおよびFAIMS等の他のタイプのフィルターを含んでもよい。
【0127】
動作中、イオンは、イオン入口2042で受容され、種々のイオン路2014を介して流路2044に沿って縦方向に移動する。イオンのそれぞれは、開口部2032、2034、2036、2038、および2040を介して、第1のグリッド2004を通過する。一実施形態において、DCバイアス電圧は、グリッド2004に印加されるが、別のDCバイアスは、グリッド2006に印加される。DCバイアス電圧は、地電圧または基準電圧、正電圧、または負電圧を含んでもよい。ある実施形態において、時変電圧、例えば、非対称電圧は、グリッド2004および2006に印加され、グリッド2004と2006との間に時変電界を生成する。またグリッド2004と2006との間のDC電位の差異は、グリッド2004と2006との間にDC電界を生成することができる。グリッド2004と2006との間の時変電界および/またはDC電界は、イオン路2014を、例えば、開口2028および2030において集めおよび/または狭小させ、1つまたは複数の狭く集束されたイオン流2016および2018をもたらす。
【0128】
一実施形態において、第1のフィルターチャネル2020は、イオン流2016が、フィルター2024を通って、より集束された様式で配向されるように配列される。第2のフィルターチャネル2022もまた、イオン流2018が、フィルター2026を通って、より集束された様式で配向されるように配列される。ある実施形態において、イオンフィルター2024および2026の少なくとも1つは、あるイオン種が、イオンの検出のために、検出器を通過するのを選択的に可能にし得る。検出器は、1つの電極、複数の電極、ナノチューブ、半導体素子、MS、および/またはあらゆる他のタイプのイオン検出コンポーネントを含んでもよい。
【0129】
図21は、質量分析計2104に対する前置フィルターとして、デュアルチャネルDMS2102を含む、試料分析システム2100を含む。システム2100は、試料イオンを含む汚染ガスが通過する、DMSを有する第1のチャネル2106を含む。システム2100はまた、選択したバイアス(例えば、正または負)のイオンが、清潔な輸送ガス内でDMSフィルターを通過する、第2のチャネル2108を含む。イオン化領域を分離領域から単離する利点は、第2のチャネルにおけるクラスター化の制御、イオン化および分離領域において2つの異なるドーパントを使用する可能性、膜除去に起因する感度の強化を含む。さらに、構成は、試料イオンの形成および分離のための独立した条件、例えば、イオン源および分析間隙における独立して最適化流量を可能にする。他の利点は、第2のチャネルスペクトルに対する外部水分の効果の減少、ならびに修飾ガス(例えば、ヘリウム)を使用してDMSおよびMSにおける分離を向上させる能力を含む。
【0130】
一実施形態において、システム2100は、例えば、電極2110、2112、2114、2116、および2118を有する、イオン制御アセンブリを含む。一例において、電極2110および/または2112は、偏向器電極(正のバイアスを有する)として、正イオンを開口部に向かって第2のチャネル2108に配向するように動作し得る。電極2114、2116、および2118は、例えば、正イオンを第2のチャネルに誘引するように負にバイアスされてもよい。
【0131】
一実施形態において、正イオンは、DMSフィルタリングに続いてMS2104分析のためにMS2104によって、第2のチャネル2108に配向される。第1のチャネル2106内の負イオンもまた、DMSフィルターによってフィルタリングされ、検出器電極を使用して検出されてもよい。別の実施形態において、負イオンは、第2のチャネル2108に配向されるが、正イオンは、第1のチャネル2106内に残留する。したがって、負イオンは、DMSによって第2のチャネル2108内でフィルタリングされ、次にMS2104によって分析されてもよいが、正イオンは、DMSによって第1のチャネル2106内でフィルタリングされ、第1のチャネル2106内の検出器電極を使用して検出される。
【0132】
前置フィルターとしてDMSをMSに対して使用することによって、化学物質検知に使用可能な情報が強化され、これは特に、立体異性体を含む等圧種に有効である。さらに、DMS前置フィルターは、化学ノイズを10〜30倍減少させ、それによって、定量の正確性を制限する検出を強化する。複雑な混合物の場合、DMS前分離は、GCまたはHPLCにおける分離ステップの要件および時間を置換または減少させることができる。さらに、DMS前置フィルターを追加することは、失われた分析能力を回復するため、小型質量分析計に有効であり、高価な研究室MSシステムと同一の分析品質を提供することができる。
【0133】
図22は、出願人の教示に関する例示的実施形態に従って、例えば、システム2100において、デュアルチャネルDMS2206を利用する、デュアルチャネルシステム2200の機能ブロック図を示す。システム2200は、生成ガスを受容する、第1のチャネル2202および第2のチャネル2204に対する試料入力を示す。試料入力は、エレクトロスプレー、液体、および/またはこれらに限定されないが、トルエンおよびSF6等のガス試料を含む、ガス試料入力を含んでもよい。
【0134】
図23A〜23Cは、出願人の教示に関する例示的実施形態に従って、正または負のイオンが第2のチャネルに偏向されるか否かに応じて、第1のチャネル2106および第2のチャネル2108内の(DMSフィルターの)イオン強度と補償電圧のプロットを示す。図23Aは、電極2110および2112のバイアスが、0ボルトに設定される場合、すなわち、イオンが第1のチャネル2106から第2のチャネル2108に偏向されない場合、強度スペクトル(対Vc)を示す。図23Aのプロットは、第1のチャネル2106内の正および負の検出器電極の両方によって検出されるイオン強度のピークを示す。図23Bは、検出器電極2110および/または2112が−21ボルトで偏向される場合に負のイオン検出ピークを示し、負のイオンが第2のチャネル2108に偏向され、(MS2104または検出器電極のいずれかによって)検出されることを示す。図23Cは、偏向器電極2110および/または2112が+21ボルトで偏向される場合に正のイオン検出ピークを示し、正イオンが第2のチャネル2108に偏向され、(MS2104または検出器電極のいずれかによって)検出されることを示す。
【0135】
図24A〜24Cは、偏向器電極がそれぞれ正および負に偏向される場合に、トルエンおよびSF6が、第1のチャネル2106から第2のチャネル2108に移動する係数を示す。図24Aは、第1のチャネル2106の検出器電極において検出される、正および負のイオン強度ピークを示す。図24Bは、正イオンが第2のチャネル2108に偏向される場合に、第2のチャネル2108においてトルエンと関連付けられる正のイオン強度ピークを示す。図24Cは、負イオンが第2のチャネル2108に偏向される場合に、第2のチャネル2108においてSF6と関連付けられる負のイオン強度ピークを示す。
【0136】
図25は、MS2502において高フロー消費を利用する、典型的な先行技術DMS−MSシステム2500を示す。MS2502によって支持される比較的高い流量に起因して、強力な真空ポンプシステムは、真空下でのイオン分析のために、MS2502において適正な真空を維持する必要がある。多くの適用の場合、例えば、研究室環境において、強力な大型の重いポンプの必要性は問題ではない。しかしながら、電界展開可能な可搬式デバイスの場合、DMS−MSシステムのサイズ、重量、および電力消費が重要である。
【0137】
図26は、出願人の教示に関する例示的実施形態に従って、MS2612の低流量大気圧インターフェース(API)を支持するDMS前置フィルター2610を含む、DMS−MSシステム2605を示す。図25のDMS−MSシステムとは対照的に、図26のDMS−MSシステムは、排気口を通るDMSフロー2600および2602の一部を配向するが、フロー2606の別の低流量部分は、MS2612に配向される。MS2612への入力流量要件を減少させることによって、MS2612の真空ポンプ2608のサイズおよび電力を減少させることができ、それによって、DMS−MSシステム2605のサイズの全体削減を可能にする。
【0138】
図27は、出願人の教示に関する例示的実施形態に従って、イオン集束要素2700を含む、別のDMS−MSシステム2705を示す。イオン集束素子2700の動作は、図20のイオン集束アセンブリ2002に関してさらに詳細に説明される。ある実施形態において、イオン集束素子2700は、例えば、電極2702、2704、2706、および2708等の電極を含む。他の実施形態において、イオン集束素子2700は、図20のグリッド2004および2006等のグリッドを含む。動作中、イオン集束素子2700は、DMSフィルタリングイオンをDMS2710から受容し、MS2714のオリフィス2712に対応する縦軸に沿った狭いイオン流にイオンを集束させる。所望のイオンをオリフィス2712に集束させることによって、MS2714への同一またはより多量のイオンを可能にしながら、オリフィス2712のサイズを著しく減少させることができる。典型的なMSオリフィスは、100ミクロン以上の直径を有する。イオン集束素子2700を使用するイオンを集束させることによって、オリフィス直径は、約100ミクロン未満、約75ミクロン未満、約50ミクロン未満、約25ミクロン未満、約20ミクロン未満、約10ミクロン未満、および約5ミクロン未満に減少させることができる。したがって、著しく小さいオリフィス2712を可能にすることによって、イオン集束は、MS2714への著しく低い流量を可能にし、著しく小さく、かつ低電力の真空/フローポンプ、およびより小型のDMS−MSシステムをもたらす。
【0139】
図28は、出願人の教示の例示的実施形態に従って、低動力吸入ポンプ2800を含む、別のDMS−MSシステム2805を示す。DMS−MSシステム2805は、図27の素子2700等のイオン集束素子を含んでもよい。ポンプ2800は、API2802を介してMS2804への低流量を可能にするように、DMSガス流に対して最適化されてもよい。ある実施形態において、MS2804は、個別の真空ポンプ、複数の真空ポンプ、および/または低動力吸入ポンプ2800以外の真空制御システムを含んでもよい。
【0140】
図29は、DMS流2904からの線から外れて(例えば、直角に)位置したMSインターフェースおよびオリフィス2902を含む、さらに別のDMS−MSシステム2905を示す。偏向器電極2900を用いて、DMSフィルタリングされたイオンを、MS2904のオリフィス2902に向かって偏向させる。ある実施形態において、オリフィスの直径は、直線速度がオリフィス2902を通して比較的高くなるように、例えば、図27に関して記載されるとおり比較的小さい。したがって、イオンは、電界効果を克服することができ、イオンがMS2904に流れ込むのを防ぐ。
【0141】
図30A〜30Cは、出願人の教示の例示的実施形態に従って、イオン集束アセンブリの例を示す。図30Aは、2つのグリッド3014および3016を有する、イオン集束アセンブリ3000を示す。グリッド3014および3016は、図20のグリッド2004および2006と同様の様式で動作する。グリッド3014および3016は、ガス流3018に垂直方向に位置する。プロット3002は、RF電圧がグリッド3014および3016に印加されない場合のイオン集束アセンブリ3000を示す。プロット3004は、RF電圧がグリッド3014および3016に印加される場合のイオン集束アセンブリ3000を示す。プロット3004において、イオンは、集束イオン流3020に集束される。
【0142】
図30Bは、電極3022および3024を有するイオン集束アセンブリ3005を示す。ある実施形態において、イオン集束アセンブリ3005は、電極3022および3024に加えて、1つまたは複数の電極を含んでもよい。アセンブリ3005において、 流れ方向のイオン流として、調和RF電圧を電極3022および3024に印加して、イオン流に垂直な電界を形成してもよい。結果として、流量の方向の集束イオン流3026にイオンを集束させる。プロット3008は、イオンを集束イオン流3026に集束させるように、調和RF電圧を印加した結果を示す。プロット3010は、電極3022と3024との間に電界分布を示す。
【0143】
図30Cは、電極対3028および電極対3030を有するイオン集束アセンブリ3015を示す。イオン集束アセンブリ3015において、RF電圧は、RF電界に平行な集束イオン流3032をもたらすイオン流の方向で、電極対3028と電極対3030との間に印加される。
【0144】
上記イオン集束アセンブリ例のそれぞれにおいて、イオンの集束が起こる一方、中性端子の軌道は未変化のままである。ある実施形態において、イオン集束アセンブリは、イオン移動度フィルター(例えば、DMSフィルター)の前または後に位置してもよい。イオン集束アセンブリがイオン移動度フィルターの前に位置する場合、すべてのイオン種に対してイオン集束が起こる。イオン集束アセンブリがイオン移動度フィルターの後に位置する場合、イオン集束は、選択された(フィルタリングされた)イオン種のみに起こる。ある実施形態において、1つまたは複数のイオン集束チャネルが使用されてもよい。例えば、イオンが一方のチャネルに集束され、他方のチャネルに転送され得るか、個別のイオン流を1つまたは複数のチャネルに同時に集束されてもよい。
【0145】
出願人の教示の実施形態は、円筒形、平面、および他の構成を使用する方法および装置において実践されてもよく、かつ依然として出願人の教示の精神および範囲内である。出願人の教示に対する適用例には、生物学的および化学的センサー等における使用が挙げられる。上記の特定実施形態に関する種々の修正もまた、出願人の教示の精神および範囲内である。本明細書に開示される実施例は、例示として示され、限定を目的としない。これらおよび他の実施形態の範囲は、単に以下の請求項に記載されるように限定されるに過ぎない。
【0146】
出願人の教示が、特にその好適な実施形態を参照して図示および説明されるが、当業者には、形態および詳細における種々の変更が、添付の請求項によって包含される出願人の教示の範囲から逸脱することなく、そこに形成されてもよいことを理解するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料分析システムであって、
複数のイオン流内に配置されるイオンを受容するためのイオン入口と、
該イオンを検出するためのイオン検出器と、
該イオン入口からの該複数のイオン流を少なくとも1つの集束イオン流の中に集め、該少なくとも1つの集束イオン流を該イオン検出器に向かって配向するためのイオン集束アセンブリと
を備える、システム。
【請求項2】
少なくとも1つのイオン流を集束させ、あるイオン種が前記イオン検出器へと通過することを選択的に可能にするための少なくとも1つのフィルターチャネルをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
大気圧作動イオン前置フィルターをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記イオン前置フィルターは、移動度に基づくフィルターを含む、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記移動度に基づくフィルターは、円筒状FAIMS、平面DMS、IMS、および吸引DMAから成る群から選択することができる、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記イオン集束アセンブリは、
イオンが通って流れ得る少なくとも1つの開口部を有する第1のグリッドと、
イオンが通って流れ得る少なくとも1つの開口部を有する第2のグリッドと、
第1および第2のDC電源と、
時変電圧源と
を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記イオン集束アセンブリは、
前記イオン流に垂直な電界を印加するための第1および第2の電極
を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記イオン集束アセンブリは、
第1の電極対と第2の電極対との間に電界を印加するための第1および第2の電極対を備え、該電界は、前記イオン流に平行である、
請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記イオン検出器は、イオン導入のための入口オリフィスを含む、分析機器を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記イオン検出器は、入口オリフィスを含む質量分析計を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
配向することは、前記集束イオン流を、前記質量分析計の入口オリフィスの中に真っ直ぐ入る縦軸に沿う狭いイオン流の中に集束させることを含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記オリフィス直径は、100ミクロン、75ミクロン、50ミクロン、25ミクロン、20ミクロン、10ミクロン、および5ミクロンのうちの1つをおよそ下回る、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
配向することは、前記集束イオン流を、前記イオン移動度に基づくフィルターの前記入口の中に真っ直ぐ入る縦軸に沿う狭いイオン流に集束させることを含む、請求項4に記載のシステム。
【請求項14】
DMS作動に適切な流量、イオン集束、および前記イオン検出器の中への流れを可能にするために最適化された低動力吸入ポンプをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記イオン集束アセンブリは、イオンを前記イオン検出器に向かって直角に偏向させ、中性検体が、該イオン検出器の中に導入されることを防ぐための偏向器を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
試料を分析するための方法であって、
イオンをイオン入口において受容することと、
該イオンにイオン集束アセンブリを通過させ、該イオンを少なくとも1つの集束イオン流の中へと集めることと、
該少なくとも1つの集束イオン流をイオン検出器に渡すことと
を含む、方法。
【請求項17】
前記イオンに大気圧作動イオン前置フィルターを通過させることをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記イオンにイオン集束アセンブリを通過させることは、
該イオンに少なくとも1つの開口部を経由して第1のグリッドを通過させることと、
該イオン集束アセンブリを使用して、該イオンを少なくとも1つの集束イオン流の中へと集めることと、
該少なくとも1つの集束イオン流に、少なくとも1つのフィルターチャネルの中への少なくとも1つの開口部を経由して第2のグリッドを通過させることと
を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記イオンにイオン集束アセンブリを通過させることは、
該イオンに前記イオン流に垂直な電界を通過させることと、
該イオン集束アセンブリを使用して、該イオンを少なくとも1つの集束イオン流の中へと集めることと
を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記イオンにイオン集束アセンブリを通過させることは、
該イオンに前記イオン流に平行な電界を通過させることと、
該イオン集束アセンブリを使用して、該イオンを少なくとも1つの集束イオン流の中へと集めることと
を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記第1および第2のグリッドのうちの少なくとも1つにDCバイアス電圧を印加することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記DCバイアス電圧は、地電圧、基準電圧、正電圧、および負電圧から成る群から選択することができる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
DC電位の差異を前記第のグリッドと第2のグリッドとにわたって印加し、それによって該第1のグリッドと第2のグリッドとの間に電界を生成することと、
該第1のグリッドと第2のグリッドとの間の該電界を使用して、該イオンを少なくとも1つの集束イオン流の中へと集めることと
をさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
時変電圧を前記第1のグリッドと第2のグリッドとにわたって印加することと、
該第1のグリッドと第2のグリッドとにわたる時変電圧を使用して、前記イオンを少なくとも1つの集束イオン流の中へと集めることと
をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
試料を分析するためのシステムであって、
イオンをイオン入口において受容するための手段と、
該イオンにイオン集束アセンブリを通過させ、該イオンを少なくとも1つの集束イオン流の中へと集めるための手段と、
該少なくとも1つの集束イオン流をイオン検出器へと通過させるための手段と
を備える、システム。
【請求項26】
前記イオンに大気圧作動イオン前置フィルターを通過させるための手段をさらに備える、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記イオンにイオン集束アセンブリを通過させることは、
該イオンに少なくとも1つの開口部を経由して第1のグリッドを通過させるための手段と、
該イオン集束アセンブリを使用して、該イオンを少なくとも1つの集束イオン流の中へと集めるための手段と、
該少なくとも1つの集束イオン流を、少なくとも1つのフィルターチャネルの中への開口部を経由して第2のグリッドを通過させるための手段と
を備える、請求項25に記載のシステム。
【請求項28】
前記イオンにイオン集束アセンブリを通過させることは、
該イオンを前記イオン流に垂直な電界を通過させるための手段と、
該イオン集束アセンブリを使用して、該イオンを少なくとも1つの集束イオン流の中に集めるための手段と
を備える、請求項25に記載のシステム。
【請求項29】
前記イオンにイオン集束アセンブリを通過させることは、
該イオンを前記イオン流に平行な電界を通過させるための手段と、
該イオン集束アセンブリを使用して、該イオンを少なくとも1つの集束イオン流の中に集めるための手段と
を備える、請求項25に記載のシステム。
【請求項30】
前記第1および第2のグリッドのうちの少なくとも1つにDCバイアス電圧を印加するための手段をさらに含む、請求項27に記載のシステム。
【請求項31】
前記DCバイアス電圧は、地電圧、基準電圧、正電圧、および負電圧から成る群から選択することができる、請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
DC電位の差異を前記第1のグリッドと第2のグリッドとにわたって印加し、それによって該第1のグリッドと第2のグリッドとの間に電界を生成するための手段と、
該第1のグリッドと第2のグリッドとの間の該電界を使用して、該イオンを少なくとも1つの集束イオン流の中に集めるための手段と
をさらに備える、請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
前記第1のグリッドと第2のグリッドとにわたって時変電圧を印加するための手段と、
該第1のグリッドと第2のグリッドとにわたって該時変電圧を使用することによって、前記イオンを少なくとも1つの集束イオン流の中に集めるための手段と
をさらに備える、請求項27に記載のシステム。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3B1】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23A】
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【図23B】
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【図23C】
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【図24A】
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【図24B】
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【図24C】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30A】
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【図30B】
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【図30C】
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【公表番号】特表2013−502046(P2013−502046A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524905(P2012−524905)
【出願日】平成22年8月13日(2010.8.13)
【国際出願番号】PCT/US2010/045492
【国際公開番号】WO2011/020034
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(510075457)ディーエイチ テクノロジーズ デベロップメント プライベート リミテッド (35)
【Fターム(参考)】