説明

携帯型酸素ボンベキャリアバッグ

【課題】ボンベの形状やボンベ残量を容易に視認でき、且つバッグ気密性の向上とバッグ内の酸素滞留防止、バッグ収納物の保護を実現する酸素ボンベキャリアバッグを提供する。
【解決手段】酸素ボンベから流量調整器、カニューラを介して使用者に酸素を供給する携帯型酸素ボンベシステムを収納するバッグであり、収容するに酸素ボンベに設けられる残量計または該流量調整器が透視可能なバッグ上部の位置に透明部材で構成される透視部を備えると共に、該透視部の下部に第1の開口部を備えることを特徴とする、携帯型酸素ボンベキャリアバッグ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素ボンベから酸素を呼吸器疾患患者に供給するための携帯型酸素ボンベ用のキャリアバッグに関する。更に詳細には、患者のQOLを向上させるものであり、医療用酸素ボンベの携帯性、操作性、安全性、交換等の容易性を改善した携帯型キャリアバッグに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢化の進展と共に喘息や肺気腫、慢性気管支炎などの呼吸器疾患に苦しむ患者が増加する傾向にあり、その最も効果的な治療方法の1つとして酸素吸入療法が行われている。かかる酸素吸入療法に用いられる酸素源としては、空気中から酸素を直接分離して酸素濃縮ガスとして供給する酸素濃縮装置が開発され、使用時の利便性や保守管理の容易さから、在宅における据え置き型の酸素供給装置として広く一般に使用されている。
【0003】
酸素吸入療法を行う患者は、在宅時には空気中の酸素を分離し、約90%の濃度の酸素濃縮ガスを0.25〜7L/分といった流量で発生する圧力変動吸着型酸素濃縮装置を使用し、鼻カニューラなどの吸入用具を用いて酸素吸入を行いながら日常生活を行っている。
【0004】
一方、患者が通院や買物などで外出する際には、携帯用の軽量酸素ボンベを酸素源として使用し、ボンベから供給される酸素ガスを、鼻カニューラを用いて吸入を行いながら移動することで、その行動範囲を広げている。酸素ボンベには充填容量が限られるなか、長時間の使用を可能とするために、患者の呼吸を検知し、吸気時にのみ酸素を供給し、呼気時には酸素供給をストップさせる呼吸同調式レギュレータが用いられている。
【0005】
患者が酸素ボンベを持って外出する際には、専用の酸素ボンベ用キャリアバッグに酸素ボンベ及び呼吸同調式レギュレータを入れて肩に掛けて持ったり背負ったり、或いは酸素ボンベキャリアバッグを専用のカートに載せて引きながら、酸素吸入しながら移動している。このように酸素吸入療法で酸素ボンベ等の持ち運び用として使用されるキャリアバッグについては、その使い勝手を改善した各種の製品が提案されている。
【0006】
特許文献1には、酸素ボンベの交換を容易にするためにキャリアバッグの蓋部分のファスナーをバッグ側面奥上部から正面方向に斜め下方に向けて設ける構造としたバッグが開示されている。
【0007】
特許文献2には、使用するボンベの容量に併せてバッグの長手方向の長さを可変にできるバッグが提案され、ビニールカバー等の小窓を設けることで、防水性の酸素残量確認が可能なバッグが開示されている。
【0008】
特許文献3には、酸素ボンベを収容し持ち運ぶためのハードケースが開示されており、酸素量漏洩による着火事故防止のために、ケース側面にスリット構造を備えたキャリイングケースが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001-37879号公報
【特許文献2】特開2007-105384号公報
【特許文献3】特開2002-224220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
慢性呼吸器疾患患者等が通院などで外出する際には、酸素ボンベ、高圧ガスレギュレータや呼吸同調式レギュレータ等の流量調整器等の酸素供給装置一式をキャリアバッグに収納しカート等に装着して持ち運びながら酸素吸入を行う。患者が吸収する酸素処方流量や移動時間によって持ち運ぶべき酸素ボンベの容量、容器径、高さ等が異なるため、多種のボンベ形状の変化に対応できること、患者自身が容易に酸素ボンベの残量を確認することができること、バルブや医療機器である高圧ガスレギュレータや呼吸同調式レギュレータの正常駆動を担保するためには、雨天等の湿潤環境下で使用してもバッグ内部へ直接水がかからないように気密性が担保されること、バッグ内において酸素が滞留しないように通気性を確保すること、バッグが転倒した時に特に該残量表示手段を保護すること、などの各種課題を備える。
【0011】
ボンベの形状変更とボンベ残量を容易に視認できること、バッグ気密性の向上とバッグ内の酸素滞留防止、バッグ収納物の保護という課題は相容れず、従来の酸素ボンベキャリアバッグは、これらの一部の課題を解決しながら患者自身が注意を払いながら使用している。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は従来の酸素ボンベのキャリアバッグが持つ上記課題を解決するものであり、以下の携帯型酸素ボンベシステムのキャリアバッグを見出したものである。
【0013】
すなわち本発明は、酸素ボンベからバルブや高圧ガスレギュレータおよびまたは呼吸同調式レギュレータなどの流量調整器、カニューラを介して使用者に酸素を供給する携帯型酸素ボンベシステムを収納するバッグであって、該バッグの上部に透明樹脂製のドーム状の透視部を備え、該透視部の下部に第1の開口部を備えることを特徴とする、携帯型酸素ボンベキャリアバッグを提供する。
【0014】
また本発明は、かかる透視部は、該酸素ボンベに設けられる残圧計または残量計、該高圧ガスレギュレータおよびまたは呼吸同調式レギュレータの透視が可能な位置に設けられ、該開口部がドーム形状の透視部とバッグ側面部とその接合部に設けられる略弓形の形状を備えることを特徴とする携帯型酸素ボンベキャリアバッグを提供する。
【0015】
また本発明は、バッグの内部には、使用する酸素ボンベの径、高さに合せバッグ内での可動域を制限するクッション部材を備えることを特徴とする携帯型酸素ボンベキャリアバッグを提供する。
【0016】
また本発明は、該バッグの下部側面に、バッグ内のガスを排気する第2の開口部を備えることを特徴とし、該第2の開口部が、該バッグ側面に設けられたメッシュ構造体で構成され、更にその外側に、下方に開口部を備えたボケット状のカバー部材を備えること、あるいは、該バッグ側面に設けられ斜め下方に開口するスリット構造体であることを特徴とする携帯型酸素ボンベキャリアバッグを提供するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の携帯型酸素ボンベキャリアバッグは、患者が酸素吸入をしながらドーム状の透視部を介して流量調整器の設定状態やボンベ残量等を外部から容易に確認することができる。しかも、酸素ボンベを使用時に何らかのトラブルにより、流量調整器やカニューラの接続部位から酸素が若干洩れたとしても、酸素洩れの発生近傍部位であるドーム状の透視部下部の開口部を介して酸素を外気中へ容易に排出することができ、バッグ内への酸素の滞留を未然に防止することができる。しかもその開口箇所をバッグ上部であり、ドーム下部に開口部を設けることで、雨水の浸入をも防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の携帯型酸素ボンベキャリアバッグの外観斜視図。
【図2】本発明の携帯型酸素ボンベキャリアバッグの側面図。
【図3】本発明の携帯型酸素ボンベキャリアバッグと酸素ボンベシステムとの関係を示す模式図。
【図4】本発明の携帯型酸素ボンベキャリアバッグの第2の開口部の模式図。
【図5】本発明の携帯型酸素ボンベキャリアバッグの第2の開口部の別態様の模式図。
【図6】本発明の携帯型酸素ボンベキャリアバッグの第2の開口部の別態様の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明にかかる実施形態について説明する。図1は本発明の酸素ボンベキャリアバッグの外観図である。かかるバッグは上面方向に丸みを持った、略角型のバッグである。但し、かかる形状は、それぞれのデザイン設計に合せて丸型など各種形状に作成してよい。
【0020】
キャリアバッグの材質は、ナイロン、ポリエステルなどの合成繊維、塩化ビニルなどの合成樹脂や、撥水性の付与または防水性を維持できることが重要であり、またはアクリル防水コーティングやポリウレタン防水コーティング等の防水加工、フッ素樹脂コーティング、シリコン樹脂コーティング等の撥水加工を行った生地を使用するのが好ましい。
【0021】
キャリアバッグの上部には酸素ボンベの酸素残量の確認ができるドーム状の透視部を備える。かかる透視部は透明樹脂製の成型部材で構成され、塩化ビニル樹脂、スチレン系、オレフィン系、ウレタン系、エステル系などの熱可塑性エラストマー樹脂(TPE)、特に熱可塑性ポリウレタン樹脂(TPU)を用いることにより、透明性を有し且つ耐衝撃性、耐摩耗性に優れ、弾力性、機械的強度の高いドーム状または庇状の成型体を製造することができる。ドームの形状は、図1に示す半球状のドームであっても角型のドームであっても良く、そのときのデザイン設計に合せて作成してよい。
【0022】
かかる透視部は、キャリアバッグ内部に収納された酸素ボンベの残量や残圧、バルブや高圧ガスレギュレータ、呼吸同調式レギュレータなどの酸素流量調整器の表示内容が視認することができる位置に設けられる。ボンベバッグ正面上部のボンベ上部に相当する位置に設けるのが好ましい。
【0023】
また、かかる透視部については、透視したい部分以外の透明樹脂部分を塗装等によりマスキングすることも可能である。また透視部に対して撥水加工を施すことで、雨をはじき透視部の汚れを抑制し、また光の反射を抑えるためにシボ加工を施したファイルムを貼る等の処理を行うことで、可視性能を向上させることも可能である。
【0024】
ドーム状の透視部はバッグ生地に対して密閉状態で設置されているのではなく第1の開口部を備える。例えば、図1のキャリアバッグでは透視部を形成するドーム状の樹脂成型部材の全周がバッグ生地と縫い合わされているのではなく、半球状のドームの下方側はバッグ正面との間に、所謂弓形の開口部を備える。開口部形状はドーム形状に基づいて適宜設計される。その他、ドーム状透視部下方に下向きに開いた複数の開孔穴を備えることにより開口部を形成することも可能である。
【0025】
かかる第1の開口部を備えることにより、バッグ内の特に上部空間が外気と流通が可能となり、酸素ボンベの酸素ガスの一部が仮に洩れたとしても、バッグ内に滞留することなく、外気と混合希釈されて外気へ排出することが可能となる。酸素が漏洩する部位はボンベ上部のバルブから高圧ガスレギュレータ、呼吸同調式レギュレータ等の流量調整器及びその接続部に限られ、酸素ボンベの上部、即ちキャリアバッグの上部空間に集中するので、流量調整器等の設定値やボンベ残量計または残圧計を視認する透視部に開口部を設ける。
【0026】
酸素は空気よりも重いため、バッグの下方に滞留する傾向があるが、キャリアバッグにボンベが収納された状態では、バッグ内の下部は酸素ボンベシステムの衝撃防止のためにクッション部材等が充填されて隙間は極めて少ない構造となっているため、バッグ上部に開口部を設けることにより、ボンベ上部から漏洩した殆どの酸素ガスは、第1の開口部を介して外部へ排出される。
【0027】
酸素ボンベキャリアバッグは流量調整器として各種の機械制御、電子制御部品を搭載しているため、雨天等の中で持ち運んでも該通気口よりバッグ内部に直接水が浸入することがないよう防止策が必要である。ドーム状の透視部に設けられた第1の開口部は必ずドームの下方部位に設ける。弓形の開口部を設ける場合には、透視部開口部と正面の生地の端部とは端面に重なりを持って縫製することにより、横からの雨水の浸入を防ぐことができる。重なり部分を多くすると透視部の視野が狭くなることになるが、0.5cm以上の重なり、好ましくは1cm以上の重なりを持って作製するのが好ましい。開孔を設ける場合には、ドーム下部に1乃至複数の開孔穴を通気が十分に確保できるサイズで設ける。
【0028】
キャリアバッグの内面側は、装着する酸素ボンベとできるだけ密着するように設計するのが好ましい。ボンベとバッグ内面との間に空間を設けることで運搬中にボンベ自体が可動し、がたつきや振動の原因となる他、流量調整器との接触破損の原因ともなる。形状の異なるボンベを使用する場合や、使用するボンベとバッグ内面との間に遊び空間がある場合には、ボンベ内面側にクッション材をホックや面ファスナー等で取付け、取外しが可能に接続することによってボンベの可動域を制限し、衝撃吸収としての働きを持たせることができる。
【0029】
高さ方向についてもボンベ下部にクッション材を備えることにより調整が可能である。容量の大きいボンベに対してはボンベ交換時の衝撃を緩和するためにクッション性を高めた部材を備えるのが好ましい。
【0030】
キャリアバッグ透視部に設けた第1の開口部に加えて、キャリアバッグの下部にも、空気穴として第2の開口部を備えるのが好ましい。ボンベ下部がバッグ内面に完全に密着していれば、漏出したガスがバッグ下部に滞留することは無いが、僅かな空間があればそこに酸素ガスが滞留する可能性がある。そこでキャリアバッグ下部にも開口部を設けることで外気との通気性を確保し、酸素ガスの排出を可能とする。但し、キャリアバッグはカートに装着して運搬することが多いため、バッグ下部は地面に近い位置となることから雨水などの浸入を防止するため、防水対策は更に必要になる。
【0031】
かかる第2の開口部としては、図6に示すようなメッシュ構造部材を用いた開口部とすることが可能である。雨水などの浸入を防止し、防水性を高めるために細かなメッシュサイズを用い、さらに撥水加工を施すことも可能である。但し、かかる撥水加工を施したメッシュ構造では、完全に水の浸入を防止することはできず、細かなメッシュ構造は、逆に通気性が悪くなるというデメリットも有するため、通気性と防水性の観点からメッシュ径を決定する。その他、下方に図5に示すようなスリット状の開口とすることも出来る。
【0032】
雨水の浸入やカートでの運搬による道路からの水の跳ね返りによる浸入を防止するため、図4に示すように、第2の開口部の外側に、下方に開口部を備えたポケット状またはドーム状、または庇形状のカバー部材を備えることによりメッシュ内部への雨水の浸入を防ぐことができる。かかるカバー部材についても、メッシュ開口部との間に重なり部分を設けることにより、跳ね返りの水の浸入などを防止することができる。係る第2の開口部は、バッグのデザインに影響を及ぼさない範囲でキャリアバッグの下部、特に左右の側面に設けることができる。正面はデザイン性に影響し且つ水の浸入がしやすく、背面はカートとの間あるいはリュック形状として背負った場合には背中との間で開口部が閉塞する可能性がある。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、呼吸器疾患患者が酸素吸入療法に使用する酸素ボンベを患者自身が運搬する際に使用するバッグとして、使用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素ボンベから流量調整器、カニューラを介して使用者に酸素を供給する携帯型酸素ボンベシステムを収納するバッグであり、収容するに酸素ボンベに設けられる残量計または該流量調整器が透視可能なバッグ上部の位置に透明部材で構成される透視部を備えると共に、該透視部の下部に第1の開口部を備えることを特徴とする、携帯型酸素ボンベキャリアバッグ。
【請求項2】
該透視部が、透明樹脂製のドーム状または庇状の形状部材であり、透視部の下方に第1の開口部を備えることを特徴とする、請求項1に記載の携帯型酸素ボンベキャリアバッグ。
【請求項3】
該第1の開口部が、半球状のドーム形状の透視部の下部とバッグ側面との未接合部に形成された略弓形の開口部であることを特徴とする請求項2に記載の携帯型酸素ボンベキャリアバッグ。
【請求項4】
該バッグの下部側面に、バッグ内のガスを排気する第2の開口部を備えることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の携帯型酸素ボンベキャリアバッグ。
【請求項5】
該第2の開口部が、該バッグ側面に設けられたメッシュ構造体で構成され、更にその外側に、下方に開口部を備えたボケット状、ドーム状、または庇状のカバー部材を備えることを特徴とする請求項4に記載の携帯型酸素ボンベキャリアバッグ。
【請求項6】
該第2の開口部が、該バッグ側面に設けられ斜め下方に開口するスリット構造体であることを特徴とする、請求項4に記載の携帯型酸素ボンベキャリアバッグ。
【請求項7】
該バッグの内部には、使用する酸素ボンベの径、高さに合せバッグ内での可動域を制限するクッション部材を備えることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の携帯型酸素ボンベキャリアバッグ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−139276(P2012−139276A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292557(P2010−292557)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(503369495)帝人ファーマ株式会社 (159)